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JP2015054637A - 4輪駆動車の制御装置 - Google Patents

4輪駆動車の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】路外逸脱防止や障害物回避のために自車両にヨーモーメントを付加する自動ブレーキ制御装置を搭載したプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車において、副駆動軸とプロペラシャフトを同期させるときに必要なエネルギを、自動ブレーキ制御装置が吸収し、消費しなければならないエネルギから転用・有効利用する。
【解決手段】前方情報に基づき車線逸脱・障害物回避のために自車両に付加する目標ヨーモーメントMzt0を算出して自動ブレーキを作動させる。この自動ブレーキを作動させる際、旋回内輪側のホイールクラッチを締結すると共に、旋回内輪側のホイールクラッチを締結するクラッチトルクTwを基にプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzを算出し、該ヨーモーメントΔMzで目標ヨーモーメントMzt0を補正して最終的な目標ヨーモーメントMztを算出する。
【選択図】図4

Description

本発明は、路外逸脱防止や障害物回避のために自車両にヨーモーメントを付加する自動ブレーキ制御装置を搭載したプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車の制御装置に関する。
従来より、主駆動軸から停止自在なプロペラシャフトを介して副駆動軸に駆動力を伝達する4輪駆動車では、走行抵抗を低減するためにプロペラシャフトの回転を止めた2WD状態から、走行中に4WD状態へ切り換える際は、プロペラシャフトにトルクを加えて車輪と先ず回転同期させる必要がある。このプロペラシャフトへの回転同期トルクは駆動系に対しては制動トルクとして作用するため、この同期トルクが大きくなると車両に不快・不要な減速感やショック(前後ジャーク)が発生してしまう。この制動トルクの発生を抑制しようとすると、2WD状態から4WD状態に素早く移行できず、切換時間短縮とのトレードオフが大きな課題となっている。このような、2WD状態から4WD状態へ切換える4輪駆動車の技術として、例えば、特開2010−100280号公報(以下、特許文献1)では、自動車の補助アクスルへ駆動トルクの可変な部分を伝達するための第1のクラッチと、第1のクラッチが開かれているときに、第1のクラッチと第2のクラッチとの間に配されたプロペラシャフトを無効化するための第2のクラッチとを有し、主アクスルにおいて検出されたホイールスリップに基づいて第2のクラッチが閉じられ、第2のクラッチの係合前に無効化状態のプロペラシャフトが加速される技術が開示されている。
特開2010−100280号公報
しかしながら、上述の特許文献1に開示される4輪駆動車のように、プロペラシャフトの如何にスムーズな回転同期を実現しても、車両の走行(運動)エネルギや新たな燃料を消費してプロペラシャフトの回転を加速する動作は、停止自在なプロペラシャフトを採用して燃費の向上を図るという静止機構本来の狙いと相反するエネルギロスであることには変わりは無い。また、上述の特許文献1に開示される技術は、回転同期に伴う車両の減速度を実用上問題無いレベルに抑える技術だが、4WDが必要とされる加速操作や駆動輪のスリップが生じてから4WDへ切り換える準備として回転同期を開始するため、その時間遅れに対する抜本的な解決にはならないという問題もある。
ところで、近年、車両においては、安全性の向上やドライバの負担を軽減することを目的として様々な自動ブレーキ制御装置が開発・実用化されており、このような自動ブレーキ制御装置は4輪駆動車においても積極的に採用されている。上述のようなプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車で、副駆動軸とプロペラシャフトを同期させるために必要なエネルギを、こうした自動ブレーキ制御装置が吸収し、消費しなければならないエネルギから転用して利用できれば、何等かの形で消費しなければならない車両の運動エネルギの有効利用となり望ましい。また、路外逸脱防止や障害物回避のために自動ブレーキが作動する状況では、タイヤグリップの限界に近づく可能性が高いので、予め4WD状態に切り換えておくことは安全上も有効である。更に、回転同期によって車両に加わる減速度を加味して主ブレーキの作動を緩めることができれば、ブレーキへの熱負荷も軽減できる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、路外逸脱防止や障害物回避のために自車両にヨーモーメントを付加する自動ブレーキ制御装置を搭載したプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車において、副駆動軸とプロペラシャフトを同期させるために必要なエネルギを、自動ブレーキ制御装置が吸収し、消費しなければならないエネルギから転用・有効利用し、また、路外逸脱防止や障害物回避が予測される状態では予め4WD状態へと移行して安全性を向上し、車両のヨー応答も向上して、更に、自動ブレーキ制御装置の作動で生じる主ブレーキの熱負荷も軽減することができる4輪駆動車の制御装置を提供することを目的とする。
