屈折率が1.50以下であり、全光線透過率が80%以上である樹脂層(a)に含まれる樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及び、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、樹脂層(a)は好ましくは、ポリ(メタ)アクリレートを含むポリ(メタ)アクリレート層である。
屈折率が1.55以上であり、固有複屈折が0.07以上であり、全光線透過率が80%以上樹脂層(b)に含まれる樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド及び、ポリイミド等が挙げられ、樹脂層(b)は好ましくは、ポリカーボネートを含むポリカーボネート層である。
[樹脂層(a)]
樹脂層(a)は、好ましくは、さらにゴム弾性体粒子を含む。このゴム弾性体粒子は、ゴム弾性を示す層(以下、ゴム弾性体層ということがある)を含む粒子である。このゴム弾性体粒子は、ゴム弾性を示す層のみからなる粒子であってもよいし、ゴム弾性を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子であってもよい。ゴム弾性を示す層はゴム弾性重合体を含む。ゴム弾性重合体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体などが挙げられる。中でも、本発明の位相差フィルム(以下、本フィルムということがある)の耐光性及び透明性の観点から、アクリル系弾性重合体が好ましく用いられる。
アクリル系弾性重合体は、アクリル酸アルキルを主体とする重合体で構成することができる。これは、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50質量%以上とそれ以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。アクリル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が4〜8のものが用いられる。アクリル酸アルキル以外の単量体を共重合させる場合、その例としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチルのようなメタクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルなどの単官能単量体、また、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、マレイン酸ジアリルのような二塩基酸のジアルケニルエステル、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステルなどの多官能単量体が挙げられる。
アクリル系弾性重合体を含むゴム弾性体粒子は、アクリル系ゴム弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であることが好ましい。具体的には、アクリル系ゴム弾性重合体の層の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する2層構造のもの、及び、アクリル系ゴム弾性重合体の層の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有し、さらに内側にもメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造のものが挙げられる。メタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層は、メタアクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、メタアクリル酸アルキル50質量%以上とそれ以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。メタアクリル酸アルキルとしては通常、そのアルキル基の炭素数が1〜4のものが用いられ、好ましくはメタクリル酸メチルである。メタアクリル酸アルキル以外の単量体を共重合させる場合、その例としては、アクリル酸メチルやアクリル酸エチルのようなアクリル酸アルキル、スチレンやアルキルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリルなどが挙げられる。このような多層構造のゴム弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報に記載の方法により、製造することができる。
ゴム弾性体粒子の数平均粒径は、10〜350nmの範囲にあることが好ましい。これにより、フィルム表面にわずかな凹凸が形成されるため、すべり性を高めることができる。このゴム弾性体粒子の平均粒径は、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、またより好ましくは300nm以下、さらに好ましくは280nm以下である。
ゴム弾性体粒子の数平均粒径は、次のようにして測定される。すなわち、このようなゴム弾性体粒子を樹脂に混合して樹脂層(a)を形成し、その断面を酸化ルテニウムの水溶液で染色すると、ゴム弾性体粒子が着色されてほぼ円形状に観察される。そこで、このようにして染色された断面から、ミクロトームなどを用いて薄片を調製し、これを電子顕微鏡で観察する。そして、無作為に100個の染色されたゴム弾性体粒子を抽出し、各々の径を測定した後、その数平均値を数平均粒径とする。
ただし、メタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有するゴム弾性体粒子の数平均粒径は、ゴム弾性重合体層の数平均粒径をもってゴム弾性体粒子の数平均粒径とする。例えば、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体層であり、その中にアクリル系ゴム弾性重合体が包み込まれているゴム弾性体粒子を用いた場合、それをポリ(メタ)アクリレートに混合すると、該メタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体層がポリ(メタ)アクリレートと混和する。そのため、その断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察すると、そのゴム弾性体粒子が、最外層を除いた状態の粒子として観察される。具体的には、内層がアクリル系ゴム弾性重合体であり、外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である2層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、内層のアクリル系ゴム弾性重合体部分が染色されて単層構造の粒子として観察され、また、最内層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体であり、中間層がアクリル系ゴム弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする硬質の重合体である3層構造のゴム弾性体粒子を用いた場合には、最内層の粒子中心部分が染色されず、中間層のアクリル系ゴム弾性重合体部分のみが染色された2層構造の粒子として観察されることになる。
