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JP2015198610A - 湯種用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間保存することのできる湯種生地を得ること、また内相が良好でもっちりとした食感を有し経日的な老化が抑制されたベーカリー製品を提供する。
【解決手段】マルトース生成型アミラーゼを含有し、さらにエンド型アミラーゼを含有する湯種用油脂組成物を用いてベーカリー生地をつくり、焼成及び/又はフライして得られたベーカリー製品。また、油脂組成物中、上記マルトース生成型アミラーゼの酵素活性1単位に対し、エンド型アミラーゼの酵素活性が0.01〜5単位であることも好ましい湯種用油脂組成物。澱粉類100質量部に対し、前記湯種用油脂組成物を0.1〜20質量部含有する湯種生地。前記湯種生地に使用する澱粉類を含む全澱粉類100質量部に対し、前記湯種生地を10〜100質量部使用するベーカリー生地。
【選択図】なし

Description

本発明は、保存性良好な湯種生地を得ることができ、さらには内相が良好でもっちりとした食感を有し経日的な老化が抑制されたベーカリー製品を得ることのできる湯種用油脂組成物に関する。
湯種法とは、ベーカリー製品の製造にあたりその穀粉材料の一部を熱水の存在下で混捏して湯種生地とし、これに残りの穀粉材料、中種生地、イースト、常温の水、副原料等を加え混捏してベーカリー生地とし、常法によりベーカリー製品を得る方法である。湯種生地を用いることにより、もっちりとした独特の食感のベーカリー製品を得ることができることから、特徴的な食感のパンや洋菓子を得る方法の1つとして多く用いられるようになってきている。
しかし、湯種生地は、熱水存在下で混捏されることによって穀粉原料の澱粉質が糊化されているため、湯種生地を長期間保存しておくと生地の老化が著しく進行してしまう。特に、冷蔵温度に保存すると急激に老化が進み、極端な場合には離水を起こし、かびが発生する場合もある。また、このような老化した湯種生地を用いてベーカリー生地を製造すると、生地の伸展性が低下するため、得られるベーカリー製品の内相が荒れたものとなったり、ぱさついた食感になってしまう。このため、湯種法によってベーカリー製品を製造する場合、製造した湯種生地は製造後直ちに、若しくは、必要最小限の保存期間の後に直ちに使用する必要があり、産業上効率的な生産をする上で大きな問題となっていた。
このような課題に対して、湯種生地に油脂を添加する方法(例えば特許文献1参照)や、湯種生地に特定の乳蛋白を含有する方法(例えば特許文献2参照)や、湯種生地に特定の水中油型乳化物を配合する方法(例えば特許文献3参照)、湯種生地に乳化剤を配合する方法(例えば特許文献4参照)などの方法により湯種生地の老化防止、さらには得られるベーカリー製品の内相や食感を改良する試みが行なわれている。
しかし、これらの方法では効果が十分ではないことに加え、得られたベーカリー製品の食感がややねちゃついたものとなってしまうという問題があった。
一方、従来より冷凍生地使用時のボリューム向上、さらにパン類の経日的な老化抑制を目的として、アミラーゼ等の酵素を製パン改良剤として添加することが行われている(例えば特許文献5,6)。
しかし、湯種法においては上述のとおり熱水を添加するため、失活温度が60℃付近であるカビ由来の酵素では生地製造時に失活してしまい、本来の働きを期待できなかったり、効果にばらつきが生じる等の問題があったため、十分な検討が行われてこなかった。また、90℃以上でも失活が抑制されたアミラーゼ製剤についても報告されているが(例えば特許文献7)、湯種生地での利用については述べられていない。
特開2003−265093号公報 特開2003−265094号公報 特開2004−000029号公報 特開2003−023955号公報 特開平8−089158号公報 特開平9−135656号公報 WO2009/151042パンフレット
よって本発明の目的は、内相が良好でもっちりとした食感を示すベーカリー製品を得ることができ、且つ長期間保存することのできる湯種生地を提供すること、また内相が良好でもっちりとした食感を有し経日的な老化が抑制されたベーカリー製品を得ることにある。
本発明者等は上記課題を解決すべく種々検討した結果、従来は湯種生地にアミラーゼを添加しても熱水添加による酵素失活等により生地物性が安定しないとされていたところ、特定のアミラーゼを油脂中に分散させた状態で使用した場合、湯種生地製造工程において熱水添加前に投入しても活性を失わず、さらに経日的な老化が大きく抑制された保存性良好な湯種生地が得られることを知見した。また、該湯種生地を使用して得られるベーカリー製品は、内相が良好でもっちりとした食感を有し、さらに経日的な老化が抑制されることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものである。すなわち、本発明は、マルトース生成型アミラーゼを含有する、油脂組成物である。
本発明によれば、保存性良好な湯種生地を得ることができる。また、該湯種生地を使用することで、内相が良好でもっちりとした食感を有し、経日的な老化が抑制されたベーカリー製品を得ることができる。
以下、本発明の湯種用油脂組成物について詳述する。
本発明の湯種用油脂組成物は、マルトース生成型アミラーゼを含有するものである。
アミラーゼは、デンプンやグリコーゲン等が有するグリコシド結合を加水分解する酵素の総称であり、一般にアミラーゼはその作用部位の違いによって、α−1,4グルコシド結合をランダムに切断するエンド型のアミラーゼ、非還元性末端からマルトース単位で逐次分解するエキソ型のアミラーゼ、同じくα−1,4グルコシド結合をグルコース単位で分解し、また、分岐点のα−1,6結合をも分解するグルコアミラーゼ等が挙げられる。
