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JP2018194128A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

自動変速機の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】摩擦締結要素の掴み換えを行う際の、摩擦締結要素の過度な発熱を防止することが可能な変速機の制御装置を提供する。【解決手段】自動変速機の制御装置は、複数の摩擦締結要素の掴み換えに先だって変速機の出力トルクの低減が行われる変速の実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、前記判断部によって前記変速の実行条件が成立したと判断された場合に、前記変速を実行する実行部と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、自動変速機の制御装置に関する。
従来、複数の摩擦締結要素の掴み換えを伴って変速する自動変速機が種々知られている。例えば、エンジンと奇数段ギヤ列との間に設けられた第1クラッチ(摩擦締結要素)と、エンジンと偶数段ギヤ列との間に設けられた第2クラッチ(摩擦締結要素)とを備え、エンジンからの駆動力を第1クラッチ又は第2クラッチを介して出力側に伝達するデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が知られている。また、遊星歯車を構成する要素同士の相対回転を停止させるクラッチ(摩擦締結要素)と、当該要素の回転を停止させるブレーキ(摩擦締結要素)とを備え、エンジンからの駆動力を遊星歯車を介して出力側に伝達する自動変速機(AT)が知られている。
これらの自動変速機における複数の摩擦締結要素の掴み換え、すなわち、互いに並行して行われる一方の摩擦締結要素の解放と他方の摩擦締結要素の締結は、各摩擦締結要素において摩擦熱を発生させる。過度な摩擦熱の発生は摩擦締結要素を損傷させる。よって何らかの熱対策が必要である。一方、変速時にドライバが予測しない加減速感をドライバに与えることはドライバビリティを低下させるので望ましくない。
そこで、摩擦締結要素の掴み換え時における摩擦締結要素の損傷の防止とドライバビリティの両立を図った発明がこれまでに提案されている。
例えば、特許文献1には、DCT車両の変速制御方法に係る発明が開示されている。当該方法は、「DCT車両の発進制御中にシフトアップ変速指令の発生有無を確認する変速指令確認段階と;上記変速指令確認段階の遂行結果、発進制御中にシフトアップ変速指令発生時には、エンジンと同期しようとする入力軸の回転数とエンジン回転数の間の回転数差が所定の基準回転数次以内であるか判断するスリップ判断段階と;上記スリップ判断段階の遂行結果、上記入力軸の回転数とエンジン回転数の差が上記基準回転数次以内の場合、上記発進制御を終了し変速制御に転換する制御転換段階」(請求項1)を含んでいる。
特開2014−55666号公報
特許文献1に記載の方法によれば、特許文献1の図3に示されるように、掴み換えの前後を通して、解放されるクラッチにおける変速機の入力軸の回転数は上昇し続ける。すなわち、変速中も変速前と変わらず車両は加速し続ける。これは、掴み換え時においても摩擦締結要素は比較的高いトルク容量を有していることを意味している。したがって、変速時、摩擦締結要素の温度は過度に上昇するおそれがある。
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、摩擦締結要素の掴み換えを行う際の、摩擦締結要素の過度な発熱を防止することが可能な自動変速機の制御装置を提供することを課題とする。
本発明に係る自動変速機の制御装置は、複数の摩擦締結要素の掴み換えに先だって自動変速機の出力トルクの低減が行われる変速の実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、前記判断部によって前記変速の実行条件が成立したと判断された場合に、前記変速を実行する実行部と、を備える。
