JP2014015674A - 圧延銅箔、および銅張積層板 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐ハゼ折特性を向上させた圧延銅箔およびそれを用いた銅張積層板を提供する。
【解決手段】30ppm以上100ppm以下のSnを含有する無酸素銅を母材とし、300℃で5分間の熱処理後の主表面における(200)面の面積率が0.65以上であり、5μm以上50μm以下の厚みtを有する。
【選択図】なし
【解決手段】30ppm以上100ppm以下のSnを含有する無酸素銅を母材とし、300℃で5分間の熱処理後の主表面における(200)面の面積率が0.65以上であり、5μm以上50μm以下の厚みtを有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、基材の片面に圧延銅箔を貼り合わせた銅張積層板に係り、特に、基材の貼り合わせに用いる銅箔の耐折り曲げ性を改善した圧延銅箔、及び、これを用いた銅張積層板に関するものである。
例えばプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、一般に銅箔と合成樹脂等の基材とを加熱圧着して貼り合わせ、もしくは合成樹脂等のワニスを銅箔側へ塗布、乾燥させることにより、銅張積層板を形成し、その後、目的とする回路を形成するためにフォトレジストによる回路を印刷した後、不要の銅部をエッチングにより除去して回路を形成することにより製造される。
プリント配線板に用いられる銅箔は、大きく分類して圧延銅箔と電解銅箔がある。特に圧延銅箔は、電解銅箔よりも優れた屈曲特性を示し、これまで携帯電話のヒンジ部やスライド部といった可動部の配線材料として一般的に使われてきた。
近年ではヒンジ部やスライド部を持たない、スレート型のスマートフォンと呼ばれる携帯電話が広く浸透してきているが、小型化、省スペース化のためにプリント配線板を折り曲げて実装されることが増えてきた。これは、これまでのスライド部などでの、いわゆる摺動屈曲と呼ばれる、曲げ半径の比較的大きい(曲げ半径0.5〜2mm)一般的な銅箔の弾性変形域での繰り返し曲げとは異なり、曲げ半径が小さく(曲げ半径0.5mm以下)、銅箔の塑性変形域での1回または数回の曲げ変形となる。
このように、部材に折り返し等の曲げ部(ハゼ)を設ける場合の曲げ変形は、一般的にハゼ折変形と呼ばれる。塑性変形域での変形であるので、これまでの摺動屈曲特性に関する知見とは大きく異なる。プリント配線板の実装については1回のハゼ折で十分であるが、実際には実装時のハンドリングや実装位置の修正による数度のハゼ折が加わる場合があり、また、信頼性の面からも数回のハゼ折に耐える銅箔が要求されるようになってきた。
耐ハゼ折特性を改善するための試みは、例えば特許文献1では、柱状の銅結晶粒子を含み、25℃における伸び率を5%以上とすることで電解銅箔が破断し難いプリント配線板が得られることが報告されている。
また、特許文献2では350℃で、0.5時間焼鈍後の加工硬化指数を0.3以上0.45以下とすることで圧延銅箔の耐ハゼ折特性を改善できることが報告されている。
しかし、現在広く使われている銅箔について本発明者らが調査したところ、特に電解銅箔は厚み18μmでも1回または2回、厚み12μmでは1回のハゼ折で銅箔の破断が観察された。
圧延銅箔では、厚み18μmで4回、厚み12μmで2回または3回で同様に圧延銅箔の破断が観察された。これは耐ハゼ折特性に関して、電解銅箔に対して圧延銅箔が優位であることを示している。したがって、電解銅箔についての特許文献1では、十分な耐ハゼ折特性は得られないと考えられる。
しかし、伸び率が電解銅箔よりも大きい圧延銅箔においても耐ハゼ折特性は十分ではない。今後、銅箔がますます薄肉化の傾向にあることを考えると、圧延銅箔の厚み12μmでの結果は、十分に満足できるものではない。
耐ハゼ折特性は銅箔の厚みによっても異なり、銅箔厚みが厚いほうが耐ハゼ折特性が良好であることが本発明者らの検討により明らかになっているが、特許文献2においては樹脂層との合計厚みが50μm以下と記載されているだけであり、銅箔厚みが明確ではない。すなわち、現在フレキシブルプリント配線板において多く使われている銅箔厚み18μmや12μmの銅箔では、要求される耐ハゼ折特性を得られない可能性がある。
このように、従来の圧延銅箔を用い、厚みを18μmとした場合のハゼ折り回数は4回、厚みを12μmとした場合には、2回又は3回が限界であり、耐折り曲げ性を、さらに向上させることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、十分な耐折り曲げ性、特に、耐ハゼ折特性を向上させた圧延銅箔、及び、これを用いた銅張積層板を提供することにある。
本発明の第1の態様によれば、
30ppm以上100ppm以下のSnを含有する無酸素銅を母材とし、
300℃で5分間の熱処理後の主表面における(200)面の面積率が0.65以上であり、
5μm以上50μm以下の厚みtを有する
圧延銅箔が提供される。
30ppm以上100ppm以下のSnを含有する無酸素銅を母材とし、
300℃で5分間の熱処理後の主表面における(200)面の面積率が0.65以上であり、
5μm以上50μm以下の厚みtを有する
圧延銅箔が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかの最大谷深さRvが1.5μm以下である
第1の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかの最大谷深さRvが1.5μm以下である
第1の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
300℃で5分間の熱処理後で、かつ、ポリイミドフィルムの少なくとも山側となる面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記曲げ部の山側での曲げ半径Bpと、材質固有の定数Cとによる関係式、
