多相エマルションおよび多相エマルション形成法を一般に記載する。ここで用いる多相エマルションは、1つ以上のより小さな液滴をそれらの中に含有する、1つ以上のより大きな液滴を表す。一部の実施形態において、より大きい液滴(単数または複数)は、キャリア流体に懸濁されていることがあり、該キャリア流体は、該より大きい液滴を含有し、そしてまた該より大きい液滴がより小さい液滴を含有する。下記で説明するように、多相エマルションを、一定の実施形態では一段階で、概して正確な再現性で形成することができ、および一部の実施形態では2つの他の流体を分離する比較的薄い流体層を含むようにテーラリングすることができる。
液滴を含有するエマルションおよび多相エマルションの均一なサイズ、形状、および/またはより大きな液滴に含有されるより小さい液滴の均一な数での形成は、当該技術分野において公知である。例えば、WeitzらによるWO 2008/121342には、均一なサイズのより大きい液滴を含有し、該より大きい液滴の各々がより小さい液滴を含有する、多相エマルションを生成するためのマイクロ流体システムの使用が記載されている。一般に、これらのシステムにおいて、多相エマルションは、マイクロ流体管路システム内で多数の不混和性流体を入れ子状にすることによって形成される。前記多相エマルションは、先ず、第一の管路の出口において第二の流体の中で第一の流体の1つ以上の液滴を生成することによって、生成され得る。次に、これらの液滴を第二の管路の末端部に輸送し、そこで第二の流体が第一の流体の液滴を包囲している多相エマルションを形成する。
加えて、第一および第二の液滴が同時に形成される多相エマルションの形成は当該技術分野において公知である。例えば、WeitzらによるWO 2006/096571は、他方の管路内に収容されている2本の入れ子状管路を通して流体を輸送して多相エマルションを生成する、様々なマイクロ流体システムの記載を含む。しかし、これらのシステムでは多数の管路が概して使用され、一部のケースでは、内側管路の出口開口部が、包囲している管路の出口開口部を越えて広がるように、内側管路が、包囲している管路内に入れ子状になっている。もう1つの例として、WeitzらによるWO 2011/028764には、異なる管路の一定の交差部を備えている様々なシステムでだが、多相エマルションの形成が記載されている。
本発明は、一般に、多相エマルションを生成するために管路に流体を流す新規の驚くべき方法(ならびに関連物品およびシステム)に関する。下でより詳細に説明するように、安定した動作状況からの流体流量の増加は不安定な動作状況を生じさせるが、意外にも、流量のさらなる増加は第二の安定した動作状況を生じさせることを発見した。一部のケースにおいて、その第二の安定した動作状況の中で形成される多相エマルションは、比較的薄い中間流体シェルを含むことができる。先ず第一の管路の出口開口部で第一の流体の液滴を生成し、その後、これらの液滴を第二の管路の末端部に通して二相エマルションを形成する(すなわち、「液滴流」状況下で動作する)のではなく、本発明の多相エマルション中の第一および第二の液滴を同時に形成することができる。この第一および第二の液滴の同時形成は、一部の実施形態では、第一の流体を、第一の管路内で、第一の流体が第一の管路を出るときに該第一の流体が第二の流体中で連続流体ストリームを形成するような比較的高い流量(すなわち、「噴射流」状況)で輸送することによって、達成することができる。第一の流体のジェットが、第一の管路の下流に位置する第二の管路を出ると、第二の流体は第一の流体を包囲し、それにより二相エマルションを形成することができる。噴射流状況下で動作させたとき、第二の管路の出口開口部で形成される多相エマルションは、一部の実施形態では、第二の流体の比較的薄いシェルを含有することができる。加えて、噴射流状況下での動作は、少なくとも一部のケースでは、液滴流状況に比べて多相エマルションの高速生成を可能にすることができる。
一定の実施形態における噴射流状況下での動作の恩恵が驚くべきものである1つの理由は、液滴流状況から噴射流状況に移行するために、流体流が不安定であり、かつ多相エマルション、とりわけ一貫したサイズの多相エマルションの生成に一般に適さない中間状況を先ず通らなければならないためである。本発明において、流体流量のさらなる増加は、予想どおり、流体不安定性増加をもたらさず、むしろ、不安定な状況からの流量のさらなる増加は、驚くべきことに、より小さなではなくより大きな安定性をもたらすことが意外にも判明した。詳細には、不安定な状況による流量の増加は、例えば、比較的薄いシェルを有する一貫したサイズの多相エマルションを比較的高速で生成することができる、安定した動作につながり得ることが判明した。
多相エマルション液滴は、1つ以上の液滴をその中に含有することができる。ここで用いる「液滴」は、第二の流体によって包囲されている第一の流体の孤立した部分である。液滴は必ずしも球形ではなく、例えば外部環境に依存して、他の形状も想定できることに留意しなければならない。一部の実施形態において、液滴は、該液滴が位置する流体流に対して垂直なチャネルの最大寸法とほぼ等しい最小断面寸法を有する。
本明細書に記載する方法およびデバイスを使用すると、一定の実施形態では、液滴の一貫した体積および/もしくは数を生じさせる、ならびに/または外部液滴に対する内部液滴の体積および/もしくは数の一貫した比率(もしくは他のかかる比率)を生じさせる。加えて、他の箇所に記載するように、多相エマルション中の流体の液滴の相対体積を、一部のケースでは、例えば2つの他の流体を分離する、流体の比較的薄い層を備えるように構成することができる。例えば、一部のケースでは、内部液滴が外部液滴の体積の相対的に大きい割合を占有し、その結果、内部液滴流体を包囲する外側液滴流体の薄層が得られるように、外部液滴中の単一の液滴を構成/形成する。その後、ポリマーを含有し得る、前記内部液滴流体を包囲する外部液滴流体の薄層を乾燥させて、流体を含有する固体シェルを形成することができる。前記外部液滴流体の薄層の寸法を正確に制御できることで、本明細書の他の箇所に記載する任意の厚みまたは他の寸法を含む薄いシェルで構成された粒子の作製が可能になり得る。
一部の実施形態では、三相エマルション、すなわち、外部液滴(または第二の)流体によって包囲された内部液滴(または第一の)流体を含有し、該外部液滴(または第二の)流体がまた第三の流体またはキャリア流体によって包囲されているエマルションを生成することができる。一部のケースにおいて、前記キャリア流体および前記外部液滴流体は同じであり得る。これらの流体は、多くの場合、疎水度の差に起因して様々な混和度である。例えば、前記内部液滴流体は水溶性であり得、前記外部液滴流体は油溶性であり得、および前記キャリア流体は水溶性であり得る。この構成は、多くの場合、W/O/W型多相エマルション(「水/油/水」)と呼ばれる。もう1つの多相エマルションは、油溶性である内部液滴、水溶性である外部液滴、および油溶性であるキャリア流体を含み得る。このタイプの多相エマルションは、多くの場合、O/W/O型多相エマルション(「油/水/油」)と呼ばれる。上の専門用語の中の用語「油」が、当該技術分野において公知であるように、一般により疎水性であり、水混和性または水溶性でない流体を単に指すことに留意しなければならない。したがって、前記油は、一部の実施形態では炭化水素であり得るが、他の実施形態では前記油は他の疎水性流体を含み得る。
本明細書における記載では、一般に、多相エマルションを三相系、すなわち、内部液滴流体と外部液滴流体とキャリア流体とを有することに関して記載する。しかし、これが単に例としてであること、および他の系ではその多相エマルション中に追加の流体が存在することがあることに留意しなければならない。例として、あるエマルションは、第一の流体液滴および第二の流体液滴を含有することがあり、これらの液滴の各々が第三の流体に包囲されており、そしてまたその第三の流体が第四の流体によって包囲されている;またはあるエマルションは、より高次入れ子状になっている多相エマルション、例えば第一の流体液滴が第二の流体液滴によって包囲されており、その第二の流体液滴が第三の流体液滴によって包囲されており、その第三の流体液滴がキャリア流体内に収容されている多相エマルションを含有することがある。したがって、内部液滴流体、外部液滴流体およびキャリア流体の記載が表示を容易にするためであること、および本明細書における記載を、さらなる流体を含む系、例えば、四相エマルション、五相エマルション、六相エマルション、七相エマルションなどに容易に拡大できることは理解されるはずである。
図2は、一部の実施形態に従って粒子を形成するために使用することができる多相エマルションを形成するためのシステム200の例示的概略図を含む。図2において、システム200は、外側管路210、第一の内側管路(または注入管)220、および第二の内側管路(または回収管)230を備えている。第一の内側管路220は、外側管路210に通じる出口開口部225を備えており、第二の内側管路230は、外側管路210内に開口している入口開口部235を備えている。システム200は、第一の内側管路220内に配置された第三の内側管路240も備えている。内側管路240は、管路220に通じる出口開口部245を備えている。図2で例証されるように、管路210、220、230および240は、互いに対して同心円状であると説明される。しかし、ここで用いる「同心円状」は、厳密に同軸を有する管を必ずしも指すとは限らず、共通の中心線を共有しない入れ子状の管または「偏心」管も含むことに留意しなければならない。しかし、一部の実施形態では、前記管すべてが互いに厳密に同軸を有することもある。
管路220の内径は、図2に示されているように、一般に左から右方向に減少し、管路230の内径は、図2に表されているように、一般に入口開口部から、左から右方向に増加する。これらの狭窄、すなわち先細りは、少なくとも一部のケースでは、一貫したエマルションの生成に役立つ幾何形状を提供する。図2では狭窄率が線形であるように図示されているが、他の実施形態では、狭窄率は非線形であることがある。
図2に示されているように、内部液滴流体250は、左から右方向に、第三の内側管路240を通って出口開口部245から出て管路220へと流れる。加えて、外部液滴流体260は、内部液滴流体250および管路240の外側の管路220を通って左から右方向に流れる。キャリア流体270が図示されており、これは、外側管路210と管路220の間に設けられた通路内を左から右方向に流れる。
図2に図示されているように、内部液滴流体250は、出口開口部225から出るが、管路220の内表面との接触を外部液滴流体260によって防止される。図2の例で証明されるように、内部流体250のどの部分も、それが管路240を出た後、管路220の内面と接触しない。一部の実施形態では、第一の流体の液滴が第一の管路の出口開口部で形成されないように、様々なシステムパラメータを選択することができる。例えば、一部の実施形態では、コア−シーズ型流れ配置(core-sheath flow arrangement)で、内部液滴流体250が内部流体(すなわちコア)を形成し、外部液滴流体260が外部流体(すなわちシーズ)を形成するように、内部液滴流体250および外部液滴流体260を選択することができる。図2に図示するように、外部液滴流体260は、液滴を形成するために内部液滴流体250を完全に包囲せず、むしろ、外部液滴流体260は、内部液滴流体250をその縦軸を中心にして包囲するシェルを形成する。一部の実施形態において、管路240は、管路240の出口開口部で液滴が一切生成されないような毛細管数を有する。もう1つの例として、管路240の出口開口部で液滴が一切生成されないような粘度を有するように、内部液滴流体250および/または外部液滴流体260を選択することができる。
加えて、一部の実施形態において、外部液滴流体260は、該液滴が回収管230に入るときにキャリア流体270によって包囲されるので、少なくとも多相エマルション液滴が形成されてしまうまでは外部液滴流体260は管路230の表面と接触することができない。
内部液滴流体250および外部液滴流体260が管路220の出口開口部225から出て輸送されると、2つの液滴:外部液滴280(外部液滴流体260を含む)および該外部液滴280内に位置する内部液滴285(内部液滴流体250を含む)、が形成され得る。図2に図示するように、外部液滴280は、内部液滴285の周囲に比較的薄いシェルを形成し得る。液滴280および285を逐次的に形成することができ、または実質的に同時に形成することができる。例えば、図2において、流体250および260が管路220の出口開口部225を出て輸送されると、流体250と260の境界は(例えば、これら2つの流体間に実質的に封入された界面を形成することにより)流体260と270の境界が形成されるのと実質的に同時に閉鎖され得る。管路220を出る流体から形成された液滴は、該液滴が管路210を通って輸送されるとき、出口開口部225を出て、キャリア流体270により管路230の開口部235まで輸送され得る
内部液滴流体250を図2には管路240から管路220の出口開口部225にわたって連続ジェットを形成するように図示されているが、一部の実施形態では、内部液滴流体250は、出口開口部225に到達する前に1つ以上の液滴を形成し得る。管路220内で生成された液滴は、一定のケースでは管路220の出口開口部225を出次第、さらに破壊され得る。一部の実施形態では、管路220内の外部液滴流体260の中で内部液滴流体250の噴射流が発生するように、内部液滴流体250および/もしくは外部液滴流体260の流量ならびに/またはシステム内の他のパラメータ(例えば、流体粘度、チャネル寸法、チャネル壁特性など)を選択することができる。ここで用いる「噴射流」状況は、第一の流体(例えば、内部液滴流体250)の連続ストリームが、(同流体の液滴への破壊が噴射流状況外では概して発生するが)該状況はで破壊することなく、第二の流体の連続ストリームの中で縦に延びて、外部流体中で内部流体の液滴を形成する状態を指す。一部の実施形態において、前記噴射流状況の流体(例えば、図2における内部液滴流体250)は、該流体から最終的に形成される液滴の断面直径の少なくとも約5倍、少なくとも約10倍または少なくとも約25倍の長さにわたってつながっていることがあり、この場合、該流体が送達される管路の出口開口部から、該流体が破壊して液滴を形成する地点までの連続長を測定する。
対照的に「滴下流」状況は、第一の流体が、それが送達される管路(例えば、図2における管路240)の出口からの距離であって、形成される第一の流体液滴の平均断面直径の約2倍以下である距離内で、第二の流体の中で液滴へと破壊される状態を指す。1つの特定の例として、図2で例証される実施形態セットには、内部液滴流体250が噴射流状況で管路240から流れるように図示されているが、滴下流状況では内部液滴流体250および外部液滴流体260が管路220から流れるように図示される。
