JP2019073789A - ステンレス鋼材及びステンレス鋼管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本実施形態のステンレス鋼材は、質量%で、C:0.040%以下、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.010〜0.30%、Cr:18.0%を超えて21.0%以下、Cu:1.5〜4.0%、Ni:3.0〜6.0%、sol.Al:0.001〜0.100%、及び、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成と、体積率で、20.0〜60.0%のフェライト相、1.0〜10.0%のオーステナイト相、及び、残部がマルテンサイトからなるミクロ組織とを有する。
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
【選択図】図2
Description
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。特に断りがない限り、元素に関する%は質量%を意味する。
炭素(C)は不可避的に含有される。Cは、焼戻し時に炭化物として析出する。この場合、ステンレス鋼材の高温での耐炭酸ガス腐食性が低下する。さらに、C含有量が高すぎれば、焼入れ時の残留オーステナイトの生成量が多くなる。この場合、残留オーステナイトの生成量を低減するために、強度及び靭性に有効なCu及びNi含有量を低下しなければならない。したがって、C含有量は0.040%以下である。C含有量の上限は、好ましくは0.030%であり、より好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.015%であり、最も好ましくは0.010%である。C含有量は低い方が好ましい。しかしながら、製鋼工程における脱炭処理にかかるコストを考慮すれば、C含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、より好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.004%であり、最も好ましくは0.005%である。
シリコン(Si)はステンレス鋼材を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、ステンレス鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜1.0%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.9%であり、より好ましくは0.7%であり、さらに好ましくは0.6%であり、最も好ましくは0.5%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.06%であり、より好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.10%であり、最も好ましくは0.12%である。
マンガン(Mn)はステンレス鋼材を脱酸する。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、焼入れ焼戻し後にオーステナイトが過剰に残留しやすくなり、残留オーステナイトの体積率が10%を超えるおそれがある。この場合、焼戻し後のステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、Mn含有量は0.010〜0.30%である。Mn含有量の上限は、好ましくは0.27%であり、より好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.22%であり、最も好ましくは0.20%未満である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.015%であり、より好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.035%であり、最も好ましくは0.050%である。
クロム(Cr)は250℃程度でCO2と塩化物イオン又は硫酸とを含むような環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性確保に欠かせない元素である。Cr含有量が低すぎればこの効果が得られない。一方、Crはフェライト形成元素であるため、Cr含有量が高すぎれば、ステンレス鋼材中のフェライト量が過剰に多くなり、ステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、Cr含有量は18.0%を超えて21.0%以下である。Cr含有量の上限は、好ましくは20.8%であり、より好ましくは20.5%であり、さらに好ましくは20.3%であり、最も好ましくは20.2%である。Cr含有量の下限は、好ましくは18.3%であり、より好ましくは18.5%であり、さらに好ましくは18.7%であり、最も好ましくは18.8%である。
銅(Cu)は、焼き戻し時に微細なCu粒子として析出して、ステンレス鋼材の強度を高める。さらに、Cuは塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性を高める。Cu含有量が低すぎればこれらの効果が得られない。一方、Cu含有量が高すぎれば、焼き入れ時にマルテンサイト変態が十分に進行せず、残留オーステナイト量が過剰に多くなる。この場合、ステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、Cu含有量は1.5〜4.0%である。Cu含有量の上限は、好ましくは3.8%であり、より好ましくは3.5%であり、さらに好ましくは3.2%であり、最も好ましくは3.0%である。Cu含有量の下限は、好ましくは1.6%であり、より好ましくは1.7%であり、さらに好ましくは1.8%であり、最も好ましくは1.9%である。
ニッケル(Ni)はオーステナイト形成元素であり、高温でのオーステナイトを安定化する。そのため、Niは常温でのマルテンサイト量を増加させ、ステンレス鋼材の強度を高める。Niはさらに、塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性を高める。Ni量が低すぎればこれらの効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、安定なフェライト及びマルテンサイトの二相組織が得られなくなる。つまり、焼入れ焼戻し後にオーステナイトが過剰に残留しやすくなり、焼戻し後のステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、Ni含有量は3.0〜6.0%である。Ni含有量の上限は、好ましくは5.8%であり、より好ましくは5.5%であり、さらに好ましくは5.2%であり、最も好ましくは5.0%である。Ni含有量の下限は、好ましくは3.2%であり、より好ましくは3.4%であり、さらに好ましくは3.6%であり、最も好ましくは3.8%である。
