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JP2019175936A - 積層セラミック電子部品 - Google Patents

積層セラミック電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】たとえば高電圧または高電流により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流しても絶縁性を維持することができる積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を提供すること。【解決手段】誘電体層10と内部電極層12とが交互に積層されて形成された素子本体4を有する積層セラミック電子部品である。内部電極層12は、銅および/または銀を主成分として含む。誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい。【選択図】図1

Description

本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品に関する。
たとえば下記の特許文献1にも示すように、誘電体層が主としてチタン酸バリウムから成り、内部電極層が主としてニッケルから成る積層セラミックコンデンサが知られている。このような積層セラミックコンデンサは、様々な用途に用いられている。そして、誘電体層と内部電極層の積層体から成る素子本体の内部には、空隙が少ないほどよいと考えられてきた。
特開2014−053589号公報
ところが、特に、内部電極層が主としてニッケルから成る積層セラミックコンデンサにおいて、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流すと、コンデンサが発熱して実装基板を加熱するおそれがあることが、本発明者により見出された。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、たとえば高電圧または高電流により短絡現象が発生した後に、そのコンデンサに電流を流しても絶縁性を維持することができる積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る積層セラミック電子部品は、
誘電体層と相互に極性が異なる内部電極層とが交互に積層されて形成された素子本体を有する積層セラミック電子部品であって、
前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
前記誘電体層の任意の一層の厚み方向の略中心を通って前記誘電体層の長手方向に沿う誘電体線分の所定長さに対する前記誘電体線分上の空隙の長さの割合を示す誘電体空隙率が、前記内部電極層の任意の一層の厚み方向の略中心を通って前記内部電極層の長手方向に沿う内部電極線分の所定長さに対する前記内部電極線分上の空隙の長さの割合を示す内部電極空隙率よりも小さいことを特徴とする。
本発明に係る積層セラミック電子部品では、内部電極層は、銅または銀を主成分として含む。また、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい。
このような条件を満足することで、本発明の積層セラミック電子部品では、たとえば高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、その電子部品に電流を流すことで絶縁性を復帰させる(自己修復特性)ことができる。このため、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流したとしても、絶縁性が確保されているため、発熱するおそれが少ない。
なお、短絡現象が発生した電子部品に再び電流を流すことで、絶縁性が復帰するのは、次に示す理由であると考えられる。すなわち、上記の条件が満足される場合には、内部電極層の短絡が生じた部分に電流が再度流れることで、内部電極が融解して飛散し、絶縁性が復帰すると考えられる。また、誘電体層に空隙が多いと再び電流を流した際に、内部電極が融けて誘電体層に存在する空隙を伝って、逆の極性の内部電極層と接続して短絡現象が発生する可能性がある。これに対して、本発明の積層セラミック電子部品は、内部電極層にも所定の空隙が存在し、なおかつ誘電体層の空隙が制限されている。具体的には、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい。このため、内部電極が融解した際に、融けた内部電極が誘電体層を伝わらずに内部電極層に留まることができる。このため、自己修復が起こり易くなると考えられる。
好ましくは、誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。このように構成することで、誘電体層の低温焼結が可能となり、銅を内部電極とした積層セラミック電子部品を作製し易くなる。
好ましくは、前記誘電体空隙率は、前記内部電極空隙率の0.7倍以下である。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。
好ましくは、前記所定長さは10〜50μmである。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2は図1に示す積層セラミックコンデンサにおける内部電極層と誘電体層の積層構造の拡大断面写真を模式化した概略図である。 図3Aは図2に示す空隙の拡大図である。 図3Bは図2に示す空隙の拡大図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサの全体構成
