JP2019071709A - インバータ制御装置およびセンサレスドライブシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】 精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供する。【解決手段】 実施形態によるインバータ制御装置は、初期推定において、電流検出部SU、SWで検出された電流値と出力電圧目標ベクトルとに基づいて、同期機Mの回転位相角推定値を演算する推定値演算部40を有し、推定値演算部40は、インバータ主回路部INVが停止状態から起動する際に、回転子周波数に同期した電流を同期機Mに通電したときの出力電圧目標ベクトルと電流検出部SU、SWで検出された電流値とを用い、同期機Mの巻線抵抗Rとd軸平均インダクタンスLdaとq軸微分インダクタンスLqhとを設定値として、同期機Mの回転位相角推定値の誤差Δθを演算し、誤差Δθがゼロとなるように回転位相角推定値θestを演算する。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、インバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムに関する。
磁石および磁気突極性を有する同期機を駆動するインバータの制御装置において、設計通りに電流を通電し、精度よく同期機の出力トルクを制御することが望まれている。
また、制御装置の小型軽量化、低コスト化、および、信頼性向上のため、レゾルバやエンコーダ等の回転センサを用いない回転センサレス制御法が提案されている。回転センサレス制御ではインバータ停止から最高速駆動までの幅広い速度範囲において、同期機の回転子の回転位相角および回転速度の推定値を正確に演算できることが望まれている。
市川真士,陳 志謙,冨田 睦雄,道木 慎二,大熊 繁,「拡張誘起電圧モデルに基づく突極型永久磁石同期モータのセンサレス制御」,電気学会論文誌D,Vol.122,No.12,p.1088-p.1096,2002年
磁石および磁気突極性を有する同期機で、例えばインダクタンスを設定値として回転子の位置推定をする場合、d軸電流の正負によってはd軸微分インダクタンスが大きく変化することから、回転子の位置推定に用いる設定値と実際値とが乖離するために、位置推定結果が不安定化することがあった。
本発明の実施形態は、上記事情を鑑みて成されたものであって、精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供することを目的とする。
実施形態によるインバータ制御装置は、電流指令値を生成する電流指令生成部と、インバータ主回路部から出力される交流電流の電流値を検出する電流検出部と、前記電流指令値と前記電流検出部で検出した電流値とが一致するように前記インバータ主回路部のゲート指令を生成し、前記ゲート指令に基づいて前記インバータ主回路部の出力電圧目標ベクトルを演算するゲート指令生成部と、前記インバータ主回路部が起動する際の初期推定において、前記電流検出部で検出された電流値と前記出力電圧目標ベクトルとに基づいて、回転位相角推定値を演算する推定値演算部と、を有し、前記推定値演算部は、前記インバータ主回路部が停止状態から起動する際に、回転子周波数に同期した電流を通電したときの前記出力電圧目標ベクトルと前記電流検出部で検出された電流値とを用い、巻線抵抗とd軸平均インダクタンスとq軸微分インダクタンスとを設定値として、前記回転位相角推定値の誤差を演算し、前記誤差がゼロとなるように前記回転位相角推定値を演算する。
以下に、実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムについて図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムの一構成例を概略的に示すブロック図である。本実施形態のインバータ制御装置1は、例えば、磁気突極性を有する永久磁石同期電動機を駆動するインバータ主回路を制御するインバータ制御装置であって、車両を駆動するセンサレスドライブシステムに搭載されている。
本実施形態のセンサレスドライブシステムは、同期機Mと、インバータ主回路部INVと、インバータ制御装置1と、指令生成部CTRと、を備えている。同期機Mの出力トルクは、図示しない車軸を介して車輪へ伝達される。
インバータ制御装置1は、電流指令生成部10と、dq/αβ変換部20と、電流制御部30と、推定値演算部40と、極性判定部50と、加算器60と、3相/αβ変換部70と、電流センサ(電流検出部)SU、SWと、を備えている。
電流センサ(電流検出部)は、同期機Mを駆動するインバータ主回路部INVから出力される交流電流の電流値を検出する。
インバータ制御装置1は、電流指令生成部10と、dq/αβ変換部20と、電流制御部30と、推定値演算部40と、極性判定部50と、加算器60と、3相/αβ変換部70と、電流センサ(電流検出部)SU、SWと、を備えている。
電流センサ(電流検出部)は、同期機Mを駆動するインバータ主回路部INVから出力される交流電流の電流値を検出する。
電流指令生成部10は、指令生成部(上位コントローラ)CTRから、電流振幅指令idq_refと、電流位相指令β_refと、電流通電フラグIonと、を受信する。電流指令生成部10は、電流振幅指令idq_refと電流位相指令β_refとに基づいて、同期機Mに通電する電流に相当するd軸電流指令値id_refとq軸電流指令値iq_refとを演算し、電流通電フラグIonがオン(ハイレベル)のときにその値を出力する。d軸電流指令値id_refとq軸電流指令値iq_refは下記式により求められる。
id_ref=−idq_ref・sinβ_ref
iq_ref=idq_ref・cosβ_ref
id_ref=−idq_ref・sinβ_ref
iq_ref=idq_ref・cosβ_ref
図2は、実施形態における、d軸、q軸、および、推定回転座標系(dc軸、qc軸)の定義を説明するための図である。