ゴム弾性体粒子の含有量は、樹脂層(a)の全体量に対して、好ましくは3質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上50質量%以下である。ゴム弾性体粒子が60質量%より多くなると、樹脂層(a)の寸法変化が大きくなり、耐熱性が悪くなる。一方、ゴム弾性体粒子が3質量%より少ないと、樹脂層(a)の耐熱性は良好であるものの、本フィルムを製造する際の巻き取り性が悪く、生産性が低下することがある。
なお、本発明においては、ゴム弾性体粒子として、ゴム弾性を示す層とともに他の層を有する多層構造の粒子を用いた場合は、ゴム弾性を示す層とその内側の層からなる部分の質量をゴム弾性体粒子の質量とする。例えば、アクリル系ゴム弾性重合体の層の外側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有し、内側にメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層を有する3層構造の弾性体粒子の場合は、アクリル系ゴム弾性重合体層と内側のメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層との合計質量を、ゴム弾性体粒子の質量とする。このようなゴム弾性体粒子をアセトンに溶解させると、中間層のアクリル系ゴム弾性重合体層と内側のメタクリル酸アルキルを主体とする硬質の重合体層とは、不溶分として残るので、ゴム弾性を示す層とその内側の層からなる部分の質量は、容易に求めることができる。
樹脂層(a)に含まれるポリ(メタ)アクリレートは、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル50質量%以上とこれ以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。
メタクリル樹脂の好ましい単量体組成は、全単量体を基準に、メタクリル酸エステルが50〜100質量%、アクリル酸アルキルが0〜50質量%、これら以外の単量体が0〜49質量%であり、より好ましくは、メタクリル酸エステルが50〜99.9質量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50質量%、これら以外の単量体が0〜49質量%である。
メタクリル酸エステルは、好ましくはメタクリル酸アルキルである。メタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル及び、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は通常1〜8であり、好ましくは1〜4である。なかでもメタクリル酸メチルが特に好ましい。
アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及び、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、アクリル酸アルキルのアルキル基の炭素数は通常1〜8であり、好ましくは1〜4である。
メタクリル酸エステル及びアクリル酸アルキル以外の単量体は、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能単量体であってもよいし、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を2個以上有する多官能単量体であってもよく、好ましくは単官能単量体である。単官能単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン系単量体、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化アルケニル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸並びに、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド等が挙げられる。また、多官能単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル及びケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のポリアルケニルエステル、並びに、ジビニルベンゼン等の芳香族ポリアルケニル化合物等が挙げられる。
ここに例示したメタクリル酸エステル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂層(a)は、滑剤を含んでもよい。樹脂層(a)が滑剤を含むことで、本フィルムをロール状に巻いたときの巻き締まりを防ぐことができ、それにより巻いた状態での荷姿が改善される。滑剤は、本フィルム表面のすべり性を向上させる機能を有するものであればよい。そのような機能を有する化合物としては、脂肪酸系化合物、アクリル系化合物、エステル系化合物等が挙げられる。好ましくは炭素数16〜20の脂肪酸系化合物であり、中でもステアリン酸系化合物が好ましい。
ステアリン酸系化合物としては、ステアリン酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸モノグリセライド等のステアリン酸エステル;ステアリン酸アミド;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等の12−ヒドロキシステアリン酸とその金属塩等が挙げられる。好ましくはステアリン酸である。
樹脂層(a)における滑剤の含有量は、ポリ(メタ)アクリレートとゴム弾性体粒子との合計100質量部に対して、通常0.15質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以下であり、さらに好ましくは0.07質量部以下である。滑剤の含有量が多すぎると、滑剤が樹脂層(a)からブリードアウトしたり、本フィルムの透明性を低下させたりすることがある。
また、樹脂層(a)は、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤及び、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等が挙げられる。具体例を挙げると、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン及び、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン等がある。これらのなかでも、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕が好ましい。紫外線吸収剤の含有量は、本フィルムの波長370nm以下における透過率が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下となる範囲で選択する。
