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JP2018076394A - エアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物 - Google Patents

エアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物 Download PDF

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JP2018076394A JP2016217158A JP2016217158A JP2018076394A JP 2018076394 A JP2018076394 A JP 2018076394A JP 2016217158 A JP2016217158 A JP 2016217158A JP 2016217158 A JP2016217158 A JP 2016217158A JP 2018076394 A JP2018076394 A JP 2018076394A
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Abstract

【課題】硬化物が伸び特性に優れ、高温多湿下であっても基布との接着性に優れた硬化膜を形成することができるエアバッグコーティング用シリコーン組成物の提供。【解決手段】(A)1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を2個以上含有するジオルガノポリシロキサン:100質量部、(B−1)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖の両末端以外の部分に1個以上と、分子鎖の両末端に0個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(B−2)分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を含有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)BET法による比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカ、(D)付加反応触媒、(E)エポキシシラン化合物及び(F)1分子中に1個のシラノール基を含有するシラン又はケイ素原子2〜4個のシロキサン化合物、を含有するエアバッグコーティング用シリコーン組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車などのエアバッグに用いる基布のコーティング用シリコーン組成物に関し、伸び特性に優れ、かつ、基布との接着性優れたシリコーン硬化膜を形成することができるため、カーテンエアバッグなどのエアバッグとして有用なエアバッグを提供できるコーティング用シリコーンゴム組成物に関するものである。
近年、自動車の衝突安全性向上の要求から衝突時に展張して搭乗者を保護するエアバッグ装置の装着が増加している。このエアバッグ装置は、衝突による強い衝撃を感知するセンサー、ガスを発生するインフレ—ターおよびインフレ—ターから発生するガスにより膨張するエアバッグより構成される。エアバッグの基布としてはポリアミドやポリエステルなどの合成繊維製の織布が使用されるが、このままではインフレ—ターより発生する高圧・高温ガスに対して、気密性や耐熱性、難燃性などが厳しい要求を満たさないため、該基布にシリコーン組成物をコーティングして硬化させたものを用いるのが一般的である。
一方、安全の観点よりエアバッグの使用対象は拡大しており、各種のエアバッグが搭載されている。従来の運転席や助手席において、搭乗者の正面から作動するエアバッグだけではなく、搭乗者の側面などから作動する、例えば、サイドカーテンエアバッグと称するエアバッグも搭載されている。サイドカーテンエアバッグは、フロントピラーからルーフサイドに沿って収納され、衝突時の車両横転時に搭乗者の頭部を保護し、また、搭乗者の車外への飛び出しを防ぐことを目的としており、前者の運転席や助手席に搭載されるエアバッグとは要求が異なり、衝突時の作動後は一定時間、展張保持できる性能が求められている。
そこで、サイドカーテンエアバッグの展張保持を解決する方法として、例えば、特許文献1では、シリコーン組成物に、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いる方法が開示されている。この方法では、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合した水素原子数の割合を、全水素原子数の30〜60%まで高め、主剤となるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの分子鎖長を硬化反応で増長させることで、エアバッグ展張後のガスリークを抑制するものである。
しかしながら、前述のシリコーンゴム組成物では、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合する水素原子の割合が高くなるにつれて、分子鎖長の増長によって硬化物の切断時の伸びは高くなる反面、基布との接着に関与する分子鎖両末端以外の水素原子の割合が大幅に低下し、その結果、基布との接着性が著しく低下するという問題があった。ポリアミドやポリエステルなどの合成繊維の織物は、熱、酸素、湿度に長期間曝されると劣化するため、シリコーンコーティング布を、特に温度80℃以上、相対湿度95%以上の環境下で500時間以上保持した場合に接着性が著しく低下していた。高温多湿下において、もしインフレ—ターの化薬劣化によってインフレーターが想定以上に高い圧力で発生ガスを生じた場合には、この問題はより重大化する危険性がある。
特開2006−241438号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自動車などのエアバッグに用いる基布のコーティング用シリコーン組成物に関し、硬化物は伸び特性に優れるため、エアバッグ作動後に所望する内圧を保持し、高温多湿下であってもポリアミド基布やポリエステル基布との接着性に優れた硬化膜を形成することができる、カーテンエアバッグなどのエアバッグとして安全性の高いエアバッグ、エアバッグコーティング用シリコーン組成物およびエアバッグ基布を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物において、分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを所定の割合で用いて硬化物の伸びを高めつつ、温度80℃、相対湿度95%の環境下で500時間保持した場合でも、ポリアミド基布やポリエステル基布との接着性に優れた硬化膜を形成できる処方を見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のエアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物は、(A)1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を2個以上含有する、25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン:100質量部、(B−1)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖の両末端以外の部分に1個以上、かつ、分子鎖の両末端に0個以上含有し、25℃における粘度が1〜2,000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(B−2)分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を含有し、25℃における粘度が1〜2,000mPa・sである直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)BET法による比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、(D)付加反応触媒、(E)1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、および(F)1分子中に1個のシラノール基を含有するシラン又はケイ素原子2〜4個のシロキサン化合物、を含有するエアバッグコーティング用シリコーン組成物、および該組成物の硬化物からなるエアバッグ基布、および該基布からなるエアバッグであって、該シリコーン組成物は伸び特性に優れ、かつ、基布との接着性に優れたシリコーン硬化膜を形成することができることを特徴とする。
前記エアバッグシール材用シリコーンゴム組成物は、(G)シリコーン組成物の接着性を向上させる働きを有する成分0.05〜10質量部を含有することが好ましい。さらに、成分(G)は、有機チタン化合物、有機ジルコニア化合物、および有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機金属化合物であることが好ましい。
前記エアバッグシール材用シリコーンゴム組成物は、(B−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、下記一般式(1)

