JP2016072047A - 固体酸化物形燃料電池用ハーフセル及び固体酸化物形燃料電池用単セル - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高い発電性能を有する、新規な固体酸化物形燃料電池用ハーフセルおよび固体酸化物形燃料電池用単セルを提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係る固体酸化物形燃料電池用のハーフセルは、アノード機能層と、アノード機能層の一方の主面に積層された電解質層とを備えており、前記アノード機能層に含まれる電解質成分が、イットリア含有量が特定範囲のイットリア安定化ジルコニア粒子およびスカンジア含有量が特定範囲のスカンジア安定化ジルコニア粒子を含む電解質材料より得られる安定化ジルコニアを主成分として含むとともに、前記電解質層がスカンジア含有量が特定範囲のスカンジア安定化ジルコニアを主成分として含むことを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、固体酸化物形燃料電池用ハーフセル及び固体酸化物形燃料電池用単セルに関する。
近年、燃料電池システムは、クリーンエネルギー源として注目されている。燃料電池のうち、電解質に固体のセラミックスを使用している固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と記載することがある)システムは、他のシステムと比べて作動温度が高いため排熱を有効に利用でき、さらに高効率で電力を得ることができる等の長所を有しており、家庭用電源から大規模発電まで幅広い分野での活用が期待されている。
SOFCシステムの発電部は、カソード(空気極)とアノード(燃料極)との間にセラミックスからなる固体電解質層が配置されたSOFC用単セル(以下、「単セル」と記載することがある)を基本構造とし、この単セルにインターコネクターを挟んで複数積み重ねたスタックにすることによって高出力を得る。このような単セルには、電解質を支持体としてセルの強度を維持する電解質支持型セル(ESC)、アノードを支持体としてセルの強度を維持するアノード支持型セル(ASC)及びカソードを支持体とするカソード支持型セル(CSC)等がある。また、単セルの半製品として、例えば単セルの構造のうちカソードを形成していないハーフセルが提供されることもある。
特許文献1には、SOFCのアノードとして、ニッケルとイットリア安定化ジルコニア(以下、「YSZ」ということがある)とのサーメットを用いることが記載されている。また、特許文献1には、SOFCの電解質層として、3mol%イットリア安定化ジルコニア(3YSZ)、6mol%イットリア安定化ジルコニア(6YSZ)、8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)、10mol%イットリア安定化ジルコニア(10YSZ)が例示されている。
特許文献2には、SOFCのアノードとして、ニッケル−ジルコニアサーメットからなるアノード材料を用いることが望ましいと記載されている。ここで、ジルコニアとしては、3〜10重量%のイットリアで安定化されたジルコニアが例示されている。
特許文献3には、ASCのアノード電極の材質として、NiとYSZとのサーメットが選定されることが記載されている。また、固体電解質として、例えば8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を用いることが記載されている。特許文献4には、燃料極として、触媒と1000℃における酸素イオン導電率が0.2S/cm以上であるスカンジア安定化ジルコニア(以下、「ScSZ」ということがある)固体電解質とサーメットからなり、好ましい固体電解質として9〜12モル%のスカンジアを含む9〜12ScSZが記載されている。
ところで、上記の文献において、アノード形成に用いる電解質はYSZのみかScSZのみかであり、YSZとScSZは併用されておらず、YSZとScSZを併用した場合のYSZ中のイットリア含有量やとScSZ中のスカンジア含有量とSOFC用セルの発電性能との関係について具体的な検討はなされていない。
かかる事情に鑑み、本発明は、高い発電性能を有する新規なSOFC用ハーフセル、およびSOFC用単セルを提供することを目的とする。
本発明は、
アノード機能層と、アノード機能層の一方の主面に積層された電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池用ハーフセルであって、
前記アノード機能層が、導電成分と電解質成分とを含み、
導電成分が、還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物を含み、
電解質成分が、イットリア含有量が3mol%以上12mol%以下であるイットリア安定化ジルコニア粒子およびスカンジアの含有量が4mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニア粒子を含む電解質材料より得られる安定化ジルコニアを主成分として含むとともに、
前記電解質層が、スカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニアを主成分として含むものである固体酸化物形燃料電池用ハーフセルを提供する。
アノード機能層と、アノード機能層の一方の主面に積層された電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池用ハーフセルであって、
前記アノード機能層が、導電成分と電解質成分とを含み、
導電成分が、還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物を含み、
電解質成分が、イットリア含有量が3mol%以上12mol%以下であるイットリア安定化ジルコニア粒子およびスカンジアの含有量が4mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニア粒子を含む電解質材料より得られる安定化ジルコニアを主成分として含むとともに、
前記電解質層が、スカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニアを主成分として含むものである固体酸化物形燃料電池用ハーフセルを提供する。
また、本発明は、
上記の固体酸化物形燃料電池用ハーフセルと、
前記電解質層の前記アノード機能層と反対側に積層されたカソードと、
を備えた、固体酸化物形燃料電池用単セルを提供する。
上記の固体酸化物形燃料電池用ハーフセルと、
前記電解質層の前記アノード機能層と反対側に積層されたカソードと、
を備えた、固体酸化物形燃料電池用単セルを提供する。
本発明において、アノード機能層の電解質成分をイットリア含有量が3mol%以上12mol%以下であるイットリア安定化ジルコニア粒子およびスカンジアの含有量が4mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニア粒子を含む電解質材料より得られる安定化ジルコニアを主成分として含むものとし、且つ、電解質層をスカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニアを主成分とするものとすることで、高い発電性能を実現できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明に係るハーフセルは、アノード機能層と、アノード機能層の一方の主面に積層された電解質層とを備えたものであれば特に限定されない。アノード機能層の電解質層と接する面と反対側の面、あるいは、電解質層のアノード機能層と接する面と反対側の面に、他の層が積層されたものであってもよい。また本発明に係るハーフセルは、アノード支持基板により支持されたものであっても、電解質層に支持されたものであってもよいが、アノード支持基板により支持されたセルであることが好ましい。
また本発明に係る単セルは、ハーフセルと、前記電解質層の前記アノード機能層と反対側に積層されたカソードとを備えたものであれば特に制限されない。が、アノード支持基板により支持されたセルであることが好ましい。
本発明のハーフセルが、アノード支持基板により支持されたハーフセルである場合、たとえば、前記アノード機能層がハーフセルの支持体としての機能を備えたものであってもよいが、アノード機能層の電解質層と接する面と反対側の面にアノード支持基板がさらに積層された構造であってもよい。
また、本発明に係るハーフセルにおいて、電解質層のアノード機能層が接する面とは反対側の面に、後術するように第2の固体電解質層および/またはバリア層が積層されたものもハーフセルの好ましい一形態である。
本発明に係る単セルは、上述したハーフセルと、ハーフセルにおける電解質のアノード機能層と接する面とは反対側に積層されたカソードを備える。なお、カソードは、前記電解質のアノード機能層と接する面とは反対側の面に直接に積層されていてもよいし、バリア層などの他の層を挟むようにして積層されていてもよい。
アノード機能層は導電成分と電解質成分とを主な成分としており、電気化学反応が実質的に行われる層である。電解質成分はセラミックス質からなる骨格成分ということもできる。具体的には、アノード機能層は導電成分と電解質成分が焼結したサーメットである。
アノード支持基板は、導電成分と電解質成分とを主な成分としており、アノード機能層にメタンや水素などの燃料ガスを導くとともに、電解質層及びカソードを支持し、ハーフセル又はSOFC用単セル全体の支持体として機能する。
