JP2013229320A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】負極がシリコンであり、満充電状態の負極における示差走査熱量計で210℃から380℃の範囲で計測される発熱量が850J/g以下であり、電解液にエチレンカーボネートを含む環状カーボネートと化学式がR1−O−CO−OR2で表され、R1及びR2が炭素数2以上のアルキル基である鎖状カーボネートを用いる。
【選択図】図1
Description
そこで、Siの充放電サイクルでの劣化を抑制するため各種の方法が提案されている。たとえば、特許文献1に記載されたようにSiの利用率を制限する方法が挙げられる。しかし、Siの利用率を制限しては実質的な放電容量が低下してしまい、充放電サイクルを繰り返した場合の特性の劣化を防ぐことはできない。また、Siを使用した電池の安全性向上を目的とした検討はこれまでなされていなかった。
[リチウムイオン二次電池]
電極10、20について具体的に説明する。電極10、20は、集電体12、22と、集電体12、22の表面に形成された活物質及びバインダーを含む活物質層14、24と、を備える。
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
バインダーの材質としては、上述の結合が可能であればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
ここで、満充電とは、負極ハーフセルを負極活物質に対する電流密度が10mA/gとなる電流値で負極の電位が5mV(vs. Li/Li+)となるまで充電を行った状態のことを指す。
220℃付近の発熱ピークが発生しないとは、基本的に、220℃付近の発熱ピークが消滅していることを指す。熱処理前と比較して、ピーク面積が1/10以下となっていれば好ましい。
本実施形態に係る電極10,20の製造方法は、電極活物質層14,24の原料である塗料を、集体上に塗布する工程(以下、「塗布工程」ということがある。)と、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去し、電極活物質層を形成する工程(以下、「溶媒除去工程」ということがある。)と、を備える。
塗料を集電体12、22に塗布する塗布工程について説明する。塗料は、上記活物質、バインダー、及び溶媒を含む。塗料には、これらの成分の他に、例えば、活物質の導電性を高めるための導電材が含まれていてもよい。溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
活物質、バインダー、溶媒、導電材等の塗料を構成する成分の混合方法は特に制限されず、混合順序もまた特に制限されない。例えば、まず、活物質、導電材及びバインダーを混合し、得られた混合物に、N−メチル−2−ピロリドンを加えて混合し、塗料を調整する。
上記塗料を、集電体12、22に塗布する。塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
続いて、集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する。除去法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
さらに負極のところでも説明したが、本発明では圧延工程が終わった時点で負極の熱処理を行ってもよい。負極の熱処理時の雰囲気は真空中、N2中、Ar中など不活性雰囲気下で行うが、真空中が好ましい。充電されていない負極活物質、SiとSiOは示差走査熱量計により熱量を測定すると、220℃付近に発熱ピークが存在するが、負極活物質を不活性雰囲気下で熱処理することによってこのピークが発生しないようにすることができる。熱処理は220℃以上の温度で行うことが好ましい。また熱処理時間は1時間以上あればよい。
本発明にかかる電解液は環状カーボネートと鎖状カーボネートからなる溶媒に支持塩となる各種電解質、および各種添加剤からなる。
環状カーボネートとしては例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられ、少なくともエチレンカーボネートを含む。
鎖状カーボネートとしては、化学式がR1−O−CO−OR2で表され、R1及びR2が炭素数2以上のアルキル基であるカーボネートが用いられる。例えばジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどが挙げられる。特に、ジエチルカーボネートを用いるのが電解液の導電性の観点から好ましい。
R1−O−CO−OR2のR1及びR2の片方、もしくは両方がメチル基であるカーボネート、例えばジメチルカーボネートを用いた場合、シリコン電極上で分解が起こり、負極の充電がなされないため不向きである。
以上、本発明の非水電解液、電極、ならびに、当該電解液及び電極を備えるリチウムイオン二次電池およびそれらの製造方法の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
[負極の作成]
負極活物質として、Si、SiOをSi/SiO=1/2(重量比)で混合し、遊星ボールミルを用いて粉砕混合を行ったものを使用した。
遊星ボールミルのメディアは直径3mmのアルミナビーズを用い、回転数は500rpmとし、粉砕混合時間は60minとした。
負極活物質として前記SiとSiOの混合物を87質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを3質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを10質量部とを混合して負極合剤とした。この負極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを溶媒として混合し、塗料を作成した。この塗料を集電体である銅箔(厚さ15μm)にドクターブレード法で塗布し、80℃で乾燥させた後、圧延し、銅箔表面に負極活物質層を形成した。銅箔には、外部引き出し端子を接続するために、塗料を塗布しない部分を設けておいた。これを350℃で3時間真空中で乾燥した。外部引き出し端子としては、外装体とのシール性を向上させる目的で、ニッケル箔に、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレンを巻き付けたものを用意した。このニッケル箔と上記塗料を塗布し乾燥した後の銅箔とを超音波溶接した。
正極活物質としてLi(Ni0.85Co0.10Al0.05)O2、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン、導電助剤としてカーボンブラック及び黒鉛を、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として混合し、塗料を作成した。この塗料を集電体であるアルミ箔(厚さ20μm)にドクターブレード法で塗布し、100℃で乾燥させた後、圧延し、アルミ箔表面に正極活物質層を形成した。なお、アルミ箔には、外部引き出し端子を接続するために、塗料を塗布しない部分を設けておいた。外部引き出し端子としては、外装体とのシール性を向上させる目的で、アルミ箔に、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレンを巻き付けたものを用意した。このアルミ箔と上記塗料を塗布し乾燥した後のアルミ箔とを超音波溶接した。