本発明の4輪駆動車の制御装置の一態様は、前軸と後軸のどちらか一方の主駆動軸から他方の副駆動軸へ動力伝達軸を介して駆動力を伝達すると共に、上記主駆動軸と上記動力伝達軸との間に第1のクラッチ手段を設け、上記副駆動軸には左右輪間の差動機構に代えて左車輪側と右車輪側のそれぞれに駆動力の伝達を継断自在な第2のクラッチ手段を設けた4輪駆動車において、前方の道路情報を認識する前方情報認識手段と、上記前方情報認識手段からの前方情報に基づき自車両に付加する目標ヨーモーメントを算出して自動ブレーキを作動させる自動ブレーキ制御手段と、上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段の締結と開放を制御する駆動力制御手段とを有し、上記駆動力制御手段は、上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段とを締結した4輪駆動状態としていない場合に、上記自動ブレーキ制御手段が上記前方情報に基づき自車両に上記目標ヨーモーメントを付加すべく上記自動ブレーキを作動させる際は、旋回内輪側の上記第2のクラッチ手段を締結すると共に、上記旋回内輪側の上記第2のクラッチ手段を締結するクラッチトルクを基に上記動力伝達軸と上記副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントを算出し、該ヨーモーメントで上記自動ブレーキ制御手段で算出する上記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段とを備えた。
本発明による4輪駆動車の制御装置によれば、路外逸脱防止や障害物回避のために自車両にヨーモーメントを付加する自動ブレーキ制御装置を搭載したプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車において、副駆動軸とプロペラシャフトを同期させるときに必要なエネルギを、自動ブレーキ制御装置が吸収し、消費しなければならないエネルギから転用・有効利用し、また、路外逸脱防止や障害物回避が予測される状態では予め4WD状態へと移行して安全性を向上し、車両のヨー応答も向上して、更に、自動ブレーキ制御装置の作動で生じる主ブレーキの熱負荷も軽減することが可能となる。
本発明の実施の一形態による、車両の概略構成を示す説明図である。 本発明の実施の一形態による、制御ユニットの機能ブロック図である。 本発明の実施の一形態による、路外逸脱防止・障害物回避制御のフローチャートである。 本発明の実施の一形態による、目標ヨーモーメント補正処理のフローチャートである。 本発明の実施の一形態による、クラッチ開放判定処理のフローチャートである。 本発明の実施の一形態による、白線と路側障害物に対する自車両の位置関係とそれぞれに対する逸脱量の説明図である。 本発明の実施の一形態による、逸脱量に応じて設定される逸脱防止ヨーモーメントの説明図で、図7(a)は白線からの逸脱量に応じて設定される第1の逸脱防止ヨーモーメントの一例を示し、図7(b)は障害物に対する逸脱量に応じて設定される第2の逸脱防止ヨーモーメントの一例を示す。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は車両前部に配置されたエンジンを示し、このエンジン1による駆動力は、エンジン1後方の自動変速装置(トルクコンバータ等も含んで図示)2からトランスミッション出力軸2aを経てトランスファ3に伝達される。
このトランスファ3に伝達された駆動力は、リヤドライブ軸4、プロペラシャフト5、ドライブピニオン軸部6を介して後輪終減速装置7に入力される一方、リダクションドライブギヤ8、リダクションドリブンギヤ9、ドライブピニオン軸部となっているフロントドライブ軸10を介して前輪終減速装置11に入力される。ここで、自動変速装置2、トランスファ3および前輪終減速装置11等は、一体にケース12内に設けられている。
後輪終減速装置7に入力された駆動力は、後輪左ドライブ軸13rlを経て左後輪14rlに、更に、後輪右ドライブ軸13rrを経て右後輪14rrに伝達自在に構成されている。
