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JP2016074876A - 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤 - Google Patents

1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤 Download PDF

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JP2016074876A
JP2016074876A JP2015151522A JP2015151522A JP2016074876A JP 2016074876 A JP2016074876 A JP 2016074876A JP 2015151522 A JP2015151522 A JP 2015151522A JP 2015151522 A JP2015151522 A JP 2015151522A JP 2016074876 A JP2016074876 A JP 2016074876A
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JP2015151522A
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宮崎謙一
Kenichi Miyazaki
岸本雅史
Masashi Kishimoto
井上貴博
Takahiro Inoue
佐藤有華
Yuka Sato
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New Japan Chemical Co Ltd
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New Japan Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】 耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。【解決手段】 特定の飽和脂肪族アルコールと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそのジメチルエステルをエステル化反応又はエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用することにより、耐寒性および耐熱性に優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂組成物が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、耐寒性、耐熱性、柔軟性に優れた新規な1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤に関する。
塩化ビニル系樹脂は、柔軟性をはじめとする種々の性能を付与するとともに、押出やカレンダー加工等の成形加工時の加工温度を低下させ、成形加工を容易にする目的で、可塑剤が添加された塩化ビニル系樹脂組成物として用いられることが多い。
このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる可塑剤に求められる機能としては、該組成物を原料として成形加工品とした場合の、柔軟性、耐寒性、耐熱性、電気特性等種々の性能を付加する又は発揮させるところにある。このような塩化ビニル系樹脂組成物の可塑剤としては、例えばフタル酸ジ−2−エチルへキシル(DOP)およびフタル酸ジイソノニル(DINP)に代表されるフタル酸エステル系の塩化ビニル用可塑剤が汎用的に使用されている。しかしながら、最近、化学物質に対する安全性についてクローズアップされる中でDOPを齧歯類に大量に投与した際に毒性が認められることから、予防原則に則り日欧米の地域にて、乳幼児を主たる保護対象としてDOP等のフタル酸エステル系化合物の使用制限が行われており、可塑剤分野においても非フタル酸エステル系可塑剤が市場で望まれる傾向になってきた。これまで、非フタル酸エステル系可塑剤としては、アセチルクエン酸トリブチル(以下、「ATBC」という)やアジピン酸ジ−2−エチルへキシル(以下、「DOA」という)、トリメリット酸トリ−2−エチルへキシル(以下、「TOTM」という)等の塩化ビニル用可塑剤が知られている(特許文献1〜3)が、これらの可塑剤の性能をフタル酸エステル系可塑剤と比較した場合、ATBC、DOAは耐熱性が不足しており、TOTMは耐熱性に優れるが、柔軟性、耐寒性に劣るという問題があった。また、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系の可塑剤である1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(以下、「DINCH」という)が、フタル酸エステル系可塑剤に近い柔軟性、耐熱性、耐寒性を有し、バランスの良い非フタル酸エステル系可塑剤として、近年注目されつつある(特許文献4)。
しかし、近年、電線被覆用途や自動車用部材用途などにおいて、非フタル酸エステル系可塑剤に対しても耐寒性や耐熱性への要求が益々厳しくなっており、上記DINCHではその要求を満足することができないケースがあり、一部用途では未だフタル酸エステル系の可塑剤に頼らざるを得ないのが現状であり、その代替可塑剤の供給が待ち望まれている。
特開2000−226482号公報 特開2002−194159号公報 特開2013−147520号公報 特表2001−526252号公報
本発明の目的は、上記の問題点を解決できる様な、より厳しい耐寒性や耐熱性の要求を満足し、かつ柔軟性が良好な新規な1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびその可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、特定の飽和脂肪族アルコールと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルをエステル化反応又はエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが、耐寒性及び耐熱性に優れ、かつ塩化ビニル系樹脂とのなじみが良く、良好な柔軟性を有する可塑剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の新規な塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
[項1] 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそのジメチルエステルと炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコール混合物とをエステル化反応又はエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記飽和脂肪族アルコール混合物が、飽和脂肪族アルコール混合物中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと、5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ該飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が60〜95%であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項2] 前記飽和脂肪族アルコール混合物が、飽和脂肪族アルコール混合物中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ該飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が70〜90%である[項1]に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項3] 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそのジメチルエステルと炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコール混合物とをエステル化反応又はエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記飽和脂肪族アルコール混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)該炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する飽和脂肪族アルコールを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項4] 塩化ビニル系樹脂と[項1]〜[項3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
[項5] [項4]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる塩化ビニル系樹脂成形体。
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、塩化ビニル系樹脂とのなじみが良く、塩化ビニル系樹脂に対して優れた耐寒性及び耐熱性、良好な柔軟性を付与することができる塩化ビニル系樹脂用可塑剤として、様々な成形加工条件下で使用することができる。また、その塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含むことにより、様々な成形加工条件下で使用可能な、良好な柔軟性を有し、かつ耐寒性、耐熱性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
<塩化ビニル系樹脂用可塑剤>
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、特定の飽和脂肪族アルコール(アルコール成分)と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそのジメチルエステル(酸成分)とをエステル化反応又はエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなることを最大の特徴としている。
本発明に係る1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応することにより容易に得られる。
[飽和脂肪族アルコール混合物]