アノード支持基板に含まれる電解質成分はセラミックス質からなる骨格成分でもある。アノード機能層が支持体として機能する場合には、アノード支持基板を省略してもよい。
アノード機能層に含まれる導電成分は、還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物を含む。たとえば、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄などの金属酸化物;あるいはこれらの酸化物を2種以上含有するニッケルフェライトやコバルトフェライトのような複合金属酸化物等が挙げられる。これらは単独で使用し得るほか、必要により、2種以上を適宜組み合わせて使用できる。これらの中でも、酸化ニッケル、酸化コバルトおよび酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が好ましく、中でも酸化ニッケルが特に好ましい。
該導電成分は、好ましくは、前記金属酸化物または前記複合金属酸化物と同様の組成からなる金属酸化物粒子(A)より得られる。金属酸化物粒子(A)としては酸化ニッケル、酸化コバルトおよび酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子が好ましく、特に好ましくは酸化ニッケル粒子である。
アノード機能層に含まれる電解質成分としては、特定の安定化ジルコニアを主成分として含む。ここで、「主成分」とは、重量基準で最も多く含まれる成分のことをいう。具体的には電解質成分100質量%に占める、前記特定の安定化ジルコニアの含有量が50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
前記特定の安定化ジルコニアは、具体的には、イットリア含有量が3mol%以上12mol%以下であるイットリア安定化ジルコニア粒子(YSZ粒子(A)ともいう)およびスカンジアの含有量が4mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニア粒子(ScSZ粒子(A)ともいう)を主成分として含む電解質材料(電解質材料(A)ともいう)より得られる。なお本明細書において、イットリアを安定化剤として含むジルコニアをYSZと、スカンジアを安定化剤として含むジルコニアをScSZと表記することがある。
YSZ粒子(A)におけるイットリアの含有量は3mol%以上12mol%以下である。ここで、「3mol%以上」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「3mol%」となる場合を含み、「12mol%以下」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「12mol%」となる場合を含む。このYSZ粒子(A)のイットリアの含有量は4〜11mol%がより好ましく、6〜10mol%がさらに望ましい。とりわけ、イットリアを8〜11mol%添加した安定化ジルコニウム(8〜11YSZ)を用いるのが望ましい。また、たとえば、イットリアの含有量が3〜6mol%を含む3〜6YSZと、イットリアの含有量が8〜11mol%を含む8〜11YSZとが混合されていてもよい。
また、YSZ粒子(A)は、イットリアの含有量が上記範囲であれば、第2安定化剤として他の希土類元素酸化物、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を1種または2種以上含有する安定化ジルコニアであってもよい。ただし第2安定化剤の含有量は、3mol%未満であることが好ましい。
また、ScSZ粒子(A)におけるスカンジアの含有量は4mol%以上12mol%以下である。ここでも、「4mol%以上」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「4mol%」となる場合を含み、「12mol%以下」とは、小数点第2位を四捨五入することにより「12mol%」となる場合を含む。このScSZ粒子(A)のスカンジアの含有量は5〜11mol%がより好ましく、6〜11mol%がさらに望ましい。とりわけ、スカンジアを8〜11mol%添加した安定化ジルコニウムを用いるのが望ましい。また、たとえば、スカンジアの含有量が4〜6mol%を含む4〜6ScSZと、スカンジアの含有量が8〜12mol%を含む8〜12ScSZとが混合されていてもよい。
さらに、上記ScSZ粒子(A)としては、イットリアの含有量が上記範囲であれば特に制限されず、第2安定化剤として他の希土類元素酸化物を含んでいてもよい。中でも第2安定化剤としてイットリア、セリア、イッテルビア、アルミナが0.5〜2.5mol%の割合でスカンジアとともに配合された安定化ジルコニアが好ましく用いられる。
電解質材料(A)にはYSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)以外の安定化ジルコニア粒子を含んでいてもよいが、電解質材料(A)は、YSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)の混合物を主成分とすることが好ましい。具体的には、電解質材料(A)100質量%に占めるYSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)の合計含有量が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、一層好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
電解質材料(A)におけるYSZ粒子(A)とScSZ粒子(A)との配合比率は、特に制限されないが、質量基準で40:60〜95:5であることが好ましく、より好ましくは50:50〜90:10であり、さらに好ましくは40:60〜80:20である。
YSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)以外の安定化ジルコニア粒子としては、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を添加した安定化ジルコニア粒子があげられる。
アノード機能層の電解質成分は、電解質材料(A)より得られるものであるが、該電解質成分の形態は特に制限されるものではない。たとえば(1)YSZ粒子(A)に由来するイットリア安定化ジルコニアからなる相、およびScSZ粒子(A)に由来するスカンジア安定化ジルコニアからなる相とが混在する形態、(2)YSZ粒子(A)とScSZ粒子(A)とが溶融混合しイットリアおよびスカンジアにより安定化されたジルコニアからなる相が存在する形態、(3)上記(1)に記載の各相と上記(2)に記載の相とが混在する形態などがあげられる。なお、アノード機能層は、後述するように、電解質材料(A)、好ましくは金属酸化物粒子(A)をさらに含む組成物(グリーン層)を、ジルコニアが焼結する温度で焼成することにより製造することが好ましい。
アノード機能層に含まれる導電成分と電解質成分との成分比は特に限定されない。導電成分と電解質成分との成分比(導電成分:電解質成分)は、例えば質量基準で30:70〜80:20であり、40:60〜70:30が好ましく、50:50〜60:40がより望ましい。ここで、導電成分と電解質成分との成分比は、還元性雰囲気に曝される前の導電成分の質量に基づいている。
アノード機能層とは別途アノード支持基板を備える場合、該アノード支持基板に含まれる導電成分としては、アノード機能層と同様の成分が選択される。またアノード支持基板の導電成分が前記金属酸化物粒子(A)より得られるものであることが好ましい。一方、アノード支持基板に含まれる電解質成分としては、アノード機能層と同様の成分に限られない。アノード支持基板の電解質成分としては、ジルコニア、セリア、ランタンガレートなどが使用される。これらの中でも最も汎用性の高いのは安定化ジルコニアであり、その安定化ジルコニアとしては、ジルコニアに、安定化剤としてMgO、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属の酸化物;Sc2O3、Y2O3、La2O3、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3等の希土類元素の酸化物;Bi2O3、In2O3等から選ばれる1種若しくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、あるいは更に、これらに分散強化剤としてアルミナ、チタニア、Ta2O5、Nb2O5などが添加された分散強化型ジルコニア等が望ましいものとして例示される。また、CeO2にY2O3,La2O3,Ce2O3,Pr2O3,Nb2O3,Sm2O3,Eu2O3,Gd2O3,Tb2O3,Dr2O3,Ho2O3,Er2O3,Yb2O3の1種もしくは2種以上がドープされたセリア、更には、LaGaO3の如きランタンガレートも使用可能である。これらの中でも3〜12mol%のイットリアで安定化されたジルコニアおよび/または4〜12mol%のスカンジアで安定化されたジルコニアが望ましい。さらに、アノード支持基板の強度を高める観点から3〜6mol%のYSZおよび/または4〜6mol%のScSZが好ましい。またアノード支持基板の電解質成分が前記電解質材料(A)より得られる安定化ジルコニアを主成分とするものであることも好ましい一形態であり、この場合のより好ましい態様は、アノード機能層の電解質成分の場合と同様である。
