JP2006023322A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温加熱定着、或いは複写の高速化を可能にする圧力定着方式並びに加熱ローラー定着方式に充分対応可能であり、しかも従来のマイクロカプセルトナーの問題点を解決し、さらに保存安定性、オフセット現象防止に優れた、しかも高い濃度の色相を呈することを可能にする粒径分布が均一なマイクロカプセルトナーの製造方法を提供することである。
【解決手段】着色剤および環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む結着樹脂からなる核材と、当該核材を被覆する結着樹脂からなる外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、該核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている溶液の微粒子状液滴を、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】着色剤および環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む結着樹脂からなる核材と、当該核材を被覆する結着樹脂からなる外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、該核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている溶液の微粒子状液滴を、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力定着型並びに加熱ローラー定着型(以下、「圧力加熱型」或いは「圧力加熱方式」と呼ぶことがある)の静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
詳しくは、本発明は、乾式磁性1成分系、乾式非磁性1成分系、乾式2成分系、液乾式系、液体トナー系現像剤を紙やフィルム等の被複写基材に定着させる際に、圧力定着を可能にし、また、加熱ロール定着の場合でも100℃未満の低温で圧定着を可能にするような充分な定着性、トナースペント性、透明性を有し、且つ鮮明な画像を形成できるトナーの製造方法に関する。さらに、本発明は、オフセット現象が発生しない温度域(非オフセット温度域)を充分に確保できる高速定着性、保存安定性に優れ、実用に供せられる現像剤におけるトナーの製造方法に関するものである。
また、本発明は、複写機、プリンター、ファックス、カラー複写機、カラーレーザー複写機、カラーレーザープリンター、電子写真式高速印刷機に幅広く応用可能な前記トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
急速なオフィスオートメーション化の広がりを背景として、静電荷像現像式複写機並びにプリンターにおける高速印字速度に対応する耐機械衝撃性の向上、高品位、即ち鮮明画像性、低温定着性、カラートナー対応のための光透過性に優れた複写画像に対する要望がますます強くなっている。こうした高速複写・高品位画像の要請に対応するために、必要且つ充分なトナー粒子の機械的強度、低温定着の要請に充分に対応し得る広い非オフセット温度域が要求され、且つ定着ロールにオイル供給を必要とせず被複写基材を汚染する恐れのないオイル・フリータイプの実現が期待されている。
【0003】
トナーは、その要求性能が、帯電性、定着性、耐摩耗性、搬送性、保存安定性(長時間経過してもトナー粒子同士が凝集し、塊状になりにくいこと)等の多岐にわたっているため、それらを従来行われているコンパウンド方式で乾式混合した場合に全てのニーズを満足させるには限界が生じる。
【0004】
すなわち、上記の各ニーズに対応するためには、トナーに各種の相反するような機能を付与することが必要となるが、そうした課題を解決するため、コアとよばれる核材(核物質)粒子を、シェルとよばれる外殻材(外殻物質)で被覆し包み込んだ構造のマイクロカプセルトナーが考案されている。マイクロカプセルトナー方式によれば、例えば定着性は良好だが保存安定性が劣るためオフセット現象を起こしやすい結着樹脂を核材とし、一方、保存安定性や非オフセット性が良好な結着樹脂を外殻材に使用することで相反する要求を解決できるからである。
【0005】
こうした機能分離型のマイクロカプセルトナーに関する発明考案は数多くなされている。
例えば、特許文献1(特開平9−292735号公報)には懸濁重合法により製造したマイクロカプセルトナーを用いたフィルム定着加熱型の画像形成装置が開示され、同様の製造法を利用した例が、特許文献2(特開昭59−53856号公報)、特許文献3(特開昭59−61842号公報)に開示されている。
また、特許文献4(特公昭56−13945号公報)にはスプレードライ法による製造法が、特許文献5(特公平8−16793号公報)には水滴下相分離法による製造法が、特許文献6(特開平3−56970号公報)にはin.situ(イン・サイチュー)重合法により外殼層形成後、高圧ホモジナイザーを用いて微粒子化する製造法が提案されている。その他、界面重合法、コアセルベーション法、乾式カプセル法等が紹介されている。
【0006】
特許文献7(特開平10−10778号公報)には、帯電改良を目的として自己水分散性樹脂、溶剤、着色剤からなる混合物を水性媒体中で転相乳化させてカプセルトナーを製造する方法が開示されている。かかる転相乳化法によるカプセルトナーの製造方法は特許文献8(特開平11−65168号公報)、特許文献9(特開平10−207119号公報)及び特許文献10(特開平11−231569号公報)にも開示されている。
特許文献11(特開平10−78676号公報)では、酸化が9.5(mgKOH/g)の非晶質ポリエステルをカプセルの外殻用樹脂に用いて耐ブロッキング性を向上させている。
また、特許文献12(特開平10−228130号公報)では、in. situ重合法で製造されるカプセルトナーの貯蔵弾性率を規定することによって低温定着性と耐オフセット性を向上させている。特許文献13(特開平10−301328号公報)には、混合溶媒可溶樹脂成分量が特定量のカプセル構造静電荷像現像用トナーは、低温定着性と高画質化をもたらすことが記載されている。特許文献14(特開2000−56510号公報)では、水系分散媒体中で着色剤を含む重合性単量体組成物を重合させる低定着温度のカプセルトナーの製造方法が提案され、特許文献15(特開2000−98662号公報)では、シェルがε−カプロラクトン開環重合体からなるカプセルトナーは低定着温度に優れると記載されている。
特許文献16(特開2000−112175号公報)及び特許文献17(特開2000−112176号公報)では、粉砕トナー粒子の分散液に結着樹脂を溶解させて定着特性に優れたカプセルトナーを製造する方法が提案されている。
その他、低温定着性の向上や保存安定性の向上を目的としたカプセルトナーが特許文献18(特開平11−305478号公報)、特許文献19(特開2000−284525号公報)において提案されている。
【0007】
しかし、これら従来技術におけるトナーの製造方法は、スプレードライ法を除いて何れも水を媒体として使用するため乾燥に手間がかかり、マイクロカプセルトナーを工業的規模で生産するには未だ十分でないのが実状であった。また、スプレードライ法では所望の平均粒径、通常は10μm以下に揃えるための微粒子化が困難であった。
【0008】
こうした状況下、本発明者らは特願平10−312215号明細書〔特許文献20(特開2000−147829号公報〕において、マイクロカプセルトナーの核材の結着樹脂としてガラス転移温度が−20℃以上60℃未満の範囲で数平均分子量が100以上20,000以下の範囲である環状構造を有するオレフィン共重合体を含有させ、及び/又は外殻材の結着樹脂としてガラス転移温度が60℃以上180℃以下の範囲で数平均分子量が1,000以上100,000以下である環状構造を有するオレフィン共重合体を含有させてなるマイクロカプセルトナー粒子を有する静電荷像現像用トナーに関する発明が上記要請に対応できることを開示した。
【0009】
しかしながら、上記発明において開示されたマイクロカプセルトナーの製造方法は、通常の再沈法、すなわち核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液であって当該溶液中に着色剤が分散されている核材溶液を、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に滴下して核材の周囲に外殻材を析出させる溶剤再沈法、或いは相分離法によるものであり、かかる製造方法で得られたトナーは、粒子径のばらつきを所定の範囲に抑えることが不十分であり、粒径分布のシャープなトナーの要請に充分に応えることができない、という問題点が残されていた。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−292735号公報
【特許文献2】
特開昭59−53856号公報
【特許文献3】
特開昭59−61842号公報
【特許文献4】
特公昭56−13945号公報
【特許文献5】
特公平8−16793号公報
【特許文献6】
特開平3−56970号公報
【特許文献7】
特開平10−10778号公報
【特許文献8】
特開平11−65168号公報
【特許文献9】
特開平10−207119号公報
【特許文献10】
特開平11−231569号公報
【特許文献11】
特開平10−78676号公報
【特許文献12】
特開平10−228130号公報
【特許文献13】
特開平10−301328号公報
【特許文献14】
特開2000−56510号公報
【特許文献15】
特開2000−98662号公報
【特許文献16】
特開2000−112175号公報
【特許文献17】
特開2000−112176号公報
【特許文献18】
特開平11−305478号公報
【特許文献19】
特開2000−284525号公報
【特許文献20】
特開2000−147829号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低温加熱定着、或いは複写の高速化実現のための圧力定着方式並びに加熱ローラー定着方式に充分対応可能であり、しかも従来のマイクロカプセルトナーの問題点を解決し、さらに保存安定性、オフセット現象防止に優れ、高濃度の色相を呈することを可能にするような、粒径分布が均一なマイクロカプセルトナーの製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガラス転移温度と数平均分子量が異なる2種の環状構造を有するオレフィン系重合体を、マイクロカプセルトナー粒子の核材及び/又は外殻材を構成する結着樹脂として配合する静電荷像現像用トナーの製造において、核材溶液を外殻剤溶液中に滴下する際に、核材溶液を微粒子状液滴として外殻材溶液中に噴射して滴下しカプセル化することにより上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、着色剤および環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む結着樹脂からなる核材と、結着樹脂からなり核材を被覆する外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている核材溶液の微粒子状液滴を、当該液滴を外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
そして、スプレー用ノズル又はインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いて、核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下することを特徴とする上記トナーの製造方法である。
【0014】
さらに、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いた核材溶液の噴射の方法が、圧電素子式体積変化、多値静電荷電方式による電界制御及び熱素子式体積変化から選ばれる何れか1つの方法であること;
インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる場合、核材溶液の溶媒が脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物であるナフテン系溶剤であること;
核材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が−20℃以上65℃以下の範囲で数平均分子量が100以上20,000以下の範囲である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなること;
核材を構成する環状構造を有するオレフィン系共重合体樹脂が、アクリル酸又は無水マレイン酸で変性された共重合体であること;