HR SiO-(HRSiO)-(R SiO)-SiR H (1)

(式(1)中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を有さない互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基であり、mは1〜50の正数、nは0〜150の正数であり、式:t=m/(m+n)で示されるtは、0.01≦t≦1.0を満たす。)で表される化合物を含有することが好ましい。
前記エアバッグシール材用シリコーンゴム組成物は、(B−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンに、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基を有し、ケイ素分子中に結合する芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有することが好ましい。
本発明のエアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物は、硬化物の切断時の伸びが800%以上となるため、エアバッグ展張後も所望する内圧を保持することができ、かつ、高温多湿下の環境下でも基布との接着性に優れるため、特に高温多湿下でインフレ—ターの化薬劣化などによりインフレーターが想定以上に高い圧力で発生ガスを生じた場合であっても正常に作動する、カーテンエアバッグなどのエアバッグとして安全性の高いエアバッグを得ることができる。
以下に本発明に係るエアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物の詳細を説明する。
(成分(A))
成分(A)は、1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を2個以上含有するジオルガノポリシロキサンであり、硬化後に優れたゴム物性を有するシリコーンゴム組成物の主剤であって、成分(A)は、通常、平均組成式が下記一般式(2)で表される。

SiO(4−a)/2 (2)

(ただし、式(2)中、R は、互いに同一又は異種の炭素数1〜18の非置換の又は置換された一価炭化水素基である。a は1.7〜2.1である。)
ここで、上記Rで示される一価炭化水素基のうち、少なくとも2個以上はビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基から選ばれ、それ以外の基は、炭素数1〜18の置換または非置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基や、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基などのハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基などから選ばれる。
の選択にあたって、2個以上必要なアルケニル基としてはビニル基が好ましく、その他の基としてはメチル基、フェニル基、3,3,3 − トリフルオロプロピル基が好ましい。また、全R中の70モル%以上がメチル基であることが、硬化物の物性および経済性などの点で好ましく、通常はメチル基が80モル%以上のものが用いられる。
成分(A)のジオルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、分岐状であってもよい。分子構造としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、式:(CHViSiO1/2で示されるシロキサン単位、式:(CHSiO1/2で示されるシロキサン単位、式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン[式中のViは、ビニル基を表す]、これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン、およびこれらのオルガノポリシロキサンの2種類以上の混合物が例示されるが、分子鎖長の増長によって硬化物の切断時の伸びを高める観点から、直鎖状のジオルガノポリシロキサンで分子鎖両末端にビニル基を有するものが好ましい。
これらのジオルガノポリシロキサンは当業者に公知の方法で製造される。成分(A)のジオルガノポリシロキサンは、25℃ における粘度が100〜500,000mPa・sであり、好ましくは1,000〜500,000mPa・sであるものが使用され、特に粘度の異なる2種類以上を用いると、最終的なシリコーン組成物の粘度調整が行いやすいため好ましい。
(成分(B−1))
成分(B−1)は、シリコーン組成物の硬化物を架橋させ、かつ、基布と良好に接着することに寄与する成分であり、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を1個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含まないオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればいかなるものでもよく、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ単位とSiO4/2単位からなるコポリマーが用いられる。
接着性を付与し、かつ、効果的に伸びを向上させる相乗効果の観点から、成分(B−1)には分子鎖の両末端にケイ素原子と結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、かつ、分子鎖内にケイ素原子と結合する水素原子を分子中に少なくとも1個以上有するものを含有することが好ましい。具体的には、以下の一般式(1)で示されるような直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有することがが好ましい。

HR SiO-(HRSiO)-(R SiO)-SiR H (1)