d軸は、同期機Mの回転子において静的インダクタンスが最も小さくなるベクトル軸であり、q軸は電気角でd軸と直交するベクトル軸である。これに対し、推定回転座標系は回転子の推定位置におけるd軸とq軸とに対応する。すなわち、d軸から推定誤差Δθだけ回転したベクトル軸がdc軸であり、q軸から推定誤差Δθだけ回転してベクトル軸がqc軸である。上記式により求められるd軸電流指令値id_refはdc軸から180度回転した方向のベクトル値であって、q軸電流指令値iq_refはqc軸の方向のベクトル値である。なお、α軸は、同期機MのU相巻線軸を示し、β軸は電気角でα軸に直交する軸である。
d軸は、同期機Mの回転子において静的インダクタンスが最も小さくなるベクトル軸であり、q軸は電気角でd軸と直交するベクトル軸である。これに対し、推定回転座標系は回転子の推定位置におけるd軸とq軸とに対応する。すなわち、d軸から推定誤差Δθだけ回転したベクトル軸がdc軸であり、q軸から推定誤差Δθだけ回転してベクトル軸がqc軸である。上記式により求められるd軸電流指令値id_refはdc軸から180度回転した方向のベクトル値であって、q軸電流指令値iq_refはqc軸の方向のベクトル値である。なお、α軸は、同期機MのU相巻線軸を示し、β軸は電気角でα軸に直交する軸である。
dq/αβ変換部20には、d軸電流指令値id_refと、q軸電流指令値iq_refと、回転位相角の推定値θestとが入力される。dq/αβ変換部20は、dq軸の座標系で表されたd軸電流指令値id_refとq軸電流指令値iq_refとを、αβ軸の固定座標系で表されたα軸電流指令値iα_refとβ軸電流指令値iβ_refとに変換するベクトル変換器である。なお、α軸は、同期機MのU相巻線軸を示し、β軸はα軸に直交する軸である。αβ軸の固定座標系で表された値は、同期機Mの回転子位相角を用いることなく演算することが可能である。
電流制御部30は、減算器32、34と、角度演算部36と、ゲート指令生成部38と、を備えている。
減算器32、34は、dq/αβ変換部20の後段に配置されている。dq/αβ変換部20から出力されたα軸電流指令値iα_refは減算器32に入力され、β軸電流指令値iβ_refは減算器34に入力される。また、電流センサSU、SWにより、インバータ主回路部INVから出力された少なくとも2相の電流値が検出され、3相/αβ変換部70によりαβ軸固定座標系に変換された電流値iα_FBKが減算器32に入力され、iβ_FBKが減算器34に入力される。
減算器32、34は、dq/αβ変換部20の後段に配置されている。dq/αβ変換部20から出力されたα軸電流指令値iα_refは減算器32に入力され、β軸電流指令値iβ_refは減算器34に入力される。また、電流センサSU、SWにより、インバータ主回路部INVから出力された少なくとも2相の電流値が検出され、3相/αβ変換部70によりαβ軸固定座標系に変換された電流値iα_FBKが減算器32に入力され、iβ_FBKが減算器34に入力される。
減算器32は、α軸電流指令値iα_refとインバータ主回路部INVから出力された電流値iα_FBKとの電流ベクトル偏差Δiαを出力する。
減算器34は、β軸電流指令値iβ_refとインバータ主回路部INVから出力された電流値iβ_FBKとの電流ベクトル偏差Δiβを出力する。
減算器34は、β軸電流指令値iβ_refとインバータ主回路部INVから出力された電流値iβ_FBKとの電流ベクトル偏差Δiβを出力する。
角度演算部36には、減算器32、34から出力された電流ベクトル偏差Δiαと、電流ベクトル偏差Δiβとが入力される。角度演算部36は、入力された電流ベクトル偏差Δiα、Δiβからαβ軸(固定座標系)の電流ベクトル偏差の角度θiを演算する。角度θiは、電流ベクトル偏差Δiα、Δiβの逆正接(tan−1)により求められる。
ゲート指令生成部38は、電流指令値と実際にインバータ主回路部INVから出力された電流値とが一致するように、インバータ主回路部INVのU相、V相、W相のスイッチング素子に与えるゲート指令を出力する。
本実施形態では、インバータ主回路部INVの6つ(各相2つ)のスイッチング素子(図示せず)のスイッチング状態の組み合わせは8通りあることから、インバータ主回路部INVの出力電圧に各相の位相差を考慮して、それぞれのスイッチング状態に対応する8つの電圧ベクトルを仮想している。8つの電圧ベクトルは、互いにπ/3だけ位相が異なり且つ大きさが等しい6つの基本電圧ベクトルV1〜V6と、2つのゼロ電圧ベクトルV0、V7として表現することができる。
ここで、8つの電圧ベクトルV0〜V7は8通りのスイッチング状態に対応し、例えば、各相の正側のスイッチング素子がオンであるときに「1」と表し、各相の負側のスイッチング素子がオンであるときに「0」と表したものである。例えば、U相の正側のスイッチング素子がオン、V相の負側のスイッチング素子がオン、W相の正側のスイッチング素子がオンのとき、電圧ベクトルは(101)と表される。
本実施形態では、電流指令値と検出電流の電流ベクトル偏差の角度θiとに基づいて、非ゼロ電圧ベクトル(ゼロ電圧ベクトルV0=(000)およびV7=(111)以外の電圧ベクトルV1〜V6)を選択してゲート指令を生成する電流追従型PWM制御を例として説明する。電圧ベクトルV1は、UVWのゲート指令で表すと、(001)に対応する。同様に、電圧ベクトルV2〜V7、V0は、(010)、(011)、(100)、(101)、(110)、(111)、(000)である。このうち、電圧ベクトルV0と電圧ベクトルV7とは、UVWの相間電圧が0Vであるからゼロ電圧ベクトルといい、電圧ベクトルV2〜V6は非ゼロ電圧ベクトルという。インバータ主回路部INVがゼロ電圧ベクトルV0又はゼロ電圧ベクトルV7を出力しているとき、電流は回転子の誘起電圧のみにより変化し、その変化量が小さくなる。したがって、本実施形態では、回転子位置を検出する際に電流微分項を大きくするため、電圧ベクトルとして非ゼロ電圧ベクトルのみを選択するものとしている。
ゲート指令生成部38は、角度θiの範囲に対するU相、V相、W相のゲート指令を格納したテーブル38Aと、3相/αβ変換部38Bと、を備えている。
テーブル38Aは、−π/6<角度θi≦π/6に対応する電圧ベクトルをV4=(100)とし、π/6<角度θi≦π/2に対応する電圧ベクトルをV6=(110)とし、π/2<角度θi≦5π/6に対応する電圧ベクトルをV2=(010)とし、5π/6<角度θi≦7π/6に対応する電圧ベクトルをV3=(011)とし、7π/6<角度θi≦3π/2に対応する電圧ベクトルをV1=(001)とし、3π/6<角度θi≦11π/6に対応する電圧ベクトルをV5=(101)として、UVW相のゲート指令を格納している。