外殻材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が60℃以上180℃以下の範囲で、且つ数平均分子量が1,000以上100,000以下である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなること;
核材を構成する結着樹脂及び/又は外殻材を構成する結着樹脂にワックスが配合されたものを用いること;
ワックスが、脂肪酸アミドワックス、酸化ポリエチレンワックスおよび酸変性ポリプロピレンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種であること;を特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記トナーの製造方法によって製造されたマイクロカプセルトナー粒子の表面にさらにシリカ微粉末が外添又は塗布されたものであることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
[A]マイクロカプセルトナー粒子の核材を構成する材料
核材は結着樹脂及び着色剤を必須成分とし、さらに任意成分として機能付与剤、電荷調整剤、その他の添加剤を含むことができる。
(1)結着樹脂
着色剤とともにマイクロカプセルトナーのコア部分、すなわち核材を構成する結着樹脂として、環状構造を有するオレフィン系重合体、或いは環状構造を有するオレフィン系重合体と以下に述べる加熱定着用結着樹脂及び/又は圧力定着用結着樹脂との混合物が使用される。これらは後述する外殻材を構成する結着樹脂に比べて、融点又は軟化点が低く定着性が高い樹脂である。
【0017】
加熱定着用結着樹脂としては、ポリスチレン、置換ポリスチレン等のスチレン系重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体やスチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のアクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することできる。
【0018】
一方、圧力定着用結着樹脂としては、植物系・動物系・鉱物系・石油系ワックス類(具体的にはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ラノリン、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、高級脂肪酸誘導体(ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸およびその他の多価アルコールエステルおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩)、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、オレフィン系の単独又は共重合体(エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等)、スチレン系樹脂(低分子量ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)、エポキシ樹脂およびポリエステル樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することできる。
【0019】
低温定着方式を導入して高速複写を可能にし高品位で鮮明な画像を得るためには、圧力加熱定着(熱圧着)方式に対応した確実な定着性を図る必要があるので、上記定着方式により結着樹脂の種類、組成を適宜選択することが必要となる。
【0020】
オフセット現象が生じない非オフセット温度域を拡張し非オフセット性を高める観点からは、以下の環状構造を有するオレフィン系重合体(Cyclo Olefin Copolymer:略称;COC)を核材の結着樹脂として使用する。
【0021】
核材として用いる環状構造を有するオレフィン系重合体は、外殻材に比べ高度の定着性を得るため、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上65℃以下の範囲で数平均分子量(Mn)が100以上20,000以下の範囲であることを要する。ガラス転移温度が−20℃未満では粘弾性が高くなって印字画像が粘着質となり、一方、ガラス転移温度が65℃を超えると剛直すぎて定着性が充分に得られ難くなる。また、数平均分子量が100未満では充分な定着性が得られなくなり、一方数平均分子量が20,000を超過すると溶剤に溶解し難くなり実用上の問題が大きい。
【0022】
ここでガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱量測定法(DSC)による転移熱を示す変位の中間点に当たる温度であり、数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で標準ポリエチレン或いはポリスチレン換算にて測定する値であり、より具体的には下記の条件下で測定して求められる値である。
使用カラム:JORDI−SAEULE 500×10 LINEAR
移動相 :1,2−ジクロロベンゼン(135℃)、流速0.5ml/分
検出器 :示差屈折計
【0023】
以下、環状構造を有するオレフィン系重合体について以下のとおり詳説する。環状構造を有するオレフィン系重合体は、炭素数が2〜12、好ましくは2〜6の低級アルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン(広義には非環式オレフィン)と、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキセン等の少なくとも1つの二重結合を有する炭素数が3〜17、好ましくは5〜12の環式及び/又は多環式化合物(環状(シクロ)オレフィン)、特に好ましくはノルボルネン又はテトラシクロドデセン、との共重合体であり無色透明で高い光透過率を有するものである。
【0024】
この環状構造を有するオレフィン系重合体は、例えばメタロセン系触媒、チーグラー系触媒及びメタセシス重合(metathesis polymerization)、すなわち二重結合開放(double bond opening)及び開環重合反応のための触媒を用いた重合法により得られる重合体である。この構造を有するオレフィン系重合体の合成例としては、特開平5−339327号公報、特開平5−9223号公報、特開平6−271628号公報、ヨーロッパ特許出願公開(A)第203799号明細書、同第407870号明細書、同第283164号明細書、同第156464号明細書及び特開平7−253315号公報等に開示されている。
【0025】
これらによると、上記環状オレフィンの1種類以上のモノマーを、場合によっては1種類の上記非環式オレフィン−モノマーと−78〜150℃、好ましくは20〜80℃で、圧力0.01〜64barでアルミノキサン等の共触媒と例えばジルコニウムあるいはハフニウムよりなるメタロセンの少なくとも1種類からなる触媒の存在において重合することにより得られる。他の有用な重合体はヨーロッパ特許出願公開(A)第317262号明細書に記載されており、水素化重合体及びスチレンとジシクロペンタジエンとの共重合体も使用できる。
【0026】
脂肪族又は芳香族炭化水素の不活性炭化水素にメタロセン触媒が溶解された状態は、メタロセン触媒が活性化されるため、例えばメタロセン触媒をトルエンに溶かし溶剤中で予備活性及び反応が行われる。環状構造を有するオレフィン系重合体の重要な性質は、軟化点、融点、粘度、誘電特性、非オフセット温度域及び透明度である。これらはモノマー或いはコモノマーの種類やコモノマー相互の比、分子量、分子量分布、ハイブリッドポリマー、ブレンド及び添加剤の選択によって有利に調整することができる。
【0027】
また、非環式オレフィンと環状オレフィンの反応仕込モル比は、目的とする環状構造を有するオレフィン系重合体により、広範囲で変化させることができ、好ましくは50:1〜1:50で、特に好ましくは20:1〜1:20に調整される。
【0028】
例えば、共重合体成分が非環式オレフィンとしてエチレン、環状オレフィンとしてノルボルネンの計2種類の化合物を仕込んで反応させる場合、反応生成物の環状構造を有するオレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、これらの仕込割合に大きく影響され、ノルボルネンの含有量を増加させると、Tgも上昇する傾向にある。例えば、ノルボルネンを15モル%以下(エチレン85モル%以上)の組成にすればTgが−20℃以上65℃以下の共重合体を得ることができ、一方、ノルボルネンを15モル%以上の組成にすればTgが65℃を超え180℃以下の共重合体を得ることができる。数平均分子量のような物性値は、文献から公知のように調整される。
【0029】
本発明で使用される環状構造を有するオレフィン系重合体は、以下のとおり構成される。すなわち、核材の結着樹脂としては、無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体と酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体が、95:5〜5:95の重量比で構成されることが好ましい。かかる無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn;GPCにてポリエチレン換算で測定、以下同様)が100以上20,000以下、好ましくは1,000以上10,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が200以上40,000以下、好ましくは6,000以上30,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上65℃以下、好ましくは40℃以上65℃以下である。
【0030】
一方、上記酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100以上20,000以下、好ましくは1,000以上10,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が300以上80,000以下、好ましくは3,000以上40,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上60℃未満、好ましくは40℃以上59℃以下である。
【0031】
定着性を確保し、実用に充分供せられる広い非オフセット温度域を得るためには、上記環状構造を有するオレフィン系重合体の組成が以下のようであることが好ましい。
すなわち、下記の物性を有する低分子量重合体或いは重合体フラクション(a)と、高分子量重合体或いは重合体フラクション(b)とから構成されることである。すなわち、環状構造を有するオレフィン系重合体は重合体(a)と重合体(b)の混合物であってもよいし、あるいはピークが1つの分子量分布を持ち7,500未満の数平均分子量を有する重合体フラクションと7,500以上の数平均分子量を持つ重合体フラクションとを有するか、あるいは分子量分布に2以上のピークがあり、そのうちの少なくとも1つのピークを持つ重合体フラクションが7,500未満の数平均分子量を有しそして他のピークを持つ重合体フラクションが7,500以上の数平均分子量を有していてもよい。
【0032】
このように環状構造を有するオレフィン系重合体が、低粘度(低分子量)の重合体又は重合体フラクション(a)と高粘度(高分子量)の重合体又は重合体フラクション(b)から構成されるとしたのは、非オフセット温度域が高温及び低温側の両方に広がる結果、高速複写時のトナー定着性を向上させ、低温・低圧時の定着性を同時に改善するためである。
【0033】
重合体又は重合体フラクション(a)(以下、成分aという):数平均分子量(GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)でポリエチレン換算にて測定、以下同様)が7,500未満、好ましくは1,000〜7,500未満、より好ましくは2,000〜7,500未満;重量平均分子量が15,000未満、好ましくは1,000〜15,000未満、より好ましくは4,000〜15,000未満;極限粘度(i.v.;デカリン100mLに当該重合体1.0gを均等に溶解させたときの135℃における固有粘度)が0.25dl/g未満;ガラス転移点(Tg)が好ましくは70℃未満である。
【0034】
重合体又は重合体フラクション(b)(以下、成分bという):数平均分子量が7,500以上、好ましくは7,500〜50,000;重量平均分子量が15,000以上、好ましくは15,000〜500,000;極限粘度(i.v.)が0.25dl/g以上である。
【0035】
さらに、成分bの含有量が結着樹脂全体の50重量%未満、好ましくは5〜35重量%であることを特徴とする。成分bはトナーに構造粘性を付与しそれによってオフセット防止効果や紙・フィルム等被複写基材への接着性を向上させるが、含有量が50重量%以上の場合は均一混練性が極度に低下してトナー性能に支障をきたす。すなわち高品位、つまり定着強度が高くヒートレスポンス性に優れた鮮明な画像が得られにくくなったり、機械粉砕性が低下し、トナーに必要な粒径を得ることが技術的に困難となる。