本発明の湯種用油脂組成物においては、上記アミラーゼの中でも、エキソ型アミラーゼであるマルトース生成型アミラーゼを含有することが必要である。マルトース生成型アミラーゼが油脂組成物中に分散した状態にあることにより、熱水を添加した際に活性を維持させることができる。その結果、生成したデンプン分解物により、保存性の悪かった湯種生地の保存性向上につながっているものと考えられる。マルトース生成型アミラーゼを湯種用油脂組成物中に分散させることなく湯種生地製造時に直接添加した場合、部分的な失活が生じ本発明の効果が得られないだけでなく、品質も大きくばらついたものとなってしまう。
該マルトース生成型アミラーゼとしては、α−1,4グルコシド結合をマルトース単位で切断する酵素であれば特に限定されるものではなく、市販のマルトース生成型αアミラーゼやβアミラーゼ等から選ばれた1種または2種以上を選択することができる。
マルトース生成型α―アミラーゼ製剤としては、例えばコクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、Novamyl 10000BG、NovamylL(登録商標)、マルトゲナーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
β―アミラーゼ製剤としては、例えばオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製)、β−アミラーゼ#1500、β−アミラーゼL、β−アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製)、ハイマルトシン(登録商標)G 、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製)、ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製)、GODO−GBA(合同清酒社製)等が挙げられる。
本発明においては、上記マルトース生成型アミラーゼの中でも酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼであることが好ましい。高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼの好ましい至適温度は65〜95℃、より好ましくは70〜90℃である。
上記マルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1マイクロモルのマルトースを生成する酵素量を指標とすることができる。本発明においてマルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。マルトースの測定は、還元糖の定量法第2版(福井作蔵著 学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明の湯種用油脂組成物中のマルトース生成型アミラーゼは、油脂組成物100gあたり、50〜75000単位であることが好ましく、100〜10000単位であることがより好ましく、500〜5000単位であることが最も好ましい。50単位よりも少ないと本発明の効果が見られず、また75000単位よりも多いと、最終的に得られるベーカリー製品の食感の弾力が強すぎるものとなってしまう。
本発明の湯種用油脂組成物においては、上記マルトース生成型アミラーゼに加え、α−1,4グルコシド結合をランダムに切断するエンド型のアミラーゼを含有することが好ましい。エンド型のアミラーゼを併用することで本発明の効果をより向上させることができ、具体的には湯種生地の保存性をより向上させ、最終的に老化が大きく抑制されもっちりとした食感のベーカリー製品を得ることができる。
エンド型のアミラーゼとしては、特に限定されるものではなく、市販のαアミラーゼ等を選択することができ、例えばα−アミラーゼ製剤としては、例えばクライスターゼL1、ビオザイム(登録商標)A、(以上アマノエンザイム社製)、ビオテックス(登録商標)L#3000、ビオテックス(登録商標)TS、スピターゼ(登録商標)HS、スピターゼ(登録商標)CP−40FG、スピターゼ(登録商標)CP3、スピターゼ(登録商標)L、スピターゼ(登録商標)XP−404、ネオスピターゼPK−2、T−50(以上、ナガセケムテックス社製)、グリンドアミル(登録商標)A(ダニスコジャパン社製)、BAN、ファンガミル(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、フクタミラーゼ(登録商標)30、フクタミラーゼ(登録商標)50、フクタミラーゼ(登録商標)10L、リクィファーゼL45(以上、エイチビーアイ社製)、VERON Soft+、VERONVERON M4、Sternzyme A6003(以上、樋口商会社製)、ユニアーゼ(登録商標)BM−8(ヤクルト薬品工業社製)、ソフターゲン(登録商標)・3H(タイショウテクノス社製)、ベイクザイムAN301登録商標)、Mat L Classic(登録商標)、Mycolase(登録商標)、ベイクザイム(登録商標)P500(DSM社製)、スミチーム AS(登録商標)、スミチームL(登録商標)(以上、新日本化学工業社製)等が挙げられる。
上記エンド型のアミラーゼの酵素活性は、標準の条件(37℃及びpH4.7)下で、1時間当たり5260mgの澱粉を分解する酵素の量(菌類α−アミラーゼ単位・FAUともいう)を指標とすることができる。本発明においてエンド型アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。
本発明の湯種用可塑性油脂組成物中のエンド型アミラーゼは、可塑性油脂組成物100gあたり、10〜12500単位であることが好ましく、50〜5000単位であることがより好ましく、100〜1000単位であることが最も好ましい。10単位よりも少ないと、最終的に得られるベーカリー製品の食感の弾力が強すぎるものとなる場合があるため好ましくない。また、12500単位よりも多いと湯種生地が軟らかくなりすぎ、作業性に劣ったものとなる場合があるほか、最終的に得られるベーカリー製品の内相がキメの粗いものとなる場合がある。