X=65Bp−C
で表わされ、前記定数Cが6以下となる
第2の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
300℃で5分間の熱処理後で、かつ、ポリイミドフィルムの少なくとも山側となる面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記曲げ部の山側での曲げ半径Bpと、材質固有の定数Cとによる関係式、
X=65Bp−C
で表わされ、前記定数Cが6以下となる
第2の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
300℃で5分間の熱処理後で、かつ、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、谷側での曲げ半径が0.125mmの曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記厚みtによる関係式、
X−1=At
で表わされ、傾きAが0.17以上となる
第1〜第3の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
300℃で5分間の熱処理後で、かつ、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、谷側での曲げ半径が0.125mmの曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記厚みtによる関係式、
X−1=At
で表わされ、傾きAが0.17以上となる
第1〜第3の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記厚みtが12μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが4回以上となる
第3又は第4の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
前記厚みtが12μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが4回以上となる
第3又は第4の態様に記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
前記厚みtが18μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが6回以上となる
第3〜第5の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
前記厚みtが18μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが6回以上となる
第3〜第5の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
最終焼鈍工程からの加工度が93%以上である
第1〜第6の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
最終焼鈍工程からの加工度が93%以上である
第1〜第6の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第8の態様によれば、
前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかに銅めっき層が形成され、
前記銅めっき層が形成された前記主表面またはその裏面の最大谷深さRvが1.5μm以下である
第1〜第7の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかに銅めっき層が形成され、
前記銅めっき層が形成された前記主表面またはその裏面の最大谷深さRvが1.5μm以下である
第1〜第7の態様のいずれかに記載の圧延銅箔が提供される。
本発明の第9の態様によれば、
第1〜第8の態様のいずれかに記載の圧延銅箔を、基材となる樹脂層の少なくとも片面に積層してなり、
前記圧延銅箔が、焼鈍条件下での熱処理を経ている
銅張積層板が提供される。
第1〜第8の態様のいずれかに記載の圧延銅箔を、基材となる樹脂層の少なくとも片面に積層してなり、
前記圧延銅箔が、焼鈍条件下での熱処理を経ている
銅張積層板が提供される。
本発明は、十分な耐折り曲げ性を有する圧延銅箔、及び、これを用いた銅張積層板を提供することが出来るという優れた効果を発揮する。
<本発明者等が得た知見>
以下に、銅箔とハゼ折り回数について説明する。
以下に、銅箔とハゼ折り回数について説明する。
ハゼ折変形によって銅箔が破断するまでの繰り返し曲げ回数は、銅箔の材質および厚みによって異なる。
図1は、圧延銅箔と電解銅箔のハゼ折試験時に銅箔が破断するまでの回数と銅箔厚みの関係について示したものである。
このハゼ折試験は、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に銅箔を貼り合わせた両面フレキシブル基板(2L FCCL:2 Layer Flexible Copper Clad Laminate、つまり、両面フレキシブル銅張積層板のことを指す)に対し、曲げ部に荷重3kgを載せて破断に至る回数を測定するものである。
これによると、電解銅箔では、18μmで1回又は2回で破断し、圧延銅箔は電解銅箔より、耐ハゼ折特性がよく、18μmで4回、12μmで、2回又は3回であり、これが限界となる。したがって、破断するまでの曲げ回数を4回以上を得ようとする場合、圧延銅箔においては、銅箔厚み18μm以上が必要であることがわかる。
銅箔厚み(t)と破断までの曲げ回数(X)の間には、図1から以下の関係が成り立つ。
X−1=At
