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JP2017066444A - Niコート銅粉及びそれを用いた導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート、並びにNiコート銅粉の製造方法 - Google Patents

Niコート銅粉及びそれを用いた導電性ペースト、導電性塗料、導電性シート、並びにNiコート銅粉の製造方法 Download PDF

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Hiroshi Okada
浩 岡田
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Abstract

【課題】Ni又はNi合金を被覆した樹枝状銅粉同士が接触する際における接点を多くして優れた導電性を確保しつつ、凝集を防止して、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる樹枝状のNiコート銅粉を提供する。【解決手段】本発明に係るNiコート銅粉は、樹枝状に成長した主幹2とその主幹2から分かれた複数の枝3とを有する形状の銅粒子1が集合してなり、表面にNi又はNi合金が被覆されたNiコート銅粉であって、銅粒子1の主幹2及び枝3の断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状であり、当該Niコート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜30μmである。【選択図】図1

Description

本発明は、表面にニッケル(Ni)又はNi合金を被覆した銅粉(ニッケルコート銅粉)に関するものであり、より詳しくは、導電性ペースト等の材料として用いることで導電性を改善させることのできる新たな樹枝状形状のニッケルコート銅粉に関する。
電子機器における配線層や電極等の形成には、樹脂型ペーストや焼成型ペースト、電磁波シールド塗料のような、銅粉、銀粉等の金属フィラーを使用したペーストや塗料が多く用いられている。銅粉、銀粉等の金属フィラーペーストは、各種基材上に塗布又は印刷され、加熱硬化や加熱焼成の処理を受けて、配線層や電極等となる導電膜を形成する。
例えば、樹脂型導電性ペーストは、金属フィラーと、樹脂、硬化剤、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、100℃〜200℃で加熱硬化させて導電膜として配線や電極を形成する。樹脂型導電性ペーストは、熱によって熱硬化型樹脂が硬化収縮するため、金属フィラーが圧着されて接触することで金属フィラーが重なり、電気的に接続した電流パスが形成される。この樹脂型導電性ペーストは、硬化温度が200℃以下で処理されることから、プリント配線板等の熱に弱い材料を使用している基板に用いられている。
また、焼成型導電性ペーストは、金属フィラーと、ガラス、溶剤等からなり、導電体回路パターン又は端子の上に印刷され、600℃〜800℃に加熱焼成させて導電膜として配線や電極を形成する。焼成型導電性ペーストは、高い温度によって処理することで、金属フィラーが焼結して導通性が確保されるものである。この焼成型導電性ペーストは、焼成温度が高いため、樹脂材料を使用するようなプリント配線基板には使用できないものの、高温処理で金属フィラーが焼結することから低抵抗を実現することが可能となる。そのため、焼成型導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの外部電極等に用いられる。
一方、電磁波シールドは、電子機器からの電磁気的なノイズの発生を防止するために使用されるもので、特に近年では、パソコンや携帯の筐体が樹脂製になったことから、筐体に導電性を確保するために、蒸着法やスパッタ法で薄い金属皮膜を形成する方法や、導電性の塗料を塗布する方法、導電性のシートを必要な箇所に貼り付けて電磁波をシールドする方法等が提案されている。その中でも、樹脂中に金属フィラーを分散させて塗布する方法や樹脂中に金属フィラーを分散させてシート状に加工してそれを筐体に貼り付ける方法では、加工工程において特殊な設備を必要とせず自由度に優れており多用されている。
しかしながら、このような金属フィラーを樹脂中に分散させて塗布する場合やシート状に加工する場合においては、金属フィラーの樹脂中における分散状態が一様にならないため、電磁波シールドの効率を得るために金属フィラーの充填率を高める等の方法が必要となる。ところが、その場合には、多量の金属フィラーの添加することによってシート重量が重くなるとともに、樹脂シートの可撓性を損なう等の問題が発生していた。そのため、例えば特許文献1においては、それらの問題を解決するために平板状の金属フィラーを使用する方法が提案されており、このことによって、電磁波シールド効果に優れ、可撓性も良好な薄いシートを形成することができるとしている。
このような導電性ペーストや電磁波シールド材の金属フィラーとして用いられる金属粉材料としての銅粉は、酸化すると表面が酸化銅で覆われ、焼結性、耐食性、あるいは導電性に悪影響を与える原因となる。このため、銅粉の酸化を防止するために、銅粒子表面にPt、Pd、Ag、Au等の貴金属でコートしたものや、SiO系の酸化物でコートしたもの、またはNiでコートして耐酸化性を高めたもの等が知られている。例えば、特許文献2には、銅粉表面にニッケル(Ni)を被覆したニッケルコート銅粉が開示されている。
一方、金属フィラーとして使用される銅粉の形状は、球状、平板状、樹枝状等が用いられており、特に平板状の銅粉は、粒状や樹枝状の銅粉に比べてフィラー同士の接点面積を多く確保できることから、低抵抗の導電性ペーストの用途として広く使われている。このような平板状の銅粉を作製する方法としては、特許文献3に、球状銅粉を機械的に扁平状に加工してフレーク状銅粉を得る方法が開示されている。具体的には、平均粒径0.5μm〜10μmの球状銅粉を原料として、ボールミルや振動ミルを用いて、ミル内に装填したメディアの機械的エネルギーにより機械的に平板状に加工するものである。
また、例えば特許文献4では、導電性ペースト用銅粉末、詳しくはスルーホール用及び外部電極用銅ペーストとして高性能が得られる円盤状銅粉末及びその製造方法に関する技術が開示されている。具体的には、粒状アトマイズ銅粉末を媒体撹拌ミルに投入し、粉砕媒体として1/8インチ〜1/4インチ径のスチールボールを使用して、銅粉末に対して脂肪酸を重量で0.5%〜1%添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工するものである。
ここで、これら導電性ペーストや電磁波シールド用に使用されている金属フィラーとしては、銀粉が用いられており、また上述のように、銅粒子表面にPt、Pd、Ag、Au等の貴金属をコートして十分な耐酸化性を付与したものが用いられている。しかしながら、これらは高価なためコストアップになる。その中でも、銅粉に対してAgをコートしたものでは、比較的低価格に抑えることも可能であるが、Agではマイグレーションが発生しやすいといった問題がある。また、銅粉に対してSiO系の酸化物で表面をコートする場合も、耐酸化性を確保できるものの、焼結性が悪くなる等の問題がある。
耐酸化性等を確保しつつ、低価格であって、しかも焼結性が比較的良好なものとして、銅粉に対してニッケルをコートする方法が挙げられる。
銅粉の表面にニッケルを被覆する方法としては、無電解ニッケルめっきによる方法が挙げられる。無電解ニッケルめっきによる被覆方法は、めっき液中のニッケルイオンを還元剤によって還元することによって銅粉表面にニッケル被覆を行うもので、還元剤の種類としては、次亜リン酸塩、ホウ水素化合物、及びヒドラジン化合物等が挙げられる。具体的に、還元剤として次亜リン酸塩を用いたニッケル被膜処理では、還元反応中にリンが被膜中に含有するため、Ni−P合金被膜が形成される。また、還元剤としてホウ水素化合物を用いたニッケル被膜処理では、還元反応中にボロンが被膜中に含有するため、Ni−B合金被膜が形成される。また、還元剤としてヒドラジン化合物を用いたニッケル被膜処理では、不純物の少ない高純度なNi被膜が形成される。
さて、銅粉としては、デンドライト状と呼ばれる樹枝状に析出した電解銅粉が知られており、形状が樹枝状になっていることから表面積が大きいことが特徴となっている。このようにデンドライト状の形状であることにより、これを導電膜等に用いた場合には、そのデンドライトの枝が重なり合い、導通が通りやすく、また球状粒子に比べて粒子同士の接点数が多くなることから、導電性ペースト等の導電性フィラーの量を少なくすることができるという利点がある。例えば、特許文献5には、銅表面にNi合金層を形成しその上にAgコートを行って耐酸化性を確保する技術が開示され、ここで用いられる銅粉として、樹枝状の電解銅粉が粒子同士のからみあいの観点から好適である旨が記載されている。
一方、電解銅粉の樹枝を発達させると、導電性ペースト等に用いた場合に電解銅粉同士が必要以上に絡み合って凝集が発生してしまい樹脂中に均一に分散しなくなり、また流動性が低下して非常に扱い難くなり、印刷等による配線形成に問題が生じて生産性を低下させることの指摘が特許文献6に示されている。なお、特許文献6では、電解銅粉自体の強度を高めるため、電解銅粉を析出させるための電解液の硫酸銅水溶液中にタングステン酸塩を添加することで、電解銅粉自体の強度を向上させ、樹枝を折れ難くし、高い強度に成形することができるとしている。
このように、樹枝状の銅粉を導電性ペースト等の金属フィラーとして用いるのは容易でなく、ペーストの導電性の改善がなかなか進まない原因ともなっていた。
導電性を確保するためには、3次元的な形状を有する樹枝状形状の方が粒状のものよりも接点を確保しやすく、導電性ペーストや電磁波シールドとして高い導電性を確保することが期待できる。しかしながら、従来のデンドライト状の形状を呈したニッケル被覆銅粉では、主軸から分岐した長い枝が特徴であるデンドライトであって、細長い枝状の形状であったことから、接点を確保する点から考えると構造が単純であり、より少ないニッケル被覆銅粉を用いて効果的に接点を確保する形状としては理想的な形状となっていない。