アノード機能層の厚さは特に限定されないが、例えば5μm〜1500μmである。アノード機能層がアノード支持基板を兼ねる場合、150〜1500μmが好ましく、別途アノード支持基板を設ける場合は、アノード機能層の厚みは5μm〜30μmが好ましい。その場合、アノード支持基板の厚さは特に限定されないが、例えば150μm〜1500μmである。
電解質層は、セラミックス質でもある電解質成分を主成分として含む。ここで、「主成分」とは、重量基準で最も多く含まれる成分のことをいう。具体的には、電解質層の電解質成分として、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)が選ばれる。このScSZのイットリアの含有量は8mol%以上12mol%以下である。ここでも、「8mol%以上」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「8mol%」となる場合を含み、「12mol%以下」とは、小数点第2位を四捨五入することにより「12mol%」となる場合を含む。このScSZのスカンジアの含有量は9〜11mol%がより望ましく、とりわけ、スカンジアを10mol%添加した安定化ジルコニア(10ScSZ)を用いるのが望ましい。
また、スカンジア安定化ジルコニアとしては、スカンジアの含有量が上記範囲であれば、第2安定化剤として他の希土類元素酸化物、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を1種または2種以上含有する安定化ジルコニアであってもよい。ただし第2安定化剤の含有量は、3mol%未満であることが好ましい。
また、電解質層は電解質成分として、上記スカンジア安定化ジルコニア以外の安定化ジルコニアをさらに含んでいてもよく、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を添加した安定化ジルコニアがあげられる。
電解質層は、上記スカンジア安定化ジルコニア以外の成分として、アルミナ、シリカ、チタニア等を焼結助剤や分散強化剤として添加した材料が含まれていてもよい。電解質層において上記スカンジア安定化ジルコニア含有量は、電解質層に対して例えば95質量%以上であり、97質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに望ましい。また、電解質層が実質的にスカンジアの含有量が上述の範囲であるScSZからなっていてもよい。電解質層は、スカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下のスカンジア安定化ジルコニア粒子(ScSZ粒子(B)ともいう)を主成分とする電解質材料(電解質材料(B)ともいう)より得られることが好ましい。ScSZ粒子(B)におけるスカンジアの含有量は8mol%以上12mol%以下である。ここで、「8mol%以上」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「8mol%」となる場合を含み、「12mol%以下」とは、小数点第1位を四捨五入することにより「12mol%」となる場合を含む。このScSZ粒子(B)のスカンジアの含有量は9〜11mol%がより好ましく、10mol%がさらに望ましい。また、たとえば、スカンジアの含有量が3〜6mol%を含む3〜6ScSZと、スカンジアの含有量が8〜12mol%を含む8〜12ScSZとが混合されていてもよい。
また、ScSZ粒子(B)は、スカンジアの含有量が上記範囲であれば、第2安定化剤として他の希土類元素酸化物、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を1種または2種以上含有する安定化ジルコニアであってもよい。ただし第2安定化剤の含有量は、3mol%未満であることが好ましい。
電解質材料(B)にはScSZ粒子(B)以外の安定化ジルコニア粒子を含んでいてもよいが、電解質材料(B)は、ScSZ粒子(B)を主成分とすることが好ましい。具体的には、電解質材料(B)100質量%に占めるScSZ粒子(B)の合計含有量が50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、一層好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
ScSZ粒子(B)以外の安定化ジルコニア粒子としては、たとえば、プラセオジア、ネオジア、サマリア、ガドリニア、ジスプロシア、ユウロピア、エルビア、又はイッテルビア等を添加した安定化ジルコニア粒子があげられる。電解質層は、電解質材料(B)を含む組成物(グリーン層)を、ジルコニアが焼結する温度で焼成することにより製造することが好ましい。電解質層の厚みは、特に制限されないが、1〜30μmが好ましく、2〜20μmがさらに好ましい。
本発明の実施形態においてハーフセルは、前記電解質層(第1電解質層ともいう)以外にさらに他の電解質層(第2電解質層ともいう)を備えていてもよい。第2電解質層は、第1電解質層のアノード機能層と反対側の主面に形成されている。
第1電解質層は上述したように、電解質成分としてスカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下のスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を含む。また、第2電解質層は、イットリア安定化ジルコニウムを主成分として含んでいることが望ましい。ここで、「主成分」とは質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。なお、本明細書において、単に電解質層と記載されている場合は、特の断りのない限り、第1電解質層を意味する。
第2電解質層に主成分として含まれるイットリア安定化ジルコニアは、例えば、3〜12mol%のイットリアで安定化されたジルコニアである。第2電解質層に主成分として含まれるイットリア安定化ジルコニアには、所定の金属酸化物がドープされていてもよい。このドープされる金属酸化物は、例えば、CeO2、Al2O3、Bi2O3である。第2電解質層に主成分として含まれるイットリア安定化ジルコニアとしては、例えば、10mol%イットリア安定化ジルコニアが望ましい。第2電解質層は、上記のイットリア安定化ジルコニア以外の成分を含んでいてもよい。また、第2電解質層は、上記のイットリア安定化ジルコニアからなることが望ましい。
第1電解質層及び第2電解質層の厚みの和は、特に制限されないが、例えば、1〜30μmである。第1電解質層の厚みは特に限定されないが、例えば5〜20μmである。スカンジア安定化ジルコニアの酸素イオン伝導度は、イットリア安定化ジルコニアの酸素イオン伝導度よりも大きい。このため、高い発電性能を有する、SOFCハーフセル、SOFC用単セル及びSOFCを提供するためには、第2電解質層の厚みは相対的に小さい方がよい。そこで、第2電解質層の厚みは、第2電解質層の厚み及び第1電解質層の厚みの和の例えば50%以下である。第2電解質層の厚みは、第1電解質層及び第2電解質層の厚みの和の40%以下であることが望ましく、30%以下であることがより望ましい。く、45%以上であることがさらに望ましい。また、第2電解質層の厚みは、例えば、第2電解質層の厚み及び第1電解質層の厚みの和の5%以上である。これにより、第1電解質層は所定の厚みを有する。このため、第1電解質層を第2電解質層の全体に対して貫通孔等の欠陥を生じさせることなく均質に作製することができる。その結果、ハーフセル又は単セル生産時の歩留まりを高めることでき、単セルの出力のばらつきを抑制できる。
本発明に係るハーフセルのアノード機能層、電解質層を得るために、YSZ粒子(A)、ScSZ粒子(A)およびScSZ粒子(B)等の各種粒子が用いられるが、これらの粒子は、通常、その平均粒子径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmの範囲にあることがより好ましい。たとえば、YSZ粒子(A)、ScSZ粒子(A)およびScSZ粒子(B)については、平均粒子径は、0.1〜3μmであることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。 電解質材料(A)に含めることのできる、YSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)以外の安定化ジルコニア粒子、および、電解質材料(B)に含めることのできる、ScSZ粒子(B)以外の安定化ジルコニア粒子も上記と同様の範囲であることが好ましい。また、金属酸化物粒子(A)は、平均粒子径が0.1〜3μmであることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましく、0.3〜1μmであることがさらに好ましい。
なお、本明細書における平均粒子径とは、体積基準の累積粒度分布から求められるメジアン径、すなわち体積累積が50%に相当する粒子径(D50)のことである。体積基準の累積粒度分布および平均粒子径は、通常、レーザー回折散乱法に基づいて測定されるが、たとえば、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LA−920)を用いて測定することができる。