本発明で用いる飽和脂肪族アルコール混合物は、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールの混合物であり、主成分である炭素数9の飽和脂肪族アルコールの割合が、本発明で用いる飽和脂肪族アルコール混合物中に、好ましくは65重量%以上(65〜100%)、より好ましくは80重量%以上(80〜100%)が推奨される。
また、本発明に係る飽和脂肪族アルコール混合物は、該混合物の直鎖率が、60〜95%、好ましくは70〜90%の範囲が推奨される。更に、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が、本発明で用いる飽和脂肪族アルコール混合物中に、60〜95重量%、好ましくは70〜90重量%の範囲が推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲が推奨される。
本発明で用いる飽和脂肪族アルコール混合物の態様の詳細として、該飽和脂肪族アルコール混合物は、炭素数9の飽和脂肪族アルコールが主成分(好ましくは65重量%以上)であり、その飽和脂肪族アルコール混合物中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が60〜95%である。より好ましい態様としては、飽和脂肪族アルコール混合物が、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは80重量%以上)とし、該飽和脂肪族アルコール混合物中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が70〜90%である態様が推奨される。
飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が60%以上であり、かつ炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が60重量%以上であれば、柔軟性を低下することなく、十分に本発明の目的である塩化ビニル系樹脂の耐熱性及び耐寒性の向上が得られる。逆に、上記直鎖率が60%未満または上記炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が60重量%未満では、本発明の目的である耐寒性及び耐熱性の向上が不十分であり、更に柔軟性が低下する傾向にあり、好ましくない。
また、飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が95%以下であり、かつ炭素数9の直鎖状飽和アルコールの含有量が95重量%以下にすることにより、塩化ビニル系樹脂とのなじみが良くなり、その結果として引張伸び等の引張特性の低下を抑えることができる。逆に、上記直鎖率が95%を超えるか、または炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が95重量%を超えると、塩化ビニル系樹脂とのなじみが悪くなり、その結果として引張伸び等の引張特性が低下する傾向にあり、好ましくない。
本明細書及び特許請求の範囲において、飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率とは、該飽和脂肪族アルコール混合物中に占める直鎖アルコールの割合(重量比)であり、本発明の効果の観点から、実質的に炭素数7〜11の直鎖アルコールが占める割合と言え、具体的には後述の実施例にあるようにガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
なお、エステル化反応又はエステル交換反応において飽和脂肪族アルコール混合物(実質的に炭素数7〜11のアルコール成分)の反応性に実質的な差異は認められなかったので、飽和脂肪族アルコール混合物(実質的に炭素数7〜11のアルコール成分)の組成比(重量比)から算出される組成比(モル比)と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルのアルキルオキシカルボニル基部位の組成比(モル比)とは、実質的に同一の割合となる。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルのアルキルオキシカルボニル基部位の組成比は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを塩基で加水分解し、その加水分解した粗物からアルコール成分を抽出し、その抽出物を後述の実施例にあるガスクロマトグラフィー等の手法で分析して求めることができる。
本発明で用いる炭素数9の飽和脂肪族アルコール混合物は、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができる。
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
上記の工程で得られる炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコール混合物の具体例(市販品)としては、約70重量%以上の直鎖状のノナノールと約30重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるリネボール9(商品名、シェルケミカルズ社)等が挙げられる。
[エステル化反応]
本発明に係るエステル化反応とは、上記アルコール成分と酸成分である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸1モルに対して、好ましくは2.00〜5.00モル、より好ましくは2.01〜3.00モル、特に2.02〜2.50モルを使用することが推奨される。
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸又はルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.02〜4.0重量%、特に0.03〜3.0重量%を使用することが推奨される。
エステル化温度としては、100〜230℃が例示され、通常、3〜30時間でエステル化反応は完結する。
本エステルの原料の酸成分である、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、特に制限はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。
[エステル交換反応]
本発明に係るエステル交換反応とは、上記アルコール成分と酸成分である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルとのエステル交換反応を意味し、そのエステル交換反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル1モルに対して、好ましくは2.00モル〜5.00モル、より好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に2.02モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
エステル交換反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、ルイス酸類又はアルカリ金属類等が例示される。より具体的には、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体が例示され、アルカリ金属類としてはナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
その中でも、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数1〜4のナトリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.02〜4.0重量%、特に0.03〜3.0重量%を使用することが推奨される。
エステル交換反応の温度としては、100〜230℃が例示され、通常、3〜30時間で反応は完結する。
本エステルの原料の酸成分である、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルは、特に制限はなく、公知の方法で製造したものや、市販品、試薬等で入手できるものなどが使用できる。
上記エステル交換反応の原料酸成分としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルが好ましいが、他に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の低級アルキルエステル(例えば炭素数2又は3)も同等に使用することができる。
エステル化反応又はエステル交換反応においては、反応により生成する水又はメタノールの留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどのエントレーナー又は同伴剤を使用することが可能である。
またエステル化反応又はエステル交換反応時に、原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物が生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与える。その悪影響を抑制するために及び安全性の観点から、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて当該反応を行うことが望ましい。エステル化反応又はエステル交換反応終了後、通常、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去する。
上記反応により得られた本エステルの反応粗物は、通常、引き続き、後処理を行うことで精製される。例えば、触媒の不活性化処理(中和処理、塩基処理、酸処理等)、水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着処理等の本技術分野で採用される処理方法を単独で又は適宜組み合わせることにより精製することができる。
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
吸着処理に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記反応後の精製処理は、常温で行なっても良いが、40〜95℃程度に加温して行なうこともできる。
本エステルは、シクロヘキサン環に対する2つのアルキルオキシカルボニル基部位において立体異性体が存在する。本エステルは、シス体単独、トランス体単独、又はシス体とトランス体との混合物の何れの態様であっても良く、可塑剤の細部の用途における所望の機能に応じて適宜選択することができる。本エステルのシス体ないしトランス体の比率は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はそのジメチルエステル自身の立体異性体の比率やその後のエステル化反応又はエステル交換反応の手法及びその反応条件に主に影響される。