特開2003−258490号公報 特開平5−342908号公報 特開2005−200734号公報 特開2002−15622号公報 特開2002−075057号公報 特開2011−58027号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ニッケルを被覆した樹枝状銅粉同士が接触する際における接点を多くして優れた導電性を確保しつつ、凝集を防止して、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができる樹枝状形状のニッケルコート銅粉を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するための鋭意検討を重ねた。その結果、樹枝状に成長した主幹とその主幹から分かれた複数の枝とを有する形状であり、且つ、断面平均厚さが特定の範囲である平板状の銅粒子が集合してなり、表面にNi又はNi合金が被覆されたNiコート銅粉であって、当該Niコート銅粉の平均粒子径が(D50)が特定の範囲であることにより、優れた導電性を確保しつつ、凝集を防止して、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途として好適に利用することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、樹枝状に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する形状の銅粒子が集合してなり、表面にNi又はNi合金で被覆されたNiコート銅粉であって、前記銅粒子の主幹及び枝の断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状であり、当該Niコート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜30μmであることを特徴とする樹枝状Niコート銅粉である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記銅粒子の表面に微細な凸部があり、該凸部の平均高さが0.01μm〜0.4μmである、樹枝状Niコート銅粉である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、Ni又はNi合金として被覆されているNiの含有量が、当該樹枝状Niコート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%である、樹枝状Niコート銅粉である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記銅粒子の表面にNi合金が被覆されており、コバルト、亜鉛、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、スズ、リン、及びボロンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を、前記Ni合金の質量100%に対して0.1質量%〜20質量%の含有量で含むNi合金で被覆されている、樹枝状Niコート銅粉である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、嵩密度が0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲である、樹枝状Niコート銅粉である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、BET比表面積が0.2m/g〜5.0m/gである、樹枝状Niコート銅粉である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明に係る樹枝状Niコート銅粉を、全体の20質量%以上の割合で含有していることを特徴とする金属フィラーである。
(8)本発明の第8の発明は、第7の発明に係る金属フィラーを樹脂に混合させてなることを特徴とする導電性ペーストである。
(9)本発明の第9の発明は、第7の発明に係る金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性塗料である。
(10)本発明の第10の発明は、第7の発明に係る金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性シートである。
(11)本発明の第11の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明に係るNiコート銅粉を製造する方法であって、電解法により電解液から陰極上に銅粉を析出させる工程と、前記銅粉にニッケル(Ni)又はNi合金を被覆する工程と、を有し、前記電解液に、銅イオンと、下記式(1)で表される、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物から選択される1種又は2種以上と、を含有させて電解を行うことを特徴とするNiコート銅粉の製造方法である。
[式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、Aは、ハライドアニオンである。]
本発明に係るNiコート銅粉によれば、優れた導電性を確保しつつ、銅粉同士が接触する際の接点を十分に確保することができ、また凝集を防止して樹脂等と均一に混合させることができて、導電性ペーストや電磁波シールド等の用途に好適に用いることができる。
樹枝状ニッケルコート銅粉を構成するニッケル又はニッケル合金が被覆された銅粒子の具体的な形状を模式的に示した図である。 ニッケル又はニッケル合金を被覆する前の樹枝状銅粉を走査電子顕微鏡により倍率10,000倍で観察したときの観察像を示す写真図である。 樹枝状ニッケルコート銅粉を走査電子顕微鏡により倍率5,000倍で観察したときの観察像を示す写真図である。 別の箇所の樹枝状ニッケルコート銅粉を走査電子顕微鏡により倍率10,000倍で観察したときの観察像を示す写真図である。 別の箇所の樹枝状ニッケルコート銅粉を走査電子顕微鏡により倍率1,000倍で観察したときの観察像を示す写真図である。 比較例1にて得られた銅粉を走査電子顕微鏡により倍率1,000倍で観察したときの観察像を示す写真図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.樹枝状Niコート銅粉≫
本実施の形態に係るニッケルコート銅粉は、樹枝状に成長した主幹とその主幹から分かれた複数の枝とを有する形状の銅粒子が集合してなり、表面にNi又はNi合金で被覆された表面にニッケルが被覆された銅粉である。なお、本明細書において、ニッケルコート銅粉を「Niコート銅粉」と表記する。また、被覆するニッケル又はニッケル合金を、それぞれ、「Ni」、「Ni合金」と表記し、Niを銅粉表面にコートする場合もNi合金を銅粉表面にコートする場合も、総じて「Niコート」と称する。
図1は、本実施の形態に係るNiコート銅粉を構成する、Ni又はNi合金が被覆された銅粒子の具体的な形状を示した模式図である。図1の模式図に示すように、Ni又はNi合金が被覆された銅粒子1(以下、単に「銅粒子1」という)は、2次元又は3次元の形態である樹枝状の形状を有している。
より具体的に、Ni又はNi合金が被覆された銅粒子1は、樹枝状に成長した主幹2とその主幹2から分かれた複数の枝3を有する形状を有しており、この銅粒子1は、断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状である。なお、銅粒子1における枝3は、主幹2から分岐した枝3aと、その枝3aからさらに分岐した枝3bの両方を意味する。
本実施の形態に係るNiコート銅粉は、このような平板状の銅粒子1が集合して構成された、主幹と複数の枝とを有する樹枝状形状の銅粉(樹枝状銅粉)の表面にNi又はNi合金が被覆されたNiコート銅粉(以下、「樹枝状Niコート銅粉」ともいう)であり(図3〜図5のNiコート銅粉のSEM像参照)、この平板状の銅粒子1から構成される樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は、1.0μm〜30μmである。
なお、後述するように、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉のNi又はNi合金として被覆されたNiの含有量は、Ni又はNi合金を被覆した当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%であるが、Ni又はNi合金の厚さ(被覆厚さ)は0.1μm以下程度の極薄い被膜である。そのため、この樹枝状Niコート銅粉は、Ni又はNi合金を被覆する前の樹枝状銅粉の形状をそのまま保持した形状になる。したがって、Ni又はNi合金を被覆する前の樹枝状銅粉の形状と、銅粉にNi又はNi合金を被覆した後の樹枝状Niコート銅粉の形状とは、両者共に、2次元又は3次元の形態である樹枝状の形状である。
本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、詳しくは後述するが、例えば、銅イオンを含む硫酸酸性の電解液に陽極と陰極を浸漬し、直流電流を流して電気分解することにより陰極上に樹枝状銅粉を析出させ、そしてその得られた樹枝状銅粉の表面に無電解めっき法等によりNi又はNi合金を被覆することで作製することができる。
図2は、Ni又はNi合金を被覆する前の樹枝状銅粉について走査電子顕微鏡(SEM)により観察したときの観察像の一例を示す写真図である。なお、図2は樹枝状銅粉を倍率10,000倍で観察したものである。また、図3は、図2の樹枝状銅粉にNi又はNi合金を被覆した樹枝状Niコート銅粉についてSEMにより観察したときの観察像の一例を示す写真図である。また、図4及び図5は、同様にして樹枝状銅粉にNi又はNi合金を被覆した樹枝状Niコート銅粉の別の箇所についてSEMにより観察したときの観察像の一例を示す写真図である。なお、図3は樹枝状Niコート銅粉を倍率5,000倍で観察したものであり、図4は樹枝状Niコート銅粉を倍率10,000倍で観察したものであり、図5は樹枝状Niコート銅粉を倍率1,000倍で観察したものである。
図2〜図5の観察像に示されるように、本実施の形態に係るNiコート銅粉は、主幹とその主幹から分岐した枝とを有する、2次元又は3次元の樹枝状の析出状態を呈している。また、その主幹及び枝が、平板状であって樹枝状の形状を有する、表面にNi又はNi合金が被覆された銅粒子1が集合して構成されており、さらにその銅粒子1は、表面に微細な凸部を有している。
ここで、樹枝状Niコート銅粉を構成し、主幹2及び枝3を有するNi又はNi合金が被覆された平板状の銅粒子1は、その断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmである。Ni又はNi合金が被覆された平板状の銅粒子1の断面平均厚さは、より薄い方が平板としての効果が発揮されることになる。すなわち、断面平均厚さが0.5μm以下の平板状の銅粒子1によって樹枝状銅粉の主幹及び枝が構成されることで、銅粒子1同士、またそれにより構成される樹枝状Niコート銅粉同士が接触する面積を大きく確保することができる。そして、その接触面積が大きくなることで、低抵抗、すなわち高導電率を実現することができる。このことにより、より導電性に優れ、またその導電性を良好に維持することができ、導電性塗料や導電性ペーストの用途に好適に用いることができる。また、樹枝状Niコート銅粉が平板状の銅粒子1により構成されていることで、配線材等の薄型化にも貢献することができる。