一部の実施形態において、内部液滴流体250および外部液滴流体260は、これらの液滴が管路230の中に(すなわち、図2における管路230の入口オリフィスを規定する末端部235の右側に)入るまで、分解して液滴を形成しない。しかし、他の実施形態において、内部液滴流体250および外部液滴流体260は、管路230に入る前に分解して(すなわち、末端部235の左側に)液滴を形成する。「滴下」条件下では、液滴は、管路230の末端部235のオリフィスのより近くに形成されるが、「噴射」条件下では、液滴は、さらに下流で、すなわち、図2に図示されているようにさらにはるか右側で形成される。例えば、一定の「滴下」条件下では、1オリフィス径内に位置するときに液滴が生成される;この動作方式を滴下蛇口になぞらえることができる。一部の噴射条件下では、回収管の長さを下って3オリフィス径以上下流に延びる長いジェットが生成され、該回収管で該ジェットは液滴になる。
本発明の様々な実施形態では、液滴形成および形態(および/または液滴から形成される粒子の対応する形態)に多数の方法で影響を及ぼすことができる。例えば、所望の体積、頻度および/または内容の多相エマルションを開発するために、外側管路と内側管路の関係をはじめとするデバイス200の幾何形状(物理的構成)を構成することができる。例えば、形成される液滴の相対体積の制御に役立つように、管路220および240の出口開口部225および/または245における出口開口部直径をそれぞれ選択することができる。一部のケースでは、内部液滴流体の流量、外部液滴流体の流量、キャリア流体の流量、これらのうちのいずれか2つの全流量もしくは比の変化、および/またはこれらのうちのいずれか流量の組み合わせによって、液滴形成に影響を及ぼすことができる。
内部液滴と外部液滴の相対体積、すなわち、内部および外部液滴のサイズまたは体積の比も、一定の実施形態では、注意深く制御することができる。内部液滴は、外部液滴の比較的大きな部分を占めることがある。かかるエマルションは、例えば、本明細書において論ずるような比較的薄いシェルを有する粒子の形成に有用であり得る。一部の実施形態において、内部流体液滴は、外部液滴の体積の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約90%、約95%または約99%より多くを占めることがある。一部のケースでは、外部液滴が内部液滴を含有するとき、該内部液滴が、該外部液滴体積の一部または大部分を占めることができる場合、該外部液滴を流体シェル、またはコーティングと見なすことができる。一部の実施形態において、外部流体シェル厚は、例えば、外部流体液滴半径の約5%、約4%、約3%、約2%、約1%または約0.1%以下であり得る。一部の実施形態では、これが、非常に薄い材料層のみで2つの混和性流体が分離およびしたがって安定化されている多相エマルションの形成を可能にする。
もちろん、本発明は、薄い外部液滴を含む多相エマルションの形成に限定されず、他の実施形態では、内部液滴が外部液滴の小部分しか占めないこともある。一部の実施形態において、内部液滴は、外部液滴の体積の約90%未満、約%80未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満を占めることがある。シェル材料が、例えば、外部流体液滴半径の約10%、約20%、約30%、約40%または約50%以上である場合もある。
加えて、一定の実施形態では、前記管路の幾何形状(物理的構成)および/または前記管路を通る流体の流れを制御することにより、生成される液滴の平均断面直径を制御することができる。当業者は、例えばレーザー光散乱、顕微鏡検査または他の公知の技術を用いて、複数のまたは一連の液滴の平均断面直径(または他の特徴的寸法)を決定することができるであろう。単一液滴の平均断面直径は、非球形液滴の場合、該非球形液滴と同じ体積を有する完全な球体の直径である。一部のケースにおいて、1個の液滴(および/または複数のもしくは一連の液滴)の平均断面直径は、例えば、約1mm未満、約500マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約75マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満または約5マイクロメートル未満であり得る。一定のケースにおいて、前記平均断面直径は、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約15マイクロメートルまたは少なくとも約20マイクロメートルであることもある。一部の実施形態において、複数の液滴の中の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の液滴は、この段落で概説した任意の範囲内の平均断面直径を有する。
前記液滴は、個々の用途に依存して、実質的に同じ形状および/もしくはサイズ(すなわち「単分散」)のものであることもあり、または異なる形状および/もしくはサイズのものであることもある。一部のケースでは、前記液滴は、均一な断面直径分布を有し得る。すなわち、前記液滴は、該液滴の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%または約0.01%以下が、該液滴の平均断面直径と約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%または約0.01%より大きく異なる平均直径を有するような、断面直径分布を有し得る。液滴の均一な断面直径分布を生じさせるための一部の技法は、参照により本明細書に援用されている、Linkらにより2004年4月9日に出願され、2004年10月28日にWO 2004/091763として発行された「Formation and Control of Fluidic Species」と題する国際特許出願番号PCT/US2004/010903に、ならびに下記するおよび/または参照により本明細書に援用されている他の参考文献に開示されている。
一部のケースにおいて、例えば、(外部液滴流体260を含有する)外部液滴が(内部液滴流体250を含有する)内部液滴と同じ速度で形成されるとき、内部液滴数と外部液滴数間には1対1対応が存在し得る;例えば、一部の実施形態では、各々の内部液滴が外部液滴によって包囲されており、各々の外部液滴が内部流体の単一の内部液滴を含有する。他の実施形態では、内部液滴数と外部液滴数の種々の比が存在し得る。一部の実施形態では、生成される実質的にすべての多相エマルション液滴が二相エマルション液滴である。
本発明の一部の実施形態では、多相エマルションの少なくとも一部分、例えば外部流体および/または内部流体、を凝固させて粒子を形成することができる。任意の適する方法を用いて流体を凝固させることができる。例えば、一部の実施形態では、流体を例えば乾燥させて、ゲル化させて、および/もしくは重合して、ならびに/または別様に凝固させて、例えば固体または少なくとも半固体を形成することができる。形成される固体は、一部の実施形態では硬質であるが、他のケースでは、該固体は、弾性、ゴム状、変形可能などであり得る。一部のケースでは、例えば、外部流体を凝固させて、流体および/または薬剤を含有する内部を少なくとも部分的に含有する固体シェルを形成することができる。流体液滴の少なくとも一部分を凝固することができる任意の技法を用いることができる。例えば、一部の実施形態では、流体液滴内の流体を除去して、固体シェルを形成できる材料(例えば、ポリマー)を残してもよい。他の実施形態では、流体液滴を、該流体液滴内の流体の融点またはガラス転移温度より下の温度に冷却してもよく、前記流体液滴の少なくとも一部分を凝固させる化学反応(例えば、重合反応、固体生成物を生成する二液間の反応など)を誘導してもよく、またはこれらに類するものであってよい。他の例としては、pH応答性または分子認識性ポリマー、例えば、一定のpHにまたは一定の化学種に曝露するとゲル化する材料が挙げられる。
一部の実施形態では、流体液滴の温度を上昇させることによって流体液滴を凝固させる。例えば、温度上昇は、流体液滴から(例えば、外部流体液滴内の)材料を追い出し、固体を形成する別の材料を残すことができる。例えば、図2に示す実施形態において、流体260(およびしたがって、外部液滴280)は、液体(例えば、疎水性の液体)に懸濁しているポリマーを含有することがある。流体260中の前記液体を、外部液滴280から、該液滴を加熱することによって除去し、(内部液滴流体250を含有する)液滴285を包囲する凝固ポリマーシェルを残すことができる。
したがって、外部液滴を凝固させて、例えば、本明細書の他の箇所に記載するような標的媒体への送達のための1つ以上の流体および/または試薬を封入する固体シェルを形成することができる。例えば、図2では、下で詳細に説明する、図1A〜1Dに記載の粒子に類似した粒子を、液滴280および流体250を硬化させることによって形成することができる。かかる粒子を使用して、本明細書の他の箇所に記載するような標的媒体に流体250中の薬剤を送達することができる。
一部の実施形態では、多相エマルション液滴を乾燥させる温度を制御することが望ましいこともある。例えば、多相エマルションを乾燥させることによってシェルを形成する一部のかかる実施形態において、乾燥温度を制御することで、乾燥工程中に破断しないように確実にシェルを構成することができる。一部の実施形態では、前記多相エマルションを約25℃と約100℃の間、約40℃と約80℃の間、約50℃と約70℃の間、約55℃と約65℃の間の温度で乾燥させることがある。一部の実施形態では、前記多相エマルションを乾燥前に(または一部のケースでは乾燥後に)トルエンおよび水をはじめとする(しかしこれらに限定されない)様々な適する溶剤を使用して洗浄することがある。例えば、1セットの実施形態では、粒子を形成した後に、それらの粒子を含有するキャリア流体を、除去することがあり、および/または該キャリア流体と同じであってもよいし、なくてもよいビヒクル(例えば標的媒体への送達用のビヒクル)で置換することがある。
図2および関連説明が単に例示に過ぎず、他の多相エマルション(例えば、異なる液滴数、入れ子レベルなどを有するもの)および他のシステムも本発明の様々な実施形態の中で企図されることに留意しなければならない。例えば、図2におけるデイバスを、他の流れ配置および/または追加の同心円管を備えるように構成して、例えば、より高次入れ子状の液滴を生成することができる。一定の実施形態では、第四、第五、第六などの流体を供給することにより、液滴の中にますます複雑な液滴を生成することができる。本発明の一定の実施形態において、これらの流体の一部は同じであることがある(例えば、第一の流体は第三の流体と同じ組成を有することがある、第二の流体は第四の流体と同じ組成を有することがある、など)。
一例として、図3は、三相エマルションを形成するシステム300の例示的略図を含む。図3において、システム300は、外側管路310、内側管路(または注入管)320、および第二の内側管路(または回収管)330を備えている。第一の内側管路320は、外側管路310に通じる出口開口部325を備えており、第二の内側管路330は、外側管路310内に開口している入口開口部335を備えている。
図3に示されているように、内部流体350は、左から右方向に、管路320を通って出口開口部325から出て管路310へと流れる。加えて、流体360が図示されており、これは、管路310を通って左から右方向に内部流体350および管路320の外側を流れる。管路330の入口開口部335付近で、流体360は流体350を包囲して、三相エマルションの第一の入れ子を形成する。流体370が図示されており、これは、右側から管路310に入り、右から左方向に流れる。流体360と接触すると、流体370は方向を逆転させ、管路330の入口開口部335付近で流体350および360を包囲して、三相エマルションの第二の入れ子を形成する。流体380が図示されており、これは、右側から管路310に入り、右から左方向に流れる。流体370および380は、コア−シーズ型流れ配置のシーズを流体370が形成し、コアを流体380が形成するように配置されている。管路330の入口開口部335に到達すると、流体380は方向を変え、流体350、360および370を包囲して、三相エマルションの第三の入れ子を形成する。
図4は、四相エマルションを形成するシステム400の例示的略図を含む。図4における管路の配置は、図3における配置に類似しており、外側管路410、第一の内側管路(または注入管)420、および第二の内側管路(または回収管)430を備えている。第一の内側管路420は、外側管路410に通じる出口開口部425を備えており、第二の内側管路430は、外側管路410内に開口している入口開口部435を備えている。
図4に示されているように、内部流体450は、左から右方向に、管路420を通って出口開口部425から出て管路410へと流れる。加えて、流体460が図示されており、これは、管路410を通って左から右方向に内部流体450および管路420の外側を流れる。流体465が図示されており、これは、流体460を包囲しながら管路410を通って左から右方向に流れる。流体470が図示されており、これは、右側から管路410に入り、右から左方向に流れる。流体465と接触すると、流体470は方向を逆転させ、管路430の入口開口部435のほうに流れていく。流体480が図示されており、これは、右側から管路410に入り、右から左方向に流れる。流体470および480は、コア−シーズ型流れ配置のシーズを流体470が形成し、コアを流体480が形成するように配置されている。管路430の入口開口部435に到達すると、流体480は方向を変える。管路430の入口開口部435付近で、流体460が流体450を包囲して第一の入れ子を形成し;流体465が流体450および460を包囲して第二の入れ子を形成し;流体470が流体450、460および465を包囲し;そして流体480が流体450、460、465および570を包囲して、四相エマルションの第四の入れ子を形成する。
2つより多くの入れ子を備えている多相エマルション(例えば、三相エマルション、四相エマルションなど)は、二相エマルションに関して本明細書の他の箇所に記載する任意の特性を有し得る。例えば、各入れ子が各液滴を含むように、前記流体の流量を制御することができる。かかる実施形態において、多相エマルションは、多数の外部流体の多数の相によって包囲されているコア流体を含む。かかる多相エマルション中の各液滴は、本明細書の他の箇所に記載する任意の特性(例えば、厚み、厚みの変動(またはその欠如)、断面直径など)を有し得る。例えば、図4に示す実施形態において、四相エマルション中の流体460、465および470によって形成される任意のシェルは、本明細書の他の箇所に記載する任意の厚みおよび/または厚みの変動を有し得る。もう1つの例として、図3および4において(またはさらなる入れ子を含む他の実施形態において)形成される四相エマルションは、本明細書の他の箇所に記載する任意の断面直径および/または断面直径分布を有し得る。