樹脂層(a)は通常、樹脂を含む樹脂組成物から形成される。樹脂とゴム弾性体粒子とを含む樹脂組成物の製造方法としては、ゴム弾性体粒子の存在下に樹脂の原料となる単量体を重合することで、樹脂とゴム弾性体粒子とが混合された組成物を得る方法、及び、ゴム弾性体粒子と樹脂とを溶融混練することで樹脂とゴム弾性体粒子とが混合された組成物を得る方法等が挙げられる。滑剤及びその他の添加剤は任意の時点で混合すればよい。
[樹脂層(b)]
好ましい樹脂層(b)が含むポリカーボネートは、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させる方法、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させる方法、又は、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させる方法等により得ることができる。
二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAということがある)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル及び、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
好ましい二価フェノールは、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及びα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンである。
より好ましくは、ビスフェノールAの単独使用、又は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン及びα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群から選ばれる少なくとも1種との併用である。
カルボニル化剤としては、ホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、及び、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、樹脂層(b)は、滑剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤及び、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。これら添加剤の好ましい種類及び含有量は、樹脂層(a)における好ましい態様と同じである。
樹脂層(b)は通常、樹脂を含む樹脂組成物から形成される。当該樹脂組成物は、樹脂と、任意に滑剤及びその他の添加剤とを任意の方法で混合することで得られる。
[本発明の位相差フィルム]
本フィルムは、好ましくは、式(1)で表される光学特性を有する。本フィルムは、より好ましくは式(2)で表される光学特性を有する位相差フィルム(以下、1/4波長板ということがある)、又は、式(3)で表される光学特性を有する位相差フィルム(以下、1/2波長板ということがある)であり、特に好ましくは1/4波長板である。
70<Re(590)<320 (1)
70<Re(590)<160 (2)
200<Re(590)<320 (3)
Re(590)は波長590nmの光に対する面内位相差値を表し、式(I)で定義される。
Re(590) =(nx−ny)×d (I)
nxはフィルムの面内遅相軸方向の屈折率を表す。nyは面内進相軸方向(遅相軸と面内で直交する方向)の屈折率を表す。dは厚さを表す。
本フィルムの位相差は、樹脂層(b)及び樹脂層(a)の延伸倍率を調整することで制御することができる。
本フィルムは、樹脂層(b)を2層以上有してもよく、樹脂層(a)を2層以上有してもよいが、少なくとも一つの樹脂層(a)は樹脂層(b)の外側に位置する。本フィルムを表示装置の表示面に備えた場合、光が出射する側の面を樹脂層(a)にすることによって、本フィルムから光が出射する際の屈折率が低くなり、光線透過率が高くなるため、表示装置の輝度が低下し難い。本フィルムは、好ましくは、樹脂層(b)と、樹脂層(a)とをそれぞれ1層積層した2層構成の位相差フィルム(以下、位相差フィルムAということがある)、又は、樹脂層(a)と、樹脂層(b)と、樹脂層(a)と、をこの順に積層した3層構成の位相差フィルム(以下、位相差フィルムBということがある)であり、より好ましくは、位相差フィルムBである。他の部材と貼合される側の面が樹脂層(a)であると、偏光子等の他の部材との接着性に優れる傾向がある。
本フィルムは、所望の光学特性又はその他の特徴を付与するために、最も視認側に存在する樹脂層(a)の表面上に表面処理層(コーティング層)を有することができる。表面処理層としては、表面への外光の映り込みを防止するための反射防止層、表面のぎらつきを防止するための低防眩層、液晶モジュールの組立工程における表面の擦り傷防止を目的としたハードコート層、表面の撥水性向上や汚れ防止のための防汚層等が挙げられる。また、帯電防止処理などの機能性表面処理することもできる。表面処理層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
位相差フィルムB等の樹脂層(a)を複数有する本フィルムは、ゴム弾性体粒子や前記した添加剤の各層における含有量を、それぞれの層において異ならせてもよい。例えば、ゴム弾性体粒子の含有量を少なくすると、耐熱性が上がり、寸法変化を小さくすることができる点で有利である。また、ゴム弾性体粒子の含有量を多くすると、耐衝撃性や巻き取り性、偏光子等の他の部材との接着性を向上させる点で有利である。
本フィルムの厚さは、通常3〜100μmであり、好ましくは5〜80μmであり、より好ましくは10〜60μmである。
樹脂層(a)の厚さは、通常1〜70μmであり、好ましくは2〜40μmである。樹脂層(b)の厚さは、通常1〜97μmであり、好ましくは2〜30μmである。
本フィルムの合計膜厚を基準とした、樹脂層(b)の厚さの割合は、好ましくは30〜97%である。本フィルムの合計膜厚に占める樹脂層(b)の膜厚の割合は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは55%以上である。また好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下である。本フィルムの合計膜厚に占める樹脂層(b)の膜厚の割合が少なすぎると、本フィルムの弾性率が低下して、例えば楕円偏光板化した場合の耐久性が悪くなる傾向がある。一方、本フィルムの合計膜厚に占める樹脂層(b)の膜厚の割合が多すぎると、フィルムの表面硬度が不足する傾向がある。本フィルムが、複数の樹脂層(b)を有する場合は、それらの合計が上記の範囲であればよく、また、それぞれの層の厚さは同じでもよいし、異なってもよい。
本フィルムの合計体積を基準とした、樹脂層(b)の体積率は、好ましくは30〜97%である。本フィルムの合計体積に占める樹脂層(b)の体積の割合は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは55%以上である。また好ましくは95%以下である。本フィルムの合計体積に占める樹脂層(b)の体積の割合が少なすぎると、本フィルムの弾性率が低下して、例えば楕円偏光板化した場合の耐久性が悪くなる傾向がある。一方、本フィルムの合計体積に占める樹脂層(b)の体積の割合が多すぎると、フィルムの表面硬度が不足する傾向がある。本フィルムが、複数の樹脂層(b)を有する場合は、それらの合計が上記の範囲であればよく、また、それぞれの層の体積は同じでもよいし、異なってもよい。