ゲート指令生成部38は、テーブル38Aを用いて、電圧ベクトルV4を基準(=0)として、角度θiのベクトルに最も近い電圧ベクトルを選択し、選択した電圧ベクトルに対応するゲート指令を出力する。
3相/αβ変換部38Bは、テーブル38Aから出力されたゲート指令を受信し、UVW相に対応したゲート指令をαβ変換してαβ軸固定座標系の出力電圧目標ベクトルVα、Vβを演算して出力する。出力電圧目標ベクトルVα、Vβは、インバータ主回路部INVのゲート指令から演算できる3相交流電圧指令をαβ変換したものであって、ゲート指令が実現しようとしているインバータ主回路部INVの出力電圧のベクトル値である。
インバータ主回路部INVは、図示しない直流電源(直流負荷)と、U相、V相、W相の各相2つのスイッチング素子と、を備えている。各相2つのスイッチング素子は、直流電源の正極に接続した直流ラインと、直流電源の負極に接続した直流ラインとの間に直列に接続している。インバータ主回路部INVのスイッチング素子は、ゲート指令生成部38から受信したゲート指令により制御される。インバータ主回路部INVは、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwを交流負荷である同期機Mへ出力する3相交流インバータである。また、インバータ主回路部INVは、同期機Mで発電された電力を直流電源である二次電池へ充電することも可能である。
図3は、図1に示す同期機の一部の構成例を説明するための図である。
なお、ここでは、同期機Mの一部のみを示しており、同期機Mの固定子100および回転子200は、例えば図3に示す構成を複数組み合わせたものとなる。
なお、ここでは、同期機Mの一部のみを示しており、同期機Mの固定子100および回転子200は、例えば図3に示す構成を複数組み合わせたものとなる。
同期機Mは、磁気突極性を有する永久磁石同期電動機であり、磁石のN方向と磁石のS方向とでインダクタンス特性が異なる同期機である。
同期機Mは、例えば、固定子100と、回転子200とを備えた磁石式同期電動機である。回転子200は、複数のエアギャップ4と、複数の外周ブリッジBR1と、複数のセンターブリッジBR2と、複数の磁石3と、を有している。
同期機Mは、例えば、固定子100と、回転子200とを備えた磁石式同期電動機である。回転子200は、複数のエアギャップ4と、複数の外周ブリッジBR1と、複数のセンターブリッジBR2と、複数の磁石3と、を有している。
センターブリッジBR2は、エアギャップ4間の領域であって、回転子200の中心と外周部とを結ぶように延びるラインに沿って配置されている。なお、センターブリッジBR2が配置されているラインがd軸となる。外周ブリッジBR1は、回転子200の外周とエアギャップ4との間に位置している。図3に示す同期機Mの部分には、回転子200の外周部から中心部に向かって延びた6つのエアギャップ4が設けられている。3つのエアギャップ4と3つのエアギャップ4とがd軸に対して線対称に配置され、複数のエアギャップ4のそれぞれはセンターブリッジBR2と外周ブリッジBR1との間に延びている。
複数の磁石3のそれぞれは、各エアギャップ4のセンターブリッジBR2側の端部に、磁路安定化のため配置されている。複数の磁石3は、回転子200の外周側がN極であり、中心部側がS極となる向きに配置されている。
推定値演算部40は、インバータ主回路部INVが停止状態から起動する際の初期推定において、回転子周波数に同期した電流を同期機Mに通電したときの出力電圧目標ベクトルVα、Vβと、電流検出部SU、SWで検出された電流値とを用い、同期機Mの巻線抵抗Rとd軸平均インダクタンスとq軸微分インダクタンスとを設定値として、同期機Mの回転位相角推定値の誤差Δθを演算し、誤差Δθがゼロとなるように同期機Mの回転位相角推定値θestおよび回転速度推定値ωestを演算する。回転子周波数に同期した電流は、例えば、同期機Mのインダクタンスが最小となる方向に通電する電流である。
推定値演算部40は、αβ/dq変換部42と、誤差演算部44と、PLL(Phase Locked Loop)演算部46と、ローパスフィルタ48と、積分演算部49と、を備えている。
αβ/dq変換部42は、加算器60から回転位相角推定値θestを受信し、ゲート指令生成部38からαβ軸固定座標系の出力電圧目標ベクトルVα、Vβを受信し、3相/αβ変換部70からαβ軸固定座標系の電流値iα_FBK、iβ_FBKを受信し、これらのベクトル値をdq軸座標系に変換して出力する。αβ/dq変換部42から出力される値は、推定誤差Δθを含むdcqc座標系の電圧ベクトルVdc、Vqcと、電流ベクトルidc、iqcとである。
αβ/dq変換部42は、加算器60から回転位相角推定値θestを受信し、ゲート指令生成部38からαβ軸固定座標系の出力電圧目標ベクトルVα、Vβを受信し、3相/αβ変換部70からαβ軸固定座標系の電流値iα_FBK、iβ_FBKを受信し、これらのベクトル値をdq軸座標系に変換して出力する。αβ/dq変換部42から出力される値は、推定誤差Δθを含むdcqc座標系の電圧ベクトルVdc、Vqcと、電流ベクトルidc、iqcとである。
誤差演算部44は、αβ/dq変換部42から電圧ベクトルVdc、Vqcと、電流ベクトルidc、iqcと、を受信し、これらに基づいて推定誤差Δθを演算する。
以下に、誤差演算部44の動作の一例について説明する。
以下に、誤差演算部44の動作の一例について説明する。
磁石式同期機の電圧方程式は[数式1]にて表現される。
ここで、Vd,Vqはdq軸電圧であり、Id,Iqはdq軸電流であり、Rは巻線抵抗であり、ωeは電気角角速度であり、Ld,Lqはdq軸インダクタンスであり、Φは磁石磁束であり、pは微分演算子(=d/dt)である。
さらに、基本波電流に対するインダクタンスと高調波電流に対するインダクタンスの振る舞いが異なることに着目し、モータインダクタンスを下記のように定義する。
すなわち、基本波電流に対するdq軸インダクタンスをd軸平均インダクタンスLda,q軸平均インダクタンスLqaとし、高調波電流に対するdq軸インダクタンスを、d軸微分インダクタンスLdh,q軸微分インダクタンスLqhとする。