本発明によれば、摩擦締結要素の掴み換えを行う際の、摩擦締結要素の過度な発熱を防止することが可能な自動変速機の制御装置を提供することができる。
本発明に係る自動変速機の制御装置が適用された車両を示す概略構成図 本発明に係る自動変速機の制御装置の機能ブロック図 本発明に係る自動変速機の制御装置による制御の流れを示すフローチャート 通常変速によってアップシフトが行われるときのタイムチャート 保護変速によってアップシフトが行われるときのタイムチャート 通常変速によってダウンシフトが行われるときのタイムチャート 保護変速によってダウンシフトが行われるときのタイムチャート
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は一例であり、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。
まず、図1を参照して、車両の全体構成について説明する。図1に示すように、車両1は、エンジン10と、第1クラッチ20、第2クラッチ30、変速部40及び油圧回路90からなるDCT2(自動変速機)と、制御装置50とを備えている。そして、DCT2の出力側に、不図示のプロペラシャフトおよびデファレンシャルギヤを介して、駆動輪が動力伝達可能に連結されている。
エンジン10は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン10の出力回転数(以下、「エンジン回転数」と記載する。)および出力トルクは、アクセル開度センサ101によって検出されるアクセルペダルのアクセル開度Accに基づいて制御される。また、エンジン出力軸11には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ102が設けられている。
第1クラッチ20は、複数の第1入力側クラッチ板21および複数の第1出力側クラッチ板22を有する油圧作動式の湿式多板クラッチである。第1入力側クラッチ板21は、エンジン10によって回転させられるエンジン出力軸11と一体回転する。第1出力側クラッチ板22は、変速部40の第1入力軸41と一体回転する。
第1クラッチ20は、不図示のリターンスプリングによって断方向に付勢されており、油圧回路90から供給されるクラッチ作動油圧によって第1ピストン23が移動して、第1入力側クラッチ板21および第1出力側クラッチ板22を圧接することで接とされる。第1クラッチ20が接とされることで、エンジン10の動力が第1入力軸41に伝達される。第1クラッチ20の断接は、制御装置50によって制御される。なお、第1クラッチ20は乾式単板クラッチであってもよい。
第2クラッチ30は、複数の第2入力側クラッチ板31および複数の第2出力側クラッチ板32を有する油圧作動式の湿式多板クラッチである。第2入力側クラッチ板31は、エンジン出力軸11と一体回転する。第2出力側クラッチ板32は、変速部40の第2入力軸42と一体回転する。
第2クラッチ30は、不図示のリターンスプリングによって断方向に付勢されており、油圧回路90から供給されるクラッチ作動油圧によって第2ピストン33が移動して、第2入力側クラッチ板31および第2出力側クラッチ板32を圧接することで接とされる。第2クラッチ30が接とされることで、エンジン10の動力が第2入力軸42に伝達される。第2クラッチ30の断接は、制御装置50によって制御される。なお、第2クラッチ30は乾式単板クラッチであってもよい。以下、必要に応じ、第1入力側クラッチ板21、第2入力側クラッチ板31、第1出力側クラッチ板22及び第2出力側クラッチ板32を単に「クラッチ板」と記載する。
第2クラッチ30は、第1クラッチ20の外周側に設けられている。また、第1入力軸41には、軸方向油路および1つまたは複数の径方向油路からなる不図示の潤滑油路が設けられており、第1入力軸41から潤滑油が放射状に噴射されることで、第1クラッチ20の各クラッチ板が冷却され、さらに、第2クラッチ30の各クラッチ板が冷却される。第2クラッチ30の各クラッチ板を冷却した潤滑油は、第2クラッチ30の外径側等から流出し、油圧回路90が備える不図示のオイルパンに戻る。なお、本実施形態では、第2クラッチ30が第1クラッチ20の外周側に設けられているものを例に挙げて説明を行うが、第1クラッチ20および第2クラッチ30の配置関係はこれに限定されない。具体的には、例えば、第2クラッチ30を、第1クラッチ20の後側に配置するようにしてもよい。