また、前輪終減速装置11に入力された駆動力は、前輪左ドライブ軸13flを経て左前輪14flに、前輪右ドライブ軸13frを経て右前輪14frに伝達される。
トランスファ3は、リダクションドライブギヤ8側に設けたドライブプレート15aとリヤドライブ軸4側に設けたドリブンプレート15bとを交互に重ねて構成したトルク伝達容量可変型クラッチである湿式多板クラッチ(トランスファクラッチ)15と、このトランスファクラッチ15の締結力を可変自在に付与するピストン16とにより構成されている。
また、後輪終減速装置7は、差動機構を有すること無く、後輪左ドライブ軸13rlには、駆動力の伝達を継断自在な左ホイールクラッチ17lが介装される一方、後輪右ドライブ軸13rrには、駆動力の伝達を継断自在な右ホイールクラッチ17rが介装されている。これら左右のホイールクラッチ17l,17rは、それぞれのドライブ軸13rl,13rr間を継断するにあたり、公知の回転数の同期がとられて実行されるように構成されている。
従って、本実施の4輪駆動車では、トランスファクラッチ15と左右のホイールクラッチ17l,17rが全て開放された状態では、プロペラシャフト5が停止される状態となり、前輪左ドライブ軸13flと前輪右ドライブ軸13frで主駆動軸が構成され、後輪左ドライブ軸13rlと後輪右ドライブ軸13rrで副駆動軸が構成され、プロペラシャフト5が動力伝達軸として設けられ、トランスファクラッチ15が第1のクラッチ手段として設けられ、左右のホイールクラッチ17l,17rが第2のクラッチ手段として設けられている。そして、ピストン16による押圧力でトランスファクラッチ15を制御することにより、プロペラシャフト5に対して回転トルクが付与されてプロペラシャフト5と主駆動軸との回転同期が制御され、また、車両の前後駆動力配分制御が行われる。また、左輪側のホイールクラッチ17lを開放状態から締結することで、プロペラシャフト5を同期回転させるエネルギが左輪側の減速(制動)力として作用し、同様に、右輪側のホイールクラッチ17rを開放状態から締結することで、プロペラシャフト5を同期回転させるエネルギが右輪側の減速(制動)力として作用する。
ここで、ピストン16の押圧力は、複数のソレノイドバルブ等を擁した油圧回路で構成するトランスファクラッチ駆動部31trcで与えられる。このトランスファクラッチ駆動部31trcを駆動させる制御信号(トランスファクラッチトルク)は、後述する制御ユニット30から出力される。また、左右のホイールクラッチ17l,17rは、それぞれ複数のソレノイドバルブ等を擁した油圧回路で構成する左右のホイールクラッチ駆動部31wcl,31wcrにより作動される。そして、これら左右のホイールクラッチ駆動部31wcl,31wcrを駆動させる制御信号は、後述する制御ユニット30から出力される。
一方、符号32は車両のブレーキ駆動部を示し、このブレーキ駆動部32には、ドライバにより操作される、図示しないブレーキペダルと接続されたマスターシリンダが接続されており、ドライバがブレーキペダルを操作する(踏み込む)とマスターシリンダにより、ブレーキ駆動部32を通じて、4輪14fl,14fr,14rl,14rrの各ホイールシリンダ(左前輪ホイールシリンダ18fl,右前輪ホイールシリンダ18fr,左後輪ホイールシリンダ18rl,右後輪ホイールシリンダ18rr)にブレーキ圧が導入され、これにより4輪にブレーキがかかって制動される。
ブレーキ駆動部32は、加圧源、減圧弁、増圧弁等を備えたハイドロリックユニットで、制御部30等からの入力信号に応じて、各ホイールシリンダ18fl,18fr,18rl,18rrに対して、それぞれ独立にブレーキ圧を導入自在に形成されている。
制御ユニット30には、前方認識装置21、各車輪14fl,14fr,14rl,14rrの車輪速度センサ(左前輪車輪速度センサ22fl,右前輪車輪速度センサ22fr,左後輪車輪速度センサ22rl,右後輪車輪速度センサ22rr)、プロペラシャフト回転速度センサ23、その他、図示しない、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、エンジン制御ユニット(ECU)、トランスミッション制御ユニット(TCU)等が接続され、自車両前方の立体物データや白線データ等の前方情報(詳しくは後述する)、各車輪14fl,14fr,14rl,14rrの車輪速度(左前輪車輪速度ωfl,右前輪車輪速度ωfr,左後輪車輪速度ωrl,右後輪車輪速度ωrr)、プロペラシャフト回転速度ωd、操舵角、ヨーレート、エンジン回転数、吸入空気量、トランスミッションギヤ比等が入力される。尚、本実施の形態では、主駆動軸の回転速度ωmとして左前輪車輪速度ωflと右前輪車輪速度ωfrの平均回転速度を採用し、副駆動軸の回転速度ωsとして左後輪車輪速度ωrlと右後輪車輪速度ωrrの平均回転速度(車両が旋回中の場合には旋回内輪の車輪速度)を採用する。
