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JP2016074091A - 延伸フィルムの製造方法及びその製造方法により得られた延伸フィルムからなる包装材料 - Google Patents

延伸フィルムの製造方法及びその製造方法により得られた延伸フィルムからなる包装材料 Download PDF

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JP2016074091A JP2014204113A JP2014204113A JP2016074091A JP 2016074091 A JP2016074091 A JP 2016074091A JP 2014204113 A JP2014204113 A JP 2014204113A JP 2014204113 A JP2014204113 A JP 2014204113A JP 2016074091 A JP2016074091 A JP 2016074091A
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匡貴 岡野
Masaki Okano
匡貴 岡野
望 藤井
Nozomi Fujii
望 藤井
靖浩 茂木
Yasuhiro Mogi
靖浩 茂木
久保 昌宏
Masahiro Kubo
昌宏 久保
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Idemitsu Kosan Co Ltd
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Abstract

【課題】従来に比べ、耐熱性に優れ、低延伸倍率であっても延伸ムラを抑制し、延伸後の力学特性及び光学特性が優れる延伸フィルムとその製法を提供する。【解決手段】(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が120℃を超えるオレフィン系重合体(A)、及び(b)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であるオレフィン系重合体(B)を含み、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分と(b)成分との合計含有量100質量%に対して0.5質量%以上、50質量%未満であるポリオレフィン系組成物からなる層を一層以上含むフィルムを二軸方向へ、面倍率45倍以下で同時又は逐次延伸する、延伸フィルムの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、延伸フィルムの製造方法、及びその製造方法により得られた延伸フィルムからなる包装材料に関する。
ポリプロピレン延伸フィルムは、安価で透明性や表面光沢、耐熱性、機械物性(たとえば、剛性(いわゆるフィルムの“腰”)、強度、耐衝撃性)に優れているため食品用途や工業用途などの各種の包装向け材料やコンデンサーやキャパシターなどの電気材料等に用いられており、その需要は急速に高まっている。
また、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、透明性、光沢性、軽量性及び機械的強度に優れることから、その特徴を活かして包装材料や工業用材料に広く用いられている。但し、ポリプロピレンフィルムは、腰が強いことから、食品用包装などの用途では、より柔軟性を有するポリプロピレンフィルムが求められている。
ここで、ポリプロピレンを含む、ポリオレフィン系組成物からなるフィルムを柔軟化する方法として、3つの方法が提案されている。
1つ目の方法としては、ポリオレフィン系組成物として、特定の共重合体を選定する方法であって、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン3元重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いことにより、軟質のポリオレフィンフィルムを製造する方法(例えば、特許文献1)や、プロピレン−エチレンブロック共重合体をフィルム材料として用い、特定の成型方法、例えば、空冷インフレーション成形によりポリプロピレンフィルムを製造する際に、Tダイ成形法や水冷インフレーション法を用いることによって、透明性や柔軟性に優れたポリプロピレン系フィルムを得る方法が挙げられる(例えば、特許文献2)。
しかしながら、共重合体、特に非晶成分の配合量が多い場合には、得られるポリオレフィン系組成物の融点が低くなるため、耐熱性が著しく損なわれる。例えば、特許文献1では、オレフィン系共重合体樹脂としてブテン−プロピレン共重合体を70重量%混合することから、得られるフィルムは、十分な耐熱性を有しない可能性が高い。また、特許文献2は、プロピレン−エチレンブロック共重合体であることから、同様に、これを用いて得られるフィルムの耐熱性は十分ではない可能性が高い。
2つ目の方法としては、特定比の、プロピレンおよび/またはブテン−1成分含有率が50重量%以上の非晶性ポリオレフィンと、結晶性ポリオレフィンとを含有するポリオレフィン系組成物を低面積倍率で逐次二軸延伸を行うことによって、柔軟性などに優れたポリプロピレン系フィルムを得られる方法が挙げられる(例えば、特許文献3)。
しかし、特許文献3には、得られるフィルムの弾性率が開示されておらず、柔軟になったか否か不明である。また、推測の域を超えないが、延伸倍率を下げることで延伸ムラが顕著におこっていると推測されることから、フィルムの測定する箇所によって、ヘイズも変わり、外観のすっきり感が損なわれると推測される。さらにメタライズ処理や印刷加工などを行った場合、延伸ムラにより厚みが不均一になり、その結果、処理ムラが生じ、うまくメタラライズができなかったり、印刷ムラが生じてしまう可能性が高い。
3つ目の方法としては、ポリオレフィン系組成物を無延伸でフィルム化する方法であって、押し出し法やインフレーション法により一旦溶融して成形する、キャストフィルム製造方法が挙げられる。
しかし、無延伸フィルムは軟質フィルムであるものの、破断強度が低く伸びにより変形するため、用途が限られてしまう。
特開平4−68033号公報 特開2006−307060号公報 特開平10−53674号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、従来の延伸フィルムに比べ、耐熱性に優れ、低延伸倍率であっても延伸ムラを抑制し、延伸後の力学特性及び光学特性が優れた、延伸フィルムの製法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン組成物中に、融解吸熱量が相対的に低い特定の構造を有するオレフィン系重合体(A)を配合することで、上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下の発明を提供する。
[1] 下記(a)及び(b)を含み、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分と(b)成分との合計含有量100質量%に対して0.5質量%以上、50質量%未満であるポリオレフィン系組成物からなる層を一層以上含むフィルムを、二軸方向へ、面倍率45倍以下で同時又は逐次延伸する、延伸フィルムの製造方法。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が120℃を超えるオレフィン系重合体(A)
(b)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であるオレフィン系重合体(B)
[2] 機械方向に対して垂直方向(TD)への延伸倍率が9.0倍以下である、上記[1]に記載の延伸フィルムの製造方法。
[3] 前記オレフィン系重合体(A)が、プロピレン系重合体(a1)である、上記[1]又は[2]に記載の延伸フィルムの製造方法。
[4] 前記オレフィン系重合体(B)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(b1)である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
[5] 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(i)及び/又は(ii)を満たす、上記[4]に記載の延伸フィルムの製造方法。
