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JP2017186405A - 接着性樹脂組成物、積層体及び延伸積層体 - Google Patents

接着性樹脂組成物、積層体及び延伸積層体 Download PDF

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JP2017186405A JP2016074348A JP2016074348A JP2017186405A JP 2017186405 A JP2017186405 A JP 2017186405A JP 2016074348 A JP2016074348 A JP 2016074348A JP 2016074348 A JP2016074348 A JP 2016074348A JP 2017186405 A JP2017186405 A JP 2017186405A
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Abstract

【課題】延伸後にも良好な接着性を示す接着層を形成し得る接着性樹脂組成物と、該接着性樹脂組成物を用いた積層体及び延伸積層体を提供する。【解決手段】下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を1〜30重量%、成分(2)を3〜13重量%、成分(C)を17〜95重量%、成分(D)を1〜40重量%含む接着性樹脂組成物。成分(A):ポリプロピレンに、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン成分(B):分子内に分岐構造を有するプロピレン系重合体成分(C):成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体【選択図】なし

Description

本発明は、接着性樹脂組成物に関する。本発明は、特に延伸後にも良好な接着性を示す接着層を形成し得る接着性樹脂組成物と、該接着性樹脂組成物を用いた積層体及び延伸積層体に関する。
ポリオレフィン系樹脂は各種分野で幅広く利用されている。ポリオレフィン系樹脂は成形性、耐薬品性には優れるものの、ガスバリア性や耐内容物性に劣る。この欠点の改良方法としてガスバリア性に優れたポリアミド樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)層との積層体とすることが広く採用されており、これらのガスバリア層とポリオレフィン系樹脂層とを接着するための接着性樹脂組成物として極性基で変性したポリオレフィンを含む接着性樹脂組成物が提供されている。
一方、ポリオレフィン系樹脂は延伸することにより、機械的強度が大幅に改良されるため、一軸又は二軸に延伸されたOPPと呼ばれる延伸フィルムが一般的に使用されている。
しかし、上記のガスバリア層を積層してガスバリア性を付与した積層ポリプロピレンを延伸させたフィルムに関しては、延伸後にガスバリア層とポリプロピレン層との接着を担う変性ポリオレフィンを含む接着性樹脂組成物の接着強度が極端に低下するために、実用に耐えないのが現状であった。
この問題に対して、例えば、特許文献1には接着性樹脂を表層に配し、縦方向に一軸延伸後にEVOH樹脂を溶解させたものを塗布し、その後横方向に再度延伸するという改良方法が開示されている。また、特許文献2には、特定のポリプロピレンブロック共重合体を有する接着性樹脂における延伸フィルムの発明が開示されている。
特開2005−288815号公報 特開2004−25460号公報
前記特許文献1に開示されている技術は、樹脂を溶解して塗布する工程を行うため、かなりの高コストとなり、さらには樹脂を溶解させる工程で多量の有機溶剤を使用するため、実用的な発明とは言い難い。
前記特許文献2に開示されている技術は、いわゆるエラストマー成分が多い特殊なポリプロピレンブロック共重合体を用いるため、キシレン溶出成分が多く、フィルムのべたつきが大きくハンドリングが難しい、また透明性が悪いなどの問題点がある。
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、延伸後の接着性にも優れる接着性樹脂組成物と、この接着性樹脂組成物を用いた積層体及び延伸積層体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン、分岐構造を有するプロピレン系重合体、ポリプロピレン系樹脂、及び熱可塑性エラストマーであるエチレン・α−オレフィン共重合体を特定比率で含有してなる接着性樹脂組成物が、ポリアミド樹脂やEVOH樹脂などのガスバリア層を有する積層体、及び延伸積層体において、延伸後も良好な接着性を発揮することを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を1〜30重量%、成分(2)を3〜13重量%、成分(C)を17〜95重量%、成分(D)を1〜40重量%含む接着性樹脂組成物。
成分(A):ポリプロピレンに、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン
成分(B):分子内に分岐構造を有するプロピレン系重合体
成分(C):成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂
成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
[2] 成分(B)のメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜60g/10分である[1]に記載の接着性樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]に記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有する積層体。
[4] 前記バリア層と前記接着性樹脂組成物からなる層とが接触している[3]に記載の積層体。
[5] [3]又は[4]に記載の積層体を用いた延伸積層体。
