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JP2016145336A - インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクセット及びインクジェット記録方法 Download PDF

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JP2016145336A JP2016007963A JP2016007963A JP2016145336A JP 2016145336 A JP2016145336 A JP 2016145336A JP 2016007963 A JP2016007963 A JP 2016007963A JP 2016007963 A JP2016007963 A JP 2016007963A JP 2016145336 A JP2016145336 A JP 2016145336A
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Kohei Nakagawa
光平 中川
栄一 中田
Eiichi Nakada
栄一 中田
一ノ瀬 博文
Hirobumi Ichinose
博文 一ノ瀬
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Abstract

【課題】クリアインクと、顔料インクとを併用する場合に、発色性及び耐ブロンズ性に優れているとともに、干渉による色付きが抑制された画像を記録することが可能なインクセットを提供する。
【解決手段】色材を含有しない第1インク及び色材を含有する第2インクの組み合わせを有する水性のインクセットである。第1インクが、樹脂粒子及び水溶性樹脂を含有し、第2インクが、色材、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ウレタン樹脂を含有するとともに、色材が、BET比表面積が50m2/g以上240m2/g以下、かつ、DBP吸油量が30mL/100g以上100mL/100g以下のカーボンブラックであり、第2インク中の水溶性アクリル樹脂の含有量A(質量%)が、カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上2.00倍以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット、及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法により、銀塩写真やオフセット印刷で実現されているような高精細で高発色性の画像を記録することが可能となっている。インクジェット記録方法に用いるインクとして、耐ガス性や耐光性などの堅牢性が向上した画像を記録すべく、顔料を色材として含有するインク(顔料インク)が広く使用されるようになっている。しかし、顔料インクを用いて光沢紙に記録した画像は、染料インクで記録した画像と比べて発色性が低いという課題がある。
とりわけ、顔料インクで記録されたモノクロ画像は、顔料層表面の凹凸や顔料層内部の空隙に起因して生じた散乱光が画像の反射光として発生し、白色の光として視覚的に認知される。このため、見た目の黒濃度が低下してしまい、発色性が損なわれるといった課題がある。また、顔料インクで記録された画像においては、入射光とは異なる色の光が反射されるという、いわゆるブロンズ現象が発生するといった課題もある。例えば、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクで記録される画像においては黄味のブロンズ現象が発生しやすく、見た目の黒濃度が損なわれる原因となる。
これらの課題を解決すべく、色材を含有しないインク(いわゆるクリアインク)と、顔料インクとを併用することで、記録される画像の光沢性及び発色性を高めるとともに、ブロンズ現象を抑制する試みがなされている。例えば、顔料インクで記録した画像の光沢性の向上及びブロンズ現象抑制のため、水溶性樹脂を含有するクリアインクを有するインクセットが提案されている(特許文献1)。また、ポリイソシアネート化合物を含有するクリアインクと、ポリウレタン化合物又はポリイソシアネート化合物を含有する顔料インクとを有する、画像の発色性を向上させ、ブリーディングを抑制しうるインクセットが提案されている(特許文献2)。さらに、樹脂粒子を含有するクリアインクと、カーボンブラック濃度の異なる複数の顔料インクとを有する、画像の光沢ムラを低減しうるインクセットが提案されている(特許文献3)。
特開2009−197211号公報 特開2011−195610号公報 特開2005−052984号公報
本発明者らは、前述した従来のクリアインクと、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクを用いて記録した画像の発色性及び耐ブロンズ性に関して検討した。その結果、画像の発色性及び耐ブロンズ性について改善効果が認められたものの、いずれのクリアインクを用いた場合においてもこれらの効果を高いレベルで得ることはできないことがわかった。
さらに、上記の検討のなかで、従来のインクセットを用いた場合に共通に生ずる新たな課題を発見した。具体的には、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクで記録した画像上にクリアインクを付与すると、クリアインクの付与量に応じて、ブロンズ現象とは異なる様々な色相の色付きが生じた。このため、従来のクリアインクと、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクを用いて記録した画像の見た目の黒濃度が損なわれるといった課題を見出した。この色付きは、画像を構成する「顔料層」の表面からの反射光と、この「顔料層」の上に配置される、クリアインク中の樹脂で形成される「樹脂層」の表面からの反射光とが互いに干渉するために生ずると考えられる。以下、上記のような樹脂層表面の反射光と、顔料層表面の反射光との干渉により発生する反射光の色付きを「干渉による色付き」と言う。
従来のクリアインクを用いることで発生する「干渉による色付き」の課題は、特許文献1〜3においては認識されていなかった。すなわち、上記の「干渉による色付き」は、従来注目されていなかった新しい課題である。そして、特許文献1〜3で提案されたインクセットを用いた場合には、画像の発色性の向上効果及びブロンズ現象の抑制効果が若干認められたものの不十分であり、しかも、記録される画像に干渉による色付きが生じた。すなわち、記録された黒画像の見た目の黒濃度は十分なレベルには達していなかった。
したがって、本発明の目的は、クリアインクと、顔料インクとを併用する場合に、発色性及び耐ブロンズ性に優れているとともに、干渉による色付きが抑制された画像を記録することが可能なインクセットを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、色材を含有しない第1インク及び色材を含有する第2インクの組み合わせを有する水性のインクセットであって、前記第1インクが、樹脂粒子及び水溶性樹脂を含有し、前記第2インクが、色材、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ウレタン樹脂を含有するとともに、前記色材が、BET比表面積が50m2/g以上240m2/g以下、かつ、DBP吸油量が30mL/100g以上100mL/100g以下のカーボンブラックであり、前記第2インク中の前記水溶性アクリル樹脂の含有量A(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上2.00倍以下であることを特徴とするインクセットが提供される。
本発明によれば、クリアインクと、顔料インクとを併用する場合に、発色性及び耐ブロンズ性に優れているとともに、干渉による色付きが抑制された画像を記録することが可能なインクセットを提供することができる。また、本発明によれば、このインクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