アルミニウム(Al)はステンレス鋼材を脱酸する。sol.Al含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、sol.Al含有量が高すぎれば、その効果は飽和する。sol.Al含有量が高すぎればさらに、介在物が過剰に生成して、塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性及び靭性が低下する。したがって、sol.Al含有量は0.001〜0.100%である。sol.Al含有量の上限は、好ましくは0.080%であり、より好ましくは0.060%であり、さらに好ましくは0.055%であり、最も好ましくは0.050%である。sol.Al含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.010%であり、最も好ましくは0.015%である。
本実施形態のステンレス鋼材は、以下の任意元素を含有してもよい。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。Moは塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性を高める。Moが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Moはフェライト形成元素であるため、Mo含有量が高すぎれば、ステンレス鋼材中にフェライトが過剰に生成する。この場合、ステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.60%である。Mo含有量の上限は、好ましくは0.58%であり、より好ましくは0.56%であり、さらに好ましくは0.54%であり、最も好ましくは0.52%である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.02%であり、より好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.05%であり、最も好ましくは0.06%である。
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。WはMoと同様に塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Wはフェライト形成元素であるため、W含有量が高すぎれば、ステンレス鋼材中にフェライトが過剰に生成し、ステンレス鋼材の強度が低下する。したがって、W含有量は0〜2.0%である。W含有量の上限は、好ましくは1.8%であり、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.3%であり、最も好ましくは1.0%である。W含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.02%である。
コバルト(Co)は任意元素であり、含有されなくてもよい。CoはMoやWと同様に塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性を高める。しかしながら、Co含有量が高すぎれば、製造性が低下すると同時に製造コストも高くなる。したがって、Co含有量は0〜0.30%である。Co含有量の上限は、好ましくは0.25%であり、より好ましくは0.23%であり、さらに好ましくは0.20%であり、最も好ましくは0.18%である。Co含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.02%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiは焼戻し時に微細な析出物として析出してステンレス鋼材の強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Ti含有量が高すぎれば、塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性及び靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.10%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.08%、より好ましくは0.05%である。Ti含有量の下限は、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは焼戻し時に微細な析出物として析出してステンレス鋼材の強度を高める。Vが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、V含有量が高すぎれば、塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性及び靭性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.15%である。V含有量の上限は、好ましくは0.13%であり、より好ましくは0.12%である。V含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、ZrはTiやVと同様に焼戻し時に微細な析出物として析出しステンレス鋼材の強度を高める。Zrが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Zr含有量が高すぎれば、ステンレス鋼材の靭性が低下する。したがって、Zr含有量は0〜0.10%である。Zr含有量の上限は、好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.05%である。Zr含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.010%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbは焼戻し時に微細な析出物として析出してステンレス鋼材の強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Nb含有量が高すぎれば、塩化物イオン又は硫酸を含むような高温環境における耐強酸・炭酸ガス腐食性及び靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.10%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.08%であり、より好ましくは0.05%である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.010%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caはステンレス鋼材の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Ca含有量が高すぎれば、介在物が過剰に生成する。