【0036】
なお、ここで重合体又は重合体フラクションとは、環状構造を有するオレフィン系重合体が、種々の数平均分子量等異なる成分の混合物で構成されている場合は、混合前の各重合体成分で、それ以外の場合は最終合成生成物をGPC等の適当な手段によって分別した重合体区分をいう。なお、ここでこれらの重合体フラクションが単分散あるいは単分散に近い場合、数平均分子量(Mn)が7,500というのは重量平均分子量(Mw)が15,000にほぼ相当する。
【0037】
非オフセット温度域を低温側に広げるためには環状構造を有するオレフィン系重合体を構成する低粘度の成分aが寄与し、逆に高温側に広げるには高粘度の成分bが寄与する。非オフセット温度域をより効果的に高温側に広げるためには数平均分子量が20,000以上の高粘度の成分bの存在が好ましい。
結着樹脂全体を100重量部とした場合に、当該オレフィン系重合体を構成する成分aとbの含有量はそれぞれ0.5重量部以上、特に5〜100重量部が好ましい。両者とも0.5重量部未満では実用的な広い非オフセット温度域が得られ難い傾向となる。
【0038】
環状構造を有する高粘度(高分子量)及び低粘度(低分子量)のオレフィン系重合体は、前述したような数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、極限粘度(i.v.)を有するため分子量分布の分散度を示すMw/Mnが1〜2.5と小さいこと、すなわち単分散及び単分散に近いためヒートレスポンスが速く、そのため定着強度の強いトナーが製造でき、低温度並びに低圧力でトナーの定着が可能となる他、トナーの保存安定性、スペントトナー性、帯電量分布の均一性や帯電・除電効率の一定化を示す電気安定性に寄与している。ここで、特に低粘度の重合体又は重合体フラクションが単分散又は単分散に近い場合、瞬時に溶融、凝固挙動を示す等のいわゆるトナーとしてのヒートレスポンス性が優れたものとなり好ましい。
【0039】
また、環状構造を有するオレフィン系重合体は無色透明でかつ高い光透過性を有しているので、イエロー、シアン、マゼンタの三原色顔料を添加しても充分の透明性を保持し、カラートナーに既に応用されている。また、当該オレフィン系重合体はDSC法(示差走査熱量測定)による測定では融解熱が非常に小さく、トナー定着のためのエネルギー消費量が大幅に節減されることも期待できる。
【0040】
また、環状構造を有するオレフィン系重合体にカルボキシル基を導入することにより他の樹脂との相溶性を改良したり、トナー中の顔料の分散性を向上させることができる。かかるカルボキシル基の導入によって、紙やフィルム等の被複写基材に対するトナーの接着性を向上させ定着性を増大することができる。
【0041】
カルボキシル基の導入方法は、最初に環状構造を有するオレフィン系重合体を調製し、その次にカルボキシル基を導入するという二段階の反応方法が有利である。このカルボキシル基を導入する方法は少なくとも2つある。1つは溶融空気酸化法で重合体の末端にあるメチル基等のアルキル基を酸化し、カルボキシル基とするものである。ただし、この方法ではメタロセン触媒により合成された環状構造を有するオレフィン系重合体の場合、枝分かれがほとんど無いので、多くのカルボキシル基を導入することは困難である。
【0042】
具体的には、環状構造を有するオレフィン系重合体に対して重量比で、グラフト率が好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは3〜5重量%となるように、無水マレイン酸、アクリル酸或いはメタクリル酸をt−ブタノールパーオキサイド等過酸化物を開始剤としてグラフト重合させてカルボキシル基を導入する。1重量%未満では前記した相溶性改良等の効果が十分ではなく、一方5重量%を超過するとオレフィン系重合体に分子間架橋が生じて分子量が増大し、混練性や粉砕性が非実用的となり、また極度の黄変色も呈し失透するので無色透明性が要求されるカラートナー用としては不向きな傾向となる。なお、水酸基、アミノ基を既知の方法により導入することによっても同様の向上が実現できる。
【0043】
また、トナーの定着性を向上させるために環状構造を有するオレフィン系重合体に架橋構造を導入することができる。この架橋構造の導入方法の1つは、当該オレフィン系重合体の重合時に、非環式オレフィン、環状オレフィンとともにシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、テトラシクロドデカジエン、ブタジエン等のジエンモノマーを加えて三元共重合させることによる。この方法により、当該オレフィン系重合体は架橋剤なしでも活性を示す末端を有し、酸化、エポキシ化等公知の化学反応によりあるいは架橋剤を加えることにより架橋構造を有することにより機能化される。
【0044】
他の方法は、上述のカルボキシル基を導入した環状構造を有するオレフィン系重合体に亜鉛、銅、カルシウム等の金属を添加し、次いで二軸押出機で混合溶融し、かかる金属を微細粒子として重合体中に分散させアイオノマーとすることにより架橋構造を与えることである。アイオノマーの技術自体は、例えば靭性を得る目的で、部分的に又は完全に中和されて2価の金属塩の形態となることができるカルボキシル基を含むエチレンのターポリマーが開示(米国特許第4693941号明細書)され、特表平6−500348号公報には、同じ目的で不飽和カルボン酸のアイオノマーを含むポリエステル樹脂成形体をそのカルボン酸基の約20〜80%を亜鉛、コバルト、ニッケル、アルミニウム又は銅(II)で中和したものが報告されている。
【0045】
核材に関しては、環状構造を有するオレフィン系重合体に、カルボキシル基が導入された、すなわち酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体を5〜95重量%添加して使用してもよい。この添加は、定着性、非オフセット温度域の確保に有効な手段となる。
【0046】
(2)着色剤
着色剤としては、従来のモノクロ又はカラー複写機用トナーに使用されているカーボンブラック、ジアゾイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドン、カーミン6B、モノアゾレッド、ペリレン等を核材に配合することができる。
【0047】
(3)機能付与剤
機能付与剤として各種のワックスを、非オフセット温度域を拡大してトナーの非オフセット性を高めるために配合できる。ここで極性ワックスとしてアミドワックス、カルナバワックス、高級脂肪酸及びそのエステル、高級脂肪酸金属石鹸、部分ケン化高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、非極性ワックスとしてポリオレフィンワックス、パラフィンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスを機能付与剤として使用できる。
各種ワックスの中でも、脂肪酸アミドワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリプロピレンワックスが、広い非オフセット温度域を得ることができる観点から好ましい。
【0048】
トナーの上記非オフセット温度域を広げてトナー性能を向上させるためには、以下のようにワックスを使用することが好ましい。すなわち、融点(示差走査熱量測定(DSC)におけるピーク温度)が80〜140℃の範囲にあり融点が異なるワックスを2種以上併用することが好適である。融点が80℃未満ではトナーにしたときに低融点物に起因するブロッキングの問題が生じる傾向となる。一方、機能付与剤は結着樹脂の軟化点を超える混練温度で完全に溶融することが要求されるため、結着樹脂の主要成分である環状構造を有するオレフィン系重合体の軟化点(約135〜140℃)に制約され、融点の上限は140℃が好ましい。具体的には以下に例示される脂肪酸アミド系又は炭化水素系のワックスの中から2種以上が選択され使用される。
【0049】
▲1▼極性基を有するワックス
各種脂肪酸アミドワックス、例えばアラキン酸モノアミド(融点110℃)、ベヘニン酸モノアミド(融点115℃)、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド(融点115℃)、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド(融点119℃)、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド(融点129℃);酸化オレフィンワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス(融点116℃);酸変性ポリオレフィンワックス、例えば酸変性ポリプロピレンワックス(融点138℃);カルナバワックス(融点約80℃)がある。
【0050】
▲2▼非極性(極性基を有しない)ワックス
炭化水素系ワックスであるオレフィンワックス、例えばポリエチレンワックス(融点130℃)、ポリプロピレンワックス(融点120〜150℃)、パラフィンワックス(融点約60〜80℃)、サゾールワックス(凝固点約98℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点80〜100℃)がある。なお、オフセット現象防止のための機能付与剤として、離型作用をもたらすシリコーンオイルを本発明の効果を損なわない範囲で上記ワックスと併用してもよい。
【0051】
(4)電荷調整剤
ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、含金属ニグロシン染料、含金属脂肪酸変性ニグロシン染料、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸クロム錯塩、四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン染料、アゾクロム錯体等、従来より公知の電荷調整剤を核材に配合することができる。後述のとおり、外殻材に配合する場合には核材への配合を割愛することができる。
【0052】
(5)その他の添加剤
必要に応じて上記のトナー構成成分に加えて、コロイダルシリカ(煙霧質シリカを含む)、酸化アルミニウム、酸化チタン等の流動化剤や、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル酸バリウム等の脂肪酸金属塩からなる滑剤を、本発明の効果を損なわない範囲で核材に配合することができる。
【0053】
(6)各成分の配合量
核材における上記各成分の配合量は、静電荷像現像式複写機およびプリンター用トナーの一般的な処方と同様であり、下記の表1に示すとおりである。
【0054】
【表1】
【0055】
[B]マイクロカプセルトナー粒子の外殻材を構成する材料
外殻材は結着樹脂を必須成分とし、さらに任意成分として機能付与剤、電荷調整剤、その他の添加剤を含むことができる。
(1)結着樹脂
マイクロカプセルトナー粒子のシェル部分の外殻材を構成する結着樹脂として、以下に述べる定着用結着樹脂、又は環状構造を有するオレフィン系重合体が使用される。これらは前述した核材を構成する結着剤に比べて、融点又は軟化点が高いのでより保存安定性に優れる樹脂である。
【0056】
定着用結着樹脂としては、スチレン又は置換スチレン等その誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸又は無水マレイン酸エステル等その誘導体、無水マレイン酸アミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等の含窒素ビニル化合物、ビニルアセタール、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルモノマー、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のビニリデンモノマー、エチレン、プロピレン等のオレフィンモノマーの単独又は共重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ロジン、変性ロジン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレノキサイド等の縮合系重合体、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、石油樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0057】
熱ロールへのトナーの移行というオフセット現象を防止し保存安定性を一層向上させるためには、以下に述べる環状構造を有するオレフィン系重合体が外殻材の結着樹脂として使用されることが好ましい。