干渉現象を説明する模式図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。また、水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。本発明における各種の物性値は、特に断りのない限り25℃における値である。
まず、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクで記録する画像の発色性と耐ブロンズ性を両立するために用いるクリアインクの技術思想について説明する。画像の発色性を向上させ、かつ、ブロンズ現象の抑制効果を高めるには、顔料インクで形成された顔料層の表面にクリアインクを付与し、顔料層の表面に十分な厚みの樹脂層を形成することが必要である。これにより、反射光量が低減されるとともに、樹脂層表面の凹凸や内部の空隙が抑えられるために散乱光が抑制される。検討の結果、このような樹脂層を形成するには、樹脂粒子及び水溶性樹脂をクリアインクに含有させることが必要であることがわかった。樹脂粒子を含有するが水溶性樹脂を含有しないクリアインクを用いると、樹脂層の厚みは十分に確保できるが、樹脂層表面の凹凸や樹脂層内部の空隙が生じてしまう。このため、これらの凹凸や空隙によって生じた散乱光が視覚的に認知され、見た目の黒濃度が低下して発色性が損なわれてしまう。さらに、入射光の一部が空隙を通して顔料層に到達し、顔料から反射が生ずるため、ブロンズ抑制効果も不十分になる。また、水溶性樹脂を含有するが樹脂粒子を含有しないクリアインクを顔料インクで形成された顔料層に付与すると、顔料層への水溶性樹脂の染み込みが生じてしまい、形成される樹脂層の厚みが不十分になる。このため、反射光量を十分に低減することができず、発色性の向上効果及びブロンズ現象の抑制効果が不十分となる。一方、樹脂粒子及び水溶性樹脂を含有するクリアインクを用いると、樹脂粒子が顔料層に染み込みにくいために十分な厚みを有する樹脂層が形成される。さらに、樹脂層表面の凹凸や樹脂層内部の空隙を水溶性樹脂が埋めるために散乱光が抑制される。したがって、発色性及び耐ブロンズ性が高いレベルで両立された画像を記録することができる。
本発明者らは、上記のクリアインクを、カーボンブラックを色材として含有する従来の顔料インクで形成された顔料層に付与した。その結果、クリアインクの付与量に応じて、ブロンズ現象によるものとは異なる様々な色相の色付きが生じてしまい、見た目の黒濃度が大きく損なわれ、干渉による色付きが発生するといった新たな課題が生ずることが判明した。さらに、干渉による色付きは、顔料種が有機顔料(フタロシアニン、キナクリドン、アゾなど)である場合には発生せず、カーボンブラックである場合に特有に発生する課題であることもわかった。上記の新たな課題に対し、本発明者らは、前述のクリアインクとともに、特定の組成を有する顔料インクを用いることを見出した。これにより、干渉による色付きを抑制することができるとともに、発色性及び耐ブロンズ性に優れ、かつ、見た目の黒濃度に優れたブラック画像を記録することができる。
本発明のインクセットを構成する第1インク(クリアインク)と、カーボンブラックを色材として含有する従来の顔料インクを組み合わせて用いた際に干渉による色付きが発生するメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。クリアインクと、カーボンブラックを色材として含有する従来のインクにより記録した画像の断面を観察した。その結果、顔料インクで形成された「顔料層」の上に、クリアインク中の樹脂粒子で形成されたクリアインクの「樹脂層」が配置されており、顔料層と樹脂層が明確に分かれた層構成となっていた。
本発明者らは、クリアインクと、カーボンブラックを色材として含有する従来のインクを用いる場合に、干渉による色付きが生ずる原因を以下のように推測している。図1は、干渉現象を説明する模式図である。図1に示すように、顔料層60及びこの顔料層60上に形成された樹脂層70を有する画像が記録された記録媒体50に光(入射光100)が入射した場合を想定する。この場合、画像の最表面(樹脂層70の表面)において一部の入射光100が反射され、反射光1が生ずる。一方、顔料層60と樹脂層70の間に界面が明確に形成されていると、樹脂層70を透過した入射光100はこの界面でも反射され、反射光2が生ずる。その結果、反射光1と反射光2が薄膜干渉を起こし、ブロンズ現象とは異なった反射光の色付きが起こる。ここで、顔料層60がカーボンブラックで形成されている場合、カーボンブラックの屈折率は、有機顔料などの他の色材の屈折率に比して高いため、反射光2の強度も相対的に大きくなる。さらに、有彩色の色材である有機顔料の場合、薄膜干渉による色付きが顔料の色相により認識されづらくなるものの、カーボンブラックの色相は無彩色に近いため、薄膜干渉による色付きが特に認識されやすい。その結果、薄膜干渉による色付きが、カーボンブラック以外の有機顔料などの色材を用いたカラーインクで記録した画像よりも顕著に認識されると考えられる。
本発明者らは、反射光1及び反射光2の少なくともいずれかの発生を抑制すれば、干渉による色付きも抑制できると考え、さらなる検討を行った。しかし、樹脂層70表面の平滑性を落として反射光1の発生を抑制すると、干渉は抑制されるが、樹脂層70表面の凹凸によって散乱光が生じてしまい、発色性が損なわれることがわかった。そこで、本発明者らは、顔料層60と樹脂層70の界面の形成を抑制する、すなわち界面を曖昧にすることができれば、反射光2の発生を抑制することができると考えた。
本発明者らは、カーボンブラックを色材として含有する顔料インクを用いた場合に、上記のような明確な界面が形成される原因を以下のように推測している。カーボンブラックの粒子表面は疎水性が高く、さらに形成された顔料層内における粒子間の凝集力も非常に強い。このため、カーボンブラックを用いて形成した顔料層にクリアインクを付与すると、顔料層の表面は疎水性が高く濡れにくいとともに、カーボンブラックの強い凝集力により、カーボンブラックの粒子間に形成される空隙が非常に小さくなる。その結果、クリアインクが顔料層の内部に浸透できずに表面で固化してしまい、顔料層と樹脂層の間に明確な界面が形成されることになる。一方、カーボンブラックと比較すると、有機顔料の粒子表面の疎水性は相対的に低く、粒子間の凝集力も弱い。このため、有機顔料を用いて形成した顔料層にクリアインクを付与すると、顔料層の内部にクリアインクが浸透して曖昧な界面が形成されやすい。加えて、上述の通り有機顔料の場合は薄膜干渉による色付きが認識されづらいことも相まって、「干渉による色付き」が実質的な問題となることはない。
本発明者らは、樹脂層と顔料層との界面を曖昧にするためには、樹脂とカーボンブラックの存在比率が連続的に変化する中間層を形成することが有効であると考えた。さらに、この中間層を形成するには、クリアインク中の水溶性樹脂を顔料層の表面近傍へと浸透させることが必要であると考えた。このため、顔料層の濡れ性を向上させるとともに、カーボンブラックの凝集力を弱めることが有効と考え、これを実現するための顔料インクの構成を検討した。その結果、水溶性アクリル樹脂及び水溶性ウレタン樹脂を顔料インクに含有させることが有効であることを見出した。顔料インク中の水溶性アクリル樹脂は、カーボンブラックの粒子表面に吸着し、粒子を被覆することでカーボンブラックの濡れ性を向上させるとともに、カーボンブラックの凝集力をある程度弱めることができる。さらに、水溶性アクリル樹脂が付着したカーボンブラックの粒子間に、水溶性アクリル樹脂との相互作用によって水溶性ウレタン樹脂が入り込み、カーボンブラックの凝集力がさらに弱まる。このため、顔料層に対してクリアインクが良く濡れながら、顔料層の表面近傍のカーボンブラックを再分散させてカーボンブラックの粒子間の空隙を押し広げ、クリアインクの浸透性が高まると考えられる。