本発明の接着性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂やEVOH樹脂などのガスバリア層に対して、延伸後も良好な層間接着性を維持するものであるため、本発明の接着性樹脂組成物を用いて、層間接着強度に優れる積層体、並びにこの積層体を延伸してなる延伸積層体を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
なお、本発明において、樹脂のメルトフローレート(MFR)、密度、成分(A)の変性ポリプロピレンのグラフト率(変性量)は、以下のようにして測定された値である。
<MFR>
成分(A)の原料となるポリプロピレン、成分(B)のプロピレン系重合体、成分(C)のポリプロピレン系樹脂、積層体のポリプロピレン系樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体のMFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kg、19分の条件で測定される。
<密度>
JIS K7112に従い、水中置換法で測定される。
<グラフト率(変性量)>
成分(A)の変性ポリプロピレンのグラフト率(変性量)は、赤外分光測定装置で測定した際の、後述の原料ポリプロピレンにグラフトした不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(以下、「不飽和カルボン酸成分」と称す場合がある。)の含有率を意味する。例えば、変性ポリプロピレンを厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸成分特有の吸収、具体的には1,900〜1,600cm−1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。グラフト率は、上記の方法で、予め作成した検量線から求めることもできる。
以下において、共重合体(共重合樹脂)に含まれる単量体単位を単に「単位」と称す場合がある。例えば、プロピレンに基づく単量体単位を「プロピレン単位」と称し、エチレンに基づく単量体単位、α−オレフィンに基づく単量体単位をそれぞれ「エチレン単位」、「α−オレフィン単位」と称す場合がある。
〔接着性樹脂組成物〕
本発明の接着性樹脂組成物は、下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を1〜30重量%、成分(2)を3〜13重量%、成分(C)を95〜17重量%、成分(D)を1〜40重量%含むことを特徴とする。
成分(A):ポリプロピレンに、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(不飽和カルボン酸成分)をグラフトした変性ポリプロピレン
成分(B):分子内に分岐構造を有するプロピレン系重合体
成分(C):成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂
成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
[成分(A)]
本発明の接着性樹脂組成物に用いられる成分(A)である不飽和カルボン酸成分をグラフトした変性ポリプロピレンの原料となるポリプロピレン(以下「原料ポリプロピレン」と称す場合がある。)としては、プロピレンの単独重合体、或いはプロピレンを主成分とし、これと、エチレン又は1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、メチルスチレン等の不飽和芳香族化合物等のその他のビニルモノマーの1種又は2種以上との、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体を挙げることができる。
原料ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、或いは、プロピレン単位の含有量が80重量%以上であるプロピレン系ランダム共重合体が好ましい。特にプロピレン系ランダム共重合体の共重合成分としては、特にエチレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなどから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
原料ポリプロピレンのMFR(230℃、荷重2.16kg)は限定されないが、好ましくは0.2〜100g/10分、より好ましくは0.3〜50g/10分であり、更に好ましくは0.3〜20/10分である。MFRが上記下限以上であるとその他の成分との溶融混練の際、混練不足による異物を発生させることなく、成形した際に外観が良好な接着性樹脂組成物が得られ、上記上限以下のMFRを有するポリプロピレンは、溶融混練の際の押出負荷が高くなり、製造が困難となる場合がある。
上記の原料ポリプロピレンの変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3ジカルボン酸)等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステル等が例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどの誘導体であってもよい。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。
これらの不飽和カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更には、ビニルトリメトキシシランなどのいわゆるビニルシラン類などを不飽和カルボン酸成分とともに併用することもできる。
原料ポリプロピレンを不飽和カルボン酸成分により変性する方法は特に限定されるものではなく、例えば前記の原料ポリプロピレンを有機溶剤に溶解した溶液に不飽和カルボン酸成分及びラジカル発生剤等を加え、通常60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行う溶液変性法や、押出機等を使用して、上記の原料ポリプロピレンと不飽和カルボン酸成分とを原料ポリプロピレンの融点以上、例えば170〜280℃で溶融状態として、通常0.5〜10分間程度反応させることにより変性させる溶融変性法を用いることができる。