アノード機能層の電解質成分を得るために用いるScSZ粒子(A)におけるスカンジアの含有量及び電解質層のスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)におけるスカンジアの含有量は、上記の特定した範囲内であれば、その組み合わせは自由であるが、高い発電性能を示すSOFC用単セルを実現する観点から、ScSZ粒子(A)におけるスカンジアの含有量及び電解質層のスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)におけるスカンジアの含有量が近似している、又は同一であることが好ましい。具体的には、ScSZ粒子(A)におけるスカンジアの含有量をAmol%、電解質層のスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)におけるスカンジアの含有量Bmol%とすると、0.7<A/B<1.4が望ましく、0.8<A/B<1.3がより望ましい。とりわけ、A/B=1であることが望ましい。
また、電解質層を形成するために用いる前記ScSZ粒子(B)におけるスカンジアの含有量をB´mol%とすると、ScSZ粒子(A)におけるスカンジアの含有量Amol%との関係が、0.7<A/B´<1.4が望ましく、0.8<A/B´<1.3がより望ましい。とりわけ、A/B´=1であることが望ましい。
バリア層は、単セルの作製過程においてカソードを焼成する際やSOFCの運転中に、電解質層とカソードとが反応して高抵抗物質層が形成されて発電性能が低下することを防ぐ。バリア層の材料としてはセリア及び希土類元素を主成分とする材料を用いることができる。例えば、ガドリニアをドープしたセリア(GDC)、サマリアをドープしたセリア(SDC)等を用いることができる。バリア層の厚みは特に限定されないが、例えば2〜20μmである。また、バリア層は必須の構成ではなく、電解質層の電解質とカソードとの組み合わせによっては省略してもよい。
カソード層は、電解質層のアノード機能層と反対側に積層されている。カソード層は、例えば、バリア層の電解質層と接する主面と反対側の主面上に積層される。また、バリア層が省略される場合には、カソード層は、電解質層のアノード機能層と接する主面と反対側の主面上に積層されてもよい。
カソード層の材料としては、例えば金属、金属の酸化物、金属の複合酸化物等を用いることができる。このうち金属としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Ru等の金属又は2種以上の金属を含有する合金を挙げることができる。また、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn、Fe等の酸化物(例えば、La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2、FeO等)を挙げることができる。また、金属の複合酸化物としては、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mn等のうちの少なくとも1種を含有する各種の複合酸化物である。好ましくは、ペロブスカイト構造の金属の複合酸化物であって、その主成分がマンガナイト(例えば、La1−xSrxMnO3系複合酸化物(以下、「LSM」ということがある)、コバルタイト(例えば、La1−xSrxCoO3系複合酸化物(以下、「LSC」ということがある)やPr1−xSrxCoO3系複合酸化物、Sm1−xSrxCoO3系複合酸化物)、フェライト(例えば、La1−xSrxFeO3系複合酸化物(以下、「LSF」ということがある)やLa1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物(以下、「LSCF」ということがある)からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。ここで、0<x<1、0<y<1である。これらの中でも、カソード層の材料としては、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物がより好ましく用いられる。この場合、熱膨張によるバリア層との剥離の抑制及び酸素イオン伝導度の向上のために、カソード層は、GDC又はSDCを含んでいてもよい。
本実施形態において、カソード層を、二層構造のカソード層に変更してもよい。変形例に係る単セルは、ハーフセルからバリア層が省略されたハーフセルに、二層構造のカソード層が用いられている点を除き、上記の実施形態と同様に構成されている。
この場合、カソード層は、電解質層側に配置された第1カソード層と、第1カソード層に対して電解質層と反対側に配置された第2カソード層とを含んでいる。第1カソード層は電気化学反応が実質的に行われる層であり、カソード活性層ということもできる。第2カソード層は、電子及び空気を第1カソード層に送り込むための層であり、カソード集電層ということもできる。第1カソード層又は第2カソード層を構成する材料としては、カソード層の材料として例示した材料の中から選択してもよい。特に、第1カソード層は、元素比が(LaXSr1−X)1−aMn(Xの範囲:0.5〜0.9、aの範囲:0.0〜0.2)の複合酸化物であるマンガナイトと、酸素イオン伝導性材料とを含むことが望ましい。第2カソード層は、LSMを主成分として含むことが望ましい。
次に、アノード機能層及び電解質層に使用可能な安定化ジルコニアの安定化剤について考察する。さらに、アノード機能層を構成する電解質成分および電解質層を構成する電解質成分が電池性能に及ぼす効果について考察する。
一般に、SOFCの電解質層の材料としては、発電性能の観点から酸素イオン伝導度が高い材料が望ましいと考えられていた。例えば、ScSZは、YSZよりも酸素イオン伝導度が高く、高い発電性能を示すSOFCを実現できると考えられていた。しかしながら、実際には、ScSZの酸素イオン伝導度よりも低い酸素イオン伝導度を示すYSZをScSZとともにアノード機能層形成原料に用い、ScSZを電解質層に用いた単セルの発電性能が、ScSZのみをアノード機能層及び電解質層に用いた単セルの発電性能よりも高いことが本発明者らによって見出された。
アノード機能層の導電成分である金属酸化物は、SOFC稼働時の還元性雰囲気において導電性金属に変化する。例えば、導電成分が酸化ニッケルである場合、この酸化ニッケルはSOFC稼働時の還元性雰囲気において金属ニッケルに変化する。これにより、導電成分は収縮する。この収縮により、導電成分と、アノード機能層の電解質成分又は電解質層のアノード機能層との界面に存在する電解質成分とが剥離しようとする力が生じると考えられる。これらの電解質成分と導電成分との剥離がSOFCの発電性能を低下させるものと本発明者らは考えている。そして、アノード機能層及び電解質層にScSZのみを用いた単セルとアノード機能層にYSZとScSZとを含む電解質材料由来の電解質成分を用い、且つ電解質層にScSZを用いた単セルとを比較すると、後者の単セルにおいて、より高い程度で剥離の発生が抑制されていることがわかった。これらのことからアノード機能層にYSZとScSZとを含む電解質材料由来の電解質成分を用い、且つ電解質層にScSZを用いた単セルの発電性能が、ScSZのみをアノード機能層及び電解質層に用いた単セルの発電性能よりも高くなったと考えられる。
アノード機能層及びアノード機能層との界面における電解質層における結晶粒界の結合の強さは、ジルコニウムイオンZr4+のイオン半径と安定化ジルコニアに安定化剤として添加される金属酸化物に由来する金属イオンのイオン半径との差が大きいほど強くなると考えられる。そして、その結晶粒界の結合の強さが上記の剥離の抑制に影響すると本発明者らは考えている。Y3+のイオン半径とZr4+のイオン半径との差は、Sc3+のイオン半径とZr4+のイオン半径との差よりも十分大きい。このことがアノード機能層の電解質成分及び電解質層にScSZのみを用いた単セルと、アノード機能層にYSZとScSZ含む電解質材料由来の電解質成分を用い、且つ電解質層にScSZを用いた単セルとを比較したときに、後者の単セルにおいてより高い程度で剥離が抑制される要因ではないかと考えられる。
本発明のハーフセルにおいては、H2とN2との体積比が1:9混合気体雰囲気であり、温度750℃である電気炉の内部にハーフセルを4時間静置してアノード機能層の導電成分である金属酸化物を還元したときに、導電成分と、アノード機能層における電解質成分との剥離度は15%以下であることが好ましい。該剥離度は望ましくは14%以下であり、より望ましくは、13%以下である。また本発明のハーフセルにおいては、H2とN2との体積比が1:9の混合気体雰囲気であり、温度750℃である電気炉の内部にハーフセルを4時間静置してアノード機能層の導電成分である金属酸化物を還元したときに、導電成分と、電解質層における電解質成分であるScSZとの界面剥離度は16%以下であることが好ましい。界面剥離度は望ましくは15%以下であり、より望ましくは14%以下である。このように、ハーフセルにおいては、導電成分と、アノード機能層の電解質成分との剥離、又は、導電成分と、電解質層のアノード機能層との界面における電解質成分であるScSZとの剥離が抑制されるので、単セルが高い発電性能を示す。
なお、剥離度および界面剥離度を評価するための上記雰囲気下での還元処理は、通常、大気圧下で行うことが好ましい。すなわち、本発明のハーフセルは、大気圧条件下で上記還元処理を行った後の試料についての剥離度および/または界面剥離度を満足するものであることが好ましい。