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した本エステルを可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
[塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。汎用塩化ビニル樹脂の場合、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300から5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
[塩化ビニル系樹脂組成物]
塩化ビニル系樹脂組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、100重量部を超えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。
但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を1〜500重量部程度配合することができる。
塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステルと共に他の公知の可塑剤を併用することができる。また、必要に応じて難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
上記本エステル以外の他の可塑剤や添加剤は、1種で又は2種以上を適宜組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。
本エステルと併用することができる他の可塑剤としては、本技術分野で従来から使用されている公知の可塑剤が使用でき、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の本発明範囲外の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸−1,4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリヘキシル(ATHC)、アセチルクエン酸トリエチルヘキシル(ATEHC)、ブチリルクエン酸トリヘキシル(BTHC)等のクエン酸エステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる他の可塑剤を配合する場合、その配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。また難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ステアリン酸バリウム−亜鉛、ラウリン酸バリウム−亜鉛、リシノール酸バリウム−亜鉛、オクチル酸バリウム−亜鉛、ステアリン酸カルシウム−亜鉛、ラウリン酸カルシウム−亜鉛、リシノール酸カルシウム−亜鉛、オクチル酸カルシウム−亜鉛等の複合金属を含む有機酸化合物等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。また安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。また安定化助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。また着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。また加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。また充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。また酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。また紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。また光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。また滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。また帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばハンドリング混合や、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌・混合機により攪拌・混合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
また、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて本エステル以外の他の可塑剤や各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融混合することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
また、本エステル、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて本エステル以外の他の可塑剤や各種添加剤を、例えばポニーミキサー、バタフライミキサー、プラネタリミキサー、リボンブレンダー、ニーダー、ディゾルバー、二軸ミキサー、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
[塩化ビニル系樹脂成形体]
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
一方、上記ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スラッシュ成形、回転成形、注型、スクリーン加工等の従来公知の成形方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
かくして得られた成形体は、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、自動車アンダーボディコート、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し、シーリング材等に有用である。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
(1)飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率
本発明の実施例及び比較例で用いる飽和脂肪族アルコール混合物(原料アルコール)の直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量方法:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
(2)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルの物性評価
下記の製造例で得られたエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)の色数試験方法(ハーゼン)に準拠してハーゼン単位色数を求めた。当該色数を以て色相の評価とした。
(3)塩化ビニル系樹脂組成物の調製並びにロールシート及びプレスシートの作製
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3重量部及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。また引き続いて、162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
[物性評価]
(4)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、上記プレスシートの100%モジュラス、破断強度及び破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度及び破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
(5)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して柔軟温度(℃)を測定した。柔軟温度が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×10kg/cm)を示す低温限界の温度を指す。
(6)耐熱性:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、上記ロールシートを170℃で60分及び120分加熱した後のそれぞれのロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(重量%)を算出した。この重量減少率を揮発減量として評価し、その数値が小さいほど耐熱性が高いと言うことができる。
揮発減量(重量%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、上記ロールシートを170℃で30分及び60分間加熱した後のそれぞれの着色度の強弱を目視により6段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 ○△:少し着色、
△:着色、 ×:強い着色、 ××:著しい着色
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(SK Chemicals社製、商品名「SKY CHDM」)240g(1.2モル)、原料アルコールとして炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールを85.1重量%と炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを11.7重量%含む飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416g(2.9モル)、及びエステル交換触媒としてテトライソプロピルチタネート0.5gを加え、反応温度を210℃としてエステル交換反応を実施した。減圧下原料アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、ガスクロマトグラフィー上で原料、中間体のピークが検出限界以下になるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和(塩基処理)、水洗、脱水して、本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)450gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:261mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:10であった。