(i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
(ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
[6] 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(1)を満たす、上記[4]に記載の延伸フィルムの製造方法。
(1)[mmmm]が20〜60モル%
[7] 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(2)を満たす、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
[8] 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(2)及び(3)を満たす、上記[6]に記載の延伸フィルムの製造方法。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(3)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
[9] 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(4)及び(5)を満たす、上記[6]又は[8]に記載の延伸フィルムまたは延伸シートの製造方法。
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
[10] 食品用途又は工業用途に用いる包装材料であって、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で得られた延伸フィルムからなる包装材料。
本発明によれば、従来のポリプロピレン原料に比べ、耐熱性に優れ、低延伸倍率であっても延伸ムラを抑制し、延伸後の力学特性及び光学特性が優れる延伸フィルムの製法を提供することができる。また、この製造方法で得られた延伸フィルムからなる包装材料は、耐熱性、光学特性(例えば、ヘイズ、光沢)及び力学特性(例えば、弾性率)に優れる。
以下に、本発明を説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「〜」という用語は、その下限値以上、上限値以下を示す用語である。また、本明細書中において、(a)成分とオレフィン系重合体(A)、(b)成分とオレフィン系重合体(B)とは同義である。
[延伸フィルムの製造方法]
本発明の延伸フィルムの製造方法は、下記(a)及び(b)を含み、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分と(b)成分との合計含有量100質量%に対して0.5質量%以上、50質量%未満であるポリオレフィン系組成物からなる層を一層以上含むフィルムを二軸方向へ、面倍率45倍以下で同時又は逐次延伸する、延伸フィルムの製造方法である。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が120℃を超えるオレフィン系重合体(A)
(b)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であるオレフィン系重合体(B)
以下、本発明に用いられる各成分、製造方法について順次説明する。
<オレフィン系重合体(A)>
本発明に用いられる(a)成分であるオレフィン系重合体(A)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が120℃を超える。該融点(Tm−D)が120℃以下の場合、前記ポリオレフィン系組成物を用いた成形体、例えば、フィルム等の耐熱性が劣るといった不具合が発生する。そのような観点から、融点(Tm−D)は好ましくは125℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは150℃以上、より更に好ましくは160℃以上である。
なお、該融点(Tm−D)は後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
本実施の形態のオレフィン系重合体(A)は、例えば、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体を使用してもよい。なお、本明細書中において、単に「オレフィン系重合体」という場合には、オレフィン系共重合体も含まれる。オレフィン系共重合体としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(a1)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、剛性や透明性の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体(a1)がより好ましい。さらに、プロピレン系重合体(a1)は、剛性や透明性向上の観点から、後述するメソペンタッド分率[mmmm]が、好ましくは70〜98モル%、より好ましくは80〜98モル%、更に好ましくは85〜97.5モル%、より更に好ましくは87〜97モル%であり、より更に好ましくは88〜96モル%であり、より更に好ましくは90〜92モル%である。
プロピレン系重合体(a1)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(a1)であることが好ましい。更に、成形体物性、例えば、延伸フィルムの物性(たとえば、力学物性、光学物性)の観点から、本発明のオレフィン系重合体(a1)は、特に好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体もしくは、プロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
ポリオレフィン系組成物中におけるオレフィン系重合体(A)の含有量としては、後述するオレフィン系重合体(B)と前記オレフィン系重合体(A)との合計含有量100質量%に対して50質量%以上である。当該含有量が50質量%未満の場合、該ポリオレフィン系組成物を用いた延伸フィルムは耐熱性が低下するといった不具合が発生する。そのような観点から、前記ポリオレフィン系組成物中におけるオレフィン系重合体(A)の含有量としては、後述するオレフィン系重合体(B)と前記オレフィン系重合体(A)との合計含有量100質量%に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%である。また、前記ポリオレフィン系組成物中におけるオレフィン系重合体(A)の含有量としては、後述するオレフィン系重合体(B)と前記オレフィン系重合体(A)との合計含有量100質量%に対して、該ポリオレフィン系組成物を用いた延伸フィルムの透明性、耐熱性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
<オレフィン系重合体(B)>
本発明に用いられる(b)成分であるオレフィン系重合体(B)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満である。
本発明のオレフィン系重合体(B)は、エチレン及び炭素数3〜28のα−オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを重合してなるオレフィン系重合体(B)が好ましい。
炭素数3〜28のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン及び1−イコセン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素数3〜24のα−オレフィン、より好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、更に好ましくは炭素数3〜6のα−オレフィン、特に好ましくは炭素数3〜4のα−オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
これらのうちの1種を単独で重合したオレフィン系重合体(B)を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて共重合して得られるオレフィン系共重合体(B)を使用してもよい。オレフィン系共重合体(B)としては、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がエチレンモノマーであるエチレン系重合体、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がプロピレンモノマーであるプロピレン系重合体(b1)、重合体を構成するモノマーの50モル%以上がブテンモノマーであるブテン系重合体などが挙げられ、透明性や延伸ムラ抑制の観点から優れた成形体物性、例えば、フィルム物性が得られる、プロピレン系重合体(b1)がより好ましい。