ここで、前方認識装置21は、例えば、ステレオカメラ21aで撮像した画像を基に前方の道路情報を認識するように構成されている。ステレオカメラ21aは、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラで構成される。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データを前方認識装置21に入力する。
前方認識装置21における、ステレオカメラ21aからの画像の処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラ21aのCCDカメラで撮像した自車両の進行方向の環境の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を求める処理を行なって、三次元の距離分布を表す距離画像を生成する。
このデータを基に、周知のグルーピング処理や、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、側壁データ、立体物データ等と比較し、白線データ、前方障害物データ(道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁、電柱等の固定障害物、4輪車、2輪車、歩行者等の立体物データ)を抽出する。こうして抽出された白線データ、前方障害物データは、それぞれのデータの種類毎に異なったナンバーが割り当てられる。
そして、前方認識装置21は、白線、及び、前方障害物について、予め定めた自車両のカメラ位置を中心とする所定の2次元座標上に、それぞれが存在する位置をメモリし、制御ユニット30に出力する。
また、前方認識装置21は、図6に示すように、現在の自車両の進行方向(カメラ位置を中心とする直進方向)と白線とのなす角を交差角αとして算出し、また、現在の、自車両の中心から白線までの距離(白線への垂線方向距離)yL0、及び、現在の自車両の中心から障害物までの距離(白線への垂線方向と平行な方向での距離)ys0を算出して制御ユニット30に出力する。このように、ステレオカメラ21a、前方認識装置21は、前方情報認識手段として設けられている。尚、本実施の形態では、前方情報認識手段としてステレオカメラ21aを利用する例を説明したが、これに限ること無く、例えば、単眼カメラ、レーダー、レーザー、又は、これらを組み合わせるものであっても良い。
そして、制御ユニット30は、上述の各入力信号に基づいて、白線や前方障害物等の前方情報に基づき車線逸脱を防止するための、また、障害物を回避するための自車両に付加する目標ヨーモーメントMzt0を算出して自動ブレーキを作動させる。この自動ブレーキを作動させる際、旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)を締結すると共に、旋回内輪側のホイールクラッチを締結するクラッチトルクTwを基にプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzを算出し、該ヨーモーメントΔMzで目標ヨーモーメントMzt0を補正して最終的な目標ヨーモーメントMztを算出し、この最終的な目標ヨーモーメントMztに応じたブレーキ液圧(内側前輪ブレーキ液圧Pbf、内側後輪ブレーキ液圧Pbr)を算出してブレーキ駆動部32に出力する。また、4WD状態ではない場合で、且つ、自動ブレーキの対象となる白線部位や前方障害物を通過後、所定時間経過した場合には全てのクラッチ15、17l,17rを開放状態とする。
このため、制御ユニット30は、図2に示すように、4輪駆動制御部30a、路外逸脱防止・障害物回避制御部30b、目標ヨーモーメント補正処理部30c、クラッチ開放判定部30dから主要に構成されている。
4輪駆動制御部30aは、4輪車輪速度センサ22fl,22fr,22rl,22rrから各輪の車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力され、また、図示しない操舵角センサから操舵角が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートが入力され、ECUからエンジン回転数、吸入空気量が入力され、TCUからトランスミッションギヤ比が入力され、更に、目標ヨーモーメント補正処理部30cから旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)の締結信号が入力され、クラッチ開放判定部30dから全てのクラッチ15、17l,17rの開放指示に関する信号等が入力される。