すなわち、外殻材の結着樹脂としては、無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体が好ましいが、ガラス転移温度が60℃以上であればトナーの保存安定性が充分に確保されるので、酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体で全量が置き換えられていてもよい。無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、好ましくは2,000以上50,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が2,000以上200,000以下、好ましくは4,000以上100,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下である。
【0058】
一方、上記酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、好ましくは2,000以上50,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が3,000以上300,000以下、好ましくは6,000以上200,000以下であり、酸価が10〜50mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が60℃未満ではトナー粒子の保存安定性に問題が多くなり、一方180℃を超過すると融点が高くなり定着性が劣る傾向となる。また、数平均分子量が1,000未満では充分な定着強度が得られず、一方100,000を超過すると溶剤への必要な溶解度が確保しにくくなる。また、酸価は10より小さいと樹脂の相溶性向上、紙への密着性向上等の効果が充分でなく、50より大きいと変色が強くなり実用に耐えない。
【0059】
上記の環状構造を有するオレフィン系重合体は、ガラス転移温度および数平均分子量以外の諸物性、変性物、架橋物等は、前述した核材に使用される環状構造を有するオレフィン系重合体に関する記載と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0060】
(2)機能付与剤
非オフセット温度域を拡大してトナー粒子表面の非オフセット性を一層向上させるために前述した核材に使用される機能付与剤(ワックス、シリコーンオイル)と同様のものを外殻材にも配合することができる。前述した好ましい使用態様等は、外殻材に配合される機能付与剤にも当てはまる。
【0061】
(3)電荷調整剤
前述した核材に使用される電荷調整剤と同様のものを外殻材に配合することができる。通常、外殻材に配合すれば核材への配合は割愛される。
【0062】
(4)外添剤
必要に応じてマイクロカプセルトナー粒子の外殻材の表面を外添剤で被覆することができる。外添剤は、コロイダルシリカ(煙霧質シリカを含む)等のシリカ微粉末、酸化アルミニウム、酸化チタン等の流動化剤や、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル酸バリウム等の脂肪酸金属塩からなる滑剤であり、これらを単独で又は2種以上併用することができる。また、それぞれ疎水化処理したものを用いることが好ましい。
外添剤の使用量は、トナー粒子100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
外殻材を外添剤で被覆する場合は、外添剤を含む溶液を粒子表面に塗布するか、或いはその他の方法で表面に付着させる。
【0063】
(5)各成分の配合量
外殻材における上記各成分の配合量は、着色剤を除き前記表1に示すとおりである。
【0064】
[C]マイクロカプセルトナー粒子
マイクロカプセルトナー粒子は、核材が外殻材に被覆されたカプセル型のいわゆるコア−シェル構造を有する。粒子全体の平均粒径(直径)は3〜10μmが好ましく、外郭の厚み((カプセル外径−核材径)×1/2)は0.1〜0.5μmが好ましい。
【0065】
本発明において、結着樹脂についての核材と外殻材の組み合わせとしては、
の3態様がある。
【0066】
環状構造を有するオレフィン系重合体、或いはそれと相溶性の比較的良い前記[A](1)の定着性樹脂として例示した各種の結晶性・非晶性樹脂と組み合わせで配合する結果、環状構造を有するオレフィン系重合体が有するトナー性能として重要な透明性、低温定着性、耐機械衝撃性等の特性を生かすことができる。
外殻材には酸変性した環状構造を有するオレフィン系重合体、或いは[B](1)の定着性樹脂、或いはそれらの混合物を用いることができる。
外殻材、核材の両者に環状構造を有するオレフィン系重合体を使用した上記(c)の態様の場合には、まさに上記特性がトナー性能としてフルに発揮される。
【0067】
ここで、トナー粒子の最も好ましい形態を示すと、核材の結着樹脂として、次の環状構造を有するオレフィン系重合体、すなわちガラス転移温度(Tg)が40〜59℃、数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000、多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が10以下、エチレンとノルボルネンの共重合モル比が85/15〜95/5のエチレン・ノルボルネン共重合体を使用し、一方、外殻材の結着樹脂として、次の環状構造を有するオレフィン系重合体、すなわちガラス転移温度(Tg)が60〜80℃、数平均分子量(Mn)が2,000〜50,000、多分散度(Mw/Mn)が4〜10、エチレンとノルボルネンの共重合モル比が75/25〜85/15で酸価が20mgKOH/g程度を有するメチルエチルケトン(MEK)に可溶な酸変性エチレン・ノルボルネン共重合体である。
【0068】
[D]マイクロカプセルトナー粒子の製造方法
本発明の製造方法は、前記特願平10−312215号明細書において提案した再沈法をより一層改良したものであり、粒径分布が均質な(シャープな)トナー粒子を得ることができる。
すなわち、本発明における製造方法は、着色剤および結着樹脂からなる核材と、結着樹脂からなり核材を被覆する外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている核材溶液を霧状の微粒子状液滴として、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とするものである。
核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下する方法としては、スプレー用ノズルを用いる方法、及びインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる方法を好適なものとして例示することができる。こうしたノズルによって直径が推定2〜50ミクロンのほぼ球形の微粒子状液滴にすることができる。
【0069】
スプレー用ノズルとしては、殺虫剤や殺菌剤等の噴霧用に市販されているもので孔径が2〜50μm、或いは後述の衝突型微霧ノズルの場合は0.2〜0.5mmφのものを選択するのが好ましい。
各種スプレー用ノズルの中でも、孔径約0.45mmの噴射孔2個が噴射方向が相互に約120度となる位置に取り付けられたノズルであって、噴射物が交差して衝突する態様の衝突型微霧ノズルが特に好ましい。このような態様の噴射ノズルは、例えば特公平4−9104号公報に記載されている。
図1は衝突型微霧ノズルの全体図であり、図2は衝突型微霧ノズル先端の噴射孔の態様を示す概略図である。
図1において、ノズル(1)に噴射孔(11)2個がその延長線上で交差するような位置に取り付けられている。
【0070】
図2において、各噴射孔(11)は内外2重管構造となっており内管(11a)からは液滴が、外管(11b)からは圧搾空気が噴出される。内管(11a)から噴射された液滴は外管(11b)から噴射された空気と衝突して微粒子化され、次いで微粒子化された液滴は他方の噴射孔から噴射され同様に微粒子化された液滴と衝突して、さらに微粒子化、均質化され、推定直径が2〜50μmの液滴にすることができる。なお、スプレーノズルの周囲にかける空気圧は0.3〜0.5MPaが好適である。ノズルへの核材溶液の供給はサクションタンクから吸い上げて行う。
【0071】
本発明において使用されるインクジェット方式プリンタ用ノズルは、ノズルから射出したインクの微粒を静電的に加速・偏向してドットマトリックス形式の文字を紙上に形成させる形式のプリンター、通称インクジェットプリンターに採用されているインク吐出ノズルの仕組みと同様である。すなわち、核材の液滴を発生するためのノズルに瞬間的に高い圧力を発生する手段を有しその圧力に応じて核材液滴を外殻溶液に向かって飛翔させるものである。
かかるノズルに関し、具体的には、液滴の噴射方法が、圧電素子(ピエゾ)式体積変化、多値静電荷電方式による電界制御、又は熱素子式体積変化(いわゆる「バブルジェット(登録商標)」)の何れか1つの方式によるものが好ましく、特に圧電素子(ピエゾ)式体積変化方式のノズルが好ましい。また、ノズルの形態としては、孔数が数個〜50で、各孔径が10〜30μmであるものが好ましい。なお、ノズルの孔径がかかる大きさであっても噴射される液滴の大きさは直径が推定5〜50μmの微粒子である。
【0072】
核材を構成する結着樹脂の良溶媒、すなわち結着樹脂と無制限に混合可能な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンやシクロヘキサンを例示することができる。インクジェット方式のノズルを用いる場合の溶媒は、ノズルの部材保護の観点から、芳香族系の溶媒は好ましくなく、脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物であるナフテン系溶剤であることが好ましい。かかるナフテン系溶剤は、C6〜C9のアルカン、シクロアルカン成分であり、例えばエクソン化学社から「エクソール」の商品名で市販され、エクソールDSP 100/140、D30、D40、D80、D110等のグレードがありそれぞれ成分、組成が異なる。沸点は常圧の50%値で120〜180℃である。
また、溶液中の結着樹脂の濃度は、最適粒子径の球形粒子を得るために適度な溶液粘度に調整するために5〜30重量%とすることが好ましい。
【0073】
一方、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒、すなわち結着樹脂を溶かす能力はあるものの溶解度に限界がある溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)を例示することができる。かかる溶液中の結着樹脂の濃度は、核材物質の周囲に適当量付着させるために1〜5重量%とすることが好ましい。
【0074】
本発明におけるスプレー用ノズルを用いたトナー粒子の製造方法(溶剤再沈法)を具体的に説明すると次のとおりである。
核材を構成する環状構造を有するオレフィン系重合体20〜35重量%及び機能付与剤2〜3.5重量%をトルエン等の溶媒61.5〜78重量%に25〜30℃の温度下で添加して溶解させた後、着色剤1〜2重量%をビーズミル等で分散させた溶液(A液)を調製する。一方、外殻材を構成する環状構造を有するオレフィン系重合体1.8〜2.2重量%及び電荷調整剤0.015〜0.025重量%をメチルエチルケトン(MEK)等の溶媒約98重量%に溶解させた溶液(B液)を調製する。
【0075】
次いで、図1及び図2に記載した出口孔径が0.45mmの液流路とその周囲に空気流路を設けた構造の2個のスプレーノズルからA液を空気と混合してミスト状にしてB液を収容したバット中に高速撹拌下で噴霧して沈殿物を得る。その際、飛散したミストは排気ポンプで曳いてB液トラップへ回収する。次に濾過機にかけて溶媒と分離し、最後に高温真空乾燥機で残留溶剤を留去して造粒する。こうして、形状がほぼ球形で、平均粒径が4〜10μm、粒度分布が2〜12μm(σ=標準偏差で表したとき3σに相当)、外殻材の厚さが0.2〜0.5μm(溶剤分離法による重量測定による)のマイクロカプセルトナー粒子を得ることができる。さらに現像剤に供するために疎水性シリカを外添する。
なお、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いたトナー粒子の製造方法も上記に準じる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例並びに比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
下記のとおり、乾式1成分系及び乾式2成分系トナーを調製した。なお、実施例1はスプレー用ノズルを用いたマイクロカプセルトナーの製造例であり、実施例2はインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いたマイクロカプセルトナーの製造例である。
【0077】
[実施例1](スプレー用ノズル使用)
▲1▼樹脂原体Aの調製
環状構造を有するオレフィン系重合体としてガラス転移温度(Tg)が約65℃、重量平均分子量(Mw)が約9000であるティコナ社製「トパスTM」(商品名)92重量%、機能付与剤としてベヘニン酸アミドワックス(日本精化社製「BNT22H」)2重量%、酸化・非酸化ポリエチレンワックスの混合物微粉末(クラリアント社製「セリダスト3715F」(商品名))2重量%と青色の着色剤(クラリアント社製「Toner Cyan BG」)3重量%を二軸押出機にて混練し、樹脂原体Aを得た。