本発明の湯種用油脂組成物がエンド型アミラーゼを含有する場合には、その含有量は上記マルトース生成型アミラーゼ1単位に対して、エンド型アミラーゼが0.01〜5単位であることが好ましく、0.05〜1単位であることがより好ましく、0.1〜0.5単位であることが最も好ましい。上記マルトース生成型アミラーゼ1単位に対して、エンド型アミラーゼが0.01〜5単位から外れた場合、最終的に得られるベーカリー製品の食感が劣ったものとなる場合があるため好ましくない。
本発明の湯種用油脂組成物に使用する油脂としては、一般的な食用油脂であれば問題なく使用することができる。
例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の湯種用油脂組成物では、水分を含有する油中水型で乳化した形態で使用することもできるが、湯種用油脂組成物中の水分の含有量は20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満がより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。水分を多く含有すると、保存性の高い湯種生地が得られない場合があるほか、水分を実質的に含有しない場合に比べ本発明の効果が弱くなる傾向にある。
なお、「実質的に水を含有しない」とは、後述するその他の原料に由来する水分を含めて湯種用油脂組成物基準で水が5質量%未満、好ましくは3質量%未満を意味するものとし、上記の水としては水道水や天然水等の水や、後述するその他の成分に由来する水分も含めたものとする。
本発明の湯種用油脂組成物は、上記マルトース生成型アミラーゼ、エンド型のアミラーゼ、食用油脂、水以外に、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、乳化剤、乳製品、糖類・甘味料、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉類、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、マルトース生成型アミラーゼ及びエンド型のアミラーゼ以外のアミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等を添加してもよい。
上記の乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化成分が挙げられる。本発明の湯種用油脂組成物では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の湯種用油脂組成物において、上記の乳化剤の含有量は好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン及び乳清ミネラル等が挙げられる。本発明ではこれらの乳製品の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の湯種用油脂組成物において、上記の乳製品の含有量は固形物換算で好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖、ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等があげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の湯種用油脂組成物において、上記の糖類の含有量及び上記の甘味料の含有量の合計は、固形物換算で好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
本発明の湯種用油脂組成物における、上記の上記マルトース生成型アミラーゼ、エンド型のアミラーゼ、食用油脂及び水以外の成分の合計量は、固形分換算で好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
次に、本発明の湯種用油脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の湯種用油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、最終的にマルトース生成型アミラーゼが油脂組成物中に分散した状態で存在すれば公知の方法で製造することができる。
以下、具体的な製造方法として、本発明の湯種用油脂組成物として可塑性油脂組成物を製造する場合を例に挙げて説明する。
まず上記食用油脂を50〜80℃に加温し、溶解し、均一になるよう攪拌・混合する。続いて、油溶性の成分を添加し、混合する。必要に応じて水、その他水溶性の成分を混合した水相を油相と混合乳化することができる。
次に必要に応じて殺菌処理を行う。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、最も好ましくは80〜90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40〜60℃、更に好ましくは40〜55℃、最も好ましくは40〜50℃とする。
次に急冷可塑化を行なう。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等が挙げられ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。この急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物となる。
急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