いずれの変性方法を採用するにしても、変性用の不飽和カルボン酸成分を効率良く反応させるために、ラジカル発生剤の存在下に反応を行うことが好ましい。
変性反応を行う際の原料ポリプロピレンと不飽和カルボン酸成分との配合割合は限定されないが、原料ポリプロピレン100重量部に対し、不飽和カルボン酸成分を通常0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の割合で配合することが望ましい。
ラジカル発生剤は限定されないが、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエ−ト)ヘキシン−3、ラウロイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエ−ト、tert−ブチルペルイソブチレ−ト、tert−ブチルペルピバレ−ト、及びクミルペルピバレ−ト等の有機ペルオキシドや有機ペルエステル、あるいは、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレ−ト等のアゾ化合物等を使用することができる。
これらのラジカル発生剤は、原料ポリプロピレンの種類やMFR、不飽和カルボン酸成分の種類及び反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料ポリプロピレン100重量部に対し、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、特に好ましくは0.01〜3重量部である。
成分(A)の変性ポリプロピレンにおける不飽和カルボン酸成分による変性量、即ちグラフト率は限定されないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.3〜5重量%である。
グラフト率が0.01重量%以上であると接着性が十分となる傾向にあり、10重量%以下であると、変性反応の副反応であるポリプロピレンの主鎖切断に起因する溶融粘度の低下、更には接着性の低下を抑制することができる。
これらの成分(A)は、1種のみを用いてもよく、変性に供した原料ポリプロピレンの単量体組成や不飽和カルボン酸成分の種類、グラフト率、物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(A)の含有量は、成分(A)と後述の成分(B)、成分(C)及び成分(D)との合計量に対して1〜30重量%である。成分(A)はポリアミド樹脂等のガスバリア性を有する樹脂に対する接着性能発現に寄与するが、その含有量が少な過ぎるとこの効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリアミド樹脂等のガスバリア性樹脂層に対し過剰に反応した部分を起点として外観不良を引き起こすことがあり、また、相対的に他の成分の含有量が少なくなって、他の樹脂との相溶性、成形性(流動性)、機械的強度や耐熱性等が損なわれる。以上の観点から、成分(A)の含有量は、成分(A)と後述の成分(B)、成分(C)及び成分(D)との合計量に対して好ましくは4重量%以上、より好ましくは7重量%以上であり、また、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
[成分(B)]
成分(B)の分子内に分岐構造を有するプロピレン系重合体は、ポリプロピレン鎖が分岐した構造を有するものであれば特に制限されず、プロピレン鎖の架橋構造を含むものも分岐構造に含まれる。また、通常、このプロピレン系重合体は高溶融張力ポリプロピレンと呼称され、従来の直鎖状ポリプロピレンのレオロジー的特性を改良した材料であり、電子線照や、パーオキサイドと架橋モノマーの存在下、押出機内で変性する、もしくは特殊な触媒によって重合時に枝分かれ構造を付与するなどして、分子内に分岐構造(架橋構造を含む)を付与したポリプロピレン系樹脂である。
高溶融張力ポリプロピレンとしては、例えば特開2009−275207号公報にプロピレン鎖が分岐した構造を有するプロピレン系重合体が開示されている。また、特表2015−521684号公報に架橋構造を有するプロピレン系重合体が開示されている。
成分(B)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は1〜60g/10分であることが好ましく、5〜30g/10分であることが好ましく、5〜20g/10分であることが更に好ましい。成分(B)の分岐構造を有するプロピレン系重合体のMFRが上記下限以上であると、接着性樹脂組成物の製造段階において均一分散し易く、接着性樹脂組成物の性能が均一となり、上記上限以下であると成分(B)本来の溶融張力特性を確保して、延伸時の接着強度の維持効果を十分に得ることができる。
また、成分(B)の分岐構造を有するプロピレン系重合体は、上記のMFRの範囲内において、下記式(1)を満たすことが好ましい。
(ME)≧−0.26×log(MFR)+1.9 …(1)
(式中、ME(メモリーエフェクト)は、オリフィスが長さ8.00mm、径1.00mmφのメルトインデクサーを用いて、シリンダー内温度を190℃に設定して、荷重をかけ、押出速度が0.1g/分の時に、オリフィスから押し出されたポリマーをエタノール中で急冷し、その際の押出物のストランド径をオリフィス径で除した値とする。)
成分(B)としては市販品を用いることもでき、例えば、ボレアリス社製「Daploy WB140HMS」、日本ポリプロ社製「WAYMAX MFX3」などが例示できる。
これらの成分(B)は、1種を用いてもよく、物性や構造の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、前述の成分(A)と成分(B)、後述の成分(C)及び成分(D)との合計量に対して3〜13重量%である。成分(B)は、これを配合することによる組成物全体の溶融張力向上効果で、延伸時の接着強度の維持に寄与する成分であり、成分(B)の含有量が3重量%より少ない場合、延伸時の接着強度の維持が不十分となり、13重量%より多いと、樹脂組成物全体の弾性が高くなりすぎ、逆に密着強度が低下してしまう。以上の観点から、成分(B)の含有量は、前述の成分(A)と成分(B)、後述の成分(C)及び成分(D)との合計量に対して、好ましくは4重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、また、好ましくは12重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
