JP2018030195A - 工作機械の熱変位補正方法及び基準ゲージ - Google Patents
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Abstract
Description
このような熱変位に対する改善策として、工作機械の各部に温度センサを取り付けて温度の変化を検知してワークや主軸の位置を補正する技術等が提案されている。
また、位置決め精度向上のために工作機械のX,Y,Z軸方向のストローク範囲に亘ってステージにスケールを貼り付けて熱変位を含む主軸の相対的ストローク範囲の変位を測定し、その測定値の変化を工作機械にフィードバックする方法も考えられる。
しかし、ワーク自体の熱膨張長さとスケールの熱膨張長さが異なることから熱膨張誤差が生じ、加工精度に影響を与えるという欠点があった。
本発明によれば、加工環境下で基準ゲージを治具やテーブル等のワークを支持する部材またはその近傍に設置し、加工温度下で主軸に取り付けたセンサにより基準ゲージの第一アーム部及び第二アーム部の長さを長さ測定データとして測定し、基準温度における第一アーム部及び第二アーム部の基準寸法との誤差により、ワーク加工時の長さの補正を行う。しかも、加工温度下における第一アーム部及び第二アーム部の間の角度を角度測定データとして測定し、基準温度における第一アーム部及び第二アーム部の間の角度との誤差により、ワーク加工時の補正を行うことで工作機械の温度による傾き等の加工誤差を補正できる。
基準ゲージにおける中央孔内壁の互いに直交する方向の各2点の中間点の座標同士から中央孔の中心点を求め、中央孔の中心点と第一アーム部及び第二アーム部の円弧状の両端部との間で外径までの長さを長さ測定データとして測定できるため、基準温度における基準寸法と加工温度における長さ測定データとの誤差からワーク加工時の長さの補正を行える。
基準ゲージは温度が変化しても第一アーム部と第二アーム部の交角の直角度に変化はないから、各2か所の測定点から割り出した第一アーム部及び第二アーム部の直角度について、基準温度下の直角度との誤差を工作機械の熱変位によるものとして加工時に補正することができる。
本発明による基準ゲージによれば、中央孔と第一アーム部及び第二アーム部の円弧状の端部との間で最長長さを長さ測定データとして測定することができるため、熱変位による長さの変化を測定できる。
これにより、中心点から第一アーム部及び第二アーム部の両端部までの長さを測定することで、第一アーム部及び第二アーム部の外径長さを測定できる。
しかも、加工温度下で第一アーム部及び第二アーム部の間の角度を角度測定データとして測定し、基準温度における第一アーム部及び第二アーム部の間の角度との誤差により、ワーク加工時の補正を行うことで工作機械の熱変位による傾き等の加工誤差を補正できる。
図1は実施形態による工作機械1の要部構成を示すものであり、ベッド2の上面にテーブル3がX軸方向に移動可能に設置され、テーブル3の上面に治具4を介してワークWが設置されている。ベッド2の上面において、ワークWに対向する位置にはベッド2上にコラム5がZ軸方向に移動可能に設置されており、Z軸はX軸と水平面内で直交する方向である。また、コラム5には主軸ヘッド6がX軸とZ軸に直交するY軸方向(上下方向)に昇降可能に支持されている。主軸ヘッド6の前面側には工具を把持する主軸7が設置されている。図2に示すように、ワークWはテーブル3の下部(または上部)に設けた回転テーブル9によって旋回・割出可能としてもよい。
図2は工作機械1やワークWの熱影響による熱膨張量(や熱収縮量)を測定するための測定方法を示すものであり、主軸7に工具に代えてタッチセンサ15の固定部16を取り付けて固定し、固定部16から先端側にプローブ17が延びている。また、テーブル3またはその上の治具4の側部には熱変位の測定治具として基準ゲージ12が固定ねじやクランプ部材等で固定されている。
そして、タッチセンサ15のプローブ17を基準ゲージ12の厚み方向の側面に当接させることで相互の位置を例えば三次元座標データ(座標)として順次計測するものとする。
第一アーム部20と第二アーム部21の各長手方向両端部20a、21aは基準ゲージ12の各アーム部20、21が内接する仮想円Rの一部の円弧を形成している。仮想円Rの中心点Oは基準ゲージ12の中央孔22の中心点でもあり、中心点Oから第一アーム部20の両端部20aを結ぶ線は仮想円Rの直径L1とされている。同様に中心点Oから第二アーム部21の両端部21aを結ぶ線も仮想円Rの直径L2とされている。第一アーム部20と第二アーム部21は中心点Oで直交する中心軸線O1、O2を有している。
これら挿通穴23b、23cを通して固定ねじをテーブル3の側面や治具4の側部のワーク取付部に形成したねじ穴(図示せず)に捩じ込むことで、基準ゲージ12をテーブル3上の治具4に固定する。