なお、Ni又はNi合金が被覆された平板状の銅粒子1の断面平均厚さは、薄くなればなるほど、樹枝状Niコート銅粉1同士が接触する際における接点の数が少なくなってしまう。銅粒子1の断面平均厚さが0.02μm以上あれば、十分な接点の数を確保することができ、より好ましくは0.2μm以上であり、これにより接点の数を有効に増やすことができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉においては、その平均粒子径(D50)が1.0μm〜30μmである。平均粒子径は、後述する電解条件を変更することで制御可能である。また、必要に応じて、ジェットミル、サンプルミル、サイクロンミル、ビーズミル等の機械的な粉砕を付加することによって、所望とする大きさにさらに調整することが可能である。なお、平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。
ここで、例えば特許文献1でも指摘されているように、樹枝状Niコート銅粉の問題点としては、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、樹脂中の金属フィラーが樹枝状に発達した形状であることにより、樹枝状の銅粉同士が絡み合って凝集が発生し、樹脂中に均一に分散しないことが挙げられる。また、その凝集により、ペーストの粘度が上昇して印刷による配線形成に問題が生じる。このことは、樹枝状Niコート銅粉の形状(粒子径)が大きいために発生するものであり、樹枝状の形状を有効に活かしながらこの問題を解決するためには、樹枝状Niコート銅粉の形状を小さくすることが必要となる。ところが、樹枝状Niコート銅粉の粒子径を小さくし過ぎると、その樹枝状形状を確保することができなくなる。そのため、樹枝状形状であることの効果、すなわち3次元的形状であることにより表面積が大きく成形性や焼結性に優れ、また枝状の箇所を介して強固に連結されて高い強度で成形できるという効果を確保するには、樹枝状Niコート銅粉が所定以上の大きさであることが必要となる。
この点において、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉では、平均粒子径が1.0μm〜30μmであることにより、表面積が大きくなり、良好な成形性や焼結性を確保することができる。そして、この樹枝状Niコート銅粉では、樹枝状の形状であることに加えて、主幹2及び枝3を有する樹枝状であって平板形状を有する銅粒子1が集合して構成されているため、樹枝状であることの3次元的効果と、その樹枝形状を構成する銅粒子1が平板状であることの効果により、銅粉同士の接点をより多く確保することができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉を構成し、主幹2及び枝3を有する平板状の銅粒子1は、その表面に微細な凸部を有する。そして、銅粒子1においては、その表面に有する凸部の平均高さが0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。
ここで、特許文献3や特許文献4に記載されているように、機械的な方法で例えば球状銅粉を平板状にする場合には、機械的加工時に銅の酸化を防止する必要があるため、脂肪酸を添加し、空気中あるいは不活性雰囲気中で粉砕することによって平板状に加工している。しかしながら、完全に酸化を防止することができないことや、加工時に添加している脂肪酸がペースト化するときに分散性に影響を及ぼすことがあるため、加工終了後に除去することが必要となるが、その脂肪酸が機械加工時の圧力で銅表面に強固に固着する場合があり、完全に除去できないという問題が発生する。また、機械的加工によって平板にするため表面は平滑なものとなり、また機械的な圧力によって平板にするために形成された平板状銅粉は水平な面ではなく、反った形になる。そのことから、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に金属フィラー同士の接点を確保しようとすると、機械的に平板にした銅粉は表面が平滑で反った状態となるため、接点の確保が困難となり、利用時には平板状の銅粉だけでなく粒状の銅粉を混ぜ合わせる等の方法によって、金属フィラー同士の接点を確保しなければならない。
これに対して、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉を構成する平板状の銅粒子1は、その表面に微細な凸部を有し、その凸部の平均高さが好ましくは0.01μm〜0.4μmである。このような銅粒子1が集合してなる樹枝状Niコート銅粉では、機械的に加工して得られた平板状銅粉に比べて金属フィラー同士の接点を容易に確保できるという特徴を有している。つまり、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、それを構成する平板状の銅粒子1の表面に微細な凸部があるため、導電性ペーストや電磁波シールド用の樹脂等の金属フィラーとして利用する場合に、その平板状の銅粒子1の表面の凸部によって容易に接点を確保することができる。さらに、この樹枝状Niコート銅粉は、機械的な加工を行うことなく直接電解により平板状の銅粒子を析出させ樹枝状銅粉の形状に成長させて作製するため、機械加工で問題となる酸化の発生や脂肪酸の除去は必要なく、電気導電性の特性を極めて良好な状態とすることができる。
平板状の銅粒子1の表面にある微細な凸部の平均高さは、上述したように、0.01μm〜0.4μmであることが好ましい。平均高さが0.01μm未満であると、接点を確保するための形状としては十分な効果が得られず、一方で、平均高さが0.4μmを超えると、導電性ペースト等に利用した場合にペースト中の金属フィラーの充填率が上がらず、かえって満足できる抵抗値が得られなくなる可能性がある。
≪2.Ni被覆量≫
本実施も形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、上述したように、断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状である、表面にNi又はNi合金が被覆されている銅粒子1によって樹枝状に構成されたものである。以下に、Niコート銅粉の表面に対するNi又はNi合金の被覆について説明する。
本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、Ni又はNi合金が被覆する前の樹枝状銅粉に、好ましくは当該Niコート銅粉全体の質量100%に対してNiの含有量として1質量%〜50質量%の割合でNi又はNi合金が被覆されたものであり、Ni又はNi合金の厚さ(被覆厚さ)としては0.1μm以下、好ましくは0.02μm以下の極薄い被膜である。このことから、樹枝状Niコート銅粉は、Ni又はNi合金が被覆する前の樹枝状銅粉の形状をそのまま保持した形状になる。
本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉におけるNi又はNi合金として被覆されるNiの含有量は、上述したように、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。Ni又はNi合金として被覆されるNiの含有量は、Ni自体の導電率が銅よりも低いためにできるだけ少ない方が好ましいが、少なすぎると銅表面に均一なNi又はNi合金の被膜を確保できず、銅が酸化されて導電性の低下の原因になる。そのため、Ni又はNi合金として被覆されるNiの含有量としては、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、Ni又はNi合金として被覆されるNiの含有量が多くなると、導電率が低下する点から好ましくなく、Ni又はNi合金として被覆されるNiの含有量としては、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉において、銅粒子の表面に被覆するNi又はNi合金の平均厚みとしては0.0003μm〜0.1μm程度であり、0.005μm〜0.02μmであることが好ましい。Ni又はNi合金の被覆厚みが平均で0.0003μm未満であると、銅粉の表面に均一なNi又はNi合金の被覆を確保することができず、銅の酸化が抑えられなくなり導電性の低下の原因となる。一方、Ni又はNi合金の被覆厚みが平均で0.1μmを超えると、導電率が低下する点から好ましくない。
このように樹枝状Niコート銅粉の表面に被覆されるNi又はNi合金の平均厚みは、0.0003μm〜0.1μm程度であり、Ni又はNi合金を被覆する前の樹枝状銅粉を構成する樹枝状の銅粒子1の断面平均厚さ(0.02μm〜0.5μm)と比べて小さい。そのため、樹枝状銅粉の表面をNi又はNi合金で被覆する前後で、樹枝状銅粉の形態は実質的に変化することはない。
さらに後述するように、樹枝状Niコート銅粉において、樹枝状銅粉に被覆されるNiはNi合金でもよい。Ni合金として添加される元素としては、周期表の第6族から第14族の元素が好ましく、特に亜鉛、コバルト、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、及びスズから選ばれる1種以上が好ましい。また、後述するように、樹枝状銅粉にNiを被覆する工程で無電解めっきを用い、さらにその還元剤として次亜リン酸塩、ホウ水素化合物を使用する場合には、得られるNi被膜はそれぞれNi−P合金、Ni−B合金となる。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉では、特に限定されないが、そのBET比表面積の値が0.2m/g〜5.0m/gであることが好ましい。BET比表面積の値が0.2m/g未満であると、Ni又はNi合金が被覆された銅粒子1が、上述したような所望の形状とはならないことがあり、高い導電性が得られないことがある。一方で、BET比表面積の値が5.0m/gを超えると、樹枝状Niコート銅粉の表面のNi又はNi合金の被覆が不均一となり高い導電性が得られない可能性がある。また、樹枝状Niコート銅粉を構成する銅粒子1が細かくなりすぎてしまい、樹枝状Niコート銅粉が細かいひげ状の状態となって、導電性が低下することがある。なお、BET比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠して測定することができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉の嵩密度としては、特に限定されないが、0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲であることが好ましい。嵩密度が0.5g/cm未満であると、樹枝状Niコート銅粉同士の接点を十分に確保することができない可能性がある。一方で、嵩密度が5.0g/cmを超えると、樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径も大きくなってしまい、すると表面積が小さくなって成形性や焼結性が悪化することがある。