ここで、マルトース生成型アミラーゼを添加することが好ましい。添加の際は、急冷可塑化された油脂組成物に粉末のまま添加する方法、油脂や水相に分散又は溶解後、これを急冷可塑化された油脂組成物に添加する方法等のいずれでもよい。
なお、マルトース生成型アミラーゼとして、上記高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼを使用する場合は、加温溶解した食用油脂に添加混合することも可能であるが、その後の殺菌工程等の加熱処理を伴う場合は、加熱処理後、好ましくは急冷可塑化後に添加することが好ましい。
上記の可塑性油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
次に、本発明の湯種生地について説明する。
本発明の湯種生地は、上記湯種用油脂組成物のほか、一般的な湯種生地と同様に澱粉類、水を含有するものである。
本発明の湯種生地中の上記油脂組成物の含有量は、湯種生地中の澱粉類100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、2〜5質量部が最も好ましい。
本発明の湯種生地に使用される澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉等の澱粉や、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、微細化、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
本発明の湯種生地で使用する水としては、特に限定されず、天然水や水道水などが挙げられ湯種生地における水の含有量は、下記のその他に含まれる水の含量も含め、澱粉類100質量部に対して50質量部〜200質量部が好ましく、70質量部〜140質量部がより好ましい。50質量部未満であると、最終的に得られるベーカリー製品の食感が硬くパサついたものとなる場合があり、一方200質量部を超えると、保存中に離水しやすい湯種生地になってしまうことに加え、べとつきの激しいベーカリー生地になってしまう問題があるため好ましくない。
本発明の湯種生地では、上記澱粉類、水、湯種用油脂組成物のほか、必要に応じてその他の原料を含有しても良い。
その他の成分としては、湯種用油脂組成物以外の食用油脂、乳化剤、乳製品、糖類・甘味料、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等を添加してもよい。
次に、本発明の湯種生地の製造方法について述べる。
本発明の湯種生地の製造方法としては、上記湯種用油脂組成物を添加する以外は従来湯種法に用いられている方法であれば良く、特に限定されるものではないが、下記の製造方法によることが好ましい。
当該製造方法とは、上記湯種用油脂組成物を、澱粉類100質量部に対し0.1〜20質量部含有する種生地材料を調製した後、該種生地材料を80〜100℃の水の存在下に混捏するものである。当該製造方法の例としては、以下の第1の好ましい製造方法及び第2の好ましい製造方法が挙げられる。
まず、第1の好ましい製造方法としては、澱粉類100質量部に対して上記湯種用油脂組成物を0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜5質量部加えて混捏して種生地材料を調製した後、該種生地材料に水温が80℃〜100℃の熱水を50〜150質量部、好ましくは70〜120質量部加えて混捏する方法、あるいは該種生地材料に常温の水又は温湯を50〜150質量部、好ましくは70〜120質量部加え、加熱しながら混捏する方法等を挙げることができる。このとき、澱粉類、湯種用油脂組成物、及び熱水以外の材料を使用する場合は、最終的に十分分散させることができればどの段階で添加しても構わない。
なお、混捏後の生地温度(捏上温度)は50℃〜80℃、好ましくは55℃〜70℃となるようにすれば良い。また、混捏時間も何ら限定されるものではなく、従来の湯種法において通常用いられている範囲であればよく、例えば、2分〜20分である。
また、第2の好ましい製造方法としては、澱粉類100質量部に対して、あらかじめ少量の水を添加して混合することで、澱粉類をまとめたあとに上記湯種用油脂組成物を加えて混捏して種生地材料を調製した後、該種生地材料に水温が80℃〜100℃の熱水を加えて混捏する方法、あるいは常温の水又は温湯を加え、加熱しながら混捏する方法等を挙げることができる。このとき、あらかじめ添加する水と後から添加する熱水又は水もしくは温湯はあわせて澱粉類100質量部に対し、50〜150質量部が好ましく、70〜120質量部がより好ましい。このとき、澱粉類、湯種用油脂組成物、及び熱水以外の材料を使用する場合は、最終的に十分分散させることができればどの段階で添加しても構わない。
次に本発明のベーカリー生地について述べる。
本発明のベーカリー生地は、上記湯種生地を、湯種生地に使用する澱粉類を含むベーカリー生地中の全澱粉類100質量部に対し10〜100質量部、好ましくは20〜50質量部使用して得られるものである。
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地等の菓子生地や、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等のパン生地が挙げられるが、本発明のベーカリー生地は、得られるベーカリー製品のもっちりとした食感の向上効果が高い点から、パン生地であることが好ましい。
なお、該ベーカリー生地の製造方法は、一般的なベーカリー生地の製造方法に従って得ることができ、パン類であれば中種法、ストレート法等、ケーキ類であれば、オールインミックス法、シュガーバッター法、フラワーバッター法等を適宜選択可能である。