各入れ子レベルで単一の液滴を含有する多相エマルションを説明したが、本発明がそのように限定されないこと、および一部の実施形態では1つ以上の入れ子レベルが1つより多くの液滴を含有することは理解されるはずである。例えば、一部の実施形態において、内部流体は、中間流体中で複数の液滴を形成し、該中間流体は、外部流体の薄層によって包囲されており、そしてまた該外部流体の層は、キャリア流体によって包囲されている。一部のかかる実施形態は、図13Cに示す。一部の実施形態において、前記外部流体は、中間流体を包囲し、該中間流体は、複数の外部流体を包囲し、該外部流体の各々が、キャリア流体中の複数の最内部流体の周囲に流体の薄層を形成する。多相エマルションを形成するために使用する流体の相対流量を制御することにより、該多相エマルションの任意の入れ子レベル内で複数の液滴を形成することができる。
多数の液滴が所与の入れ子レベル、例えば、多相エマルション液滴の所与の入れ子レベル内に存在する一部のケースでは、そのレベルの流体液滴の各々が、それらの中に実質的に同数の内部流体液滴を含有することがある;例えば、前記液滴の実質的にすべてが、それらの中に実質的に同数の液滴を含有することがある。液滴が、(多相エマルション液滴の任意の部分において)実質的に同一であるように見えるまたはそれらの中に実質的に同数の液滴を含有するように見える場合でさえ、それらの液滴のすべてが必ずしも完全に同一であるとは限らないであろうということは、理解されるはずである。一部のケースでは、周囲液滴に含有される液滴の数および/またはサイズに小変動があることがある。したがって、一部のケースでは、複数の液滴の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%が、各々、それらの中に同数の液滴を含有し得る。
多相エマルション液滴の生成率を液滴形成頻度によって決定することができ、該頻度は、多くの条件下、おおよそ1Hzと5000Hzの間で様々であり得る。一部のケースでは、液滴生成率は、少なくとも約1Hz、少なくとも約10Hz、少なくとも約100Hz、少なくとも約200Hz、少なくとも約300Hz、少なくとも約500Hz、少なくとも約750Hz、少なくとも約1,000Hz、少なくとも約2,000Hz、少なくとも約3,000Hz、少なくとも約4,000Hzまたは少なくとも約5,000Hzであり得る。
一部の事例では、大量のエマルションの生成を、本明細書に記載するものなどの多数のデバイスの並行使用によって助長することができる。一部のケースでは、比較的多数のデバイスを並行して使用することができ、例えば、少なくとも約10デバイス、少なくとも約30デバイス、少なくとも約50デバイス、少なくとも約75デバイス、少なくとも約100デバイス、少なくとも約200デバイス、少なくとも約300デバイス、少なくとも約500デバイス、少なくとも約750デバイスまたは少なくとも約1,000デバイス以上を並行して動作させることがある。前記デバイスは、種々の管路(例えば、同心円状管路)、開口部、マイクロ流体などを具備し得る。一部のケースでは、一連のかかるデバイスを、該デバイスを水平におよび/または垂直に積み重ねることによって形成することができる。それらのデバイスを共通制御することができ、または別々に制御することができ、および用途に依存して共通のまたは別々の様々な流体源を備えさせることができる。
本明細書に記載するシステムおよび方法を複数の用途に用いることができる。例えば、本明細書に記載する粒子および多相エマルションが有用であり得る分野としては、食品、飲料、健康および美容補助製品、塗料およびコーティング、化学的分離、ならびに薬物および薬物送達が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、正確な量の流体、薬物、医薬または他の薬剤を、特定の条件下でその内容物を放出するように設計されたシェルに含めることができる。一部の事例では、細胞を液滴内に含め、それらの細胞を保管することができ、および/または例えば、標的媒体、例えば被験体内の標的媒体に送達することができる。粒子内に含めて標的媒体に送達することができる他の薬剤としては、例えば、生化学種、例えば核酸、例えばsiRNA、RNAiおよびDNA、タンパク質、ペプチドまたは酵素が挙げられる。エマルション中に含めることができるさらなる薬剤としては、コロイド状粒子、磁性粒子、ナノ粒子、量子ドット、芳香剤、タンパク質、指示薬、色素、蛍光種、化学薬品またはこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。前記標的媒体は、任意の適する媒体、例えば水、食塩水、水性媒体、疎水性媒体またはこれらに類するものであり得る。
1つの特定のセットの実施形態では、本明細書に記載する多相エマルション技術を用いて、薄いシェルを含む粒子を形成することができる。一部の実施形態では、非限定的実例として、1つ以上の粒子を用いて粒子および/または薬剤を標的媒体、例えば炭化水素、原油、石油または他の媒体、に送達することができる。一部のケースにおいて、前記粒子の少なくとも一部は、流体および/または薬剤を含有する内部を少なくとも部分的に含有する、固体部分またはシェルを含み得る。前記粒子のシェルはポリマーを含む場合があり、一部のケースでは、前記シェル中のポリマーの実質的にすべてが、標的媒体に少なくとも部分的に可溶性である。前記粒子を構成するキャリア流体を、該粒子を標的媒体と接触させるために使用するビヒクルとして使用することができ、および/または前記キャリア流体を、本明細書の他の箇所に記載するような適するビヒクルによって置換することができる。前記粒子が前記標的媒体と接触するとき、該粒子のシェルの少なくとも一部分が分断され得るので、該粒子内の流体および/または薬剤の少なくとも一部は、該粒子から該標的媒体へと排出されるまたは別様に輸送される。もちろん、前記粒子を、例えば本明細書において論ずるような、他の用途にも使用できることは理解されるはずである。
一部の実施形態では、本発明の粒子を比較的高い絶対圧に耐えるように構成する。
図1A〜1Dは、本発明の一部の実施形態に従って、流体112および/または薬剤114を標的媒体116(例えば、原油、炭化水素などのような油を含有する媒体)に送達するための粒子100の使用を示す例示的概略図である。粒子100を、例えば、ビヒクル105に懸濁させることができる。これらの図において、粒子100は、流体112を部分的にまたは完全に包囲するシェル110を備えている。この例に示すように、流体112は、薬剤114、例えば、本明細書において論ずるような界面活性剤または他の薬剤を含有するが、他のケースでは、いずれの薬剤も存在しないことがある。一部の実施形態において、シェル110は、任意の適する材料を部分的にまたは完全に包囲することができる。前記材料は、例えば、固体または半固体、薬剤などであり得る。また、一部のケースでは、1つより多くの材料が存在することもある。
シェル110は、1つ以上のポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリイソプレン、ポリ(乳酸)およびこれらに類するものを含むことがある。例えば、外部流体中のポリマーの液滴の懸濁液から液体を除去して、凝固したポリマーシェルを残すことにより、シェル110を形成することができる。この例を下で論ずる。
ビヒクル105は、粒子100を標的媒体116に送達するために構成された任意の適する流体を含み得る。一部の実施形態において(例えば、標的媒体116が原油および/または他の炭化水素を含有するケースでは)、ビヒクル105は親水性(例えば、水性ビヒクル)である。
一部の実施形態において、シェルが媒体(例えば、図1Aにおける媒体116)に接触するように、ビヒクル105に含有されている粒子100が媒体116(例えば、油を含有する媒体)に曝露されると、シェル100の少なくとも一部分が分断される。例えば、シェル110が、油を含有する媒体116と接触したとき、シェル110の少なくとも一部分が媒体116に溶解し、その結果、シェル110の分断が生ずるように、シェル110内のポリマーを油に(例えば、原油)に少なくとも部分的に可溶性であるように構成することができる。原油などの油ではなく(または油に加えて)、本明細書において論ずるような炭化水素などに少なくとも部分的に可溶性であるように、前記ポリマーを構成することもできる。一部のケースでは、分断の結果として、穴が形成する(一部のケースでは大きくなる)ことがあり、またはシェル110がひび割れること、断片化すること、変形されることなどがある。一部の実施形態において、シェル110によって含有される流体112および/または薬剤114は、例えばシェル110の分断の結果として、油を含有する媒体116に少なくとも部分的に曝露され得る。
図1B~1Dは、粒子100のシェル110を分断して、粒子110がその中に含有する流体112および/または薬剤114を放出するように誘導する例示的工程を示す略図を含む。しかし、この論考は、単なる例としてのものに過ぎず、シェル110の分断の限定説明であることを意図したものではないことは、理解されるはずである。図1Bにおいて、ビヒクル105内に含有されている粒子100のシェル110は、媒体116と接触している。媒体116と接触すると、図1Cに図示されているようにシェル110の部分118は溶解する。一部の実施形態では、部分118が溶解した後、図1Dに図示されているように、流体112および/または薬剤114の一部またはすべてがシェル110から外に輸送されて媒体116に曝露される。輸送は、例えば対流、拡散、浸透、電気的ドリフトなどにより得る。一部の実施形態において、シェル110は、その内容物(例えば、流体112および/または薬剤114)が放出されると収縮する。例えば、図1Dにおけるシェル110は、シェル110のかかる収縮を表すために図1Cにおけるシェル110より小さく描かれている。加えて、シェル100の内容物(例えば、流体112および/または薬剤114)は、一定の実施形態では、媒体116に指向的に放出され得る。例えば、図1Dには、流体112および/または薬剤114が、矢印120の方向にシェル110から放出されたように示されている。
一部の実施形態では、前記シェル中のポリマーの一部またはすべてを、標的媒体(例えば、原油、炭化水素、石油、油などを含有する媒体)に少なくとも部分的に可溶性であるように構成する。ここで用いる材料は、該材料を25℃、1気圧で液体媒体に曝露したとき、該液体媒体が、該材料の質量の少なくとも100倍の質量を有し、および該材料が該液体媒体に進入して、平衡時、該材料のすべてが該液体媒体中に含有され、該材料のいずれの部分も(例えば、沈殿固体または相分離流体のような)分離した巨視的な相を形成しない場合、液体媒体に「可溶性」であるように構成されている。ここで用いる「可溶性」が、可溶性材料が媒体に分子レベルで溶解されていること、例えば、一部のケースでは、微細分散懸濁液、分散液エマルションなどが平衡時に形成され得ることを必ずしも必要としないことは、理解されるはずである。加えて、上で論じたスクリーニング試験を用いて、材料のすべてではないにせよ一部が液体媒体に可溶性であるとき、材料は「部分的に可溶性」であるように構成されている。一定のケースでは、例えば標的媒体が容易に組成定義されないものである場合、該標的媒体を「示す」化学薬品に少なくとも部分的に可溶性であるように前記シェル中のポリマーの1つ以上を構成することができる。例えば、一部の実施形態では、原油を示す化学薬品として使用することができるオクタンに少なくとも部分的に可溶性であるように、前記シェル中の1つ以上のポリマーを構成することができる。
一部の実施形態において、前記シェルは、親水性流体、例えば水、アルコールなどに可溶性でないように構成されている1つ以上の材料を含むことがある。一部の実施形態において、前記材料は、本明細書に記載するものなどの1つ以上のポリマーを含むことがある。一部の実施形態において、粒子におけるかかるシェル材料の使用は、該粒子が例えば炭化水素、石油、油などと接触する媒体への、該粒子内に含有されている流体および/または薬剤の送達を可能にする。
一例として、水不溶性シェルを含むかつ界面活性剤(または他の適する流体および/もしくは薬剤、例えば本明細書に記載するもの)を含有する複数の粒子を、水または別の適するビヒクルに懸濁させる。この例では、水中の粒子の懸濁液を、油を含有するまたは少なくとも含有すると推測される領域もしくは場所、例えば、油井、地下油層、油の容器(例えば、バイアルまたは樽)、化学工場、製油所などに輸送する、または該領域もしくは場所と別様に接触させる。この例では、油と接触させる前、前記粒子の水不溶性シェルが実質的に無傷の状態で維持されるように構成されており、それにより、界面活性剤は、該粒子内に含有された状態を確実に維持する。一部の実施形態では、前記粒子のシェルが前記標的媒体に接触すると、前記シェルは分断されて、例えば少なくとも部分的に前記媒体に溶解し、その結果、界面活性剤の少なくとも一部が前記媒体に曝露される。
上で述べたように、一部の実施形態において、前記シェルはポリマーを含むことがある。シェルでの使用に適する例示的ポリマーとしては、ポリスチレン(PS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリイソプレン(PIP)、ポリ(乳酸)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ならびに/またはこれらのおよび/もしくは他のポリマーの混合物および/もしくはコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
一部の実施形態において、前記ポリマーは、比較的線状のポリマーを含むことがある。一般に、線状ポリマーは、高架橋ポリマーより迅速に溶解し、したがって、多くの用途に特に有用である。一部の実施形態において、前記線状ポリマーは、実質的に架橋していない(すなわち、前記ポリマーは、ペンダント基が存在することもあるが、他の鎖への化学結合を含まない炭素原子の線状鎖を含む)。前記線状ポリマーは架橋していないだろうが、前記線状ポリマーが互いに物理的に絡み合っていることがあることは理解されるはずである。