一方、顔料インクに含有させる樹脂として、水不溶性アクリル樹脂を用いても、上記の中間層を形成することはできず、干渉による色付きの抑制が不十分となる。これは、水不溶性アクリル樹脂は粒子径を有する状態でインク中に存在するため、カーボンブラックの粒子表面に吸着しづらく、カーボンブラックの濡れ性を向上させる効果や凝集力を弱める効果が低いためである。
本発明のインクセットを構成する第2インク(顔料インク)中の水溶性アクリル樹脂の含有量A(質量%)は、カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上2.00倍以下である。上記の質量比率が0.30倍未満であると、カーボンブラックの粒子表面を被覆する水溶性アクリル樹脂が不足するため、顔料層へのクリアインクの濡れ性及び浸透性が不十分となる。一方、上記の質量比率が2.00倍超であると、カーボンブラックの粒子間の空隙を過剰の水溶性アクリル樹脂が埋めてしまい、顔料層へのクリアインクの浸透が阻害されてしまう。いずれの場合にも、十分な厚みを有する中間層が形成されないため、干渉による色付きの抑制が不十分となる。
上記の構成とすることで、干渉による色付きをある程度抑制できることがわかった。しかし、干渉による色付きの抑制が未だに不十分である場合や、画像の発色性及び耐ブロンズ性が不十分である場合があった。この場合、クリアインク中の水溶性樹脂の顔料層への浸透が不十分なため、中間層が十分に形成されておらず、干渉による色付きの抑制が不十分となることがわかった。また、クリアインク中の水溶性樹脂が顔料層に浸透しすぎてしまい、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂層内に空隙が生じたりするために、画像の発色性及び耐ブロンズ性が不十分となることがわかった。すなわち、顔料層へのクリアインクの浸透深さが制御できていないため、干渉による色付きの抑制が不十分となり、画像の発色性及び耐ブロンズ性が不十分になることがわかった。このような状況の下、顔料層の内部に形成される空隙の径をカーボンブラックの構造によって制御し、クリアインクの浸透深さを制御することについて検討した。その結果、BET比表面積が50m2/g以上240m2/g以下、かつ、DBP吸油量が30mL/100g以上100mL/100g以下のカーボンブラックを用いることで、クリアインクの浸透深さを適切に制御できることを見出した。
BET比表面積は、カーボンブラックの一次粒子径の大きさを反映する指標となる物性値である。また、DBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーを反映する指標となる物性値である。これらの物性値を規定することで、顔料層の内部に形成される「カーボンブラックの粒子間の空隙、すなわち、クリアインクの浸透する空隙の構造」を制御することができる。BET比表面積及びDBP吸油量が所定の範囲に規定されたカーボンブラックを用いることで、顔料層の表面近傍から内部へのクリアインクの浸透に伴って十分量の水溶性樹脂も顔料層へと入り込む。さらに、BET比表面積及びDBP吸油量を所定の範囲に規定したことで、水溶性樹脂が過剰に顔料層に入り込み過ぎないように制御される。これにより、十分な厚みを有する中間層が形成されるとともに、樹脂層の表面に凹凸が形成されず、かつ、樹脂層の内部に空隙も存在しなくなる。このため、発色性及び耐ブロンズ性に優れているとともに、干渉による色付きが抑制されたブラック画像を記録することが可能となる。
カーボンブラックのBET比表面積が50m2/g未満、又は、DBP吸油量が30mL/100g未満であると、顔料層の内部に形成される空隙の径が小さくなりすぎてしまう。このため、クリアインク中の水溶性樹脂が顔料層に十分に浸透せずに十分な厚みを有する中間層が形成されなくなり、干渉による色付きの抑制が不十分となる。一方、BET比表面積が240m2/g超、又は、DBP吸油量が100mL/100g超であると、顔料層の内部に形成される空隙の径が大きくなりすぎてしまう。このため、クリアインク中の水溶性樹脂が顔料層に浸透しすぎてしまい、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂層内に空隙が生じたりする。これにより、散乱光が生じて画像の発色性が低下するとともに、耐ブロンズ性も不十分となる。
<インクセット>
本発明のインクセットは、色材を含有しない第1インク及び色材を含有する第2インクの組み合わせを有する水性のインクセットである。第1インクは、樹脂粒子及び水溶性樹脂を含有する。また、第2インクは、色材、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ウレタン樹脂を含有するとともに、色材が所定のカーボンブラックである。第1インク及び第2インクは、互いに接触した際に反応や増粘するものである必要はない。すなわち、各インクには、反応剤や増粘剤を含有させる必要はない。以下、本発明のインクセットを構成するインクに含まれる成分やインクの物性などについて詳細に説明する。
(樹脂粒子)
本発明のインクセットを構成する第1インクは、樹脂粒子を含有する。樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂などで構成される樹脂粒子を挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂で構成される樹脂粒子を含有させることが好ましい。以下の記載における「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットや、(メタ)アクリルエステルに由来するユニットなどのアクリル成分を少なくとも有するものであればよい。より具体的には、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。
親水性ユニット(酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有するユニット)は、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有するモノマー;スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有するモノマー;これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有するモノマーを挙げることができる。アニオン性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。
疎水性ユニット(酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有しないユニット)は、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
本発明においては、コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いることが好ましい。コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いることで、発色性及び耐ブロンズ性がさらに優れた画像を記録することができる。コアシェル構造を有する樹脂粒子は、コア部分とシェル部分の機能が明確に分離されている。例えば、疎水性基を有するモノマーに由来するユニットで構成されたコア部と、酸性モノマーに由来するユニットを含むシェル部とを有する樹脂粒子は、単層構造を有する樹脂粒子と比較して、酸価が同じであってもインクの吐出安定性をより高めることができる。また、疎水性基を有するモノマーに由来するユニットが導入されたコア部を有する樹脂粒子は、形成される顔料層上に存在させる点で有利である。このため、発色性及び耐ブロンズ性をより向上させることができる。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、50nm以上120nm以下であることが好ましい。体積平均粒子径が50nm未満の樹脂粒子は顔料層や記録媒体に沈み込みやすいため、発色性及び耐ブロンズ性がやや向上しにくくなる場合がある。一方、樹脂粒子の体積平均粒子径が120nm超であると、画像の発色性がやや低下する場合がある。