すなわち、基本波電流に対するdq軸インダクタンスをd軸平均インダクタンスLda,q軸平均インダクタンスLqaとし、高調波電流に対するdq軸インダクタンスを、d軸微分インダクタンスLdh,q軸微分インダクタンスLqhとする。
これを踏まえて[数式1]を書き改めると、下記[数式2]となる。
ここで、Lda,Lqaはdq軸平均インダクタンスであり、Ldh,Lqhはdq軸微分インダクタンスである。
さらに、回転位相角θを推定するために、磁石電圧が発生するq軸方向への拡張誘起電圧表現へと書き換えると、下記[数式3]のようになる。
上記[数式3]のEx0は下記[数式4]で表され、以下の説明においてq軸方向の拡張誘起電圧と呼称する。
さらに、dq軸に対して回転位相角θが誤差Δθを生じる場合、上記[数式3]は下記[数式5]に変形できる。
さらに、回転位相角誤差Δθを演算するために、上記[数式5]を変形すると、下記[数式6]となる。
さらに上記[数式6]のdc軸成分をqc軸成分で割り算して逆正接をとると、回転位相角誤差Δθは下記[数式7]となる。
以上によれば、誤差演算部44において、電圧Vdc、Vqc、検出電流Idc、Iqcを取得し、パラメータとして、巻線抵抗値R、q軸平均インダクタンスLqa、d軸微分インダクタンスLdhを適切に設定することで、上記[数式7]にて回転位相角誤差Δθを演算することが可能である。
しかしながら、図3に示すように回転子200に磁石を少量埋め込んだ(磁気トルクを駆動に用いない)同期機Mでは、外周ブリッジBR1とセンターブリッジBR2との磁気飽和の影響からd軸電流の正負(−d軸方向の電流か+d軸方向の電流か)でd軸微分インダクタンス特性が大きく異なる。
図4は、磁気突極性を有する永久磁石同期電動機のd軸電流とd軸微分インダクタンスとの関係の一例を説明するための図である。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式7]における設定値とすると、回転位相角推定値θestがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなり、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が52%ほど乖離してしまう。このときに、例えば電流リプルが発生したタイミングなどで、回転位相角の演算が不安定化し、初期位置推定を行うことができなくなる可能性があった。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式7]における設定値とすると、回転位相角推定値θestがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなり、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が52%ほど乖離してしまう。このときに、例えば電流リプルが発生したタイミングなどで、回転位相角の演算が不安定化し、初期位置推定を行うことができなくなる可能性があった。
そこで、本実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムでは、誤差演算部44は、上述のq軸方向の拡張誘起電圧Ex0を用いて回転位相角誤差Δθを演算せずに、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて回転位相角誤差Δθを演算している。
以下に、誤差演算部44が、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて回転位相角誤差Δθを演算する動作の一例について説明する。
以下に、誤差演算部44が、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて回転位相角誤差Δθを演算する動作の一例について説明する。
上記[数式2]をd軸方向への拡張誘起電圧による表現へ変形すると、[数式8]となる。
この時、電圧降下と比較して磁石磁束Φが充分に小さい、すなわち、回転子200に磁石を少量埋め込んだ(磁気トルクを駆動に用いない)同期機を駆動するインバータ主回路部INVの制御装置では、上記[数式8]を下記[数式9]と表すことができる。
ここで、上記[数式9]のEx1は下記[数式10]のように表すことができる。以下の説明において、Ex1をd軸方向の拡張誘起電圧と呼称する。
さらに、dq軸に対して回転位相角誤差Δθを生じる場合、上記[数式9]は下記[数式11]のように変形できる。
さらに、回転位相角誤差Δθを演算するために、上記[数式11]を変形すると、下記[数式12]となる。
さらに、上記[数式12]のdc軸成分をqc軸成分で割り算して逆正接をとると、回転位相角誤差Δθは下記[数式13]となる。
以上によれば、誤差演算部44において、dcqc軸電圧Vdc、Vqc、dcqc軸電流Idc、Iqcを取得し、パラメータとして、巻線抵抗値R、d軸平均インダクタンスLqa、q軸微分インダクタンスLqhを適切に設定することで、上記[数式13]にて回転位相角誤差Δθを演算することができる。
図5は、磁気突極性を有する永久磁石同期電動機のd軸電流とq軸微分インダクタンスとの関係の一例を説明するための図である。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のq軸微分インダクタンスLqhを上記[数式12]における設定値とすると、回転位相角推定値θがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなる。この場合であっても、設定したq軸微分インダクタンス(設定値)に対する実際のq軸微分インダクタンス(実際値)は、8%ほど乖離するのみであり、パラメータ設定誤差に対して不感化を実現することができる。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のq軸微分インダクタンスLqhを上記[数式12]における設定値とすると、回転位相角推定値θがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなる。この場合であっても、設定したq軸微分インダクタンス(設定値)に対する実際のq軸微分インダクタンス(実際値)は、8%ほど乖離するのみであり、パラメータ設定誤差に対して不感化を実現することができる。