なお、電子顕微鏡で観察したときに、得られたNiコート銅粉のうちに、上述したような形状の樹枝状Niコート銅粉が所定の割合で占められていれば、それ以外の形状のNiコート銅粉が混じっていても、その樹枝状Niコート銅粉のみからなる銅粉と同様の効果を得ることができる。具体的には、電子顕微鏡(例えば500倍〜20,000倍)で観察したときに、上述した形状の樹枝状Niコート銅粉が全Niコート銅粉のうちの80個数%以上、好ましくは90個数%以上の割合を占めていれば、その他の形状のNiコート銅粉が含まれていてもよい。
≪3.樹枝状Niコート銅粉の製造方法≫
次に、上述したような特徴を有する樹枝状Niコート銅粉1の製造方法について説明する。以下では、先ず、樹枝状Niコート銅粉1を構成する樹枝状銅粉の製造方法について説明し、続いて、その樹枝状銅粉に対してNi又はNi合金を被覆して樹枝状Niコート銅粉1を得る方法について説明する。
<3−1.樹枝状銅粉の製造方法>
Ni又はNi合金を被覆する前の樹枝状銅粉は、例えば、銅イオンを含有する硫酸酸性溶液を電解液として用いて所定の電解法により製造することができる。
電解に際しては、例えば、金属銅を陽極(アノード)とし、ステンレス板やチタン板等を陰極(カソード)として設置した電解槽中に、上述した銅イオンを含有する硫酸酸性の電解液を収容し、その電解液に所定の電流密度で直流電流を通電することによって電解処理を施す。これにより、通電に伴って陰極上に樹枝状銅粉を析出(電析)させることができる。特に、本実施の形態においては、電解により得られた粒状等の銅粉をボール等の媒体を用いて機械的に変形加工等することなく、その電解のみによって、平板状の微細銅粒子が集合して樹枝状を形成した樹枝状銅粉を陰極表面に析出させることができる。
より具体的に、電解液としては、例えば、水溶性銅塩と、硫酸と、アミン化合物等の添加剤と、塩化物イオンとを含有するものを用いることができる。
水溶性銅塩は、銅イオンを供給する銅イオン源であり、例えば硫酸銅五水和物等の硫酸銅、塩化銅、硝酸銅等が挙げられるが特に限定されない。また、電解液中での銅イオン濃度としては、1g/L〜20g/L程度、好ましくは5g/L〜10g/L程度とすることができる。
硫酸は、硫酸酸性の電解液とするためのものである。電解液中の硫酸の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L〜300g/L程度、好ましくは50g/L〜150g/L程度とすることができる。この硫酸濃度は、電解液の電導度に影響するため、カソード上に得られる銅粉の均一性に影響する。
添加剤としては、例えばアミン化合物を用いることができる。このアミン化合物が、後述する塩化物イオンと共に、析出する銅粉の形状制御に寄与し、陰極表面に析出させる銅粉を、所定の断面厚さの平板状の銅粒子から構成される、主幹とその主幹から分岐した枝とを有する樹枝状銅粉とすることができる。
アミン化合物としては、1種単独で添加してもよく、2種類以上を併用して添加してもよい。また、アミン化合物類の添加量としては、電解液中における濃度が0.1mg/L〜500mg/L程度の範囲となる量とすることが好ましい。
具体的に、アミン化合物としては、特に限定されないが、下記(1)式によって表すことができる、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物を用いることができる。さらに好ましくは、例えば、ヤヌスグリーンB(C30H31N6Cl、CAS番号:2869−83−2)を用いることができる。
ここで、式(1)中において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、Aは、ハライドアニオンである。
塩化物イオンとしては、塩酸、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含有させることができる。電解液中に塩化物イオンを含有させることによって、析出する銅粉の形状をより効果的に制御することができる。電解液中の塩化物イオン濃度としては、30mg/L〜1000mg/L程度、好ましくは50mg/L〜800mg/L程度、より好ましくは200mg/L〜500mg/L程度とすることができる。
本実施の形態に係る樹枝状銅粉の製造方法においては、例えば、上述したような組成の電解液を用いて電解することによって陰極上に樹枝状銅粉を析出生成させて製造する。電解方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、電流密度としては、硫酸酸性の電解液を用いて電解するにあたっては5A/dm〜30A/dmの範囲とすることが好ましく、電解液を攪拌しながら通電させる。また、電解液の液温(浴温)としては、例えば20℃〜60℃程度とすることができる。
<3−2.Ni又はNi合金の被覆方法(Niコート銅粉の製造)>
本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、上述した電解法により作製した樹枝状銅粉の表面に、例えば、無電解めっき法を用いてNi又はNi合金を被覆することにより製造することができる。
樹枝状銅粉の表面に均一な厚みでNi又はNi合金を被覆するためには、Niめっきの前に洗浄を行うのが好ましく、樹枝状銅粉を洗浄液中に分散させ、攪拌しながら洗浄を行うことができる。この洗浄処理としては、酸性溶液中で行うのが好ましく、洗浄後には、樹枝状銅粉のろ過、分離と、水洗とを適宜繰り返して、水中に樹枝状銅粉が分散した水スラリーとする。なお、ろ過、分離と、水洗については、公知の方法を用いればよい。
具体的に、無電解めっき法でNiコートする場合には、樹枝状銅粉を洗浄した後に得られた銅スラリーに無電解Niめっき液を加えるか、無電解Niめっき液中に銅スラリーを加え、均一に撹拌することで樹枝状銅粉の表面にNi又はNi合金をより均一に被覆させることができる。
無電解Niめっき液としては、特に限定されない。無電解Niめっき液は、めっき液中のNiイオンを還元剤によって還元してNi被覆を行うものであり、還元剤の種類としては、次亜リン酸塩、ホウ水素化合物、及びヒドラジン化合物が挙げられる。
具体的には、次亜リン酸塩としては、例えば、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩、亜リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸塩が挙げられる。
また、ホウ水素化合物としては、例えば、ジメチルヘキサボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)、ジエチルアミンボラン、モルホリンボラン、ピリジンアミンボラン、ピペリジンボラン、エチレンジアミンボラン、エチレンジアミンビスボラン、t−ブチルアミンボラン、イミダゾールボラン、メトキシエチルアミンボラン、及びホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。
また、ヒドラジン化合物としては、ヒドラジン及びその水和物や、例えば硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン塩や、ピラゾール類、トリアゾール類、ヒドラジド類等のヒドラジン誘導体等を用いることができる。これらのヒドラジン誘導体の中で、ピラゾール類としては、ピラゾールの他に、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン等のピラゾール誘導体を用いることができる。また、トリアゾール類としては、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール等を用いることができる。また、ヒドラジド類としては、アジピン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド等を用いることができる。また、ヒドラジン類としては、特に、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、アジピン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド等を用いることができる。
ニッケル源としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル等のニッケル塩が挙げられる。
また、めっき液には、錯化剤、pH緩衝剤、pH調整剤を含有させることができる。
具体的に、錯化剤としては、公知の錯化剤を使用することができる。例えば、グリシン等のアミノ酸、クエン酸ナトリウムやクエン酸アンモニウム等のクエン酸塩、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルコン酸等のナトリウム塩又はアンモニウム塩、アンモニア等が挙げられる。
pH緩衝剤としては、公知の錯化剤を使用することができる。例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、公知の錯化剤を使用することができる。例えば、酸やアルカリの化合物を使用することができ、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物,炭酸ニッケル、硫酸、塩酸等が挙げられる。なお、アンモニアを用いる場合、アンモニア水として供給することができる。
また、さらに必要に応じて、消泡剤や分散剤を使用してもよい。
さらに、めっき液の浸透性を向上させるために、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、両性等の界面活性剤のいずれを用いることができ、1種単独又は2種以上併せて用いることができる。
ここで、無電解めっきによるNiコートでは、無電解Niめっき液中の還元剤である次亜リン酸浴塩、ホウ水素化合物、及びヒドラジン化合物によって析出するNi被膜が異なる。具体的に、還元剤として次亜リン酸浴塩を用いた場合、還元反応中にリンが被膜中に含有されるため、Ni−P合金被膜が形成される。また、還元剤としてホウ水素化合物を用いた場合、還元反応中にボロンが被膜中に含有されるため、Ni−B合金被膜が形成される。また、還元剤としてヒドラジン化合物を用いた場合は、不純物の少ない高純度なNi被膜が形成される。
さらに、形成するNi被膜中にその他の元素が含有されるようにすることで、すなわち、銅粉表面にNi合金の被膜を形成させることで、そのNiコート銅粉を用いて、耐熱性、耐食性にも優れた導電性ペースト等を実現することができる。
具体的に、Ni被膜中に含有させる元素としては、つまりNi合金を構成するNi以外の元素としては、周期表の第6族から第14族の元素が挙げられ、その中でも、亜鉛、パラジウム、コバルト、ロジウム、鉄、白金、イリジウム、タングステン、モリブデン、クロム、及びスズ等が挙げられる。特に、亜鉛、コバルト、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、及びスズから選ばれる1種類以上の元素が好ましく、これらの元素を含有するNi合金とすることで導電性の優れたNi合金被膜を形成することができる。