ここで、X:破断までの曲げ回数(回)、A:グラフの傾き(素材により決まる定数)、t:銅箔厚み(μm)である。
X−1=At
ここで、X:破断までの曲げ回数(回)、A:グラフの傾き(素材により決まる定数)、t:銅箔厚み(μm)である。
図1における圧延銅箔は、図から傾きA=0.15であり、傾きAを大きくすれば破断までの曲げ回数を多くできる。例えば、銅箔厚み12μmにおいても破断までの曲げ回数4回を得ようとする場合、傾きA=0.17以上の素材を用いる必要がある。また、傾きA=0.27の素材では、銅箔厚み18μmでは曲げ回数は6回以上となる。
このような圧延銅箔を得るために、本発明者らは圧延銅箔の結晶配向に着目した。そして、圧延銅箔の圧延面に占める所定方位の結晶の面積率が高まると、同じ厚さでも破断までの曲げ回数を多くできることを見いだした。
また、これと併せて、本発明者等は、耐ハゼ折特性の高い圧延銅箔を得るべく、さらに鋭意研究を行った。その結果、耐ハゼ折特性には結晶配向のみならず、圧延銅箔の表面の凹凸の状態が大きく影響していることを見いだした。
本発明は、発明者等が見いだしたこれらの知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
(1)圧延銅箔の構成
本実施形態に係る圧延銅箔は、例えば30ppm以上100ppm以下のスズ(Sn)を含有する無酸素銅(OFC:Oxygen−Free Copper)またはタフピッチ銅(TPC:Tough Pitch Copper)を母材とする。圧延銅箔の厚みtは、例えば5μm以上50μm以下となっている。
本実施形態に係る圧延銅箔は、例えば30ppm以上100ppm以下のスズ(Sn)を含有する無酸素銅(OFC:Oxygen−Free Copper)またはタフピッチ銅(TPC:Tough Pitch Copper)を母材とする。圧延銅箔の厚みtは、例えば5μm以上50μm以下となっている。
また、本実施形態に係る圧延銅箔は、少なくとも300℃で5分間の熱処理後、主表面としての圧延面における(200)面の面積率(以降、(200)面積率ともいう)が0.65以上となるよう構成されている。係る熱処理は、例えばフレキシブルプリント配線板の製造工程で圧延銅箔に加えられる焼鈍等である。
また、本実施形態に係る圧延銅箔は、圧延面またはその裏面の少なくともいずれかの最大谷深さRvが1.5μm以下であることが好ましい。このとき、圧延銅箔の圧延面またはその裏面の少なくともいずれかには銅めっき層が形成されていてもよく、少なくとも銅めっき層が形成された圧延面またはその裏面の最大谷深さRvが1.5μm以下であればよい。
また、例えばフレキシブルプリント配線板等の用途に用いられる圧延銅箔は、表面に粗化処理等が施され、ポリイミドフィルム等の基材となる樹脂層との密着性の向上を図る場合がある。本実施形態に係る圧延銅箔においても、圧延面またはその裏面の少なくともいずれかに粗化処理が施されていてもよい。但し、この場合において、上述の最大谷深さRvは、粗化処理による表面粗さを除外した値、つまり、粗化処理前の値である。
((200)面の面積率)
上述のように、本発明者等は、圧延銅箔の結晶配向に着目して研究を進めた結果、(200)面積率が高い圧延銅箔ほど破断までの曲げ回数が多くなることを見いだした。
上述のように、本発明者等は、圧延銅箔の結晶配向に着目して研究を進めた結果、(200)面積率が高い圧延銅箔ほど破断までの曲げ回数が多くなることを見いだした。
ここで、(200)面積率とは、SEM−EBSP(Scaning Electron Microscope−Electron BackScattering Pattern)をもちいて圧延銅箔の表面(圧延面)の結晶配向を測定し、測定領域において(200)面配向を持つ結晶粒が占める面積率を示す。
圧延銅箔は、焼鈍で軟質化状態となり、破断までの曲げ回数は、銅の結晶集合組織である立方体方位が発達して屈曲特性が向上し、圧延面に占める(200)面積率が、0.4以上となると、同じ厚さでも破断までの曲げ回数を多くできる。
ここで、銅箔厚み18μmにおいて曲げ回数6回以上を得るためには、(200)面積率は0.65以上が必要になる。また銅箔厚み12μmで4回以上でも(200)面積率は0.65以上が必要になる。
これを、例えば上述のハゼ折試験の結果を示す図1から導き出される次式(1)、
X−1=At・・・(1)
における傾きAで表わすと、例えば傾きA=0.25以上となる。
X−1=At・・・(1)
における傾きAで表わすと、例えば傾きA=0.25以上となる。
ここで上述のとおり、ハゼ折試験は、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に同じ厚みt(μm)を有する圧延銅箔を貼り合わせた両面フレキシブル基板(2L FCCL)に対して行う。このとき、谷側(折り曲げた内側)での曲げ半径が0.125mmの曲げ部に荷重3kgを加え、曲げ部の山側(折り曲げた外側)での破断、つまり、山側に配置される圧延銅箔の破断までの曲げ回数X(回)を測定する。このとき、式(1)により与えられるグラフの傾きAは圧延銅箔の結晶配向等の素材により決まり、この傾きAの値から所定の素材の破断までの回数(ハゼ折り回数)を予測することができる。
つまり、例えば、圧延銅箔の厚み12μmにおいて破断までの曲げ回数4回を得ようとする場合、傾きA=0.17が必要となる。また、圧延銅箔の厚み18μmにおいて破断までの曲げ回数6回を得ようとする場合、傾きA=0.27が必要となる。本実施形態の圧延銅箔は傾きA=0.25であり、厚み18μmでの曲げ回数6回を略満たし、厚み12μmでの曲げ回数4回をより確実に満たす。
なお、無酸素銅またはタフピッチ銅のみの場合には、導電率はよいが軟化温度が200℃と低く、Snを添加することで軟化温度が250℃となり、適度な電導率で耐熱性も向上できる。
(最大谷深さRv)