PLL演算部46は、誤差演算部44から出力された回転位相角誤差Δθに対して、比例・積分演算(PI制御)を用いた収束制御(PLL制御)を行うことで、第1回転速度推定値ωest´を算出して出力する。
ローパスフィルタ48は、PLL演算部46から出力された第1回転角速度推定値ωest´の高周波成分を除いて回転角速度推定値ωestを出力する。
ローパスフィルタ48は、PLL演算部46から出力された第1回転角速度推定値ωest´の高周波成分を除いて回転角速度推定値ωestを出力する。
積分演算部49は、ローパスフィルタ48から出力された回転角速度推定値ωestを積分した回転位相角推定値θest´を算出して、出力する。積分演算部49から出力される回転位相角推定値θest´が推定値演算部40の出力となり、加算器60へ入力される。
極性判定部50は、インバータ主回路部INVを起動する際の初期推定において、例えば、同期機Mの回転子周波数に同期した電流を通電したときに、発生する回転子周波数に同期した磁束もしくは電圧もしくはその両方を用いて、磁石磁極判別を行い、判別結果に基づく回転位相角の推定値θest´の補正値θNSを出力する。極性判定部50は、例えば、d軸方向の電流を通電した際に発生するd軸基本波磁束もしくは基本波磁束により発生するq軸電圧を用いて磁石磁極判別を行うことができる。
本実施形態において、同期機Mでは、+d軸に電流を通電した場合と−d軸に電流を通電した場合とでd軸鎖交磁束の大きさに差異が生じる。そこで、極性判定部50は、上記のd軸鎖交磁束の差異に基づいて同期機Mの磁石極性判別を行う。なお、上記d軸鎖交磁束の差異は、磁石量が少ない同期機だけでなく、磁石量が多い同期機においても発生する。
極性判定部50は、q軸電圧設定値Vd_FFを[数式14]で、NS判別の基準となる電圧差分ΔVq_NSを[数式15]で、それぞれ演算する。なお、q軸電圧実際値Vqcは、[数式16]のように表すことができる。
d軸インダクタンス設定値Ld_FFは、+d軸方向に電流を通電したときのd軸インダクタンスと、−d軸方向に電流を通電したときのd軸インダクタンスとの間の値であればよい。本実施形態では、d軸インダクタンス設定値Ld_FFは、例えば、+d軸に電流を通電した場合のd軸インダクタンスと、−d軸に電流を通電した際のd軸インダクタンスとの平均値とする。
d軸インダクタンス設定値Ld_FFを設定し、電流制御が正確に行われている場合、電流指令値id_refはd軸電流実際値idcと等しくなり、電圧差分ΔVq_NSは[数式17]の関係となる。
極性判定部50は、上記[数式17]の関係に則って回転位相、速度推定手段で推定した回転位相角の補正値θNSを出力する。
極性判定部50は、q軸電圧Vqcと、d軸電流指令id_refと、回転速度推定値ωestとを入力とする。極性判定部50は、上記[数式17]により電圧差分ΔVq_NSを演算し、電圧差分ΔVq_NSがゼロ以上か否かを判定し、判定結果に応じた補正値θNSを出力する。すなわち、極性判定部50は、電圧差分ΔVq_NSがゼロ以上のときに補正値θNSを0°とし、電圧差分ΔVq_NSがゼロ未満のときに補正値θNSをπ(180°)とする。極性判定部50から出力された補正値θNSは、加算器60に入力される。
極性判定部50は、q軸電圧Vqcと、d軸電流指令id_refと、回転速度推定値ωestとを入力とする。極性判定部50は、上記[数式17]により電圧差分ΔVq_NSを演算し、電圧差分ΔVq_NSがゼロ以上か否かを判定し、判定結果に応じた補正値θNSを出力する。すなわち、極性判定部50は、電圧差分ΔVq_NSがゼロ以上のときに補正値θNSを0°とし、電圧差分ΔVq_NSがゼロ未満のときに補正値θNSをπ(180°)とする。極性判定部50から出力された補正値θNSは、加算器60に入力される。
加算器60は、推定値演算部40から出力された回転位相角推定値θestと、極性判定部50から出力された補正値θNSとを加算し、補正値θNSにより回転位相角推定値θestが補正される。補正後の回転位相角推定値θestはdq/αβ変換部20、および、αβ/dq変換部62に供給され、ベクトル変換に用いられる。
図6は、実施形態のインバータ制御装置の動作の一例を説明するための図である。
ここでは、インバータ制御装置1が停止した状態から、回転位相角および回転速度を推定して再起動する惰行再起動の動作を一例として説明する。
ここでは、インバータ制御装置1が停止した状態から、回転位相角および回転速度を推定して再起動する惰行再起動の動作を一例として説明する。
本実施形態のインバータ制御装置1では、起動時の初期推定において極性判定を行っている。すなわち、推定値演算部40による回転位相角推定値の演算および極性判定部50による磁石磁極判別は、インバータ主回路部INVの起動指令に応じて実行される。起動前および初期推定完了後に初期化されるまでの間は、インバータ主回路部INVは停止した状態であり、同期機Mはフリーランとなっている。
指令生成部CTRは、モータに通電する電流指令id_ref、iq_refと電流位相β_refとを設定し、各種フラグ(電流通電フラグ(Ion)、初期化フラグ、初期推定フラグ、NS判別演算フラグ、NS判別結果反映フラグ、通常制御フラグ)を制御する。指令生成部CTRは、初期化フラグ、初期推定フラグ、通常制御フラグおよびNS判別演算フラグを推定値演算部40に供給する。指令生成部CTRは、NS判別結果反映フラグを極性判定部50に供給する。指令生成部CTRは、電流通電フラグ(Ion)を電流指令生成部10に供給する。
指令生成部CTRが起動指令を受けると、同時に初期化フラグを立ち上がる。続いて、指令生成部CTRは、初期推定フラグと電流通電フラグ(Ion)とを立ち上げ、初期化フラグを立ち下げる。
推定値演算部40は、初期化フラグが立ち上がると、回転位相角と回転速度との推定値を初期値に設定し初期化する。続いて初期推定フラグが立ち上がると、回転位相角推定値θestおよび回転速度推定値ωestの演算を開始する。
続いて、指令生成部CTRは、NS判別演算フラグを立ち上げる。
極性判定部50は、NS判別演算フラグが立ち上がると、電圧差分ΔVq_NSの演算を行う。
極性判定部50は、NS判別演算フラグが立ち上がると、電圧差分ΔVq_NSの演算を行う。
続いて、指令生成部CTRは、初期推定フラグとNS判別演算フラグとを立ち下げて、NS判別結果反映フラグを立ち上げる。