これらNi合金を構成する元素の含有量は、導電性や分散性の観点から、Ni合金の質量100%に対して0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましく、2質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。なお、上述した還元剤の種類によってそれぞれ形成されるNi−P合金やNi−B合金についても、そのリンやボロンの含有量は、同じくNi合金被膜の質量100%に対して0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましく、2質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
Ni合金としたときにNi以外の元素の含有量が多くなりすぎると、導電性が低下する原因となることから20質量%以下とすることが好ましい。一方で、含有量が0.1質量%未満では、それらの元素をNiと共に含有させてNi合金としても耐熱性や耐食性を向上させる効果が十分に得られない。なお、Ni合金中の元素の含有量は、例えば高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により、Niコート銅粉を構成する各元素の含有量を換算することによって測定できる。また、エネルギー分散型X線分光(EDX)法やオージェ電子分光(AES)法によって、Niコート銅粉の断面等からNi合金被膜中の各元素の定量分析することもできる。
Ni合金の被膜を形成する方法としては、上述した無電解Niめっき液にコバルト、亜鉛、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、及びスズ等のイオンを添加し、そのめっき液を用いた無電解めっきにより形成することができる。コバルト、亜鉛、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、及びスズ等のイオン源としては、可溶性となるそれぞれの金属塩であれば特に限定されない。
具体的に、コバルトイオン源としては、コバルト化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、硫酸コバルト、塩化コバルト、スルファミン酸コバルト等が挙げられる。これらのコバルト化合物は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
亜鉛イオン源としては、亜鉛化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、塩化亜鉛、スルファミン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの亜鉛化合物は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
タングステンイオン源としては、タングステン化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム等が挙げられる。これらのタングステン化合物は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
モリブデンイオン源としては、モリブデン化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸二アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸、リンモリブデン酸、モリブデン酸グルコン酸錯体が挙げられる。これらのモリブデン化合物は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
パラジウムイオン源としては、パラジウム化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロジエチンレジアミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムジクロライド等の水溶性パラジウム化合物を用いることができる。また、パラジウム化合物として、パラジウムを溶液化した、いわゆるパラジウム溶液を使用することもできる。パラジウム溶液としては、例えば、ジクロロジエチレンジアミンパラジウム溶液やテトラアンミンパラジウムジクロライド溶液等を使用することができる。これらのパラジウム化合物は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
白金イオン源としては、白金化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、塩化白金、塩化白金酸、塩化白金酸塩、水酸化白金酸、水酸化白金酸塩、ジニトロジアンミン白金錯塩、ジニトロスルフィト白金錯塩、テトラアンミン白金錯塩、ヘキサアンミン白金錯塩が挙げられる。白金化合物は、1種単独又は2種以上混合して用いることができる。
スズイオン源としては、スズ化合物としてめっき液に可溶性のものであって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に限定されずに使用できる。例えば、塩化第一スズ、塩化第二スズ、硫酸第一スズ、硫酸第二スズ、ピロ燐酸スズ等のスズの無機酸塩やクエン酸第一スズ、クエン酸第二スズ、シュウ酸第一スズ、シュウ酸第二スズ等のスズのカルボン酸塩やメタンスルホン酸スズ、1−エタンスルホン酸スズ、2−エタンスルホン酸スズ、1−プロパンスルホン酸スズ、3−プロパンスルホン酸スズ等のスズのアルカンスルホン酸塩やメタノールスルホン酸スズ、ヒドロキシエタン−1−スルホン酸スズ、1−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸スズ、ヒドロキシエタン−2−スルホン酸スズ、1−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸スズ等のアルカノールスルホン酸塩、水酸化第一スズ、水酸化第二スズ等のスズの水酸化物、メタスズ酸等が挙げられる。
なお、Ni合金被膜を形成する方法としては、上述した無電解めっき法による方法に限定されない。例えば、Niを被覆する前の樹枝状銅粉中にNi合金を構成するNi以外の元素を含有させておき、Niのみからなる被膜(Ni被膜)を形成させた後に、あらかじめ銅粉に含有させておいた元素をそのNi被膜に拡散させることによって、Ni合金被膜を形成させることもできる。
≪4.導電性ペースト、電磁波シールド用導電性塗料、導電性シートの用途≫
本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉は、上述したように、主幹とその主幹から分岐した複数の枝を有する樹枝状のNiコート銅粉であり、図1の模式図に示したように、樹枝状に成長した主幹2とその主幹2から分かれた複数の枝3とを有する形状であって、且つ、断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmのNi又はNi合金が被覆された平板状の銅粒子1が集合して構成されている。そして、当該樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は、1.0μm〜30μmである。
このような樹枝状Niコート銅粉では、樹枝状の形状であることにより表面積が大きくなり、成形性や焼結性が優れたものとなり、また所定の断面平均厚さの平板状の銅粒子1が集合して樹枝状に構成されていることにより、接点の数を多く確保することができ、優れた導電性を発揮する。
また、このような所定の構造を有する樹枝状Niコート銅粉によれば、銅ペースト等とした場合であっても、凝集を抑制することができ、樹脂中に均一に分散させることが可能となり、またペーストの粘度上昇等による印刷性不良等の発生を抑制することができる。したがって、この樹枝状Niコート銅粉によれば、導電性ペーストや導電塗料等の用途に好適に用いることができる。
例えば導電性ペースト(銅ペースト)としては、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉を金属フィラーとして含み、バインダ樹脂、溶剤、さらに必要に応じて硬化剤や酸化防止剤、カップリング剤、腐食防止剤等の添加剤と混練することによって作製することができる。
具体的に、バインダ樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。また、溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、その有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、スクリーン印刷やディスペンサー等の導電膜形成方法に適した粘度となるように、樹枝状Niコート銅粉1の粒度を考慮して添加量を調整することができる。
さらに、粘度調整のために他の樹脂成分を添加することもできる。例えば、エチルセルロースに代表されるセルロース系樹脂等が挙げられ、ターピネオール等の有機溶剤に溶解した有機ビヒクルとして添加することができる。なお、その樹脂成分の添加量としては、焼結性を阻害しない程度に抑える必要があり、好ましくは全体の5質量%以下とする。
また、添加剤としては、焼成後の導電性を改善するために酸化防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばヒドロキシカルボン酸等を挙げることができる。より具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が好ましく、Ni又はNi合金を被覆した銅への吸着力が高いクエン酸又はリンゴ酸が特に好ましい。酸化防止剤の添加量としては、酸化防止効果やペーストの粘度等を考慮して、例えば1質量%〜15質量%程度とすることができる。
また、硬化剤についても、従来使用されている2エチル4メチルイミダゾール等を使用することができる。さらに、腐食抑制剤についても、従来使用されているベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール等を使用することができる。