そして、4輪駆動制御部30aは、通常の4輪駆動制御として、例えば、車両のアンダーステア傾向を抑制するヨーモーメントを目標ヨーモーメントとして算出し、前軸の左右輪の平均車輪速((ωfl+ωfr)/2)が後軸の旋回外輪の車輪速を越えている場合には、車両に上述の目標ヨーモーメントを付加する際に、後軸の旋回外輪側のホイールクラッチを締結すると共に、旋回内輪側のホイールクラッチを開放し、目標ヨーモーメントに基づいてトランスファクラッチ15の締結力を制御する。
また、4輪駆動制御部30aは、プロペラシャフト5を停止して上述の4輪駆動制御をしていない2WD走行の状態で、目標ヨーモーメント補正処理部30cから旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)の締結信号が入力された際、該当するホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)を締結する。
更に、4輪駆動制御部30aは、4輪駆動制御状態ではない場合に、クラッチ開放判定部30dから全てのクラッチ15、17l,17rの開放指示が入力された場合は、全てのクラッチ15、17l,17rを開放する。
また、4輪駆動制御部30aは、上述の各クラッチ15、17l,17rへの信号(締結・開放)に加え、4輪駆動制御の作動状態を目標ヨーモーメント補正処理部30c、クラッチ開放判定部30dに出力し、上述の目標ヨーモーメント補正処理部30cからの指示で実行される旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)の締結に係るホイールクラッチ締結トルクTwを目標ヨーモーメント補正処理部30cに出力する。このように、4輪駆動制御部30aは駆動力制御手段として設けられている。
路外逸脱防止・障害物回避制御部30bは、前方認識装置21から白線や前方障害物等の前方情報(具体的には、白線、及び、前方障害物の座標位置情報、交差角α、現在の自車両の中心から白線までの距離yL0、現在の自車両の中心から障害物までの距離ys0)が入力され、4輪車輪速度センサ22fl,22fr,22rl,22rrから各輪の車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力され、目標ヨーモーメント補正処理部30cからプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzが適宜入力される。そして、例えば、図3に示すフローチャートに従って、路外逸脱防止・障害物回避制御を実行し、自車両に付加するヨーモーメントに応じたブレーキ液圧(内側前輪ブレーキ液圧Pbf、内側後輪ブレーキ液圧Pbr)を算出し、ブレーキ駆動部32に出力する。
また、路外逸脱防止・障害物回避制御の作動状態が目標ヨーモーメント補正処理部30cに出力され、路外逸脱防止・障害物回避制御が作動した際には作動の対象とした前方情報(白線部位、障害物のナンバー)がクラッチ開放判定部30dに出力される。
路外逸脱防止・障害物回避制御部30bで実行される路外逸脱防止・障害物回避制御を説明する。
まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、例えば、以下の(1)式により、車速V(例えば、4輪の車輪速度の平均)に応じた予見距離Lxを算出する。
Lx=V・t …(1)
ここで、tは、予め設定しておいた予見時間である。すなわち、予見距離とは、図6に示すように、予見時間t後に、自車両が存在すると推定される位置までの距離である。尚、予見距離Lxは、上述の(1)式で算出する距離に限るものではない。
次に、S102に進み、例えば、以下の(2)式により、予見距離Lxにおける自車両の白線からの逸脱量yLを算出する(図6参照)。
yL=Lx・sin(α)−yL0 …(2)
次いで、S103に進み、例えば、以下の(3)式により、予見距離Lxにおける自車両の障害物に対する逸脱量ySを算出する(図6参照)。
yS=Lx・sin(α)−ys0 …(3)
次に、S104に進み、予め実験・計算等に基づいて設定しておいた、図7(a)に示すような、白線からの逸脱量yLと交差角αと第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLのマップを参照して、第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLを設定する。尚、図7(a)中の、基準位置は、予め設定した位置であり、例えば、白線から道路中央側に一定距離離れた位置、或いは、白線の内側(道路中央側)端部である。また、第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLは、図7(a)に示したマップから設定するものに限るものではなく、予め設定しておいた算出式等から算出するようにしても良い。
