JP2015187310A - 軌道輪の製造方法、軌道輪および転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受の軌道輪の製造方法は、0.43〜0.65%の炭素と、0.15〜0.35%の珪素と、0.60〜1.10%のマンガンと、0.30〜1.20%のクロムと、0.15〜0.75%のモリブデンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成される成形体を準備する工程(S10)と、成形体において軌道輪の転走面となるべき環状領域の一部に面するように配置され、成形体を誘導加熱する誘導加熱部材を、環状領域の周方向に沿って相対的に回転させることにより、成形体にA1点以上の温度に加熱された環状の加熱領域を形成する工程(S30)と、加熱領域全体をMS点以下の温度に同時に冷却する工程(S40)とを備えている。
【選択図】図1
Description
炭素含有量は、焼入硬化後における軌道輪の転走面の硬度に大きな影響を与える。成形体(軌道輪)を構成する鋼の炭素含有量が0.43質量%未満では、焼入硬化後における転走面に十分な硬度を付与することが困難となる。一方、炭素含有量が0.65質量%を超えると、焼入硬化の際の割れの発生(焼割れ)が懸念される。そのため、炭素含有量は0.43質量%以上0.65%質量%以下とした。
珪素は、鋼の焼戻軟化抵抗の向上に寄与する。成形体(軌道輪)を構成する鋼の珪素含有量が0.15質量%未満では、焼戻軟化抵抗が不十分となり、焼入硬化後の焼戻や、軌道輪の使用中における温度上昇により転走面の硬度が大幅に低下する可能性がある。一方、珪素含有量が0.35質量%を超えると、焼入前の素材の硬度が高くなり、素材を軌道輪に成形する際の冷間加工における加工性が低下する。そのため、珪素含有量は0.15質量%以上0.35質量%以下とした。
マンガンは、鋼の焼入性の向上に寄与する。マンガン含有量が0.60質量%未満では、この効果が十分に得られない。一方、マンガン含有量が1.10質量%を超えると、焼入前の素材の硬度が高くなり、冷間加工における加工性が低下する。そのため、マンガン含有量は0.60質量%以上1.10質量%以下とした。
クロムは、鋼の焼入性の向上に寄与する。クロム含有量が0.30質量%未満では、この効果が十分に得られない。一方、クロム含有量が1.20質量%を超えると、素材コストが高くなるという問題が生じる。そのため、クロム含有量は0.30質量%以上1.20質量%以下とした。
モリブデンも、鋼の焼入性の向上に寄与する。モリブデン含有量が0.15質量%未満では、この効果が十分に得られない。一方、モリブデン含有量が0.75質量%を超えると、素材コストが高くなるという問題が生じる。そのため、モリブデン含有量は0.15質量%以上0.75質量%以下とした。
ニッケルも、鋼の焼入性の向上に寄与する。ニッケルは、本発明の軌道輪を構成する鋼において必須の成分ではないが、軌道輪の外形が大きい場合など、軌道輪を構成する鋼に特に高い焼入性が求められる場合に添加することができる。ニッケル含有量が0.35質量%未満では、焼入性向上の効果が十分に得られない。一方、ニッケル含有量が0.75質量%を超えると、焼入後における残留オーステナイト量が多くなり、硬さの低下、寸法安定性の低下などの原因となるおそれがある。そのため、軌道輪を構成する鋼に0.35質量%以上0.75質量%以下の範囲で添加することが好ましい。
まず、転がり軸受の軌道輪である内輪の製造方法を例に、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、本実施の形態における内輪の製造方法では、まず工程(S10)として成形体準備工程が実施される。この工程(S10)では、0.43質量%以上0.65質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.60質量%以上1.10質量%以下のマンガンと、0.30質量%以上1.20質量%以下のクロムと、0.15質量%以上0.75質量%以下のモリブデンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼材が準備され、鍛造、旋削などの加工が実施されることにより、所望の内輪の形状に応じた形状を有する成形体が作製される。より具体的には、1000mm以上の内径を有する内輪の形状に応じた成形体が作製される。ここで、製造すべき内輪が特に大きく、鋼により高い焼入性が求められる場合、上記合金成分に加えて0.35質量%以上0.75質量%以下のニッケルを添加した鋼材を採用してもよい。上記成分組成を満足する鋼としては、たとえばJIS規格SUP13、SCM445、SAE規格8660Hなどが挙げられる。
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。実施の形態2における内輪の製造方法は、基本的には実施の形態1の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における内輪の製造方法は、工程(S30)におけるコイル21の配置において、実施の形態1の場合とは異なっている。