まず、本発明に係る積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。素子本体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、内部電極層12が交互に積層してある。
誘電体層10と、内部電極層12とが交互に積層される部分が内装領域(容量領域)である。素子本体4は、その積層方向の両端面に、外装領域を有する。外装領域は、内装領域を構成する誘電体層10よりも厚い誘電体層で構成してある。
交互に積層される一方の内部電極層12は、素子本体4のX軸方向第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、素子本体4のX軸方向第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
容量領域を構成する誘電体層10および外装領域を構成する誘電体層の材質は、同じでも異なっていても良く、特に限定されず、たとえばABOなどのペロブスカイト構造の誘電体材料で構成される。ABOにおいて、Aは、たとえばCa,Ba,Srなどの少なくとも一種、Bは、Ti,Zrなどの少なくとも一種である。A/Bのモル比は、特に限定されず、0.980〜1.200である。
特に好ましくは、内側誘電体層10は、チタン酸バリウム(BaTiO3 )を含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する。ホウ素酸化物としては、Bが例示され、リチウム酸化物としては、LiOが例示される。
主成分であるチタン酸バリウムは、たとえば組成式BaTiO2+m で表され、組成式中のmが0.995≦m≦1.100であり、BaとTiとの比が0.995≦Ba/Ti≦1.100である。
主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して、副成分としてのホウ素酸化物は、好ましくは2.5〜20モルの範囲で誘電体層10に含まれることが好ましい。あるいは、主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して、副成分としてのリチウム酸化物は、好ましくは2.5〜20モルの範囲で誘電体層10に含まれることが好ましい。
誘電体層10に含まれてもよいその他の副成分としては、たとえば下記の副成分が例示される。MgO、CaO、SrO、BaOから選択される少なくとも1種、あるいは、SiO、Alから選択される少なくとも1種、あるいは、MnO、Cr、Vから選択される少なくとも一種、あるいは、Rの酸化物(R)(RはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される少なくとも一種)などが例示される。これらのその他の副成分は、チタン酸バリウム100モルに対して、たとえば0〜10モル、好ましくは1〜5モルの範囲で含まれていてもよい。
内部電極層12は、銅(Cu)および/または銀(Ag)を主成分として含む。「銅(Cu)および/または銀(Ag)を主成分として含む」とは、それらの金属を含む合金を主成分として含んでもよいという趣旨である。また、「主成分として含む」とは、内部電極層12において、銅、銀、またはそれらの合金の含有割合が、80重量%以上であるという趣旨である。内部電極層12には、銅または銀またはそれらの合金以外の元素が含まれていてもよい。
なお、銅(Cu)および/または銀(Ag)を含む合金としては、特に限定されないが、Ag−Pd合金などが例示される。
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種、またはそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、NiまたはNi合金等や、Ag,Pd、Ag−Pd合金、Ag−Pd−Ni合金等が使用される。また、端子電極6および8は、それぞれ多層電極で構成してあってもよい。
たとえば端子電極6および8は、それぞれ、素子本体4に接する内側から、銅ペースト焼付け電極膜とニッケルメッキ膜とスズメッキ膜との三層構造を含んでもよく、銅ペースト焼付け電極膜と銀を主成分とする焼付け電極膜の2層構造を含んでもよい。あるいは、端子電極6および8は、それぞれ、樹脂と金属粒子で構成される樹脂電極膜を含んでもよい。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、X軸方向寸法は、0.4〜5.7mmであるが、本実施形態では、好ましくは1〜3.2mmである。
積層セラミックコンデンサ2の高さ寸法(Z軸方向寸法)は、誘電体層10および内部電極層12の積層数などにより変化するが、一般的には、0.2〜3.2mmであるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜2.5mmである。また、積層セラミックコンデンサ2のY軸方向寸法は、一般的には、0.2〜5.0mmであるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜2.5mmである。
なお、図1では、図示の容易化のために、端子電極6および8の厚みを、実際よりも厚めに描いてあるが、実際には、それぞれ10〜50μm程度であり、X軸方向寸法に比較してきわめて薄い。また、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が、誘電体層10および内部電極層12の積層方向に一致し、X軸が、端子電極6および8の向き合う方向に一致する。