第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLは、図7(a)からも解るように、交差角αが大きいほど、すなわち、白線に対して直交していき、緊急度が高いと判断される場合ほど、大きな値に設定される。また、第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLは、白線からの逸脱量yLが大きい場合ほど、大きな値に設定される。
次いで、S105に進み、予め実験・計算等に基づいて設定しておいた、図7(b)に示すような、障害物に対する逸脱量ySと第2の逸脱防止ヨーモーメントMzSのマップを参照して、第2の逸脱防止ヨーモーメントMzSを設定する。尚、図7(b)中の、基準位置は、予め設定した位置であり、例えば、障害物端部から道路中央側に一定距離離れた位置である。また、第2の逸脱防止ヨーモーメントMzSは、図7(b)に示したマップから設定するものに限るものではなく、予め設定しておいた算出式等から算出するようにしても良い。
第2の逸脱防止ヨーモーメントMzSは、図7(b)からも解るように、障害物に対する逸脱量ySが大きい場合ほど、大きな値に設定される。
次に、S106に進み、S104で設定した第1の逸脱防止ヨーモーメントMzLとS105で設定した第2の逸脱防止ヨーモーメントMzSから、例えば、以下の(4)式により目標ヨーモーメントMzt0を算出する。
Mzt0=MzL+MzS …(4)
次いで、S107に進み、目標ヨーモーメント補正処理部30cからプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzが入力されている場合は、最終的な目標ヨーモーメントMztを、以下の(5)式により算出する一方、ヨーモーメントΔMzが入力されていない場合には、そのまま目標ヨーモーメントMzt0を最終的な目標ヨーモーメントMztとして設定する目標ヨーモーメントMzt0の補正を行う。
Mzt=Mzt0−ΔMz …(5)
次に、S108に進み、旋回内輪側の前後輪に付加する制動力Bf、Brが、例えば、以下の(6)、(7)式により算出される。
Bf=min(Kbr・Mzt・Cy,ΔBf_max) …(6)
Br=Kbr・Mzt−Bf …(7)
ここで、(6)式における、minは、Kbr・Mzt・CyとΔBf_maxの小さい方を選択する関数である。Kbrは、ヨーモーメントの制動力への換算係数であり、Cyは、予め実験、計算等により設定しておいたヨーモーメントの前軸負担率である。また、ΔBf_maxは、予め算出しておいた前軸左右輪の制動力差最大値である。
そして、S109に進み、旋回内輪側の前後輪のブレーキ液圧Pbf、Pbrを、以下の(8)、(9)式で算出し、ブレーキ駆動部32に出力して、プログラムを抜ける。
Pbf=Cbf・Bf …(8)
Pbr=Cbr・Br …(9)
ここで、Cbf、Cbrはブレーキ諸元で決まる定数である。
このように、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bは、自動ブレーキ制御手段として設けられている。
目標ヨーモーメント補正処理部30cは、4輪車輪速度センサ22fl,22fr,22rl,22rrから各輪の車輪速度ωfl,ωfr,ωrl,ωrrが入力され、プロペラシャフト回転速度センサ23からプロペラシャフト回転速度ωdが入力され、4輪駆動制御部30aから4輪駆動制御の作動状態、及び、白線逸脱防止、及び、障害物回避のために実行する旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)の締結に係るホイールクラッチ締結トルクTwが入力され、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bから路外逸脱防止・障害物回避制御の作動状態が入力される。そして、例えば、図4に示すフローチャートに従って、目標ヨーモーメント補正処理を実行し、4輪駆動制御部30aに対して旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)の締結指示信号を出力し、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bに対してプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzを適宜出力する。
この目標ヨーモーメント補正処理部30cで行われる目標ヨーモーメント補正処理を、図4のフローチャートで説明する。
まず、S201で、4輪駆動制御部30aで、4WD作動中か否か判定し、4WD作動中の場合は、そのままルーチンを抜け、4WD作動中ではない場合は、S202に進む。