本フィルムの合計膜厚を基準とした、樹脂層(a)の厚さの割合は、好ましくは3〜70%である。本フィルムの合計膜厚に占める樹脂層(a)の膜厚の割合は、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上である。また好ましくは60%以下であり、より好ましくは45%以下である。本フィルムが、複数の樹脂層(a)を有する場合は、それらの合計が上記の範囲であればよく、また、それぞれの層の厚さは同じでもよいし、異なってもよい。本フィルムが位相差フィルムBである場合、位相差フィルムBのカールを抑制する観点から、2つの樹脂層(a)の厚さは同じであるのが好ましい。
本フィルムの合計体積を基準とした、樹脂層(a)の体積率は、好ましくは3〜70%である。本フィルムの合計体積に占める樹脂層(a)の体積の割合は、好ましくは5%以上である。また好ましくは60%以下であり、より好ましくは45%以下である。本フィルムが、複数の樹脂層(a)を有する場合は、それらの合計が上記の範囲であればよく、また、それぞれの層の体積は同じでもよいし、異なってもよい。本フィルムが位相差フィルムBである場合、位相差フィルムBのカールを抑制する観点から、2つの樹脂層(a)の体積は同じであるのが好ましい。
本フィルムは、100℃で10分間加熱したときのフィルムのロール長さ方向の収縮率が2.0%以下となるように成形することが好ましい。収縮率が2.0%を超えると、本フィルムと偏光板とを貼合した状態で高温に曝されたとき、偏光板の収縮が大きくなり、該偏光板に含まれる偏光子が割れることがあるため好ましくない。この収縮率は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。
本フィルムは、JIS K7105−1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って測定される内部ヘイズが5%以下となるようにするのが好ましい。内部へイズが5%を超えると、本フィルムを表示装置に組み込んだときの白輝度が低下し、画面が暗くなる。内部ヘイズは、より好ましくは3%以下である。
本フィルムは、樹脂層(b)を形成する樹脂組成物及び樹脂層(a)を形成する樹脂組成物それぞれを押出機で溶融した後に、フィードブロック法若しくはマルチマニホールド法を用いて積層する共押出成形法、又は、樹脂層(b)を押出成形法等によりフィルム化した後、このフィルムの表面に樹脂層(a)を形成する樹脂組成物を必要により溶剤に溶解してコーティングする方法等によって製造されたフィルムを、延伸することで得られる。本フィルムの好ましい製造方法は、共押出成形法によって得られたフィルムを延伸する方法である。
共押出成形法では、溶融した樹脂組成物をロールやベルトに密着させてフィルム成形を行う。このときのロールやベルトの本数や配置、材質は特に限定されないが、溶融した樹脂を2本の金属ロール間に挟んで、又は金属ロールと金属ベルトに接触させて、通過させ、ロールやベルトの表面形状を転写する方法が、フィルム表面の面精度を高め、表面処理性を向上させるうえで好ましい。あるいは、金属ロールと弾性を有する金属ロールとで溶融樹脂組成物を挟むことで、溶融樹脂組成物を両者に面で接触させ、通過させる方法は、成形時の歪みを低減させ、強度や熱収縮性の異方性を低減したフィルムを得るのに好適である。金属弾性ロールとしては、例えば、軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、溶融樹脂に接触する円筒形の金属製薄膜とを備え、これら軸ロールと金属製薄膜との間に水や油などの温度制御された流体が封入されたものや、ゴムロールの表面に金属ベルトを巻いたものが、例として挙げられる。
延伸方法としては、一軸延伸や二軸延伸等が挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向(MD)に斜交する方向等が挙げられる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。
一軸延伸は、例えば出口側の周速を大きくした2対以上のニップロールを用いて、長手方向(機械流れ方向:MD)に延伸したり、未延伸フィルムの両側端をチャックで把持して機械流れ方向に直交する方向(TD)に広げたりすることで行うことができる。未延伸フィルムの両側端をチャックで把持し、機械流れ方向に対して斜行する方向に延伸する方法が好ましい。
延伸処理による延伸倍率は、所望の位相差が得られるように選択することができる。中でも30〜500%が好ましく、より好ましくは50〜300%である。延伸倍率が30%を下回ると所望の位相差を得ることができにくく、延伸倍率が300%を上回ると、膜厚が薄くなりすぎて破断しやすくなったり、ハンドリング性が低下したりする。延伸倍率は、下記式:
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)より求められる。
二軸延伸を行う場合はMD方向とTD方向の延伸倍率のうち大きい方延伸倍率M1と小さい方の延伸倍率M2から求められるM1/M2が3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上である。3より小さいと所望の位相差を得ることができにくくなる。
延伸温度は、フィルム全体が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定され、好ましくは樹脂層(b)のガラス転移温度の−40℃から+40℃の範囲内であり、より好ましくは−25℃から+25℃の範囲内であり、さらに好ましくは−15℃から+15℃の範囲内である。
[楕円偏光板]
本フィルムを、偏光板の一方の面に貼合することで楕円偏光板が得られる。この際、本フィルムの、偏光板と貼合された面とは逆側の面が、樹脂層(a)となるようにして積層する。本フィルムを有する楕円偏光板(以下、本楕円偏光板ということがある)を表示装置の表示面に備えた場合、偏光板が貼合された面とは逆側の面を樹脂層(a)にすることによって、本楕円偏光板から光が出射するときの屈折率が低くなり、光線透過率が高くなるため、表示装置の輝度が低下し難い。また、偏光板が貼合された面とは逆側の面を樹脂層(a)にすれば、該樹脂層(a)を表示面に有する表示装置の表面硬度が十分に高くなり、表示面に傷がつき難い傾向がある。
偏光板と本フィルムとは、通常、偏光板の透過軸と本フィルムの遅相軸(光軸)とが凡そ45°となるようにして貼合する。通常45±20°の範囲である。また、偏光板の光軸と、本フィルムの光軸とを一致又は、直交させることで光学補償フィルムとして機能する光学フィルムを得ることもできる。
本フィルムと貼合する偏光板としては、保護フィルム、偏光子及び保護フィルムをこの順に有する偏光板、偏光子及び保護フィルムを有する偏光板、偏光子のみからなる偏光板等が挙げられる。好ましくは、偏光子及び保護フィルムを有する偏光板であり、好ましくは、かかる偏光板の偏光子面に本フィルムを貼合する。