本発明における「体積平均粒子径」は、体積基準の累積50%粒子径(D50)を意味し、以下に示すような条件にしたがって測定することができる。まず、樹脂粒子を純水で50倍(体積基準)に希釈した測定試料を用意する。そして、粒度分布測定装置を使用し、以下に示す測定条件にしたがって測定試料中の樹脂粒子の体積平均粒子径を測定する。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
屈折率:1.5
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
第1インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.20質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。第1インク中の樹脂粒子の含有量が0.20質量%未満であると、所望とする画像性能がやや発現しづらい場合がある。一方、5.00質量%超であると、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
(水溶性樹脂)
本発明のインクセットを構成する第1インクは、水溶性樹脂を含有する。水溶性樹脂としては、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、及びウレタン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、水溶性樹脂としてはアクリル樹脂が好ましい。特に、第1インクに水溶性樹脂としてアクリル樹脂を含有させる場合、ウレタン樹脂は含有させなくてもよい。アクリル樹脂としては、前述の樹脂粒子を構成するアクリル系樹脂と同様に、アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットや、(メタ)アクリルエステルに由来するユニットなどのアクリル成分を少なくとも有するものであればよい。より具体的には、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。
親水性ユニット(酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有するユニット)は、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有するモノマー;スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有するモノマー;これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有するモノマーを挙げることができる。アニオン性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。水溶性樹脂は、通常、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性を呈する。
疎水性ユニット(酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有しないユニット)は、例えば、疎水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。疎水性基を有するモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有するモノマーなどを挙げることができる。
第1インク中の水溶性樹脂の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、0.50質量%以上4.00質量%以下であることが好ましい。第1インク中の水溶性樹脂の含有量が0.50質量%未満であると、所望とする画像性能がやや発現しづらい場合がある。一方、4.00質量%超であると、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
水溶性樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、3,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、JISハンドブック化学分析 K0124に準拠し、サイズ排除クロマト法(GPC法)により測定することができる。また、水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の酸価は、電位差滴定により求めることができる。
樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
また、本発明のインクセットを構成する第2インクは、水溶性アクリル樹脂及び水溶性ウレタン樹脂を含有する。前述の通り、水溶性アクリル樹脂とともに水溶性ウレタン樹脂を第2インクに含有させることで、顔料層のカーボンブラック粒子の凝集力を弱めることができる。これにより、顔料層への第1インクの浸透を促進させることができる。水溶性ウレタン樹脂は、通常、ウレタン結合に代表される水素結合部位と、カーボンブラックを被覆する水溶性アクリル樹脂と相互作用する疎水部位とを有する。水溶性ウレタン樹脂を第2インクに添加すると、水溶性ウレタン樹脂はカーボンブラックの粒子表面に吸着した水溶性アクリル樹脂と相互作用してカーボンブラックの粒子間に入り込むため、カーボンブラックの凝集力が弱められる。さらに、水溶性ウレタン樹脂に水素結合部位が存在するため、カーボンブラック粒子で形成される空隙の親水性が向上する。これにより、顔料層への第1インクの濡れ性が向上し、顔料層への第1インクの浸透を促進させることができる。以上の作用により、第1インク中の水溶性樹脂の顔料層への浸透が促進され、十分な厚みを有する中間層が形成される。このため、干渉による色付きの発生を抑制することができる。
第2インクに含有させる水溶性アクリル樹脂としては、第1インクに含有させることができる前述のアクリル樹脂と同様のものを挙げることができる。本発明においては、第2インクに含有させる水溶性アクリル樹脂が、アルキレンオキサイド構造を有しないものであることが好ましい。また、第1インクに含有させる水溶性樹脂と、第2インクに含有させる水溶性アクリル樹脂が同一の樹脂であることが好ましい。同一の樹脂とは、各樹脂の構成ユニットの種類、酸価、及び重量平均分子量が同じであることを意味する。第1インクに含有させる水溶性樹脂と、第2インクに含有させる水溶性アクリル樹脂が同一の樹脂であると、樹脂同士の相溶性が良好であるため、第1インク中の水溶性樹脂の顔料層への浸透性が向上する。これにより、干渉による色付きの発生をさらに効果的に抑制することができる。
水溶性ウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。さらに、ウレタン樹脂とその他の樹脂とを結合させたハイブリッド型の樹脂であってもよい。
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;などを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの数平均分子量が450〜4,000程度である長鎖ポリオール、親水性基を有するポリオールなどの短鎖ポリオールなどを用いることができる。そして、水溶性ウレタン樹脂として、ポリ(オキシテトラメチレン)構造又はポリ(オキシプロピレン)構造を有する、ポリエーテル系のウレタン樹脂を用いることが好ましい。このようなポリエーテル系のウレタン樹脂を用いると、画像の発色性及び耐ブロンズ性をより向上させることができる。ポリ(オキシテトラメチレン)構造又はポリ(オキシプロピレン)構造は、水溶性アクリル樹脂とより強い相互作用を生じる。このため、顔料層の空隙を有効に埋めることができ、画像の発色性及び耐ブロンズ性がより向上すると考えられる。