変速部40は、第1クラッチ20の出力側に接続された第1入力軸41と、第2クラッチ30の出力側に接続された第2入力軸42とを備えている。また、変速部40は、第1入力軸41および第2入力軸42と平行に配置された副軸43と、第1入力軸41および第2入力軸42と同軸上に配置された出力軸44と、を備えている。また、出力軸44の後端側には、車両1の速度である車速Vを検出する車速センサ103が設けられている。
変速部40は、第1変速部60と、第2変速部70と、前後進切替部80と、を備えている。第1変速部60は、第1高速ギヤ列61と、第1低速ギヤ列62と、第1連結機構63とを備えている。
第1高速ギヤ列61は、第1入力軸41に対して相対回転可能に設けられた第1入力ギヤ61aと、第1入力ギヤ61aと噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第1副ギヤ61bとからなる。
第1低速ギヤ列62は、第1入力軸41に対して相対回転可能に設けられた第2入力ギヤ62aと、第2入力ギヤ62aと噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第2副ギヤ62bとからなる。
第1連結機構63は、不図示のギヤシフトアクチュエータによって第1スリーブ63aを軸方向(図1の左右方向)に移動させることによって、第1入力ギヤ61aおよび第2入力ギヤ62aを択一的に第1入力軸41と一体回転させる。
第2変速部70は、第2高速ギヤ列71と、第2低速ギヤ列72と、第2連結機構73とを備えている。第2高速ギヤ列71は、第2入力軸42に対して相対回転可能に設けられた第3入力ギヤ71aと、第3入力ギヤ71aと噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第3副ギヤ71bとからなる。
第2低速ギヤ列72は、第2入力軸42に対して相対回転可能に設けられた第4入力ギヤ72aと、第4入力ギヤ72aと噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第4副ギヤ72bとからなる。
第2連結機構73は、不図示のギヤシフトアクチュエータによって第2スリーブ73aを軸方向に移動させることによって、第3入力ギヤ71aおよび第4入力ギヤ72aを択一的に第2入力軸42と一体回転させる。
前後進切替部80は、前進ギヤ列81と、後進ギヤ列82と、第3連結機構83とを備えている。前進ギヤ列81は、出力軸44に対して相対回転可能に設けられた第1出力ギヤ81aと、第1出力ギヤ81aと噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第5副ギヤ81bとからなる。
後進ギヤ列82は、出力軸44に対して相対回転可能に設けられた第2出力ギヤ82aと、第2出力ギヤ82aとアイドラギヤ82cを介して噛合し、副軸43と一体回転するように設けられた第6副ギヤ82bとからなる。
第3連結機構83は、不図示のギヤシフトアクチュエータによって第3スリーブ83aを軸方向に移動させることによって、第1出力ギヤ81aおよび第2出力ギヤ82aを択一的に出力軸44と一体回転させる。
ここで、DCT2における動力伝達経路について簡単に説明する。1速は、第1連結機構63によって第2入力ギヤ62aと第1入力軸41とを連結し、第3連結機構83によって第1出力ギヤ81aと出力軸44とを連結し、かつ第1クラッチ20を接とすることで成立する。これにより、エンジン10の動力は、第1クラッチ20から、第1入力軸41、第1低速ギヤ列62、副軸43、前進ギヤ列81、出力軸44の順に伝達される。
2速は、第2連結機構73によって第4入力ギヤ72aと第2入力軸42とを連結し、第3連結機構83によって第1出力ギヤ81aと出力軸44とを連結し、かつ第2クラッチ30を接とすることで成立する。これにより、エンジン10の動力は、第2クラッチ30から、第2入力軸42、第2低速ギヤ列72、副軸43、前進ギヤ列81、出力軸44の順に伝達される。