[成分(C)]
成分(C)は成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂であり、一般的な熱可塑性ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。成分(C)のポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンホモ重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体などが挙げられる。コモノマーとして用いるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィンなどが挙げられる。コモノマーとして用いるα−オレフィンは1種であってもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂のプロピレン単位の含有量は80重量%以上が好ましく、更に好ましくは85重量%以上である。プロピレン単位の含有量が上記下限以上であると、耐熱性の面で好ましい。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂は公知の方法によって製造される。例えば、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等の触媒を用い、バッチ法、気相法、スラリー法など公知の手段で製造される。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に制限はないが、1〜30g/10分であることが好ましく、3〜15g/10分であることがより好ましい。成分(C)のポリプロピレン系樹脂のMFRが上記上限以下であると、耐熱性、機械的強度等が良好なものとなる傾向があり、上記下限以上であると、成形性、延伸性等が良好なものとなる傾向がある。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(C)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と後述の成分(D)との合計量に対して17〜95重量%である。成分(B)は本発明の接着性樹脂組成物よりなる層の機械的強度、耐熱性、延伸性に寄与する成分であり、成分(C)の含有量が上記下限よりも少ないと、これらの特性を十分に得ることができないが、多過ぎると、相対的に他の成分の含有量が少なくなって接着性、延伸時の接着強度維持効果が損なわれる。以上の観点から、成分(C)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と後述の成分(D)との合計量に対して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、また、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
[成分(D)]
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、本発明の接着性樹脂組成物に接着性、機械的強度を付与するための成分である。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンは限定されないが、具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンとしては炭素数が3〜8であるものが好ましい。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン単位とα−オレフィン単位とを、重量比で、[エチレン単位]:[α−オレフィン単位]=60:40〜90:10で含有するものであることが好ましい。すなわち、エチレン単位の含有量とα−オレフィン単位の含有量との合計を100重量%としたときに、エチレン単位の含有量が60〜90重量%、α−オレフィン単位の含有量が10〜40重量%であることが好ましい。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレンとα−オレフィンとの共重合比率は、エチレン単位の含有量とα−オレフィン単位の含有量との合計を100重量%として、より好ましくは、エチレン含量70〜80重量%、α−オレフィン含量20〜30重量%である。
エチレン単位の含有量が上記範囲内であると、他の成分との親和性が良好となって樹脂組成物の微分散性が向上する傾向にある。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体には、エチレンと上記のα−オレフィン以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。これらの単量体単位を含有する場合の含有量は限定されないが、他の単量体単位とα−オレフィン単位との合計の含有量が、前記のα−オレフィン含量の範囲内となることが好ましい。他の単量体としては、具体的には、前記の成分(A)の原料ポリプロピレンにおける「その他のビニルモノマー」が挙げられる。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は限定されないが、0.5〜20g/10分であることが好ましく、1〜15g/10分であることがより好ましい。
MFRが上記下限以上であるとその他の樹脂との溶融混練の際、混練不足による異物の発生がなく、成形した際に外観良好な接着性樹脂組成物を得易く、また、上記上限以下であると、成分(D)が配向することなく微分散性が保たれるために好ましい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は限定されないが、通常0.88g/cm以下、好ましくは0.87g/cm以下であることが望ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記上限以下であると成形時の歪緩和効果が十分となり層間接着強度が向上する傾向がある。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度の下限は限定されないが、通常0.85g/cm以上である。