極性判定部50は、NS判別結果反映フラグが立ち上がると、[数式17]に示すように電圧差分ΔVq_NSの値に応じて回転位相角の補正値θNSを出力する。
極性判定部50は、NS判別結果反映フラグが立ち上がると、[数式17]に示すように電圧差分ΔVq_NSの値に応じて回転位相角の補正値θNSを出力する。
続いて、指令生成部CTRは、NS判別結果反映フラグを立ち下げて、初期化フラグを立ち上げる。
推定値演算部40は、初期化フラグが立ち上がると、回転位相角と回転速度との推定値θest、ωestを初期値に設定し初期化する。
推定値演算部40は、初期化フラグが立ち上がると、回転位相角と回転速度との推定値θest、ωestを初期値に設定し初期化する。
続いて、指令生成部CTRは、初期化フラグを立ち下げて、通常制御フラグを立ち上げる。推定値演算部40は、通常制御フラグが立ち上がると初期推定処理を終了し、力行駆動あるいは回生駆動の動作を開始する。
続いて、上述の実施形態のインバータ制御装置1についてシミュレーションを行った結果の一例について説明する。
続いて、上述の実施形態のインバータ制御装置1についてシミュレーションを行った結果の一例について説明する。
図7および図8は、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて、回転位相角推定値を演算したときのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図7および図8に示す例では、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式13]における設定値とし、上段に同期機Mに通電するd軸電流およびq軸電流と、これらの推定値であるdc軸電流およびqc軸電流を示し、中段に実際の回転位相角θと、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて演算した、回転位相角推定値θestを示し、下段に同期機Mの出力トルクを示している。
図7および図8に示す例では、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式13]における設定値とし、上段に同期機Mに通電するd軸電流およびq軸電流と、これらの推定値であるdc軸電流およびqc軸電流を示し、中段に実際の回転位相角θと、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて演算した、回転位相角推定値θestを示し、下段に同期機Mの出力トルクを示している。
図7および図8では、図6に示す電流通電フラグIonが立ち上がったタイミングから、NS判別演算フラグが立ち上がるタイミングまでの期間を含む期間のシミュレーション結果を示している。例えば、このシミュレーションでは、インバータ制御装置は、0秒の時点で電流通電を開始し、回転位相角および回転速度の推定値の演算を開始し、0.1秒の時点で極性判別の演算を開始している。
図7に示す例では、回転位相角の実際値と推定値とがずれていない場合を示している。図8に示す例では、回転位相角の実際値と推定値とが180°ずれている場合を示している。このシミュレーション結果によれば、図7および図8のいずれの場合についても、回転位相角推定値の演算が安定して実行された。
続いて、上述の実施形態のインバータ制御装置1の比較例について、シミュレーションを行った結果について説明する。
図9および図10は、q軸方向の拡張誘起電圧を用いて、回転位相角推定値を演算したときのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図9および図10は、q軸方向の拡張誘起電圧を用いて、回転位相角推定値を演算したときのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図9および図10に示す例では、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式7]における設定値とし、上段に同期機Mに通電するd軸電流およびq軸電流と、これらの推定値であるdc軸電流およびqc軸電流を示し、中段に実際の回転位相角θと、d軸方向の拡張誘起電圧を用いて演算した、回転位相角推定値θestを示し、下段に同期機Mの出力トルクを示している。
図9および図10では、図6に示す電流通電フラグIonが立ち上がったタイミングから、NS判別演算フラグが立ち上がるタイミングまでの期間を含む期間のシミュレーション結果を示している。例えば、このシミュレーションでは、インバータ制御装置は、0秒の時点で電流通電を開始し、回転位相角および回転速度の推定値の演算を開始し、0.1秒の時点で極性判別の演算を開始している。
図9に示す例では、回転位相角の実際値と推定値とがずれていない場合を示している。図10に示す例では、回転位相角の実際値と推定値とが180°ずれている場合を示している。
この例では、回転位相角と実際値とが180°ずれた場合、すなわち回転位相角推定値θestがNS反転した角度に収束し、誤差演算部44にて設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が乖離した状態となる。図10に示す結果によれば、電流リプルが発生したタイミング等において回転位相角推定値の演算が不安定化してしまい、その後、回転位相角推定値が実際値と180°ずれた状態に収束しなかった。
上記のように、本実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムでは、電流制御方法として電流追従型PWM制御を用いており、電流指令値と電流検出値との差分ベクトルの位相に応じてインバータ主回路部INVへのゲート指令を生成する。このゲート指令は非ゼロの電圧ベクトルとなっており、インバータ主回路部INVが出力し得る最大の電圧を同期機Mに印加することにより高調波電流を増加することができる。
この時、上述のようにd軸方向の拡張誘起電圧に基づいた回転位相角推定を行うと、電流制御を行いつつ高調波電流を増加できることから、同期機Mが停止している状態を含む低速から最大速度で動作する状態について、1つの数式([数式13])にて回転位相角推定値を演算し、インバータ主回路部INVを制御することが可能となる。