プロピレン系重合体(b1)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン−α−オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体(b1)であることが好ましく、特にプロピレン単独重合体が好ましい。
また、本発明のポリオレフィン系組成物において、主成分であるオレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)である場合、主成分のプロピレン系重合体(a1)との相溶性の観点から、プロピレン系重合体(b1)は、炭素数が2のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が2のオレフィン(すなわち、エチレンモノマー)の構成単位が、好ましくは0モル%を超え、20モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、18モル%以下、さらに好ましくは0モル%を超え、15モル%以下、より更に好ましくは0モル%を超え、13モル%以下である。また、炭素数が3のオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が3のオレフィン(すなわち、プロピレンモノマー)の構成単位が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは75モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上である。また、炭素数が4以上のαオレフィンを含有する共重合体の場合には、炭素数が4以上のαオレフィン含有量が、好ましくは0モル%を超え、30モル%以下、より好ましくは0モル%を超え、27モル%以下、更に好ましくは0モル%を超え、20モル%以下である。また、本発明のポリオレフィン系組成物において、主成分であるオレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)である場合、主成分のプロピレン系重合体(a1)との相溶性の観点などから、本発明のオレフィン系重合体(B)は、最も好ましくはプロピレン単独重合体である。なお、上記の重合体は、石油・石炭由来のモノマーを用いた重合体でもよいし、バイオマス由来のモノマーを用いた重合体でもよい。
本発明のポリオレフィン系組成物は、オレフィン系重合体(B)を含むことで、非晶成分の割合が増大し、ポリオレフィン系組成物を延伸した時の降伏応力が低下するため、均一延伸性が向上し、成形体、例えば、製膜されたフィルムの粘り強さが向上する。
特に、ポリオレフィン系組成物の均一延伸性が大幅に改善される観点から、ポリオレフィン系組成物における非晶成分の割合を増大させるためには、オレフィン系重合体(B)の含有量が、前記オレフィン系重合体(B)と前記オレフィン系重合体(A)との合計含有量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、50質量%未満であり、より好ましくは0.5質量%以上、20質量%未満、更に好ましくは0.5質量%以上、15質量%未満、より更に好ましくは1質量%以上、10質量%未満である。オレフィン系重合体(B)の含有量が50質量%以上である場合、非晶成分の増加により得られるフィルムの耐熱性が低下する恐れがある。
また、特に、前記オレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)であって、かつ、オレフィン系重合体(B)がプロピレン系重合体(b1)である場合は、プロピレン系重合体(a1)に対するプロピレン系重合体(b1)の相溶性もより良好となり、より優れた透明性並びに延伸性を有する成形体を得ることができる。
成形体の力学特性に影響を与えることなく、延伸性が大幅に改善される観点から、オレフィン系重合体(B)が、下記融解吸熱量(ΔH−D)と分子量分布(Mw/Mn)を有しかつ後述する特性を有する場合(特に、プロピレン系重合体(b1)である場合)であって、このオレフィン系重合体(B)の含有量が、上述した範囲の含有量であることが好ましい。
(融解吸熱量(ΔH−D))
オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の融解吸熱量(ΔH−D)は、0〜80J/gである。オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gの場合、本発明の延伸フィルム用に好適なポリオレフィン系組成物の主成分であるオレフィン系重合体(A)(特に、オレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)である場合)に対して、結晶化度を低減させる。それにより、ラメラ−ラメラ間のタイ分子数が低減する。延伸時にタイ分子数が少ないと初期の高次構造が均一に変形するため、結果として、均一延伸性が向上する。このような観点から、融解吸熱量(ΔH−D)は、好ましくは10〜70J/g、より好ましくは20〜60J/g、更に好ましくは30〜50J/gである。
融解吸熱量(ΔH−D)は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御することができる。
なお、上記融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
(分子量分布(Mw/Mn))
オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の分子量分布(Mw/Mn)は、高強度の観点から、好ましくは3.0未満である。分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であれば、延伸性や成形体物性、例えば、フィルム物性(たとえば、力学特性、光学特性)に悪影響を及ぼす低分子量成分が抑制され、後述する本発明の成形体物性、特に、延伸フィルムのフィルム物性の低下が抑制される。このような観点から、オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.5以下、より好ましくは1.5〜2.5である。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnより算出した値である。
本発明のオレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)は、好ましくは下記(1)若しくは(2)のいずれか1つ、又はその両方を満たすプロピレン系重合体であり、より好ましくは下記(3)を満たし、更に好ましくは下記(4)及び(5)を満たす。
(1)[mmmm]が20〜60モル%である。
(2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(3)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(4)[rmrm]>2.5モル%
(5)[mm]×[rr]/[mr] ≦2.0
(1)メソペンタッド分率[mmmm]
メソペンタッド分率[mmmm]は、オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。
オレフィン系重合体(B)がプロピレン単独重合体である場合、そのメソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン系重合体の取り扱い性及びオレフィン系重合体(A)へ少量添加した際の延伸性の改良効果の観点から、好ましくは20〜60モル%、より好ましくは30〜55モル%、更に好ましくは40〜50モル%である。メソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、本発明のポリオレフィン系組成物の主成分である、オレフィン系重合体(A)の剛性を低下させず、延伸性を改良することができ、60モル%以下であると、主成分であるオレフィン系重合体(A)と共晶化せず、主成分であるオレフィン系重合体(A)の非晶部分に相溶することで延伸性を改良できる。