エチレンカーボネートを30vol%、ジエチルカーボネートを70vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させ、電解液を作成した。
上述のようにして作製した正極、負極、並びにセパレータ(ポリオレフィン製の微多孔質膜)を所定の寸法に切断した。切断した正極、負極、セパレータを負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順序で積層し、フルセル用積層体を作製した。この積層体を封入する外装体はアルミラミネート材料から成り、その構成は、ポリエチレンテレフタレート(12μm)/Al(40μm)/ポリプロピレン(50μm)であった。なお、この時ポリプロピレンが内側となるように製袋した。この外装体の中に上記積層体を入れ、上述のようにして作製した電解液を適当量添加し外装体を真空密封し、リチウムイオン二次電池セル(以下セル)を作製した。
上述のようにして作製したセルを充放電試験機で、正極活物質に対する電流密度が10mA/gとなる電流値で3時間充電を行った。その後セルの内部に発生したガスを取除いたあと、再び充放電試験機を用いて正極活物質に対する電流密度が19mA/gとなる電流値で正極の電位が4.2V(vs. Li/Li+)になるまで充電し、そのあと正極活物質に対する電流密度が19mA/gとなる電流値で正極の電位が2.5V(vs. Li/Li+)になるまで放電を行った。
上述のようにして作成したセルを充放電試験機で、充放電レートを0.5C(25℃で定電流放電を行ったときに5時間で放電終了となる電流値)でセル電圧が4.2Vとなるまで充電したあとセル電圧が2.5Vとなるまで放電した場合の放電容量(単位:mAh)を測定した。これを400回繰り返した。そのときの放電容量の変化を表1に示す。
発熱量の測定用に対極がリチウム金属箔である負極ハーフセルを別途作製し、使用した。負極電極、セパレータを所定の寸法に切断した後、負極、セパレータ、リチウム金属をこの順序で積層し、負極ハーフセル用積層体を作成した。作製した電解液を適当量添加し外装体を真空密封し、負極ハーフセルを作製した。なお、負極電極をハーフセル用に集電体の片側のみに負極活物質層を形成したこと以外は上述したリチウムイオン二次電池セルと同じ部材を使用した。作製したセルを負極活物質に対する電流密度が10mA/gとなる電流値で負極の電位が5mV(vs. Li/Li+)となるまで充電を行った。この状態を満充電状態とする。その後、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で負極活物質層を一部取り出し、約1mgを直径5mmのSUS製の容器に入れSUS製の蓋で密閉した。そして試料をグローブボックスから出し、示差走査熱量計にて発熱量を測定した。なお、測定範囲は25℃〜400℃、昇温速度は10℃/minであり、参照物質は、アルミナ(示差走査熱量計付属品)であった。また、発熱量は210℃から380℃の範囲に現れるピークの面積の積算で計算した。
電解液としてエチレンカーボネートを10vol%、プロピレンカーボネートを20vol%、ジエチルカーボネートを70vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
負極活物質を350℃、3時間の条件で真空乾燥を行い、その後負極電極を作製した。負極電極とした後には熱処理は行わなかった。それ以外は実施例1と同じである。
電解液としてエチレンカーボネートを30vol%、ジエチルカーボネートを40vol%、エチルプロピルカーボネートを30vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
電解液としてエチレンカーボネートを30vol%、ジエチルカーボネートを50vol%、ジプロピルカーボネートを20vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
電解液としてエチレンカーボネートを30vol%、エチルメチルカーボネートを70vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
負極電極を真空中で乾燥させずにそのまま使用した。それ以外は実施例1と同様である。
負極電極を真空中で乾燥させずにそのまま使用した。さらに、電解液としてエチレンカーボネートを10vol%、プロピレンカーボネートを20vol%、ジエチルカーボネートを70vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
電解液としてプロピレンカーボネートを30vol%、ジエチルカーボネートを70vol%の割合で混合した溶液に、濃度1MでLiPF6を溶解させたものを使用した。それ以外は実施例1と同様である。
さらに負極電極の発熱量も実施例は比較例と比べていずれも低下しており、安全性が向上している。
なお、比較例1および比較例4はいずれも発熱していない。これは負極電極は充電がなされていない場合ほとんど発熱ピークを示さないことに起因している。比較例1および4は初回充放電時に実施例や他の比較例と比べて放電容量が大幅に低く、実質的にほとんど充電されていない状態となっている。発熱量測定用のハーフセルでもほとんど充電されなかった。そのため、示差走査熱量計による測定でも充電されていない電極と同じように発熱ピークを示さなかったものと推察される。
出願当時はわからなかったが、負極活物質であるSiOを220℃以上で熱処理することによって相変化が起こり、より安定な物質になるために、満充電状態での発熱量が低下することが後にわかった。従って、真空乾燥以外にもArなどの不活性雰囲気下での高圧加熱や長時間のメカニカルミリングによる相変化でも同様の効果が期待できる。
Claims (3)
- 正極、負極、電解液を備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記負極はシリコンを含み、かつ、満充電における示差走査熱量計で210℃から380℃の範囲で計測される発熱量が850J/g以下であり、
前記電解液は鎖状カーボネート及び環状カーボネートを有し、
前記鎖状カーボネートは化学式がR1−O−CO−OR2で表され、R1及びR2が炭素数2以上のアルキル基である化合物であり、
前記環状カーボネートはエチレンカーボネートを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 前記鎖状カーボネートがジエチルカーボネートであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記負極が不活性雰囲気下で熱処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
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