3速は、第1連結機構63によって第1入力ギヤ61aと第1入力軸41とを連結し、第3連結機構83によって第1出力ギヤ81aと出力軸44とを連結し、かつ第1クラッチ20を接とすることで成立する。これにより、エンジン10の動力は、第1クラッチ20から、第1入力軸41、第1高速ギヤ列61、副軸43、前進ギヤ列81、出力軸44の順に伝達される。
4速は、第2連結機構73によって第3入力ギヤ71aと第2入力軸42とを連結し、第3連結機構83によって第1出力ギヤ81aと出力軸44とを連結し、かつ第2クラッチ30を接とすることで成立する。これにより、エンジン10の動力は、第2クラッチ30から、第2入力軸42、第2高速ギヤ列71、副軸43、前進ギヤ列81、出力軸44の順に伝達される。
制御装置50は、CPU51、メモリ52、並びに、種々のセンサ及び装置と接続され信号を授受する図示しないインタフェース等から構成されている。CPU51はメモリ52に記憶されているプログラムを実行することにより、エンジン10を制御するとともに、油圧回路90の制御を介してDCT2を制御する。具体的には、CPU51はメモリ52に記憶されているプログラムを実行することにより、図2に示されるように、変速条件成立判断部53、保護変速実行判断部54(本発明における判断部に相当)及び実行部55として機能する。
変速条件成立判断部53は、アクセル開度Acc、車速V、及び、メモリ52に記憶されている変速マップ等に基づいて、アップシフト又はダウンシフトの変速条件が成立したか否かを判断する。
保護変速実行判断部54は、第1クラッチ20及び第2クラッチ30(複数の摩擦締結要素)の掴み換えに先だってDCT2の出力トルクの低減が行われる変速の実行条件が成立したか否かを判断する。以下、必要に応じ、このような変速を「保護変速」と記載する。
実行部55は、保護変速実行判断部54によって保護変速の実行条件が成立したと判断された場合に、保護変速を実行する。
また、実行部55は、変速条件成立判断部53によって変速条件が成立したと判断されたものの、保護変速実行判断部54によって保護変速の実行条件は成立していないと判断された場合には、保護変速とは異なる変速を実行する。このときに行われる変速は、第1クラッチ20及び第2クラッチ30の掴み換えに先立ってDCT2の出力トルクが低減されない変速である。以下、必要に応じ、このような変速を「通常変速」と記載する。
実行部55は、油圧回路90を介して第1クラッチ20の断接、第2クラッチ30の断接、並びに、第1スリーブ63a、第2スリーブ73a及び第3スリーブ83aの移動を行うことによって、保護変速及び通常変速のいずれか一方でアップシフト又はダウンシフトを実行する。
なお、上に説明した各機能部の全てが制御装置50によって実現される必要はなく、上に説明した各機能部のうちの何れか1つ以上が制御装置50とは別の他の制御装置によって実現されてもよい。例えば、制御装置50は保護変速実行判断部54及び実行部55として機能するように構成されていてもよい。また、上に説明した各機能部のうち何れか1つが他の機能部の機能をも兼ねるように構成されていても良いことは勿論である。
続いて、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る変速機の制御装置による変速制御について詳細に説明する。
まず、変速条件成立判断部53によって、アップシフト又はダウンシフトの変速条件が成立したか否かが判断される(S1)。変速条件が成立していない(S1においてNO)と判断される間は、変速条件が成立した(S1においてYES)と判断されるまで、変速条件が成立したか否かの判断が繰り返される。
変速条件が成立したと判断されると、保護変速の実行条件が成立しているか否かが保護変速実行判断部54によって判断される(S2)。保護変速の実行条件は、例えば、第1クラッチ20及び第2クラッチ30のうち、掴み換えによって締結される側のクラッチの変速開始時の温度、又は、当該クラッチの変速完了時の推定温度が、あらかじめ定められた閾値以上であることとすることができる。
