JP2016159797A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善すること。
【解決手段】トレッド部2のトレッド面2aに開口して周囲が溝壁3aで閉止された閉止溝3が形成され、閉止溝3を含むトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成されており、閉止溝3は、タイヤ径方向の断面形状が開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】トレッド部2のトレッド面2aに開口して周囲が溝壁3aで閉止された閉止溝3が形成され、閉止溝3を含むトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成されており、閉止溝3は、タイヤ径方向の断面形状が開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善することのできる空気入りタイヤに関するものである。
従来、トレッドの溝を工夫した空気入りタイヤが知られている。例えば、特許文献1に記載のトレッドは、座屈の恐れを阻止するために少なくとも1つのリブの剛性の低下を制限するため、切欠きによって画定された複数個のリブを有し、リブは、全体として平行六面体の形をしていて、長さ(L)及び幅(W)を有し、幅(W)は、リブの第1の側フェースとリブの第2の側フェースとの間に定められ、長さ(L)よりも小さく、少なくとも1つのリブは、リブの内部に配置された少なくとも1つのキャビティを有し、キャビティは、主としてリブの長さ(L)方向に延びており、リブの長さ(L)方向に延びる切込みを有し、切込みは、リブの第1の側フェース上に現れ、キャビティ内に現れる一方で開口部を形成し、リブの長さ(L)方向に定められる開口部の長さ(Lo)は、リブの長さ(L)方向に定められるキャビティの長さ(Lc)の少なくとも80%に相当する。
また、例えば、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、タイヤ1回転中のブロックの大きさが変化することに伴う接地特性の変化を抑制し、操縦安定性と耐偏摩耗性を向上させるため、トレッド踏面部に周方向溝と横溝とが形成され、少なくとも2種類の異なるピッチをトレッド周方向に組み合わせてトレッドパターンを形成した空気入りタイヤであって、小ピッチ部分の横溝壁面は、横溝幅が溝底側よりも踏面側で大となる方向に傾斜し、大ピッチ部分の横溝壁面は、横溝幅が溝底側よりも踏面側で小となる方向に傾斜している。
また、例えば、特許文献3に記載の空気入りタイヤは、周方向主溝の両側縁部での接地圧の増加を抑制して氷雪上性能を向上させるため、トレッド部に、タイヤ周方向にのびる周方向主溝を具える空気入りタイヤであって、周方向主溝のうちの少なくとも1本の周方向主溝は、溝長さ方向と直角な溝断面において、溝底からトレッド踏面まで延びる両側の溝壁のうちの少なくとも一方側の溝壁を、該溝壁に溝巾を減じる向きに突出するくびれ部を設けたくびれ付き溝壁としたくびれ付き周方向主溝からなり、くびれ付き溝壁は、溝底からくびれ部まで延びる溝底側の溝壁部と、くびれ部からトレッド踏面まで溝巾を増加する向きに傾斜して延びる増溝巾傾斜のトレッド踏面側の溝壁部とからなると共に、くびれ部の溝底からの高さhは、溝底からトレッド踏面までの溝深さHの10〜50%の範囲であり、しかも溝底側の溝壁部は、トレッド踏面に向かって溝巾が減じる向きに傾斜しかつ前記くびれ部に連なる減溝巾傾斜部分を含み、かつ前記減溝巾傾斜部分におけるトレッド踏面の法線に対する角度θsの最大角度θsmaxは、トレッド踏面側の溝壁部のくびれ部におけるトレッド踏面の法線に対する角度θtより大である。
また、例えば、特許文献4に記載の空気入りタイヤは、ワンダリングと排水性を維持しつつ、パターンノイズを低減するため、円筒状に延びるトレッド部に複数本の溝を配置して陸部を形成し、トレッド部の幅方向外側に位置する溝の断面形状が、トレッド部表面に拡開する開口とこの開口よりタイヤ径方向内側に連なる1対の側壁とが凸状曲線をなして溝幅を狭めながらタイヤ径方向内側へ延びる部分を有する一方、側壁のタイヤ径方向内側に連なる溝底部が転じて拡幅する。
ところで、例えば、ラリーにおける舗装路面用の競技用タイヤでは、乾燥路面および湿潤路面で同じトレッドパターンを使用しなければならない。このため、乾燥路面に合わせたトレッドパターンでは、湿潤路面においてグリップの低下が大きい。よって、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上させることが望まれている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部のトレッド面に開口して周囲が溝壁で閉止された閉止溝が形成され、前記閉止溝を含むトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成されており、前記閉止溝は、タイヤ径方向の断面形状が開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成されていることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、閉止溝の断面形状を開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成したことにより、閉止溝の溝容積が増加するため、耐ハイドロプレーニング性能を向上することができる。しかも、閉止溝の断面形状を開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成したことにより、閉止溝の拡幅した周囲のトレッド剛性が抑制され、接地性が向上してグリップが改善されるため、湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記閉止溝は、一部の断面形状が開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成されていることを特徴とする。