S202では、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bで路外逸脱防止・障害物回避制御の自動ブレーキが作動したか否か判定され、自動ブレーキが作動されていない場合は、そのままルーチンを抜け、自動ブレーキが作動された場合は、S203に進んで、4輪駆動制御部30aに旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)を締結させる信号を出力し、該当するホイールクラッチを締結させる。尚、旋回内輪が左輪側か右輪側のどちらかは、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bに入力される前方情報により、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bで判定される。
その後、S204に進み、副駆動軸とプロペラシャフト5との回転速度差Δωsd(=ωs・Gf−ωd:Gfはファイナルギヤ比)を算出する。
次いで、S205に進んで、回転速度差の絶対値|Δωsd|と予め実験、演算等により設定しておいた閾値Sdとを比較し、回転速度差の絶対値|Δωsd|が閾値Sdより大きい場合(|Δωsd|>Sdの場合)には、副駆動軸とプロペラシャフト5との同期が完了していないと判定し、S206に進み、回転同期トルクTswとして4輪駆動制御部30aから出力されるホイールクラッチ締結トルクTwを設定する(Tsw=Tw)。
逆に、回転速度差の絶対値|Δωsd|が閾値Sd以下の場合(|Δωsd|≦Sdの場合)には、副駆動軸とプロペラシャフト5との同期が完了したと判定し、S207に進み、回転同期トルクTswとして0を設定する(Tsw=0)。
S206、或いは、S207で回転同期トルクTswを設定した後は、S208に進み、回転同期によるヨーモーメントΔMzを、例えば、以下の(10)式により算出して路外逸脱防止・障害物回避制御部30bに出力し、プログラムを抜ける。
ΔMz=(Tsw/Rt)・(d/2) …(10)
ここで、Rtはタイヤ径、dはトレッドである。
このように、目標ヨーモーメント補正処理部30cは、ヨーモーメント補正手段として設けられている。
クラッチ開放判定部30dは、前方認識装置21から白線や前方障害物等の前方情報が入力され、4輪駆動制御部30aから4輪駆動制御の作動状態が入力され、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bから路外逸脱防止・障害物回避制御が作動した際の作動の対象とした前方情報(白線部位、障害物のナンバー)が入力される。そして、後述の図5に示すフローチャートに従って、4輪駆動状態としていない場合で、且つ、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bが路外逸脱防止・障害物回避の自動ブレーキを作動させる制御対象(白線部位や障害物)を通過後、所定時間経過した場合は、全クラッチ15、17l,17rを開放状態とする信号を4輪駆動制御部30aに出力する。
すなわち、図5は、このクラッチ開放判定部30dで実行されるクラッチ開放判定処理のフローチャートを示し、まず、S301で、4輪駆動制御部30aで、4WD作動中か否か判定し、4WD作動中の場合は、そのままルーチンを抜け、4WD作動中ではない場合は、S302に進む。
S302では、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bで制御対象とした白線部位や障害物を通過後、所定時間経過したか否か判定される。
この判定の結果、白線部位や障害物を通過後、所定時間経過していない場合は、そのままルーチンを抜け、所定時間経過している場合は、S303に進み、白線部位や障害物に対する自動ブレーキの作動が無いと判定し、全てのクラッチ15、17l,17rを開放状態とする信号を4輪駆動制御部30aに出力してプログラムを抜ける。
このように、本発明の実施の形態によれば、白線や前方障害物等の前方情報に基づき車線逸脱を防止するための、また、障害物を回避するための自車両に付加する目標ヨーモーメントMzt0を算出して自動ブレーキを作動させる。この自動ブレーキを作動させる際、旋回内輪側のホイールクラッチ(17l,17rのどちらか)を締結すると共に、旋回内輪側のホイールクラッチを締結するクラッチトルクTwを基にプロペラシャフト5と副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントΔMzを算出し、該ヨーモーメントΔMzで目標ヨーモーメントMzt0を補正して最終的な目標ヨーモーメントMztを算出し、この最終的な目標ヨーモーメントMztに応じたブレーキ液圧(内側前輪ブレーキ液圧Pbf、内側後輪ブレーキ液圧Pbr)を算出してブレーキ駆動部32に出力する。また、4WD状態ではない場合で、且つ、自動ブレーキの対象となる白線部位や前方障害物を通過後、所定時間経過した場合には全てのクラッチ15、17l,17rを開放状態とする。このため、路外逸脱防止や障害物回避のために自車両にヨーモーメントを付加する自動ブレーキ制御装置を搭載したプロペラシャフトを停止自在な4輪駆動車において、副駆動軸とプロペラシャフトを同期させるときに必要なエネルギを、自動ブレーキ制御装置が吸収し、消費しなければならないエネルギから転用・有効利用し、また、路外逸脱防止や障害物回避が予測される状態では予め4WD状態へと移行して安全性を向上し、車両のヨー応答も向上して、更に、自動ブレーキ制御装置の作動で生じる主ブレーキの熱負荷も軽減することが可能となる。