さらに、アノード機能層の導電成分の凝集度は30以下であり、好ましくは1以上30以下である。凝集度はより好ましくは1以上29以下であり、さらに好ましくは1以上28以下である。このように、ハーフセルにおいては、アノード機能層の導電成分の凝集が抑制されるので、単セルが高い発電性能を示す。
さらに、アノード機能層の導電成分の凝集度は30以下であり、好ましくは1以上30以下である。凝集度はより好ましくは1以上29以下であり、さらに好ましくは1以上28以下である。このように、ハーフセルにおいては、アノード機能層の導電成分の凝集が抑制されるので、単セルが高い発電性能を示す。
剥離度及び界面剥離度は以下のようにして求めることができる。上記の雰囲気に曝した後のハーフセルの、アノード支持基板、アノード機能層、電解質層の積層方向に沿って、ハーフセルをガラスカッターによって切断して形成されたハーフセルの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影する。具体的には、アノード機能層又はアノード機能層と電解質層との界面付近の断面をSEMによって2万倍の倍率で撮影する。この撮影画像を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)で画像解析し、アノード機能層中の任意の6個以上の導電成分の粒体(グレイン)の周長(空孔と接している部分を除く)の総和Laを求める。次に、導電成分のグレインがアノード機能層中の電解質成分と接していない部分の長さの総和Lbを求める。アノード機能層における導電成分の剥離度は以下の式で定義される。
アノード機能層における導電成分の剥離度[%]=(Lb/La)×100
アノード機能層における導電成分の剥離度[%]=(Lb/La)×100
界面剥離についても同様に、電解質層のアノード機能層との界面付近の断面のSEMによる撮影画像を画像解析し、アノード機能層の中の導電成分のうち、電解質層のアノード機能層との界面に面している任意の6個以上の導電成分の粒体(グレイン)について、電解質層の界面に面している周長の総和Naを求める。次に、この導電成分の電解質層の界面に面している部分(空孔と接している部分を除く)のうち、電解質層の電解質成分に接していない部分の長さの総和Nbを求める。アノード機能層の導電成分と電解質層との界面剥離度は以下の式で定義される。
アノード機能層の導電成分と電解質層との界面剥離度[%]=(Nb/Na)×100
アノード機能層の導電成分の凝集度は以下のようにして求めることができる。上記の雰囲気に曝した後のハーフセルを、同様にガラスカッターによって切断して形成されたハーフセルの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影する。具体的には、上記と同様にしてアノード機能層断面をSEMによって2万倍の倍率で撮影する。この撮影画像を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)で画像解析し、導電成分の各粒体(グレイン)の粒界の長さ、つまり周長Lnを求める。このとき、撮影画像の周縁部に位置するグレインの粒界画像が一部欠けたようなものは排除し、グレインの画像として欠けることなくグレインの粒界が完全に観察されるものについてのみ周長Lnを求める。次に、導電成分の粒体(グレイン)画像を円と仮定して、各周長Lnからグレインの円相当直径を求め、各円相当直径の平均値(個数基準の平均値)をグレインの平均粒径R50として算出する。また、アノード機能層の導電成分の原料粉末をレーザー回折法に測定して得た平均粒径をD50とする。アノード機能層における導電成分の凝集度は以下の式で定義される。
アノード機能層における導電成分の凝集度=R50/D50
なお、平均粒径D50とは、前記した平均粒子径と同様にレーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、体積累積が50%に相当する粒径(D50)を意味する。
アノード機能層の導電成分と電解質層との界面剥離度[%]=(Nb/Na)×100
アノード機能層の導電成分の凝集度は以下のようにして求めることができる。上記の雰囲気に曝した後のハーフセルを、同様にガラスカッターによって切断して形成されたハーフセルの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影する。具体的には、上記と同様にしてアノード機能層断面をSEMによって2万倍の倍率で撮影する。この撮影画像を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)で画像解析し、導電成分の各粒体(グレイン)の粒界の長さ、つまり周長Lnを求める。このとき、撮影画像の周縁部に位置するグレインの粒界画像が一部欠けたようなものは排除し、グレインの画像として欠けることなくグレインの粒界が完全に観察されるものについてのみ周長Lnを求める。次に、導電成分の粒体(グレイン)画像を円と仮定して、各周長Lnからグレインの円相当直径を求め、各円相当直径の平均値(個数基準の平均値)をグレインの平均粒径R50として算出する。また、アノード機能層の導電成分の原料粉末をレーザー回折法に測定して得た平均粒径をD50とする。アノード機能層における導電成分の凝集度は以下の式で定義される。
アノード機能層における導電成分の凝集度=R50/D50
なお、平均粒径D50とは、前記した平均粒子径と同様にレーザー回折散乱法により測定した粒度分布において、体積累積が50%に相当する粒径(D50)を意味する。
次に、本実施形態のハーフセル及びSOFC用単セルの製造方法について説明する。アノード機能層、電解質層及びカソードは、それぞれ、これらを構成する原料の粉体にバインダー及び溶剤を添加し、さらに必要に応じて分散剤、可塑剤、潤滑剤及び消泡剤等を添加してスラリー又はペーストを調製し、このスラリー又はペーストを乾燥させてグリーンシート又はグリーン層を形成し、これを焼成することによって得ることができる。アノード機能層、電解質層及びカソードを作製するために調製されるスラリー又はペーストのバインダー及び溶剤としては、従来の製造方法で公知となっているバインダー及び溶剤の中から適宜選択できる。本発明のハーフセル及び単セルが、アノード支持基板、バリア層等を備える場合も、アノード支持基板、バリア層等は、同様にして得ることができる。
以下にアノード支持基板、アノード機能層、電解質層、バリア層及びカソードを備えるセル(ASC)の製造方法について説明する。
ASCにおいては、まずアノードが準備される。アノード支持基板は、導電成分を構成する材料の原料粉体、電解質成分を構成する材料の原料粉体及び空孔形成剤に、バインダー及び溶剤を添加し、さらに必要に応じて分散剤、可塑剤、潤滑剤及び消泡剤等を添加してスラリーを調整し、このスラリーをシート状に形成した後に乾燥させてアノード支持基板用のグリーンシートを作製する。導電成分を構成する材料の原料粉体としては、前記金属酸化物粒子(A)が好ましい。また電解質成分を構成する材料の原料粉体として電解質材料(A)を主成分とすることが好ましい。
続いて、アノード支持基板用のグリーンシートの一方の主面に、アノード機能層を構成する導電成分を形成するための原料粉体、及び電解質成分を形成するための原料粉体、空孔形成剤、バインダー及び溶剤を添加し、さらに必要に応じて分散剤、可塑剤、潤滑剤及び消泡剤等を添加して調整したアノード機能層用ペーストを所定の厚さで塗布し、その塗膜を乾燥させることによってアノード機能層用のグリーン層を形成する。アノード機能層の導電成分を形成するための原料粉末としては、前記金属酸化物粒子(A)が好ましい。また電解質成分を形成するための原料粉末としては主成分として前記電解質材料(A)が用いられる。
アノード機能層用のペーストは、アノード機能層を構成する導電成分の原料粉末及び電解質成分の原料粉末を含み、バインダー、溶剤等が添加された混合物を所定の条件で解砕することにより得られる。この解砕の条件は、本実施形態のハーフセルのアノード機能層における上述の剥離度が低い値を示すことに関連しているものと考えられる。この解砕は例えば3本ロールミルを用いて行うことができる。
続いて、アノード機能層用のグリーン層の上に、電解質層用のペーストを所定の厚さで塗布し、その塗膜を乾燥させることによって電解質層用のグリーン層を形成する。電解質層用ペーストは、電解質成分の原料粉末、バインダーおよび溶剤等からなるが、電解質成分の原料粉末としては前記電解質材料(B)を用いることが好ましく、少なくとも第1電解質層の電解質成分の原料粉末としては前記電解質材料(B)を主成分として用いることが好ましい。また、電解質層用のグリーン層の上に、バリア層用のペーストを所定の厚さで塗布し、その塗膜を乾燥させることによってバリア層用のグリーン層を形成する。
続いて、アノード機能層のグリーン層、電解質層のグリーン層及びバリア層のグリーン層が形成されたアノード支持基板のグリーンシートを焼成することにより、本実施形態のハーフセルが得られる。焼成温度は1000〜1700℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは1200〜1500℃の範囲である。
なお上述したように、本発明にかかるハーフセルに好適なアノード機能層は、上述したアノード機能層用のペーストを調製する工程において電解質成分の原料粉体として、電解質材料(A)を用いることにより得られる。電解質材料(A)における、YSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)の含有割合、配合比率、YSZ粒子(A)およびScSZ粒子(A)の好ましい組成等の好適な態様は上述したとおりである。アノード機能層がアノード支持基板を兼ねる場合も同様である。