また、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉を導電性ペースト用の金属フィラーとして利用する場合、他の形状の銅粉やNiコート銅粉、さらにニッケルや銀、錫等の導電性を有する金属フィラーと混合させて用いることができる。このとき、導電性ペーストとして使用する金属フィラー全量のうち樹枝状Niコート銅粉の割合として、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。このように、金属フィラーとして用いる場合に、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉と共に他の形状の銅粉等の金属フィラーを混合させることで、その樹枝状Niコート銅粉の隙間に他の形状の銅粉が充填されるようになり、このことにより、導電性を確保するための接点をより多く確保することができる。また、その結果として、樹枝状Niコート銅粉と他の形状の銅粉のトータルの投入量を少なくすることも可能となる。
なお、金属フィラーとして用いられる銅粉全量のうち、樹枝状Niコート銅粉が20質量%未満であると、その樹枝状Niコート銅粉同士の接点が減少し、他の形状の銅粉と混合させることによる接点の増加を加味しても、金属フィラーとしては導電性が低下してしまう。
また、上述した金属フィラーを利用して作製した導電性ペーストを用い、各種の電気回路を形成することができる。この場合においても、特に限定された条件での使用に限られるものではなく、従来行われている回路パターン形成法等を利用することができる。例えば、その金属フィラーを利用して作製した導電性ペーストを、焼成基板あるいは未焼成基板に塗布又は印刷し、加熱した後に、必要に応じて加圧して硬化して焼き付けることでプリント配線板や各種電子部品の電気回路や外部電極等を形成することができる。
また、電磁波シールド用材料として、上述した金属フィラーを利用する場合においても、特に限定された条件での使用に限られず、一般的な方法、例えばその金属フィラーを樹脂と混合して使用することができる。
例えば、上述した金属フィラーを利用して電磁波シールド用導電性塗料とする場合においては、一般的な方法、例えばその金属フィラーを樹脂及び溶剤と混合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等と混合して混練することで導電性塗料とすることができる。このときに使用するバインダ樹脂及び溶剤としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているものを使用することができる。
具体的に、バインダ樹脂としては、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂やフェノール樹脂等を使用することができる。また、溶剤についても、従来使用されている、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類等を使用することができる。また、酸化防止剤についても、従来使用されている、脂肪酸アミド、高級脂肪酸アミン、フェニレンジアミン誘導体、チタネート系カップリング剤等を使用することができる。
また、金属フィラーを利用して電磁波シールド用導電性シートとする場合においても、電磁波シールド用導電性シートの電磁波シールド層を形成するための樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来使用されているものを使用することができる。例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の各種重合体及び共重合体からなる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化型樹脂等を適宜使用することができる。
電磁波シールド材の製造方法として、特に限定されないが、例えば、金属フィラーと樹脂とを溶媒に分散又は溶解した塗料を、基材上に塗布又は印刷することによって電磁波シールド層を形成し、表面が固化する程度に乾燥することによって製造することができる。また、導電性シートの導電性接着剤層において、本実施の形態に係る樹枝状Niコート銅粉1を含有する金属フィラーを利用することもできる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
≪評価方法≫
下記の実施例、比較例に得られたNiコート銅粉について、以下の方法により、形状の観察、平均粒子径の測定等を行った。
(形状の観察)
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製,JSM−7100F型)により、所定の倍率の視野で任意に20視野を観察し、その視野内に含まれる銅粉の外観を観察した。
(平均粒子径の測定)
得られたNiコート銅粉の平均粒子径(D50)については、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器(日機装株式会社製,HRA9320 X−100)を用いて測定した。
(BET比表面積)
BET比表面積については、比表面積・細孔分布測定装置(カンタクローム社製,QUADRASORB SI)を用いて測定した。
(比抵抗値測定)
被膜の比抵抗値については、低抵抗率計(三菱化学株式会社製,Loresta−GP MCP−T600)を用いて四端子法によりシート抵抗値を測定し、一方で、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製,SURFCOM130A)により被膜の膜厚を測定して、シート抵抗値を膜厚で除することによって求めた。
(電磁波シールド特性)
電磁波シールド特性の評価は、各実施例及び比較例にて得られた試料について、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定して評価した。具体的には、樹枝状Niコート銅粉を使用していない比較例3の場合のレベルを『△』として、その比較例3のレベルよりも悪い場合を『×』とし、その比較例3のレベルよりも良好な場合を『○』とし、さらに優れている場合を『◎』として評価した。
また、電磁波シールドの可撓性についても評価するために、作製した電磁波シールドを折り曲げて電磁波シールド特性が変化するか否かを確認した。
≪実施例、比較例≫
[実施例1]
<電解銅粉の作製>
容量が100Lの電解槽に、電極面積が200mm×200mmのチタン製の電極板を陰極とし、電極面積が200mm×200mmの銅製の電極板を陽極として用い、その電解槽中に電解液を装入し、これに直流電流を通電して銅粉を陰極板上に析出させた。
このとき、電解液としては、銅イオン濃度が10g/L、硫酸濃度が125g/Lの組成のものを用いた。また、この電解液に、添加剤としてヤヌスグリーンB(関東化学株式会社製)を電解液中の濃度として80mg/Lとなるように添加し、さらに塩酸溶液(和光純薬工業株式会社製)を電解液中の塩化物イオン(塩素イオン)濃度として30mg/Lとなるように添加した。
そして、上述のように濃度調整した電解液を、ポンプを用いて15L/minの流量で循環しながら、温度を25℃に維持した条件で、陰極の電流密度が15A/dmになるように通電して陰極板上に銅粉を析出させた。
陰極板上に析出した電解銅粉を、スクレーパーを用いて機械的に電解槽の槽底に掻き落として回収し、回収した銅粉を純水で洗浄した後、減圧乾燥器に入れて乾燥した。
こうして得られた銅粉の形状を、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)による方法で倍率1,000倍の視野で観察した結果、析出した銅粉は、直線的に成長した主幹と、その主幹から直線的に分岐した複数の枝と、その枝からさらに分岐した枝とを有する形状の銅粒子が集合してなる、2次元又は3次元の樹枝状形状を呈した樹枝状銅粉であった。
<樹枝状Niコート銅粉の作製(還元剤:ホウ水素化合物)>
次に、上述した方法で作製した樹枝状銅粉を用いて、無電解Niめっきによりその銅粉表面にNi被覆を行い、Niコート銅粉を作製した。なお、還元剤がホウ水素化合物である無電解Niめっき液を用いた。
具体的には、無電解Niめっき液として、硫酸ニッケル30g/L、コハク酸ナトリウム50g/L、ホウ酸30g/L、塩化アンモニウム30g/L、ジメチルアミンボラン4g/Lを各濃度で添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調整しためっき液を500mL用意した。
この無電解Niめっき液に、上述した方法で作製した樹枝状銅粉100gを水100mL中に分散させたスラリーを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を60℃まで加熱して60分間撹拌した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、樹枝状銅粉の表面にNiが被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して18.6質量%であった。また、Ni合金中に含まれるボロン(B)の含有量はNi合金の質量100%に対して6.1質量%であった。
また、得られたNiコート銅粉をSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上のNiコート銅粉は、Ni合金を被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一にNi合金が被覆された、2次元又は3次元の樹枝状の形状であって、樹枝状に成長した主幹と、その主幹から分岐した複数の枝と、その枝からさらに分岐した枝とを有する樹枝状形状を呈した樹枝状Niコート銅粉であった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の主幹及び枝を構成する銅粒子は、断面厚さが平均で0.09μmの平板状であり、その表面に微細な凸部を有していた。なお、その表面に形成されている凸部の高さは平均で0.06μmであった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は21.2μmであった。
さらに、得られた樹枝状Niコート銅粉の嵩密度は1.25g/cmであった。また、BET比表面積は1.7m/gであった。
[実施例2]
<電解銅粉の作製>
電解液として、銅イオン濃度が10g/L、硫酸濃度が125g/Lの組成のものを用い、その電解液に、添加剤としてヤヌスグリーンBを電解液中の濃度として150mg/Lとなるように添加し、さらに塩酸溶液を電解液中の塩素イオン濃度として100mg/Lとなるように添加したこと以外は、実施例1と同じ条件で銅粉を陰極板上に析出させた。
<樹枝状Niコート銅粉の製造(還元剤:次亜リン酸塩)>
次に、上述した方法で作製した樹枝状銅粉を用いて、無電解Niめっきによりその銅粉表面にNi被覆を行い、Niコート銅粉を作製した。なお、還元剤が次亜リン酸塩である無電解Niめっき液を用いた。
具体的には、無電解Niめっき液として、硫酸ニッケル20g/L、次亜リン酸ナトリウム25g/L、酢酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/Lを各濃度で添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH5.0に調整しためっき液を500mL用意した。