例えば温度20℃を基準温度として、基準ゲージ12の第一アーム部20及び第二アーム部21の外径寸法(全長長さ)L1、L2(L1=L2)と第一アーム部20及び第二アーム部21の4つの交差角である直角度A1、A2,A3、A4とを、図示しない三次元測定器で予め測定して基準データとする。
なお、第一アーム部20及び第二アーム部21の長さL1、L2は同一で仮想円Rの直径であるとしたが、異なっていてもよい。
また、第一アーム部20と第二アーム部21の交差角である直角度は、次のように測定する。即ち、中心点Oから距離h/2を半径とする仮想円Qと第一アーム部20及び第二アーム部21の各一側面20b、21bとの交点である4点f1〜f4を測定点として測定する。そして、第一アーム部20の側面20b上の2点f1、f2と第二アーム部21の側面21b上の2点f3、f4と中心点Oとの位置関係から、第一アーム部20及び第二アーム部21の交差角の直角度A1、A2,A3、A4の誤差を測定できる。
また、図4において、第一アーム部20と第二アーム部21の端部20a、21a近傍の側面20b、21bは先端側に向けて幅が少し狭くなっているため、タッチセンサ15のプローブ17の接触部の位置決めをし易い。第一アーム部20の2つの測定点f1、f2間、f3、f4間の距離(直径)hは仮想円Rの直径L1、L2より少し短い長さに設定されている。距離hの長さは適宜決定できる。
なお、本実施形態で用いるワークWは例えば円盤型のフランジであり、フランジの中心とその周囲に高精度に穴あけ加工を行うものとする。この熱変位補正方法はワークWを粗加工した後で仕上げ加工する前の段階で行うことで工作機械1に粗加工工程の熱が残っており、ワークWの仕上げ加工精度を安定して向上させる上で好ましい。
以上は事前準備のための測定であり、基準ゲージ12の各寸法とその治具4への取り付け位置が決まれば、測定対象である同一材質のワークWが変わっても再度の測定をしなくてもよい。
次に、加工環境下において、取り付け位置にある基準ゲージ12の中心点Oの座標を求め、加工環境下における基準ゲージ12の熱影響による長さの誤差や直角度の誤差を基準ゲージ12の基準データに対する測定値の誤差として割出す。そして、これらの誤差のデータを工作機械1内のNC装置の補正制御手段によって均等に分散して工具によるワークWの加工割合を調整することで補正する。
即ち、図2及び図4に示すように、コラム5をZ軸方向に相対移動させてタッチセンサ15を相対移動させ、プローブ17の先端を基準ゲージ12の中央孔22内の内壁に押圧接触させる。次いで、図4において、中央孔22の内壁における1点d2とこれに水平なX軸上の他の1点d4を結ぶ線の中間点をとり、他の1点d1とこれに垂直なY軸上の他の1点d3を結ぶ線の中間点をとる。これら2つの中間点の座標の中間点を中央孔22の中心点Oの座標として割り出す(S104)。
得られた基準ゲージ12の第一アーム部20及び第二アーム部21の各直径L1a、L2aと基準データの各直径L1,L2との誤差は、加工環境の温度誤差と主軸7を含む工作機械1の環境温度や熱等に起因する熱伸縮等による熱変位誤差とを含むX軸及びY軸方向長さの補正値になる。
次に、加工環境下で、図4に示すように、基準ゲージ12の第一アーム部20の一方の側面20bにおける測定点f1、f2と第二アーム部21の一方の側面21bにおける測定点f3、f4をプローブ17でそれぞれ測定する(S106)。そして、これら測定点f1、f2、f3、f4の基準データに対する誤差を算出する。ここで、基準ゲージ12はワークWと同一材質で上下左右に対称な形状を有するから、環境温度が変わっても直角度に変化はないといえる。
その際、第一アーム部20の測定点f1とf2を結ぶ仮想線によるX軸基準が水平線に対して傾斜していても、X軸と測定点f3、f4を結ぶY軸との関係を得られるので問題はない。
また、基準ゲージ12を治具4等に固定する際、第一アーム部20の水平方向の配置が多少ずれていたとしても、中央孔22の中心点Oの座標を基準としてタッチセンサ15で求めた第一アーム20の傾斜角度を演算し、傾いたX軸を基準にしてY軸の方向を設定するので測定誤差が拡大することはなく問題はない。
なお、基準ゲージ12に基づいて補正加工したワークWの長さと直角度は基準温度下で三次元測定器によって測定することで、補正の度合いを確認できる。
なお、基準ゲージ12において、第一アーム部20と第二アーム部21の温度変化による長さ調整は単に基準温度と加工温度における長さの差を工作機械1の主軸7のX軸方向とY軸方向の相対的ストロークによって分配することで、ワークWの加工補正が行える。
次に基準ゲージ12の第一アーム部20及び第二アーム部21の直角度の補正方法の実施例1,2について、図6から図8により説明する。