(2)融点(Tm−D)
オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の融点(Tm−D)は、強度や成形性の観点から高い方が好ましい。好ましくは0〜120℃、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは55〜90℃、より更に好ましくは60〜80℃である。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点(Tm−D)とする。融点は、モノマー濃度や反応圧力を適宜調整することで制御可能である。
(3)[rrrr]/(1−[mmmm])
[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、メソペンタッド分率[mmmm]及びラセミペンタッド分率[rrrr]から求められ、ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。[rrrr]/(1−[mmmm])のこの値が大きくなると既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高立体規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、成形後のポリプロピレン延伸フィルムのべたつきの原因となる。なお、上記における[rrrr]及び[mmmm]の単位は、モル%である。
オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)における[rrrr]/(1−[mmmm])の値は、べたつきの観点から、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.001〜0.05、更に好ましくは0.001〜0.04、特に好ましくは0.01〜0.04である。
ここで、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]、及び後述するラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出される。
(4)ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、ポリプロピレンの立体規則性のランダム性を表す指標であり、値が大きいほどポリプロピレンのランダム性が増加する。
オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、好ましくは2.5モル%を超える。オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)の[rmrm]が2.5モル%を超えることにより、ランダム性が増し、本発明のポリオレフィン系組成物の主成分であるオレフィン系重合体(A)(特に、オレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)である場合)と共晶化し難くなり、その結果、ポリオレフィン系組成物の耐熱性や剛性の低下が抑制される。このような観点から、オレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)のラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]は、より好ましくは2.6モル%以上、更に好ましくは2.7モル%以上である。その上限は、通常、好ましくは10モル%程度であり、より好ましくは7モル%、更に好ましくは5モル%、特に好ましくは4モル%である。
(5)[mm]×[rr]/[mr]
トリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]から算出される[mm]×[rr]/[mr]の値は、重合体のランダム性の指標を表し、1に近いほどランダム性が高くなり、本発明のポリオレフィン系組成物の主成分であるオレフィン系重合体(A)(特に、オレフィン系重合体(A)がプロピレン系重合体(a1)である場合)と共晶化が起こらず、主成分であるオレフィン系重合体(A)(特に、プロピレン系重合体(a1))に対して効率的に延伸性を改良することができる。本発明のオレフィン系重合体(B)及びプロピレン系重合体(b1)は、上式の値が通常2以下、好ましくは1.8〜0.5、さらに好ましくは1.5〜0.5の範囲である。なお、上記における[mm]及び[rr]の単位は、モル%である。
上記プロピレン系重合体(b1)は、例えば、WO2003/087172号に記載されているようなメタロセン系触媒を使用して製造することができる。特に、配位子が架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物を用いたものが好ましく、なかでも、2個の架橋基を介して架橋構造を形成している遷移金属化合物と助触媒を組み合わせて得られるメタロセン系触媒が好ましい。
具体的に例示すれば、
(i)一般式(I)
Figure 2016074091
〔式中、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、E及びEはそれぞれ置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基、ヘテロシクロペンタジエニル基、置換ヘテロシクロペンタジエニル基、アミド基、ホスフィド基、炭化水素基及び珪素含有基の中から選ばれた配位子であって、A及びAを介して架橋構造を形成しており、又それらは互いに同一でも異なっていてもよく、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX、E、E又はYと架橋していてもよい。Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のY,E、E又はXと架橋していてもよく、A及びAは二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−Se−、−NR−、−PR−、−P(O)R−、−BR−又は−AlR−を示し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。〕
で表される遷移金属化合物、及び(ii)(ii−1)該(i)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(ii−2)アルミノキサンから選ばれる成分を含有する重合用触媒が挙げられる。
上記(i)成分の遷移金属化合物としては、配位子が(1,2’)(2,1’)二重架橋型の遷移金属化合物が好ましく、例えば(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドが挙げられる。
上記(ii−1)成分の化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テオラフェニルポルフィリンマンガン、テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀、ヘキサフルオロ砒素酸銀、過塩素酸銀、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
上記(ii−2)成分のアルミノキサンとしては、公知の鎖状アルミノキサンや環状アルミノキサンが挙げられる。
また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等の有機アルミニウム化合物を併用して、プロピレン系重合体(b1)を製造してもよい。
<添加剤>
本発明の延伸フィルム用に好適なポリオレフィン系組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてさらに、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、核剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、エラストマーなどを配合することができる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、イオウ系、ラクトーン系、有機ホスファイト系、有機ホスフォナイト系の酸化防止剤、あるいはこれらを数種類組み合わせた酸化防止剤等を使用することができる。酸化防止剤は、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