すなわち、本実施形態によれば、精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供することができる。
すなわち、本実施形態によれば、精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供することができる。
また、上記実施形態では、インバータ主回路部INVのゲート指令を電流ベクトル偏差(Δiα、Δiβ)に応じて決定する電流追従型PWM制御を採用したドライブシステムについて説明したが、電流を制御する他の方法を採用した場合であっても同様の効果を得ることができる。例えば、電流ベクトル偏差(Δiα、Δiβ)に基づいてインバータ電圧指令を演算するPI制御のような方法でも同様な効果が得られる。
また、上記実施形態では、インバータ主回路部INVのゲート指令を電流ベクトル偏差(Δiα、Δiβ)の角度θiから直接決定する方法を例としたが、電流を制御するためのゲート指令が決定できれば、例えば三角波比較変調や空間ベクトル変調のような方法を採用しても上述の実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では回転座標系上で回転位相角誤差Δθを計算し、その情報から回転位相角推定値θestと回転速度推定値ωestとを演算する方法を例として説明したが、例えば特許文献1に開示されているように回転位相角を直接演算する方法であっても同様な効果が得られる。回転位相角を直接演算する場合、回転位相角誤差ΔθをPLL制御および積分せずに、回転位相角を直接演算することができる。この場合にも、モータパラメータを使用して位相角を演算するため、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第2実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムについて、図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、第2実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
図11は、第2実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
本実施形態のインバータ制御装置は推定方式切替部80をさらに備えている。
推定方式切替部80は、誤差演算部44へ推定方式切替信号を出力する。推定方式切替部80は、インバータ制御装置やセンサレスドライブシステムの外部に設けられたディップスイッチなどのスイッチ信号を読み取る、もしくは、d軸微分インダクタンスLdhの値に応じて、推定方式切替信号をの値を「1」もしくは「0」とに切り替えて出力する。
推定方式切替部80は、誤差演算部44へ推定方式切替信号を出力する。推定方式切替部80は、インバータ制御装置やセンサレスドライブシステムの外部に設けられたディップスイッチなどのスイッチ信号を読み取る、もしくは、d軸微分インダクタンスLdhの値に応じて、推定方式切替信号をの値を「1」もしくは「0」とに切り替えて出力する。
推定方式切替信号は、例えば、磁石電圧が定格運転時の電圧降下と比較して十分に小さい同期機がインバータ主回路部INVに電気的に接続された、すなわち、インバータ主回路部INVの出力により駆動される場合には「0」であり、そうでない場合は「1」である。
また、推定方式切替部80は、d軸微分インダクタンスLdhに基づいて、オートチューニングを行ってもよい。推定方式切替部80は、推定方式切替信号を決定するためにd軸微分インダクタンスLdhを外部から取得してもよく、上述の[数式2]の電圧方程式によりd軸微分インダクタンスLdhを演算してもよい。[数式2]によりd軸微分インダクタンスLdhを演算する場合には、推定方式切替部80は、電圧Vd、Vq、検出電流Id、Iq、巻線抵抗R、電気角角速度ωe、dq軸平均インダクタンスLda,Lqa、磁石磁束Φ、を取得することにより、d軸微分インダクタンスLdhを演算することができる。
推定方式切替部80は、例えば、−d軸方向および+d軸方向に通電した際の、それぞれのd軸微分インダクタンスLdhの比(d軸微分インダクタンスの設定値に対するd軸微分インダクタンスの実際値の比)が30%以上かい離するときに推定方式切替信号を「0(第1レベル)」とし、d軸微分インダクタンスLdhの比が30%未満のときに推定方式切替信号を「1(第2レベル)」とする。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式7]における設定値とし、回転位相角推定値θestがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなる。このとき、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が30%以上かい離しているときに、推定方式切替部80は推定方式切替信号を「0」とし、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が30%未満であるときに、推定方式切替部80は推定方式切替信号を「1」とする。
例えば、−d軸方向に同期機Mの定格の10%の電流を通電した際のd軸微分インダクタンスLdhを上記[数式7]における設定値とし、回転位相角推定値θestがNS反転した角度に収束した場合、実際には+d軸方向に電流が通電していることとなる。このとき、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が30%以上かい離しているときに、推定方式切替部80は推定方式切替信号を「0」とし、設定したd軸微分インダクタンス(設定値)に対して実際のd軸微分インダクタンス(実際値)が30%未満であるときに、推定方式切替部80は推定方式切替信号を「1」とする。
誤差演算部44は、推定方式切替信号の値に応じて、回転位相角誤差Δθの演算方法を切替える。誤差演算部44は、例えば、推定方式切替信号の値が「1」のときに、[数式7](第1方式)により回転位相角誤差Δθを演算して出力し、推定方式切替信号の値が「0」のときに、[数式13](第2方式)により回転位相角誤差Δθを演算して出力する。