保護変速実行判断部54によって保護変速の実行条件が成立している(S2においてYES)と判断されると、実行部55はアップシフト又はダウンシフトの保護変速を実行する(S3)。一方、保護変速実行判断部54によって保護変速の実行条件が成立していない(S2においてNO)と判断されると、実行部55はアップシフト又はダウンシフトの通常変速を実行する(S4)。
保護変速について説明する前に、通常変速のタイムチャートを示す図4を参照しながら、通常変速について説明する。ここでは、3速から4速へのアップシフトが行われる場合を例に挙げて説明する。
通常変速が開始されると、まず、中段のチャートに示されるように、実行部55は第1クラッチ20のトルク容量(伝達可能トルク)をエンジントルクまで低減する。なおこのとき、エンジントルクはドライバ要求エンジントルクに一致している。
続いて、実行部55は、第1クラッチ20のトルク容量を徐々に低減させつつ、第2クラッチ30のトルク容量を徐々に増加させる。すなわち、クラッチの掴み換えが行われる。
その結果、下段のチャートに示されるように、第1クラッチ20及び第1変速部60を介して出力軸44に伝達されるトルクである第1クラッチ系統出力トルクは徐々に減少する。また、第2クラッチ30及び第2変速部70を介して出力軸44に伝達されるトルクである第2クラッチ系統出力トルクは徐々に増加する。出力軸44から出力されるトルクである変速機出力トルク(DCT2の出力トルク)は、第1クラッチ系統出力トルクと第2クラッチ系統出力トルクの和となる。通常変速実行時、実行部55は、掴み換えの前後を通じて、変速機出力トルクがドライバ要求出力トルクに一致するように、各クラッチのトルク容量を制御する。
第1クラッチ系統出力トルクが0になり、変速機出力トルクが第2クラッチ系統出力トルクと等しくなると、実行部55は、次のように制御を行う。すなわち、中段のチャートに示されるように、実行部55は、所定時間、第2クラッチ30のトルク容量を、クラッチの掴み換えが行われていたときのエンジントルクと同じ値に維持するとともに、エンジントルクを所定量低減する。その結果、上段のチャートに示されるように、エンジン回転数は第1入力軸41の回転数から第2入力軸42の回転数に遷移する。エンジン回転数が第2入力軸42の回転数に一致すると、いずれのクラッチにおいても滑りが生じていない状態となる。
エンジン回転数が第2入力軸42の回転数に一致すると、実行部55は、中段のチャートに示されるように、第2クラッチ30のトルク容量を、滑りが生じないように所定量増加させる。これにより、4速が達成され通常変速が完了する。
なお、通常変速実行中は、変速機出力トルクがドライバ要求出力トルクに一致している。よって、変速実行中にドライバに違和感を与えることは少ない。ただし、変速機出力トルクが比較的高い結果、掴み換え時に各クラッチで吸収されるエネルギも比較的大きくなるので、各クラッチの温度が高くなる傾向がある。
次に、保護変速のタイムチャートを示す図5を参照しながら、保護変速について説明する。ここでは、3速から4速へのアップシフトが行われるものとする。
保護変速が開始されると、まず、下段のチャートに示されるように、実行部55は変速機出力トルクをドライバ要求出力トルクから、所定の出力トルクまで低減させる。具体的には、中段のチャートに示されるように、実行部55はエンジントルクを所定値まで低減させるとともに、締結されているクラッチである第1クラッチ20のトルク容量を、当該所定値まで低減させる。
上記所定の出力トルクは、実験結果、車両1の使われ方、車種等に基づいてあらかじめ定められている。また、掴み換えによって締結される側のクラッチの変速開始時の温度、又は、当該クラッチの変速完了時の推定温度と、あらかじめ定められた閾値との差に基づいて決定することができる。
いずれの場合であっても、上記所定の出力トルクは、保護変速を開始するときの車速を維持可能なトルクであるゼロ加速度出力トルク又はそれよりも大きなトルクとすることが好ましい。そのようにすることで、実行部55が変速機出力トルクを低減させても、車両1は減速することなく走行することができる。例えば、登坂路走行中に保護変速が行われる場合も、車両1は失速することなく走行を継続することができる。なお、ゼロ加速度出力トルクは次の数式1から求めることができる。