閉止溝の全ての断面形状を開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成することで、閉止溝の溝容積の増加による耐ハイドロプレーニング性能の向上効果や、トレッド剛性の抑制による湿潤路面での操縦安定性能の向上効果を顕著に得ることができる。その一方で、トレッド剛性が低下しすぎると、湿潤路面での操縦安定性能の向上効果が低くなることから、一部の断面形状について開口部から溝底部に至り漸次拡幅するように構成することで、性能に影響のない程度にトレッド剛性を抑制することができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記閉止溝は、断面形状が拡幅される溝壁の溝底部に対する角度が、45°以上80°以下の範囲内にあることを特徴とする。
溝壁の角度が45°未満であると溝壁の溝底部側への倒れ込みが比較的大きくトレッド剛性が低下しすぎて湿潤路面での操縦安定性能の向上効果が低くなる。一方、溝壁の角度が80°を超えると溝容積の増加が小さく耐ハイドロプレーニング性能の向上効果が低くなる。従って、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善するうえで、閉止溝における溝壁の溝底部に対する角度を45°以上80°以下の範囲内にすることが好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記閉止溝は、拡幅する断面形状における溝壁が開口部から溝底部に至り直線状に形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、溝壁が直線状に形成されることで、タイヤ径方向におけるトレッド剛性が一様になるため、トレッド剛性の低下傾向を一様に生じさせることができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記閉止溝は、拡幅する断面形状における溝壁が開口部から溝底部に至り曲線状に形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、拡幅する断面形状における溝壁が開口部から溝底部に至り曲線状に形成されると、タイヤ径方向におけるトレッド剛性に変化が生じるため、トレッド剛性の低下傾向をタイヤ径方向(閉止溝の深さ方向)で変化させることができる。
また、本発明の空気入りタイヤでは、前記トレッド面の溝面積比が17%以下であって、かつ競技用タイヤであることを特徴とする。
ラリーにおける舗装路面用の競技用タイヤでは、乾燥路面および湿潤路面で同じトレッドパターンを使用しなければならない。このため、乾燥路面に合わせたトレッドパターンでは、湿潤路面においてグリップの低下が大きい。よって、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上させることが望まれている。このラリーにおける舗装路面用の競技用タイヤは、トレッド面の溝面積比が17%以下に規定されている。従って、トレッド面の溝面積比が17%以下に規定される競技用タイヤにおいて適用されることで、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上させる効果を十分に発揮することができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善することができる。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図(図1におけるA−A断面図)である。図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図(図1におけるB−B断面図)である。図4は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大平面図である。図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大平面図である。図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図(図5のC−C断面図)である。図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大平面図である。図8は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図である。図9は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図である。図10は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大断面図である。
以下の説明において、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)を中心軸とする周方向である。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ赤道面CLとは、前記回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がトレッド面2aとして空気入りタイヤ1の輪郭となる。
