JP2015203148A - 銅合金材、セラミック配線基板及びセラミック配線基板の製造方法 - Google Patents
銅合金材、セラミック配線基板及びセラミック配線基板の製造方法 Download PDFInfo
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Description
本発明の一態様によれば、圧延されることで平板状に形成された銅合金材であって、500℃以上900℃以下の条件下で1時間以上加熱した後、表面に存在する複数の結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合が85%以上である銅合金材が提供される。
(1)銅合金材及びセラミック配線基板の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる銅合金材、及びその銅合金材を備えるセラミック配線基板の構成について説明する。
次に、本実施形態にかかる銅合金材及び銅合金材を用いたセラミック配線基板の製造方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態にかかる銅合金材及びセラミック配線基板の製造工程を示すフロー図である。
(鋳造工程(S11))
図2に示すように、まず、母材であるCu(例えば無酸素銅)を、例えば高周波溶解炉等を用いて溶解して銅の溶湯を生成する。続いて、銅の溶湯中に、Ag、Sn、Zrのいずれか一つのみを添加(固溶)して混合し、銅合金の溶湯を生成する。Agを添加する場合は、銅合金材中のAgの含有量(濃度)が0.005重量%以上、好ましくは0.20重量%以下となるようにAgを添加する。Snを添加する場合は、銅合金材中のSnの含有量(濃度)が0.005重量%以上、好ましくは0.15重量%以下となるようにSnを添加する。Zrを添加する場合は、銅合金材中のZrの含有量(濃度)が0.005重量%以上、好ましくは0.05重量%以下となるようにZrを添加する。そして、この銅合金の溶湯を鋳型に注いで冷却し、所定形状の鋳塊を鋳造(溶製)する。
鋳造工程(S11)が終了した後、まず、鋳塊(鋳造組織)中に生じている偏析を均質化する前処理を行う。前処理として、鋳塊中の結晶組織が平衡状態で均質な固溶状態となる温度以上の温度域に、鋳塊を所定時間保持する加熱処理を行うとよい。例えば、鋳塊を800℃以上950℃以下で30分以上加熱するとよい。
熱間圧延工程(S12)が終了した後、熱間圧延材に対して、冷間圧延処理と、再結晶焼鈍処理と、を所定回数繰り返して行い、所定厚さ(例えば1.0mm以上)の再結晶焼鈍材を形成する。このとき、再結晶焼鈍処理は、焼鈍後(再結晶後)の結晶粒が所定の粒径(例えば数十μm)となるように行うとよい。例えば、再結晶焼鈍処理として、600℃以上900℃以下の条件下で、数秒間〜数時間の加熱処理を行うとよい。
第1の冷間圧延工程(S13)が終了した後、再結晶焼鈍材に所定の冷間圧延処理を複数回連続して行い、所定厚さ(例えば100μm以上)の銅合金材を形成する。つまり、第2の冷間圧延工程(S14)では、焼鈍処理を挟まずに、冷間圧延処理を複数回連続して行う。第2の冷間圧延工程(S14)では、被圧延材(再結晶焼鈍材)に再結晶が生じないような冷間圧延処理を行う。具体的には、第2の冷間圧延工程(S14)では、1回の加工度rが40%未満である冷間圧延処理を、総加工度Rが90%以上となるように複数回連続して行う。
(数1)
加工度r(%)={(t0−t)/t0}×100
(数2)
総加工度R(%)={(T0−T)/T0}×100
続いて、上述の銅合金材を用いてセラミック配線基板を形成する。例えば、上述の銅合金材と、例えばAlNを主成分とするセラミック焼結体で形成されるセラミック基板のいずれかの主面と、を例えばロウ材を介して貼り合わせ、セラミック配線基板を形成する。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
まず、実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料となる銅合金材を作製した。
実施例1では、母材として、無酸素銅を用いた。そして、例えば坩堝式溶解炉を用い、真空引きした不活性ガス(N2ガス)雰囲気中にて、母材を所定温度に加熱して溶解し、銅の溶湯を作製した。銅の溶湯の加熱を維持しつつ、Agを銅の溶湯に添加して銅合金の溶湯を作製した。このとき、銅合金の溶湯中でのAgの含有量(濃度)が0.005重量%となるように、Agの添加量を調整した。銅合金の溶湯を鋳型に注いで冷却し、所定形状の銅合金の鋳塊(インゴット)を鋳造した。つまり、Agの含有量が0.005重量%であり、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金のインゴットを鋳造した。なお、Agの含有量(濃度)は、プラズマ発光分光法(ICP−AES)により、鋳造したインゴット中のAgの濃度を分析した結果である。
実施例2〜27及び比較例1〜7ではそれぞれ、Ag、Sn、Zrの含有量(濃度)と、銅合金材とセラミック基板とを貼り合わせる際の加熱温度と、を下記の表1に示す通りとした。その他は、実施例1と同様にしてセラミック配線基板を作製した。これらをそれぞれ、実施例2〜27及び比較例1〜7の試料とした。