本発明に好適なエチレン・α−オレフィン共重合体としては市販品を用いることもでき、例えば、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、DOW社「エンゲージ(登録商標)」シリーズ等の中から前記の特性に該当するものを適宜選択することができる。
これらの成分(D)は、1種のみを用いてもよく、エチレン単位の含有量や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と成分(D)との合計量に対して1〜40重量%である。
成分(D)は、機械的強度や、ポリアミド樹脂等のガスバリア性の樹脂に対する接着性能を補強すると共に成形時の歪を緩和し、層間接着力を向上させる効果を発現する成分であるが、その含有量が少な過ぎると上記効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリプロピレン系樹脂組成物本来の特徴である耐熱性が損なわれ、樹脂組成物全体の耐熱性が低下してしまう。以上の観点から、成分(D)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と成分(D)との合計量に対して好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
<その他の成分>
本発明の接着性樹脂組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤や樹脂等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
添加剤としては、一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、具体的には、プロセス油、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。
このうち、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
これらの添加剤を用いる場合、その含有量は限定されないが、本発明の接着性樹脂組成物中の含有量として、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、また、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下であることが望ましい。なおこれらの添加剤は、本発明の接着性樹脂組成物をマスターバッチとして用いる場合には、前記した含有量の2〜50倍、好ましくは3〜30倍の濃度で含有させることもできる。
その他の成分として用いる樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
本発明の接着性樹脂組成物がこれらのその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100重量部に対して30重量部以下であることが好ましい。
<製造方法>
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)と、必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、本発明の接着性樹脂組成物を製造するための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分(A)〜(D)、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
各成分の溶融混練の温度は、通常100℃〜300℃の範囲、好ましくは120℃〜280℃の範囲、特に好ましくは150℃〜250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)〜(D)と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法、又は(A)〜(D)と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有し、好ましくは、本発明の接着性樹脂組成物からなる層とガスバリア層とが直接接しているものである。
<接着層>
本発明の積層体における本発明の接着性樹脂組成物からなる層は通常接着層であり、その厚みとしては限定されるものではなく、用途や被接着層の種類等に応じて適宜決定されるが、通常1〜100μmの範囲であることが好ましく、更には2〜50μmの範囲であることが好ましく、特に3〜20μmの範囲であることが好ましい。
<ガスバリア層>
本発明において、ガスバリア層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
エチレン・ビニルアルコール共重合体は、通常エチレン・酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、本発明においては、そのエチレン単位の含有量が20〜50モル%で、鹸化度が95%以上のものが好ましい。なお、鹸化度の上限は100%である。エチレン・ビニルアルコール共重合体のエチレン単位の含有量が少な過ぎると熱分解し易く、溶融成形が困難で、また延伸性にも劣り、かつ吸水し膨潤し易く耐水性が劣るものとなる。一方、エチレン・ビニルアルコール共重合体のエチレン単位の含有量が多過ぎると、耐ガス透過性が低下する傾向がある。また、鹸化度が低過ぎる場合には、耐ガス透過性が低下する傾向がある。
ポリアミド樹脂としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミンと、アジピン酸、スペリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸との重縮合体、及びこれらの共重合体であって、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6等があり、中でもナイロン6、ナイロンMXD6が好ましい。
ガスバリア層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途や樹脂種、要求特性等によって適宜決定されるが、通常2〜200μm、好ましくは3〜100μmである。