トレッド部2は、トレッド面2aに、閉止溝3が複数設けられている。閉止溝3は、周囲が溝壁3aで閉止され、かつ底が溝底部3bで閉止されて、トレッド面2aに開口する開口部3cを有するものである。閉止溝3は、延在方向の長い長手方向L、および長手方向Lに交差する延在方向の短い短手方向Sを有している。本実施形態の閉止溝3は、その延在方向(長手方向L)がタイヤ周方向およびタイヤ幅方向に対して傾斜して設けられている。
また、閉止溝3は、溝深さ(開口部3cから溝底部3bまでのタイヤ径方向の寸法)が1mm以上6mm以下の範囲であり、トレッド面2aに開口する開口部3cにおける溝長さ(長手方向Lの寸法)が20mm以上60mm以下の範囲であり、トレッド面2aに開口する開口部3cにおける溝幅(短手方向Sの寸法)が6mm以上10mm以下の範囲である。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド面2aに形成される溝が複数の閉止溝3のみであり、このトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチ(同じピッチ)で構成されている。シングルピッチであることは、どの接地位置においてもタイヤ性能が一様である利点がある。なお、図には明示しないが、閉止溝3の他、トレッド面2aに、タイヤ周方向に沿って延在する周方向溝が設けられていてもよい。この場合でもトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成される。
このような空気入りタイヤ1であって、閉止溝3は、タイヤ径方向の断面形状がトレッド面2aの開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成されている。即ち、閉止溝3は、対向する溝壁3aが、開口部3cから溝底部3bに至り相互に離れるように傾斜して形成されている。なお、図8に示すように、溝底部3bと溝壁3aとの交差部分が円弧である場合は、溝底部3bに至る直前で溝幅が若干狭まる構造となる。この構造を、開口部3cから溝底部3bに至る範囲から除外するため、正確には、開口部3cから溝底部3bに至る範囲を開口部3cから溝深さの95%の範囲とする。
ここで、図1〜図3に示す閉止溝3は、長手方向Lおよび短手方向Sで対向する両溝壁3aが、開口部3cから溝底部3bに至り相互に離れるように傾斜して形成されている。
また、図4に示す閉止溝3は、短手方向Sで対向する両溝壁3aのみが、開口部3cから溝底部3bに至り相互に離れるように傾斜して形成されている。図5および図6に示す閉止溝3は、短手方向Sで対向する一方の溝壁3aのみが、開口部3cから溝底部3bに至り他方の溝壁3aから離れるように傾斜して形成されている。また、図には明示しないが、閉止溝3は、長手方向Lで対向する両溝壁3aのみが、開口部3cから溝底部3bに至り相互に離れるように傾斜して形成されてもよい。また、図には明示しないが、閉止溝3は、長手方向Lで対向する一方の溝壁3aのみが、開口部3cから溝底部3bに至り他方の溝壁3aから離れるように傾斜して形成されていてもよい。また、図には明示しないが、閉止溝3は、上記の溝壁3aのいずれかの組み合わせにより形成されていてもよい。
このように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2のトレッド面2aに開口して周囲が溝壁3aで閉止された閉止溝3が形成され、閉止溝3を含むトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成されており、閉止溝3は、タイヤ径方向の断面形状が開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成されている。
この空気入りタイヤ1によれば、閉止溝3のタイヤ径方向の断面形状を開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成したことにより、閉止溝3の溝容積が増加するため、耐ハイドロプレーニング性能を向上することができる。しかも、閉止溝3の断面形状を開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成したことにより、閉止溝3の拡幅した周囲のトレッド剛性が抑制され、接地性が向上してグリップが改善されるため、湿潤路面での操縦安定性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、前記閉止溝3は、一部の断面形状がトレッド面2aへの開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成されていることが好ましい。
この空気入りタイヤ1では、閉止溝3の全ての断面形状を開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅して形成することで、閉止溝3の溝容積の増加による耐ハイドロプレーニング性能の向上効果や、トレッド剛性の抑制による湿潤路面での操縦安定性能の向上効果を顕著に得ることができる。その一方で、トレッド剛性が低下しすぎると、湿潤路面での操縦安定性能の向上効果が低くなることから、一部の断面形状について開口部3cから溝底部3bに至り漸次拡幅するように構成することで、性能に影響のない程度にトレッド剛性を抑制することができる。この場合、例えば、長手方向Lに沿って対向する溝壁3aのみを傾斜させたり、長手方向Lに沿って対向する一方の溝壁3aのみを傾斜させたりすればよい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、閉止溝3は、断面形状が拡幅される溝壁3aの溝底部3bに対する角度θが、45°以上80°以下の範囲内にあることが好ましい。