式(1)中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を有さない互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基であり、mは1〜50の正数、nは0または1〜150の正数であり、式:t=m/(m+n)で示されるtは、0.01≦t≦1.0を満たすものが用いられる。式(1)中のmは、より好ましくは1〜20であり、nは、より好ましくは10〜100であり、tは0.02≦t≦1.0、さらに好ましくは、tは0.02≦t≦0.2である。mが50以上となると破断時の伸びが上がらず、nが150以上となると硬化物の硬さが下がるため好ましくない。また、tは0.01未満では添加効果がなく、0.1を超えると破断時の伸びが上がらなくなるため好ましくない。
また、成分(B−1)は、接着性および耐熱性向上の観点から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基を有するもので、分子中に芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましく、経済的な理由により芳香族の基としてはフェニル基であることがより好ましい。
成分(B−1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は1〜2,000mPa・sであり、好ましくは、2〜1,000mPa・sである。また、成分(B−1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(成分(B−2))
成分(B−2)は、シリコーン組成物の硬化物を架橋させ、かつ、破断時の伸びを高めることに寄与する成分であり、分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、かつ、直鎖状であればいかなるものでもよく、これによって主剤となるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの分子鎖長を硬化反応により比較的容易に増長することができる。
成分(B−2)は、耐熱性向上の観点から、分子中に芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましく、経済的な理由により芳香族の基はフェニル基であることがより好ましい。
成分(B−2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は1〜2,000mPa・sであり、好ましくは、2〜1,000mPa・sである。また、成分(B−2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。複数で用いる場合には、硬化物中の架橋点が偏在しやすくなるため、硬化物の伸びを比較的容易に高めることができるため好ましい。
該成分(B−1)および該成分(B−2)中のケイ素原子に結合した水素原子の合計個数は、該成分(A)中のアルケニル基1個あたり1/5〜7/1であることが好ましい。1/5より少なくなると硬さが著しく低下し、7/1より大きくなると硬くなりすぎるため、接着試験時の揉み衝撃で硬化被膜に割れが生じやすくなるため好ましくない。また、該成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数は、該成分(B−1)および該成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の10〜60%であり、より好ましくは15〜45%、さらに好ましくは15〜30%である。10%未満の場合は、所望する破断伸びを得ることが困難となり、一方、60%以上を超えると硬化物の硬さが大きく下がってしまい、接着試験時の揉み衝撃で硬化被膜が荷重に耐えられずに剥離するため好ましくない。
(成分(C))
成分(C)のシリカは、親水性または疎水性を有する、ヒュームドシリカ、シリカフューム、沈殿シリカ、焼成シリカ、コロイダルシリカ、ケイ藻土などが例示され、特にそれらは微粉末のものが好ましく、粒子径が100μm以下、かつ、比表面積が50m/g以上がより好ましい。また、オルガノシラン、オルガノシラザン、オルガノシクロポリシロキサンなどで、予め表面処理されたシリカも好適に用いることができる。成分(C)の添加量は、通常、成分(A)100質量部に対して、5〜50質量部の範囲であり、好ましくは10〜30質量部の範囲で使用される。これらは単独または複数種類を組み合わせて用いることができる。
親水性の微粉末シリカを用いる場合には、必要に応じて、その表面を疎水化処理剤で疎水化処理してから用いることが好ましい。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラザン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランなどのハロゲン化シランや、これらのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基で置換されたオルガノアルコキシシランなど、あるいはジメチルシリコーンオイルが挙げられるが、好ましくはヘキサメチルジシラザンである。
(成分(D))
成分(D)の付加反応触媒は、アルケニル基とケイ素原子に結合する水素原子との付加硬化反応を促進する触媒であって、当業者には公知の触媒である。成分(D)としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウムなどの白金族金属、またはこれらを微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定したもの、さらに、白金化合物としては、白金ハロゲン化物、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン− 白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライドなどが例示される。
また、経済的理由により貴金属以外の金属化合物触媒を用いてもよく、例えば、ヒドロシリル化鉄触媒としては、鉄―カルボニル錯体触媒、シクロペンタジエニル基を配位子として有する鉄触媒、ターピリジン系配位子や、ターピリジン系配位子とビストリメチルシリルメチル基を有する鉄触媒、ビスイミノピリジン配位子を有する鉄触媒、ビスイミノキノリンを配位子を有する鉄触媒、アリール基を配位子として有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィン基を有する鉄触媒、不飽和基を有する環状または非環状のオレフィニル基を有する鉄触媒である。その他、ヒドロシリル化のコバルト触媒、バナジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、サマリウム触媒、ニッケル触媒、マンガン触媒などが例示される。
成分(D)の配合量は本用途で所望される硬化温度や硬化時間に応じた有効量が用いられるが、通常、シリコーンゴム組成物の合計質量に対して、触媒金属元素の濃度として0.5〜1,000ppmの割合であればよく、1〜500ppmの割合であることが好ましく、より好ましくは1〜100ppmの範囲である。配合量が0.5ppm未満の場合は、付加反応が著しく遅くなり、一方、配合量が1,000ppmを超えるとコストが上昇するため経済的に好ましくない。