また上述したように、本発明にかかるハーフセルに好適な電解質層は、上述した電解質層用のペーストを調製する工程において電解質成分の原料粉末として、電解質材料(B)を用いることにより得られるものが好ましい。電解質材料(B)における、ScSZ粒子(B)の含有割合、ScSZ粒子(B)の好ましい組成等の好適な態様は上述したとおりである。
上述のようにして得られたハーフセルのバリア層上にカソード層用のペーストを塗布して、この塗膜を乾燥させることによりカソード用のグリーン層を形成する。その後、カソード層用のグリーン層が形成されたハーフセルを焼成することにより、本実施形態のSOFC用単セルが得られる。
上述の実施形態ではASCについて説明したが、本発明はESCとして実施することもできる。この場合、ESCのハーフセル及びESCは例えば以下の方法により製造するとよい。まず、電解質層用のスラリーを調製し、これをシート状に成形し乾燥させることで電解質層用のグリーンシートを作製する。この電解質層用のグリーンシートの一方の主面にアノード用のペーストを塗布し、この塗膜を乾燥させてアノード用のグリーン層を形成する。また、必要に応じて電解質層用のグリーンシートの他方の主面にバリア層用のペーストを塗布してこの塗膜を乾燥させてバリア層用のグリーン層を形成する。アノード用のグリーン層及びバリア層用のグリーン層が形成された電解質層用のグリーンシートを焼成することにより、ESCのハーフセルを得ることができる。また、このESCのハーフセルのバリア層上にカソード用のペーストを塗布し、この塗膜を乾燥させてカソード用のグリーン層を形成し、これを焼成することによりESCである単セルを得ることができる。
次に、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例に関するものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例の評価方法について説明する。
<発電性能評価試験>
まず発電性能評価試験について説明する。SOFCセルのアノードに100mL/分で窒素を、カソードに100mL/分で空気を供給しつつ、100℃/時間の速度で測定温度(750℃)まで昇温した。昇温後、アノード及びカソードの出口側のガスについて、流量計で流量を測定し、漏れが無いことを確認した。次いで、6mL/分の水素、194mL/分の窒素の加湿した混合ガスをアノードへ、400mL/分の空気をカソードへ供給した。10分以上経過後に、起電力が発生し漏れが無いことを再度確認した後、加湿水素(水蒸気:18体積%)を200mL/分の流量でアノードへ供給した。起電力が安定してから、電流密度を0〜0.4A/cm2まで掃引して発電性能を測定した。電流密度が0.36A/cm2のときの出力密度を求めた。
まず発電性能評価試験について説明する。SOFCセルのアノードに100mL/分で窒素を、カソードに100mL/分で空気を供給しつつ、100℃/時間の速度で測定温度(750℃)まで昇温した。昇温後、アノード及びカソードの出口側のガスについて、流量計で流量を測定し、漏れが無いことを確認した。次いで、6mL/分の水素、194mL/分の窒素の加湿した混合ガスをアノードへ、400mL/分の空気をカソードへ供給した。10分以上経過後に、起電力が発生し漏れが無いことを再度確認した後、加湿水素(水蒸気:18体積%)を200mL/分の流量でアノードへ供給した。起電力が安定してから、電流密度を0〜0.4A/cm2まで掃引して発電性能を測定した。電流密度が0.36A/cm2のときの出力密度を求めた。
<剥離度>
剥離度の測定は、以下で説明する水素還元処理後の実施例及び比較例のハーフセルの、アノード支持基板、アノード機能層、電解質層の積層方向に沿った断面をSEMで観察することによって実施した。水素還元処理は、実施例及び比較例のハーフセルを、H2とN2との体積比が1:9、大気圧(気圧1atm)の混合気体の雰囲気にあり、温度750℃である電気炉(光洋サーモシステム社製、KTF045N)の内部に4時間静置することにより、実施した。これにより、アノード機能層の導電成分である金属酸化物を還元した。
剥離度の測定は、以下で説明する水素還元処理後の実施例及び比較例のハーフセルの、アノード支持基板、アノード機能層、電解質層の積層方向に沿った断面をSEMで観察することによって実施した。水素還元処理は、実施例及び比較例のハーフセルを、H2とN2との体積比が1:9、大気圧(気圧1atm)の混合気体の雰囲気にあり、温度750℃である電気炉(光洋サーモシステム社製、KTF045N)の内部に4時間静置することにより、実施した。これにより、アノード機能層の導電成分である金属酸化物を還元した。
水素還元処理したハーフセルの断面をSEMにより2万倍の倍率で撮影した。撮影した画像において、アノード機能層でみられる導電成分の粒体に注目し、画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)を用いて画像解析を行った。まず、撮影画像において任意に選んだ7個のアノード機能層における導電成分のグレインの周長の総和Laを求めた。ここで、導電成分の粒体の周長からは、空孔と接している部分の長さを除いた。次に、その7個の導電成分のグレインの周長のうち、アノード機能層の電解質成分のグレインと接していない部分の長さの総和Lbを求めた。そして、以下の式により、アノード機能層における導電成分の電解質成分に対する剥離度を算出した。
アノード機能層における導電成分の剥離度=(Lb/La)×100
アノード機能層における導電成分の剥離度=(Lb/La)×100
<界面剥離度>
上記の水素還元処理をしたハーフセルをガラスカッターによって切断し、その断面をSEMにより2万倍の倍率で撮影した。撮影した画像において、電解質層のアノード機能層との界面にみられる導電成分のグレインに注目し、画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)を用いて画像解析を行った。アノード機能層の中の導電成分のうち電解質層のアノード機能層との界面に面している任意の7個の導電成分のグレインについて、電解質層のアノード機能層との界面に面している周長の総和Naを求めた。次に、この導電成分のグレインの電解質層のアノード機能層との界面に面している部分のうち、電解質層の電解質成分に接していない部分の長さの総和Nbを求めた。そして以下の式により、電解質層とアノード機能層との界面における、アノード機能層の導電成分の電解質層の電解質成分に対する界面剥離度を算出した。
アノード機能層の導電成分の電解質層との界面剥離度[%]=(Nb/Na)×100
上記の水素還元処理をしたハーフセルをガラスカッターによって切断し、その断面をSEMにより2万倍の倍率で撮影した。撮影した画像において、電解質層のアノード機能層との界面にみられる導電成分のグレインに注目し、画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)を用いて画像解析を行った。アノード機能層の中の導電成分のうち電解質層のアノード機能層との界面に面している任意の7個の導電成分のグレインについて、電解質層のアノード機能層との界面に面している周長の総和Naを求めた。次に、この導電成分のグレインの電解質層のアノード機能層との界面に面している部分のうち、電解質層の電解質成分に接していない部分の長さの総和Nbを求めた。そして以下の式により、電解質層とアノード機能層との界面における、アノード機能層の導電成分の電解質層の電解質成分に対する界面剥離度を算出した。
アノード機能層の導電成分の電解質層との界面剥離度[%]=(Nb/Na)×100
<凝集度>
上記の750℃での発電性能評価試験の後に、水素6mL/分、窒素を194mL/分の混合ガスをアノードへ供給しながら常温まで降温を行うことによって、アノード機能層の金属ニッケルが酸化されずに金属状態を常温においても維持したサンプルを得た。この各サンプルをガラスカッターによって切断し、断面観察用サンプルを作製した。この断面観察用サンプルの断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−7600F)を用いて撮影した。
アノード機能層断面をSEMによって2万倍の倍率で撮影する。この撮影画像を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)で画像解析し、上記と同様に、導電成分の各グレインの粒界の長さ、つまり周長Lnを求める。次に、導電成分のグレイン画像を円と仮定して、各周長からグレインの円相当直径を求め、各円相当直径の平均値(個数基準の平均値)をグレインの平均粒径R50として算出する。また、アノード機能層の導電成分の原料粉末をレーザー回折法に測定して得た平均粒径をD50(体積基準)とする。アノード機能層における導電成分の凝集度は以下の式で定義される。
アノード機能層における導電成分の凝集度=R50/D50
上記の750℃での発電性能評価試験の後に、水素6mL/分、窒素を194mL/分の混合ガスをアノードへ供給しながら常温まで降温を行うことによって、アノード機能層の金属ニッケルが酸化されずに金属状態を常温においても維持したサンプルを得た。この各サンプルをガラスカッターによって切断し、断面観察用サンプルを作製した。この断面観察用サンプルの断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−7600F)を用いて撮影した。
