JP2018181816A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
正極活物質を含む正極層と、溶媒及び電解質を含む電解液と、負極活物質を含む負極層とを備え、前記正極活物質はLi元素を含み、前記溶媒は主成分として水を含み、前記電解質はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含み、前記負極活物質は単体硫黄を含み、前記負極活物質の表面にカチオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層とが交互に積層されている、リチウムイオン二次電池
を開示する。
本願において「溶媒及び電解質を含む電解液」とは、溶媒に電解質が溶解してアニオン及びカチオンとなってイオン伝導性を示す電解液を意味する。
本願において「溶媒は主成分として水を含み」とは、電解液を構成する溶媒(液体成分)の全量を基準(100mol%)として、50mol%以上を水が占めていることを意味する。
本願において「カチオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層とが交互に積層されている」とは、1層以上のカチオン性ポリマー層と1層以上のアニオン性ポリマー層とが積層されていることをいい、好ましくは、カチオン性ポリマー層とカチオン性ポリマー層との間にアニオン性ポリマー層が積層されているか、アニオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層との間にカチオン性ポリマー層が積層されているか、或いはその両方をいう。
尚、言うまでもないが、「交互に積層され」とは、製造工程において、1層のポリマー層を形成するためのポリマーの塗布回数が1回ずつであることを限定しているわけではない。すなわち、例えば、カチオン性ポリマーを複数回連続で塗布・乾燥すること等によって1層のカチオン性ポリマー層を積層してもよいし、アニオン性ポリマーを複数回連続で塗布・乾燥すること等によって1層のアニオン性ポリマー層を積層してもよい。
負極層10は負極活物質11を含んでいる。また、負極層10は負極活物質11以外に導電助剤12やバインダー13等を含んでいてもよい。
電池100においては、負極活物質11が単体硫黄を含んでいる点に一つの特徴がある。特に負極活物質11は主成分として単体硫黄を含むことが好ましい。すなわち、負極活物質11を構成する単体及び化合物の合計を基準(100mol%)として、好ましくは30mol%以上、より好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上を単体硫黄が占めている。一方、負極活物質11に占める単体硫黄の割合の上限は特に限定されない。
一方、電池100においては、負極活物質11として単体硫黄が用いられ、且つ、これとともに後述のポリマー層11a、11bが用いられることで、単体硫黄を負極活物質として適切に機能させつつ、高いクーロン効率を得ることができる。ポリマー層11a、11bによって電解液中への負極活物質の溶出が抑制されたためと考えられる。また、負極活物質の電解液への溶出を抑えることで、電池の放電容量も高まるものと考えられる。
電池100においては、負極活物質11の表面にカチオン性ポリマー層11aとアニオン性ポリマー層11bとが交互に積層されている点に一つの特徴がある。このように、負極活物質11の表面にカチオン性ポリマー層11aとアニオン性ポリマー層11bとを交互に積層することで、電池100の充放電時、ポリマー層11a、11bが安定して負極活物質11の表面を覆い、負極活物質11の溶出を抑制することができる。尚、カチオン性ポリマー相11aやアニオン性ポリマー層11bを交互に積層せずに単独で積層した場合、(1)被覆層が十分に形成されない(穴などの欠損が生じる)虞があり、(2)カチオン性なら意図しないアニオン性の物質が吸着したり、アニオン性なら逆の事が起こって、電池特性に影響を与える可能性があり、さらには(3)同電荷同士の作用によってコート粒子の作製が困難となる虞がある。
負極層10は、負極活物質11に加えて、導電助剤12やバインダー13を含んでいることが好ましい。また、上述したように、負極層10は、上記した課題を解決できる範囲内で、負極活物質11とは別体に負極活物質11とは異なる種類の負極活物質がさらに含まれていてもよい。
正極層20は正極活物質21を含んでいる。また、正極層20は正極活物質21以外に導電助剤22やバインダー23を含んでいてもよい。
正極活物質21はLi元素を含んでおり、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる。言うまでもないが、正極活物質21は負極活物質11よりも高い電位を有するものであり、後述の電解液30の電位窓を考慮して適宜選択される。例えば、Li元素を含む酸化物やポリアニオンが好ましい。より具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2);ニッケル酸リチウム(LiNiO2);マンガン酸リチウム(LiMn2O4);LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2;Li1+xMn2−x−yMyO4(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znから選ばれる一種以上)で表される異種元素置換Li−Mnスピネル;チタン酸リチウム(LixTiOy);リン酸金属リチウム(LiMPO4、MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる1種以上);等が挙げられる。