Figure 2018194128
数式1において、T0acc0はゼロ加速度出力トルク、rはタイヤ半径、iはファイナルギア比、記号^付Faeroは空気抵抗推定値、記号^付Frollはころがり抵抗推定値、gは重力加速度、記号^付mは車両重量、記号^付θは勾配推定値である。なお、数式1の右辺中の各パラメータは、あらかじめ定められているか、本願出願時に公知となっている方法によって求めることができるものである。よって詳細な説明は省略する。
また、ドライバ要求出力トルクから上記所定の出力トルクへの変速機出力トルクの低減は、ドライバに違和感を与えないように行うことが好ましい。すなわち、2つのクラッチの掴み換えに先立つ変速機出力トルクの低減は、当該低減が行われている最中の車両1の加加速度がドライバに違和感を与える値とならないような変化速度で行われることが好ましい。例えば、以下の数式2を満たすように、実行部55は変速機出力トルクを低減させる。なお、ここでいう加加速度とは、車両1の進行方向の加加速度である前方加加速度である。
Figure 2018194128
数式2において、記号・は1階時間微分を、記号・・は2階時間微分を意味している。Toiは変速機出力トルクである。よって、Toiの1階時間微分値は、変速機出力トルクの変化速度を意味している。また、vは車両1の前方速度である。よって、その2階時間微分値は車両1の前方加加速度を意味している。なお、その他の記号は、数式1と共通である。
の2階時間微分値(車両1の前方加加速度)の好適な値の範囲として、ドライバが違和感を持たない値の範囲が、予め実験的に求められ、メモリ52に格納されている。よって、そのような値を数式2に代入して求められる数値範囲内の変化速度で変速機出力トルクを変化させることで、ドライバに違和感を与えることなく、クラッチの掴み換えに先立って変速機出力トルクを低減させることができる。
続いて、中段のチャートに示されるように、実行部55は第1クラッチ20のトルク容量を徐々に低減させつつ、第2クラッチ30のトルク容量を徐々に増加させる。すなわち、クラッチの掴み換えが行われる。
その結果、下段のチャートに示されるように、第1クラッチ20及び第1変速部60を介して出力軸44に伝達されるトルクである第1クラッチ系統出力トルクは徐々に減少する。また、第2クラッチ30及び第2変速部70を介して出力軸44に伝達されるトルクである第2クラッチ系統出力トルクは徐々に増加する。出力軸44から出力されるトルクである変速機出力トルクは、第1クラッチ系統出力トルクと第2クラッチ系統出力トルクの和となる。保護変速実行中、実行部55は、掴み換えの前後を通じて、変速機出力トルクがドライバ要求出力トルク未満、且つ、ゼロ加速度出力トルク以上となる状態を維持しながら、各クラッチのトルク容量を制御する。
第1クラッチ系統出力トルクが0になり、変速機出力トルクが第2クラッチ系統出力トルクと等しくなると、実行部55は、第2クラッチ30のトルク容量を次のように制御する。すなわち、中段のチャートに示されるように、実行部55は、所定時間、第2クラッチ30のトルク容量を、クラッチの掴み換えが行われていたときのエンジントルクに維持するとともに、エンジントルクを所定量低減する。その結果、上段のチャートに示されるように、エンジン回転数は第1入力軸41の回転数から第2入力軸42の回転数に遷移する。エンジン回転数が第2入力軸42の回転数に一致すると、いずれのクラッチにおいても滑りが生じていない状態となる。
エンジン回転数が第2入力軸42の回転数に一致すると、実行部55は、中段のチャートに示されるように、第2クラッチ30のトルク容量を、変速開始前の第1クラッチ20のトルク容量と等しくなるように増加させる。また、エンジントルクをドライバ要求エンジントルクに回復させる。これにより、4速が達成され保護変速が完了する。