アノード機能層断面をSEMによって2万倍の倍率で撮影する。この撮影画像を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製、Image−Pro)で画像解析し、上記と同様に、導電成分の各グレインの粒界の長さ、つまり周長Lnを求める。次に、導電成分のグレイン画像を円と仮定して、各周長からグレインの円相当直径を求め、各円相当直径の平均値(個数基準の平均値)をグレインの平均粒径R50として算出する。また、アノード機能層の導電成分の原料粉末をレーザー回折法に測定して得た平均粒径をD50(体積基準)とする。アノード機能層における導電成分の凝集度は以下の式で定義される。
アノード機能層における導電成分の凝集度=R50/D50
<実施例1>
(アノード支持基板グリーンシートの作製)
導電成分である酸化ニッケル粉末(正同化学社製)60質量部、電解質成分である3mol%イットリア安定化ジルコニアの粉末(3YSZ、東ソー社製、商品名:「TZ3Y」)40質量部、空孔形成剤である市販のカーボンブラック(SECカーボン社製)10質量部、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8℃、固形分濃度:50質量部)30質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート2質量部及び分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比=3/2)の混合溶剤80質量部を、ボールミルにより混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、乾燥後の厚さが300μmのアノード支持基板グリーンシートを作製した。
(アノード支持基板グリーンシートの作製)
導電成分である酸化ニッケル粉末(正同化学社製)60質量部、電解質成分である3mol%イットリア安定化ジルコニアの粉末(3YSZ、東ソー社製、商品名:「TZ3Y」)40質量部、空孔形成剤である市販のカーボンブラック(SECカーボン社製)10質量部、メタクリレート系共重合体からなるバインダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8℃、固形分濃度:50質量部)30質量部、可塑剤としてのジブチルフタレート2質量部及び分散媒としてトルエン/イソプロピルアルコール(質量比=3/2)の混合溶剤80質量部を、ボールミルにより混合して、スラリーを調製した。得られたスラリーを使用し、ドクターブレード法によりシート成形し、70℃で5時間乾燥させて、乾燥後の厚さが300μmのアノード支持基板グリーンシートを作製した。
(アノード機能層用ペーストの作製)
導電成分である酸化ニッケル粉末(キシダ化学社製)55質量部、電解質成分である10mol%イットリア安定化ジルコニアの粉末(10YSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「HSY−10」、)40.5質量部と10mol%スカンジア1mol%セリア安定化ジルコニアの粉末(10Sc1CeSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、)4.5質量部の合計100質量部に対して、気孔形成剤である市販のカーボンブラック(SECカーボン社製)3質量部、溶剤としてα−テルピネオール56質量部、バインダーとしてのエチルセルロース14質量部、可塑剤としてジブチルフタレート5質量部及び分散剤としての市販のソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤8質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」)を用いて解砕し、アノード機能層用ペーストを作製した。
導電成分である酸化ニッケル粉末(キシダ化学社製)55質量部、電解質成分である10mol%イットリア安定化ジルコニアの粉末(10YSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「HSY−10」、)40.5質量部と10mol%スカンジア1mol%セリア安定化ジルコニアの粉末(10Sc1CeSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、)4.5質量部の合計100質量部に対して、気孔形成剤である市販のカーボンブラック(SECカーボン社製)3質量部、溶剤としてα−テルピネオール56質量部、バインダーとしてのエチルセルロース14質量部、可塑剤としてジブチルフタレート5質量部及び分散剤としての市販のソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤8質量部を、乳鉢を用いて混合した後、3本ロールミル(EXAKT technologies社製、型式「M−80S」)を用いて解砕し、アノード機能層用ペーストを作製した。
(電解質層用ペーストの作製)
8mol%スカンジア安定化ジルコニアの粉末(8ScSZ、第一稀元素社製)100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース10質量部、溶剤としてα−テルピネオール70質量部、可塑剤としてジブチルフタレート6質量部及び分散剤としての市販のソルビタン酸エステル系界面活性剤10質量部を、乳鉢を用いて混合した後、上記と同様にして解砕し、電解質層用ペーストを作製した。
8mol%スカンジア安定化ジルコニアの粉末(8ScSZ、第一稀元素社製)100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース10質量部、溶剤としてα−テルピネオール70質量部、可塑剤としてジブチルフタレート6質量部及び分散剤としての市販のソルビタン酸エステル系界面活性剤10質量部を、乳鉢を用いて混合した後、上記と同様にして解砕し、電解質層用ペーストを作製した。
(バリア層用ペーストの作製)
20mol%ガトリアドープセリア(GDC、セイミケミカル社製)100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース10質量部、溶剤としてα−テルピネオール70質量部、可塑剤としてジブチルフタレート10質量部及び分散剤として市販のソルビタン酸エステル系界面活性剤20質量部を、乳鉢を用いて混合した後、上記と同様にして解砕し、バリア層用ペーストを作製した。
20mol%ガトリアドープセリア(GDC、セイミケミカル社製)100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース10質量部、溶剤としてα−テルピネオール70質量部、可塑剤としてジブチルフタレート10質量部及び分散剤として市販のソルビタン酸エステル系界面活性剤20質量部を、乳鉢を用いて混合した後、上記と同様にして解砕し、バリア層用ペーストを作製した。
(アノード機能層用グリーン層の形成)
アノード機能層用ペーストを、上記のアノード支持基板グリーンシートの上に焼成後の厚さが20μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、アノード機能層用グリーン層を形成した。
アノード機能層用ペーストを、上記のアノード支持基板グリーンシートの上に焼成後の厚さが20μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、アノード機能層用グリーン層を形成した。
(電解質層用グリーン層の形成)
電解質層用ペーストを、上記で得たアノード機能層用グリーン層の上に焼成後の厚さが15μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、電解質層用グリーン層を形成した。
電解質層用ペーストを、上記で得たアノード機能層用グリーン層の上に焼成後の厚さが15μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、電解質層用グリーン層を形成した。
(バリア層用グリーン層の形成)
バリア層用ペーストを、上記で得た電解質層用グリーン層の上に焼成後の厚さが8μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、バリア層用グリーン層を形成した。
バリア層用ペーストを、上記で得た電解質層用グリーン層の上に焼成後の厚さが8μmとなるようにスクリーン印刷した。これを100℃で30分間乾燥させ、バリア層用グリーン層を形成した。
(ハーフセル焼成)
バリア層用グリーン層の乾燥後、バリア層用グリーン層、電解質層用グリーン層及びアノード機能層用グリーン層が形成されたアノード支持基板グリーンシートを、正方形状に打ち抜いた。その後、1300℃で2時間焼成して実施例1に係るハーフセルを得た。焼成後のハーフセルは6cm×6cmの正方形であった。
バリア層用グリーン層の乾燥後、バリア層用グリーン層、電解質層用グリーン層及びアノード機能層用グリーン層が形成されたアノード支持基板グリーンシートを、正方形状に打ち抜いた。その後、1300℃で2時間焼成して実施例1に係るハーフセルを得た。焼成後のハーフセルは6cm×6cmの正方形であった。
(カソード用のペーストの調製)