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。実施の形態3における内輪の製造方法は、基本的には実施の形態1および2の場合と同様に実施され、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における内輪の製造方法は、工程(S30)における温度計22の配置において、実施の形態1および2の場合とは異なっている。
次に、本発明の軌道輪が風力発電装置用軸受(風力発電装置用転がり軸受)を構成する軌道輪として用いられる実施の形態4について説明する。
Claims (11)
- 転がり軸受の軌道輪の製造方法であって、
0.43質量%以上0.65質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.60質量%以上1.10質量%以下のマンガンと、0.30質量%以上1.20質量%以下のクロムと、0.15質量%以上0.75質量%以下のモリブデンとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成される成形体を準備する工程と、
前記成形体において前記軌道輪の転走面となるべき環状領域の一部に面するように配置され、前記成形体を誘導加熱する誘導加熱部材を、前記環状領域の周方向に沿って相対的に回転させることにより、前記成形体にA1点以上の温度に加熱された環状の加熱領域を形成する工程と、
前記加熱領域全体をMS点以下の温度に同時に冷却する工程と、
前記加熱領域を形成する工程の後、前記冷却する工程の前に、前記成形体を加熱が停止された状態に保持し、前記加熱領域における前記周方向の温度のばらつきを20℃以下にまで抑制する工程とを備えた、軌道輪の製造方法。 - 転がり軸受の軌道輪の製造方法であって、
0.43質量%以上0.65質量%以下の炭素と、0.15質量%以上0.35質量%以下の珪素と、0.60質量%以上1.10質量%以下のマンガンと、0.30質量%以上1.20質量%以下のクロムと、0.15質量%以上0.75質量%以下のモリブデンと、0.35質量%以上0.75質量%以下のニッケルとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成される成形体を準備する工程と、
前記成形体において前記軌道輪の転走面となるべき環状領域の一部に面するように配置され、前記成形体を誘導加熱する誘導加熱部材を、前記環状領域の周方向に沿って相対的に回転させることにより、前記成形体にA1点以上の温度に加熱された環状の加熱領域を形成する工程と、
前記加熱領域全体をMS点以下の温度に同時に冷却する工程と、
前記加熱領域を形成する工程の後、前記冷却する工程の前に、前記成形体を加熱が停止された状態に保持し、前記加熱領域における前記周方向の温度のばらつきを20℃以下にまで抑制する工程とを備えた、軌道輪の製造方法。 - 前記加熱領域を形成する工程よりも前に、前記成形体に焼ならし処理を実施する工程をさらに備えた、請求項1または2に記載の軌道輪の製造方法。
- 前記焼ならし処理を実施する工程では、前記成形体に気体とともに硬質の粒子が吹き付けられることにより、前記成形体が冷却されつつショットブラスト処理が実施される、請求項3に記載の軌道輪の製造方法。
- 前記加熱領域を形成する工程よりも前に、前記成形体全体に焼入処理を実施した後、焼戻処理を実施する工程をさらに備えた、請求項1または2に記載の軌道輪の製造方法。
- 前記加熱領域を形成する工程では、前記誘導加熱部材は、前記成形体の周方向に沿って相対的に2周以上回転する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法。
- 前記加熱領域を形成する工程では、前記誘導加熱部材は、前記成形体の周方向に沿って複数個配置される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法。
- 前記加熱領域を形成する工程では、前記加熱領域の複数箇所の温度が測定される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法により製造され、1000mm以上の内径を有する、軌道輪。
- 内輪と、
前記内輪の外周側を取り囲むように配置された外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の転動体とを備え、
前記内輪および前記外輪の少なくともいずれか一方は請求項9に記載の転がり軸受の軌道輪である、転がり軸受。 - 風力発電装置において、前記内輪にはブレードに接続された主軸が貫通して固定され、前記外輪はハウジングに対して固定されることにより、前記主軸を前記ハウジングに対して回転自在に支持する、請求項10に記載の転がり軸受。
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