一部の実施形態において、粒子のシェルのすべてまたは一部は、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを含むことがある。高いガラス転移温度を有するポリマーは、高温および/または高圧での破断または分断に対してより耐性であり、このことが、それらの使用を一部の石油増進回収プロセスなどの一定の高温用途に望ましいものにし得る。しかし、他の用途では、より低いガラス転移温度を有するポリマーも使用することができる。一部の実施形態において、前記シェル中のポリマーの実質的にすべてが、少なくとも約85℃、少なくとも約100℃、約85℃と約250℃の間、または約85℃と約200℃の間のガラス転移温度を有する。当業者は、例えば示差走査熱分析(DSC:differential scanning calorimetry)を用いることにより、シェルに使用されるポリマーのガラス転移温度を決定することができるだろう。一般に、DSCは、ポリマーマトリックスがガラス状態からゴム状態になるときの温度としてガラス転移温度を規定する。一般に、比較的長い鎖長を有するポリマーは、比較的小さい鎖移動度ならびに比較的高い強度、靭性およびガラス転移温度を有する。比較的高いガラス転移温度を有する例示的ポリマーとしては、ポリスチレン(PS)、ポリカプロラクトン(PCL)およびポリイソプレン(PIP)、ならびに/またはこれらのおよび/もしくは他のポリマーの混合物および/もしくはコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
前記粒子のシェルに使用されるポリマー材料の分子量も、本発明の一部の実施形態に従って望ましい物理的特性を付与するように選択することができる。例えば、前記標的媒体との接触により前記粒子のシェルの比較的迅速な分断が所望される一定の実施形態では、低い(例えば、約20,000g/mol未満の)重量平均分子量を有するポリマーを利用することができる。前記シェルを比較的ゆっくりと破断することが望ましい一部の実施形態では、比較的高い(例えば、約20,000g/molより高い、例えば、約20,000g/molと約800,000g/molの間の)重量平均分子量を有するポリマーを利用することができる。
一部の実施形態では、破断することなく比較的高い圧力の印加に耐えるように前記粒子のシェルを構成する。機械的耐性材料、例えばポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリイソプレンおよび/または他の機械的耐性ポリマーもしくは他の材料からシェルを製造することにより、機械的に頑強なシェルを生成することができる。一部の実施形態では(例えば、地下油層への送達のために加圧される水または別のビヒクルに粒子を懸濁させる実施形態では)、1つ以上の粒子に(例えば乾燥後に)少なくとも約200kPa、少なくとも約500kPa、少なくとも約750kPa、約100kPaと約1000kPaの間、または約200kPaと約750kPaの間の絶対圧を、破断させることなく、かけることができる。高耐圧性が所望される一部の実施形態をはじめとする、一部の実施形態において、前記シェルに使用される材料は、比較的弾性である。例えば、一部の実施形態において、前記シェルに使用されるポリマー材料のヤング率は、少なくとも約1MPa、少なくとも約10MPa、少なくとも約100MPaまたは少なくとも約1GPaであり得る。一部の実施形態において、前記シェルに使用されるポリマー材料のヤング率は、約10GPa未満、約5GPa未満または約3GPa未満であり得る。
様々な薬剤を送達できるように前記粒子を構成することができる。前記薬剤は、流体であることがあり、もしくは固体であることがあり、および/または前記薬剤は、流体に含有されている(例えば、溶解している、懸濁している、など)ことがある。一部の実施形態において、前記薬剤は、1つ以上の界面活性剤を含むことがある。前記界面活性剤を、例えば、油を含有する媒体、または本明細書において論ずるような他の媒体に送達することができる。油を含有する媒体に界面活性剤を送達すると、該界面活性剤は、油−水界面を安定させ、油が水中で微細エマルションを形成するのを防止し、したがって、油を水からより容易に分離させる。様々な界面活性剤が前記粒子に含有され得る。一部の実施形態において、例えば、前記粒子は、イオン性(例えば、カチオン性またはアニオン性)界面活性剤を含有することがある。使用に適する例示的界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルカルボン酸塩、脂肪酸塩(石鹸)、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、カルボン酸塩フッ素系界面活性剤、ペルフルオロノナン酸塩、ペルフルオロオクタン酸塩(PFOAもしくはPFO)またはこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。使用に適する例示的カチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、ベンザルコニウムクロリド(BAC)、ベンゼトニウムクロリド(BZT)またはこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、非イオン性界面活性剤を使用し、それらとしては、モノオレイン酸ソルビタン(Span 80とも呼ばれる);ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)(F 108とも呼ばれる);ポリビニルアルコール(PVA);セチルアルコール、ステアリルアルコール;セトステアリルアルコール(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコールから主として成るもの);オレイルアルコール;ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(Brij);オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;グルコシドアルキルエーテル;デシルグルコシド;ラウリルグルコシド;オクチルグルコシド;ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル;triton X-100;ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル;ノノキシノール−9;グリセロールアルキルエステル;ラウリン酸グリセリル;ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル;ポリソルベート;ソルビタンアルキルエステル;コカミドMEA;コカミドDEA;ドデシルジメチルアミンオキシド;ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブロックコポリマー;Poloxamer;またはこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。
一部の実施形態において、イオン性非界面活性剤の使用は、例えば粒子を塩水環境(例えば海水)または他の適するビヒクルに懸濁させる用途では、シェルがより安定性になり得るため、有利である。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、塩水中のイオン性界面活性剤の使用は、シェル内部の流体(または他の内容物)とシェル外部の流体の間の浸透圧の平衡をもたらし、この浸透圧の平衡がシェルの安定化に役立つと考えられる。
前記粒子を任意の適するビヒクル(例えば、図1A〜1Dにおけるビヒクル105)に懸濁させることができる。一部の実施形態において、前記粒子を懸濁させるビヒクルは、親水性である。一例では、ビヒクル105は海水を含み、例えば、海に放出されたおよび/または海面下の油層内に存する原油または他の炭化水素に粒子を送達するためにそれを使用することができる。適する親水性ビヒクルの例としては、水、アルコール(例えば、ブタノール(例えばn−ブタノール)、イソプロパノール(IPA)、プロパノール(例えば(n−プロパノール)、エタノール、メタノール、グリセリンまたはこれらに類するもの)、食塩水、血液、酸(例えば、ギ酸、酢酸またはこれらに類するもの)、アミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミンまたはこれらに類するもの)、これらの混合物、および/または他の類似の流体が挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、極性プロトン性溶剤(例えば、アルコール、酸、塩基など)を親水性ビヒクルに使用することができる。一部の実施形態では、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンまたはこれらに類するものをはじめとする極性非プロトン性溶剤を、親水性ビヒクルに使用することができる。本発明が親水性ビヒクルに限定されないことおよび他の実施形態では疎水性ビヒクルを使用できるだろうことは理解されるはずである。
本明細書に記載する粒子は、任意の適する平均断面直径を有し得る。当業者は、例えばレーザー光散乱、顕微鏡検査または他の公知の技法を用いて、単一の粒子および/または複数の粒子の平均断面直径を決定することができるであろう。単一粒子の平均断面直径は、非球形粒子の場合、該非球形粒子と同じ体積を有する完全な球体の直径である。一部のケースにおいて、1個の粒子(および/または複数のもしくは一連の粒子)の平均断面直径は、例えば、約1mm未満、約500マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約75マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約25マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満もしくは約5マイクロメートル未満、または約50マイクロメートルと約1mmの間、約10マイクロメートルと約500マイクロメートルの間もしくは約50マイクロメートルと約100マイクロメートルの間であり得る。一定のケースにおいて、前記平均断面直径は、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約2マイクロメートル、少なくとも約3マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、少なくとも約10マイクロメートル、少なくとも約15マイクロメートルまたは少なくとも約20マイクロメートルであることもある。一部の実施形態において、複数の粒子の中の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の粒子は、この段落で概説した任意の範囲内の平均断面直径を有する。
一部の実施形態において、前記粒子(単数または複数)のシェルは、比較的薄い。薄いシェルの使用は、多数の利点をもたらすことができる。例えば、薄いシェルは、一部のケースでは比較的迅速に溶解することができる。一部の実施形態において、これは、粒子が標的媒体から離れて輸送される前にその内容物を送達することを可能にすることができる。薄いシェルを有する粒子を使用するもう1つの利点は、少なくとも一定の実施形態によると、流体液滴の外部液体であって、シェルを形成するために凝固されるポリマーを含有するものである外部液体を乾燥させて粒子のシェルを形成する工程中、形成されるシェルを破断させることなく比較的容易に該液体の除去を行うことができる点である。一部の実施形態において、比較的薄いシェルを利用すると、該シェルは、ポリマーが懸濁している液体を除去すると破断する傾向がある。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、比較的厚いシェル(例えば、約10マイクロメートルより厚い厚みを有するシェル)を利用すると、該シェルの最外部は、該シェルの最内部より迅速に乾燥し、その結果、該シェルを破断または別様に分断し得る応力が生ずると考えられる。いずれの理論によっても拘束されることを望まないが、非常に薄い厚みを有する中間相の使用は、流体が潤滑状況にあるように潤滑剤としての役割を該中間相に果たさせると考えられる。この状況では、最内部流体に対する掃流力が有意に増加される。掃流力の増加は、薄いシェルの流体の安定性を向上させると考えられる。例えば、100マイクロメートルシェルによって包囲された98マイクロメートル直径内部液滴の移行速度は、100マイクロメートルシェルによって包囲された50マイクロメートル直径内部液滴の移行速度より100,000倍低い。
一部の実施形態において、粒子のシェルは、該粒子の平均断面直径の約0.05倍未満、約0.01倍未満、約0.005倍未満もしくは約0.001倍未満の、または該粒子の平均断面直径の約0.0005倍と約0.05倍の間、約0.0005倍と約0.01倍の間、約0.0005倍と約0.005倍の間もしくは約0.0005倍と約0.001倍の間の、(該粒子全体を平均した)平均厚みを有する。一部の実施形態において、粒子のシェルは、約1マイクロメートル未満、約500nm未満もしくは約100nm未満の、または約50nmと約1マイクロメートルの間、約50nmと約500nmの間もしくは約50nmと約100nmの間の平均厚みを有する。一部の実施形態において、複数の粒子の中の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の粒子は、この段落で概説した任意の範囲内の平均厚みを有するシェルを含む。当業者は、例えば粒子の走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)像を検査することにより、シェルの平均厚みを決定することができよう。
多くの用途について、複数の粒子であって、それらの少なくとも一部が流体および/または薬剤、例えば界面活性剤を含有するものである複数の粒子を、標的媒体に送達することが望ましいだろう。予測可能な薬剤送達を保証するために、一部の実施形態は、有利には、比較的一貫した特性を有する粒子を利用する。例えば、一部の実施形態では、複数の粒子であって、該複数の粒子間のシェル厚分布が比較的均一であるものである複数の粒子を提供する。比較的均一なシェル厚を有する粒子の使用は、一部のケースでは、一貫したシェル溶解時間を保証することができ、それが薬剤送達をより予測可能なものにする。一部の実施形態では、複数の粒子であって、該複数の粒子各々の平均シェル厚の平均として測定される総平均シェル厚を有するものである複数の粒子を提供する。一部のケースでは、前記平均シェル厚の分布は、粒子の約5%以下、約2%以下または約1%以下が、総平均シェル厚の90%より薄い(もしくは95%より薄い、もしくは99%より薄い)および/または総平均シェル厚の110%より厚い(もしくは105%より厚い、もしくは約101%より厚い)平均シェル厚を有するシェルを有するようなものであり得る。