特に、Li元素に加えてNi元素とMn元素とを含む正極活物質が好ましく、Li1+xMn2−x−yNiyO4で示されるスピネル構造を有する正極活物質がより好ましい。後述するように、電解液30は、電位窓の酸化電位を5.0V(vs.Li/Li+)程度以上とすることも可能であり、この場合、Li元素に加えてNi元素とMn元素とを含む高電位の正極活物質を用いることもできる。正極活物質21は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極層20は、正極活物質21に加えて、導電助剤22やバインダー23を含んでいることが好ましい。導電助剤22やバインダー23の種類は特に限定されるものではなく、例えば、上記の導電助剤12やバインダー13として例示したものから適宜選択して用いることができる。正極層20に含まれる導電助剤22の量は特に限定されるものではない。例えば、正極層20全体を基準(100質量%)として、導電助剤22が好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上含まれている。上限は特に限定されるものではないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、正極層20に含まれるバインダー23の量は特に限定されるものではない。例えば、正極層20全体を基準(100質量%)として、バインダー23が好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上含まれている。上限は特に限定されるものではないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。導電助剤22やバインダー23の含有量がこのような範囲であれば、イオン伝導性及び電子伝導性に一層優れる正極層20を得ることができる。
電解液系のリチウムイオン二次電池においては、負極層の内部、正極層の内部、及び、負極層と正極層との間に電解液が存在しており、これにより、負極層と正極層との間のリチウムイオン伝導性が確保される。電池100においてもこの形態が採用されている。具体的には、電池100においては、負極層10と正極層20との間にセパレータ31が設けられており、当該セパレータ31と負極層10と正極層20とは、ともに電解液30に浸漬されている。
溶媒は主成分として水を含んでいる。すなわち、電解液を構成する溶媒(液体成分)の全量を基準(100mol%)として、50mol%以上、好ましくは70mol%以上、より好ましくは90mol%以上を水が占めている。一方、溶媒に占める水の割合の上限は特に限定されない。
電解質はLiTFSIを含む。特に電解質は主成分としてLiTFSIを含むことが好ましい。すなわち、電解液に含まれている(溶解している)電解質の全量を基準(100mol%)として、好ましくは50mol%以上、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上をLiTFSIが占めている。
電解液30は上記の溶媒や電解質に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、カチオンとしてリチウム以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属等をその他の成分として添加することが可能である。ただし、電解液30の電位窓を考慮した場合、その他の成分は少量とすることが好ましい。
電池100においては、負極層10と正極層20との間にセパレータ31が設けられている。セパレータ31は従来の水系電解液電池において使用されるセパレータをいずれも採用可能である。例えば、セルロースを材料とした不織布等の親水性を有するものを好ましく用いることができる。セパレータ31の厚みは特に限定されるものではなく、例えば、5μm以上1mm以下のものを用いることができる。
電池100においては、負極層10が負極集電体40と接続され、正極層20が正極集電体50と接続されており、当該集電体から端子等(不図示)を介して外部に電気エネルギーを取り出すことが可能とされている。負極集電体40や正極集電体50としては、リチウムイオン二次電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、Inからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。負極集電体40や正極集電体50の形態は特に限定されるものではない。箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
上記のような電池100は、公知の方法を応用することで製造することができる。例えば以下のようにして製造することができる。ただし、電池100の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
(1)単体硫黄を含む負極活物質11の表面にレイヤーバイレイヤー法(LBL法)等によってカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとを交互に積層する。
(2)ポリマー層を積層した負極活物質と任意に導電助剤等とを溶媒に分散させて負極合剤ペーストを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。ドクターブレード等を用いて負極合剤ペーストを負極集電体40の表面に塗工し、その後乾燥させることで、負極集電体40の表面に負極層30を形成し、負極電極体とする。