本フィルムと偏光板との貼合は、通常、接着剤を用いて行われる。接着剤は、好ましくは硬化性接着剤又は感圧性接着剤であり、より好ましくは硬化性接着剤であり、さらに好ましくは、活性エネルギー線硬化性接着剤である。
位相差フィルムAと偏光板とを積層した楕円偏光板の層構成の例が、図1に断面模式図で示されている。また、位相差フィルムBと偏光板とを積層した楕円偏光板の層構成の例が、図2に断面模式図で示されている。
図1に示される楕円偏光板10は、樹脂層(b)25の片面に樹脂層(a)21を積層した本フィルム20と、偏光子30と保護フィルム40とを有する偏光板31と、が貼合されたものである。樹脂層(b)25の片面に積層されている樹脂層(a)21を、第一の樹脂層(a)と呼ぶことがある。図2に示される楕円偏光板10は、樹脂層(b)25の両面に、第一の樹脂層(a)21及び第二の樹脂層(a)22を積層した本フィルム20と、偏光子30と保護フィルム40とを有する偏光板31と、がこの順に貼合されたものである。
これらの図においては、偏光子30と本フィルム20とが、接着剤層51を介して貼合されており、偏光子30と保護フィルム40とが、接着剤層52を介して貼合されている。接着剤層は接着剤から形成されるものであり、好ましい接着剤層は、硬化性接着剤の硬化物であり、より好ましくは活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物である。
[偏光板]
楕円偏光板10を構成する偏光子30は、公知の方法に従って、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することによりその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものであることができる。こうして得られる偏光子は、上記の一軸延伸された方向に吸収軸を有するものとなる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども用いることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常 1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものではなく、溶融押出し製膜や溶液キャスト製膜等公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は特に制限されないが、例えば、10〜150μm 程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。またこれら複数の工程を支持フィルムとともに行うこともできる。
一軸延伸は、周速度の異なる離間したロール間を通すことにより行ってもよいし、熱ロールで挟むことにより行ってもよい。また、この一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、水や有機溶剤などの溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行うことができる。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常 0.01〜1質量部程度である。ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常 0.5〜20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常1×10-4〜10質量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1質量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有してもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100質量部あたり、通常2〜15質量部程度であり、好ましくは5〜12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100質量部あたり、通常 0.1〜15質量部程度であり、好ましくは5〜12質量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度である。また浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5〜20質量%であり、好ましくは8〜15質量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。一方、水分率が20質量%を超えると、偏光子の熱安定性が不足する傾向にある。
こうして得られる二色性色素が吸着配向している偏光子の厚さは、通常2〜40μm である。
[保護フィルム]
保護フィルム40は、表示装置が備える液晶セルの駆動方式により、任意のものを使用することができる。例えば、横電界(IPS)モードの液晶セルに対しては、30nm以下、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下の面内位相差値を有し、低位相差フィルムとして機能するものを用いることが好ましい。一方、垂直配向(VA)モードの液晶セルに対しては、位相差フィルムとして機能するものを用いることができる。
保護フィルム40は、セルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂等を、フィルム化したもので構成することができる。
これらの樹脂をフィルム状に成形し、延伸処理を施したものを、保護フィルムとしてもよい。このとき、延伸は、MD(流れ方向)又はTD(流れ方向と面内で直交する方向)に延伸する一軸延伸、MD及びTDの双方向に延伸する二軸延伸、MDでもTDでもない方向に延伸する斜め延伸など、いずれの方法で行ってもよい。かかる延伸操作を施すことにより、機械的強度の高い保護フィルムを得ることができる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などの原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部又は全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基のようなアシル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどからなるものが挙げられる。なかでも、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルムなどが好ましい。
オレフィン系樹脂は、例えば、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンモノマー又はノルボルネンや他のシクロペンタジエン誘導体のような環状オレフィンモノマーを、重合用触媒を用いて重合して得られる樹脂である。