また、上述のように、本発明者等は、圧延銅箔の表面の性状に着目して研究を進めた結果、表面の凹凸が少ない圧延銅箔ほど破断までの曲げ回数が多くなることを見いだした。
また、上述のように、本発明者等は、圧延銅箔の表面の性状に着目して研究を進めた結果、表面の凹凸が少ない圧延銅箔ほど破断までの曲げ回数が多くなることを見いだした。
例えば、後述の最終冷間圧延工程後の圧延銅箔の圧延面には、しばしばオイルピットと呼ばれる凹部が認められることがある。係るオイルピットは、圧延時の圧延油の噛み込み等により発生し、例えば上述の粗化処理による凹凸とは異なるものである。
すなわち、例えば粗化処理後の圧延銅箔の表面を観察すると、オイルピットとは別に、粗化処理による凹凸が圧延銅箔の表面に存在していることがわかる。また、粗化処理による凹凸は、ポリイミドフィルム等の基材側に食い込み、密着力の向上に寄与していることがみてとれる。一方で、オイルピットは基材との密着性には寄与しない。耐ハゼ折特性に影響を及ぼすのは、粗化処理による凹凸ではなく、オイルピットのような凹部の深さである。
本発明者等によれば、このようなオイルピットをはじめ、圧延銅箔の圧延面やその裏面に凹部が存在すると、ハゼ折試験等ではこれが起点となって圧延銅箔にクラックが発生し、破断してしまう。このとき、凹部が存在するのが基材と接する側か否かにはよらず破断の可能性が高まる。
本実施形態に係る圧延銅箔では、圧延面またはその裏面の少なくともいずれかの最大谷深さRvが1.5μm以下と、このような凹部が低減された状態、あるいは、少なくともその深さが浅い状態である。このため、このようなクラックの発生が抑制され、耐ハゼ折特性を向上させることができる。ここで、最大谷深さRvは、JIS B 0601:2001に規定される表面粗さの1つである。JIS B 0601:2001によれば、最大谷深さRvは、表面粗さ測定で得られる粗さ平均線から谷底までの深さの最大値である。
ところで、上述の説明においては、ポリイミドフィルムの両面に圧延銅箔を貼り合わせた両面フレキシブル基板に対するハゼ折試験の結果から式(1)を導き出した。
ここでは、最大谷深さRvについての知見も加味したうえで、ポリイミドフィルムの厚みや、山側の曲げ半径Bp等も変数として組み込むことで、次式(2)、
X=65Bp−C・・・(2)
を導き出すことができる。
X=65Bp−C・・・(2)
を導き出すことができる。
すなわち、ここでのハゼ折試験は、厚みtPI(μm)のポリイミドフィルムの片面または両面に厚みtCu(μm)を有する圧延銅箔を1枚ずつ、合計n枚貼り合わせたフレキシブル基板(FCCL)に対して行う。このとき、谷側での曲げ半径Bv(mm)の曲げ部に荷重3kgを加え、山側に配置される圧延銅箔の破断までの曲げ回数X(回)を測定する。このときの山側の曲げ半径Bp(mm)は次式(3)で表わされる。
Bp=n・tCu(×10−3)+tPI(×10−3)+Bv・・・(3)
ここで、nは、圧延銅箔の貼り合わせ枚数であり、片面に貼り合わせた場合はn=1、両面に貼り合わせた場合はn=2である。また、式(3)中、「×10−3」としているのは単位換算(μm→mm)のためである。
Bp=n・tCu(×10−3)+tPI(×10−3)+Bv・・・(3)
ここで、nは、圧延銅箔の貼り合わせ枚数であり、片面に貼り合わせた場合はn=1、両面に貼り合わせた場合はn=2である。また、式(3)中、「×10−3」としているのは単位換算(μm→mm)のためである。
また、このとき、式(2)における定数Cは、圧延銅箔の結晶配向等の素材により決まる材質固有の定数である。本発明者等によれば、定数Cは、圧延銅箔が熱処理後に有する(200)面の面積率や、圧延銅箔の表面の最大谷深さRvと相関があることがわかっている。
上述の式(2)のように、山側の曲げ半径Bpと破断までの曲げ回数Xとは比例する。これを図6のグラフに示す。
図6は、本実施形態および参考例に係る圧延銅箔に対するハゼ折試験における山側の曲げ半径Bpと破断までの曲げ回数の関係を示す図である。図6の横軸は、山側の曲げ半径Bp(mm)であり、縦軸は、破断までの曲げ回数(回)である。また、図において、黒菱形(◆)印は、(200)面の面積率が0.92の本実施形態に係る圧延銅箔のプロットであり、図中、黒四角(■)印は、(200)面の面積率が0.33の参考例に係る圧延銅箔のプロットである。
図6に示すように、(200)面の面積率が高いほど、定数C、つまり、グラフの縦軸との切片の絶対値は小さい。この定数Cの値から、所定の素材の破断までの回数(ハゼ折り回数)を予測することができる。すなわち、例えば、上述のように、厚み12μmや18μmの圧延銅箔が両面に貼り合わされ、ポリイミドフィルムの厚みを25μm、谷側の曲げ半径0.125mm、とした場合とは異なる試験条件においても、その圧延銅箔が比較対象の圧延銅箔と同等の定数Cを示していれば、それらの耐ハゼ折特性は同等であるといえる。
本実施形態における圧延銅箔においては、例えば定数Cは6以下である。なお、圧延銅箔の厚み12μmにおいて破断までの曲げ回数4回を得ようとする場合、定数Cは7以下であればよい。また、圧延銅箔の厚み18μmにおいて破断までの曲げ回数6回を得ようとする場合、定数Cは6以下でなければならない。本実施形態の圧延銅箔は定数Cが6以下であり、厚み18μmでの曲げ回数6回を満たし、厚み12μmでの曲げ回数4回をより確実に満たす。
(2)圧延銅箔の製造方法
まずは、(200)面積率を0.65以上の圧延銅箔を得るための製造条件の一例について説明する。
まずは、(200)面積率を0.65以上の圧延銅箔を得るための製造条件の一例について説明する。
これらはあくまで一例であり、本発明の圧延銅箔の製造方法を規定するものではない。
本実施形態に係る圧延銅箔は、無酸素銅(OFC)またはタフピッチ銅(TPC)に、Snを30ppm以上100ppm以下添加して鋳塊(インゴット)とし、これを熱間圧延した後、冷間圧延とひずみ取り焼鈍を繰り返して厚み5μm以上50μm以下として製造する。