この無電解Niめっき液に、上述した方法で作製した樹枝状銅粉100gを水100mL中に分散させたスラリーを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を90℃まで加熱して60分間撹拌した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、樹枝状銅粉の表面にリン(P)を含むNi合金が被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して13.1質量%であった。また、Ni合金中に含まれるPの含有量はNi合金の質量100%に対して8.1質量%であった。
また、得られたNiコート銅粉をSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上のNiコート銅粉は、Ni合金を被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一にNi合金が被覆された、2次元又は3次元の樹枝状の形状であって、樹枝状に成長した主幹と、その主幹から分岐した複数の枝と、その枝からさらに分岐した枝とを有する樹枝状形状を呈した樹枝状Niコート銅粉であった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の主幹及び枝を構成する銅粒子は、断面厚さが平均で0.11μmの平板状であり、その表面に微細な凸部を有していた。なお、その表面に形成されている凸部の高さは平均で0.23μmであった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は8.3μmであった。
さらに、得られた樹枝状Niコート銅粉の嵩密度は2.77g/cmであった。また、BET比表面積は1.2m/gであった。
[実施例3]
<樹枝状Niコート銅粉の作製(還元剤:ヒドラジン化合物)>
実施例2で得られた樹枝状銅粉100gを用いて、無電解Niめっきによりその銅粉表面にNi被覆を行い、Niコート銅粉を作製した。なお、還元剤をヒドラジン化合物とした無電解Niめっきを行った。
具体的に、実施例2で得られた樹枝状銅粉100gを水500mL中に分散させたスラリーに酢酸ニッケルを濃度12.4g/Lとなるよう添加し、ヒドラジン一水和物80質量%水溶液6gをその浴中に60分間にわたり徐々に撹拌しながら滴下した。このとき、浴温は60℃になるように管理した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、樹枝状銅粉の表面にNiが被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して7.7質量%であった。
また、得られたNiコート銅粉をSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上のNiコート銅粉は、Ni合金を被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一にNiが被覆された、2次元又は3次元の樹枝状の形状であって、樹枝状に成長した主幹と、その主幹から分岐した複数の枝と、その枝からさらに分岐した枝とを有する樹枝状形状を呈した樹枝状Niコート銅粉であった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の主幹及び枝を構成する銅粒子は、その断面厚さが平均0.15μmの平板状であり、その表面に微細な凸部を有していた。なお、その表面に形成されている凸部の高さは平均で0.27μmであった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は9.6μmであった。
さらに、得られた樹枝状Niコート銅粉の嵩密度は2.92g/cmであった。また、BET比表面積は1.6m/gであった。
[実施例4〜10]
<樹枝状Niコート銅粉の製造(Ni合金)>
実施例2で得られた樹枝状銅粉100gを用いて、無電解めっきによりその銅粉表面にNi合金被覆を行った。
合金用無電解Niめっき液としては、実施例2で得られた樹枝状銅粉100gを水500mL中に分散させたスラリーに酢酸ニッケルを濃度12.4g/Lとなるよう添加し、ヒドラジン3.2gをその浴中に60分間にわたり徐々に撹拌しながら滴下した。なお、浴温は60℃になるように管理した。
このとき、それぞれ所望とするNi合金被膜が形成されるように、それぞれの金属化合物を銅粉スラリーと酢酸ニッケルを含む浴中に添加し、さらにヒドラジンを徐々に添加した。金属化合物としては、実施例4では、タングステン酸ナトリウムを1.5g添加してNi−W合金被膜を形成させた。また、実施例5では、硫酸コバルトを2g添加してNi−Co合金被膜を形成させた。また、実施例6では、硫酸亜鉛七水和物とクエン酸ナトリウムとをそれぞれ4gずつ添加してNi−Zn合金被膜を形成させた。また、実施例7では、塩化パラジウムを2g添加してNi−Pd合金被膜を形成させた。また、実施例8では、テトラクロロ白金酸カリウム2gとグリシン1gとをそれぞれ添加してNi−Pt合金被膜を形成させた。また、実施例9では、モリブデン酸ナトリウムとクエン酸三ナトリウムとをそれぞれ1gずつ添加してNi−Mo合金被膜を形成させた。また、実施例10では、スズ酸ナトリウムを1g添加してNi−Sn合金被膜を形成させた。
それぞれ反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、樹枝状銅粉の表面にNiが被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNi合金被覆量を測定した。表1に、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対するNiの含有量、及びNi合金の質量100%に対してNi合金となる元素の含有量を測定した結果を示す。
また、得られたNiコート銅粉のそれぞれをSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、いずれも、少なくとも90個数%以上のNiコート銅粉は、Ni合金を被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一にNi合金が被覆された、2次元又は3次元の樹枝状の形状の樹枝状Niコート銅粉であって、直線的に成長した主幹と、その主幹から直線的に分岐した複数の枝と、さらにその枝からさらに分岐した枝とを有する樹枝状形状を呈した樹枝状Niコート銅粉であった。
また、これら樹枝状Niコート銅粉について、その平均粒子径(D50)、嵩密度、BET比表面積を測定した。表1に、これらの測定結果をまとめて示す。
[実施例11]
<樹枝状Niコート銅粉の作製(次亜リン酸塩+タングステン化合物)>
実施例11では、実施例1にて作製した樹枝状銅粉100gを用いて、無電解めっきによりその銅粉表面にNi合金被覆を行った。
無電解Niめっき液としては、実施例1と同じ還元剤として次亜リン酸塩を含むめっき液を用い、このめっき液中にNi以外の金属を添加してNi合金を作製した。
具体的には、無電解Niめっき液として、硫酸ニッケル20g/L、次亜リン酸ナトリウム25g/L、酢酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/Lを各濃度で添加しためっき液に、さらにタングステン酸ナトリウムを1.5g添加し、水酸化ナトリウムを添加してpH5.0に調整しためっき液を500mL用意した。
この無電解Niめっき液に、実施例1にて作製した樹枝状銅粉100gを水100mL中に分散させたスラリーを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を90℃まで加熱して60分間撹拌した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、Ni−W−P合金が被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して12.3質量%であった。また、Ni合金中に含まれるPの含有量はNi合金の質量100%に対して7.1質量%であった。また、Ni合金中に含まれるWの含有量はNi合金の質量100%に対して5.5質量%であった。
また、得られたNiコート銅粉をSEMにより倍率5,000倍の視野で観察した結果、少なくとも90個数%以上のNiコート銅粉は、Ni合金を被覆する前の樹枝状銅粉の表面に均一にNi合金が被覆された、2次元又は3次元の樹枝状の形状であって、樹枝状に成長した主幹と、その主幹から分岐した複数の枝と、その枝からさらに分岐した枝とを有する樹枝状形状を呈した樹枝状Niコート銅粉であった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の主幹及び枝を構成する銅粒子は、断面厚さが平均で0.09μmの平板状であり、その表面に微細な凸部を有していた。なお、その表面に形成されている凸部の高さは平均で0.06μmであった。
また、その樹枝状Niコート銅粉の平均粒子径(D50)は21.2μmであった。
さらに、得られた樹枝状Niコート銅粉の嵩密度は1.25g/cmであった。また、BET比表面積は1.7m/gであった。
[実施例12]
実施例1にて得られた樹枝状Niコート銅粉30gに、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製、PL−2211)15g、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製、鹿特級)10gを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製、ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、空気雰囲気中にて200℃で30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値は、9.0×10−5Ω・cmであり、優れた導電性を示すことが分かった。
[実施例13]
実施例2にて得られた樹枝状Niコート銅粉30gに、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)20g、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gを混合し、小型ニーダー(日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことでペースト化した。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、空気雰囲気中にて200℃で30分間硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値は、9.2×10−5Ω・cmであり、優れた導電性を示すことが分かった。
