JP2019204790A - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents
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Abstract
Description
負極活物質と正極活物質の質量比(負/正)0.5〜0.8を、負極活物質の質量に対する正極活物質の質量の比(正/負)に換算すると、1.25〜2.0である。
このN/Pを負極活物質の質量に対する正極活物質の質量の比(P/N)に換算すると、0.83〜1.0である。
また、制御弁式鉛蓄電池において、正極活物質と負極活物質の質量比を規定することも、正極板の劣化防止(特許文献3(0007)参照)や、硫酸鉛の蓄積による負極容量の低下対策(特許文献4(0007)参照)等を目的として、従来から行われている。しかし、上記の質量比と負極集電体の耳の耐食性との関係について言及した先行技術は、発見できなかった。
(1)合金の全質量に対して、Ca0.07質量%以上0.12質量%以下、Sn0.75質量%以下を含有するPb−Ca−Sn系合金、又は合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下を含有するPb−Ca系合金からなる負極集電体を備え、且つ、負極電極材料の質量に対する正極電極材料の質量の比が、1.27以上1.35以下、又は1.47以上である制御弁式鉛蓄電池。
(2)合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下、Sn0.75質量%以下を含有するPb−Ca−Sn系合金、又は合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下を含有するPb−Ca系合金からなる負極耳を備え、且つ、負極電極材料の質量に対する正極電極材料の質量の比が、1.27以上1.35以下、又は1.47以上である制御弁式鉛蓄電池。
結晶性の組織を有する金属の腐食は、まず、結晶粒の粒界に沿って起こる。したがって、微細な結晶粒を形成する前記の合金においては、個々の結晶粒による粒界腐食の深さが小さいから、粒界に沿って起こる腐食が進行しがたいと推測し、これを負極集電体の耳に用いた。
本明細書では、一般的な呼び名に倣って、耳を含む負極集電体を「負極格子」といい、負極集電体の耳を「負極耳」ということがある。
また、前記の合金組成は、主材がPb、Ca及びSnであるか、又はPb及びCaであ
る(Snが0%)ことを表わすものであり、Al等の他の不可避元素の含有を否定するものではない。合金中の「%」の表記は、合金の全質量に対する割合を示す。
その原因を調査した結果、負極耳とストラップとの溶接部付近(以下、「負極ストラップ部」という。)で腐食が進行しやすい電位になっていることが判明した。
なお、本明細書において、極板から集電体を除き、電池反応に寄与する物質(反応物質)と電池反応に寄与しない添加剤や補強材等の物質を合わせたものを電極材料と呼ぶ。本明細書では、「電極材料」を「活物質」という場合があり、「負極電極材料の質量に対する正極電極材料の質量の比」を、以下、「正極/負極電極材料質量比」という。
電位と腐食速度の関係は、以下の試験セルを用いて、75℃、0〜+70mV (vs Pb/PbSO4)の定電位条件で腐食試験を行い、
腐食速度=(初期厚み−試験後の腐食層を除いた厚み)/2/試験日数
として求めた。
試験セル構成
試験極および対極:純鉛の平板
参照極:Pb/PbSO4電極
電解液:比重1.28硫酸
図1から、+30〜+50mV(vs Pb/PbSO4)の電位範囲で、腐食速度が大きく、負極腐食が進行しやすいことがわかる。
負極ストラップ部の電位は、正極/負極電極材料質量比を1.19〜1.56に変化させた制御弁式鉛蓄電池を作製し、40℃2.23Vフロート充電を行い、Pb/PbSO4参照極の先端を負極ストラップに接触させて測定した。
正極/負極電極材料質量比が1.35より大きく1.47未満の場合は、負極ストラップ部の電位が腐食の進行しやすい+30〜+50mV(vs Pb/PbSO4)の電位になっている。これに対して、正極/負極電極材料質量比が1.35以下、又は1.47以上では、負極ストラップ部の電位が腐食の進行しやすい電位よりも貴になっている。そのため、負極腐食が抑制されると考えられる。
正極/負極電極材料質量比が1.35以下では、正極活物質量が相対的に少ないので、正極活物質利用率が高くなり、正極電位が貴になって、酸素ガスの発生量が増加する。そのため、発生した酸素ガスを負極板で吸収しきれず、リテーナーマットから露出した負極ストラップや耳で還元が起きる。したがって、負極ストラップ部の電位が貴にシフトする。
正極/負極電極材料質量比が1.47以上では、負極活物質量が相対的に少ないので、正極で発生した酸素ガスを負極板で吸収しきれない。そのため、リテーナーマットから露出した負極ストラップや耳で還元が起き、負極ストラップ部の電位が貴にシフトする。
すなわち、正極/負極電極材料質量比が1.35以下の場合と1.47以上の場合とでは、作用・機序は異なるものの、負極ストラップ部の電位が貴にシフトするという同様の
現象が生じるものと推察される。
正極/負極電極材料質量比が1.62より大きい場合、寿命性能に特段の影響はない。しかし、エネルギー密度確保のため、上記質量比は1.62以下が好ましく、1.56以下がより好ましい。
Ca0.06質量%、Sn1.5質量%、Al0.02質量%以下、及び不可避不純物を含有するPb−Ca−Sn系合金から、厚さ3.8mmの正極格子を鋳造して正極集電体とした。なお、正極格子の合金組成、寸法、デザイン、および鋳造、エキスパンド、圧延シート打抜き等の製造方法は任意である。