La0.8Sr0.2MnO3の粉末(セイミケミカル社製)80質量部、20mol%ガドリニアドープセリア(セイミケミカル社製)を20質量部の合計100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース3質量部及び溶剤としてα−テルピネオール30質量部を、乳鉢を用いて混合した。その後、上記と同様にして混練し、カソード用ペーストを得た。
La0.8Sr0.2MnO3の粉末(セイミケミカル社製)80質量部、20mol%ガドリニアドープセリア(セイミケミカル社製)を20質量部の合計100質量部に対して、バインダーとしてエチルセルロース3質量部及び溶剤としてα−テルピネオール30質量部を、乳鉢を用いて混合した。その後、上記と同様にして混練し、カソード用ペーストを得た。
(カソードの形成)
上述のハーフセルの電解質層の表面に、スクリーン印刷により、カソード用ペーストを1cm×1cmの正方形に塗布した。これを90℃で1時間乾燥させてカソード用グリーン層を形成した。その後、1100℃で2時間焼成して実施例1に係るSOFCセルを得た。焼成後のカソードの厚さは20μmであった。
上述のハーフセルの電解質層の表面に、スクリーン印刷により、カソード用ペーストを1cm×1cmの正方形に塗布した。これを90℃で1時間乾燥させてカソード用グリーン層を形成した。その後、1100℃で2時間焼成して実施例1に係るSOFCセルを得た。焼成後のカソードの厚さは20μmであった。
<実施例2>
アノード機能層の10YSZの代わりに8mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(8YSZ)33.8質量部と、10Sc1CeSZの代わりに11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ)11.2質量部を使用し、電解質層の8ScSZの代わり9mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(9ScSZ)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るハーフセル及び実施例2に係る単セルを作成した。
アノード機能層の10YSZの代わりに8mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(8YSZ)33.8質量部と、10Sc1CeSZの代わりに11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ)11.2質量部を使用し、電解質層の8ScSZの代わり9mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(9ScSZ)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るハーフセル及び実施例2に係る単セルを作成した。
<実施例3>
アノード機能層の10YSZの代わりに9mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(9YSZ)22.5質量部と、10Sc1CeSZの代わりに6mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(6ScSZ)22.5質量部を使用し、電解質層の8ScSZの代わり11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るハーフセル及び実施例3に係る単セルを作成した。
アノード機能層の10YSZの代わりに9mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(9YSZ)22.5質量部と、10Sc1CeSZの代わりに6mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(6ScSZ)22.5質量部を使用し、電解質層の8ScSZの代わり11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るハーフセル及び実施例3に係る単セルを作成した。
<比較例1>
実施例1のアノード機能層の電解質成分及び実施例1の電解質層の材料に11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「11ScSZ」)のみを使用した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係るハーフセル及び比較例1に係る単セルを作製した。
実施例1のアノード機能層の電解質成分及び実施例1の電解質層の材料に11mol%スカンジア安定化ジルコニア粉末(11ScSZ、第一稀元素化学工業社製、商品名「11ScSZ」)のみを使用した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係るハーフセル及び比較例1に係る単セルを作製した。
実施例1〜3に係る単セル及び比較例1に係る単セルについて発電性能評価試験を行った。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜3に係る単セルの電流密度が0.36A/cm2のときの出力密度は、0.67W/cm2以上得られているが、比較例1に係る単セルの出力密度は、0.65W/cm2以下であり、本発明の単セルは発電性能が高かった。
表1に、実施例1〜3に係るハーフセル及び比較例1に係るハーフセルにおいて、アノード機能層における導電成分の電解質成分に対する剥離度又は電解質層のアノード機能層との界面における導電成分の電解質成分に対する界面剥離度の算出結果を表1に示す。表1において、剥離度は、アノード機能層における導電成分の電解質成分に対する剥離度を意味する。また、界面剥離度は、電解質層とアノード機能層との界面における、アノード機能層の導電成分の電解質層の電解質成分に対する界面剥離度を意味する。
さらに、実施例1〜3に係るハーフセル及び比較例1に係るハーフセルにおいて、アノード機能層における導電成分の凝集度の算出結果も表1に合わせて示す。
実施例1〜3に係るハーフセルのアノード機能層の導電成分の電解質成分に対する剥離度及び電解質層とアノード機能層との界面におけるアノード機能層の導電成分の電解質層の電解質成分に対する界面剥離度は16%以下であったが、比較例1に係るハーフセルでは、剥離度及び界面剥離度は18%を超えていた。
また、実施例1〜3に係るハーフセルのアノード機能層の導電成分の凝集度は30以下であったが、比較例1に係るハーフセルでは、凝集度は30を超えていた。
また、実施例1〜3に係るハーフセルのアノード機能層の導電成分の凝集度は30以下であったが、比較例1に係るハーフセルでは、凝集度は30を超えていた。
8YSZ、9YSZ、及び10YSZの酸素イオン伝導度は11ScSZの酸素イオン伝導度よりも低いにもかかわらず、実施例1〜3に係る単セルは、比較例1に係る単セルの発電性能を上回る発電性能を示した。これにより、実施例1〜3において、アノード機能層の電解質成分と導電成分との剥離の抑制、及び電解質層のアノード機能層との界面における導電成分の電解質層に対する剥離の抑制が、比較例1よりも高い程度で実現されていることが示唆された。実際に、表1における実施例1〜3に係るハーフセルの剥離度は15%以下、界面剥離度は16%以下で、凝集度も30以下であり、比較例1に係るハーフセルの剥離度、界面剥離度及び凝集度よりも低かった。
Claims (3)
- アノード機能層と、アノード機能層の一方の主面に積層された電解質層とを備えた固体酸化物形燃料電池用ハーフセルであって、
前記アノード機能層が、導電成分と電解質成分とを含み、
導電成分が、還元性雰囲気で導電性金属に変化する金属酸化物を含み、
電解質成分が、イットリア含有量が3mol%以上12mol%以下であるイットリア安定化ジルコニア粒子およびスカンジアの含有量が4mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニア粒子を含む電解質材料より得られる安定化ジルコニアを主成分として含むとともに、
前記電解質層が、スカンジアの含有量が8mol%以上12mol%以下であるスカンジア安定化ジルコニアを主成分として含むものであることを特徴とする、固体酸化物形燃料電池用ハーフセル。 - 請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用ハーフセルと、
前記電解質層の前記アノード機能層と反対側に積層されたカソードと、
を備えた、固体酸化物形燃料電池用単セル。 - 前記カソードは、ペロブスカイト構造の複合酸化物であって、その主成分がマンガナイト、コバルタイトおよびフェライトからなる群から選択される少なくとも1つである請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池用単セル。
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JP2014199451A JP2016072047A (ja) | 2014-09-29 | 2014-09-29 | 固体酸化物形燃料電池用ハーフセル及び固体酸化物形燃料電池用単セル |
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- 2014-09-29 JP JP2014199451A patent/JP2016072047A/ja active Pending
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