(成分(E))
成分(E)の有機ケイ素化合物は、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物であればいかなる有機ケイ素化合物でも使用できるが、少なくとも1個のエポキシ基と、少なくともケイ素原子結合のアルコキシ基を2個以上有する有機ケイ素化合物がより好ましい。かかるエポキシ基としては、グリシドキシプロピル基などのグリシドキシアルキル基、2,3−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などのエポキシ含有シクロヘキシルアルキル基などの形でケイ素原子に結合していることが好ましく、1分子中のエポキシ基は2〜3個含むものを用いてもよい。また、ケイ素原子結合アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のほか、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基などのアルキルジアルコキシシリル基などが好ましい。また、前述以外の官能基としては、例えば、ビニル基などのアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、イソシアネート基、から選択される官能基を用いてもよい。
(成分(F))
成分(F)のシロキサン化合物は経時でシリコーン組成物の粘度変化を制御する働きを付与する成分であって、1分子中に少なくとも1個のシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)を含有するシランまたはシロキサン化合物であり、これらは単独または複数で使用される。シロキサン化合物としては、分子中のケイ素原子数が通常2〜4個のオリゴマーである。
かかる成分(F)としては、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、トリフェニルシラノール、ジメチルフェニルシラノール、ビニルフェニルメチルシラノール、ジメチルビニルシラノールなどのシラン、および、これらのオリゴマー、あるいは、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、1−ヒドロキシヘプタメチルシクロテトラシロキサン、および、これらのオリゴマーなどが例示されるが、入手が容易で、工業用の取り扱いが容易であることから、好ましくは、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、トリフェニルシラノールである。
成分(F)の添加量は、通常、成分(A)100質量部に対して0.02〜20質量部であり、好ましくは0.1〜10質量部である。0.1部未満ではシリコーン組成物の増粘を経時で制御する効果が低く、20質量部を超えると硬化速度が遅くなってくるために好ましくない。
(成分(G))
成分(G)のシリコーン組成物の接着性を向上させる働きを有する成分は特定の化合物に限定されず、本発明の目的を妨げないものであればいかなるものでもよく、例えば、シランカップリング剤と称するものを用いることができる。有機官能基としては、ビニル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基から選択されるいずれかひとつ、あるいは複数を含むものが好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロキシシランや、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ジヒドロ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5−フランジオンなどのフランジオンなどが挙げられる。有機官能基はアルキレン基などの他の基を介してケイ素原子に結合していてもよく、これらは成分(E)と併用するとその効果が助長されるため好ましい。このような有機ケイ素化合物以外にも、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物および有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物を用いることができ、これらは接着促進のための縮合助触媒的に作用するものであればいかなるものでもよく、前述のシランカップリング剤との併用がさらに有効である。例えば、メタクリロキシ基含有のオルガノアルコキシシランとチタンキレート化合物および/またはジルコニウムキレート化合物、あるいはジヒドロ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5−フランジオンとチタンキレート化合物および/またはジルコニウムキレート化合物、メタクリロキシ基含有のオルガノアルコキシシランとジヒドロ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-2,5−フランジオンとチタンキレート化合物および/またはジルコニウムキレート化合物の組合わせが特に好ましい。
かかる有機金属化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどの有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシ(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセテート)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、テトラアセチルアセテートチタンなどの有機チタンキレート化合物などのチタン系縮合助触媒;ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトラブチレートなどの有機ジルコニウムエステル;ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどの有機ジルコニウムキレート;ジルコニウムビス(2−エチルヘキサノエート)オキサイド、ジルコニウムアセチルアセトネート(2−エチルヘキサノエート)オキサイドなどのオキソジルコニウム化合物などのジルコニウム系縮合助触媒;アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec−ブチレート)などのアルミニウムアルコレート;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などのアルミニウムキレート化合物;ヒドロキシアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)などのアルミニウムアシロキシ化合物などのアルミニウム系縮合触媒が例示される。
また、前述の有機金属化合物以外に、例えば、分子中にイソシアネート基を含有する有機化合物を用いてもよい。かかる有機化合物としては、一分子中に少なくとも1個以上のイソシアネート基を含有するものであれば、特に制限はなく、いかなるものでも構わない。分子中にイソシアネート基を含有する有機化合物としては、ベンジルイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルーヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−プロポキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが例示され、これらの誘導体や前駆体も含み、これらは単独または複数で使用してもよく、前述の前述のシランカップリング剤との併用が好ましい。