【0078】
▲2▼A液(核材)の調製
75重量部のトルエンに30℃の温度下、200rpmの撹拌速度で、25重量部の上記樹脂原体Aを徐々に添加し溶解させた。その後、超音波洗浄機にて当該溶液中の樹脂分を分散させ、その後、ミキサーで9500rpmの攪拌速度で攪拌して溶液を得た。次いで、この溶液を200meshで加圧濾過し、異物を除去した。B型粘度計によるこのA液の粘度は、17.8cP(センチポアズ)であった(ローターNo.1、60rpm、20℃)。
【0079】
▲3▼樹脂原体Bの調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が65℃、重量平均分子量(Mw)が50,000であるティコナ社製「トパスTB」の無水マレイン酸5%グラフト変成品であるTgが65℃、Mwが約50,000、酸価が約20であるティコナ社製「トパスTBG」98重量%と電荷調整剤(オリエント化成社製「E−84」(商品名))2重量%とを上記と同様の二軸押出機にて混練し、樹脂原体Bを得た。
▲4▼B液(外殻材)の調製
5重量%の上記樹脂原体Bを95重量部のメチルエチルケトンに溶解させてB液を得た。
【0080】
▲5▼造粒工程
衝突型微霧ノズル(株式会社いけうち製の「AKIJET」)を使用し、上記A液を上記B液にエアー圧0.3〜0.5MPaで噴射して滴下した。その間、B液はスターラーで300rpmの速度で攪拌を行った。
滴下時間は約3分間で漏斗に液がなくなるまで滴下し、沈殿物を得た。滴下後、そのままの状態で5分間攪拌を続けた。上面にテフロン(登録商標)製の漏斗を取り付け、その先に付けた真空ポンプによって飛散したトナー微粒子を吸引した。吸引側にはMEKを入れたトラップに入れバブリングして、細かい粒子を捕獲した。
3μmまで保持できる濾紙で、滴下を行ったB液を吸引濾過した。B液を濾過中にアルコールを少量加えながら溶液置換を行い、最後はアルコールのみで洗浄しながら濾過を行った。
この濾物を高真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナー粒子を得た。
【0081】
得られたトナー粒子の平均粒径は約7μmであり、その粒度分布は3.5〜11μmの範囲に全粒子が収斂し、粗大粒子、微細粒子の分級を要しない均一性を有するため生産性に優れていることが判明した。また、トナー粒子の形状は走査型電子顕微鏡による観察でほぼ球形を呈していることを確認した。
なお、トナー粒子の平均粒径はレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−700」)により求められた数値である。また、粒度分布は同装置により測定し、粒径3〜9μmの粒子が体積基準で90%超、個数基準で2.3〜9μmの粒子が約95%の占有率を示した。また、外殻材の厚みの測定は、1リットルのメチルエチルケトンにトナー粒子10gを秤量採取し、50℃に加温して20分間撹拌して外殻材を溶解させた後、熱濾過して溶剤を留去し残存重量を測定して算出した。
【0082】
[実施例2](インクジェット方式プリンタ用ノズル使用)
▲1▼樹脂原体Aの調製は上記実施例1と同様である。
▲2▼A液(核材)の調製
溶媒は粘度、表面張力を考慮し、エクソールD-30、或いはD-40を用いた。これらの溶媒を用いてA液(核材)溶液を15〜20%のポリマー濃度になるように溶液を調製した。調製後、超音波洗浄機にて溶液中の樹脂分を分散させ、その後ミキサーで9500rpmの速度で攪拌した。
その後、10μmの穴径の濾紙を用いて加圧濾過し、異物を除去する。その後脱泡を行い、溶け込んだ空気を除去した。
インクジェット方式プリンタ用ノズルは15μmの孔径のものが約20個あるものを用いた。
▲3▼樹脂原体Bの調製は上記実施例1と同様である。
▲4▼B液(外殻材)の調製は上記実施例1と同様である。
【0083】
▲5▼造粒工程
インクジェット方式プリンタ用ノズル(圧電素子(ピエゾ)式体積変化方式)にA液を充填させた後、スターラーで300rpmの速度で攪拌されているB液に約20分間、噴射した。
噴射後、粒子を含んだB液を、3μmまで保持できる濾紙を用いて吸引濾過を行った。濾過中、ブフナー漏斗内のB液を攪拌羽根でゆっくり攪拌しながら濾過を行った。濾過中にアルコールを少量加えながら溶液置換を行い、最後はアルコールのみで洗浄しながら濾過をおこなった。
濾物を高真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナーを得た。
粒径を電子顕微鏡にて確認したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は約7〜8μmであり、その粒度分布は3〜15μmであった。
【0084】
[比較例1](特開2000−147829号公報の「実施例1」)
▲1▼A液(核材溶液)の調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が49℃、数平均分子量(Mn)が2,000であるティコナ社製「トパスT−936」17重量%、酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体としてガラス転移温度(Tg)が58℃、数平均分子量(Mn)が3,700であるティコナ社製「トパスAG−07」1重量%と、機能付与剤として日本精化社製「BNT22H」0.5重量%、クラリアント社製「セリダスト3715」(商品名)0.5重量%とを、80重量%のトルエン・シクロヘキサン混合溶媒(重量比が50:50)に30℃の温度下、200rpmの撹拌速度で徐々に添加し溶解させた。その後、当該溶液にビーズ(芦沢社製のステンレスパウダー;粒径が500μm)を加え、黒色の着色剤(三菱化学社製「カーボンブラックMA−7」)1重量%を500rpmにて徐々に添加し分散させてA液を得た。
【0085】
▲2▼B液(外殻材溶液)の調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が67℃、数平均分子量(Mn)が4,600であるティコナ社製「トパスAG−09」2重量%と電荷調整剤(クラリアント社製「コピーチャージNX」(商品名))0.02重量%とを約98重量%のメチルエチルケトンに溶解させてB液を得た。
【0086】
▲3▼造粒工程
上記A液を直径が30μmのオリフィスを多数個有するノズルからB液に高速撹拌下で滴下して粒子を製造した。このとき滴下されるA液の粒径は推定20〜40μmであった。滴下量は500リットル容量の釜で製造の場合、200リットルのB液に対して100リットルのA液をオリフィス100本から毎分5リットルの割合で20分間かけて徐々に滴下して沈殿物を得た。B液の撹拌速度は2000rpmとし、A液の滴下完了後、引き続き10分間撹拌を継続した。その後、沈殿物を濾過機にかけて溶媒と分離し高温真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子の平均粒径は約10μmであり、その粒度分布は3〜15μmの範囲であった。また、形状は走査型電子顕微鏡により観察したところ、ほぼ球形を呈していることが確認された。
【0087】
[比較例2]
市販の空気衝撃式粉砕法(ジェット粉砕)により製造されたトナーであり、
平均粒径が7.0μm、粒径分布は1.8〜17μmであった。
【0088】
[比較例3]
市販の機械粉砕法により製造されたトナーであり、具体的にはQMS社製プリンター「マジカラー2CX」(商品名)用トナーである。
【0089】
上記の実施例1、2で得られたマイクロカプセルトナー及び比較例1〜3のトナーをリコー社製複写機「FT−5520」で実写し、以下に述べる性能試験を行い評価した。結果は、表2に示すとおりである。
(a)耐スペントトナー性
各実施例、比較例のトナーサンプルを用いて上質紙への実写試験を行ない、現像スリーブ及び感光体にトナー成分が許容限界付着量に達するまで実写し、その普通紙枚数で比較した。
【0090】
(b)転写性
感光体から被複写基材である上質紙への転写効率を10,000枚実写後の回収トナー量により測定した。
【0091】
(c)定着性
各トナーを用いて上質紙に画像を形成し、その上に未印画の同質紙を被せてラビングテスターで印画を擦り、未印画紙に強制的に転写させた。画像形成時の定着速度は150mm/秒、定着温度は150℃に設定した。摩擦試験時の条件は2ポンド(約907g)荷重で20往復とした。摩擦後マクベス式反射濃度計で、摩擦前の初期画像濃度(A)、未印画紙への転写濃度(B)、紙の非画像部濃度(C)を計り、式[(B−C)/A×100(%)]によって転写率を測定した。その転写率が60%以上を示す定着下限温度、及び定着下限圧力を測定して比較した。
【0092】
(d)画像性
階調性、細線分解能、OHP透過性により各トナーの画像性について比較評価を行なった。
▲1▼階調性:
データクエスト社製の画像見本によるグレースケールの識別ステップ数0〜16により評価した。
▲2▼細線分解能:
データクエスト社製の画像見本による細線パターン0〜600dpiにより評価した。
▲3▼OHP透過性:
富士ゼロックス社製のPPC用OHPフィルム上に画像を形成し、画像部(A)と、非画像部(B)の光線透過量を測定して、A/B×100(%)で表示した。
【0093】
(e)保存安定性
各々の処方にて調製したトナーを60℃、50%RH(相対湿度)の条件下で8時間保存した後、100メッシュで一定時間ふるい分けした時のメッシュ残を使用試料量で除して%表示した。保存時にトナー粒子が凝集すると数値は高くなる。この主な原因はトナー組成に含まれる50℃以下の低融点物質である。メッシュ残が0.5%以下の場合に○印、0.5%を超えた場合に×印を付した。
【0094】
【表2】
【0095】
【発明の効果】
本発明の、核材溶液を外殻剤溶液に噴射する際にスプレー用ノズル、またはインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いるマイクロカプセルトナーの製造方法によれば、粒径分布が均一なマイクロカプセルトナーが得られ、得られたトナーは、保存安定性が良く、鮮明で高品位の画像をもたらし、耐スペントトナー性、転写性、定着性、非オフセット性に優れる。特に、低温の加熱方式であっても充分な定着性を有する点で優れる。
また、熱ロール定着方式の場合でも大幅な熱量削減が容易であり、複写機器の省エネルギー性に貢献することができる。さらに、外殻材にシリコーンオイルあるいはワックス等の離型効果を奏する機能付与剤を含有させることで、熱ロール表面へのオイル供給が不要となる。
なお、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる場合には、当該ノズルの部材が芳香族系溶剤に侵食されやすいため核材溶液の溶剤が脂肪族・脂環式炭化水素混合物であるナフテン系溶剤を用いることにより、圧力加熱定着方式の複写機器に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】衝突型微霧ノズルの全体図である。
【図2】衝突型微霧ノズル先端の噴射孔の態様を示す概略図である。
【符号の説明】
1 衝突型微霧ノズル
11 衝突型微霧ノズル先端の噴射孔
11a 噴射孔の内管
11b 噴射孔の外管
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧力定着型並びに加熱ローラー定着型(以下、「圧力加熱型」或いは「圧力加熱方式」と呼ぶことがある)の静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
詳しくは、本発明は、乾式磁性1成分系、乾式非磁性1成分系、乾式2成分系、液乾式系、液体トナー系現像剤を紙やフィルム等の被複写基材に定着させる際に、圧力定着を可能にし、また、加熱ロール定着の場合でも100℃未満の低温で圧定着を可能にするような充分な定着性、トナースペント性、透明性を有し、且つ鮮明な画像を形成できるトナーの製造方法に関する。さらに、本発明は、オフセット現象が発生しない温度域(非オフセット温度域)を充分に確保できる高速定着性、保存安定性に優れ、実用に供せられる現像剤におけるトナーの製造方法に関するものである。
また、本発明は、複写機、プリンター、ファックス、カラー複写機、カラーレーザー複写機、カラーレーザープリンター、電子写真式高速印刷機に幅広く応用可能な前記トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
急速なオフィスオートメーション化の広がりを背景として、静電荷像現像式複写機並びにプリンターにおける高速印字速度に対応する耐機械衝撃性の向上、高品位、即ち鮮明画像性、低温定着性、カラートナー対応のための光透過性に優れた複写画像に対する要望がますます強くなっている。こうした高速複写・高品位画像の要請に対応するために、必要且つ充分なトナー粒子の機械的強度、低温定着の要請に充分に対応し得る広い非オフセット温度域が要求され、且つ定着ロールにオイル供給を必要とせず被複写基材を汚染する恐れのないオイル・フリータイプの実現が期待されている。