<ポリプロピレン系樹脂層>
ポリプロピレン系樹脂層は、本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層のみからなるものであってもよく、その他のポリプロピレン系樹脂層との積層構造であってもよい。
その他のポリプロピレン系樹脂層を構成するプロピレン系樹脂とは、プロピレン含量が50モル%以上のプロピレン系樹脂である。具体的には、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体を挙げることができ、中でもMFR(230℃,2.16kg)0.1〜30g/10分の、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、特にプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
その他のポリプロピレン系樹脂層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途や樹脂種、要求特性等によって適宜決定されるが、通常20〜5,000μm、好ましくは30〜4,000μmである。
なお、上記のポリプロピレン系樹脂層、及び前述のガスバリア層には、その目的を損なわない範囲において、本発明の接着性樹脂組成物或いはその成分を含んでいてもよく、また、前述の本発明の接着性樹脂組成物が含有していてもよいその他の成分や添加剤を含有していてもよい。
<その他の層>
本発明の積層体は、更にその他の層が積層されていてもよい。
その他の層としては特に制限されることはない。例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂等からなる樹脂層や、プロピレン系樹脂以外のオレフィン系重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂などのその他の熱可塑性樹脂層などが挙げられる。
<層構成>
本発明の積層体としては、例えば、ガスバリア層の両面に本発明の接着性樹脂組成物層を介して前述のその他のポリプロピレン系樹脂層を積層してなる5層の積層体、即ち、ポリプロピレン系樹脂層/本発明の接着性樹脂組成物層/ガスバリア層/本発明の接着性樹脂組成物層/ポリプロピレン系樹脂層の層構造を有するものが挙げられる。この場合、2つのポリプロピレン系樹脂層は同一のポリプロピレン系樹脂よりなるものであってもよく、異なるポリプロピレン系樹脂よりなるものであってもよい。また、これ以外に、層構成が非対称構成であってもよいし、ガスバリア層を複数層有していてもよい。
<積層体の厚み>
本発明の積層体が多層シートである場合、その総厚みは200〜5,000μmであることが好ましい。また、本発明の積層体が多層フィルムである場合、その総厚みは30〜200μmであることが好ましい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造する方法(以下、「一次加工」と称す場合がある。)としては、従来より公知の種々の手法を採用することができる。例えば、押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層する共押出法によるインフレーション成形、T−ダイ成形によるフィルム成形もしくはシート成形を行う方法が挙げられる。さらに、単体又は他樹脂との共押出しにより得られた本発明の接着性樹脂組成物フィルムと被着材フィルムとの熱ラミネート、ヒートシール等による積層法を用いることもできる。
以下、共押出法について詳細に説明する。
上記の各層を構成する組成物の原料を予め溶融混練若しくはドライブレンドによって調製し、単軸、2軸などの押出成形法により押出し、フィードブロック、マルチマニフォールドダイなどで合流し積層構造にし、所定の形状のダイから押出して、冷却後、フィルム形状の場合は巻き取り機で巻き取る。共押出成形法における押出し温度は、ガスバリア層の樹脂の特性によって適時選択されるが、一般的に300℃以下に抑制するのが好ましい。フィルムの引き取り速度(m/h)は所望の厚みに応じて適時設定し、押出機の基材原料の吐出量(g/h)は、用いる原料の種類、目的とするフィルムの各層厚み等により適宜選択することが好ましい。冷却方法は公知の方法を採用することができるが、例として、ロール上へのキャスト冷却、ないしはエアナイフによる冷却、丸ダイスから押出してブローアップによる冷却などの方法により冷却して、積層体を得る。
[延伸積層体の作成方法]
本発明の延伸積層体は、上記のようにして製造された本発明の積層体を延伸してなるものである。
本発明の延伸積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。例えば、上記の方法で得られた未延伸の積層体を冷却固化後、インライン、又はオフラインで60〜160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグおよび圧縮空気等を用い一軸方向、あるいは二軸方向に少なくとも面積比で1.5倍以上延伸を行い、一軸又は二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形体を得る方法が挙げられる。延伸倍率としては、面積比で通常1.5〜50倍であり、好ましくは1.5〜20倍である。延伸倍率が1.5倍未満では前述した延伸の効果は得られず、50倍を超えると成形時に破断が生じることがあるなど延伸積層体の強度が低下する傾向となる。
インフレーションフィルムを製造する場合は、インフレ同時二軸延伸法、Tダイフィルムの場合はテンター同時二軸延伸法、ロールおよびテンターに因る逐次二軸延伸法等の方法を用いることができる。
また、本発明の延伸積層体は必要に応じて、延伸後再加熱、すなわちヒートセットを行うことにより更に耐熱性を向上させ(ただし、収縮性はやや低下する)こともできる。また、本発明の延伸積層体と別途製造されたフィルムを積層して積層体とすることもできる。
[用途]