帯電防止剤としては、一般的に用いられる公知の低分子型又は高分子型帯電防止剤を好適に用いることができる。
低分子型帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン型帯電防止剤、テトラアルキルアンモニウム塩型のカチオン型帯電防止剤、アルキルスルホン酸塩等のアニオン型帯電防止剤、アルキルベタイン等の両性型帯電防止剤等の帯電防止剤等を挙げることができる。
高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエーテルエステルアミド等の非イオン型帯電防止剤、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン型帯電防止剤、第四級アンモニウム塩含有重合体等のカチオン型帯電防止剤等を挙げることができる。
帯電防止剤は、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれら飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることができる。これらの内でも、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。スリップ剤は、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
ブロッキング防止剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状もしくは液状のシリコン樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、架橋されたアクリル樹脂やメタクリル樹脂粉末のような微粉末状架橋樹脂を挙げることができる。これらの内では、微粉末シリカおよび微粉末状架橋樹脂が好ましい。ブロッキング防止剤は、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、エステル系、軟質塩ビ系、ウレタン系、アミド系、ブタジエン・イソプレン系のエラストマー、あるいはこれらを数種類組み合わせたエラストマーを用いることができる。これらの中でもスチレン系、オレフィン系、ブタジエン・イソプレン系が好ましい。エラストマーは、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、1〜20質量%の範囲で配合することが好ましい。
<ポリオレフィン系組成物の製造>
本発明のポリオレフィン系組成物は、上記の成分(a)、及び(b)、また、必要に応じて添加剤を加えて、例えば、高速ミキサー、バンバリーミキサー、連続ニーダー、一軸又は二軸押出機、ロール、ブラベンダープラストグラフ等の通常の混合混練機を使用して、一般には加熱溶融混練して造粒する方法が採用される。
本発明のポリオレフィン系組成物は押し出し成形用に好ましく用いられる。また、上記(a)、及び(b)成分を押し出し成形直前に、例えば、押出機上のホッパー内に同時に投入して(ドライブレンド)用いてもよい。
[成形体]
本発明の成形体は、上記ポリオレフィン系組成物からなる成形体である。
前記ポリオレフィン系組成物は、延伸過程を有する成形方法に好適に用いられる。例えば、押出し加工ブロー成形、若しくは射出ブロー成形を含むブロー成形、又は熱成形、又は後述するフィルム成形に用いる場合に、有益な効果を期待できる。
例えば、ブロー成形体は、公知のブロー成形装置を用いて公知の条件により、本発明のポリオレフィン系組成物をブロー成形することにより製造できる。すなわち、本発明のポリオレフィン系組成物を押出機内で加熱溶融させてチューブ状に押出して、製品の外側のみ彫られている金型に挟み込んだ後に、チューブ内部に空気を引き込んで(吹き込んで)チューブ状の成形体を金型壁面に沿うように膨らまして中空体を成形する成形方法に用いることができる。本発明のポリオレフィン系組成物が有する優れた延伸性によって、成形された中空体ボトルの肉厚のムラ(ばらつき)を少なく、均一にすることができることから、ボトルの機械的物性(例えば、強度等)の品質ムラの増加も抑制され、透明性も向上する。このため、例えば、ポリオレフィン系組成物としてプロピレン系重合体を用いた場合、ポリエチレンテレフタラート(PET)ボトルに代わる、ポリプロピレン系射出延伸ブローボトルへの適用も可能である。
また、本発明のポリオレフィン系組成物の溶融混練物を、所定サイズの樹脂粒子にし、発泡成形体を製造できる。例えば、本発明のポリオレフィン系組成物の溶融混練物からなる所定サイズの樹脂粒子を、揮発性発泡剤と共に耐圧容器内で水中にて分散させた分散物を調製し、該分散物を本発明のポリオレフィン系組成物の溶融混練物の融点−20℃〜融点+20℃の範囲の温度に加熱して、樹脂粒子内に揮発性発泡剤を含浸させる。そして、該揮発性発泡剤の蒸気圧以上に加圧して、耐圧容器内の温度と圧力とを一定に保持しながら、該ポリオレフィン系組成物からなる樹脂粒子と水との分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出する方法が挙げられる。本発明のポリオレフィン系組成物を用いることで、発泡時の延伸性が改良されることで、表面の伸びが良く金型転写性の良好な発泡成形体を得ることができる。
また、本発明のポリオレフィン系組成物を押し出し成形することにより、後述するフィルムを製造できる。
本発明の延伸フィルムの製造方法により得られた、延伸フィルム用ポリオレフィン組成物は、従来の延伸フィルムに比べ、耐熱性に優れ、低延伸倍率であっても延伸ムラを抑制し、延伸後の力学特性及び光学特性が優れ、また、印刷性や形状追随性などの意匠性に優れ、耐候性に富み、耐溶剤性、融点低下が抑制される。
<フィルム>
本発明のフィルムは、上記ポリオレフィン系組成物からなるフィルムである。該フィルムは、上記ポリオレフィン系組成物を用いて、例えば、公知の所定の形状の金型(ダイ)から公知の条件で押し出すことで製造することができる。例えば、押出成形により得られた本発明のポリオレフィン系組成物からなるフィルムをチルロールで冷却することで得ることができる。本発明のポリオレフィン系組成物からなるフィルムは良好な透明性、光沢を有する。
また、当該フィルムは、発泡フィルム、フィラー配合フィルム等にも好適に用いられる。当該フィラー配合フィルムに配合されるフィラーとしては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ガラス等の公知の充填剤を採用することができる。
本発明のフィルムの厚みに特に制限はないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは50μm以下である。
なお、場合によって、本発明のフィルムの厚みが250μmを超える場合は、該フィルムを「シート」ともいうことがある。
<延伸フィルム>
本発明の延伸フィルムは、本発明のポリオレフィン系組成物を含み、少なくとも一方向に配向した延伸フィルムであり、好ましくは、一軸又は二軸方向に配向した延伸フィルムである。該延伸フィルムとしては、好ましくは、ポリエチレン延伸フィルム、ポリプロピレン延伸フィルム、又はポリブテン延伸フィルムなどが挙げられるが、優れた延伸フィルム物性を有することから、より好ましくはポリプロピレン延伸フィルムである。
なお、該延伸フィルムの種類は、該延伸フィルムの基材樹脂であって、上記ポリオレフィン系組成物の主成分でもあるオレフィン系重合体(A)の種類によって決定される。
本発明の延伸フィルムの厚みに特に制限はないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは50μm以下である。
なお、場合によって、本発明のフィルムの厚みが250μmを超える場合は、該延伸フィルムを「延伸シート」ともいうことがある。
<多層フィルム>
本発明の多層フィルムは、二層以上からなる多層フィルムであって、少なくとも1層が上記ポリオレフィン系組成物を含むものである。該多層フィルムは、上記ポリオレフィン系組成物を用いて、例えば、公知の所定の形状の金型(ダイ)から公知の条件で押し出すことで製造することができる。例えば、押出成形により得られた本発明のポリオレフィン系組成物からなる多層フィルムをチルロールで冷却することで得ることができる。
本発明の多層フィルムの厚みに特に制限はないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは50μm以下である。