【0003】
トナーは、その要求性能が、帯電性、定着性、耐摩耗性、搬送性、保存安定性(長時間経過してもトナー粒子同士が凝集し、塊状になりにくいこと)等の多岐にわたっているため、それらを従来行われているコンパウンド方式で乾式混合した場合に全てのニーズを満足させるには限界が生じる。
【0004】
すなわち、上記の各ニーズに対応するためには、トナーに各種の相反するような機能を付与することが必要となるが、そうした課題を解決するため、コアとよばれる核材(核物質)粒子を、シェルとよばれる外殻材(外殻物質)で被覆し包み込んだ構造のマイクロカプセルトナーが考案されている。マイクロカプセルトナー方式によれば、例えば定着性は良好だが保存安定性が劣るためオフセット現象を起こしやすい結着樹脂を核材とし、一方、保存安定性や非オフセット性が良好な結着樹脂を外殻材に使用することで相反する要求を解決できるからである。
【0005】
こうした機能分離型のマイクロカプセルトナーに関する発明考案は数多くなされている。
例えば、特許文献1(特開平9−292735号公報)には懸濁重合法により製造したマイクロカプセルトナーを用いたフィルム定着加熱型の画像形成装置が開示され、同様の製造法を利用した例が、特許文献2(特開昭59−53856号公報)、特許文献3(特開昭59−61842号公報)に開示されている。
また、特許文献4(特公昭56−13945号公報)にはスプレードライ法による製造法が、特許文献5(特公平8−16793号公報)には水滴下相分離法による製造法が、特許文献6(特開平3−56970号公報)にはin.situ(イン・サイチュー)重合法により外殼層形成後、高圧ホモジナイザーを用いて微粒子化する製造法が提案されている。その他、界面重合法、コアセルベーション法、乾式カプセル法等が紹介されている。
【0006】
特許文献7(特開平10−10778号公報)には、帯電改良を目的として自己水分散性樹脂、溶剤、着色剤からなる混合物を水性媒体中で転相乳化させてカプセルトナーを製造する方法が開示されている。かかる転相乳化法によるカプセルトナーの製造方法は特許文献8(特開平11−65168号公報)、特許文献9(特開平10−207119号公報)及び特許文献10(特開平11−231569号公報)にも開示されている。
特許文献11(特開平10−78676号公報)では、酸化が9.5(mgKOH/g)の非晶質ポリエステルをカプセルの外殻用樹脂に用いて耐ブロッキング性を向上させている。
また、特許文献12(特開平10−228130号公報)では、in. situ重合法で製造されるカプセルトナーの貯蔵弾性率を規定することによって低温定着性と耐オフセット性を向上させている。特許文献13(特開平10−301328号公報)には、混合溶媒可溶樹脂成分量が特定量のカプセル構造静電荷像現像用トナーは、低温定着性と高画質化をもたらすことが記載されている。特許文献14(特開2000−56510号公報)では、水系分散媒体中で着色剤を含む重合性単量体組成物を重合させる低定着温度のカプセルトナーの製造方法が提案され、特許文献15(特開2000−98662号公報)では、シェルがε−カプロラクトン開環重合体からなるカプセルトナーは低定着温度に優れると記載されている。
特許文献16(特開2000−112175号公報)及び特許文献17(特開2000−112176号公報)では、粉砕トナー粒子の分散液に結着樹脂を溶解させて定着特性に優れたカプセルトナーを製造する方法が提案されている。
その他、低温定着性の向上や保存安定性の向上を目的としたカプセルトナーが特許文献18(特開平11−305478号公報)、特許文献19(特開2000−284525号公報)において提案されている。
【0007】
しかし、これら従来技術におけるトナーの製造方法は、スプレードライ法を除いて何れも水を媒体として使用するため乾燥に手間がかかり、マイクロカプセルトナーを工業的規模で生産するには未だ十分でないのが実状であった。また、スプレードライ法では所望の平均粒径、通常は10μm以下に揃えるための微粒子化が困難であった。
【0008】
こうした状況下、本発明者らは特願平10−312215号明細書〔特許文献20(特開2000−147829号公報〕において、マイクロカプセルトナーの核材の結着樹脂としてガラス転移温度が−20℃以上60℃未満の範囲で数平均分子量が100以上20,000以下の範囲である環状構造を有するオレフィン共重合体を含有させ、及び/又は外殻材の結着樹脂としてガラス転移温度が60℃以上180℃以下の範囲で数平均分子量が1,000以上100,000以下である環状構造を有するオレフィン共重合体を含有させてなるマイクロカプセルトナー粒子を有する静電荷像現像用トナーに関する発明が上記要請に対応できることを開示した。
【0009】
しかしながら、上記発明において開示されたマイクロカプセルトナーの製造方法は、通常の再沈法、すなわち核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液であって当該溶液中に着色剤が分散されている核材溶液を、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に滴下して核材の周囲に外殻材を析出させる溶剤再沈法、或いは相分離法によるものであり、かかる製造方法で得られたトナーは、粒子径のばらつきを所定の範囲に抑えることが不十分であり、粒径分布のシャープなトナーの要請に充分に応えることができない、という問題点が残されていた。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−292735号公報
【特許文献2】
特開昭59−53856号公報
【特許文献3】
特開昭59−61842号公報
【特許文献4】
特公昭56−13945号公報
【特許文献5】
特公平8−16793号公報
【特許文献6】
特開平3−56970号公報
【特許文献7】
特開平10−10778号公報
【特許文献8】
特開平11−65168号公報
【特許文献9】
特開平10−207119号公報
【特許文献10】
特開平11−231569号公報
【特許文献11】
特開平10−78676号公報
【特許文献12】
特開平10−228130号公報
【特許文献13】
特開平10−301328号公報
【特許文献14】
特開2000−56510号公報
【特許文献15】
特開2000−98662号公報
【特許文献16】
特開2000−112175号公報
【特許文献17】
特開2000−112176号公報
【特許文献18】
特開平11−305478号公報
【特許文献19】
特開2000−284525号公報
【特許文献20】
特開2000−147829号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低温加熱定着、或いは複写の高速化実現のための圧力定着方式並びに加熱ローラー定着方式に充分対応可能であり、しかも従来のマイクロカプセルトナーの問題点を解決し、さらに保存安定性、オフセット現象防止に優れ、高濃度の色相を呈することを可能にするような、粒径分布が均一なマイクロカプセルトナーの製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガラス転移温度と数平均分子量が異なる2種の環状構造を有するオレフィン系重合体を、マイクロカプセルトナー粒子の核材及び/又は外殻材を構成する結着樹脂として配合する静電荷像現像用トナーの製造において、核材溶液を外殻剤溶液中に滴下する際に、核材溶液を微粒子状液滴として外殻材溶液中に噴射して滴下しカプセル化することにより上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、着色剤および環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む結着樹脂からなる核材と、結着樹脂からなり核材を被覆する外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている核材溶液の微粒子状液滴を、当該液滴を外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
そして、スプレー用ノズル又はインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いて、核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下することを特徴とする上記トナーの製造方法である。
【0014】
さらに、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いた核材溶液の噴射の方法が、圧電素子式体積変化、多値静電荷電方式による電界制御及び熱素子式体積変化から選ばれる何れか1つの方法であること;
インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる場合、核材溶液の溶媒が脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物であるナフテン系溶剤であること;
核材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が−20℃以上65℃以下の範囲で数平均分子量が100以上20,000以下の範囲である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなること;
核材を構成する環状構造を有するオレフィン系共重合体樹脂が、アクリル酸又は無水マレイン酸で変性された共重合体であること;
外殻材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が60℃以上180℃以下の範囲で、且つ数平均分子量が1,000以上100,000以下である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなること;
核材を構成する結着樹脂及び/又は外殻材を構成する結着樹脂にワックスが配合されたものを用いること;
ワックスが、脂肪酸アミドワックス、酸化ポリエチレンワックスおよび酸変性ポリプロピレンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種であること;を特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記トナーの製造方法によって製造されたマイクロカプセルトナー粒子の表面にさらにシリカ微粉末が外添又は塗布されたものであることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
[A]マイクロカプセルトナー粒子の核材を構成する材料
核材は結着樹脂及び着色剤を必須成分とし、さらに任意成分として機能付与剤、電荷調整剤、その他の添加剤を含むことができる。
(1)結着樹脂
着色剤とともにマイクロカプセルトナーのコア部分、すなわち核材を構成する結着樹脂として、環状構造を有するオレフィン系重合体、或いは環状構造を有するオレフィン系重合体と以下に述べる加熱定着用結着樹脂及び/又は圧力定着用結着樹脂との混合物が使用される。これらは後述する外殻材を構成する結着樹脂に比べて、融点又は軟化点が低く定着性が高い樹脂である。
【0017】
加熱定着用結着樹脂としては、ポリスチレン、置換ポリスチレン等のスチレン系重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体やスチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のアクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することできる。
【0018】
一方、圧力定着用結着樹脂としては、植物系・動物系・鉱物系・石油系ワックス類(具体的にはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ラノリン、蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、高級脂肪酸誘導体(ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸およびその他の多価アルコールエステルおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩)、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、オレフィン系の単独又は共重合体(エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等)、スチレン系樹脂(低分子量ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)、エポキシ樹脂およびポリエステル樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することできる。
【0019】