すなわち、圧延銅箔は無酸素銅またはタフピッチ銅を溶解し、鋳造することにより得られたインゴットを元に製造される。溶解時、30〜100ppmのSnを添加する。Snが100ppmを超えて含有すると、耐熱性が過剰に高くなってしまい、フレキシブルプリント配線板の製造工程で銅箔に加えられる熱によっても圧延銅箔が再結晶を起こさなくなる。圧延銅箔はフレキシブルプリント配線板の製造工程における加熱によって再結晶することにより屈曲特性やハゼ折特性を発現させるため、過剰な耐熱性はFCCLの特性を損なう原因となる。
熱間圧延工程にて、インゴットは、まず、厚み2.5mmまで熱間圧延により引き伸ばされ板材となる。その後、冷間圧延と焼鈍を繰り返す繰り返し工程にて、所定の厚みまで圧延される。その後、最終焼鈍工程にて、板材に最終焼鈍を施して焼鈍生地を得る。最終冷間圧延工程では、焼鈍生地に最終冷間圧延を施す。この場合、目標とする最終厚みが得られるまで冷間圧延を複数回(複数パス)繰り返してもよい。
この際、最終焼鈍工程からの加工度を93%以上として圧延銅箔とする。加工度は、以下の式(4)で定義される。
加工度(%)=(最終焼鈍厚み−最終厚み)/最終焼鈍厚み×100・・・(4)
加工度(%)=(最終焼鈍厚み−最終厚み)/最終焼鈍厚み×100・・・(4)
本実施形態で求める特性を得るためには、加工度は93%以上99%未満とする必要がある。93%未満では加えられるひずみ量が少ないために、銅箔が軟化しにくくなる。99%より高い加工度では、与えられるひずみ量が多すぎるために、冷間圧延中の加工熱によって圧延銅箔が再結晶してしまい、ひずみが開放されるために逆に(200)面積率は低下する。
また、以上の製造工程において、表面の最大谷深さRvが1.5μm以下の圧延銅箔を得る製造条件の一例について説明する。
上述のように、圧延銅箔の表面の凹部の一因となるオイルピットは、圧延銅箔の結晶配向等の状態や素材の違いによらず発生する。すなわち、係るオイルピットは、例えば最終冷間圧延工程等の圧延時に、圧延対象である生地とロールとの間に圧延油が噛み込まれ、生地がロールの拘束を受けない自由塑性変形を起こすことによって発生する。
そこで、例えば最終冷間圧延工程におけるロール粗さや圧延油の粘度を調整することにより、係るオイルピットを低減することができる。すなわち、ロール粗さや圧延油の粘度を低減することで、ロールの凹凸への圧延油の浸入や高粘度の圧延油の流動性低下等による圧延油の噛み込みが低減される。よって、オイルピットの発生を抑制することができる。
また、オイルピットをはじめ、最終冷間圧延工程後の圧延銅箔の表面に既に発生してしまった凹部については、例えば圧延銅箔の表面を平滑化する銅めっきにより凹部を埋めることで、深さを低減することができる。銅めっき層は、圧延銅箔の片面あるいは両面に形成することができる。
なお、上述のように、本実施形態に係る圧延銅箔に粗化処理を施してもよい。粗化処理は、公知である様々な技術を用いて行うことができる。但し、この場合であっても、上述の最大谷深さRvの数値は粗化処理前の値とする。つまり、本実施形態に係る圧延銅箔においては、最終冷間圧延後、あるいは、少なくとも銅めっき後の状態において、最大谷深さRvが1.5μm以下となっていることが好ましい。
この得られた圧延銅箔を大気中にて300℃、5分加熱することで、(200)面積率を0.65以上とすることができる。
これにより本発明の圧延銅箔は、十分な耐折り曲げ性を有する圧延銅箔とすることができる。
なお、以上のように得られた圧延銅箔は、プリント配線板の用途としてのみでなく、例えばリチウムイオン二次電池の負極材の用途としても使用することができる。
(3)銅張積層板の製造方法
上述の熱処理は、例えばフレキシブルプリント配線板の製造工程における焼鈍工程として行ってもよい。フレキシブルプリント配線板の製造工程には、例えば銅張積層板としてのフレキシブル基板(FCCL)の製造工程と、フォトレジストを用いて不要の銅箔部分をエッチングにより除去して回路等を形成する回路の形成工程等が含まれる。
上述の熱処理は、例えばフレキシブルプリント配線板の製造工程における焼鈍工程として行ってもよい。フレキシブルプリント配線板の製造工程には、例えば銅張積層板としてのフレキシブル基板(FCCL)の製造工程と、フォトレジストを用いて不要の銅箔部分をエッチングにより除去して回路等を形成する回路の形成工程等が含まれる。
また、銅張積層板の製造工程は、本実施形態に係る圧延銅箔に、焼鈍条件下での熱処理を施す熱処理工程(焼鈍工程)と、ポリイミドフィルム等、基材となる樹脂層の少なくとも片面に圧延銅箔を積層する積層工程と、を有する。
焼鈍条件下での熱処理とは、少なくとも本実施形態の要件、つまり、式(1)の傾きAや、式(2)の定数Cを満たす程度まで、圧延銅箔が焼鈍される条件下での熱処理をいう。熱処理の温度および時間の組み合わせ範囲は、適宜調整が可能であり、例えば300℃で1分間以上30分以下の範囲であって、時間を5分間などとすることができる。或いは、270℃で2分以上60分以下、又は、350℃で10秒以上5分以下などとすることができる。
またこのとき、熱処理工程と積層工程とを同時に行ってもよい。すなわち、例えば熱硬化型接着剤等を用いて樹脂層に圧延銅箔を貼り合わせる際の、或いは、接着剤等を用いず樹脂層に直接的に圧延銅箔を貼り合わせる際の、加熱・加圧の条件を、上述の焼鈍条件と同様、例えば300℃以上、5分間以上などとすれば、圧延銅箔に対する焼鈍も兼ねることができる。
以上により、本実施形態に係る圧延銅箔を、基材となる樹脂層の少なくとも片面に積層してなり、係る圧延銅箔が、焼鈍条件下での熱処理を経ている本実施形態に係る銅張積層板としてのフレキシブル基板(FCCL)が製造される。
このように本実施形態では、加工度を93%以上とし、その上で、例えば300℃、5分加熱することで、十分な耐折り曲げ性、より具体的には、耐ハゼ折特性を有する圧延銅箔および銅張積層板を提供することができる。