各誘電体層10の厚みは、数μm〜数十μmのものが一般的であるが、本実施形態では、好ましくは0.5〜2μmである。また、内部電極層12の厚みは、好ましくは0.7〜3μmである。
図2に示すように、本実施形態では、図1に示す積層セラミックコンデンサ2の断面写真(Z軸に平行な断面)を撮像した場合に、たとえば(10〜50μm)×(10〜50)μmの撮像範囲内で、内部電極層12の横断面に、以下の特徴が表れる。すなわち、各内部電極層12は、横断面において、X軸およびY軸の平面に全て連続しているわけではなく、複数の電極不存在領域12bを介して断続的に表れる電極存在領域12aにより構成される。電極存在領域12aでは、内部電極層12を構成する導電性粒子がX軸およびY軸の平面方向に連続している。
すなわち、本実施形態では、内部電極層12と略垂直方向に素子本体4を切断して切断面を観察した場合に、内部電極層12では、長手方向(X軸方向またはY軸方向またはこれらの中間の方向)に沿って所定長さX0の範囲内に、電極存在領域12aと、電極不存在領域12bとが交互に配置されており、電極不存在領域12bが2以上で存在する。
電極不存在領域12bは、切断面において、内部電極層12の長手方向に沿って断続的に現れ、導電性粒子が存在しない領域である。このように構成することで、積層セラミックコンデンサ2が短絡した後に絶縁性が復帰しやすいと共に、初期静電容量(短絡前の静電容量)も大きくできる。
上記の観点から、本実施形態では、好ましくは、内部電極層12では、長手方向に沿って所定長さX0の範囲内に、電極不存在領域12bが2〜5個の範囲で存在する。
電極不存在領域12bは、誘電体層10を構成する誘電体粒子により隣接する誘電体層同士が接続している領域と、誘電体粒子も導電性粒子も存在しない空隙(ボイド)20が存在している領域とを有する。なお、空隙20は、誘電体層10にも存在する。また、内部電極層12の内部に、誘電体粒子10aが内包されていてもよい。
電極不存在領域12bは、各内部電極層12において、X軸方向またはY軸方向またはその間の平面方向に連続して形成されるわけではなく、内部電極層12の平面(X−Y軸平面)に、島状に表れる。したがって、各内部電極層12の電極存在領域12aは、いずれかの横断面(切断面)で接続してあり、全体的に見れば、図1に示すように、X軸方向およびY軸方向に連続している。電極不存在領域12bのX軸方向幅またはY軸方向幅(あるいはX軸とY軸との中間方向の幅)は、内部電極層12の厚みの1〜10倍程度である。
本実施形態では、図2に示すように、内部電極層12と略垂直方向に素子本体4を切断して切断面を観察した場合に、誘電体層10の任意の一層の厚み方向(Z軸方向)の略中心を通って誘電体層10の長手方向(X軸方向またはY軸方向またはこれらの中間の方向)に沿う誘電体線分X1を引く。そして誘電体線分の所定長さX0に対する誘電体線分上の空隙の長さの割合を誘電体空隙率とする。
また、図2に示すように、内部電極層12の任意の一層の厚み方向(Z軸方向)の略中心を通って内部電極層12の長手方向(X軸方向またはY軸方向またはこれらの中間の方向)に沿う内部電極線分X2を引く。そして内部電極線分の所定長さX0に対する内部電極線分上の空隙の長さの割合を内部電極空隙率とする。本実施形態では、誘電体空隙率は内部電極空隙率よりも小さい。
本発明者は、積層セラミックコンデンサ2などの電子部品において、鋭意検討した結果、内部電極層12は、銅または銀を主成分として含み、誘電体空隙率は内部電極空隙率よりも小さいという条件を満足することで以下の効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、高電圧または機械的応力により短絡現象が発生した後に、その積層セラミックコンデンサ2の第1端子電極6と第2端子電極8の間に電流(定格電流)を流すことにより、絶縁性を復帰させることができる。このため、短絡現象が発生した積層セラミックコンデンサ2に再び電流を流したとしても、絶縁性が確保され、発熱するおそれが少ない。
上記の観点から、誘電体空隙率は、内部電極空隙率の0.7倍以下であることが好ましく、より好ましくは、0.02〜0.7倍である。
なお、誘電体空隙率は、たとえば容量領域における任意の9カ所の切断面(一カ所が50μm×50μmの断面視野)を観察し、各視野に表れる誘電体層10の各層の誘電体空隙率を求め、それらの平均を求めて得られる。
誘電体線分X1は、誘電体層10の任意の一層の厚み方向の略中心を通って誘電体層10の長手方向に沿う。また、内部電極線分X2は、内部電極層12の任意の一層の厚み方向の略中心を通って内部電極層12の長手方向に沿う。誘電体層10の任意の一層の厚み方向の略中心および内部電極層12の任意の一層の厚み方向の略中心は、たとえば以下の方法により決定される。
まず、所定長さX0における各内部電極層12の最大凸部を通って内部電極層12の長手方向に沿う補助線を引く。次に、誘電体層10を挟む2つの補助線の距離を誘電体層10の厚みとし、その厚みを基に、誘電体層10の一層の厚み方向の略中心を決定する。また、内部電極層12を挟む2つの補助線の距離を内部電極層12の厚みとし、その厚みを基に、内部電極層12の一層の厚み方向の略中心を決定する。
図3Aに図2の空隙20の拡大図を示す。誘電体線分X1上の空隙20の長さは、空隙20の周縁と誘電体線分X1との一方の交点から、空隙20の周縁と誘電体線分X1との他方の交点までの長さであり、図3AにおいてXdで示される長さである。