鎖状オレフィンモノマーから得られるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が挙げられる。なかでも、プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、プロピレンを主体とし、それと共重合可能なコモノマーを、通常1〜20質量%の割合で、好ましくは3〜10質量%の割合で共重合させたポリプロピレン系共重合樹脂も好ましい。
プロピレンと共重合可能なコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン又は1−ヘキセンが好ましい。なかでも、透明性や延伸加工性に比較的優れることから、エチレンが好ましく用いられ、エチレンを1〜20質量%、とりわけ3〜10質量%の割合で共重合させたポリプロピレン系共重合樹脂は、好ましいものの一つである。エチレンの共重合割合を1質量%以上とすることで、透明性や延伸加工性を上げる効果が現れる。一方、その割合が20質量%を超えると、樹脂の融点が下がり、保護フィルム又は位相差フィルムに要求される耐熱性が損なわれることがある。
ポリプロピレン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、株式会社プライムポリマーから販売されている“プライムポリプロ(登録商標)”、日本ポリプロ株式会社から販売されている“ノバテック(登録商標)”及び“ウィンテック(登録商標)”、住友化学株式会社から販売されている“住友ノーブレン(登録商標)”、サンアロマー株式会社から販売されている“サンアロマー(登録商標)”などが挙げられる。
環状オレフィンモノマーを重合させてなるオレフィン系樹脂は、一般に、環状オレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、又はノルボルネン系樹脂とも称される。ここでは環状オレフィン系樹脂と称する。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンと、オレフィン類又は(メタ)アクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセン又はその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体類、又はその他の環状オレフィンモノマーを2種以上用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;前記ノルボルネン、テトラシクロドデセン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィンと、ビニル基を有する脂肪族又は芳香族化合物とを付加共重合させて得られる樹脂などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、ドイツの TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH にて生産され、日本ではポリプラスチックス株式会社から販売されている“TOPAS ”(トーパス)(登録商標)、JSR株式会社から製造・販売されている“アートン”(登録商標)、日本ゼオン株式会社から製造・販売されている“ゼオノア”(登録商標)及び“ゼオネックス(登録商標)”、三井化学株式会社から製造・販売されている“アペル”(登録商標)などが挙げられる。
前記の鎖状オレフィン系樹脂又は環状オレフィン系樹脂を製膜してフィルム化することにより、保護フィルム40とすることができる。フィルム化の方法は特に限定されないが、溶融押出製膜法が好ましく採用される。
オレフィン系樹脂フィルムも、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、ポリプロピレン系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、FILMAX社から販売されている“FILMAX CPP フィルム ”、サン・トックス株式会社から販売されている“サントックス”(登録商標)、東セロ株式会社から販売されている“トーセロ”(登録商標)、東洋紡績株式会社から販売されている“東洋紡パイレン(登録商標)フィルム”、東レフィルム加工株式会社から販売されている“トレファン(登録商標)”などが挙げられる。また、環状オレフィン系樹脂フィルムなら、それぞれ商品名で、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”(登録商標)、JSR株式会社から販売されている“アートン(登録商標)フィルム”などが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分として、イソフタル酸、4,4′−ジカルボキシジフェニール、4,4′−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及び1,4−ジカルボキシシクロヘキサンのようなジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールのようなジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記のジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸やp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合などを有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が用いられてもよい。
ポリカーボネート系樹脂及びアクリル系樹脂は、本フィルム20に使用される樹脂として説明した、ポリカーボネート及びポリ(メタ)アクリレートと同様のものであることができる。ポリカーボネート系樹脂とアクリル系樹脂の積層フィルムを保護フィルム40として用いることもでき、この場合、アクリル系樹脂は、本フィルム20を構成する樹脂層(a)と同様に、ゴム弾性体粒子を含有することが好ましい。
保護フィルム40には、その表面に光学機能性フィルムを積層したり、光学機能層をコーティングしたりすることもできる。このような光学機能性フィルム及び光学機能層としては、例えば、易接着層、導電層などが挙げられる。
図1に示す形態であれば、本フィルム20の樹脂層(b)25側を偏光子30に貼合し、偏光子30の、本フィルム20が貼合される面と反対側の面に、保護フィルム40を貼合して、偏光板10とする。図2に示す形態であれば、本フィルムの第二の樹脂層(a)22側を偏光子30に貼合し、偏光子30の、本フィルム20が貼合される面と反対側の面に、保護フィルム40を貼合して、偏光板10とする。図1及び図2では、接着剤層51を介して本フィルム20が、また接着剤層52を介して保護フィルム40が、それぞれ偏光子30に貼合されている。本フィルム20と偏光子30の貼合では、本フィルム20の樹脂層(b)25側又は第二の樹脂層(a)22側及び偏光子30の接着面のいずれかに、接着剤を塗工した後、両者を貼合すればよく、保護フィルム40と偏光子30との貼合では、保護フィルム40及び偏光子30の接着面のいずれかに、接着剤を塗工した後、両者を貼合すればよい。
[接着]