本発明のシリコーン組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、上記成分(A)〜(G)以外の任意成分として、シリコーンゴムへの添加物として従来公知のものはすべて使用することができる。このような添加物としては、補強充填材、非補強充填材、接着付与剤、顔料、染料、硬化抑制剤、耐熱付与剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、気密性向上剤、放射線遮蔽剤、電磁波遮蔽剤、防腐剤、安定剤、有機溶剤、可塑剤、防かび剤、あるいは、1分子中に1個のケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を含有し、他の官能性基を含有しないオルガノポリシロキサンや、ケイ素原子結合水素原子およびアルケニル基を含有しない無官能性のオルガノポリシロキサンが例示され、これらは単独または複数で配合してもよい。
顔料としては、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、希土類酸化物、酸化クロム、コバルト顔料、群青、セリウムシラノレート、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、チタンイエロー、カーボンブラック、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウムなど、および、これらの混合物が例示される。
硬化抑制剤としては、付加反応の硬化速度を調整する能力を有するものであり、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類が例示され、硬化抑制効果を持つ化合物として当該技術分野で従来公知の硬化抑制剤はすべて使用することができる。かかる化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが例示される。また、アミノ基を有する、シランおよびシリコーン化合物を使用してもよい。
具体的には、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インのような各種の「エン−イン」システム;3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オールのようなアセチレン性アルコール;周知のジアルキル、ジアルケニル、およびジアルコキシアルキルフマラートおよびマレアートのようなマレアートおよびフマラート;およびシクロビニルシロキサンを含有するものが例示される。
耐熱付与剤としては、水酸化セリウム、酸化セリウム、酸化鉄、ヒューム二酸化チタンなど、および、これらの混合物が例示される。
気密性向上剤としては、硬化物の通気性を低下させる効果を有するものであればいかなるものでもよく、有機物、無機物を問わず、具体的にはウレタン、ポリビニルアルコール、ポリイソブチレン、イソブチレンーイソプレン共重合体や、板状形状を有するタルク、マイカ、ガラスフレーク、ベーマイト、各種金属箔や金属酸化物の紛体、および、これらの混合物が例示される。
本発明のエアバッグコーティング用シリコーン組成物を製造するには、当業者に公知な方法を用いることができ、その方法は限定されない。例えば、予め成分(A)、(B)および(C)を、あるいは、成分(A)、(C)および(D)を攪拌機で混合したり、あるいは2本ロール、ニーダーミキサー、加圧ニーダーミキサーや、ロスミキサーなどの高せん断型の混合機や押出し機、連続式の押出し機などで均一に混練してシリコーンゴムベースを調整した後、これに成分(E)、(F)または(G)などを添加配合して製造するという公知の方法が用いられる。また、例えば、予め成分(A)および(B)、あるいは、成分(A)および(D)を、乳化剤を用いて乳化機で製造するという公知の方法を用いてもよい。
また、本発明のシリコーン組成物は事前に硬化が進行しないように、少なくとも2つの異なる成分の形で保存することが好ましい。例えば、成分の1つには不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン(A)が含有され、他方の成分には(B)のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが含有され、相応する助剤や添加剤などは、成分の1つまたは両方に含有されていることが好ましい。さらに本発明の組成物を、少なくとも2つ以上の異なる成分の形で保存するためには、これらの異なる成分を、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、あるいはホワイトスピリット、あるいはこれらの混合物などの有機溶剤中に保存したり、あるいはこれらの異なる成分を、乳化剤を用いて乳化して水系エマルジョン状態として保存してもよい。特に、有機溶剤の揮発による火災の危険性、作業環境の悪化および大気汚染などの問題を防ぐために、特に無溶剤系や、乳化剤を用いて乳化したエマルジョンであることが好ましい。
本発明は、自動車などのエアバッグに用いる基布のコーティング用シリコーン組成物に関するものである。エアバッグとは、エアバッグ基布を袋状に縫合したものであり、主に自動車用に装備され、事故が起きた際に袋が膨張し運転者および搭乗者の安全を確保するものである。エアバッグ基布は通常、ポリアミドやポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維を織り込んだものである。
本発明のコーティング組成物はエアバッグ用の合成繊維織物にコーティングされ、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド繊維織物、アラミド繊維織物、ポリアルキレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維織物、ポリエーテルイミド繊維織物、サルフォン系繊維織物、炭素繊維織物、あるいはこれらの混合物が用いられ、エアバッグの種類によって、10〜5000デシテックスの太さの糸を使用する平織り織物や袋状織物やホース状織物にコーティングされるが、加工性や経済性の観点から50〜1000デシテックスの糸を使用する織物であることが好ましい。
本発明のコーティング組成物を基布の精練後にコーティングする場合は、基布の精練処理後に乾燥を行い、その後に本発明のコーティング組成物をコーティングしてもよいし、あるいは、精練処理後の乾燥を行う前に本発明のコーティング組成物をコーティングし、その後に精練液の乾燥とコーティング組成物の硬化を同時に行うように乾燥を行ってもよい。また、基布の精練処理を完全に行わない場合には、本発明のコーティング組成物を基布に直接コーティングしてもよい。