前記複数の粒子は、一定の実施形態では比較的均一な断面直径を有する。比較的均一な断面直径を有する粒子の使用は、粒子懸濁液の粘度、標的媒体に送達される薬剤の量、ならびに/または粒子からの流体および/もしくは薬剤の送達のための他のパラメータの制御を可能にすることができる。一部の実施形態において、前記複数の粒子は、前記粒子の約5%以下、約2%以下もしくは約1%以下が、前記複数の粒子の総平均直径の約90%未満(もしくは約95%未満、もしくは約99%未満)のおよび/または約110%より大きい(もしくは約105%より大きい、もしくは約101%より大きい)直径を有するような、総平均直径および直径分布を有する。
一部の実施形態において、前記複数の粒子は、前記粒子の断面直径の変動係数が約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%と約10%の間、約1%と約5%の間または約1%と約2%の間であるような、総平均直径および直径分布を有する。前記変動係数を当業者は容易に決定することができ、
(式中、σは標準偏差であり、およびμは平均である)
と定義することができる。
ここで用いる2つの流体は、エマルションが生成される温度でおよび条件下で一方が他方に少なくとも10重量%のレベルまで可溶でないとき、互いに不混和性である、すなわち混和性でない。例えば、流体液滴の形成の時間枠内で不混和性である2つの流体を選択することができる。一部の実施形態において、2つの流体(例えば、多相エマルションのキャリア流体および内部液滴流体)は、相溶性または混和性であるが、外部液滴流体は、キャリア液滴流体および内部液滴流体の一方または両方と不相溶性または不混和性である。しかし、他の実施形態では、3つ(以上の)すべての流体が相互に不混和性であり、および一定のケースでは、前記流体のすべてが必ずしもすべて水溶性であるとは限らない。さらに他の実施形態では、述べたように、追加の第四、第五、第六などの流体を加えて、液滴内にますます複雑な液滴を生成することができる。例えば、キャリア流体は、第一の流体を包囲することができ、そしてまた該第一の流体は、第二の流体を包囲することができ、そしてまた該第二の流体は、第三の流体を包囲することができ、そしてまた該第三の流体は、第四の流体を包囲していることができる等々。加えて、流体液滴の各入れ子層の物理的特性を、例えば各入れ子レベルの組成の制御により、各々独立して制御することができる。
ここで用いる用語「流体」は、一般に、流動するおよびその容器の外形に従う傾向がある物質、すなわち、液体、ガス、粘弾性流体などを指す。典型的に、流体は、静的せん断応力に耐えることができない材料であり、せん断応力を印加すると、流体は、継続および永久歪を経験する。流体は、流動を可能にする任意の適する粘度を有し得る。2つ以上の流体が存在する場合、各流体を当業者は流体間の関係を考慮ることにより本質的に任意の流体(液体、ガスおよびこれらに類するもの)の中から独立して選択することができる。
本発明の1つの態様では、論じたように、1本以上の管路に流体を流すことによって多相エマルションを形成する。このシステムはマイクロ流体システムであり得る。ここで用いる「マイクロ流体」は、約1ミリメートル(mm)未満の断面寸法および一部のケースでは少なくとも3:1の長さ対最大断面寸法比を有する少なくとも1つの流体チャネルを備えているデバイス、装置またはシステムを指す。前記システムの1本以上の管路は、毛細管であり得る。一部のケースでは、多数の管路を備えており、および一部の実施形態では、少なくとも一部が本明細書に記載するように入れ子状になっている。前記管路は、マイクロ流体サイズ範囲であり得、例えば、約1ミリメートル未満、約300マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約30マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約3マイクロメートル未満または約1マイクロメートル未満の平均内径を有し、または該平均内径を有する部分を有し、それによって匹敵する平均直径を有する液滴を生じさせることができる。前記管路の1本以上は、断面に関して、同じ地点での幅と実質的に同じである高さを有することがある(が、必ずしも有するとは限らない)。管路は開口部を備えており、該開口部は、該管路の平均径より小さいサイズであることもあり、大きいサイズであることもあり、または該管路の平均径と同じサイズであることもある。例えば、管路開口部は、約1mm未満、約500マイクロメートル未満、約300マイクロメートル未満、約200マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約30マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、約3マイクロメートル未満などの直径を有することがある。断面に関しては、前記管路は、長方形であることもあり、または実質的に非長方形、例えば円形もしくは楕円形であることもある。本発明の管路は、別の管路の中に配置または入れ子状にされていることもあり、一部のケースでは多数の入れ子が可能である。一部の実施形態では、一方の管路がもう一方の管路内に同心円状に保持されていることがあり、これら2本の管路は、同心円状であるとみなされる。しかし、一方の同心円管路が、もう一方の包囲している管路に対して偏心した位置にあることもあり、すなわち、「同心円状」は、厳密に同軸を有する管を必ずしも指すとは限らない。同心円状幾何形状または入れ子幾何形状を用いることにより、混和性である2つの流体の接触を避けることができる。
一部の実施形態において、流体、管路(管路壁を含む)および他の材料は、疎水性と言われることもあり、または親水性と言われることもある。材料は、空気中、1気圧および25℃で問題の材料と密接させたときに水滴が90°より大きい接触角を形成する場合、「疎水性」である。材料は、空気中、1気圧および25℃で問題の材料と密接させたときに水滴が90°未満の接触角を形成する場合、「親水性」である。疎水性および親水性の文脈での「接触角」は、材料の表面と、該材料表面との接点での水滴の外面の接線との間で測定される角度であり、水滴によって測定される。図5は、空気597中で親水性材料593上の水滴592により形成される接触角591の略図である。図5に示すように、接触角591は、液滴592と材料表面594間の接点596で、材料593の表面594から液滴592を通って液滴592の外面の接線595まで測定される。
本発明の一定の態様による様々な材料および方法を用いて、本明細書に記載する多相エマルションおよび/または粒子を生成するように構成されたシステム(例えば、上で説明したもの)を形成することができる。一部のケースでは、選択される様々な材料自体が様々な方法の役に立つ。例えば、本発明の様々な要素を固体材料から構成し、この場合、管路を微細加工、膜蒸着プロセス、例えばスピンコーティングおよび化学蒸着、レーザー加工、写真平版技術、エッチング法(湿式化学またはプラズマプロセスを含む)、およびこれらに類するものによって構成する。例えば、Scientific American, 248:44-55, 1983 (Angell, et al)を参照されたし。1つの実施形態では、前記流体システムの少なくとも一部分を、シリコンチップに特徴形状(features)をエッチングすることにより、シリコンで形成する。シリコンからの本発明の様々な流体システムおよびデバイスの正確かつ効率的製造法は既知である。もう1つの実施形態では、本発明のシステムおよびデバイスの様々な要素を、ポリマー、例えば、弾性ポリマー、例えばポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」もしくはTeflon(登録商標))またはこれらに類するもので構成する。
種々の要素を種々の材料で製造することができる。例えば、底壁および側壁を具備する基礎部分を不透明材料、例えばシリコンまたはPDMSから製造することができ、流体プロセスの観察および/または制御のために、頂部を透明材料または少なくとも部分的に透明な材料、例えばガラスまたは透明ポリマーから製造することができる。基礎支持材料が的確な所望の官能基を有さない場合、管路内壁と接触する流体に所望の化学官能基を露出するように要素を被覆することができる。例えば、管路内壁が別の材料で被覆されている要素を説明したように製造することができる。本発明のシステムおよびデバイスの様々な要素を製造するために使用される材料、例えば、流体管路の内壁を被覆するために使用される材料は、望ましくは、有害作用を及ぼさないまたは流体システムを流れる流体によって有害作用を受けないであろう材料、例えば、デバイス内で使用される流体の存在下で化学的に不活性である材料(単数または複数)の中から選択することができる。かかるコーティングの非限定的な例を下で開示する;追加の例は、「Surfaces, Including Microfluidic Channels, With Controlled Wetting Properties」と題するWeitzらにより2009年2月11日に出願され、2009年10月1日にWO 2009/12025として発行された、国際特許出願番号PCT/US2009/000850に開示されており、該特許文献は参照により本明細書に援用されている。
一部の実施形態では、本発明の様々な要素をポリマーおよび/または可撓性および/または弾性材料から製造し、ならびに硬化性流体で適便に形成して、成形(例えば、レプリカ成形、射出成形、注型成形など)による加工を助長することができる。前記硬化性流体は、流体ネットワーク内でおよび流体ネットワークとともに使用することが企図された流体を含有および/または輸送することができる固体へと凝固するように誘導することができるまたは自然凝固する、本質的に任意の流体であり得る。一部の実施形態において、前記硬化性流体は、ポリマー液または液体ポリマー前駆体(すなわち「プレポリマー」)を含む。適するポリマー液としては、例えば、それらの融点より上に加熱された熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーまたはかかるポリマーの混合物が挙げられる。もう1つの例として、適するポリマー液には、適する溶剤中の1つ以上のポリマーの溶液であって、例えば蒸発により該溶剤が除去されると固体ポリマー材料になる溶液を挙げることができる。例えば溶融状態からまたは蒸発により凝固させることができるかかるポリマー材料は、当業者には周知である。多くが弾性である様々なポリマー材料が適しており、ならびに金型マスターの一方または両方が弾性材料で構成されている実施形態については金型または金型マスターの形成にも適している。かかるポリマーの例の非限定的リストには、シリコーンポリマー、エポキシポリマーおよびアクリラートポリマーの一般クラスのポリマーが含まれる。エポキシポリマーは、エポキシ基、1,2−エポキシドまたはオキシランと一般に呼ばれる3員環式エーテル基の存在を特徴とする。例えば、芳香族アミン、トリアジンおよび環式脂肪族主鎖に基づく化合物に加えて、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを使用することができる。もう1つの例としては、周知のNovolacポリマーが挙げられる。本発明による使用に適するシリコーンエラストマーの非限定的な例としては、クロロシラン、例えばメチルクロロシラン、エチルクロロシラン、フェニルクロロシランなどをはじめとする前駆体から形成されたものが挙げられる。
一部の実施形態では、シリコーンポリマー、例えば、シリコーンエラストマーポリジメチルシロキサンを利用する。PDMSポリマーの非限定的例としては、Dow Chemical Co., Midland, MIによりし商標Sylgardで販売されているもの、特に、Sylgard 182、Sylgard 184およびSylgard 186が挙げられる。PMDSを含むシリコーンポリマーは、本発明のマイクロ流体構造の製造を単純にする幾つかの有益な特性を有する。例えば、かかる材料は、安価であり、容易に入手可能であり、および熱での硬化によってプレポリマー液からそれらを凝固させることができる。例えば、PDMSは、典型的には、例えば約1時間の曝露時間にわたる例えば約65℃から約75℃くらいの温度へのプレポリマー液への曝露によって硬化可能である。また、PDMSなどのシリコーンポリマーは弾性であり得、したがって、本発明の一定の実施形態において必要な比較的高いアスペクト比を有する非常に小さい特徴形状(features)の形成に有用であり得る。可撓性(例えば、弾性)金型またはマスターは、この点で有利であり得る。
本発明のマイクロ流体構造などの構造をPDMSなどのシリコーンポリマーから形成することの利点は、酸化構造がそれらの表面に他の酸化シリコーンポリマー表面へのまたは様々な他のポリマーおよび非ポリマー材料の酸化表面への架橋が可能な化学基を含有するように、例えば空気プラズマなどの酸素含有プラズマへの曝露によって、かかるポリマーを酸化させることができることである。したがって、要素を製造し、その後、酸化し、そして別の接着剤または他の封止手段を必要とすることなく他のシリコーンポリマー表面にまたは酸化シリコーンポリマー表面と反応性の他の基板の表面に本質的に不可逆的に封止することができる。殆どのケースで、封止を形成するために補助的圧力を印加する必要なく単に酸化シリコーン表面を別の表面に接触させることによって封止を果たすことができる。すなわち、予め酸化されたシリコーン表面が、適する接着面に対して触圧接着剤として作用する。具体的には、それ自体に不可逆的に封止可能であることに加えて、酸化PDMSなどの酸化シリコーンを、それ自体以外の一定の範囲の酸化材料にも不可逆的に封止することができ、該酸化材料としては、例えば、PDMS表面と同様の様式で(例えば、酸素含有プラズマへの曝露により)酸化されたガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス状炭素およびエポキシポリマーが挙げられる。本発明に関連して有用な酸化および封止方法、ならびに総合的成形技術は、当該技術分野において、例えば、参照により本明細書に援用されている「Rapid Prototyping of Microfluidic Systems and Polydimethylsiloxane」と題する論文(Anal. Chem., 70:474-480, 1998 (Duffy et al.))の中で説明されている。