保護変速実行中、第1クラッチ20と第2クラッチ30の掴み換え工程において、第1クラッチ20及び第2クラッチ30は滑っている。また、エンジン回転数の遷移工程において、第2クラッチ30は滑っている。しかしながら、通常変速実行時と比較して、各クラッチのトルク容量は、これらの工程を通して低減している。よって、各クラッチで吸収されるエネルギは低減し、各クラッチにおける発熱量は通常変速実行時よりも小さくなる。すなわち、保護変速を行うことによって、各クラッチにおける過度な発熱を防止することができる。しかも、DCT2の出力トルクである変速機出力トルクが低減した状態でクラッチの掴み換え工程やエンジン回転数の遷移工程が行われるので、より確実に、各クラッチにおける発熱量を低減させることができる。
なお、本発明に係る保護変速は、ダウンシフトの場合にも適用することができる。図6は3速から2速へのダウンシフトが通常変速によって実行される場合のタイムチャートである。また、図7は、3速から2速へのダウンシフトが保護変速によって実行される場合のタイムチャートである。
これらのタイムチャートから明らかなように、保護変速によってダウンシフトが実行される場合、エンジン回転数の遷移工程、及び、第1クラッチ20と第2クラッチ30の掴み換え工程において、変速機出力トルクは低減されている。すなわち、各クラッチのトルク容量は、これらの工程を通して低減している。よって、各クラッチにおける発熱量は通常変速実行時よりも小さくなる。すなわち、保護変速を行うことによって、各クラッチにおける過度な発熱を防止することができる。
なお、自動変速機は、ギヤ列をさらに多数有し、より多段に変速できるDCTであってもよいし、遊星歯車を構成する要素同士の相対回転を停止させるクラッチと、当該要素の回転を停止させるブレーキとを備える自動変速機であってもよい。
本発明によれば、摩擦締結要素の掴み換えを行う際の、摩擦締結要素の過度な発熱を防止することが可能な自動変速機の制御装置を提供することができる。よって、その産業上の利用可能性は多大である。
1 車両
2 DCT
10 エンジン
11 エンジン出力軸
20 第1クラッチ
21 第1入力側クラッチ板
22 第1出力側クラッチ板
23 第1ピストン
30 第2クラッチ
31 第2入力側クラッチ板
32 第2出力側クラッチ板
33 第2ピストン
40 変速部
41 第1入力軸
42 第2入力軸
43 副軸
44 出力軸
50 制御装置
51 CPU
52 メモリ
53 変速条件成立判断部
54 保護変速実行判断部
55 実行部
60 第1変速部
61 第1高速ギヤ列
61a 第1入力ギヤ
61b 第1副ギヤ
62 第1低速ギヤ列
62a 第2入力ギヤ
62b 第2副ギヤ
63 第1連結機構
63a 第1スリーブ
70 第2変速部
71 第2高速ギヤ列
71a 第3入力ギヤ
71b 第3副ギヤ
72 第2低速ギヤ列
72a 第4入力ギヤ
72b 第4副ギヤ
73 第2連結機構
73a 第2スリーブ
80 前後進切替部
81 前進ギヤ列
81a 第1出力ギヤ
81b 第5副ギヤ
82 後進ギヤ列
82a 第2出力ギヤ
82b 第6副ギヤ
82c アイドラギヤ
83 第3連結機構
83a 第3スリーブ
101 アクセル開度センサ
102 エンジン回転数センサ
103 車速センサ
90 油圧回路

Claims (3)

  1. 複数の摩擦締結要素の掴み換えに先だって自動変速機の出力トルクの低減が行われる変速の実行条件が成立したか否かを判断する判断部と、
    前記判断部によって前記変速の実行条件が成立したと判断された場合に、前記変速を実行する実行部と、を備える自動変速機の制御装置。
  2. 前記実行部は、前記変速の実行中、前記自動変速機の出力トルクを、前記判断部によって前記変速の実行条件が成立したと判断されたときの車速を維持可能なトルク以上に維持する、
    請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記実行部は、前記低減が行われている最中の車両の加加速度が、前記車両のドライバが違和感をもたないものとして予め定めた所定の範囲内となる変化速度で、前記自動変速機の出力トルクを低減させる、請求項1又は2に記載の自動変速機の制御装置。
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