偏光板が有する偏光子30又は保護フィルム40に対する、本フィルム20の樹脂層(b)25又は第二の樹脂層(a)22の貼合、及び、偏光板が有する偏光子30と、保護フィルム40との貼合には、先述のとおり接着剤が用いられる。貼合に先立って、それぞれのフィルムの貼合面のうち少なくとも一方には、コロナ放電処理、プラズマ照射処理、電子線照射処理、その他の表面活性化処理を施しておくことが好ましい。
図1及び図2に示した接着剤層51、52を形成するための接着剤は、それぞれの部材に対して接着力を発現するものから、任意に選択して用いることができる。典型的には、硬化性接着剤の一つである水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解又は接着剤成分を水に分散させたもの、及び、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含む活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。生産性の観点からは、活性エネルギー線硬化性接着剤が好ましく用いられる。
好ましい水系接着剤としては、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を含む組成物挙げられる。
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、そのポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。接着剤成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、その接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。接着剤水溶液におけるポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100質量部に対して、通常1〜10質量部程度、好ましくは1〜5質量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分又は架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を挙げることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、田岡化学工業株式会社から販売されている“スミレーズ(登録商標)レジン650”及び“スミレーズ(登録商標)レジン675”、星光PMC株式会社から販売されている“WS−525”などがあり、これらを好適に用いることができる。これら硬化性成分又は架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、通常1〜100質量部、好ましくは1〜50質量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなる傾向にある。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合は、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。アイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光フィルムと保護フィルムとの接着に用いることは、例えば、特開2005−70139号公報、特開2005−70140号公報、特開2005−181817号公報などにより公知である。
一方、活性化エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、それを構成する活性エネルギー線の照射により硬化する成分(以下、単に「硬化性成分」と呼ぶことがある)は、エポキシ化合物、オキタセン化合物、アクリル系化合物などでありうる。エポキシ化合物やオキタセン化合物のようなカチオン重合性の化合物を用いる場合には、カチオン重合開始剤が配合される。また、アクリル系化合物のようなラジカル重合性化合物を用いる場合にはラジカル重合開始剤が配合される。なかでも、エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤が好ましく、とりわけ、飽和炭化水素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤が好ましい。また、それにオキセタン化合物を併用するのも有効である。
エポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、三菱化学株式会社から販売されている“JER(登録商標)エポキシ樹脂”シリーズ、DIC株式会社から販売されている“エピクロン(登録商標)”シリーズ、新日鐵住金株式会社から販売されている“エポトート(登録商標)”シリーズ、株式会社ADEKAから販売されている“アデカ(登録商標)レジン”シリーズ、ナガセケムテックス株式会社から販売されている“デナコール(登録商標)”シリーズ、ダウケミカル社から販売されている“D.E.R.(登録商標)エポキシ樹脂”シリーズ、日産化学工業株式会社から販売されている“テピック(登録商標)”などがある。
飽和炭化水素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、ダイセル化学工業株式会社から販売されている“セロキサイド(登録商標)”シリーズ及び“サイクロマー(登録商標)”シリーズ、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア(登録商標)”シリーズなどがある。
オキセタン化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、東亞合成株式会社から販売されている“アロンオキセタン(登録商標)”シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている“ETERNACOLL(登録商標)”シリーズなどがある。
カチオン重合開始剤も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、日本化薬株式会社から販売されている“カヤキュア(登録商標)”シリーズ、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア(登録商標)”シリーズ、サンアプロ株式会社から販売されている光酸発生剤“CPI”シリーズ、みどり化学株式会社から販売されている光酸発生剤“TAZ”、“BBI”及び“DTS”、 株式会社ADEKAから販売されている“アデカ(登録商標)オプトマー”シリーズ、ローディア社から販売されている“RHODORSIL(登録商標) ”シリーズなどがある。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて光増感剤を含有することができる。光増感剤を用いることで、反応性が向上し、硬化物層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、アントラセン系化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性接着剤には、その接着性を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。さらに、その接着性を損なわない範囲で、カチオン重合とは別の反応機構で硬化する硬化性成分を配合することもできる。