[実施例14]
実施例1にて作製した樹枝状Niコート銅粉を樹脂に分散させて電磁波シールド材とした。
すなわち、実施例1にて得られた樹枝状Niコート銅粉30gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、これらの結果を示す。
[比較例1]
<電解銅粉の作製>
電解液中に、添加剤としてのヤヌスグリーンBと、塩素イオンとを添加しない条件としたこと以外は、実施例1と同様にして銅粉を陰極板上に析出させた。得られたNiコート銅粉の形状は、粒子状の銅が集合した樹枝状の形状であって、微細な凸部は形成されていなかった。
<Niコート銅粉の製造(還元剤:次亜リン酸塩)>
次に、得られた銅粉を用いてNiコート銅粉を作製した。
具体的には、無電解Niめっき液として、硫酸ニッケル20g/L、次亜リン酸ナトリウム25g/L、酢酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/Lを各濃度で添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH5.0に調整しためっき液を500mL用意した。
この無電解Niめっき液に、上述した方法で作製した銅粉100gを水100mL中に分散させたスラリーを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を90℃まで加熱して60分間撹拌した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、銅粉の表面にPを含むNi合金が被覆されたNiコート銅粉が得られた。また、そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して13.6質量%であった。また、Ni合金中に含まれるPの含有量はNi合金の質量100%に対して7.8質量%であった。
図6に、得られたNiコート銅粉の形状を、SEMにより倍率1,000倍の視野で観察した結果を示す。図6の写真図に示すように、得られたNiコート銅粉の形状は、粒子状の銅粒子が集合した樹枝状の形状であって、その銅粉の表面にNi合金が被覆された状態となっていた。また、そのNiコート銅粉の平均粒子径(D50)は22.5μmであった。なお、樹枝状の部分には、微細な凸部は形成されていなかった。
<導電性ペースト評価>
次に、上述した方法で作製したNiコート銅粉40gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)20gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、混練を繰り返す毎に粘度の上昇が発生した。このことは銅粉の一部が凝集していることが原因であると考えられ、均一分散が困難であった。得られた導電性ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて200℃で30分間かけて硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値は、63.8×10−5Ω・cmであり、実施例にて得られた導電性ペーストと比較して比抵抗値が高く導電性が劣るものであった。
[比較例2]
<機械的に扁平化した平板状銅粉の作製>
従来の平板状銅粉にNiを被覆させたNiコート銅粉による導電性ペーストの特性を評価し、実施例における樹枝状Niコート銅粉を用いて作製した導電性ペーストの特性と比較した。
平板状銅粉は、粒状の電解銅粉を機械的に扁平化させて作製した。具体的には、平均粒子径5.4μmの粒状アトマイズ銅粉(メイキンメタルパウダーズ社製)500gにステアリン酸5gを添加し、ボールミルで扁平化処理を行った。ボールミルには3mmのジルコニアビーズを5kg投入し、500rpmの回転速度で90分間回転した。
<Niコート銅粉の製造(還元剤:ホウ水素化合物)>
得られた平板状銅粉100gに対して、無電解めっきによりその銅粉表面にNi被覆を行った。
具体的には、無電解Niめっき液として、硫酸ニッケル30g/L、コハク酸ナトリウム50g/L、ホウ酸30g/L、塩化アンモニウム30g/L、ジメチルアミンボラン4g/Lを各濃度で添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH6.0に調整しためっき液を500mL用意した。
この無電解Niめっき液に、上述した方法で作製した平板上銅粉100gを水100mL中に分散させたスラリーを入れ、25℃で10分間撹拌した後、浴温を60℃まで加熱して60分間撹拌した。
反応が終了した後、粉末をろ過、水洗してエタノールを通じて乾燥させたところ、平板状銅粉の表面にNi合金が被覆されたNiコート銅粉が得られた。そのNiコート銅粉を回収してNiの含有量を測定したところ、当該Niコート銅粉全体の質量100%に対して18.2質量%であった。また、Ni合金中に含まれるBの含有量はNi合金の質量100%に対して6.7質量%であった。
このように作製した平板状Niコート銅粉について、レーザー回折・散乱法粒度分布測定器で測定した結果、平均粒子径(D50)は21.8μmであった。また、SEM観察により測定した平板状Niコート銅粉の厚さ(断面平均厚さ)は0.40μmであった。なお、その平板状Niコート銅粉には、その表面に微細な凸部は観察されなかった。
<導電性ペースト評価>
次に、上述した方法で作製したNiコート銅粉40gに対して、フェノール樹脂(群栄化学株式会社製,PL−2211)20gと、ブチルセロソルブ(関東化学株式会社製,鹿特級)10gとを混合し、小型ニーダー(株式会社日本精機製作所製,ノンバブリングニーダーNBK−1)を用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、混練を繰り返す毎に粘度の上昇が発生した。このことは銅粉の一部が凝集していることが原因であると考えられ、均一分散が困難であった。得られた導電ペーストを金属スキージでガラス上に印刷し、大気雰囲気中にて200℃で30分間かけて硬化させた。
硬化により得られた被膜の比抵抗値は、26.5×10−5Ω・cmであり、実施例にて得られた導電性ペーストと比較して極めて比抵抗値が高く導電性が劣るものであった。
[比較例3]
比較例2にて作製した平板状Niコート銅粉を樹脂に分散させて電磁波シールド材とした。
具体的には、得られた平板状Niコート銅粉40gに対して、塩化ビニル樹脂100gと、メチルエチルケトン200gとをそれぞれ混合し、小型ニーダーを用いて、1200rpm、3分間の混錬を3回繰り返すことによってペースト化した。ペースト化に際しては、銅粉が凝集することなく、樹脂中に均一に分散した。これを100μmの厚さの透明ポリエチレンテレフタレートシートからなる基材の上にメイヤーバーを用いて塗布・乾燥し、厚さ25μmの電磁波シールド層を形成した。
電磁波シールド特性については、周波数1GHzの電磁波を用いて、その減衰率を測定することによって評価した。表1に、これらの結果を示す。
1 銅粒子
2 (銅粒子の)主幹
3,3a,3b (銅粒子の)枝

Claims (11)

  1. 樹枝状に成長した主幹と該主幹から分かれた複数の枝とを有する形状の銅粒子が集合してなり、表面にNi又はNi合金で被覆されたNiコート銅粉であって、
    前記銅粒子の主幹及び枝の断面平均厚さが0.02μm〜0.5μmの平板状であり、
    当該Niコート銅粉の平均粒子径(D50)が1.0μm〜30μmである
    ことを特徴とする樹枝状Niコート銅粉。
  2. 前記銅粒子の表面に微細な凸部があり、該凸部の平均高さが0.01μm〜0.4μmである
    請求項1に記載の樹枝状Niコート銅粉。
  3. Ni又はNi合金として被覆されているNiの含有量が、当該樹枝状Niコート銅粉全体の質量100%に対して1質量%〜50質量%である
    請求項1又は2に記載の樹枝状Niコート銅粉。
  4. 前記銅粒子の表面にNi合金が被覆されており、
    コバルト、亜鉛、タングステン、モリブデン、パラジウム、白金、スズ、リン、及びボロンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を、前記Ni合金の質量100%に対して0.1質量%〜20質量%の含有量で含むNi合金で被覆されている
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹枝状Niコート銅粉。
  5. 嵩密度が0.5g/cm〜5.0g/cmの範囲である
    請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹枝状Niコート銅粉。
  6. BET比表面積が0.2m/g〜5.0m/gである
    請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹枝状Niコート銅粉。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の樹枝状Niコート銅粉を、全体の20質量%以上の割合で含有していることを特徴とする金属フィラー。
  8. 請求項7に記載の金属フィラーを樹脂に混合させてなることを特徴とする導電性ペースト。
  9. 請求項7に記載の金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性塗料。
  10. 請求項7に記載の金属フィラーを用いてなることを特徴とする電磁波シールド用導電性シート。
  11. 請求項1乃至6のいずれかに記載のNiコート銅粉を製造する方法であって、
    電解法により電解液から陰極上に銅粉を析出させる工程と、
    前記銅粉にニッケル(Ni)又はNi合金を被覆する工程と、を有し、
    前記電解液に、
    銅イオンと、
    下記式(1)で表される、フェナジン構造とアゾベンゼン構造とを有する化合物から選択される1種又は2種以上と、
    を含有させて電解を行う
    ことを特徴とするNiコート銅粉の製造方法。
    [式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13は、それぞれ別個に、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、及びC1〜C8アルキルからなる群から選択される基である。また、Rは、水素、ハロゲン、アミノ、OH、=O、CN、SCN、SH、COOH、COO塩、COOエステル、SOH、SO塩、SOエステル、ベンゼンスルホン酸、低級アルキル、及びアリールからなる群から選択される基である。また、Aは、ハライドアニオンである。]
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