たとえば、パン類の製造方法を例に挙げると、従来公知の湯種法によるパン類の製造方法において用いられている方法は全て用いることができる。例えば、湯種生地に、小麦粉、イースト、その他副原料、常温の水を加えて常法により混捏する方法、湯種生地とは別に、小麦粉、イースト、その他副原料、常温の水を加えて常法により混捏した中種生地を得、湯種生地と中種生地とを(必要に応じて、更に小麦粉、その他副原料とともに)混合して常法により混捏する方法等を挙げることができる。
次に本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は上記ベーカリー生地を焼成及び/又はフライしてなるものであり、もっちりとした食感を有し、内相が良好で経日的な老化が抑制されたものとなる。焼成方法やフライ方法は、とくに制限されず、一般的なベーカリー製品の製造方法に従って得ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
[実施例1]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.65質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(Novozymes社製・製品名「Novamyl 10000BG」10000単位/g使用、至適温度75〜85℃、以下の高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼも同じ )0.2質量部とαアミラーゼ(Novozymes社製・製品名「Fungamyl 2500SG」2500単位/g使用、以下のαアミラーゼも同じ)0.15質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Aを得た。
湯種用可塑性油脂組成物A100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは2000単位、エンド型アミラーゼは375単位であった。
[実施例2]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.75質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.15質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.1質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Bを得た。
湯種用可塑性油脂組成物B100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは1500単位、エンド型アミラーゼは250単位であった。
[実施例3]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.8質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.1質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.1質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Cを得た。
湯種用可塑性油脂組成物C100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは1000単位、エンド型アミラーゼは250単位であった。
[実施例4]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.6質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.1質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.3質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Dを得た。
湯種用可塑性油脂組成物D100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは1000単位、エンド型アミラーゼは750単位であった。
[実施例5]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.4質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.1質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.5質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Eを得た。
湯種用可塑性油脂組成物E100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは1000単位、エンド型アミラーゼは1250単位であった。
[実施例6]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.8質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.2質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Fを得た。
湯種用可塑性油脂組成物F100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは2000単位であった。
[実施例7]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.95質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.03質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.02質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Gを得た。