(3)正極層20を構成する正極活物質等を溶媒に分散させて正極合剤ペーストを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。ドクターブレード等を用いて正極合剤ペーストを正極集電体50の表面に塗工し、その後乾燥させることで、正極集電体50の表面に正極層20を形成し、正極電極体とする。
(4)負極電極体と正極電極体とでセパレータ31を挟み込み、負極集電体40、負極層10、セパレータ31、正極層20及び正極集電体50をこの順に有する積層体を得る。
(5)積層体を電池ケースに収容するとともに電池ケース内に電解液30を充填し、積層体を電解液30に浸漬するようにして、電池ケース内に積層体及び電解液を密封することで、電池100とする。
1.1.表面にポリマー層を有する負極活物質の作製
以下に示すように、レイヤーバイレイヤー法を用いて表面に所定のポリマー層を有する負極活物質を作製した。
(1)Zrボールを入れたボールミルポッドを準備した。
(2)硫黄と炭素材料とを秤量し、(1)に投入した。
(3)ボールミルにて硫黄と炭素材料とを混合し、硫黄活物質を得た。
(4)純水中にPEDOT:PSS(全体としてアニオン性)を分散させ、ここに上記硫黄活物質を投入して攪拌した。
(5)攪拌後、遠心分離機にて活物質を沈殿させ、廃液を捨てた。
(6)純水を入れて超音波洗浄機にかけ、活物質に付着した余分なポリマーを洗浄し、遠心分離機にて活物質を沈殿させ、廃液を捨てた。
(7)上記(4)を再度繰り返して、ポリマー層(1段階目)を有する活物質(A)を得た。
(8)純水中にPOAD(カチオン性)を分散させ、ここに活物質(A)を投入して攪拌した。
(9)攪拌後、遠心分離機にて活物質を沈殿させ、廃液を捨てた。
(10)上記(4)を2回繰り返して、ポリマー層(2段階目)を有する活物質(B)を得た。
(11)活物質(B)に対し、上記(2)〜(5)を再度繰り返して、ポリマー層(3段階目)を有する活物質(C)を得て、当該活物質(C)に対して、(6)〜(8)を再度繰り返して、ポリマー層(4段階目)を有する活物質(D)を得た。
(12)得られた活物質(D)を80℃で12時間、真空乾燥することにより、実施例に係る負極活物質を得た。
得られた負極活物質と炭素材料とバインダーとを、質量比で65:25:10となるように秤量し、混合機を用いて混合して負極合材ペーストを得た。得られたペーストをアルミニウム箔上に塗工し、12時間乾燥することで、負極を得た。
セルロースを材料とした不織布をセパレータとして用いた。
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、炭素材料と、バインダーとを、質量比で85:10:5となるように秤量し、混合機を用いて混合して正極合材ペーストを得た。得られたペーストをアルミニウム箔上に塗工し、12時間乾燥することで、正極を得た。
21mol/kgの濃度を有するLiTFSI水溶液を用いた。
上記の負極、セパレータ、正極及び電解液を用いて、コインセル(2032型)を作製し、評価用のリチウムイオン二次電池とした。
負極活物質の表面にポリマー層を設けなかったこと以外は、実施例と同様にして評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例及び比較例に係るリチウムイオン二次電池それぞれについて、下記条件にて充放電試験を行い、クーロン効率及び放電容量を比較した。
(1)充放電試験装置:マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット VMP3(Bio-Logic社製)
(2)電流密度:0.5C
(3)電圧範囲:0.5V−2.2V
図3に、実施例に係る電池と比較例に係る電池とで、充放電サイクルに伴うクーロン効率の変化を比較した結果を示す。図3に示すように、比較例に係る電池にあっては4サイクル目においてクーロン効率がわずかに低下し、5サイクル目においてクーロン効率が極端に低下した。負極活物質である単体硫黄がリチウムと反応することで、反応中間体が生じ、この反応中間体が電解液中へ溶出したものと考えられる。一方、実施例に係る電池にあっては5サイクル目を経過しても高いクーロン効率を維持した。負極活物質の表面にポリマー層を設けたことで、負極活物質の溶出が抑制されたものと考えられる。
SEMにて、実施例に係る負極活物質(表面に所定のポリマー層を備える負極活物質)の形態を観察した。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例に係る負極活物質は、表面全体がポリマー層で覆われていることが分かる。
11 負極活物質
11a カチオン性ポリマー層
11b アニオン性ポリマー層
12 導電助剤
13 バインダー
20 正極層
21 正極活物質
22 導電助剤
23 バインダー
30 電解液
31 セパレータ
40 負極集電体
50 正極集電体
100 リチウムイオン二次電池
Claims (1)
- 正極活物質を含む正極層と、溶媒及び電解質を含む電解液と、負極活物質を含む負極層とを備え、
前記正極活物質はLi元素を含み、
前記溶媒は主成分として水を含み、
前記電解質はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含み、
前記負極活物質は単体硫黄を含み、
前記負極活物質の表面にカチオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層とが交互に積層されている、
リチウムイオン二次電池。
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