一部の実施形態では、本発明の一定のマイクロ流体構造(または内部の流体接触面)を一定の酸化シリコーンポリマーから形成することができる。かかる表面は、弾性ポリマーの表面より親水性であり得る。したがって、かかる親水性管路表面を水溶液でより容易に満たすおよび湿潤させることができる。
一部の実施形態では、本発明のマイクロ流体デバイスの底壁を、1つ以上の側壁もしくは頂壁、または他の要素とは異なる材料で形成する。例えば、一部の実施形態において、底壁の内面は、シリコンウェーハもしくはマイクロチップの表面、または他の基板を含む。他の要素を、上で説明したように、かかる代替基板に封止することができる。シリコーンポリマー(例えばPDMS)を含む要素を異なる材料の基板(底壁)に封止することが所望される場合、酸化シリコーンポリマーが不可逆的に封止できる材料の群(例えば、酸化されたガラス、ケイ素、酸化ケイ素、石英、窒化ケイ素、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシポリマーおよびガラス状炭素の表面)から基板を選択することができる。あるいは、別の接着剤、ボンディング、溶剤ボンディング、超音波溶接などをはじめとする(しかしこれらに限定されない)、当業者には明らかであるような他の封止技術を用いることがでる。
以下の文献は、それら全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用されている:Linkらにより2004年4月9日に出願された「Formation and Control of Fluidic Species」と題するWO 2004/091763;Stoneらにより2003年6月3日に出願された「Method and Apparatus for Fluid Dispersion」と題するWO 2004/002627;Weitzらにより2006年3月3日に出願された「Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions」と題するWO 2006/096571;Linkらにより2004年8月27日に出願された「Electronic Control of Fluidic Species」と題する国際特許公開番号WO 2005/021151パンフレット;Chuらにより2008年3月28日に出願された「Emulsions and Techniques for Formation」と題するWO 2008/121342;Weitzらにより2010年3月12日に出願された「Method for the Controlled Creation of Emulsions, Including Multiple Emulsions」と題するWO 2010/104604;Weitzらにより2010年9月1日に出願された「Multiple Emulsions Created Using Junctions」と題するWO 2011/028760;Weitzらにより2010年9月1日に出願された「Multiple Emulsions Created Using Jetting and Other Techniques」と題するWO 2011/028764;およびAbbaspourradらにより2011年7月6日に出願された「Delivery to Hydrocarbons or Oil」と題する米国特許仮出願。Abbaspourradらにより2011年7月6日に出願された「Delivery to Hydrocarbons or Oil, Including Crude Oil」と題する米国特許仮出願第61/505,001号明細書、およびKimらにより2011年7月6日に出願された「Multiple Emulsions and Techniques for the Formation of Multiple Emulsions」と題する米国特許仮出願第61/504,990号明細書もまたそれら全体が参照により本明細書に援用されている。
本明細書に引用するすべての他の特許、特許出願および文献もまたそれら全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用されている。
以下の実施例は、本発明の一定の実施形態を示すものであるが、本発明の全範囲を例示してはいない。
この実施例は、マイクロ流体技術を用いる、流体の薄い中間層を含む比較的単分散の二相エマルション液滴を作製するためのアプローチを説明するものである。マイクロ流体チャネル内に閉じ込められている2つの不混和性ストリームは、一定の物理的条件下で安定したジェットまたは液滴を形成することができ、それらのストリームを一緒にエマルション化して、本明細書に記載するような二相エマルション液滴を形成することができる。結果として得られる二相エマルション液滴は、該二相エマルションの安定性を向上させることができる薄い外層を有する。この実施例で説明するシステムおよび方法は、任意の粘稠有機溶剤に適用することができ、一部の実施形態では、少量のシェル材料での、シェル含有材料を有する粒子の作製を助長することができる。加えて、この実施例で説明するシステムおよび方法は、二相エマルションまたはより高次の多相エマルションを少なくとも一部のケースでは一段階で生成することができる。一部の事例では、外相(例えば、トルエン)を蒸発させてポリマー(例えば、ポリ(乳酸))を残し、そのポリマーを凝固させてシェルを形成することにより、100nm未満のシェル厚を有する比較的単分散の粒子を形成することができる。
単一マイクロ流体チャネルを流れる2つの不混和性流体は、幾つかの物理的パラメータに依存して、液滴およびジェットの異なる独特な流動パターンを示し得る。マイクロ流体チャネルの壁への親和性が高い方の流体は連続相を形成し、その一方で、親和性が低い方の流体は、そのチャネルの壁と接触せずに液滴またはジェットの形態で流れることができる。多くの場合、前記流れは、レイリー・プラトー不安定性のため不安定であるジェットを生じさせることがあり、結果的にジェットが破壊して別個の液滴になる;しかし、界面の空間閉じ込めを用いて、より安定したジェットを生じさせることができる。界面がチャネル壁に近接して形成されると、一部のケースでは不安定性が低減され得る。
この実施例における一部の実験では、安定した二相ジェットの連続相へのエマルション化によって二相エマルション液滴を生成した。水中油中水(W/O/W)型二相エマルション液滴を作るために、マイクロ流体デバイスを利用した。図6Aは、二相エマルション液滴の調製に使用したマイクロ流体デバイスの略図を含む。ここで使用したマイクロ流体デバイスは、図6Aに描かれているように、第二の方形チャネル612に挿入された疎水性先細注入チャネル610を含み、方形チャネル612の内部寸法は、注入チャネル610の外径のものよりわずかに大きかった。注入チャネルの外部寸法よりわずかに大きい内径を有する方形チャネルを使用することにより、これら2つのチャネルはぴったりと合い、それがこのシステムにおける管のより容易なチャネル配置を可能にし得る。(方形チャネルをここでは使用しているが、他の形状を有するチャネルも使用することができる)。2つの不混和性流体(「油」相602および「水」相604)を単一の注入チャネルに流すために、チャネル614を注入チャネル610に挿入した。加えて、回収管616を方形チャネルに挿入して、注入先端付近に流れを閉じ込め、それによって流速を増し、および注入チャネル610から生成される液滴を回収した。W/O/W型二相エマルション液滴を生成するために、n−オクタデシルトリメトキシルシラン(Aldrich)で注入毛細管壁を被覆してそれを疎水性にし、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシルシラン(Gelest, Inc.)で回収毛細管壁を被覆してそれを親水性(hydrophophilic)にした。
これらの実験において、1重量%SPAN 80を有するポリ(エチレングリコール)(PEG、MW 6000)およびヘキサデカンの25重量%水溶液(「油」相602)を注入チャネルに通して分散相を形成し、ならびにポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW 13,000〜23,000)の10重量%水溶液(「水」相606)をチャネル612に通して連続相を形成した。ここでは「油」相を水相または(水と混和性である)「水性」相に実質的に混和できない相を適便に指すために用いていることに留意しなければならない。「油」相を油のみに限定されると解釈するべきでなく、「油」相は、水に実質的に混和できない任意の流体を包含し得る。
マイクロ流体デバイスに使用した注入チャネルの内径に依存して、結果として生ずる種々の流れパターンが観察された。例えば、580マイクロメートルの内径を有する注入チャネルでは、広範な流量のために様々な水滴形成が観察された。具体的な非限定的例として、内部流体ストリームの体積流量の外部流体の体積流量に対する比を4:1に設定したとき、図6Bの光学顕微鏡像に示されているような「一連」のプラグ様のまたは伸長した液滴が観察された;これらの液滴は、エマルション化されて、注入毛細管の外面に沿って内部および外部流体ストリームと同じ方向に流れる並流連続流体ストリームになった。プラグ様液滴がチャネルの末端の開口部を通過すると、比較的薄い外層を有する比較的単分散の二相エマルションが生成された一方で、油流については水滴間に大きな油(ヘキサデカン)ブロッブが生成された。二相エマルション液滴のこの不連続生成は、図6Cの光学顕微鏡像に示されている。
もう1つの非限定的例として、200マイクロメートルの内径を有する注入チャネルを使用したとき、図6Dの光学顕微鏡像に示されているように、これらの特定の条件下で安定したウォータージェットが形成された。このジェットを回収管の開口部でまたは付近で連続的にエマルション化し、その結果、単分散二相エマルション液滴を得た。より小さい内径を有するチャネルの使用は、これらの条件下でより高度な界面閉じ込めを生じさせ、その結果、摂動が低減され、安定したジェットが生成された。図6Cおよび6Eから分かるように、結果として生ずる二相エマルション液滴の外層の厚みは薄過ぎて、光学顕微鏡で正確に測定することができなかった。
進入ストリームの流量は、注入チャネルの流れパターンに影響を及ぼし、したがって二相エマルション液滴の生成に影響を及ぼした。図7Aは、安定したジェットおよび/または液滴(dropets)が生成される状況、および不安定な流れが発生し、液滴が生成されない状況を含む、各々の異なる流量で観察される様々な流れ状況を示す、内部または「コア」ストリーム(図6Aにおける流体604)および外部または「クラッディング」ストリーム(図6Aにおける流体602)の流量の関数としてのシステム内の流れ挙動のプロットを示すものである。例えば、内部ストリームの流量が、外部ストリームの所与の流量に対して十分に高いとき、図7Bの一番上の光学顕微鏡像に示されているような安定したウォータージェットが注入チャネル内で形成された(丸)。対照的に、内部ストリームの流量が減少したとき、ジェットは不安定になり、図7Bの真ん中の光学顕微鏡像に示されているように、破壊せずに界面の変動を示した(三角形)。内部ストリームの流量のさらなる低減は、図7Bの一番下の光学顕微鏡像に示されているようなプラグ様水滴を生じさせた(ばつ印)。
内部ストリームの高流量は安定したジェットを生じさせることができたが、必ずしも二相エマルションがそのジェットから生成されるとは限らなかった。高流量の内部ストリームの高慣性は、注入チャネルの先端付近の連続相への内部ストリームの漏れの原因となり得、これは図7Aの領域(a)に対応する。内部ストリームの流量を領域(b)内の値に設定することで、二相エマルション液滴を噴射モードと滴下モードの両方で生成することが可能になる。例えば、約1200マイクロリットル/時の内部ストリーム流量の場合、図7Cの光学顕微鏡像に示されているように、二相ジェットは、回収チャネルの末端の開口部を通過し、その後、回収チャネルの十分に内側のそのジェットの末端で二相エマルション液滴へと分解した。対照的に、この特定のデバイスにおいて800マイクロリットル/時の内部ストリーム流量の場合、図7Dの光学顕微鏡像に示されているように、二相ジェットは、回収チャネルの開口部付近で滴下モードでエマルション化された。内部ストリームの流量を400マイクロリットル/時(または図7Aの領域(d)内の任意の他の流量)に設定したとき、図7Eの光学顕微鏡像に示されているように、二相エマルション液滴の不連続生成が観察された。図7C〜7Eに図示する実験のすべてについて、クラッディングストリームの流量を100マイクロリットル/時で維持した。
O/W/O型二相エマルション液滴を同様に調製し得る。O/W/O型二相エマルション液滴を生成するために、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシルシラン(Gelest, Inc.)で注入毛細管壁を被覆してそれを親水性にし、n−オクタデシルトリメトキシルシラン(Aldrich)で回収毛細管壁を被覆してそれを疎水性にした。同じ幾何形状だが正反対の表面修飾を有するマイクロ流体デバイスを使用して、図8A〜8Cに図示するようなシリコーン油(AR20)/F108の1重量%水溶液/DC749の2重量%シリコーン油の二相エマルション液滴を調製した。図8Aは、O/W/O型二相エマルション液滴を調製するために使用したマイクロ流体デバイスの略図である。図8B〜8Cは、滴下モードでのO/W/O二相エマルション液滴の生成および結果として得られた単分散二相エマルション液滴を示す光学顕微鏡像である。
滴下モードで動作させたとき、液滴生成は、2つの競合する力、すなわち、チャネルの末端に液滴を保持する毛細管力と液滴を下流に引っ張る掃流力によって支配されるように見えた。例えば(掃流力に比例する)連続相の流量を制御することにより、二相エマルション液滴のサイズを制御することができる。図9Aは、外部チャネル612における連続流体流量、Q3の関数としてのエマルション直径のプロットを含み、図9Bは、連続相の表示流量で調製した比較的単分散の二相エマルション液滴の光学顕微鏡像を示す。図9A〜9Bに示されているように、流量を増加させると、二相エマルション液滴の直径は減少した。結果として得られた二相エマルションは、比較的単分散であり、その直径は、1.0〜1.9%の範囲の変動係数を有した。
二相エマルション液滴の外層の厚み、tを光学顕微鏡像から正確に測定することは困難であった。しかし、二相エマルション液滴の半径(R)と、該二相エマルションを破断させること(その結果、内部「水」相は「油」シェルから出て連続「水」相に輸送され、「油」滴が残る)により調製した単一の「油」滴の半径(R
rup)とを比較することによって、この外層の厚みを推定することもできた。破断前の「油」シェル厚みは、初期「油」シェルの体積(方程式2の左手側)が、二相エマルションの破断後に形成される「油」滴の体積(方程式2の右手側)と等しくなることに留意して、次の質量平衡方程式を用いて計算することができる:
方程式2を並び替えてシェル厚を計算することで、
が得られる。
一例として、二相エマルションへの機械力の印加による二相エマルション液滴の破断を表す2つの光学顕微鏡像を図9Dに示す。具体的には、二相エマルション液滴の懸濁液をスライドガラスの上に配置し、固体表面、例えば卓上でそのスライドガラスを軽くたたくことによって、それらの二相エマルション液滴を破断させた。二相エマルションの破断の結果として単相エマルション液滴(図9Dに点線の丸で示す)が生じた。これら2つの画像で観察される半径は、R=61マイクロメートルおよびRrup=19マイクロメートルであり、その結果、620nmの厚みを得た。
同様に、内部ストリーム604(Q
1)の外部ストリーム602(Q
2)に対する様々な相対流量で生成した様々な二相エマルション液滴を使用して、これらの二相エマルション液滴の外層の厚みを計算した(図9C参照)。図9Cにおいて、上部曲線は、安定した噴射または液滴モードにより調製した二相エマルション液滴の外部流体の厚みを示し、一方、そのプロットの下部の2つのデータ点は、不連続滴下を用いて調製した二相エマルション液滴からのものである。データにフィットした図9Cの上部曲線は、質量平衡方程式に関係づけられる。具体的には、質量保存から下の方程式4および5を導くことができる:
(式中、fは、液滴生成頻度である)。式4で式5を割り、並べ替えることにより、次の方程式を得ることができる:
対照的に、不連続滴下モードは、流量に関係なく、非常に小さい相対厚みを有する外部流体層を含む二相エマルション液滴を生じさせた。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、この状況は、プラグ様水滴と注入チャネルの内壁の間に位置する(最終的に二相エマルションの外層を形成する)油層の量が非常に少ないため、一貫して薄い外部流体層を形成することができた。実際、この流れ状況では、注入された油の大部分がプラグ様水滴間に位置し、その結果、最終的に二相エマルションのコアを形成する水滴間に収容された比較的大きな油プラグが生成された。水滴に隣接する位置には殆ど油がなかったため外層を生成するために油を殆ど利用できず、外層は非常に薄かった。注入された油流の大部分は、2個の隣接水滴間にあり、二相エマルション液滴を形成するのではなく出口開口部で大きな油滴を形成した。非連続滴下モードは、薄い外部流体層を有する比較的単分散の二相エマルション液滴と、大きな油滴(単相エマルション液滴)の両方を生じさせたが、その混合物からの二相エマルション液滴の分離は、二相エマルション液滴と単相エマルション液滴との密度差を利用するによって容易に果たすことができた:二相エマルション液滴の平均密度は、水性内部流体の密度とほぼ同じであり、その一方で単相エマルション油滴の密度は、それらの液滴を包囲する油溶液の密度とほぼ同じであった。それ故、前記2タイプの液滴をそれらの密度差に基づいて容易に分離することができた。
外相から流体を除去して、その外相の流体中に元々含有されていた材料から固相を生成することにより、二相エマルション液滴を使用してマイクロカプセルを作った。具体的な例として、一部のケースでは、水中の高分子量を有するポリマーの濃縮有機溶液を外相として使用した。比較的薄い外部流体層を含有する二相エマルション液滴を生成し、この比較的薄い外部流体層を凝固させてシェルを形成し、このシェルが、結果として得られる粒子に安定性をもたらした。これらの粒子は、含有する内部流体の周囲にそれらそれぞれの凝固シェルを比較的長時間にわたって分断されることなく維持することができた。
本明細書において論じる利点の一部を説明するために、流体を含有するシェルを有するポリマー粒子であって、該シェルがポリ(乳酸)(PLA、MW 15,000)から形成されたものであるポリマー粒子を調製した。W/O/W型二相エマルション液滴を生成するために、緑色色素、8−ヒドロキシル−1,3,6−ピレントリスルホン酸・三ナトリウム塩、を含有するPVAの10重量%水溶液を内相に使用した。赤色色素、ナイルレッド、を含有するトルエン中の20重量%のPLAを外相に使用した。PVAの3重量%水溶液をキャリア流体に用いた。おおよそ1,000個の二相エマルション液滴を滴下方式で毎秒生成した。図10A〜10Bの光学顕微鏡像に図示されている、得られた液滴は、比較的単分散であることが判明した。
外部流体層からトルエンを除去するために、その懸濁液を65℃の温度に2時間曝露した。この工程中に、トルエンは外相からPVAキャリア流体へと拡散し、その後そのPVAキャリア流体からトルエンを65℃で蒸発させた。この固結段階の後、図10C〜10Dの共焦点顕微鏡像に示されているようなポリマー粒子が生成された。最大倍率で、それらの粒子のシェルの厚みは、図10Dから分かるように500nmより小さいと観測された。そのシェル断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像も撮影し、この像は、図10Dの挿入図に示すように、シェルの厚みが約80nmであることを示した。これは、特に、外部流体層が固結中に有意に収縮し得たことを考えると、共焦点顕微鏡像と一致した。
ミクロ流体閉じ込めチャネルでの安定した同軸流を用いる一段階エマルション化プロセスによって高次多相エマルション液滴を生成した。A−A'面、B−B'面およびC−C'面に沿ってとった3つの断面概略図を含めて、油中水中油中水(W1/O2/W3/O4)の三相エマルション液滴を生成するために使用したデバイス構成を図11Aに概略図示する。このデバイスは、第三の方形チャネル706に挿入された先細注入チャネル702および回収チャネル704を備えていた。2つの不混和性流体を同時に流すために、C−C'に沿ってとった断面に示されているに回収チャネルと方形チャネル706の間の空間に小さい先細チャネル708も挿入した。水性相流体710を注入チャネルに通して内部コアを形成し、その一方で油相流体712を注入チャネル702の周囲のチャネル706に通して、結果として得られる多相エマルション液滴のための流体の外層を形成した。
この実施例において、チャネル706の内面は、親水性表面を有し、その一方で(チャネル706に対向する)チャネル702および704の外面は、疎水性である。2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシルシラン(Gelest, Inc.)を使用してチャネル706の前記壁を親水性にし、その一方で、n−オクタデシルトリメトキシルシラン(Aldrich)を使用してチャネル702および704の前記壁を疎水性にした。三相エマルション液滴を調製するために、水を最内相710に使用し、1重量%SPAN 80界面活性剤を有するヘキサデカンを油相712に(すなわち、第一の「油」シェルに)使用し、3重量%ポリ(ビニルアルコール)(PVA)と1重量%F108界面活性剤の水溶液を水相714に(すなわち、第二の「水」シェルに)使用し、および1重量%SPAN 80を有するヘキサデカンを連続相716として使用した。水714と油716の両方をチャネル706の右側から回収チャネル704とチャネル706の間に導入すると、B−B'の断面に示されているように水714が油716を遮蔽して油は回収チャネル704の外面に沿って進んだ。この配置では、流体は回収チャネルの開口部において同軸界面を形成し、それが一段階エマルション化プロセスでの三相エマルション液滴の形成を助長した。
三相エマルション液滴の調製のために、水(W1)および1重量%SPAN 80界面活性剤を有するヘキサデカン(O2)を注入チャネル702におよび注入チャネル602とチャネル706の間にそれぞれ通し、その一方で、3重量%ポリ(ビニルアルコール)(PVA)および1重量%F108界面活性剤の水溶液(W3)と1重量%SPAN 80を有するヘキサデカン(O4)の両方を回収チャネル704と方形チャネル706の間のチャネルに通した。水(W3)およびヘキサデカン界面活性剤溶液(O4)は、同軸界面を形成し、左側からの水(W1)およびヘキサデカン(O2)と一緒にそれらを回収チャネル704の開口部内へと進めた。この配置を用いて、三相エマルション液滴W1/O2/W3/O4を回収チャネル704内で調製した。それらの三相エマルション液滴は、図11B~11Cの光学顕微鏡像に表示されている。図1B中の白矢印は、流体層W3の水性ストリームを示す。O2/W3およびW3/O4の2つの同軸界面を形成することにより、O2、W3およびO4の三相を回収チャネル704の開口部に通し、その一方で(少なくともこの実施例では、滴下モードで注入チャネル702の先端において生成された)内部流体水滴(W1)は、それらの同軸界面の破壊を誘発して最終多相エマルション液滴を形成した。
この配置では、水性内相の流量(Q
1)が三相エマルション液滴のサイズを決めた。図12Aは、内部水性相の流量(Q
1)の関数としてのW/O/W/O型三相エマルション液滴における内部流体液滴の直径(D
1)、中間流体液滴の直径(D
2)および外部流体液滴の直径(D
3)のプロットであり、この場合、中間流体相の流量(Q
2)、外部流体相の流量(Q
3)およびキャリア油流体相の流量(Q
4)を2mL/時、1mL/時および3mL/時でそれぞれ保持した。三角形(上向三角)および逆三角形(下向三角)は、質量平衡から計算した直径D
2およびD
3を示す。水性内相の流量Q
1を増加させると、滴下条件下で直径(D
1)が有意に変化することなく、内部流体液滴が生成される頻度が増加した。加えて、流量Q
1が増加すると、破壊頻度が増加し、その結果、中間液滴の直径(D
2)および外部液滴の直径(D
3)が低減された。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、内部液滴直径D
1のわずかな増加は、疎水性注入チャネルの先端の水性内部ストリームの接触線の位置の変化に起因すると考えることができる。コア液滴誘発破壊を説明する次の質量平衡方程式を用いて直径D
2およびD
3を計算することができる:
(式中、Q
2およびQ
3は、それぞれO
2およびW
3の体積流量である)。D
3の計算直径は、実験により測定した直径と一致するようであった。
図12Bは、50マイクロリットル/時(一番上)、200マイクロリットル/時、800マイクロリットル/時、および2600マイクロリットル/時(一番下)のQ1値での下流エマルションの光学顕微鏡像を示すものである。2つの異なるQ1値(0.2mL/時および1.6mL/時)で生成された単分散三相エマルション液滴の光学顕微鏡像をそれぞれ図12Cおよび12Dに表示する。
より大きいQ2値については、液滴破壊メカニズムがコア液滴誘発から噴射に変化した。図13Aの光学顕微鏡像に図示されているように、同軸界面が長いジェットを形成し、任意の望ましい数のコア液滴を含有するプラグ様液滴を生成することができた。図13Bは、内部流体ストリームの体積流量(Q1)の関数としてのエマルションの中に形成された内部流体液滴の数のプロットである。図13Bに示すように、内部液滴生成と界面破壊の相対頻度を決めるQ1を調節することによって、内部流体液滴の数を制御することができる。図13Bでは、中間油相の流量(Q2)、外部水性相の流量(Q3)およびキャリア油相の流量(Q4)をそれぞれ4.0mL/時、1.4mL/時および3.0mL/時で保持した。図13Cは、それぞれの顕微鏡像ごとに表示されているような様々な数のコア液滴を含有する三相エマルション液滴を示す光学顕微鏡像を示すものである。
実質的に単分散の四相エマルション液滴も一段階エマルション化プロセスを用いて調製した。四相エマルション液滴を生成するために使用したデバイスは、三相エマルション液滴を生成するために使用したデバイスに類似しており、それを(面A−A'、B−B'、C−C'およびD−D'に沿った断面略図を含めて)図14Aに概略図示する。チャネル806の左側および右側両方からの2つの二相ストリームが3つの同軸界面を形成した。コア液滴によって誘発される界面の破壊により四相エマルション液滴を作った。W1/O2/W3/O4/W5四相エマルション液滴のために、上で説明したものに類似した技法を用いて、注入チャネル802および該注入チャネルの反対側の方形チャネル806の部分804を疎水性になるように処理し、回収チャネル808および前記方形チャネルの残部810を親水性になるように処理した。方形チャネル806の内壁を2つの別個の領域に変更するために、2つの方形チャネルを異なるシランカップリング剤で処理し、その後、互いに接続して単一チャネルにした。それら2チャネル間の間隙をエポキシ樹脂によって封止して単一チャネルにした。O2/W3、W3/O4およびO4/W5の3つの同心円状界面の破壊を内部流体液滴の注入によって誘発し、その結果、図14B〜14Dの光学顕微鏡像に示されているような実質的に単分散の四相エマルション液滴を得た。破壊は、内部界面から外部界面へと逐次的に発生した。
図15Aに(面A−A'、B−B'、C−C'およびD−D'に沿った断面略図を含めて)概略図示するような、W/O/W/O/Wエマルションを生成するために使用したデバイスと同じ幾何形状を有するが逆の化学修飾を施したデバイスを使用して、O/W/O/W/O配置を有する逆四相エマルション液滴も生成した。図15B〜15Dは、結果として得た四相エマルションを示す光学顕微鏡像を含む。
この実施例は、ナノスケールの厚みを有するシェルを含むポリマー粒子を作るための一定のマイクロ流体技術の使用を説明するものである。前記ポリマーシェルは、運搬中は固体のままであり、適する標的媒体、例えば、炭化水素油(例えば、任意の芳香族もしくは短鎖炭化水素油、または本明細書において論ずるような他の油)との接触により液化して、その粒子内に収容されている流体および/または薬剤をその油(または他の標的媒体)に局所輸送するように設計した。固体ポリマーシェルを油に曝露し、その後、そのシェルが分断されると、粒子の内容物の放出が誘発された。例えば、シェルの少なくとも一部分は、液化しておよび/または粘弾性流体のように挙動して、粒子内の流体および/または薬剤を標的媒体に曝露することができる。一部の実施形態において、粒子の液化したシェルは迅速に収縮して、その粒子の中から流体および/または薬剤を油に排出または別様に輸送することができる。いずれの特定の理論によって拘束されることを望まないが、一部のケースでは粒子のシェルが収縮してその粒子の界面面積および/または表面エネルギーを減少させると考えられる。粒子が薬剤および/または流体を(例えば、該粒子から該流体および/または薬剤を排出することにより)標的媒体に曝露するために要する時間を、例えば、ポリマーの分子量を変えることによって調整することができる。これを油または他の標的媒体の組成に依存して調節することもできる。この誘発放出方法を様々な異なる用途に、例えば、石油増進回収(EOR:enhanced oil recovery)などの貯留用途、または本明細書に記載するものなどの他の用途に用いることができる。