ここで、溝壁3aの角度θの基準となる溝底部3bは、本実施形態では平坦である。また、溝壁3aの角度θを示す断面について、図1に示すように、閉止溝3の長手方向Lが直線に延在する場合、長手方向Lに沿う溝壁3aの断面は(A−A断面)、平面視で短手方向Sの中心を通過する中心線CLaに対して直交する方向の断面であって、この断面における角度θを溝壁3aの角度とする。この場合、短手方向Sは、中心線CLaに直交する方向とする。そして、図1に示すように、短手方向Sに沿う溝壁3aの断面は(B−B断面)、中心線CLaでの断面であって、この断面における角度θを溝壁3aの角度とする。また、図7に示すように、閉止溝3の長手方向Lが湾曲して延在する場合、長手方向Lに沿う溝壁3aの断面は(D−D断面)、平面視で短手方向Sの中心を通過する中心線CLbの接線Laに直交する方向の断面であって、この断面における角度θを溝壁3aの角度とする。この場合、短手方向Sは、中心線CLbの接線Laに直交する方向とする。そして、図7に示すように、短手方向Sに沿う溝壁3aの断面は、中心線CLbでの断面であって、この断面における角度θを溝壁3aの角度とする。また、溝壁3aの角度θは、閉止溝3の開口部3cの縁が角であり、溝底部3bと溝壁3aとの交差部分が角である場合は、その角同士を結ぶ線が溝壁3aの角度θとなる。また、図8に示すように、溝壁3aの角度θは、閉止溝3の開口部3cの縁が円弧であり、溝底部3bと溝壁3aとの交差部分が円弧である場合は、その円弧が繋がるトレッド面2aや溝壁3aや溝底部3bの延長線の交点Pに基づいて決定した直線Lbの角度とする。また、図9および図10に参照するように、トレッド面2aへの開口部3cから溝底部3bに至り曲線状に形成された場合の溝壁3aの角度θも同様である。
溝壁3aの角度θが45°未満であると溝壁3aの溝底部3b側への倒れ込みが比較的大きくトレッド剛性が低下しすぎて湿潤路面での操縦安定性能の向上効果が低くなる。一方、溝壁3aの角度θが80°を超えると溝容積の増加が小さく耐ハイドロプレーニング性能の向上効果が低くなる。従って、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を改善するうえで、閉止溝3における溝壁3aの溝底部3bに対する角度θを45°以上80°以下の範囲内にすることが好ましい。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、閉止溝3は、拡幅する断面形状における溝壁3aがトレッド面2aへの開口部3cから溝底部3bに至り直線状に形成される。
この空気入りタイヤ1によれば、溝壁3aが直線状に形成されることで、タイヤ径方向におけるトレッド剛性が一様になるため、トレッド剛性の低下傾向を一様に生じさせることができる。なお、図には明示しないが、直線状に限らず、閉止溝3は、拡幅する断面形状における溝壁3aが開口部3cから溝底部3bに至り階段状に形成されていてもよい。均等な間隔の階段状であれば、直線状と同様にタイヤ径方向でトレッド剛性の低下傾向を一様に生じさせることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、閉止溝3は、拡幅する断面形状における溝壁3aがトレッド面2aへの開口部3cから溝底部3bに至り曲線状に形成される。図9では、溝壁3aは、角度θを導く線Lbに対して閉止溝3の外側に広がるように形成されている。また、図10では、溝壁3aは、角度θを導く線Lbに対して閉止溝3の内側に狭まるように形成されている。
この空気入りタイヤ1によれば、拡幅する断面形状における溝壁3aが開口部3cから溝底部3bに至り曲線状に形成されると、タイヤ径方向におけるトレッド剛性に変化が生じるため、トレッド剛性の低下傾向をタイヤ径方向(閉止溝3の深さ方向)で変化させることができる。即ち、図9に示す形態では、摩耗初期で閉止溝3の深さが深いときにトレッド剛性の低下傾向が大きく、摩耗後期で閉止溝3の深さが浅くなったときにトレッド剛性の低下傾向が小さくなる。逆に、図10に示す形態では、摩耗初期で閉止溝3の深さが深いときにトレッド剛性の低下傾向が小さく、摩耗後期で閉止溝3の深さが浅くなったときにトレッド剛性の低下傾向が大きくなる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、トレッド面2aの溝面積比が17%以下であって、かつ競技用タイヤであることが好ましい。
ここで、溝面積比、溝面積/(溝面積+接地面積)により定義される。また、溝面積とは、接地面における溝の開口面積をいう。また、接地面とは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填すると共に正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面2aが平坦な路面と接地する領域である。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
ラリーにおける舗装路面用の競技用タイヤでは、乾燥路面および湿潤路面で同じトレッドパターンを使用しなければならない。このため、乾燥路面に合わせたトレッドパターンでは、湿潤路面においてグリップの低下が大きい。よって、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上させることが望まれている。このラリーにおける舗装路面用の競技用タイヤは、トレッド面2aの溝面積比が17%以下に規定されている。従って、本実施形態の空気入りタイヤ1は、トレッド面2aの溝面積比が17%以下に規定される競技用タイヤにおいて適用されることで、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能を向上させる効果を十分に発揮することができる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能に関する性能試験が行われた(図11参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ210/65R18の空気入りタイヤを、正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、試験車両(2000cc過給器付き4輪駆動のセダン型車両)に装着した。