本発明のコーティング組成物をコーティングするには、一般的に用いられている方法によって実施することができ、例えば、浸漬およびパジング、刷毛塗り、流し塗り、吹付け、ローラー塗工、グラビア塗工、コンマコーター、捺染、ナイフ塗工、マイヤーバー、エアブラシ、スロップパジング、ロール塗工などが用いられ、状況に応じてこれら単独あるいは組合わせてコーティングが実施される。また、コーティングを同じ方法で実施する場合でも、コーティングは必ずしも一度で実施されなくともよく、目的とするコーティング状態が得られるまで複数のコーティングを実施してもよい。従って、コーティング後の硬化膜も必ずしも一層でなくてもよく、複数の硬化膜から構成されていてもよい。さらにコーティング後の硬化膜の表面には、例えば、防汚や、帯電防止や、すべり性の付与やブロッキング防止のためのような成分を追加で配合や加工したり、あるいは、そのような機能を有する硬化層をさらに形成してもよい。
コーティング実施後の乾燥および硬化は、通常、熱空気、赤外線、ガスバーナー、熱交換器もしくは他のエネルギー源によって加熱することができる加熱装置中で行われる。なお、この乾燥および硬化には、常用される加熱装置の他に、目的とする乾燥および硬化を達成することが可能な乾燥能力を有する装置であればいかなるものも用いることができ、例えば、加熱ロールカレンダー、加熱可能なはり合わせプレス、加熱可能な段プレスまたは高温接触ロール、熱風乾燥機、マイクロ波乾燥機などが例示される。
硬化時には、硬化被膜への気泡形成を回避するために、加熱装置に温度の異なる複数の温度帯域を設けることが好ましく、例えば、第1の温度帯域中で60〜150℃、好ましくは80〜130℃、さらに好ましくは90〜120℃の温度で予備乾燥を行い、続く第2の温度帯域中では300℃までの温度で硬化を実施することができるが、ほとんどの繊維は加工上の耐熱制限があるため、120〜250℃の温度範囲で実施することが好ましい。
なお、工程上複数の温度帯域を設けることが困難な場合でも、硬化させようとする基材が少なくとも170℃以上の温度に一度でも到達するように予備乾燥することが好ましい。また、硬化に必要とする滞留時間はコーティング重量、織物の熱伝導性およびコーティングされた織物への熱伝導に依存して変化するが、0.5〜30分間程度であることが好ましい。また、上述の乾燥および硬化については室温であれば、10分〜数時間放置することによって行なってもよい。
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に
限定されるものではない。なお、各例における部は、いずれも質量部を示す。
<ゴムベースの調製方法>
成分(A)として市販の粘度約20,000mPa・sを有する両末端ビニル基含有のジメチルポリシロキサン67.4部に、粘度約450,000mPa・sを有する両末端ビニル基含有のジメチルポリシロキサン5.8部と、BET法で測定した比表面積が9m/gで、かつ、レーザー回折法で測定したD50の平均粒子径が5μmであるタルク粉末5.0部を加え、さらに、成分(D)として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金含有量として1%を含有するジメチルポリシロキサン溶液0.3部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部とを加え、攪拌混合機でよく混合してゴムベースを調整した。
<エアバッグコーティング用シリコーン組成物の作製方法>
エアバッグコーティング用シリコーン組成物は、このゴムベースに、必要な添加剤類を添加することで作製した。
各実施例および比較例における各成分の内容概要および添加部数を表1および表2に示した。
<基布の選定方法>
基布は、470デシテックスの糸で構成される平織物のポリアミド基布および、555デシテックスの糸で構成されるポリエステル基布で、精練したものを使用した。
<コーティング方法>
ナイフコーターを用いて基布にエアバッグコーティング用シリコーン組成物をコーティングをし、乾燥炉で温度180℃、硬化時間60秒で硬化した。
<エアバッグコーティング用シリコーン組成物の物性測定方法>
得られたシリコーン組成物を温度170℃、硬化時間5分でプレス硬化して厚さ2mmの硬化シートを作成した。これをJIS K 6249に準拠して硬さ(タイプAデュロメータ)と破断伸びを測定した。
<コーティング試料の接着試験方法>
硬化被膜の接着状態は揉み試験で確認した。コーティング布を縦10cm×横5cmに切断した試料を作製し、硬化膜形成面上に10Nの荷重をかけた状態で揉み試験を行った。測定にはスクラブテスタINC−1507−A(株式会社 井元製作所製)を使用し、試験方法はISO 5981に準拠して行い、表面状態を目視で観察し、表面にピンホールや剥離がないかを確認した。
<コーティング試料の湿熱試験方法>
コーティング布を温度80℃、相対湿度95%の環境下で500時間保持した後、前述の接着試験方法による揉み試験を実施した。
各実施例および比較例における試験結果を表3に示した。
<実施例1>
前記の調製法で得たゴムベース78.6部に、成分(C)としてBET法で測定した比表面積300m/gであるヒュームドシリカ14.5部を加えて攪拌混合機でよく混合した。そこに、成分(B−1)として、25℃における粘度が30mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量1.6%)0.17部、および25℃における粘度が35mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.8%)0.25部と、成分(B−2)として、25℃における粘度が50mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.05%)2.5部と、25℃における粘度が1000mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.01%)2.5部を加え、さらに攪拌混合機でよく混合した。なお、本処方における、成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の割合は、全水素原子個数に対して27%であった。
さらに、成分(E)の添加剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5部と、成分(F)として、トリメチルシラノール0.3質量部、成分(G)のシリコーン組成物の接着性を向上させる働きを有する成分として、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.25部、チタンエチルアセトアセテート0.5部、を加えたものを調整した。そして、この調製品をポリアミド基布およびポリエステル布に対して、それぞれ約50g/mでコーティングし、乾燥炉で硬化させてコーティング布を作製した。コーティング布は、ポリアミド基布およびポリエステル布に対して、それぞれ2つずつ作製した。
前述のコーティング布のうち1つを室温で24時間放置した後、接着状態を揉み試験で確認した。その結果、いずれも1200回でもピンホールや剥離は無く、初期に良好な接着性を示した。もう1つは、温度80℃、相対湿度95%の湿熱試験機中に500時間保持した後に揉み試験を行った。その結果、いずれの基布も接着性は初期より低下したが600回を有していた。また、硬化シートの硬さは23、破断時の伸びは850%であった。
<実施例2>
実施例1の処方に対して、さらに成分(B−1)として以下の式(1)に示す25℃における粘度が165mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.05%)0.5部を追加したものを作製した。