この場合、ステンレス鋼材の靭性及び硫酸を含むような高温環境における耐強酸腐食性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.010%である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.008%であり、より好ましくは0.005%である。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0005%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgはステンレス鋼材の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Mg含有量が高すぎれば、介在物が過剰に生成する。この場合、ステンレス鋼材の靭性及び硫酸を含むような高温環境における耐強酸腐食性が低下する。したがって、Mg含有量は0〜0.010%である。Mg含有量の上限は、好ましくは0.008%であり、より好ましくは0.005%である。Mg含有量の下限は、好ましくは0.0005%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。REMはCaやMgと同様にステンレス鋼材の熱間加工性を高める。一方、REM含有量が高すぎれば、酸化物や硫化物の介在物が過剰に生成し、ステンレス鋼材の靭性及び硫酸を含むような高温環境における耐強酸腐食性が低下する。したがって、REM含有量は0〜0.05%である。REM含有量の上限は、好ましくは0.03%であり、より好ましくは0.02%である。REM含有量の下限は、好ましくは0.0005%である。ここで、REMとは、周期表において元素番号57のランタン(La)から元素番号71のルテチウム(Lu)までの元素に、イットリウム(Y)及びスカンジウム(Sc)を加えた17元素を意味する。REM含有量とは、これらの元素の合計含有量を意味する。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。Bは添加されることでCa、Mg、REMと同様にステンレス鋼材の熱間加工性を高める。一方、B含有量が高すぎれば、Crの炭硼化物が粒界に析出し、ステンレス鋼材の靭性が低下する。したがって、B含有量は0〜0.005%である。B含有量の上限は、好ましくは0.004%であり、より好ましくは0.003%である。B含有量の下限は、好ましくは0.0005%である。
本実施形態のステンレス鋼材の化学組成には、以下の元素が不純物として含有される場合がある。これらの元素は、次の理由によりその含有量が制限される。
燐(P)は不純物である。Pは粒界に偏析して、ステンレス鋼材の耐強酸・炭酸ガス腐食性を低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の上限は、好ましくは0.045%であり、より好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.035%であり、最も好ましくは0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量の下限は特に限定されないが、たとえば0.001%である。
硫黄(S)は不純物である。Sは粒界に偏析して、ステンレス鋼材の耐強酸・炭酸ガス腐食性を低下する。Sはさらに、ステンレス鋼材の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.0020%未満である。S含有量の上限は、好ましくは0.0017%であり、より好ましくは0.0015%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量の下限は特に限定されないが、たとえば0.0003%である。
酸素(O)は不純物である。Oは粗大な酸化物を形成して、ステンレス鋼材の靭性及び硫酸を含むような高温環境における耐強酸腐食性を低下する。したがって、O含有量は0.020%以下である。O含有量の上限は、好ましくは0.015%、より好ましくは0.010%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。O含有量の下限は特に限定されないが、たとえば0.001%である。
窒素(N)は不純物である。Nは粗大な窒化物を形成する。粗大な窒化物は孔食の起点となりステンレス鋼材の硫酸を含むような高温環境における耐強酸腐食性を低下する。したがって、N含有量は0.020%以下である。N含有量の上限は、好ましくは0.018%であり、より好ましくは0.015%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。N含有量の下限は特に限定されないが、たとえば0.001%である。
本実施形態のステンレス鋼材の化学組成は、上記各元素の含有量が適切であり、且つ、次の式(1)及び式(2)を満たす。これにより、熱処理のみでの高強度と、高温環境下における優れた耐強酸・炭酸ガス腐食性とを両立できる。
上記化学組成は、式(1)を満たす。
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
上記化学組成は、式(2)を満たす。
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
好ましくは、上記化学組成はさらに、式(3)を満たす。
0.35≦Cu/Ni≦1.0・・・(3)
ここで、式(3)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。
本実施形態のステンレス鋼材はフェライト及びマルテンサイトの二相系ステンレス鋼材である。具体的には、ステンレス鋼材のミクロ組織は、体積率で、20.0〜60.0%のフェライト相及び1.0〜10.0%のオーステナイト相を含有し、残部がマルテンサイトからなる。
本実施形態におけるステンレス鋼材のミクロ組織中のフェライト分率(体積%)、残留オーステナイト分率(体積%)及びマルテンサイト分率(体積%)は次の方法で測定する。
はじめに、ステンレス鋼材からミクロ組織観察用の試験片を採取する。ステンレス鋼材が鋼板であれば、試験片の表面のうち、鋼板の板幅方向に垂直な断面(以下、観察面という)を研磨する。ステンレス鋼材が鋼管、棒鋼又は線材であれば、試験片の表面のうち、ステンレス鋼材の軸方向に垂直な断面(観察面)を研磨する。次に、王水とグリセリンとの混合液を用いて、研磨後の観察面をエッチングする。エッチングされた観察面において、フェライトを特定する。そして、特定されたフェライトの面積率を、JIS G0555(2003)に準拠した点算法で測定する。測定された面積率は、体積分率に等しいとして、これをフェライト分率(体積%)と定義する。