図6は20℃の基準温度下で治具4に固定した基準ゲージ12の直角度を測定したものであり、第一アーム部20と第二アーム部21は例えば外径長さL1=L2=φ300mmとする。第一アーム部20をX軸基準とするため第一アーム部20の倒れは0μmである。一方、第二アーム部21はY軸に対して2μm右側に傾いているという特性を有している。
そのため、ワークWの加工時に、NC装置の補正制御手段による工作機械1の直角度の補正はしないでよい。
そのため、工作機械1は、基準ゲージ12の測定点f1−f2、測定点f3−f4間の距離hで4μm右側に倒れていることを認識できる。これをNC装置の補正制御手段によって、主軸7のフルストローク範囲の長さに換算して補正することで、ワークWの加工精度を向上させてしかも安定させることができる。
更に、基準ゲージ12をワークWと同じ材質のものを用いたため、熱膨張と熱収縮が同レベルで生じるため、この点でも高精度な加工補正を行える。
しかも、粗加工後の仕上げ加工直前にタッチセンサ15による測定と加工補正を行うため粗加工時の熱が工作機械1やテーブル3に残留しており、熱影響を基準ゲージ12や工作機械1に伝達できて現実的であり、加工環境や工作機械1の稼働状況による加工補正を大幅に改善できる。
なお、工作機械1において、実施形態ではワークWのテーブル3をX軸方向に移動させ、主軸7をY軸方向とZ軸方向に移動可能に構成したが、ワークWと主軸7のX、Y、Z軸方向の移動構造は適宜に組み合わせることができる。
なお、上述した実施形態では、基準ゲージ12における第一アーム部20と第二アーム部21を例えばX軸方向とY軸方向の2軸方向としてその直角度を測定するものとしたが2軸方向の角度は必ずしも直角に設定する必要はなく適宜の挟角を設定できる。
また、実施形態では基準ゲージ12はワークWと同一材質としたが、同一材質でなくてもワークWと熱膨張係数がほぼ同一の材質であれば異なる材質の部材でもよい。
3 テーブル
4 治具
6 主軸ヘッド
7 主軸
12 基準ゲージ
15 タッチセンサ
17 プローブ
20 第一アーム部
20a、21a 端部
20b、21b 側面
21 第二アーム部
22 中央孔
23 交差部
W ワーク
d1、d2、d3、d4 測定点
e1,e2,e3,e4 測定点
f1、f2、f3、f4 測定点
Claims (5)
- ワークと同一材質の基準ゲージについて、互いに交差する2軸方向に第一アーム部及び第二アーム部を有しており、予め設定された基準温度下における前記第一アーム部及び第二アーム部の基準寸法と前記第一アーム部及び第二アーム部の間の角度を測定しておき、
加工温度下において、前記基準ゲージをワークを支持する部材またはその近傍に取り付ける工程と、
工作機械の主軸に取り付けたセンサで前記基準ゲージの前記第一アーム部及び第二アーム部の長さを長さ測定データとして測定すると共に前記第一アーム部及び第二アーム部の間の角度を角度測定データとして測定する工程とを備え、
前記基準ゲージの基準温度における基準寸法及び角度と加工温度における測定データ及び角度測定データとの誤差に基づいて、前記ワーク加工時の補正を行うことを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。 - 前記基準ゲージは、中央孔を挟んで互いに交差する2軸方向に前記第一アーム部及び第二アーム部を有しており、
前記中央孔の内壁の互いに直交して対向する4点を測定して中心点を求めると共に、
前記第一アーム部及び第二アーム部の長手方向の両端部が円弧状にそれぞれ形成されていて、前記第一アーム部及び第二アーム部の両端部間の長さを前記基準寸法及び前記測定データとして測定するようにした請求項1に記載された工作機械の熱変位補正方法。 - 前記センサにより、前記第一アーム部及び第二アーム部における各側面のそれぞれ2カ所の測定点から前記第一アーム部及び第二アーム部の間の角度として直角度を測定し、前記第一アーム部及び第二アーム部の一方の軸方向を基準として他方の軸方向との直角度を測定し、前記基準温度の前記角度との誤差を補正するようにした請求項2に記載された工作機械の熱変位補正方法。
- 工作機械の熱変位を測定するための基準ゲージであって、
互いに直交して交差させた第一アーム部及び第二アーム部と、
前記第一アーム部及び第二アーム部の交差部分に設けられていて中央孔を有する交差部とを備え、
前記第一アーム部及び第二アーム部の各両端部は円弧状に形成されていることを特徴とする基準ゲージ。 - 前記中央孔に設けた中心点は、前記第一アーム部及び第二アーム部の両端部までの長さが等しく設定されている請求項4に記載された基準ゲージ。
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