HR SiO-(HRSiO)-(R SiO)-SiR H (1)

式(1)中、Rはメチル基、m=10、n=90、t=0.1である。本処方における、成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の割合は、全水素原子個数に対して24%となった。
実施例1と同様に、室温で24時間放置した後の揉み試験では、いずれも1200回以上でピンホールや剥離は見られなかった。湿熱後のポリアミド基布は800回、ポリエステル基布は600回であった。硬化シートの硬さは22、破断時の伸びは830%であった。
<実施例3>
実施例2の成分(B−1)である、25℃における粘度が35mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.8%)0.25部の替わりに、25℃における粘度が35mPa・sである両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(水素含有量0.8%)0.25部にしたものを作製した。本処方における、成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の割合は27%であった。
室温で24時間放置後の揉み試験は、いずれも1200回でピンホールや剥離は見られなかった。湿熱後のポリアミド基布およびポリエステル基布は800回であった。硬化シートの硬さは21、破断時の伸びは880%であった。
<比較例1>
実施例3の成分(B−2)である、25℃における粘度が50mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.05%)と、25℃における粘度が1000mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.01%)の替わりに、25℃における粘度が9mPa・sである両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン(水素含有量0.18%)を5部配合したものを作製した。本処方における、成分(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の割合は62%であった。
室温で24時間放置した後の揉み試験では、いずれも600回でピンホールや剥離があり、湿熱後のポリアミド基布およびポリエステル基布は200回まで接着性が大幅に低下した。硬化シートの硬さは10と柔らかく、破断時の伸びは1200%であった。
<比較例2>
実施例3の成分(E)である、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含まないものを作製した。
室温で24時間放置した後の揉み試験では、ポリアミド基布は300回でピンホールや剥離があり、湿熱後は100回まで低下した。ポリエステル基布は初期400回が湿熱後に200回まで低下した。硬化シートの硬さは24で、破断時の伸びは830%であった。
<比較例3>
実施例3の成分(G)である、チタンエチルアセトアセテートを含まないものを作製した。
室温で24時間放置した後の揉み試験では、ポリアミド基布は600回でピンホールや剥離があったが、湿熱後は200回まで低下した。ポリエステル基布は初期300回が湿熱後に100回まで低下した。硬化シートの硬さは24で、破断時の伸びは830%であった。
本発明は、自動車などのエアバッグに用いる基布のコーティング用シリコーン組成物に関し、硬化物は伸び特性に優れるため、エアバッグ作動後は所望する内圧を保持することができ、高温多湿下であっても、ポリアミド基布やポリエステル基布との接着性に優れた硬化膜を形成することができる、カーテンエアバッグなどのエアバッグとして安全性の高いエアバッグに好適に用いることができる。
近年、自動車の衝突安全性向上の要求から衝突時に展張して搭乗者を保護するエアバッグ装置の装着が増加している。このエアバッグ装置は、衝突による強い衝撃を感知するセンサー、ガスを発生するインフレターおよびインフレターから発生するガスにより膨張するエアバッグより構成される。エアバッグの基布としてはポリアミドやポリエステルなどの合成繊維製の織布が使用されるが、このままではインフレターより発生する高圧・高温ガスに対して、気密性や耐熱性、難燃性などが厳しい要求を満たさないため、該基布にシリコーン組成物をコーティングして硬化させたものを用いるのが一般的である。
しかしながら、前述のシリコーンゴム組成物では、分子鎖両末端にのみケイ素原子に結合する水素原子の割合が高くなるにつれて、分子鎖長の増長によって硬化物の切断時の伸びは高くなる反面、基布との接着に関与する分子鎖両末端以外の水素原子の割合が大幅に低下し、その結果、基布との接着性が著しく低下するという問題があった。ポリアミドやポリエステルなどの合成繊維の織物は、熱、酸素、湿度に長期間曝されると劣化するため、シリコーンコーティング布を、特に温度80℃以上、相対湿度95%以上の環境下で500時間以上保持した場合に接着性が著しく低下していた。高温多湿下において、もしインフレターの化薬劣化によってインフレーターが想定以上に高い圧力で発生ガスを生じた場合には、この問題はより重大化する危険性がある。
本発明のエアバッグコーティング用シリコーンゴム組成物は、硬化物の切断時の伸びが800%以上となるため、エアバッグ展張後も所望する内圧を保持することができ、かつ、高温多湿下の環境下でも基布との接着性に優れるため、特に高温多湿下でインフレターの化薬劣化などによりインフレーターが想定以上に高い圧力で発生ガスを生じた場合であっても正常に作動する、カーテンエアバッグなどのエアバッグとして安全性の高いエアバッグを得ることができる。