なお、場合によって、本発明のフィルムの厚みが250μmを超える場合は、該多層フィルムを「多層シート」ともいうことがある。
<延伸多層フィルム>
本発明の延伸多層フィルムは、二層以上からなる延伸多層フィルムであって、少なくとも1層が本発明のポリオレフィン系組成物を含むものであり、当該層又は当該層を含む多層が少なくとも一方向に配向した延伸多層フィルムである。好ましくは、一軸又は二軸方向に配向した延伸多層フィルムである。更に、上記延伸多層フィルムは、上記ポリオレフィン系組成物からなる層に隣接する層にシーラント層及びスキン層として働く樹脂組成物からなる層を積層してもよい。また、上記ポリオレフィン系組成物からなる層が最外層となる場合は、ヒートシール層として機能してもよい。
最外層が、ヒートシール層である場合、上述したオレフィン系重合体(A)からなる層が好ましく、例えば、オレフィン系重合体(A)がプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体またはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることがより好ましい。
また、本発明の延伸多層フィルムは、用途に応じて、最外層及び内層の他の層として、適宜樹脂組成物を選択して用いることができ、例えば、上記ポリオレフィン系組成物の他に、ガスバリア性をもつ樹脂(エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、剛性をもつ樹脂(ナイロンなど)が挙げられる。
本発明の延伸多層フィルムの厚みに特に制限はないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは50μm以下である。
なお、場合によって、本発明のフィルムの厚みが250μmを超える場合は、該延伸多層フィルムを「延伸多層シート」ともいうことがある。
なお、本発明の延伸フィルムの中でもプロピレン系重合体(b1)を主成分とする場合の上記ポリオレフィン系組成物からなるフィルム、延伸フィルム、多層フィルム、及び延伸多層フィルムは、実施例で後述するように、従来のポリプロピレン原料を使用したポリプロピレンフィルム、延伸フィルム、多層フィルム、及び延伸多層フィルムに比べて、延伸性が優れ、フィルムの薄肉化や生産ライン速度の高速化が可能で、かつ、従来に比べ破断頻度が低減するとともに、得られた各フィルムの力学特性及び光学特性が優れる。
本発明のフィルム、延伸フィルム、又は延伸多層フィルムの透明性を表すヘイズ値(as 20μm)は、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.0%以下、光学特性を表す光沢(グロス)が130%以上、より好ましくは135%以上である。
[延伸フィルムの製造方法]
本発明の延伸フィルムの製造方法は、本発明のポリオレフィン系組成物を含む層を一層以上含むフィルムを再加熱して、一軸又は二軸方向へ、同時又は逐次延伸して延伸フィルムを得る製造方法である。
以下に、本発明の延伸フィルムの一般的な製法として、一例を説明する。なお、本発明では、以下の製法に限るものではない。
上記ポリオレフィン系組成物を溶融押出ししてT型のダイスからカーテン状に垂らし、直後にこの溶融膜を冷却ロールによって固化させ一次フィルムを得る。続いて、後続の延伸装置により延伸を行う。なお、上記溶融押出時の好ましい樹脂温度は、180〜300℃、より好ましくは200〜280℃である。また、冷却ロール温度は、好ましくは、0〜120℃、より好ましくは10〜100℃である。
押出により得られた一次フィルムを更に一軸延伸又は二軸延伸等により延伸して、延伸成形された延伸フィルムを得ることもできる。延伸方法としては、押出した一次フィルムを連続してテンター方式による逐次二軸延伸や同時二軸延伸を行う方法、又はインフレーション方式による同時二軸延伸を行う方法が挙げられる。また、バッチ式の二軸延伸装置を使用してもよい。
また、一般的に、延伸倍率を低くした場合、軟質な延伸フィルムが得られるが、配向が十分でないため、フィルム厚みが不均一な延伸フィルムになり、軟質で厚みムラが少ない延伸フィルムを得るためには延伸倍率を低くするだけでは二律背反の関係にある。本発明のポリオレフィン系組成物を用いた場合は、低延伸倍率で成形した場合であっても得られるフィルムの厚みムラが抑制され、かつ軟質な延伸フィルムが得ることが可能であり、例えば、適切な延伸温度を設定したうえで、MD方向では、5.0倍以下、4.5倍以下、さらには4.0倍以下での延伸、また当該MD方向への延伸後に、TD方向に9.0倍以下、8.5倍以下、さらには8.0倍以下であっても厚みムラを抑制することができる。
テンター方式による逐次二軸延伸では、まず、上記一次フィルムを延伸に適した温度(縦(MD)延伸温度;好ましくは、70〜180℃、より好ましくは80〜170℃)に再加熱して、遅ロール(前ロール)と速ロール(後ロール)との間で機械方向(MD)に延伸する。次いで、テンター部にて、MD方向に延伸したフィルムの両端を保持したまま、更に加熱(横(TD)延伸温度;好ましくは、140〜175℃、より好ましくは145〜170℃)し、機械方向に対して垂直方向(TD)に延伸する。
延伸後、フィルムを緩和(弛緩)してもしなくてもよいが、緩和しながら熱固定することにより、ポリオレフィン系組成物の分子量分布に依存する溶融変形の歪みが解消されるため、熱固定時の収縮による破断を抑制、また熱収縮性等の物性が安定する。好ましい範囲は0%〜15%、さらに好ましくは0〜10%である。
最後に、延伸処理後のフィルムを熱処理(熱固定温度;好ましくは、140〜175℃、より好ましくは145〜170℃)することで延伸フィルム物性を安定化させて、巻き取り機によって巻き上げて、目的の延伸フィルムを得ることができる。得られた延伸フィルムは、さらに、スリッター等の機械で適切な巾や長さに調整して、目的に応じた形状にしてもよい。また、上記に示したような機械方向(MD)及び垂直方向(TD)の延伸を同時に行う二軸同時テンター式延伸方式を用いても、本発明の延伸フィルムを得ることが可能である。
なお、得られる延伸フィルムの透明性をより向上させる観点からは、上記MD延伸温度及びTD延伸温度は、好ましい条件の中でも、低い温度条件であることが好ましい。
また、本発明のポリオレフィン系組成物を用いると、延伸倍率として、機械方向(MD)及び/又は機械方向に対して垂直方向(TD)を掛け合わせた面倍率が45倍以下であってもフィルムの厚みムラが抑制することが可能である。本発明のポリオレフィン系組成物を用い適切な延伸温度を設定したうえで、軟質化の観点から面倍率が45倍以下での延伸、好ましくは42倍以下での延伸、さらに好ましくは40倍以下であり、厚みムラの観点から面倍率は10倍以上での延伸、好ましくは20倍以上での延伸、さらに好ましくは30倍以上で延伸することで軟質かつ厚みムラが抑制された延伸フィルムを得ることができる。
[延伸多層フィルムの製造方法]
また、本発明の延伸多層フィルムの製造方法についても、上記延伸フィルムの製造方法と同様の製造方法を用いることができる。すなわち、本発明のポリオレフィン系組成物を含む層を少なくとも一層含み、他の樹脂組成物からなる層と積層し、上記延伸フィルムの製造方法と同様に、押出により得られた一次フィルムを、更に一軸延伸又は二軸延伸等により延伸して、延伸成形された延伸多層フィルムを得てもよいし、また、押出した一次フィルムを連続して、テンター方式による逐次二軸延伸や同時二軸延伸、又はインフレーション方式による同時二軸延伸を行って製造することができる。なお、一次フィルムを得る場合における上記の押出し工程では、例えば、2つ以上の異なる押出機から各層の樹脂(又は樹脂組成物)を供給して、T型のダイス内部で積層させて、共押出しすることで上記一次フィルムを得ることができる。
また、本発明における延伸フィルムの中でもポリプロピレン延伸フィルムの製造方法は、前記プロピレン系重合体(b1)(特に、上記融解吸熱量(ΔH−D)を有しかつ前述した特性を有するプロピレン単独重合体)を、前記ポリオレフィン系組成物の全量100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、50質量%未満であり、より好ましくは0.5質量%以上、20質量%未満、更に好ましくは0.5質量%以上、15質量%未満、より更に好ましくは1質量%以上、10質量%未満で製造する製造方法である。
一方、前記プロピレン系重合体(b1)(特に、上記融解吸熱量(ΔH−D)を有しかつ前述した特性を有するプロピレン単独重合体)は均一な組成、狭分子量分布であるため室温でもペレットとして扱える。したがって、前記オレフィン系重合体(A)に、前記プロピレン系重合体(b1)をドライブレンドしてもフィルムの成形が可能である。