短鎖ポリオールの具体例である親水性基を有するポリオールとしては、構造中にカルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基などの酸基;カルボニル基、ヒドロキシ基などの親水性基を含むポリオールを挙げることができる。特に、長鎖ポリオールに加えて、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などの酸基を有するポリオールをさらに用いて合成された水溶性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。酸基は塩の形態であってもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。水溶性ウレタン樹脂が酸基を有する場合、通常、酸基がアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性を呈する。
鎖延長剤は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマー中のポリイソシアネートユニットのうち、ウレタン結合を形成しなかった残存イソシアネート基と反応しうる化合物である。鎖延長剤としては、ジメチロールエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン;ポリエチレンポリイミンなどの多価イミン;ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオールなどの多価アルコールを用いることができる。
ウレタン樹脂は「水溶性」であることを要する。ウレタン樹脂が水溶性であるか否かについては、具体的には、前述の水溶性樹脂の場合と同様の方法で判断することができる。本発明者らは、水溶性ウレタン樹脂に代えて水不溶性ウレタン樹脂を添加したインクについて検討した。その結果、発色性及び耐ブロンズ性に優れた画像を記録することができないことが判明した。これは、粒子状態のウレタン樹脂はカーボンブラック粒子間の空隙を押し広げすぎるため、第1インク中の水溶性樹脂が顔料層に浸透しすぎて樹脂層に残存せず、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂粒子間に空隙が生じたりしたためであると推測される。
第2インク中の水溶性ウレタン樹脂の含有量U(質量%)は、カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上0.60倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.10倍未満であると、カーボンブラックの凝集力を十分に弱めることができず、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が0.60倍超であると、カーボンブラックの凝集力が弱められすぎてしまうとともに、第2インクの親水性が高まりすぎてしまう。このため、水溶性樹脂が顔料層内に浸透しすぎてしまい、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂粒子間に空隙が生じたりすることがある。これにより、画像の発色性及びブロンズ抑制効果が低下する場合がある。
水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、8,000以上22,000以下であることが好ましい。水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が8,000未満であるとサイズが小さすぎてしまい、顔料(カーボンブラック)との相互作用が弱くなることがある。このため、カーボンブラックの凝集力を十分に弱めることが困難になり、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。一方、水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が22,000超であるとサイズが大きすぎてしまう。このため、水溶性ウレタン樹脂とカーボンブラックとの相互作用は強くなるが、顔料層の空隙を水溶性ウレタン樹脂が埋めてしまうため、第1インクの浸透が抑制される。その結果、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。
水溶性ウレタン樹脂の酸価は、45mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性ウレタン樹脂の酸価が45mgKOH/g未満であると、第2インク中のカーボンブラックの凝集力が十分に弱められなくなるとともに、空隙の濡れ性が低下する。このため、中間層の厚みが不十分となり、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。一方、水溶性ウレタン樹脂の酸価が70mgKOH/g超であると、顔料層内の空隙の親水性が高くなりすぎてしまう。このため、第1インク中の水溶性樹脂が顔料層内に浸透しすぎてしまい、画像の発色性及び耐ブロンズ性が低下する場合がある。
(色材)
本発明のインクセットを構成する第2インクは、色材(顔料)としてカーボンブラックを含有する。カーボンブラックは、BET比表面積が50m2/g以上240m2/g以下であり、かつ、DBP吸油量が30mL/100g以上100mL/100g以下であることを要する。カーボンブラックの種類としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどを挙げることができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、30mL/100g以上70mL/100g以下であることが好ましい。DBP吸油量が70mL/100gを超えると、顔料層内の空隙の径が大きくなりすぎることがあり、第1インク中の水溶性樹脂が浸透しすぎる場合がある。このため、画像の発色性及び耐ブロンズ性が低下する場合がある。
カーボンブラックは、樹脂分散剤として機能する水溶性樹脂によって第2インク中に分散されていることが好ましい。また、水溶性樹脂は、水溶性アクリル樹脂であることが好ましい。カーボンブラックが水溶性樹脂によって分散されている第2インクを用いることで、干渉による色付き抑制効果をより高めることができる。第2インク中のカーボンブラックの含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上5.00質量%以下であることがさらに好ましい。第2インク中のカーボンブラックの含有量を上記の範囲とすることで、記録される画像の発色性を十分に高めることができる。
第2インク中のカーボンブラックの体積平均粒子径D2は、40nm以上90nm以下であることが好ましい。さらに、第1インク中の樹脂粒子の体積平均粒子径D1(nm)が、第2インク中のカーボンブラックの体積平均粒子径D2(nm)に対する比率で、0.60倍以上2.00倍以下であることが好ましい。カーボンブラックの体積平均粒子径D2が40nm未満であると、顔料層に形成される空隙の径が小さくなりすぎることがある。このため、第1インク中の水溶性樹脂が十分に顔料層に浸透できなくなり、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。一方、カーボンブラックの体積平均粒子径が90nm超であると、顔料層に形成される空隙の径が大きすぎることがある。このため、第1インク中の水溶性樹脂が顔料層内に浸透しすぎてしまい、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂粒子間に空隙が存在したりすることがあり、画像の発色性及び耐ブロンズ性が低下する場合がある。