実施例1〜27び比較例1〜7の各試料について、導電率と、所定の加熱処理後の(100)面の配向性と、割れ・剥離評価と、寸法安定性と、を評価した。
実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料が備える銅合金材の導電率をそれぞれ測定した。導電率の測定は、四端子測定法により20℃での電気抵抗を測定して行った。その結果を下記の表1に示す。
実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料が備える銅合金材について、銅合金材の表面(銅合金材のセラミック基板と対向する側とは反対側の面)の(100)面の配向性について評価を行った。具体的には、SEM/EBSD法により、銅合金材の表面に存在する各結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、結晶方位マップを作製した。このとき、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面は、(100)面とみなした。そして、作製した結晶方位マップから、銅合金材の表面の面積に対する表面に存在する(100)面の合計面積の割合を算出することで、銅合金材の(100)面の配向性を評価した。その結果を下記の表1に示す。
実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料をそれぞれ、−65℃のエタノール及びドライアイスを混合した寒剤の液浴と、150℃のオイルバスの液浴と、に交互に投入した。具体的には、寒剤の液浴に5分間投入し、オイルバスの液浴に5分間投入し、これを1サイクルとして合計1000サイクル繰り返した。そして、各試料が備えるセラミック基板に割れ(クラック)が発生していないか否か、また銅合金材がセラミック基板から剥離している箇所がないか否かを確認し、割れ・剥離評価を行った。セラミック基板に割れが発生しておらず、銅合金材がセラミック基板から剥離している箇所がない試料の評価を「○」とし、セラミック基板に割れが発生していたり、銅合金材がセラミック基板から剥離している箇所がある試料の評価を「×」とした。その結果を下記の表1に示す。
実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料が備える銅合金材の寸法安定性の評価は、以下に示すように行った。まず、各試料が備える銅合金材の一方の主面(銅合金材のセラミック基板と対向する側の面)上に、幅が1mmで、所定長さのマスキングテープを貼った。そして、各試料が備える銅合金材に対し、塩化第二鉄を用い、2分間のスプレーエッチング処理を行い、各試料であるセラミック配線基板が備える銅合金材から所定箇所(マスキングテープが貼られていない箇所)を除去した。その後、マスキングテープを銅合金材から剥がして除去した。続いて、レーザ顕微鏡を用いて、エッチング部の側面を観察した。具体的には、エッチングされずにセラミック基板上に残った銅合金材の複数個所の厚さ(マスキング部の深さ方向の寸法)を測定する。そして、銅合金材の厚さの平均値(平均厚さ)を算出する。さらに、最も厚い厚さと平均厚さとの差分(最大差分)を算出し、平均厚さに対する最大差分の割合を算出した。最大差分の割合を銅合金材の寸法安定性として評価した。評価結果を下記の表1に示す。なお、最大差分の割合の値が小さいほど、銅合金材の寸法安定性が良いことを示す。
実施例1〜27及び比較例1〜7の各試料の総合評価を行った。導電率が90%IACS以上であり、所定の加熱処理後の銅合金材の(100)面の配向性が85%以上であり、割れ・剥離評価が「○」であり、寸法安定性が15%以下である試料の総合評価を「◎」とした。所定の加熱処理後の銅合金材の(100)面の配向性が85%以上であり、割れ・剥離評価が「○」であり、寸法安定性が15%以下であるが、導電率が90%IACS未満である試料の総合評価を「○」とした。所定の加熱処理後の銅合金材の(100)面の配向性が85%未満である試料の総合評価を「×」とした。評価結果を下記の表1に示す。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
圧延されることで平板状に形成された銅合金材であって、
500℃以上900℃以下の条件下で1時間以上加熱した後、表面に存在する複数の結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合が85%以上である銅合金材が提供される。
付記1の銅合金材であって、好ましくは、
0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちのいずれか一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている。
付記1の銅合金材であって、好ましくは、
0.005重量%以上0.20重量%以下の銀、0.005重量%以上0.15重量%以下のスズ、0.005重量%以上0.05重量%以下のジルコニウムのうちのいずれか一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている。
付記1の銅合金材であって、好ましくは、
0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちの少なくとも2種以上を、合計含有量が0.15重量%以下となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている。