湯種用可塑性油脂組成物G100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは300単位、エンド型アミラーゼは50単位であった。
[実施例8]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物98質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)1.2質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.8質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Hを得た。
湯種用可塑性油脂組成物H100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは12000単位、エンド型アミラーゼは2000単位であった。
[実施例9]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物95質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)3質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)2質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Iを得た。
湯種用可塑性油脂組成物Iの100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは30000単位、エンド型アミラーゼは5000単位であった。
[実施例10]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物91.15質量部にグリセリンコハク酸モノ脂肪酸エステル3質量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.5質量部を混合し油相を調製した。この中へ水からなる水相15質量部を混合し、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.2質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.15質量部を添加・混合し、本発明の湯種用可塑性油脂組成物Jを得た。
湯種用可塑性油脂組成物Jの100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは2000単位、エンド型アミラーゼは375単位であった。
[比較例1]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物100質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化し、比較例である可塑性油脂組成物Mを得た。
[比較例2]
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部を60℃に加熱し溶解・混合して得られた油脂配合物99.7質量部を、常法に従って加熱殺菌および冷却・可塑化を行った。続いて、αアミラーゼ(2500単位/g)0.3質量部を添加・混合し、比較例である可塑性油脂組成物Nを得た。
可塑性油脂組成物Nの100gに含まれるマルトース生成型アミラーゼは0単位、エンド型アミラーゼは750単位であった。
<<湯種生地、ベーカリー生地及びベーカリー製品の製造>>
〔製造例1〕
強力粉100質量部に、上記湯種用可塑性油脂組成物A3質量部を加えて混合した後、熱水(95℃)100質量部を加えてさらに混捏(90rpm×3分+180rpm×2分)し湯種生地Aを得た。捏上温度は65℃であった。得られた湯種生地Aを3等分し、そのうち一つは引き続きベーカリー製品の製造に使用し<これを湯種生地(A−0)とする>、もう一つは5℃で1週間保存した後ベーカリー製品の製造に使用し<これを湯種生地(A−1)とする>、最後の一つは5℃で2週間保存した後ベーカリー製品の製造に使用した<これを湯種生地(A−2)とする>。
上記湯種生地(A−0)30質量部に強力粉85質量部、上白糖5質量部、イースト2.2質量部、イーストフード0.1質量部、食塩2質量部、及び水(常温)61質量部を加えて混捏(90rpm×4分+180rpm×8分)し、ここでショートニング5質量部を加え、更に混捏(90rpm×3分+180rpm×5分)してベーカリー生地(A)を得た。得られたベーカリー生地(A)を、フロアタイム60分、ベンチタイム20分、ホイロ60分として発酵させ、200℃で45分焼成してプルマンブレッドであるベーカリー製品(A−0)を得た。
また、上記製造直後の湯種生地(A−0)に代えて1週間保存後の湯種生地(A−1)又は2週間保存した後の湯種生地(A−2)を使用した以外は同様にして、それぞれベーカリー製品(A−1)、ベーカリー製品(A−2)を得た。
湯種生地及びベーカリー製品は下記基準で評価を行った。
<湯種生地の評価>
・湯種生地の保存性試験
5℃で1週間又は2週間保存した湯種生地の状態を、保存前の(製造直後の)湯種生地を比較対象として、下記基準で評価した。
結果は下記の〔表1〕に示す。
−:老化や離水はまったく見られず、保存前の状態を維持している。
±:わずかに老化や離水が見られるものの、保存前の状態をほぼ維持している。
+:老化によるぱさつきや離水が見られる。
++:老化によるぱさつきや離水が激しい。
<ベーカリー製品の評価>