[製造例2]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりに、n−ノニルアルコール374g(2.6モル)とイソノニルアルコール42g(0.3モル)との飽和脂肪族アルコール混合物を用いた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル2」という。)381gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:259mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色相:10であった。
[製造例3]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりに、n−ノニルアルコール291g(2.0モル)とイソノニルアルコール124g(0.9モル)との飽和脂肪族アルコール混合物を用いた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)372gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:260mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色相:10であった。
[製造例4]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりに2−エチルヘキサノール374gを用いた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、「エステル4」という。)435gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
[製造例5]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりにイソノニルアルコール416gを用いた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(以下、「エステル3」という。)476gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
[製造例6]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりにn−ノニルアルコール208g(1.4モル)とイソノニルアルコール208g(1.4モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル6」という。)451gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:260mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色相:10であった。
[製造例7]
飽和脂肪族アルコール混合物(シェルケミカルズ社製:商品名「リネボール9」)416gの代わりにイソデシルアルコール456g(2.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(以下、「エステル7」という。)461gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:246mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色相:10であった。
[実施例1]
製造例1で得られたエステル1を用いて、上記調製方法にて、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。引き続いて、得られた塩化ビニル系樹脂組成物を用いて、上記作製方法にてロールシート及びプレスシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例2]
エステル1の代わりに製造例2で得られたエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[実施例3]
エステル1の代わりに製造例3で得られたエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例1]
エステル1の代わりに製造例4で得られたエステル4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例2]
エステル1の代わりに製造例5で得られたエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例3]
エステル1の代わりに製造例6で得られたエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例4]
エステル1の代わりに製造例7で得られたエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例5]
エステル1の代わりに市販の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(hexamoll DINCH、BASF社製)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例6]
エステル1の代わりに市販のフタル酸ジ2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明外の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、その樹脂組成物を用いてロールシート及びプレスシートを作製して、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
表1の結果より、明らかに本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル(実施例1〜3)は、これまで使われてきたフタル酸エステル系可塑剤のDOP(比較例6だけでなく、現在広く使われている非フタル酸エステル系可塑剤のDINCH(比較例5)と比べても、柔軟性に優れ、かつ耐寒性、耐熱性が大きく向上していることがわかる。また、比較例1〜4の鎖長や直鎖率の異なる本発明範囲外の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルと比べても、耐寒性や耐熱性と引張り特性のバランスに優れていることが明らかである。以上の結果より、本発明の範囲のエステル系可塑剤が従来にない高い耐寒性や耐熱性を示し、かつ他の物性とのバランスに優れた非常に有用な可塑剤であることがわかる。
本発明の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルから本質的になる塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、塩化ビニル系樹脂とのなじみが良く、塩化ビニル系樹脂に対して優れた耐寒性及び耐熱性、良好な柔軟性を付与することができる塩化ビニル系樹脂用可塑剤として、様々な成形加工条件下で使用することができる。そして、その可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物より得られる成形加工品は、高度な耐寒性、耐熱性、柔軟性の要求される電線被覆用途や自動車用部材用途、一般フィルムシート(ラミネート、包装、車両、雑貨等)用途、農業用フィルム用途、レザー用途、コンパウンド用途、床材用途、壁紙用途、履物用途、シーリング材用途、繊維用途、ホース用途、ガスケット用途、建築資材用途、塗料用途、接着剤用途、ペースト用途、医療用途に非常に有用である。

Claims (5)

  1. 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸若しくはそのジメチルエステルと、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールの混合物とをエステル化反応若しくはエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、前記飽和脂肪族アルコール混合物が、飽和脂肪族アルコール中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと、5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ該飽和脂肪族アルコールの混合物の直鎖率が60〜95%であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
  2. 前記飽和脂肪族アルコール混合物が、飽和脂肪族アルコール中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含み、かつ該飽和脂肪族アルコール混合物の直鎖率が70〜90%である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
  3. 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸若しくはそのジメチルエステルと、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコール混合物とをエステル化反応若しくはエステル交換反応して得られる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、
    前記飽和脂肪族アルコール混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する飽和脂肪族アルコールを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
  4. 塩化ビニル系樹脂と請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
  5. 請求項4に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られる塩化ビニル系樹脂成形体。
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