尚、本実施の形態では、路外逸脱防止・障害物回避制御部30bは、路外逸脱防止と障害物回避制御のための自動ブレーキを発生する装置を例に説明したが、これら両方(路外逸脱防止と障害物回避制御)ではなく、どちらかのための自動ブレーキを発生する装置であっても良い。
1 エンジン
2 自動変速装置
3 トランスファ
4 リヤドライブ軸
5 プロペラシャフト(動力伝達軸)
6 ドライブピニオン軸部
7 後輪終減速装置
8 リダクションドライブギヤ
9 リダクションドリブンギヤ
10 フロントドライブ軸
11 前輪終減速装置
13fl、13fr 前輪ドライブ軸(主駆動軸)
13rl、13rr 後輪ドライブ軸(副駆動軸)
14fl、14fr 前輪
14rl、14rr 後輪
15 トランスファクラッチ(第1のクラッチ手段)
17l、17r ホイールクラッチ(第2のクラッチ手段)
18fl、18fr、18rl、18rr ホイールシリンダ
21 前方認識装置(前方情報認識手段)
21a ステレオカメラ(前方情報認識手段)
22fl、22fr、22rl、22rr 車輪速度センサ
23 プロペラシャフト回転速度センサ
30 制御ユニット
30a 4輪駆動制御部(駆動力制御手段)
30b 路外逸脱防止・障害物回避制御部(自動ブレーキ制御手段)
30c 目標ヨーモーメント補正処理部(ヨーモーメント補正手段)
30d クラッチ開放判定部(駆動力制御手段)
31trc トランスファクラッチ駆動部
31wcl、31wcr ホイールクラッチ駆動部
32 ブレーキ駆動部

Claims (3)

  1. 前軸と後軸のどちらか一方の主駆動軸から他方の副駆動軸へ動力伝達軸を介して駆動力を伝達すると共に、上記主駆動軸と上記動力伝達軸との間に第1のクラッチ手段を設け、上記副駆動軸には左右輪間の差動機構に代えて左車輪側と右車輪側のそれぞれに駆動力の伝達を継断自在な第2のクラッチ手段を設けた4輪駆動車において、
    前方の道路情報を認識する前方情報認識手段と、
    上記前方情報認識手段からの前方情報に基づき自車両に付加する目標ヨーモーメントを算出して自動ブレーキを作動させる自動ブレーキ制御手段と、
    上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段の締結と開放を制御する駆動力制御手段とを有し、
    上記駆動力制御手段は、上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段とを締結した4輪駆動状態としていない場合に、上記自動ブレーキ制御手段が上記前方情報に基づき自車両に上記目標ヨーモーメントを付加すべく上記自動ブレーキを作動させる際は、旋回内輪側の上記第2のクラッチ手段を締結すると共に、
    上記旋回内輪側の上記第2のクラッチ手段を締結するクラッチトルクを基に上記動力伝達軸と上記副駆動軸とが回転同期することで生じるヨーモーメントを算出し、該ヨーモーメントで上記自動ブレーキ制御手段で算出する上記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段と、
    を備えたことを特徴とする4輪駆動車の制御装置。
  2. 上記駆動力制御手段は、上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段とを締結した4輪駆動状態としていない場合で、且つ、上記自動ブレーキ制御手段が上記自動ブレーキを作動させる対象を所定に通過した場合は、上記第1のクラッチ手段と上記第2のクラッチ手段の全てを開放状態とすることを特徴とする請求項1記載の4輪駆動車の制御装置。
  3. 上記自動ブレーキ制御手段は、上記前方情報から得られる自車両の白線からの逸脱量と前方障害物に対する逸脱量の少なくとも一方に応じて自車両に付加する目標ヨーモーメントを算出して自動ブレーキを作動させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の4輪駆動車の制御装置。
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