さらに、第1インク中の樹脂粒子の体積平均粒子径D1(nm)が、第2インク中のカーボンブラックの体積平均粒子径D2(nm)に対する比率で、0.60倍以上2.00倍以下であると、顔料層上に樹脂粒子を適切な状態で存在させることができる。上記の比率が0.60倍未満であると、カーボンブラック粒子に対して樹脂粒子が小さすぎてしまい、顔料層に形成される空隙に樹脂粒子の一部が入り込んでしまうことがある。このため、適切な量の樹脂粒子を顔料層上に存在させることができなくなることがあり、ブロンズ現象の抑制効果が低下する場合がある。一方、上記の比率が2.00倍超であると、樹脂層中の樹脂粒子間の空隙が大きくなりすぎてしまい、水溶性樹脂を保持する力が弱まることがある。このため、水溶性樹脂が顔料層に浸透しすぎてしまい、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂粒子間に空隙が生じたりすることで、画像の発色性及び耐ブロンズ性が低下する場合がある。
(水性媒体)
本発明のインクセットを構成する各インクは、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する水性インクである。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。但し、インクの吐出安定性がやや低下する場合があるため、炭素数7程度以上の水難溶性アルカンジオールは用いないことが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、15.00質量%以上40.00質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲を外れると、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。
(その他の添加剤)
本発明のインクセットを構成する各インクは、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素やその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクセットを構成する各インクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
第2インクは、さらに、ノニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。第2インクにノニオン性界面活性剤を含有させることで、画像の発色性及び耐ブロンズ性がさらに向上するとともに、干渉による色付きをさらに抑制することができる。水溶性アクリル樹脂で分散されたカーボンブラックにノニオン性界面活性剤が吸着することで、カーボンブラックの凝集力を弱める作用が高まるため、上記のような効果が得られると推測される。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などの炭化水素系界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン化合物などのシリコーン系界面活性剤などを挙げることができる。
(インクの物性)
第1インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力は、35.0mN/m以下であることが好ましい。さらに、第1インクの静的表面張力と第2インクの静的表面張力の差(絶対値)は、3.0mN/m以下であることが好ましい。これらの条件を満たすことにより、画像の発色性及び耐ブロンズ性をさらに高めることができるとともに、干渉による色付きをさらに抑制することができる。前述の通り、干渉による色付きの抑制効果を高めるには、顔料層に対する第1インクの浸透性を高めることが重要である。まず、第1インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力を35.0mN/m以下とすることで、顔料層への第1インクの濡れ性が向上し、第1インクの浸透性を高めることができる。一方、第1インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力を35.0mN/m超であると、耐ブロンズ性及び干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。本発明者らの検討の結果、第1インクの動的表面張力を寿命時間50ミリ秒における値で特定しているのは、他の寿命時間で特定する場合と比較して、濡れ性を捉える指標としてより有効であったためである。また、インク間の混合による作用と良く整合していたため、特定の寿命時間における動的表面張力ではなく、各インクの表面張力の差は静的表面張力により特定することとした。
さらに、第1インクの静的表面張力と第2インクの静的表面張力の差を3.0mN/m以下とすることで、樹脂層と顔料層の間に上述の中間層が有効に形成されることを本発明者らは見出した。表面張力の異なる2つのインクが記録媒体上で接触すると、通常、表面張力が相対的に低い方のインクが、表面張力が相対的に高い方のインクへと移動する。このため、第1インクの静的表面張力と第2インクの静的表面張力の差が3.0mN/mを超えると、顔料層に残存する液体成分が第1インクの方へと移動する力が働く。したがって、第1インクが顔料層に浸透しにくくなり、形成される中間層の厚みが不足し、干渉による色付きの抑制効果が低下する場合がある。また、第1インクの静的表面張力が、第2インクの静的表面張力よりも3.0mN/mを超えて小さいと、第1インク中の水溶性樹脂の顔料層内への浸透が促進されすぎてしまうことがある。これらのために、樹脂層の表面に凹凸が生じたり、樹脂粒子間に空隙が生じたりすることで、画像の発色性及び耐ブロンズ性が低下する場合がある。
第1インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力は、30.0mN/m以上であることが好ましい。第2インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力は、30.0mN/m以上40.0mN/m以下であることが好ましい。第1インクの静的表面張力と第2インクの静的表面張力の差は0.0mN/m以上であることが好ましい。第1インクの静的表面張力は、25.0mN/m以上35.0mN/m以下であることが好ましい。第2インクの静的表面張力は、25.0mN/m以上40.0mN/m以下であることが好ましい。
本発明でインクの特性を規定するのに利用する動的表面張力とは、最大泡圧法により求められるものである。最大泡圧法とは、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端に発生させた気泡を放出するために必要な最大圧力を測定して、この最大圧力から液体の表面張力を求める方法であり、プローブの先端に連続的に気泡を発生させながら最大圧力を測定する。この際、プローブの先端に新たな気泡の表面が発生した時点から、最大泡圧(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)に達するまでの時間を、寿命時間と呼ぶ。また、本発明でインクの特性を規定するのに利用する静的表面張力とは、プレート法により求められるものである。動的表面張力や静的表面張力は、例えば、水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類及び使用量により調整することができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクセットに含まれる各インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明のインクジェット記録方法は、第2インクで記録された画像の上に第1インクを付与する工程を有することが好ましい。また、本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクセットに含まれる各インクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