低温定着方式を導入して高速複写を可能にし高品位で鮮明な画像を得るためには、圧力加熱定着(熱圧着)方式に対応した確実な定着性を図る必要があるので、上記定着方式により結着樹脂の種類、組成を適宜選択することが必要となる。
【0020】
オフセット現象が生じない非オフセット温度域を拡張し非オフセット性を高める観点からは、以下の環状構造を有するオレフィン系重合体(Cyclo Olefin Copolymer:略称;COC)を核材の結着樹脂として使用する。
【0021】
核材として用いる環状構造を有するオレフィン系重合体は、外殻材に比べ高度の定着性を得るため、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上65℃以下の範囲で数平均分子量(Mn)が100以上20,000以下の範囲であることを要する。ガラス転移温度が−20℃未満では粘弾性が高くなって印字画像が粘着質となり、一方、ガラス転移温度が65℃を超えると剛直すぎて定着性が充分に得られ難くなる。また、数平均分子量が100未満では充分な定着性が得られなくなり、一方数平均分子量が20,000を超過すると溶剤に溶解し難くなり実用上の問題が大きい。
【0022】
ここでガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱量測定法(DSC)による転移熱を示す変位の中間点に当たる温度であり、数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で標準ポリエチレン或いはポリスチレン換算にて測定する値であり、より具体的には下記の条件下で測定して求められる値である。
使用カラム:JORDI−SAEULE 500×10 LINEAR
移動相 :1,2−ジクロロベンゼン(135℃)、流速0.5ml/分
検出器 :示差屈折計
【0023】
以下、環状構造を有するオレフィン系重合体について以下のとおり詳説する。環状構造を有するオレフィン系重合体は、炭素数が2〜12、好ましくは2〜6の低級アルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン(広義には非環式オレフィン)と、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキセン等の少なくとも1つの二重結合を有する炭素数が3〜17、好ましくは5〜12の環式及び/又は多環式化合物(環状(シクロ)オレフィン)、特に好ましくはノルボルネン又はテトラシクロドデセン、との共重合体であり無色透明で高い光透過率を有するものである。
【0024】
この環状構造を有するオレフィン系重合体は、例えばメタロセン系触媒、チーグラー系触媒及びメタセシス重合(metathesis polymerization)、すなわち二重結合開放(double bond opening)及び開環重合反応のための触媒を用いた重合法により得られる重合体である。この構造を有するオレフィン系重合体の合成例としては、特開平5−339327号公報、特開平5−9223号公報、特開平6−271628号公報、ヨーロッパ特許出願公開(A)第203799号明細書、同第407870号明細書、同第283164号明細書、同第156464号明細書及び特開平7−253315号公報等に開示されている。
【0025】
これらによると、上記環状オレフィンの1種類以上のモノマーを、場合によっては1種類の上記非環式オレフィン−モノマーと−78〜150℃、好ましくは20〜80℃で、圧力0.01〜64barでアルミノキサン等の共触媒と例えばジルコニウムあるいはハフニウムよりなるメタロセンの少なくとも1種類からなる触媒の存在において重合することにより得られる。他の有用な重合体はヨーロッパ特許出願公開(A)第317262号明細書に記載されており、水素化重合体及びスチレンとジシクロペンタジエンとの共重合体も使用できる。
【0026】
脂肪族又は芳香族炭化水素の不活性炭化水素にメタロセン触媒が溶解された状態は、メタロセン触媒が活性化されるため、例えばメタロセン触媒をトルエンに溶かし溶剤中で予備活性及び反応が行われる。環状構造を有するオレフィン系重合体の重要な性質は、軟化点、融点、粘度、誘電特性、非オフセット温度域及び透明度である。これらはモノマー或いはコモノマーの種類やコモノマー相互の比、分子量、分子量分布、ハイブリッドポリマー、ブレンド及び添加剤の選択によって有利に調整することができる。
【0027】
また、非環式オレフィンと環状オレフィンの反応仕込モル比は、目的とする環状構造を有するオレフィン系重合体により、広範囲で変化させることができ、好ましくは50:1〜1:50で、特に好ましくは20:1〜1:20に調整される。
【0028】
例えば、共重合体成分が非環式オレフィンとしてエチレン、環状オレフィンとしてノルボルネンの計2種類の化合物を仕込んで反応させる場合、反応生成物の環状構造を有するオレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、これらの仕込割合に大きく影響され、ノルボルネンの含有量を増加させると、Tgも上昇する傾向にある。例えば、ノルボルネンを15モル%以下(エチレン85モル%以上)の組成にすればTgが−20℃以上65℃以下の共重合体を得ることができ、一方、ノルボルネンを15モル%以上の組成にすればTgが65℃を超え180℃以下の共重合体を得ることができる。数平均分子量のような物性値は、文献から公知のように調整される。
【0029】
本発明で使用される環状構造を有するオレフィン系重合体は、以下のとおり構成される。すなわち、核材の結着樹脂としては、無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体と酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体が、95:5〜5:95の重量比で構成されることが好ましい。かかる無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn;GPCにてポリエチレン換算で測定、以下同様)が100以上20,000以下、好ましくは1,000以上10,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が200以上40,000以下、好ましくは6,000以上30,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上65℃以下、好ましくは40℃以上65℃以下である。
【0030】
一方、上記酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100以上20,000以下、好ましくは1,000以上10,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が300以上80,000以下、好ましくは3,000以上40,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−20℃以上60℃未満、好ましくは40℃以上59℃以下である。
【0031】
定着性を確保し、実用に充分供せられる広い非オフセット温度域を得るためには、上記環状構造を有するオレフィン系重合体の組成が以下のようであることが好ましい。
すなわち、下記の物性を有する低分子量重合体或いは重合体フラクション(a)と、高分子量重合体或いは重合体フラクション(b)とから構成されることである。すなわち、環状構造を有するオレフィン系重合体は重合体(a)と重合体(b)の混合物であってもよいし、あるいはピークが1つの分子量分布を持ち7,500未満の数平均分子量を有する重合体フラクションと7,500以上の数平均分子量を持つ重合体フラクションとを有するか、あるいは分子量分布に2以上のピークがあり、そのうちの少なくとも1つのピークを持つ重合体フラクションが7,500未満の数平均分子量を有しそして他のピークを持つ重合体フラクションが7,500以上の数平均分子量を有していてもよい。
【0032】
このように環状構造を有するオレフィン系重合体が、低粘度(低分子量)の重合体又は重合体フラクション(a)と高粘度(高分子量)の重合体又は重合体フラクション(b)から構成されるとしたのは、非オフセット温度域が高温及び低温側の両方に広がる結果、高速複写時のトナー定着性を向上させ、低温・低圧時の定着性を同時に改善するためである。
【0033】
重合体又は重合体フラクション(a)(以下、成分aという):数平均分子量(GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)でポリエチレン換算にて測定、以下同様)が7,500未満、好ましくは1,000〜7,500未満、より好ましくは2,000〜7,500未満;重量平均分子量が15,000未満、好ましくは1,000〜15,000未満、より好ましくは4,000〜15,000未満;極限粘度(i.v.;デカリン100mLに当該重合体1.0gを均等に溶解させたときの135℃における固有粘度)が0.25dl/g未満;ガラス転移点(Tg)が好ましくは70℃未満である。
【0034】
重合体又は重合体フラクション(b)(以下、成分bという):数平均分子量が7,500以上、好ましくは7,500〜50,000;重量平均分子量が15,000以上、好ましくは15,000〜500,000;極限粘度(i.v.)が0.25dl/g以上である。
【0035】
さらに、成分bの含有量が結着樹脂全体の50重量%未満、好ましくは5〜35重量%であることを特徴とする。成分bはトナーに構造粘性を付与しそれによってオフセット防止効果や紙・フィルム等被複写基材への接着性を向上させるが、含有量が50重量%以上の場合は均一混練性が極度に低下してトナー性能に支障をきたす。すなわち高品位、つまり定着強度が高くヒートレスポンス性に優れた鮮明な画像が得られにくくなったり、機械粉砕性が低下し、トナーに必要な粒径を得ることが技術的に困難となる。
【0036】
なお、ここで重合体又は重合体フラクションとは、環状構造を有するオレフィン系重合体が、種々の数平均分子量等異なる成分の混合物で構成されている場合は、混合前の各重合体成分で、それ以外の場合は最終合成生成物をGPC等の適当な手段によって分別した重合体区分をいう。なお、ここでこれらの重合体フラクションが単分散あるいは単分散に近い場合、数平均分子量(Mn)が7,500というのは重量平均分子量(Mw)が15,000にほぼ相当する。
【0037】
非オフセット温度域を低温側に広げるためには環状構造を有するオレフィン系重合体を構成する低粘度の成分aが寄与し、逆に高温側に広げるには高粘度の成分bが寄与する。非オフセット温度域をより効果的に高温側に広げるためには数平均分子量が20,000以上の高粘度の成分bの存在が好ましい。
結着樹脂全体を100重量部とした場合に、当該オレフィン系重合体を構成する成分aとbの含有量はそれぞれ0.5重量部以上、特に5〜100重量部が好ましい。両者とも0.5重量部未満では実用的な広い非オフセット温度域が得られ難い傾向となる。
【0038】
環状構造を有する高粘度(高分子量)及び低粘度(低分子量)のオレフィン系重合体は、前述したような数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、極限粘度(i.v.)を有するため分子量分布の分散度を示すMw/Mnが1〜2.5と小さいこと、すなわち単分散及び単分散に近いためヒートレスポンスが速く、そのため定着強度の強いトナーが製造でき、低温度並びに低圧力でトナーの定着が可能となる他、トナーの保存安定性、スペントトナー性、帯電量分布の均一性や帯電・除電効率の一定化を示す電気安定性に寄与している。ここで、特に低粘度の重合体又は重合体フラクションが単分散又は単分散に近い場合、瞬時に溶融、凝固挙動を示す等のいわゆるトナーとしてのヒートレスポンス性が優れたものとなり好ましい。
【0039】
また、環状構造を有するオレフィン系重合体は無色透明でかつ高い光透過性を有しているので、イエロー、シアン、マゼンタの三原色顔料を添加しても充分の透明性を保持し、カラートナーに既に応用されている。また、当該オレフィン系重合体はDSC法(示差走査熱量測定)による測定では融解熱が非常に小さく、トナー定着のためのエネルギー消費量が大幅に節減されることも期待できる。
【0040】
また、環状構造を有するオレフィン系重合体にカルボキシル基を導入することにより他の樹脂との相溶性を改良したり、トナー中の顔料の分散性を向上させることができる。かかるカルボキシル基の導入によって、紙やフィルム等の被複写基材に対するトナーの接着性を向上させ定着性を増大することができる。
【0041】
カルボキシル基の導入方法は、最初に環状構造を有するオレフィン系重合体を調製し、その次にカルボキシル基を導入するという二段階の反応方法が有利である。このカルボキシル基を導入する方法は少なくとも2つある。1つは溶融空気酸化法で重合体の末端にあるメチル基等のアルキル基を酸化し、カルボキシル基とするものである。ただし、この方法ではメタロセン触媒により合成された環状構造を有するオレフィン系重合体の場合、枝分かれがほとんど無いので、多くのカルボキシル基を導入することは困難である。
【0042】