所定長さX0において、誘電体線分X1の誘電体空隙率は、(誘電体層一層あたりの誘電体線分X1上の空隙の長さの合計)/X0の式で求められる。なお、誘電体線分X1上にはない空隙は誘電体空隙率を求めるための式に考慮されない。
内部電極空隙率も、たとえば容量領域における任意の9カ所の切断面(一カ所が50μm×50μmの断面視野)を観察し、各視野に表れる内部電極層12の各層の内部電極空隙率を求め、それらの平均を求めて得られる。
図3Bに図2の空隙20の拡大図を示す。内部電極線分X2上の空隙20の長さは、空隙20の周縁と内部電極線分X2との一方の交点から、空隙20の周縁と内部電極線分X2との他方の交点までの長さであり、図3BにおいてXeで示される長さである。
所定長さX0において、内部電極線分X2の内部電極空隙率は、(内部電極層一層あたりの内部電極線分X2上の空隙の長さの合計)/X0の式で求められる。なお、内部電極線分X2上にはない空隙は内部電極空隙率を求めるための式に考慮されない。
所定長さX0は、特に限定されないが、好ましくは10〜50μmである。
なお、短絡現象が発生した積層セラミックコンデンサ2に再び電流を流すことで、絶縁性が復帰するのは、次に示す理由であると考えられる。すなわち、上記の条件が満足される場合には、内部電極層12の短絡が生じた部分に電流が再度流れることで、内部電極が融解して飛散し、絶縁性が復帰すると考えられる。また、誘電体層10に空隙が多いと再び電流を流した際に、内部電極が融けて誘電体層10に存在する空隙20を伝って、逆の極性の内部電極層12と接続して短絡現象が発生する可能性がある。これに対して、本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、内部電極層12にも所定の空隙20が存在し、なおかつ誘電体層10の空隙が制限されている。具体的には、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい。このため、内部電極が融解した際に、融けた内部電極が誘電体層10を伝わらずに内部電極層12に留まることができる。このため、自己修復が起こり易くなると考えられる。
短絡現象を発生させる高電圧としては、特に限定されないが、その積層セラミックコンデンサ2における定格電圧(10〜630V)の2.5倍以上の電圧である。
また、本実施形態では、図1に示す内部電極層12の積層方向(Z軸方向)の中央部に比較して、積層方向の最外層での内部電極層12の長手方向(X軸方向またはY軸方向またはこれらの中間の方向)に沿って所定長さX0の範囲内での電極不存在領域12bの数が大きい。たとえば積層方向の中央部での電極不存在領域の数をEcとし、積層方向の最外層での電極不存在領域の数をEeとした場合に、Ec/Eeは、好ましくは、1より小さく、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
積層方向の最外層では、積層方向の中央部に比較して、内部電極層12同士の短絡が生じやすい。そこで、積層方向の最外層での内部電極層12の電極不存在領域の数を大きくすることで、積層方向の最外層での内部電極層12の間で短絡を生じた場合、そこでの絶縁復帰を生じさせやすくできる。積層方向の中央部に位置する内部電極層12では、比較的に電極不存在領域の数を小さくすることで、初期静電容量を大きくすることができる。
さらに本実施形態では、図2に示すように、内部電極層12の電極存在領域12aには、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体粒子10aが含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。また本実施形態では、内部電極層12の電極不存在領域12bには、空隙20が含まれている。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。さらに本実施形態では、誘電体層10にも空隙20が含まれている。
空隙20の大きさは、特に限定されないが、好ましくは0.2〜3μmの断面積換算径である。なお、断面積換算径とは、断面においての空隙20の断面積を測定し、その断面積を持つ円の直径に換算したサイズである。
本実施形態では、内部電極層12の積層方向の中央部に比較して、積層方向の最外層での内部電極層12に含まれる空隙20の面積比率が大きい。たとえば積層方向の中央部での内部電極層12の面積に対する空隙20の面積比率をVcとし、積層方向の最外層での内部電極層12の面積に対する空隙20の面積比率をVeとした場合に、Vc/Veは、好ましくは、1より小さく、さらに好ましくは0.2〜0.8である。このように構成することで、短絡後に絶縁性が復帰しやすい。その理由としては、積層方向の最外層での内部電極層12に含まれる空隙の面積比率が大きいと、熱が素子本体4の外に逃げ難くなるためではないかと考えられる。
本実施形態では、内部電極層12と略垂直に素子本体4を切断して切断面を観察した場合に、外装領域に含まれる空隙20の面積割合を示す外装空隙率RSeが、容量領域に含まれる空隙20の面積割合を示す容量空隙率RScよりも大きい。RSe/RScは、1より大きく、好ましくは、1.1〜2である。RSe/RScが小さすぎると、本実施形態の作用効果が小さく、大きすぎると、外装領域により容量領域の保護を十分に図れないおそれがある。
なお、外装空隙率RSeは、外装領域における任意の9カ所の断面(一カ所が50μm×50μmの断面視野)を観察し、空隙20の各断面視野における面積割合を求め、それらの平均として求める。また、容量空隙率RScは、容量領域における任意の9カ所の断面(一カ所が50μm×50μmの断面視野)を観察し、空隙20の各断面視野における面積割合を求め、それらの平均として求める。容量領域では、空隙20は、誘電体層10および内部電極層12の双方に表れるが、外装領域では、空隙20は、誘電体層のみに表れる。