なお、誤差演算部44は、推定方式切替信号により、[数式7]を用いる方式ではない他の方式と[数式13]を用いる方式とを切替えて、回転位相角誤差Δθを演算するように構成されても構わない。
また、本実施形態では、[数式7]もしくは[数式13]を用いて回転位相角誤差Δθを演算する方法について説明したが、回転位相角推定値を演算可能な方法であれば別の1又は複数の方式を更に採用して、推定方式切替信号の値に基づいて、3つ以上の演算方式を切替えてもよい。
他の演算方式としては、例えば、[数式12]のd軸成分を用いて、下記[数式18]のように回転位相角誤差Δθを演算する方式を採用してもよい。
また、例えば特許文献1に記載のようにαβ座標系(固定座標系)にて回転位相角推定値を直接演算する方式を採用してもよい。
本実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムによれば、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態のインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムによれば、d軸電流の向き(−d軸方向か+d軸方向か)によりd軸微分インダクタンスが大きく変化する同期機については、[数式13]を用いる方式で回転位相角推定値および回転速度推定値を演算し、例えば誘起電圧が大きいために[数式9]の式展開ができない同期機については[数式7]を用いる方式で回転位相角推定値および回転速度推定値を演算することができる。これにより、同期機の特性によらず回転位相角推定値の演算を安定して行うことができる。
すなわち、本実施形態によれば、精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供することができる。
すなわち、本実施形態によれば、精度よく電流制御を行うインバータ制御装置およびセンサレスドライブシステムを提供することができる。
なお、上記第1および第2実施形態において、インバータ制御装置1およびセンサレスドライブシステムの各構成は、ハードウエアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現されてもよい。インバータ制御装置1は、CPUやMPUなどのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムを格納したメモリと、を備え、上述のインバータ制御装置1の動作を行うプログラムをプロセッサにより実行するように構成されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…インバータ制御装置、10…電流指令生成部、20…dq/αβ変換部、30…電流制御部、32…減算器、34…減算器、36…角度演算部、38…ゲート指令生成部、38A…テーブル、38B…3相/αβ変換部、40…推定値演算部、42…αβ/dq変換部、44…誤差演算部、46…PLL演算部、48…ローパスフィルタ、49…積分演算部、50…極性判定部、60…加算器、62…αβ/dq変換部、70…3相/αβ変換部、80…推定方式切替部、M…同期機、100…固定子、200…回転子、3…磁石、4…エアギャップ、BR1…外周ブリッジ、BR2…センターブリッジ、V0〜V7…電圧ベクトル、V0、V7…ゼロ電圧ベクトル、V1〜V6…基本電圧ベクトル。
Claims (6)
- 電流指令値を生成する電流指令生成部と、
インバータ主回路部から出力される交流電流の電流値を検出する電流検出部と、
前記電流指令値と前記電流検出部で検出した電流値とが一致するように前記インバータ主回路部のゲート指令を生成し、前記ゲート指令に基づいて前記インバータ主回路部の出力電圧目標ベクトルを演算するゲート指令生成部と、
前記インバータ主回路部が起動する際の初期推定において、前記電流検出部で検出された電流値と前記出力電圧目標ベクトルとに基づいて、回転位相角推定値を演算する推定値演算部と、を有し、
前記推定値演算部は、前記インバータ主回路部が停止状態から起動する際に、回転子周波数に同期した電流を通電したときの前記出力電圧目標ベクトルと前記電流検出部で検出された電流値とを用い、巻線抵抗とd軸平均インダクタンスとq軸微分インダクタンスとを設定値として、前記回転位相角推定値の誤差を演算し、前記誤差がゼロとなるように前記回転位相角推定値を演算すること、を特徴とするインバータ制御装置。 - 前記回転子周波数に同期した電流は、インダクタンスが最小となる方向に通電する電流である、を特徴とする請求項1記載のインバータ制御装置。
- 前記推定値演算部は、前記誤差がゼロとなる回転角速度推定値を演算し、
前記回転角速度推定値に基づいて回転子の極性判別を行い、前記回転位相角推定値の補正値を出力する極性判別部と、
前記回転位相角推定値と前記補正値とを加算して出力する加算器と、を更に備えた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインバータ制御装置。 - 前記推定値演算部へ推定方式切替信号を出力する推定方式切替部を更に有し、
前記推定値演算部は、前記推定方式切替信号に応じて、前記巻線抵抗と、q軸平均インダクタンスと、d軸微分インダクタンスとを設定値として前記誤差を演算する第1方式と、前記巻線抵抗と、d軸平均インダクタンスと、q軸微分インダクタンスとを設定値として前記誤差を演算する第2方式と、を切替えて、前記回転位相角推定値を演算する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のインバータ制御装置。 - 前記推定方式切替部は、−d軸方向および+d軸方向に通電した際の、それぞれのd軸微分インダクタンスの設定値に対するd軸微分インダクタンスの実際値の比が30%以上かい離するときに第1レベルとなり、前記比が30%未満のときに第2レベルとなる信号である、ことを特徴とする請求項4記載のインバータ制御装置。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載のインバータ制御装置と、
同期機と、
前記同期機を駆動する前記インバータ主回路部と、を備えたことを特徴とするセンサレスドライブシステム。
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