本発明のインクセットを用いて記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよいが、普通紙や、コート層を有する記録媒体(光沢紙やアート紙)などの、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。特に、インク中の顔料粒子の少なくとも一部を記録媒体の表面やその近傍に存在させることができる、コート層を有する記録媒体を用いることが好ましい。このような記録媒体は、画像を記録した記録物の使用目的などに応じて選択することができる。例えば、写真画質の光沢感を有する画像を得るのに適している光沢紙や、絵画、写真、及びグラフィック画像などを好みに合わせて表現するために、基材の風合い(画用紙調、キャンバス地調、和紙調など)を生かしたアート紙などが挙げられる。なかでも、コート層の表面が光沢性を持つ、いわゆる光沢紙を用いることが特に好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<体積平均粒子径の測定条件>
顔料の体積平均粒子径は、顔料の含有量が0.4%になるように純水で希釈した顔料分散液を測定用試料とし、粒度分布測定装置を使用して以下に示す測定条件にしたがって測定した。なお、粒度分布測定装置としては、商品名「UPA−EX150」(日機装製)を使用した。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
屈折率:1.5
<樹脂粒子の調製>
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにエチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を入れて窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。2−エチルヘキシルアクリレート38.0部、メチルメタクリレート34.0部、及びアクリル酸28.0部の混合物と、t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.3部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、減圧下でエチレングリコールモノブチルエーテルを除去して固形の樹脂(シェルポリマー)を得た。得られたシェルポリマーに酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加え、80℃で中和溶解して、固形分(シェルポリマー)の含有量が30.0%であるシェルポリマーの水溶液を得た。シェルポリマーの酸価は216mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに表1に示す量のシェルポリマーの水溶液を入れて窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃まで昇温させた。表1に示す量のスチレンとメチルメタクリレートの4:1(質量比)の混合物及び水を添加した後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0部を水16.7部に溶解した液体を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、適量のイオン交換水を添加して固形分を調整した。これにより、樹脂(固形分)の含有量が10.0%である、コアシェル構造を有する樹脂粒子を含む水分散液を得た。樹脂粒子の体積平均粒子径は以下のようにして測定した。樹脂粒子を含む水分散液を、純水で10倍(体積基準)に希釈して測定用の試料を調製した。得られた試料中の樹脂粒子について、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA−EX150」、日機装製)を用い、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率1.5の条件で体積平均粒子径を測定した。樹脂粒子の体積平均粒子径を表1に示す。
Figure 2016145336
<水溶性樹脂の合成>
(アクリル樹脂1)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコにエチレングリコールモノブチルエーテル100.0部を入れるとともに、反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で110℃に昇温させた。スチレン39.5部、メチルメタクリレート40.0部、及びアクリル酸20.5部の混合物と、t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.3部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して固形の水溶性樹脂を得た。得られた水溶性樹脂に、酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えて80℃で中和溶解させた。これにより、樹脂(固形分)の含有量が30.0%であるアクリル樹脂1(水溶性アクリル樹脂)の水溶液を得た。アクリル樹脂1の酸価は155mgKOH/g、重量平均分子量は8,000であった。
(アクリル樹脂2)
モノマーをベンジルメタクリレート79.3部及びメタクリル酸20.7部の混合物に変えたこと以外は、前述のアクリル樹脂1と同様にして、樹脂(固形分)の含有量が30.0%であるアクリル樹脂2(水溶性アクリル樹脂)の水溶液を得た。アクリル樹脂2の酸価は135mgKOH/g、重量平均分子量は7,160であった。
(ウレタン樹脂1〜11)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、表2に示す種類及び使用量のポリオール、イソホロンジイソシアネート44.5g、及びジブチル錫ジラウレート0.007gを入れた。表2におけるポリオールに付した数値は数平均分子量を示し、PPGはポリプロピレングリコール、PTMGはポリテトラメチレングリコール、PEGはポリエチレングリコールである。窒素ガス雰囲気下、温度100℃で5時間反応させた後、温度65℃以下に冷却した。表2に示す使用量のジメチロールプロピオン酸、ネオペンチルグリコール3.0g、及びメチルエチルケトン150.0gを添加し、温度80℃で反応させた。その後、温度40℃に冷却し、メタノール20.0gを加えて反応を停止させた。次いで、適量のイオン交換水を添加し、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂を中和するために必要な水酸化カリウム水溶液を添加した。その後、加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、樹脂(固形分)の含有量が10.0%である各水溶性ウレタン樹脂の水溶液を得た。ウレタン樹脂の酸価は、電位差自動滴定装置を使用し、水酸化カリウム/エタノール滴定液で電位差滴定することにより測定した。また、ウレタン樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた。なお、重量平均分子量は、温度80℃での反応時間を適宜変化させて調整した。各ウレタン樹脂の酸価及びポリスチレン換算の重量平均分子量を表2に示す。
(水溶性樹脂であるかの確認)
上記で得られた水溶性樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂)の水溶液を純水で希釈して、樹脂(固形分)の含有量が1.0%である試料を調製した。得られた試料中の樹脂について、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA−EX150」、日機装製)を用い、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒の条件で粒子径を測定した。その結果、いずれの樹脂も粒子径は測定されず、水溶性であることが確認された。