特に本実施形態では、図1に示す素子本体4の外表面に近い部分に位置する誘電体層10に含まれるホウ素の含有量(Bs)が、素子本体4の中心部分に位置する誘電体層10に含まれるホウ素の含有量(Bc)に比較して少ないことが好ましい。このように構成することで、端子電極6および8と素子本体4との接合強度が向上することや、外表面に含まれるホウ素が空気中の水分と反応して外表面の強度が低下してしまう不具合が発生しにくくなるなどの理由により、積層セラミックコンデンサ2の撓み強度あるいはクラック強度が向上する。なお、含有比率Bs/Bcは、好ましくは0.5〜0.95であり、この含有比率Bs/Bcを適切に制御するには、素子本体4の脱バインダ時間、焼成時間、アニール時間などを制御すればよい。これらの時間が長いほど、含有比率Bs/Bcが小さくなる傾向にある。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるグリーンシートを製造するために、誘電体層用ペーストを準備する。
誘電体層用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
セラミック粉末の原料としては、上述した誘電体層10を構成することになる複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末の原料は、本実施形態では、平均粒子径が好ましくは0.01〜1μm程度の粉体として用いられる。なお、グリーンシートをきわめて薄いものとするためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、アクリル、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、ターピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
誘電体層用ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
なお、誘電体原料100重量部に対して、バインダは10重量部未満であることが好ましい。これにより、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さくなる。
次いで、図1に示す内部電極層12を形成するための内部電極層用ペーストを準備する。内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。なお、内部電極層用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末(たとえばチタン酸バリウム粉末)が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
上記にて調整した誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを使用して、図1に示すように、焼成後に誘電体層10となるグリーンシートと、焼成後に内部電極層12となる内部電極パターン層と、を交互に積層し、焼成後に内装領域となる内部積層体を製造する。そして、内部積層体を製造した後に、または、その前に、誘電体層用ペーストを使用して、焼成後に外装領域の誘電体層となるグリーンシートを形成する。
具体的には、まず、ドクターブレード法などにより、支持体としてのキャリアシート(たとえばPETフィルム)上に、グリーンシートを形成する。グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
次いで、上記にて形成したグリーンシートの表面に、内部電極層用ペーストを用いて、内部電極パターン層を形成し、内部電極パターン層を有するグリーンシートを得る。そして、得られた内部電極パターン層を有するグリーンシートを交互に積層し、内部積層体を得る。なお、内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されないが、印刷法、転写法などが例示される。なお、接着層を介して内部電極パターン層を有するグリーンシートを積層してもよい。
外装領域の誘電体層となるグリーンシート(外側グリーンシート)は、内装領域となるグリーンシート(内側グリーンシート)と同様に、支持体としてのキャリアシート上に形成される。外側グリーンシートは、キャリアシート上に形成された後に乾燥される。
なお、外側グリーンシートに内部積層体を積層するかわりに、外側グリーンシートに直接に内側グリーンシートと内部電極パターン層とを交互に所定数積層してもよい。また、複数枚の内側グリーンシートと複数枚の内部電極パターン層とを交互に積層した積層体ユニットを予め作製しておき、それらを外側グリーンシートに所定数積層してもよい。
得られたグリーン積層体は、たとえば切断線に沿って所定の寸法に切断され、グリーンチップとする。グリーンチップは、固化乾燥により可塑剤が除去され固化される。固化乾燥後のグリーンチップは、メディアおよび研磨液とともに、バレル容器内に投入され、水平遠心バレル機などにより、バレル研磨される。バレル研磨後のグリーンチップは、水で洗浄され、乾燥される。