実施例1〜21について比較例1〜21とともに説明する。
(圧延銅箔の評価)
無酸素銅またはタフピッチ銅を溶解し、必要に応じてSnを後掲の表1,2に示す量添加して鋳造し、インゴットを製作した。インゴットを熱間圧延した後に冷間圧延とひずみ取り焼鈍とを繰り返し、厚み6μm〜18μmの圧延銅箔を製作した。
無酸素銅またはタフピッチ銅を溶解し、必要に応じてSnを後掲の表1,2に示す量添加して鋳造し、インゴットを製作した。インゴットを熱間圧延した後に冷間圧延とひずみ取り焼鈍とを繰り返し、厚み6μm〜18μmの圧延銅箔を製作した。
この時、加工度を変化させるために最終焼鈍での厚みを適宜変化させた。最終焼鈍工程以降の最終冷間圧延では、軸方向の表面粗さ、つまり、算術平均粗さRaが0.1μm以下のロールを用いた。また、圧延油の動粘度を4cSt〜7cStとした。また、一部の圧延銅箔には銅めっきを施し、あるいは、エッチングを施した。
より具体的には、実施例1〜9および比較例1〜12においては、圧延銅箔の組成の影響をみるため、Snの添加量をそれぞれ変化させた。また、加工度の影響をみるため、最終冷間圧延工程における加工度をそれぞれ変化させた。
また、実施例10〜15および比較例13〜17においては、他の圧延条件の影響をみるため、ロールの軸方向の表面粗さ及び圧延油の動粘度をそれぞれ変化させた。また、圧延銅箔に対する表面処理の影響をみるため、一部の実施例に係る圧延銅箔において表面に銅めっき層を形成し、一部の比較例に係る圧延銅箔においては表面をエッチングした。
このとき、銅めっきとしては、圧延後の圧延銅箔に対し、脱脂、酸洗を行って圧延油を除去した後、係る圧延銅箔に対し、以下の組成の銅めっき液を用いた平滑銅めっきを行った。銅めっき液には、硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)200g/L、硫酸(H2SO4)100g/L、レベラおよびブライトナ(荏原ユージライト株式会社製CU−BRITE TH−R III)を含む組成のものを用いた。
また、実施例16〜21および比較例18〜21においては、山側の曲げ半径Bpの影響をみるため、圧延銅箔やポリイミドフィルムの厚みをそれぞれ変化させた。
以上により、実施例1〜21および比較例1〜21に係る圧延銅箔を得た。
このように得られた圧延銅箔について、最大谷深さRvを測定した。係る測定は、JIS B 0601:2001に則り、株式会社キーエンス製レーザマイクロスコープVK−8700を用いて行った。測定条件は、対物レンズ倍率50倍、カットオフ条件λs=0.25μm、λc=0.8mmとした。
得られた圧延銅箔を大気中にて300℃、5分加熱した。
この熱処理後の圧延銅箔について、(200)面の面積率を求めた。
具体的には、表面の酸化膜をフラットミリング装置で除去し、SEM−EBSP分析を行った。分析は日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡SU−70およびTSL製OIMを用いて行った。測定条件はSEM倍率200倍、傾斜70度、分析領域400μm×400μm、測定ピッチ3μmとした。
得られた結晶方位をコンピュータで計算し、分析領域内の(200)面配向の占める面積率を(200)面積率として計算した。
(フレキシブル基板の評価)
圧延により得られた圧延銅箔を用いてフレキシブル基板(FCCL)を製作した。FCCLの製作にあたっては、圧延銅箔の片面に予め粗化処理を行った。すなわち、圧延後の圧延銅箔に対し、脱脂、酸洗を行って圧延油を除去した後、電解銅めっきにより粗化処理を行った。電解銅めっき液には、硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)90g/L、硫酸(H2SO4)100g/Lの組成のものを用いた。電解条件は、液温30℃、印加電流45A/dm2、時間3秒とした。粗化処理後の圧延銅箔の表面粗さは、十点平均粗さRzで1.1μmであった。
圧延により得られた圧延銅箔を用いてフレキシブル基板(FCCL)を製作した。FCCLの製作にあたっては、圧延銅箔の片面に予め粗化処理を行った。すなわち、圧延後の圧延銅箔に対し、脱脂、酸洗を行って圧延油を除去した後、電解銅めっきにより粗化処理を行った。電解銅めっき液には、硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)90g/L、硫酸(H2SO4)100g/Lの組成のものを用いた。電解条件は、液温30℃、印加電流45A/dm2、時間3秒とした。粗化処理後の圧延銅箔の表面粗さは、十点平均粗さRzで1.1μmであった。
次に、圧延銅箔とポリイミドフィルムとを貼り合わせてFCCLを製作した。本実施例では基材としてカネカ製ポリイミドフィルムアピカルBP(厚み25μm)を用い、その両面に圧延銅箔を真空プレスで貼り合せた。プレス条件は圧力5MPa、温度300℃、時間5分とした。以上により、実施例1〜21および比較例1〜21に係るFCCLを得た。
このFCCLを20mm×20mmの大きさに切り出し、図5に示すハゼ折試験の試料10とした。
図5に示すように、ハゼ折試験では、圧延方向と垂直の方向に試料10を折り曲げ、上下押さえ板20t,20bで挟んで荷重をかける。今回は荷重を3kgとした。また、常に同じ場所が折り曲げられるよう、試料10にマーク10mを付け(a)、曲げ部の谷側(内側)に厚み0.25mmのSUS板20sを挟むようにして(b)折り曲げを行った(すなわち、谷側の曲げ半径Bv0.125mmで折り曲げをすることになる。)(c)。実体顕微鏡で曲げ部直上より山側に配置される圧延銅箔の破断の有無を観察する(d)。破断がなければ、折り曲げた試料10を開き、荷重をかけて平らに伸ばしたあとに(e)再び折り曲げを行う。このように、山側の圧延銅箔の破断が見られるまでの曲げ回数をハゼ折回数として求める。
(評価結果−組成および加工度の影響)