[包装材料]
本発明のポリオレフィン系組成物は、包装材料に好適に用いられる。本発明のポリオレフィン系組成物からなる成形体、フィルム、延伸フィルム、又は延伸多層フィルムは、特に限定されるものではないが、例えば食品用途や工業用途などの包装材料、例えば、生鮮食品、加工食品、調理済み製品、レトルト食品、菓子、又は飲料などを直接又は間接的に(例えば、菓子箱)包装及び梱包する場合に使用できる材料、タバコケース、医薬品、コンデンサーやキャパシターなどの電気部品、繊維、文具、雑貨、プラスチック部品、金属部品、などの包装及び梱包に使用できる材料、又はコンデンサーやキャパシターなどの電気部品自体、繊維、文具、プラスチック部品、種々の再利用可能な容器、実験器具、スピーカーコーン、自動車部品、又は紙幣など幅広い用途に使用することができる。使用方法は、そのままのフィルムで使用してもよいし、他のフィルムと積層させて用いてもよいし、金属蒸着させて使用してもよい。
また、フィルムを短冊状にカット(スリット)し、一軸延伸フィルムとすることにより強度を持たせた平らなテープ(糸)とするフラットヤーンにも用いることができる。
また、保護フィルム、合成紙、ラベル、シール基材としても用いることができ、フィルム法合成紙、ファイバー法合成紙、フィルムラミネート法合成紙に用いることができる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
以下に、実施例で用いたオレフィン系重合体(A)、オレフィン系重合体(B)、及び樹脂組成物の測定方法について説明する。
〔DSC測定〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量ΔH−Dとして求めた。また、得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点(Tm−D)を求めた。
なお、融解吸熱量(ΔH−D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
〔重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)測定〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置および条件を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー(株)製「TOSO GMHHR−H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
〔NMR測定〕
以下に示す装置および条件で、13C−NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
<計算式>
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミペンタッド分率[rrrr]およびラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、およびラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、トリアッド分率[mm]、[rr]および[mr]も上記方法により算出した。
〔メルトフローレイト(MFR)測定〕
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
以下に、実施例で使用したオレフィン系重合体(A)について説明する。
<オレフィン系重合体A>
オレフィン系重合体(A)として、「Moplen HP525J」(Lyondellbasell社製PP樹脂、融点(Tm−D):163℃、引張弾性率:1500MPa、立体規則性[mmmm]:91%、融解熱量(ΔH−D):84J/g)を用いた。
以下に、実施例で使用したオレフィン系重合体(B)の製造例について説明する。
製造例1[オレフィン系重合体(B)の製造]
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/hr、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、並びに(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、トリイソブチルアルミニウム及びプロピレンを質量比1:2:20で、事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hrで連続供給した。
反応器内の全圧を1.0MPa・Gに保つようプロピレンと水素とを連続供給し、重合温度を適宜調整し所望の分子量を有する重合溶液を得た。
得られた重合溶液に、酸化防止剤をその含有割合が1000質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、オレフィン系重合体(B)を得た。
製造例1で得られた、オレフィン系重合体(B)について、上述の測定を行った。結果を、以下の表1に示す。
Figure 2016074091
<二軸延伸フィルムの評価>
下記測定方法によって、後述する各実施例及び比較例で作製した二軸延伸フィルムの物性を評価した。
〔力学特性の測定〕
作製した二軸延伸フィルムのMD方向及びTD方向のそれぞれから採取した200mm×15mmの短冊状の試験片を用い引張試験機((株)島津製作所製、「オートグラフAG−I」)で引張速度300mm/minで引張り、弾性率、破断強度、破断伸度を求めた。
各試験とも、MD方向で5回、TD方向で5回ずつ測定して、その平均値を測定値とした。なお、ここでMD方向の試験片とは、上記短冊状試験片の長手方向が二軸延伸フィルムのMD方向である試験片のことをいう。TD方向についても、同様である。
(i)弾性率
200mm×15mmの短冊状の試験片を用いて、引張試験機でチャック間距離150mm、引張速度300mm/minで引張り、伸度(ひずみ)を横軸とし、応力を縦軸とした二次元座標軸上に関係線(曲線)を引き、降伏点前の関係線の傾きを「弾性率」として求めた。弾性率は値が高いほど、フィルムの剛性が優れる。
〔光学特性の測定〕
(i)透明性(ヘイズ)測定
JIS K7105およびJIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製、「ISOヘイズメーター(NDH2000)」を用いて測定した。なお、ヘイズ値が小さいほど透明性が高くなる。
ヘイズ(%)=Td/Tt×100
(式中、Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)
また、フィルムの厚みによるヘイズの差を緩和するため、20μm厚でのフィルム厚に下記式を用いて換算をした。
ヘイズ(as 20μm)=ヘイズ(%)×20μm(μm)/フィルム厚み(μm)
(ii)光沢(グロス)の測定
JIS K7105およびJIS Z8741に準拠して、日本電色工業株式会社製の光沢計「VG2000」を用いて測定した。なお、60度鏡面光沢を測定した。また、グロス値が高いほど光沢性が高くなる。
〔加熱収縮率の測定〕
(JIS Z 1712準拠、ISO11501準拠)
作製した二軸延伸フィルムの中央部から3点採取した120mm×120mmの試験片を切り出し、試験片の各辺にMD方向、TD方向の印を付けた。それぞれ試験片の中央部を中心にして100mm間隔の標線を付けた(LMd0、Td0)。
温度120℃に保持した空気循環式恒温槽中に試験片を水平に入れて、15分間加熱した後に取り出した。その後、室温で30分間冷却してから、ノギスを用いて標線間距離(LMd、Td)を測定した。3点の試験片の測定値の平均値を求め、以下の式によって、加熱収縮率(MD、TD)を求めた。
MD=(LMd0−LMd/LMd0)×100
ここで、S:加熱収縮率(%)、LMd0:加熱前の標線間距離(mm)、LMd:加熱後の標線間距離(mm)である。
TD=(LTd0−LTd/LTd0)×100
ここで、S:加熱収縮率(%)、LTd0:加熱前の標線間距離(mm)、LTd:加熱後の標線間距離(mm)である。
(i) 厚み分布測定
フィルムの厚みは、厚み分布計(Marl社製、「MillimarC1216」)で測定した。測定範囲は、フィルムのMD方向に5cm間隔で5点、TD方向に5cm間隔でフィルムの全幅(下記表1に示す各例は19点)を測定した。得られた測定値から平均値を算出した値をフィルム厚みとした。また得られた測定値から標準偏差を算出した。