乾燥後のグリーンチップに対して、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を行うことにより、図1に示す素子本体4が得られる。なお、内部電極層12となる内部電極パターン層に銅が含まれている場合には、焼成時の温度条件は、銅の融点1085°Cよりも低い温度、すなわち900〜1080°Cで行われることが好ましい。また、内部電極層12となる内部電極パターン層に銀が含まれている場合、焼成時の温度条件は、銀の融点962°Cより低い温度、すなわち、800〜960°Cで行われることが好ましい。
焼成時の昇温速度は、200℃/時間未満であることが好ましい。これにより、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さくなる。
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、バレル研磨等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6および8が形成される。そして、必要に応じ、端子電極6および8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付や導電性接着剤等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
なお、本実施形態では、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さくなるように調整されている。たとえば,焼成条件における昇温速度やバインダの量で,誘電体空隙率と内部電極空隙率をそれぞれ調整することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明の積層セラミック電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の積層型セラミック電子部品に適用することが可能である。その他の積層型セラミック電子部品としては、誘電体層が内部電極を介して積層される全ての電子部品であり、たとえばバンドパスフィルタ、積層三端子フィルタ、圧電素子、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ、バリスタなどが例示される。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、主原料の原料粉末として粒子径が0.05〜1μmのBaTiO粉末を準備し、次にMgCO,MnCO,Y,Bを副成分として準備した。なお、副成分はあらかじめ予備解砕を行い、チタン酸バリウム原料の粒子径よりも小さい0.03〜0.2μm程度に加工した。
次に上記で準備した各原料粉末を主原料100モルに対して、MgCO粉末を0.5モル、MnCO粉末を0.2モル、Y粉末を1.0モル、B粉末を10モル秤量した。これら各粉末をボールミルで湿式混合、乾燥して、誘電体原料を得た。このとき添加したMgCO、MnCOは、焼成後にはそれぞれMgO、MnOとして誘電体層10中に含有されることとなる。
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、アクリル樹脂:7重量部と、可塑剤としてのフタル酸ブチルベンジル(BBP):4重量部と、溶媒としてのメチルエチルケトン:80重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
また、上記とは別に、Cu粒子:56重量部と、テルピネオール:40重量部と、エチルセルロース:4重量部と、ベンゾトリアゾール:1重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。Cu粒子の平均粒径は、1μmである。
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。次いで、外装領域を形成するための誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。内部電極用ペーストをスクリーン印刷し、内装領域のためのグリーンシートを形成した。
内部電極層を有する内装領域のためのグリーンシートと、外装領域のためのグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、焼結体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:10℃/時間、保持温度1000°Cとし、保持時間を120分とした。降温速度は200℃/時間とした。なお、雰囲気ガスは、加湿したN+H混合ガスとし、酸素分圧が10−9MPa以下となるようにした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、保持時間:10時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−8MPa以下)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを使用した。
次いで、得られた焼結体の端面をバレル研磨した後、端子電極としてCuペーストを塗布し、還元雰囲気にて焼き付け処理を行い、実施例1に係る複数の積層セラミックコンデンサ試料(以下、単に「コンデンサ試料」と表記する場合がある)を得た。実施例1に係るコンデンサ試料の要部概略拡大断面図を図2に示す。
実施例2〜4、比較例1〜3
焼成の際の昇温速度を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして実施例2〜4、比較例1〜3に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
比較例4