得られた結果を表1,2に示す。なお、表1,2の組成において、OFCおよびTPCはそれぞれ無酸素銅およびタフピッチ銅を示し、例えばOFC−Sn50ppmとあるのは、無酸素銅にSnを50ppm添加したものを示す。
得られた結果を表1,2に示す。なお、表1,2の組成において、OFCおよびTPCはそれぞれ無酸素銅およびタフピッチ銅を示し、例えばOFC−Sn50ppmとあるのは、無酸素銅にSnを50ppm添加したものを示す。
上述のとおり、実施例1〜9および比較例1〜12においては、圧延銅箔の組成の影響をみた。
その結果、実施例1,2のように、OFCにSnを30ppm〜50ppm添加した厚み18μmの圧延銅箔は、(200)面の面積率が0.65以上であり、ハゼ折り回数は6回以上であり、耐ハゼ折特性に優れていた。
一方、比較例1,2のように、Snを添加しない圧延銅箔は、加工度を高くしても(200)面の面積率が0.65を満たさず、ハゼ折り回数は5回以下となってしまった。また、比較例3,4のように、Snを過剰に添加した場合も、ポリイミドフィルムとの貼り合わせ時に受ける熱量では圧延銅箔が十分に軟化せず、ハゼ折試験では1回程度で破断してしまっている。
厚み12μmの圧延銅箔においても、実施例8のようにOFCにSnを50ppm添加したものは十分な耐ハゼ折特性を示した。これに対し、Snを添加しなかった比較例9のTPCや比較例10のOFC、或いは、Snを過剰に添加した比較例11のOFCでは、耐ハゼ折特性が低下してしまった。
また上述のとおり、実施例1〜9および比較例1〜12においては、最終冷間圧延工程における加工度の影響もみた。
その結果、実施例4〜7のように、加工度を93%以上99%未満とすることで、(200)面の面積率は0.65以上となり、耐ハゼ折特性も良好であった。
一方、Snを添加しないTPCに係る比較例5,6においては、比較例6のように、加工度を93%以上としても十分な(200)面の面積率は得られず、耐ハゼ折特性も満足できるものとならなかった。また、OFCにSnを50ppm添加した場合であっても、比較例7のように加工度が93%未満の場合や、比較例8のように加工度が99%以上の場合は、(200)面の面積率は0.65を下回り、耐ハゼ折特性も低下してしまった。
厚み12μmの圧延銅箔においても、加工度が98%であった実施例8,9では、十分な耐ハゼ折特性が得られた。一方で、加工度が92%であった比較例12では、耐ハゼ折特性が低下してしまった。
以上、圧延銅箔の組成の影響および最終冷間圧延工程における加工度の影響について表わしたグラフを図2に示す。図2の横軸は、(200)面の面積率であり、縦軸は、破断までの曲げ回数(回)である。図において白三角印は、実施例1〜7の厚み18μmの圧延銅箔、黒三角印は比較例1〜8の厚み18μmの圧延銅箔、白四角は実施例8,9の厚み12μmの圧延銅箔、黒四角は比較例9〜12の厚み12μmの圧延銅箔である。
図2に示すように、圧延銅箔の(200)面の面積率が0.65以上であれば、十分な耐折り曲げ性、より具体的には、耐ハゼ折特性が得られることがわかる。
(評価結果−他の圧延条件および表面処理の影響)
また上述のとおり、実施例10〜15および比較例13〜17においては、ロールの軸方向の表面粗さ及び圧延油の動粘度等の他の圧延条件の影響をみた。
また上述のとおり、実施例10〜15および比較例13〜17においては、ロールの軸方向の表面粗さ及び圧延油の動粘度等の他の圧延条件の影響をみた。
その結果、圧延時の圧延油の動粘度を4cStとした実施例10と、圧延時の圧延油の動粘度を7cStとした比較例13とを比較すると以下のようになった。圧延油の動粘度が高い比較例13の場合、圧延時にロールに噛み込まれる圧延油の量が増加し、オイルピットが多く発生してしまう。このため、比較例13では、(200)面の面積率は0.65以上と十分であるにも関わらず、ハゼ折り回数は5回と低下してしまった。これは、オイルピットの多発による最大谷深さRvの増大が原因であると考えられる。
また、実施例11,12では、圧延時に算術平均粗さRa0.06μm以下のロールを用いて圧延したのに対し、比較例14では、算術平均粗さRa0.10μmと、比較的粗いロールを用いて圧延した。このため、比較例14では、(200)面の面積率は0.65を満たしていたが、最大谷深さRvが1.5以上となってしまい、ハゼ折り回数は5回に低下してしまった。これは、圧延油粘度を高めた時と同様、圧延時にロールに噛み込まれる圧延油の量が、ロールの表面粗さによって増加し、オイルピットが多く発生してしまったためと考えられる。
また上述のとおり、実施例10〜15および比較例13〜17においては、圧延銅箔に対する表面処理の影響をみた。
その結果、圧延銅箔の表面に銅めっき層を厚み0.3μmになるよう形成した実施例13〜15では、圧延条件に関わらず、最大谷深さRvは1.5μm以下となり、ハゼ折り回数も高い値が得られた。
一方、同様に銅めっき層を形成した比較例15では、最大谷深さRvは1.5以下となったものの、Snを添加しないTPCであるため(200)面の面積率が低下し、十分な耐ハゼ折特性が得られなかった。
また、比較例16,17では、圧延後の圧延銅箔の表面をエッチングした。エッチング液により、圧延銅箔の結晶粒界が優先的に除去され、オイルピットのような窪みが多く発生した。このため、最大谷深さRvは1.5μm以上となってしまい、ハゼ折り回数は低下してしまった。
以上、他の圧延条件の影響および圧延銅箔に対する表面処理の影響について表わしたグラフを図3に示す。図3の横軸は、最大谷深さRv(μm)であり、縦軸は、破断までの曲げ回数(回)である。図において白三角印は、実施例14を除く実施例10〜15の厚み18μmの圧延銅箔、黒三角印は比較例15を除く比較例13〜17の厚み18μmの圧延銅箔、黒四角は比較例15のTCPを用いた18μmの圧延銅箔である。