残留オーステナイト分率は、X線回折法を用いて求める。はじめに、ステンレス鋼材から15mm×15mm×2mmの試験片を採取する。次に、採取された試験片を用いて、フェライト(α相)の(200)面及び(211)面、オーステナイト(γ相)の(200)面、(220)面及び(311)面の各々のX線回折プロファイルを測定し、各面の積分強度を算出する。算出後、α相の各面と、γ相の各面との組み合わせ(合計6組)ごとに、次式を用いて残留オーステナイト分率Vγを求める。
Vγ=100/(1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα))
ここで、式中の「Iα」はα相の積分強度であり、「Iγ」はγ相の積分強度である。「Rα」はα相の結晶学的理論計算値であり、「Rγ」はγ相の結晶学的理論計算値である。上記各面の体積率Vγの平均値を、残留オーステナイト分率(体積%)と定義する。
本実施形態のステンレス鋼材のミクロ組織のうち、フェライト及び残留オーステナイト以外の残部は、マルテンサイトからなる。マルテンサイト分率は次の式で求める。
マルテンサイト分率=100−(フェライト分率+残留オーステナイト分率)
本実施形態のステンレス鋼材の形状は、特に限定されない。ステンレス鋼材はたとえば、鋼管であってもよいし、鋼板であってもよいし、棒鋼であってもよいし、線材であってもよい。
本実施形態のステンレス鋼材の製造方法の一例として、継目無鋼管の製造方法を説明する。上述の各元素の含有量、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する素材を準備する。素材は、連続鋳造法(ラウンドCCを含む)により製造された鋳片であってもよいし、鋳片から製造された鋼片でもよい。また、造塊法により製造されたインゴットを熱間加工して製造された鋼片でもよい。
各試験番号の鋼板からミクロ組織観察用の試験片を採取した。採取した試験片の表面のうち、鋼板の板幅方向に垂直な断面(観察面)を研磨した。王水とグリセリンとの混合液を用いて、研磨後の観察面をエッチングした。エッチングされた観察面を用いて、上述の測定方法により、フェライト分率(体積%)を求めた。結果を表2に示す。
各試験番号の鋼板の厚さ中央部から、丸棒引張試験片を採取した。丸棒引張試験片の長手方向は、鋼板の圧延方向に平行な方向(L方向)であった。丸棒引張試験片の平行部の直径は6mmであり、標点間距離は40mmであった。採取された丸棒引張試験片に対して、室温で引張試験を実施し、降伏強度(0.2%耐力)を求めた。結果を表2に示す。
はじめに、各試験番号の鋼板から、腐食試験片を採取した。試験片は、長さ40mm、幅10mm、厚さ3mmであり、治具に吊り下げるための直径3mmの穴を有していた。次に、この試験片の重量を測定した。続いて、試験片を試験条件A又は試験条件Bに示す試験溶液に浸漬し、試験溶液に浸漬したまま試験片をオートクレーブ内に収納した。オートクレーブの内部は試験条件A又は試験条件Bに示す試験ガス雰囲気及び試験温度にそれぞれ調整した。試験時間は336時間であった。
試験溶液:25mass%NaCl水溶液
試験ガス:30barCO2
試験温度:250℃
試験溶液:0.01mol/L H2SO4水溶液
試験ガス:30barCO2
試験温度:250℃
試験条件Aにおいては、年間腐食量が0.050(mm/y)未満であれば、耐強酸・炭酸ガス腐食性が良好であると判定した。試験条件Bにおいては、年間腐食量が0.100(mm/y)未満であれば、耐強酸・炭酸ガス腐食性が良好であると判定した。
M+F マルテンサイト相及びフェライト相の二相組織
F フェライト相
A オーステナイト相
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.040%以下、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.010〜0.30%、
Cr:18.0%を超えて21.0%以下、
Cu:1.5〜4.0%、
Ni:3.0〜6.0%、
sol.Al:0.001〜0.100%、
Mo:0〜0.60%、
W:0〜2.0%、
Co:0〜0.30%、
Ti:0〜0.10%、
V:0〜0.15%、
Zr:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.010%、
REM:0〜0.05%、
B:0〜0.005%、及び、
残部はFe及び不純物からなり、
前記不純物のうち、P、S、O、Nはそれぞれ、
P:0.050%以下、
S:0.0020%未満、
O:0.020%以下、及び、
N:0.020%以下であり、
式(1)及び式(2)を満たす化学組成と、
体積率で、
20.0〜60.0%のフェライト相、1.0〜10.0%のオーステナイト相、及び、残部がマルテンサイトからなるミクロ組織とを有する、ステンレス鋼材。
15.0≦616−706(C+N)−22Si−24Mn−26Ni−18Cr−8Cu−16Mo・・・(1)
20.0≦Cr+Cu≦24.5・・・(2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、各元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のステンレス鋼材であって、
前記化学組成は、
Mo:0.02〜0.60%、
W:0.01〜2.0%、及び、
Co:0.01〜0.30%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、ステンレス鋼材。 - 請求項1又2に記載のステンレス鋼材であって、
前記化学組成は、
Ti:0.005〜0.10%、
V:0.005〜0.15%、
Zr:0.005〜0.10%、及び、
Nb:0.005〜0.10%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、ステンレス鋼材。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載のステンレス鋼材であって、
Ca:0.0005〜0.010%、
Mg:0.0005〜0.010%、
REM:0.0005〜0.05%、及び、
B:0.0005%〜0.005%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、ステンレス鋼材。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼材からなる、ステンレス鋼管。
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