(実施例1において一般に説明した)マイクロ流体デバイスを使用する二相エマルションテンプレートを用いて、例えば約100nmから約1マイクロメートルの範囲の厚みを有するシェルに1つ以上の薬剤を含めた。様々な実施形態において、前記マイクロ流体デバイスは、粒子の特性、例えば、機械的安定性、放出、および/または負荷効率の制御を可能にした。前記マイクロ流体デバイスは、容易な製造、例えば、所望の特性を有する粒子の生成、および/または様々な用途で使用するための粒子の特性のテーラリングも可能にした。
この実施例では、90mLの水に10gのPVA(MW=13000〜23000、Aldrich)を溶解することによってキャリア流体を調製した。外部流体は、トルエンに溶解した8重量%線状ポリスチレン(MW=20000〜800000、Aldrich)および0.01gのナイルレッド(蛍光色素、Sigma)の溶液を使用して形成した。内部またはコア流体は、9mLの水に1gのPVA(MW=13000〜23000、Aldrich)を溶解することによって調製した。共焦点顕微鏡法によってコアを可視化するために、0.05gのDex-FITC(Polysciences)を内部流体溶液に添加した。シリンジポンプ(Harvard PHD 2000シリーズ)を使用して、すべての流体をマイクロ流体デバイスに送った。連続、中間およびコア流体の流量をそれぞれ300、500および20,000マイクロリットル/時に設定した。一例として、図16における共焦点顕微鏡像は、標識界面活性剤、10重量%PVAを封入しているポリスチレン(PS)を示す。
熱処理工程(65℃、2時間)を用いて外部流体内部の溶剤(トルエン)を液滴から蒸発させることによってシェルを形成するように外部流体を凝固させて、固体線状ポリマーを含むシェルを形成した。
薄い粒子シェルを生成できることは、幾つかの利点をもたらす。例えば、この薄いシェルは、頑丈であることが判明し、機械的に破損することなく広範な材料を含有することができ、その上、このシェルは、低濃度または少量の油または炭化水素(または他の適する標的媒体)であってもそれらとの接触によりなお破断することができた。
この実施例では、ファストカメラ(Phantom V9、Vision Research)を取り付けた倒立型光学顕微鏡(DM-IRB、Leica)を使用してマイクロ流体製造工程をモニターした。粒子の共焦点像は、走査型共焦点顕微鏡(Leica TCS-SP5)を使用して得た。
この実施例は、内容物を制御可能に放出するように構成された薄いポリマーシェルを含む粒子の生成を説明するものである。この実施例では、90mLの水に10gのPVA(重量平均MW=52500〜23000;Aldrich)を溶解することによりキャリア液を調製した。外部流体は、トルエンに溶解した8重量%線状ポリスチレン(MW=20,000〜800,000、Aldrich)および0.01gのナイルレッド(蛍光色素、Sigma)の溶液を使用して形成した。内部またはコア流体は、5mLの水に1gの蛍光標識磁性ポリスチレン粒子(Polyscience、サイズ=1マイクロメートル)を分散させることによって調製した。シリンジポンプ(Harvard PHD 2000シリーズ)を使用して、すべての流体をマイクロ流体デバイスに送った。コア、中間および連続流体の流量をそれぞれ650、400および12,000マイクロリットル/時に設定した。
図17Aは、より小さな磁性ナノ粒子を一例薬剤として含有する薄いPSシェルを有する粒子のマイクロ流体生成を図示するものである。薄いPSシェルを有する粒子が回収チャネル内部の注入シャネルの開口部で生成された。このマイクロ流体システムは、上で論じたものに類似していた。図17Bの共焦点顕微鏡像は、非標識PSシェルに含有された蛍光標識PSナノ粒子を含有する粒子を示す。これらのPSナノ粒子は、下で論ずるようにPS容器に閉じ込められることが判明し、これは高封入効率を裏づけた。
粒子内に収容されている流体または薬剤の制御放出は、先ずそれらの粒子のシェルを油と接触させ、その後、一部のケースでは、そのシェルが油を吸収し、より流動性になるか、そうでなければ破断されることによって果たすことができる。この固体−流体様転移がシェル欠損を生じさせ、それが、シェルのつぶれ、およびそのシェルに収容されている薬剤のその後の放出を起こさせた。図18A〜18Cは、この制御放出メカニズムを示す3つの共焦点顕微鏡像を含む。図18A〜18Cにおいて、ジビニルベンゼン/ポリスチレン(DVB-PS)シェルを含む様々な粒子のシェルは、固体から液体へと粘弾性変換した。この転移が起こる期間は、油組成に依存して様々であった。粒子のシェルが油を吸収するにつれて、固体シェルは、より液体様粘弾性材料のようになった。油との接触中に、少量のシェルが油に溶解して、シェルの欠損を生じさせた。図18Aにおいて、粒子は、その粒子内に収容されているナノ粒子をそのシェルの欠損部を通して周囲の油に押し出した。ナノ粒子は、つぶれる粒子から押し出され、同時に粒子のサイズが減少した。シェル欠損部からのナノ粒子の排出は、実質的にすべてのナノ粒子がその粒子から完全に押し出されるまで進行した(図18Bおよび18C)。
もう1セットの実験では、シェルの内部にトリブロックコポリマー(PS-PIP-PS)を含むさらなる粒子を形成した。これらの粒子は、上で論じたものと同様の放出メカニズムを呈示した。PS-PIP-PSトリブロックコポリマーを含むこれらの粒子は比較的可撓性であり、それにより、これらの粒子は、分断することなくまたはそれらの粒子内に収容されている薬剤を放出することなくその粒径より小さい狭い幾何形状を通過することができた。図19A〜19Bは、PS-PIP-PSカプセル(直径=150マイクロメートル)の、それらが狭いガラスマイクロ流体チャネル(直径=80マイクロメートル)によって圧搾されているときの共焦点顕微鏡像を含む。図19Cは、同じ工程の明視野像を含む。前記粒子における可撓性シェルの使用により、例えば操作中、包装中、狭いチャネル、開口部を通過中などに、前記粒子がそれらの機械的結着性を保持することが可能になり得る。
図20は、本発明の一定の実施形態による、粒子を石油増進回収(EOR)プロセスにおいて用いることができる方法を示す略図を含む。図20において、粒子902は、界面活性剤906を封入しているシェル904を備えている。粒子902を水性ビヒクル907(例えば水)に懸濁させ、油を含有する標的媒体908に輸送することができる。ビヒクル907と標的媒体908の間の界面910に遭遇すると、粒子902のシェル904の少なくとも一部分は油を吸収し、粘弾性固体−液体転移を受けることができ、シェル904の液化を開始させて、粒子内に収容されている薬剤を標的媒体908に曝露することができる。一部のケースでは、図20に図示されているように、前記薬剤を前記標的媒体に局所的に放出することができる。
これらの実施例におけるポリマーシェルは、ポリスチレン(PS)、ポリカプロラクトン(PCL)をはじめとする様々なポリマー、および/または様々な他のポリマーを使用して形成することができる。一例として、粒子のシェルにPCLを組み込むことにより、その粒子内に収容されている流体および/または薬剤の制御放出を、環境のpH、例えば標的媒体のpHに依存して行うことができる。シェルにおけるpH依存性材料の使用は、標的薬物送達などの用途においても有用であり得る。一例として、(例えば、NMR探査による地域残油(ROIP:residual oil in place)の同定に有用な)磁性粒子の標的送達を達成することもできる。使用することができる磁性粒子の例としては、酸化鉄、磁鉄鉱、赤鉄鉱、鉄を含有する他の化合物、またはこれらに類するものが挙げられる。
この実施形態におけるすべての実験について、ファストカメラ(Phantom V9、Vision Research)を取り付けた倒立型光学顕微鏡(DM-IRB、Leica)を使用してマイクロ流体製造工程をモニターした。乾燥粒子の明視野像は、カメラ(QImaging QICAM)を装備した倒立型光学顕微鏡(DM-IRB、Leica)で撮影した。粒子の共焦点像は、走査型共焦点顕微鏡(Leica TCS-SP5)を使用して得た。SEM(走査型電子顕微鏡法)像は、Zeiss Ultra55電界放出顕微鏡(FESEM:field emission scanning electron microsopy)(電界放出走査顕微鏡法)で収集した。
本発明の幾つかの実施形態を本明細書において説明および説明したが、当業者は、本明細書に記載する機能を実施するためのならびに/または本明細書に記載する結果および/もしくは1つ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想像するであろう。かかる変型および/または変更は、本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、本明細書に記載するすべてのパラメータ、材料および構成が例示を意図したものであること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成が、本発明の教示(単数または複数)を用いる具体的な用途(単数または複数)に依存することになることは、当業者には容易に理解されるであろう。したがって、上述実施形態が単に例として提示するものであること、ならびに添付の請求項およびそれらの等価物の範囲内で、具体的に記載するまたは請求項に記載するのとは別様に本発明を実施することができることは理解されるはずである。本発明は、本明細書に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法各々に関する。加えて、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、かかる特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに矛盾しない場合、本発明の範囲内に包含される。
本願における本明細書および請求項において用いる不定冠詞「a」および「an」は、相反する明確な指示がない限り、「少なくとも1」を意味すると解釈すべきである。
本願における本明細書および請求項において用いる語句「および/または」は、そのように等位接続されている要素、すなわち、あるケースでは接続的に存在し、他のケースでは離接的に存在する要素、の「いずれかまたは両方」を意味すると解釈しなければならない。相反する明確な指示がない限り、「および/または」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が、具体的に特定される要素と関係があろうと、無関係であろうと、場合により存在することがある。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの非限定語とともに用いられているとき、ある実施形態では、BなしでA(B以外の要素を場合により含む);別の実施形態では、AなしでB(A以外の要素を場合により含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方(他の要素を場合により含む);などを指す場合がある。
本願における本明細書および請求項において用いる「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると解釈すべきである。例えば、リスト中の品目を分けるとき、「または」または「および/または」は、包含的であると、すなわち、多数の要素または要素のリストの、1つより多くも含むが、少なくとも1つ、および場合により追加のリストされていない品目の包含と解釈するものとする。相反するものを明確に示す用語のみ、例えば「の1つのみ」、または「の厳密に1つ」、または請求項において用いるときの「から成る」は、多数の要素または要素のリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指すことになる。一般に、ここで用いる用語「または」は、排他性の用語、例えば「どちらか一方」、「の1つ」、「の1つのみ」または「の厳密に1つ」が前にあるとき、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方だが両方ではない」)を示すともっぱら解釈されるものとする。請求項において用いるときの「から本質的に成る」は、特許法の分野で用いられているその通常の意味を有するものとする。
1つ以上の要素のリストに関して、本願における本明細書および請求項において用いる語句「少なくとも1」は、要素のリスト中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、その要素のリスト内に具体的にリストされている各々のおよびあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、そのリストの要素中の要素の任意の組み合わせを排除しないことは理解されるはずである。この定義は、語句「少なくとも1」が指す要素のリスト内の具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素と関係があろうと、無関係であろうと、場合により存在することがあることも許容する。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも一方」(または同義で「AまたはBの少なくとも一方」、または同義で「Aおよび/またはBの少なくとも一方」)は、ある実施形態では、Bが存在しない(およびB以外の要素を場合により含む)、場合により1つ以上を含む、少なくとも1つのA;別の実施形態では、Aが存在しない(およびA以外の要素を場合により含む)、場合により1つ以上を含む、少なくとも1つのB;さらに別の実施形態では、場合により1つ以上を含む、少なくとも1つのAおよび、場合により1つ以上を含む、少なくとも1つのB(および他の要素を場合により含む);などを指す場合がある。
請求項においてはもちろん、上記の本明細書においても、移行句、例えば、「含む」、「備えている」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」およびこれらに類するものは、非限定的であると、すなわち、含むがそれらに限定されないことを意味すると解釈すべきである。移行句「から成る」および「から本質的になる」のみを限定または半限定移行句とし、これらの移行句は、それぞれ、米国特許庁特許審査手続便覧(the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、第2111.03章に示されている。