(ii)厚み分布均一性
下記式を用いて算出し、厚み分布均一性を評価した。下記式から導き出されるAの値が小さい程厚み分布が均一性であることを示す。
標準偏差(μm)/ 平均厚み(μm)×100= I(%)
実施例1
製造例1のオレフィン系重合体(B)5質量%とオレフィン系重合体(A)(PP、Lyondell Basell社製、Moplen HP525J、融点(Tm−D):163℃、引張弾性率:1500MPa、立体規則性[mmmm]:91%、融解熱量(ΔH−D):84J/g)95質量%からなる樹脂組成物のドライブレンド物をコア層用原料に、そして製造例1のオレフィン系重合体(B)5質量%とオレフィン系重合体(A)(PP、Lyondell Basell社製、Moplen HP525J、融点(Tm−D):163℃、引張弾性率:1500MPa、立体規則性[mmmm]:91%、融解熱量(ΔH−D):84J/g)93質量%とブロッキング防止剤マスターバッチ(A.Schulman社製、Polybatch ABPP05)2質量%からなる樹脂組成物のドライブレンド物をスキン層用原料として、Bruckner製の連続成形パイロットラインにて製膜した。製膜条件は下記の通りである。
Bruckner製の連続成形パイロット機(コア層側の押出条件;設定温度:250℃、押出機スクリュー系:55mmφ、押出機スクリュー回転数:180rpm、スキン層側の押出条件;設定温度:250℃、押出機スクリュー系:35mmφ、押出機スクリュー回転数:100rpm;Tダイ幅:270mm、テンターライン速度:50m/min、チルロール直径:800mmφ)によってスキン層:コア層:スキン層=1:11:1(押出し量比)。スキン層側の溶融樹脂は、上記スキン層側の押出機出口からTダイ間で均等分配)となるように溶融樹脂を押出しながら、チルロールで冷却して三層フィルムを作製した。このとき、チルロール温度は25℃で原反冷却用水槽温度は25℃であった。作製された三層フィルムは、続いて予熱ロールで予熱された後に延伸温度108℃及び延伸倍率5.0倍の条件で機械方向に延伸(MD、縦延伸)され、さらにフィルム両端をチャックで固定された状態でテンターを通り、延伸温度166℃、延伸倍率9.0倍、弛緩率:5%及び熱固定温度:156℃の条件で機械方向に対して垂直方向(TD、横延伸)に9倍で延伸され、三層二軸延伸フィルムを作製した。
製膜された三層二軸延伸フィルムの特性について評価した。結果を表2に示す。
実施例2
TD延伸倍率を8倍としたこと以外、実施例1と同様に行った。
比較例1
オレフィン系重合体(A)(PP、Lyondell Basell社製、Moplen HP525J、融点(Tm−D):163℃、引張弾性率:1500MPa、立体規則性[mmmm]:91%、融解熱量(ΔH−D):84J/g)100質量%をコア層用原料に、そしてオレフィン系重合体(A)(PP、Lyondellbasell社製、Moplen HP525J、融点:163℃、引張弾性率:1500MPa、立体規則性[mmmm]:91%、融解熱量(ΔH−D):84J/g)98質量%とブロッキング防止剤マスターバッチ(A.Schulman社製、Polybatch ABPP05)2質量%からなる樹脂組成物のドライブレンド物をスキン層用原料として、実施例1と同様の方法で製膜し、TDの延伸倍率は9倍で行った。フィルムの物性を評価した。結果を表2に示す。
比較例2
TD延伸倍率を8倍としたこと以外、比較例1と同様に行った。
Figure 2016074091
表2からわかるようにオレフィン系重合体(B)を含む二軸延伸フィルムは面倍率を45倍以下とすることで、弾性率がさがり柔軟なフィルムが得られることがわかる。また、弾性率が低下するだけでなく、フィルム厚みの均一性が向上し、透明性、光沢性もよりよくなっていることがわかる。これは、縦延伸時にロールへの密着性が高まり、予熱が均一に行われ、さらに延伸時にロール転写性がよいことから均一になったと考えられる。さらに横延伸時もオレフィン系重合体(B)を添加したことで、一軸延伸シートに熱が伝わりやすくなり、均一に製膜できた結果と考えられる。
本発明のポリオレフィン系組成物は、耐熱性に優れ、延伸後の力学特性及び光学特性に優れることから、食品用途や工業用途などの包装材料、例えば、生鮮食品、加工食品、調理済み製品、レトルト食品、菓子、又は飲料などを直接又は間接的に(例えば、菓子箱)包装及び梱包する場合に使用できる材料、タバコケース、医薬品、コンデンサーやキャパシターなどの電気部品、繊維、文具、雑貨、プラスチック部品、金属部品、などの包装及び梱包に使用できる材料、又はコンデンサーやキャパシターなどの電気部品自体、繊維、文具、プラスチック部品、種々の再利用可能な容器、実験器具、スピーカーコーン、自動車部品、又は紙幣など幅広い用途に使用することができる。
また、本発明の延伸フィルム用ポリオレフィン組成物は、印刷性や形状追随性などの意匠性に優れ、耐候性に富み、耐溶剤性、融点低下が抑制されるので、上述の幅広い用途に使用することができる。

Claims (10)

  1. 下記(a)及び(b)を含み、前記(b)成分の含有量が前記(a)成分と(b)成分との合計含有量100質量%に対して0.5質量%以上、50質量%未満であるポリオレフィン系組成物からなる層を一層以上含むフィルムを、二軸方向へ、面倍率45倍以下で同時又は逐次延伸する、延伸フィルムの製造方法。
    (a)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が120℃を超えるオレフィン系重合体(A)
    (b)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH−D)が0〜80J/gであり、分子量分布(Mw/Mn)が3.0未満であるオレフィン系重合体(B)
  2. 機械方向に対して垂直方向(TD)への延伸倍率が9.0倍以下である、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
  3. 前記オレフィン系重合体(A)が、プロピレン系重合体(a1)である、請求項1又は2に記載の延伸フィルムの製造方法。
  4. 前記オレフィン系重合体(B)の50モル%以上がプロピレンモノマーで構成されるプロピレン系重合体(b1)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の延伸フィルムの製造方法。
  5. 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(i)及び/又は(ii)を満たす、請求項4に記載の延伸フィルムの製造方法。
    (i)エチレンの構成単位が0モル%を超えて、20モル%以下で含まれる。
    (ii)1−ブテンの構成単位が0モル%を超えて、30モル%以下で含まれる。
  6. 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(1)を満たす、請求項4に記載の延伸フィルムの製造方法。
    (1)[mmmm]が20〜60モル%
  7. 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(2)を満たす、請求項4〜6のいずれか1項に記載の延伸フィルムの製造方法。
    (2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
  8. 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(2)及び(3)を満たす、請求項6に記載の延伸フィルムの製造方法。
    (2)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
    (3)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
  9. 前記プロピレン系重合体(b1)が下記(4)及び(5)を満たす、請求項6又は8に記載の延伸フィルムまたは延伸シートの製造方法。
    (4)[rmrm]>2.5モル%
    (5)[mm]×[rr]/[mr]≦2.0
  10. 食品用途又は工業用途に用いる包装材料であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られた延伸フィルムからなる包装材料。
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