図3に示すように、圧延銅箔の(200)面の面積率が0.65以上で、最大谷深さRvが1.5μm以下であった実施例において、耐ハゼ折特性を満足していることがわかる。
(評価結果−山側の曲げ半径Bpの影響)
また上述のとおり、実施例16〜21および比較例18〜21においては、山側の曲げ半径Bpの影響をみた。
また上述のとおり、実施例16〜21および比較例18〜21においては、山側の曲げ半径Bpの影響をみた。
その結果、ポリイミドフィルムの厚みを変更した実施例16,17においても、上述の式(2)の定数Cは6以下であったため、ポリイミドフィルムの厚み25μmの場合と同等の良好な耐ハゼ折特性であった。
また、実施例18,19では、ポリイミドフィルムの厚みは25μmであるが、谷側の曲げ半径Bvを変えることで山側の曲げ半径Bpを変化させた。この場合においても、定数Cは6以下であったため、谷側の曲げ半径Bvが0.125mmの場合と同等の良好な耐ハゼ折特性を得た。つまり、実施例18では、谷側の曲げ半径Bv0.075mmの厳しい条件においてもハゼ折り回数3回が得られており、例えば谷側の曲げ半径Bv0.125mm等であれば、より多くのハゼ折り回数となることが予想される。
また、実施例20,21では、圧延銅箔の厚みをそれぞれ6μmおよび9μmと変化させることで山側の曲げ半径Bpを変化させた。この場合においても、定数Cは6以下であったため、圧延銅箔の厚みが18μmや12μmの場合と同等の良好な耐ハゼ折特性を得た。
一方、比較例18〜21では、Snを添加しないTPCを用い、圧延銅箔とポリイミドフィルムとの厚み、及び谷側の曲げ半径Bvを変化させることで山側の曲げ半径Bpを変化させた。これにより、定数Cが6を超え、耐ハゼ折特性が悪化した。ポリイミドフィルムの厚み50μmの比較例18においても、ハゼ折り回数が6回であり、ポリイミドフィルムの厚みを薄くした条件では、ハゼ折り回数が6回を下回ってしまうことが予想される。
(評価結果−定数Cについて)
次に、実施例1〜21および比較例1〜21の結果から、上述の式(2)の定数Cと、最大谷深さRvおよび(200)面の面積率との相関を評価した。
次に、実施例1〜21および比較例1〜21の結果から、上述の式(2)の定数Cと、最大谷深さRvおよび(200)面の面積率との相関を評価した。
実施例1〜21および比較例1〜21のうち、いくつかの実施例および比較例を抽出し、これらの相関を表わしたグラフを図4に示す。図4の横軸は、最大谷深さRvと(200)面の面積率との比(最大谷深さRv/(200)面の面積率)であり、縦軸は定数Cである。図において白三角印は、実施例に係る圧延銅箔、黒三角印は比較例に係る圧延銅箔である。
図4に示すように、耐ハゼ折特性が良好であった実施例においてはいずれも定数Cが6以下となっていることがわかる。このように、定数Cの値から、耐ハゼ折特性の良否を判断することができる。
10 試料
10m マーク
20b 押さえ板(下)
20s SUS板
20t 押さえ板(上)
10m マーク
20b 押さえ板(下)
20s SUS板
20t 押さえ板(上)
Claims (9)
- 30ppm以上100ppm以下のSnを含有する無酸素銅を母材とし、
300℃で5分間の熱処理後の主表面における(200)面の面積率が0.65以上であり、
5μm以上50μm以下の厚みtを有する
ことを特徴とする圧延銅箔。 - 前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかの最大谷深さRvが1.5μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の圧延銅箔。 - 300℃で5分間の熱処理後で、かつ、ポリイミドフィルムの少なくとも山側となる面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記曲げ部の山側での曲げ半径Bpと、材質固有の定数Cとによる関係式、
X=65Bp−C
で表わされ、前記定数Cが6以下となる
ことを特徴とする請求項2に記載の圧延銅箔。 - 300℃で5分間の熱処理後で、かつ、厚み25μmのポリイミドフィルムの両面に貼り合わされ折り曲げられた状態で、谷側での曲げ半径が0.125mmの曲げ部に荷重3kgを加えるハゼ折試験にて、
前記曲げ部の山側での破断までの曲げ回数Xが、前記厚みtによる関係式、
X−1=At
で表わされ、傾きAが0.17以上となる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延銅箔。 - 前記厚みtが12μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが4回以上となる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の圧延銅箔。 - 前記厚みtが18μmであるときに、前記破断までの曲げ回数Xが6回以上となる
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の圧延銅箔。 - 最終焼鈍工程からの加工度が93%以上である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧延銅箔。 - 前記主表面またはその裏面の少なくともいずれかに銅めっき層が形成され、
前記銅めっき層が形成された前記主表面またはその裏面の最大谷深さRvが1.5μm以下である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧延銅箔。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の圧延銅箔を、基材となる樹脂層の少なくとも片面に積層してなり、
前記圧延銅箔が、焼鈍条件下での熱処理を経ている
ことを特徴とする銅張積層板。
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