本発明の接着性樹脂組成物は、ガスバリア性の樹脂に対して優れた接着強度特性を示し、延伸加工後においても高い層間接着強度を維持する。このため、このような本発明の接着性樹脂組成物を接着層とする本発明の積層体及び延伸積層体は、優れた接着強度特性を示し、更に強度、耐熱性及びガスバリア性等にも優れたものとすることができる。従って、本発明の積層体及びこの積層体から製造される延伸積層体は、ハム等の畜肉包装フィルムなどの一般食品包装用材料、意匠包装やラベル等に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原材料]
以下の諸例では次の原材料を使用した。
<成分(A)>
・A−1
以下の方法で製造した変性ポリプロピレンを成分(A)の変性ポリプロピレンA−1とした。
市販のポリプロピレン単独重合体(密度0.90g/cm、MFR(230℃,荷重2.16kg)0.5g/10分)5kgに対し、無水マレイン酸100g及び有機化酸化物(日本油脂社製、パーブチルI)75gを加えて混合し、予め230℃に設定した二軸押出機に投入し、溶融混合してストランドカットによりペレット状の変性ポリプロピレンA−1を得た。この変性ポリプロピレンのA−1のグラフト率は1重量%である。
<成分(B)>
・B−1
架橋構造を有するプロピレン系重合体として、ボレアリス社のDaploy WB140HMS(MFR(230℃、荷重2.16kg)2.1g/10分)を用いた。
・B−2
長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体として、日本ポリプロ株式会社製のWAYMAX(登録商標) MFX3(MFR(230℃、荷重2.16kg)7g/10分)を用いた。
<成分(C)>
・C−1
ポリプロピレン系樹脂として、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)PP EG7F(MFR(230℃、荷重2.16kg)2g/10分、成分(A)及び成分(B)に該当しないもの)を用いた。
<成分(D)>
・D−1
エチレン・α−オレフィン共重合体として、DOW社のエンゲージ(登録商標)7467(エチレン・ブテン共重合体、エチレン単位含有量60重量%、MFR(190℃、荷重2.16kg)1.2g/10分 密度0.862g/cm)を用いた。
[接着性樹脂組成物の作成]
上記に記載した原材料を、それぞれ表−1に記載の配合量にてドライブレンドして混合し、単軸押出機(IKG社製、PSM50−32(1V)、D=50mmφ、L/D=32)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数60rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の接着性樹脂組成物を得た。
[多層積層体の成形]
上記で得られた接着性樹脂組成物を接着層とし、以下の製造方法により多層積層体を得た。
プラ技研社製多層押出フィルム成形機(各層の押出機:40mmφ,450mm幅マルチマニフォールドダイス、リップ開度:0.5mm)を用いて、3種5層多層フィルムを得た。層構成は、ポリプロピレン層/接着層/ナイロン層/接着層/ポリプロピレン層とし、各層厚みを35μm/10μm/10μm/10μm/35μmとし、多層フィルムの全厚みを100μmとした。ポリプロピレン層、ナイロン層には、以下のものを用いた。成形温度は280℃、成形速度は20m/分とし、冷却は、冷却ロール(温度30℃)を用いた後、エアナイフ冷却を行うことにより実施した。なお、上記のポリプロピレン層、ナイロン層には以下のものを用いた。
ポリプロピレン層:日本ポリプロ社製 ポリプロピレン系樹脂 ノバテック(登録商標)PP FL4
ナイロン層:DSM社製 ポリアミド樹脂 PA6 1040
[延伸加工]
上記で得られた多層フィルムをバッチ式延伸機にて二軸延伸加工を実施した。延伸温度は140℃、延伸倍率は3×3倍とした。
[接着強度の測定]
上記で得られた延伸加工前の多層フィルムと延伸加工後の多層延伸フィルムをそれぞれ押出方向(MD方向)に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃雰囲気下、速度300mm/minにて180°ピール剥離試験を行い、延伸加工前後の接着強度を測定した。また、延伸加工前の接着強度に対する延伸加工後の接着強度の割合(百分率)を接着強度維持率として算出した。ここで、接着強度は、ナイロン層と接着層との界面における接着強度である。
表−1に各実施例及び比較例の結果を示す。
Figure 2017186405
表−1より明らかなように、本発明の接着性樹脂組成物を用いた実施例1〜3の多層フィルムでは、延伸後の接着強度は延伸前に対して5%以上を維持しており、接着強度維持率が高かった。これに対して成分(B)を含まない比較例1では接着強度維持率が低かった。また、成分(B)の含有量が多過ぎる比較例2,3でも、延伸後の接着強度が低く、接着強度維持率が低かった。更に、成分(D)を含まない比較例4では延伸前の接着強度も低い。成分(A)を含まない比較例5では、接着しなかった。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量に対して成分(A)を1〜30重量%、成分(2)を3〜13重量%、成分(C)を17〜95重量%、成分(D)を1〜40重量%含む接着性樹脂組成物。
    成分(A):ポリプロピレンに、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン
    成分(B):分子内に分岐構造を有するプロピレン系重合体
    成分(C):成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂
    成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
  2. 成分(B)のメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜60g/10分である請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有する積層体。
  4. 前記バリア層と前記接着性樹脂組成物からなる層とが接触している請求項3に記載の積層体。
  5. 請求項3又は4に記載の積層体を用いた延伸積層体。
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