耐ハイドロプレーニング性能の評価方法は、上記試験車両にて水深10mmで満たされたプールに直進進入し、ハイドロプレーニング現象が発生するまで少しずつ速度を変えながら繰返し進入することで行った。耐ハイドロプレーニング性能は、ハイドロプレーニング現象が発生した速度を、基準タイヤに対する耐ハイドロプレーニング性能の指数としてあらわした。この指数は、基準を100とした指数で示し、この指数が大きいほどハイドロプレーニング現象の発生速度が高いことを示しており、排水性が優れていることを示す。
湿潤路面での操縦安定性能の評価方法は、上記試験車両にて水深3mmの湿潤試験コースを走行し、レーンチェンジ時およびコーナリング時における操舵性ならびに直進時における安定性について、熟練のテストドライバー1名による官能評価によって行う。この官能評価は、5回の評価の平均であり、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした評価を行う。この評価は、数値が大きいほど、湿潤路面での操縦安定性能が優れていることを示している。
図11において、従来例、比較例および各実施例の空気入りタイヤは、トレッド面に閉止溝のみが設けられ、かつトレッド面の溝面積比が17%以下とされたシングルピッチのものである。これらの空気入りタイヤは、溝深さ、開口部における溝長さや溝幅が同じである。そして、従来例の空気入りタイヤは、閉止溝の断面形状が拡幅されていない。また、比較例の空気入りタイヤは、閉止溝の断面形状が溝底部から開口部に至り直線状の対向溝壁が傾斜することで漸次拡幅されている。
一方、実施例1〜実施例7の空気入りタイヤは、閉止溝の断面形状が開口部から溝底部に至り対向溝壁が傾斜することで漸次拡幅されている。実施例1〜実施例4、実施例6、実施例7は、拡幅が長手方向および短手方向である。実施例5は、拡幅が長手方向のみである。実施例2〜実施例7は、拡幅する溝壁の角度が規定されている。実施例1〜実施例5は、断面形状の溝壁が直線である。実施例6は、断面形状の溝壁が曲線で外側に広がる(図9参照)。実施例7は、断面形状の溝壁が曲線で内側に狭まる(図10参照)。
図11の試験結果に示すように、実施例1〜実施例7の空気入りタイヤは、耐ハイドロプレーニング性能および湿潤路面での操縦安定性能が改善されていることが分かる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a トレッド面
3 閉止溝
3a 溝壁
3b 溝底部
3c 開口部
2 トレッド部
2a トレッド面
3 閉止溝
3a 溝壁
3b 溝底部
3c 開口部
Claims (6)
- トレッド部のトレッド面に開口して周囲が溝壁で閉止された閉止溝が形成され、前記閉止溝を含むトレッドパターンのタイヤ周方向のピッチがシングルピッチで構成されており、前記閉止溝は、タイヤ径方向の断面形状が開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記閉止溝は、一部の断面形状が開口部から溝底部に至り漸次拡幅して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記閉止溝は、断面形状が拡幅される溝壁の溝底部に対する角度が、45°以上80°以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記閉止溝は、拡幅する断面形状における溝壁が開口部から溝底部に至り直線状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記閉止溝は、拡幅する断面形状における溝壁が開口部から溝底部に至り曲線状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド面の溝面積比が17%以下であって、かつ競技用タイヤであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
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---|---|---|---|---|
CN108705901A (zh) * | 2017-03-30 | 2018-10-26 | 住友橡胶工业株式会社 | 轮胎 |
EP3659827A1 (de) * | 2018-11-26 | 2020-06-03 | Continental Reifen Deutschland GmbH | Fahrzeugluftreifen aufweisend ein laufstreifenprofil mit hinterschnitt |
US20220185022A1 (en) * | 2020-12-15 | 2022-06-16 | The Yokohama Rubber Co., Ltd. | Tire |
-
2015
- 2015-03-03 JP JP2015041116A patent/JP2016159797A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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