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ni粒子:56重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例4に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例5
Cu粒子:56重量部の代わりに、Ag粒子:56重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例5に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例6
主原料100モルに対して、副成分として、B粉末を10モルの代わりにLiOを10モル秤量した以外は、実施例2と同様にして、実施例6に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例7
主原料100モルに対して、副成分として、B粉末を5モルに加えてLiOを5モルと秤量した以外は、実施例2と同様にして、実施例7に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
実施例8,9、比較例7
アクリル樹脂の添加量を変えた以外は実施例3と同様にして実施例8,9、比較例7に係る複数のコンデンサ試料を作製した。
測定
実施例1〜9ならびに比較例1〜4および7で得られたコンデンサ試料について、以下の測定を行った。結果を表1〜表2に示す。
(空隙率の測定)
各実施例および比較例に対して、積層セラミックコンデンサ試料の内部電極層の平面に対して垂直な面(たとえばX軸とZ軸を含む断面と、Y軸とZ軸とを含む断面)で研磨した。そして、研磨面の容量領域を走査型電子顕微鏡(SEM)にて3千倍で、それぞれ9視野(各視野が50μm×50μm)、拡大観察した。
各視野に表れる誘電体層10の各層の誘電体空隙率を求めて平均した平均誘電体空隙率を誘電体空隙率として表1および表2に示す。また、各視野に表れる内部電極層12の各層の内部電極空隙率を求めて平均した平均内部電極空隙率を内部電極空隙率として表1および表2に示す。また、平均誘電体空隙率/平均内部電極空隙率を誘電体空隙率/内部電極空隙率として表1および表2に示す。
(絶縁復帰特性(自己修復特性)試験)
各実施例および比較例のコンデンサ試料を複数準備し、それらに1000Vを印加し、内部電極の短絡を強制的に生じさせて10Ω以下となった試料を、各実施例および比較例について、それぞれ10個用意し、それらに2.5Aで通電し、10kΩ以上まで絶縁が復帰した試料の個数を調べた。結果を表1および表2に示す。表1および表2に示す絶縁復帰の項目において、数値の分母は、試験した試料の個数であり、分子は、絶縁が復帰した試料の個数を示す。
評価
表1および表2より、内部電極層がCuまたはAgを主成分として含み、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい場合(実施例1〜9)は、内部電極層がCuを主成分として含むものの誘電体空隙率/内部電極空隙率が1以上の場合(比較例1〜3)に比べて、自己修復特性が良好であることが確認できた。
表1および表2より、内部電極層がCuまたはAgを主成分として含み、誘電体空隙率が内部電極空隙率よりも小さい場合(実施例1〜9)は、誘電体空隙率/内部電極空隙率が0.7であるものの、内部電極層がNiを主成分として含む場合(比較例4)に比べて、自己修復特性が良好であることが確認できた。
表1および表2より、内部電極層がCuまたはAgを主成分として含み、誘電体空隙率/内部電極空隙率が0.7以下の場合(実施例1,2,5〜9)は、自己修復特性がより良好であることが確認できた。
Figure 2019175936
Figure 2019175936
2… 積層セラミックコンデンサ
4… 素子本体
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10,100… 誘電体層
10a… 誘電体粒子
12,120… 内部電極層
12a… 電極存在領域
12b… 電極不存在領域
20… 空隙
X1… 誘電体線分
X2… 内部電極線分

Claims (4)

  1. 誘電体層と相互に極性が異なる内部電極層とが交互に積層されて形成された素子本体を有する積層セラミック電子部品であって、
    前記内部電極層は、銅および/または銀を主成分として含み、
    前記誘電体層の任意の一層の厚み方向の略中心を通って前記誘電体層の長手方向に沿う誘電体線分の所定長さに対する前記誘電体線分上の空隙の長さの割合を示す誘電体空隙率が、前記内部電極層の任意の一層の厚み方向の略中心を通って前記内部電極層の長手方向に沿う内部電極線分の所定長さに対する前記内部電極線分上の空隙の長さの割合を示す内部電極空隙率よりも小さいことを特徴とする積層セラミック電子部品。
  2. 前記誘電体層は、チタン酸バリウムを含む主成分と、ホウ素酸化物および/またはリチウム酸化物を含む副成分とを有する請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記誘電体空隙率は、前記内部電極空隙率の0.7倍以下である請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
  4. 前記所定長さは10〜50μmである請求項1〜3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品。
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