得られたベーカリー製品は、内相の評価及び食感(もっちり感)の評価を行った。
・内相の評価
25℃で1日保管した後、スライサーで12mm厚にスライスし、下記基準で内相を評価した。結果は〔表2〕に示した。
◎:キメが細かく均一で極めて良好である。
○:キメが細かく均一で良好である。
△:ややキメが荒く不均一である。
×:キメが荒く不均一である。
・食感(もっちり感)の評価
パネラー10人にて、焼成1日後及び3日後の食感(もっちり感)について、「極めて良好であったもの」に3点、「良好であったもの」に2点、「もっちり感が弱かったり、逆に強すぎて不良であったもの」に1点、「もっちり感が感じられなかったり、逆に強すぎて極めて不良であったもの」に0点とし、その合計点を下記基準で分類し〔表2〕に示した。
◎+:30〜26点
◎ :25〜20点
○ :19〜15点
△ :14〜10点
× :9点以下
[製造例2〜10]
上記[製造例1]の湯種用可塑性油脂組成物Aに代えて湯種用可塑性油脂組成物B〜Jのいずれかを使用した以外は[製造例1]と同様にして湯種生地(B−0)〜(J−0)、(B−1)〜(J−1)及び(B−2)〜(J−2)を得た。これらは上記<湯種生地の評価>と同様の基準で保存性を評価した。結果は〔表1〕に示す。
また、上記湯種生地(A−0)に代えて上記湯種生地(B−0)〜(J−0)及び(B−1)〜(J−1)のいずれかを使用した以外は上記と同様にして、ベーカリー製品(B−0)〜(J−0)及び(B−1)〜(J−1)を得た。これらは上記<ベーカリー製品の評価>と同様の基準で内相及び食感(もっちり感)を評価した。結果は〔表2〕に示す。
[製造例11]
上記[製造例1]の湯種用可塑性油脂組成物A3質量部から2質量部とした以外は[製造例1]と同様にして湯種生地(K−0)、(K−1)及び(K−2)を得た。これらは上記<湯種生地の評価>と同様の基準で保存性を評価した。結果は〔表1〕に示す。
また、上記湯種生地(A−0)に代えて上記湯種生地(K−0)及び(K−1)のいずれかを使用した以外は上記と同様にして、ベーカリー製品(K−0)及び(K−1)を得た。これらは上記<ベーカリー製品の評価>と同様の基準で内相及び食感(もっちり感)を評価した。結果は〔表2〕に示す。
[製造例12]
上記[製造例1]の湯種用可塑性油脂組成物A3質量部から5質量部とした以外は[製造例1]と同様にして湯種生地(L−0)、(L−1)及び(L−2)を得た。これらは上記<湯種生地の評価>と同様の基準で保存性を評価した。結果は〔表1〕に示す。
また、上記湯種生地(A−0)に代えて上記湯種生地(L−0)及び(L−1)のいずれかを使用した以外は上記と同様にして、ベーカリー製品(L−0)及び(L−1)を得た。これらは上記<ベーカリー製品の評価>と同様の基準で内相及び食感(もっちり感)を評価した。結果は〔表2〕に示す。
[比較製造例1〜2]
上記[製造例1]の湯種用可塑性油脂組成物Aに代えて湯種用可塑性油脂組成物M、Nのいずれかを使用した以外は[製造例1]と同様にして湯種生地(M−0)〜(N−0)、(M−1)〜(N−1)及び(M−2)〜(N−2)を得た。これらは上記<湯種生地の評価>と同様の基準で保存性を評価した。結果は〔表1〕に示す。
また、上記湯種生地(A−0)に代えて上記湯種生地(M−0)、(N−0)のいずれかを使用した以外は上記と同様にして、ベーカリー製品(M−0)、(N−0)を得た。これらは上記<ベーカリー製品の評価>と同様の基準で内相及び食感(もっちり感)を評価した。結果は〔表2〕に示す。
[比較製造例3]
強力粉100質量部に、上記可塑性油脂組成物M3質量部、高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼ(10000単位/g)0.01質量部とαアミラーゼ(2500単位/g)0.0075質量部を加えて混合した後、熱水(95℃)100質量部を加えてさらに混捏(90rpm×3分+180rpm×2分)し湯種生地Pを得た。捏上温度は65℃であった。得られた湯種生地Pを3等分して[製造例1]と同様に湯種生地(P−0)、(P−1)、(P−2)を得た。
これらは上記<湯種生地の評価>と同様の基準で保存性を評価した。結果は〔表1〕に示す。
また、[製造例1]における湯種生地(A−0)に代えて上記湯種生地(P−0)を使用した以外は[製造例1]と同様にして、ベーカリー製品(P−0)を得た。これらは上記<ベーカリー製品の評価>と同様の基準で内相及び食感(もっちり感)を評価した。結果は〔表2〕に示す。
Figure 2015198610
Figure 2015198610

Claims (8)

  1. マルトース生成型アミラーゼを含有する、湯種用油脂組成物。
  2. さらに、エンド型アミラーゼを含有する、請求項1記載の湯種用油脂組成物。
  3. 油脂組成物中、上記マルトース生成型アミラーゼの酵素活性1単位に対し、エンド型アミラーゼの酵素活性が0.01〜5単位である、請求項2記載の湯種用油脂組成物。
  4. 可塑性を有することを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の湯種用油脂組成物。
  5. 澱粉類100質量部に対し、請求項1〜4いずれか一項記載の湯種用油脂組成物を0.1〜20質量部含有する湯種生地。
  6. 請求項5記載の湯種生地を、該湯種生地に使用する澱粉類を含む全澱粉類100質量部に対し10〜100質量部使用したことを特徴とするベーカリー生地。
  7. 請求項6記載のベーカリー生地を焼成及び/又はフライして得られたベーカリー製品。
  8. マルトース生成型アミラーゼを含有する湯種用油脂組成物を、澱粉類100質量部に対し0.1〜20質量部含有する種生地材料を調製した後、該種生地材料を80〜100℃の水の存在下に混捏することを特徴とする湯種生地の製造方法。
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