Claims (7)

  1. (A)1分子中にケイ素原子に結合するアルケニル基を2個以上含有する、25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B−1)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖の両末端以外の部分に1個以上、かつ、分子鎖の両末端に0個以上含有し、25℃における粘度が1〜2,000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
    (B−2)分子鎖の両末端にのみケイ素原子と結合する水素原子を含有し、25℃における粘度が1〜2,000mPa・sである直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
    (C)BET法による比表面積が50m/g以上の微粉末シリカ、
    (D)付加反応触媒、
    (E)1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、および
    (F)1分子中に1個のシラノール基を含有するシラン又はケイ素原子2〜4個のシロキサン化合物、
    を含有するエアバッグコーティング用シリコーン組成物であって、
    前記ジオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、前記微粉末シリカ(C)を5〜50質量部、前記有機ケイ素化合物(E)を0.1〜10質量部含有し、かつ、前記付加反応触媒(D)を前記シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量で含有し、前記直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数が、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−1)および直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2)中に含まれるケイ素原子と結合した水素原子の合計個数の10〜60%であることを特徴とするエアバッグコーティング用シリコーン組成物。
  2. (G)シリコーン組成物の接着性を向上させる働きを有する成分を、前記ジオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部、含有することを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグコーティング用シリコーン組成物。
  3. 前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−1)は、下記一般式(1)

    HR SiO-(HRSiO)-(R SiO)-SiR H (1)

    (式(1)中、Rは独立に脂肪族不飽和結合を有さない互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の非置換またはハロゲン置換の1価炭化水素基であり、mは1〜50の正数、nは0〜150の正数であり、式:t=m/(m+n)で示されるtは、0.01≦t≦1.0を満たす。)で表される化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のエアバッグコーティング用シリコーン組成物。
  4. 前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−1)は、分子鎖の両末端がトリメチルシロキシ基を有し、ケイ素原子に結合する芳香族の基を分子中に少なくとも1個含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアバッグコーティング用シリコーン組成物。
  5. 前記シリコーン組成物の接着性を向上させる働きを有する成分(G)が、有機チタン化合物、有機ジルコニア化合物、および有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる1種以上の有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアバッグコーティング用シリコーン組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン組成物の硬化物からなるエアバッグ基布。
  7. 請求項6記載のエアバッグ基布からなるエアバッグ。
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