ボールミル法による鉛粉99.9質量%と、合成樹脂繊維0.1質量%を、25℃で比重が1.16の硫酸を加えて正極ペーストとし、これを正極格子に充填して、熟成と乾燥を行い、正極格子と正極活物質からなる正極板を作製した。ペースト充填量は、化成後の正極/負極電極材料質量比が1.19〜1.56となるように調整した。正極活物質の密度等は任意である。
Ca0.06〜0.13質量%、Sn0〜0.9質量%、Al0.02質量%以下、及び不可避不純物を含有するPb−Ca−Sn系合金、又はPb−Ca系合金からなる厚さ1.9mmの負極格子を鋳造し、表1及び表2に示すNo.1〜90の電池に用いる負極集電体とした。なお、負極格子の寸法、デザイン等は任意である。
ボールミル法の鉛粉98.3質量%と、合成樹脂繊維0.1質量%、カーボンブラック0.1質量%、BaSO41.4質量%、及びリグニン0.1質量%を、25℃で比重が1.14の硫酸を加えて負極ペーストとし、これを負極格子に充填して、熟成と乾燥を行い、負極格子と負極活物質からなる負極板を作製した。ペースト充填量は、化成後の正極/負極電極材料質量比が1.19〜1.56となるように調整した。負極活物質の密度等は任意である。
正極板8枚と負極板9枚を、微細ガラスマットセパレータを介して積層して極板群とし、極板群の長さが電槽内寸法になるまで圧迫を加えて電槽内に収納した。足し鉛に純鉛を用いて、同極板間を接続する正極ストラップ、及び負極ストラップをそれぞれ形成した。なお、ストラップには、純鉛に限らず、Pb−Sn系合金を使用することができる。
電槽に蓋体を接着した後、蓋体の注液部から電解液として硫酸を加え、電槽化成を施して、正極/負極電極材料質量比が1.19〜1.56、定格容量200Ah、2Vの制御弁式鉛蓄電池を組み立てた。
作製したNo.1〜90の鉛蓄電池について、以下の加速試験を行った。
試験条件
(1)容量確認試験:25℃、0.2CA、終止電圧1.75V/セル
(2)回復充電:25℃、2.23V/セル定電圧充電(最大電流0.2CA)、48時間
(3)フロート充電:50℃、2.23V/セル×14日間
(4)放電深度5%放電:50℃、0.005CA×10時間
(5)フロート充電:50℃、2.23V/セル×14日間
上記(1)〜(5)の工程を繰り返し行い、(1)の工程で放電時間が4時間未満になる時点で終了する。
上記(1)〜(5)の2サイクルを25℃での寿命1年と換算して、加速試験終了までの期間からフロート寿命を判定した。目標とするフロート寿命は25℃換算で13年とした。
加速試験終了後の電池を解体して取り出した負極ストラップと耳の溶接部の断面を金属顕微鏡で観察し、腐食層を除いた耳厚みを確認して、負極腐食量を下式を用いて算出した。
負極腐食量(%)=(耳初期厚み−試験後の腐食層を除いた耳厚み)/耳初期厚み×100
寿命年数及び負極腐食量の結果を表1、表2に示す。
これに対して、正極/負極電極材料質量比が1.27及び1.51であり、負極格子の合金組成が、Ca:0.07〜0.12質量%、Sn:0〜0.75質量%を満たす電池(No.4〜6、8〜10、12〜14、40〜42、44〜46、48〜50)は、負極耳腐食量が小さく、25℃換算13年を上回る寿命性能を有している。
前者の5種類の電池において、正極/負極電極材料質量比が1.43の場合(No.58、64、70、76、82)は、1.39の場合(No.22、24、27、31、32)と同じく、負極耳腐食量が大きく、寿命年数が短いから、正極/負極電極材料質量比が適正でないことがわかる。
正極/負極電極材料質量比が1.19の場合(No.55、61、67、73、79)は、いずれも負極耳腐食量は小さいが、25℃換算の寿命年数が13年を切っている。これは、正極活物質利用率が高いことにより、正極劣化が進んだことによるものである。
これに対して、前者の5種類の電池において、正極/負極電極材料質量比が1.32、1.35、1.47又は1.56の場合(No.56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、72、74、75、77、78、80、81、83、84)は、正極/負極電極材料質量比が1.27又は1.51の場合(No.4、40、6、42、9、45、13、49、14、50)と同様に、負極耳腐食量が小さく、かつ、25℃換算の寿命年数13年以上を達成している。
市販の電池について、化成後の正極/負極電極材料質量比を確認するためには、電池に100%以上の充電をしてから解体して、正極板及び負極板を取り出し、正極電極材料、負極電極材料の質量を測定し、質量比を算出すればよい。また、できるだけ新品又は新品に近い電池で確認することが望ましい。
Claims (2)
- 合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下、Sn0.75質量%以下を含有するPb−Ca−Sn系合金、又は合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下を含有し、Snが0%であるPb−Ca系合金からなる負極集電体を備え、且つ、負極電極材料の質量に対する正極電極材料の質量の比が、1.27以上1.35以下、又は1.47以上1.62以下であることを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
- 合金の全質量に対してCa0.07質量%以上0.12質量%以下、Sn0.75質量%以下を含有するPb−Ca−Sn系合金、又は合金の全質量に対してCa0.07質量 %以上0.12質量%以下を含有し、Snが0%であるPb−Ca系合金からなる負極耳を備え、且つ、負極電極材料の質量に対する正極電極材料の質量の比が、1.27以上1.35以下、又は1.47以上1.62以下であることを特徴とする制御弁式鉛蓄電池。
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