付記1の銅合金材であって、好ましくは、
0.005重量%以上0.15重量%未満の銀、0.005重量%以上0.15重量%未満のスズ、0.005重量%以上0.05重量%以下のジルコニウムのうちの少なくとも2種以上を、合計含有量が0.15重量%以下となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている。
付記1ないし5のいずれかの銅合金材であって、好ましくは、
厚さが100μm以上である。
付記1ないし6のいずれかの銅合金材であって、好ましくは、
前記銅として無酸素銅が用いられている。
本発明の他の態様によれば、
0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちのいずれか一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる鋳塊を鋳造する工程と、
前記鋳塊に熱間圧延処理を行って熱間圧延材を形成する工程と、
前記熱間圧延材に冷間圧延処理及び再結晶焼鈍処理を繰り返して行うことで再結晶焼鈍材を形成する工程と、
前記再結晶焼鈍材に、1回の加工度が40%未満である冷間圧延処理を、総加工度が90%以上となるように複数回連続して行う工程と、を有する銅合金材の製造方法が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちの少なくとも2種以上を、合計含有量が0.15重量%以下となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる鋳塊を鋳造する工程と、
前記鋳塊に熱間圧延処理を行って熱間圧延材を形成する工程と、
前記熱間圧延材に冷間圧延処理及び再結晶焼鈍処理を繰り返して行うことで再結晶焼鈍材を形成する工程と、
前記再結晶焼鈍材に、1回の加工度が40%未満である冷間圧延処理を、総加工度が90%以上となるように複数回連続して行う工程と、を有する銅合金材の製造方法が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
セラミック基板と、
前記セラミック基板のいずれかの主面上に設けられ、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合が85%以上である銅合金材と、を備えるセラミック配線基板が提供される。
本発明のさらに他の態様によれば、
セラミック基板と、前記セラミック基板のいずれかの主面上に配置される銅合金材と、を加熱処理によって貼り合わせる工程を有し、
前記加熱処理によって、少なくとも前記銅合金材の表面で再結晶を生じさせ、前記銅合金材の表面に存在する複数の結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合を85%以上にするセラミック配線基板の製造方法が提供される。
Claims (7)
- 圧延されることで平板状に形成された銅合金材であって、
500℃以上900℃以下の条件下で1時間以上加熱した後、表面に存在する複数の結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合が85%以上である
銅合金材。 - 0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちのいずれか一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている
請求項1に記載の銅合金材。 - 0.005重量%以上0.20重量%以下の銀、0.005重量%以上0.15重量%以下のスズ、0.005重量%以上0.05重量%以下のジルコニウムのうちのいずれか一つを含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている
請求項1に記載の銅合金材。 - 0.005重量%以上の銀、0.005重量%以上のスズ、0.005重量%以上のジルコニウムのうちの少なくとも2種以上を、合計含有量が0.15重量%以下となるように含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金で形成されている
請求項1に記載の銅合金材。 - 厚さが100μm以上である
請求項1ないし4のいずれかに記載の銅合金材。 - セラミック基板と、
前記セラミック基板のいずれかの主面上に設けられ、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合が85%以上である銅合金材と、を備える
セラミック配線基板。 - セラミック基板と、前記セラミック基板のいずれかの主面上に配置される銅合金材と、を加熱処理によって貼り合わせる工程を有し、
前記加熱処理によって、少なくとも前記銅合金材の表面で再結晶を生じさせ、前記銅合金材の表面に存在する複数の結晶面の結晶方位をそれぞれ測定し、(100)面の結晶方位からの傾きが10°以内である結晶方位を有する結晶面を前記(100)面とみなしたとき、前記表面の面積に対する前記表面に存在する前記(100)面の合計面積の割合を85%以上にする
セラミック配線基板の製造方法。
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