以上説明した活性エネルギー線硬化性接着剤は、本フィルム20の貼合面又は偏光子30の貼合面に塗布され、その塗布層を介して両フィルムを貼合した後、そこに活性エネルギー線を照射して硬化され、偏光子30と本フィルム20を接合する接着剤層51となる。また、偏光子30の貼合面又は保護フィルム40の貼合面に塗布され、その塗布層を介して両フィルムを貼合した後、そこに活性エネルギー線を照射して硬化され、偏光子30と保護フィルム40を接合する接着剤層52となる。接着剤層51を形成するための接着剤、及び接着剤層52を形成するための接着剤は、同じ組成であっても、異なる組成であってもよいが、両者を硬化させるための活性エネルギー線の照射は、同時に行うことが好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、波長が1〜10nmのX線、波長が10〜400nmの紫外線、波長が400〜800nmの可視光線などでありうる。なかでも、利用の容易さ、並びに活性エネルギー線硬化性接着剤の調製の容易さ、安定性及び硬化性能の点で、紫外線が好ましく用いられる。紫外線の光源には、例えば、波長400nm以下に発光分布を有する、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ランプなどを用いることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて得られる接着剤層の厚さは、通常0.1〜50μm 程度であるが、特に0.2〜10μm の範囲にあることが好ましい。
[楕円偏光板の用途]
図1及び図2に示した構成を代表例とする楕円偏光板10は、液晶セルの表示面側(視認側)に貼り合わせて、液晶表示装置に用いられる液晶パネルとすることができる。液晶表示装置の光源から出射された光が、楕円偏光板を介して視認側に出射されることにより、視認者が偏光サングラスを介して当該表示装置を観察したとしても、良好に表示像を観察することができる。例えば、楕円偏光板10が有する保護フィルム40の外側、すなわち偏光フィルム30との貼合面とは反対側に、感圧性接着剤層を設けることで、容易に液晶セルと貼合することができる。この感圧性接着剤層は、アクリル酸エステルを主成分とし、官能基含有アクリル系単量体が共重合されたアクリル樹脂を感圧性接着剤成分とするアクリル系感圧性接着剤によって形成するのが一般的である。なお、液晶パネルを構成する液晶セルは、この分野で使用されている各種のものであることができる。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り質量基準である。
実施例1〜4
[ゴム弾性体粒子]
ゴム弾性体粒子には、最内層が、メタクリル酸メチルと少量のメタクリル酸アリルとを重合した硬質の重合体からなり、中間層が、主成分であるアクリル酸ブチルと、スチレンと、少量のメタクリル酸アリルとを重合した軟質のゴム弾性体からなり、最外層が、メタクリル酸メチルと少量のアクリル酸エチルとを重合した硬質の重合体からなる三層構造のゴム弾性体粒子Aを用いた。ゴム弾性体粒子Aの、中間層であるゴム弾性体までの数平均粒径は240nmであり、また、最内層と中間層との合計質量は粒子全体の70%であった。
[樹脂層(a)を形成するための樹脂組成物(a)]
住友化学株式会社製のメタクリル酸メチル系樹脂(“スミペックス(登録商標) MH”)と、ゴム弾性体粒子Aとを混合して樹脂組成物(a)を得た。このとき樹脂組成物(a)の全体量に対するゴム弾性体粒子Aの含有量が30質量%となるようにして混合した。なお、ゴム弾性体粒子Aの質量は、ゴム弾性体粒子Aにおける最内層と中間層との合計質量である。
[樹脂層(b)を形成するための樹脂組成物(b)]
樹脂組成物(b)には、住化スタイロンポリカーボネート株式会社製の“カリバー(登録商標) 301−15”を用いた。
樹脂組成物(a)を65mmφの一軸押出機に、樹脂組成物(b)を45mmφの一軸押出機に、それぞれ投入して溶融し、2種3層用分配ピンでマルチマニホールドダイに供給し、溶融積層一体化させ、設定温度260℃のT型ダイスを介して押出した。得られるフィルム状物を、表面が平滑な一対の金属製ロールの間に挟み込んで成形することにより、第一の樹脂層(a)と、樹脂層(b)と、第二の樹脂層(a)と、をこの順に積層したフィルムA〜D(未延伸)を製造した。このとき、押出し機の押出し量を調節することによって、全体厚さ、第一の樹脂層(a)の厚さ、樹脂層(b)の厚さ及び、第二の樹脂層(a)の厚さを調整した。実施例1〜4で得られたフィルムA〜Dのそれぞれの厚さを表1に示す。また、樹脂組成物(b)のみからなるフィルムE(比較例1)及び、樹脂組成物(a)のみからなるフィルムF(比較例2)を、同様の方法によって製造した。
[実施例5]
テンター延伸機を用いて、フィルムAを横延伸して位相差フィルムAを得た。具体的には、フィルムAを予熱処理を行った後、チャック間延伸により未延伸状態のフィルムに対して倍率2.8倍の横延伸を行い、その後、横延伸後のフィルムを熱処理する熱固定処理を行った。各工程の温度条件を表2に示す。
[実施例6〜8、比較例3、4]
フィルムAをフィルムB〜Fとし、各工程の温度条件を表2に示す温度にした以外は、実施例5と同様にして位相差フィルムB〜Fを得た。
位相差フィルムA〜Fについて、下記の物性を測定した。結果を表3に示す
[全光線透過率]
“HAZEMETER HM−150”を用いて、光源D65、光学条件JIS K7361に従って、透過率を測定した。
[面内位相差値Re(590)]
王子計測機器株式会社製の位相差測定装置“KOBRA−WR”を用いて、波長590nmでの面内位相差値Re(590) を測定した。
[引張り弾性率測定]
延伸方向(TD)とその方向と直交する方向(MD)に対して、以下の方法で弾性率を測定した。幅2.5cm、長さ15cmの短冊状樹脂サンプルを作製し、オートグラフ(島津製作所社製、AG−I)を用いて、85℃における短冊状樹脂サンプルの長手方向の伸びと応力を測定し、弾性率を算出した。試験条件は、チャック間距離を5cm、引っ張り速度を10mm/minとした。
[屈折率]
アッベ屈折計(株式会社アタゴ製の「DR−M2」)を用いて、温度23℃の条件下、590nm波長における屈折率を測定した。
[固有複屈折]
屈折率測定で得られた屈折率を用いて、王子計測機器株式会社製の位相差測定装置“KOBRA−WR”を用いて算出した。
位相差フィルムA〜Dが有する樹脂層(a)の屈折率及び全光線透過率は、樹脂層(a)単体として作成した位相差フィルムFの屈折率及び全光線透過率と同等である。また、位相差フィルムA〜Dが有する樹脂層(b)の屈折率、固有複屈折及び全光線透過率は、樹脂層(b)単体として作成した位相差フィルムEの屈折率、固有複屈折及び全光線透過率と同等である。
位相差フィルムA〜Dの全線透過率は高く、表示装置の輝度を低下させ難いことが分かる。また、位相差フィルムA〜Dの85℃弾性率は十分に高いため、例えば、これらのフィルムを用いて楕円偏光板を作成したとき、楕円偏光板の耐久性は高くなる。