Figure 2016145336
<顔料分散液の調製>
表3−1に示す各成分の混合物をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れて分散させた。その後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。次いで、ポアサイズの3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、表3−2に示す特性を有する各顔料分散液を調製した。なお、表3−1中の顔料の種類、及び「NIKKOL BC−40」の詳細を以下に示す。
・CB:カーボンブラック
・シアン顔料:C.I.ピグメントブルー15:3
・マゼンタ顔料:C.I.ピグメントレッド122
・イエロー顔料:C.I.ピグメントイエロー74
・NIKKOL BC−40:界面活性剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル、日光ケミカルズ製)
Figure 2016145336
Figure 2016145336
<インクの調製>
表4及び5−1〜5−6の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが0.8μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。表4及び5−1〜5−6の下段にはインクの特性を示した。寿命時間50ミリ秒における動的表面張力は、25℃で、最大泡圧法による動的表面張力計(商品名「BUBBLE PRESSURE TENSIOMETER BP−2」、KRUSS製)を用いて測定した。また、静的表面張力は、25℃で、自動表面張力計(商品名「DY−300」、協和界面科学製)を用いて測定した。また、表4及び5−1〜5−5中の「アセチレノールE100」、「プロキセルGXL」、及び「レザミンD−1060」の詳細を以下に示す。
・アセチレノールE100:界面活性剤(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、川研ファインケミカル製)
・プロキセルGXL:防黴剤(アーチケミカルズ製)
・レザミンD−1060:水不溶性ウレタン樹脂(自己乳化型ポリウレタンエマルション、大日精化製、樹脂〔固形分〕の含有量40.0%、樹脂粒子の体積平均粒子径150nm)
Figure 2016145336
Figure 2016145336
Figure 2016145336
Figure 2016145336
Figure 2016145336
Figure 2016145336
Figure 2016145336
<評価>
表6−1及び6−2に示す各インクを組み合わせてインクセットとし、以下に示す評価を行った。「静的表面張力の関係」の欄には、「第1インクの静的表面張力と第2インクの静的表面張力の差が3.0mN/m」である関係を満たす場合を「○」、満たさない場合を「×」として示した。各インクを充填したインクカートリッジを、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro 9500」、キヤノン製)にセットした。第1インクはマットブラックインクのポジション、第2インクはシアンインクのポジションにそれぞれセットした。そして、第2インクの記録デューティを10〜100%の間で10%刻みとした10種の画像の上に、第1のインクの記録デューティを20%となるように重ねて10種のベタ画像を記録した。記録媒体としては、商品名「キヤノン写真用紙・光沢[ゴールド]」(キヤノン製)を用いた。なお、実施例34は、第1インクの上に第2インクを付与する条件で画像を記録した。本実施例においては、解像度が600dpi×600dpiで、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.5ngのインク滴を8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。
(発色性)
得られた10種のベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。
A:散乱光による発色性の低下が生じたベタ画像がなかった。
B:正反射光付近にのみわずかに散乱光による発色性の低下が生じたベタ画像があった。
C:散乱光による発色性の低下が生じたベタ画像があった。
(耐ブロンズ性)
得られた10種のベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐ブロンズ性を評価した。
A:ブロンズ現象が生じたベタ画像がなかった。
B:ブロンズ現象がわずかに生じたベタ画像があった。
C:ブロンズ現象が顕著に生じたベタ画像があった。
(干渉による色付き抑制)
得られた10種のベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって干渉による色付き抑制を評価した。
A:干渉による色付きが生じたベタ画像がなかった。
B:干渉による色付きがわずかに生じたベタ画像があった。
C:干渉による色付きが顕著に生じたベタ画像があった。
Figure 2016145336
Figure 2016145336

Claims (7)

  1. 色材を含有しない第1インク及び色材を含有する第2インクの組み合わせを有する水性のインクセットであって、
    前記第1インクが、樹脂粒子及び水溶性樹脂を含有し、
    前記第2インクが、色材、水溶性アクリル樹脂、及び水溶性ウレタン樹脂を含有するとともに、前記色材が、BET比表面積が50m2/g以上240m2/g以下であり、かつ、DBP吸油量が30mL/100g以上100mL/100g以下のカーボンブラックであり、
    前記第2インク中の前記水溶性アクリル樹脂の含有量A(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上2.00倍以下であることを特徴とするインクセット。
  2. 前記カーボンブラックのDBP吸油量が、30mL/100g以上70mL/100g以下である請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記第2インク中の前記カーボンブラックの体積平均粒子径D2が、40nm以上90nm以下であり、
    前記第1インク中の前記樹脂粒子の体積平均粒子径D1(nm)が、前記第2インク中の前記カーボンブラックの体積平均粒子径D2(nm)に対する比率で、0.60倍以上2.00倍以下である請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記第2インク中の前記水溶性ウレタン樹脂の含有量U(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量P(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上0.60倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記第2インク中の前記水溶性ウレタン樹脂の重量平均分子量が、8,000以上22,000以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記第1インクの寿命時間50ミリ秒における動的表面張力が、35.0mN/m以下であり、
    前記第1インクの静的表面張力と前記第2インクの静的表面張力の差が、3.0mN/m以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクセットを構成する各インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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