具体的には、環状構造を有するオレフィン系重合体に対して重量比で、グラフト率が好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは3〜5重量%となるように、無水マレイン酸、アクリル酸或いはメタクリル酸をt−ブタノールパーオキサイド等過酸化物を開始剤としてグラフト重合させてカルボキシル基を導入する。1重量%未満では前記した相溶性改良等の効果が十分ではなく、一方5重量%を超過するとオレフィン系重合体に分子間架橋が生じて分子量が増大し、混練性や粉砕性が非実用的となり、また極度の黄変色も呈し失透するので無色透明性が要求されるカラートナー用としては不向きな傾向となる。なお、水酸基、アミノ基を既知の方法により導入することによっても同様の向上が実現できる。
【0043】
また、トナーの定着性を向上させるために環状構造を有するオレフィン系重合体に架橋構造を導入することができる。この架橋構造の導入方法の1つは、当該オレフィン系重合体の重合時に、非環式オレフィン、環状オレフィンとともにシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、テトラシクロドデカジエン、ブタジエン等のジエンモノマーを加えて三元共重合させることによる。この方法により、当該オレフィン系重合体は架橋剤なしでも活性を示す末端を有し、酸化、エポキシ化等公知の化学反応によりあるいは架橋剤を加えることにより架橋構造を有することにより機能化される。
【0044】
他の方法は、上述のカルボキシル基を導入した環状構造を有するオレフィン系重合体に亜鉛、銅、カルシウム等の金属を添加し、次いで二軸押出機で混合溶融し、かかる金属を微細粒子として重合体中に分散させアイオノマーとすることにより架橋構造を与えることである。アイオノマーの技術自体は、例えば靭性を得る目的で、部分的に又は完全に中和されて2価の金属塩の形態となることができるカルボキシル基を含むエチレンのターポリマーが開示(米国特許第4693941号明細書)され、特表平6−500348号公報には、同じ目的で不飽和カルボン酸のアイオノマーを含むポリエステル樹脂成形体をそのカルボン酸基の約20〜80%を亜鉛、コバルト、ニッケル、アルミニウム又は銅(II)で中和したものが報告されている。
【0045】
核材に関しては、環状構造を有するオレフィン系重合体に、カルボキシル基が導入された、すなわち酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体を5〜95重量%添加して使用してもよい。この添加は、定着性、非オフセット温度域の確保に有効な手段となる。
【0046】
(2)着色剤
着色剤としては、従来のモノクロ又はカラー複写機用トナーに使用されているカーボンブラック、ジアゾイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドン、カーミン6B、モノアゾレッド、ペリレン等を核材に配合することができる。
【0047】
(3)機能付与剤
機能付与剤として各種のワックスを、非オフセット温度域を拡大してトナーの非オフセット性を高めるために配合できる。ここで極性ワックスとしてアミドワックス、カルナバワックス、高級脂肪酸及びそのエステル、高級脂肪酸金属石鹸、部分ケン化高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、非極性ワックスとしてポリオレフィンワックス、パラフィンワックスから選ばれる少なくとも1種のワックスを機能付与剤として使用できる。
各種ワックスの中でも、脂肪酸アミドワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリプロピレンワックスが、広い非オフセット温度域を得ることができる観点から好ましい。
【0048】
トナーの上記非オフセット温度域を広げてトナー性能を向上させるためには、以下のようにワックスを使用することが好ましい。すなわち、融点(示差走査熱量測定(DSC)におけるピーク温度)が80〜140℃の範囲にあり融点が異なるワックスを2種以上併用することが好適である。融点が80℃未満ではトナーにしたときに低融点物に起因するブロッキングの問題が生じる傾向となる。一方、機能付与剤は結着樹脂の軟化点を超える混練温度で完全に溶融することが要求されるため、結着樹脂の主要成分である環状構造を有するオレフィン系重合体の軟化点(約135〜140℃)に制約され、融点の上限は140℃が好ましい。具体的には以下に例示される脂肪酸アミド系又は炭化水素系のワックスの中から2種以上が選択され使用される。
【0049】
▲1▼極性基を有するワックス
各種脂肪酸アミドワックス、例えばアラキン酸モノアミド(融点110℃)、ベヘニン酸モノアミド(融点115℃)、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド(融点115℃)、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド(融点119℃)、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド(融点129℃);酸化オレフィンワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス(融点116℃);酸変性ポリオレフィンワックス、例えば酸変性ポリプロピレンワックス(融点138℃);カルナバワックス(融点約80℃)がある。
【0050】
▲2▼非極性(極性基を有しない)ワックス
炭化水素系ワックスであるオレフィンワックス、例えばポリエチレンワックス(融点130℃)、ポリプロピレンワックス(融点120〜150℃)、パラフィンワックス(融点約60〜80℃)、サゾールワックス(凝固点約98℃)、マイクロクリスタリンワックス(融点80〜100℃)がある。なお、オフセット現象防止のための機能付与剤として、離型作用をもたらすシリコーンオイルを本発明の効果を損なわない範囲で上記ワックスと併用してもよい。
【0051】
(4)電荷調整剤
ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、含金属ニグロシン染料、含金属脂肪酸変性ニグロシン染料、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸クロム錯塩、四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン染料、アゾクロム錯体等、従来より公知の電荷調整剤を核材に配合することができる。後述のとおり、外殻材に配合する場合には核材への配合を割愛することができる。
【0052】
(5)その他の添加剤
必要に応じて上記のトナー構成成分に加えて、コロイダルシリカ(煙霧質シリカを含む)、酸化アルミニウム、酸化チタン等の流動化剤や、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル酸バリウム等の脂肪酸金属塩からなる滑剤を、本発明の効果を損なわない範囲で核材に配合することができる。
【0053】
(6)各成分の配合量
核材における上記各成分の配合量は、静電荷像現像式複写機およびプリンター用トナーの一般的な処方と同様であり、下記の表1に示すとおりである。
【0054】
【表1】
【0055】
[B]マイクロカプセルトナー粒子の外殻材を構成する材料
外殻材は結着樹脂を必須成分とし、さらに任意成分として機能付与剤、電荷調整剤、その他の添加剤を含むことができる。
(1)結着樹脂
マイクロカプセルトナー粒子のシェル部分の外殻材を構成する結着樹脂として、以下に述べる定着用結着樹脂、又は環状構造を有するオレフィン系重合体が使用される。これらは前述した核材を構成する結着剤に比べて、融点又は軟化点が高いのでより保存安定性に優れる樹脂である。
【0056】
定着用結着樹脂としては、スチレン又は置換スチレン等その誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸又は無水マレイン酸エステル等その誘導体、無水マレイン酸アミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等の含窒素ビニル化合物、ビニルアセタール、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルモノマー、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のビニリデンモノマー、エチレン、プロピレン等のオレフィンモノマーの単独又は共重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ロジン、変性ロジン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレノキサイド等の縮合系重合体、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、石油樹脂が例示され、これらを単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0057】
熱ロールへのトナーの移行というオフセット現象を防止し保存安定性を一層向上させるためには、以下に述べる環状構造を有するオレフィン系重合体が外殻材の結着樹脂として使用されることが好ましい。
すなわち、外殻材の結着樹脂としては、無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体が好ましいが、ガラス転移温度が60℃以上であればトナーの保存安定性が充分に確保されるので、酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体で全量が置き換えられていてもよい。無変性の環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、好ましくは2,000以上50,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が2,000以上200,000以下、好ましくは4,000以上100,000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下である。
【0058】
一方、上記酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000以上100,000以下、好ましくは2,000以上50,000以下であり、重量平均分子量(Mw)が3,000以上300,000以下、好ましくは6,000以上200,000以下であり、酸価が10〜50mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上180℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が60℃未満ではトナー粒子の保存安定性に問題が多くなり、一方180℃を超過すると融点が高くなり定着性が劣る傾向となる。また、数平均分子量が1,000未満では充分な定着強度が得られず、一方100,000を超過すると溶剤への必要な溶解度が確保しにくくなる。また、酸価は10より小さいと樹脂の相溶性向上、紙への密着性向上等の効果が充分でなく、50より大きいと変色が強くなり実用に耐えない。
【0059】
上記の環状構造を有するオレフィン系重合体は、ガラス転移温度および数平均分子量以外の諸物性、変性物、架橋物等は、前述した核材に使用される環状構造を有するオレフィン系重合体に関する記載と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0060】
(2)機能付与剤
非オフセット温度域を拡大してトナー粒子表面の非オフセット性を一層向上させるために前述した核材に使用される機能付与剤(ワックス、シリコーンオイル)と同様のものを外殻材にも配合することができる。前述した好ましい使用態様等は、外殻材に配合される機能付与剤にも当てはまる。
【0061】
(3)電荷調整剤
前述した核材に使用される電荷調整剤と同様のものを外殻材に配合することができる。通常、外殻材に配合すれば核材への配合は割愛される。
【0062】
(4)外添剤
必要に応じてマイクロカプセルトナー粒子の外殻材の表面を外添剤で被覆することができる。外添剤は、コロイダルシリカ(煙霧質シリカを含む)等のシリカ微粉末、酸化アルミニウム、酸化チタン等の流動化剤や、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル酸バリウム等の脂肪酸金属塩からなる滑剤であり、これらを単独で又は2種以上併用することができる。また、それぞれ疎水化処理したものを用いることが好ましい。
外添剤の使用量は、トナー粒子100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
外殻材を外添剤で被覆する場合は、外添剤を含む溶液を粒子表面に塗布するか、或いはその他の方法で表面に付着させる。
【0063】
(5)各成分の配合量
外殻材における上記各成分の配合量は、着色剤を除き前記表1に示すとおりである。
【0064】
[C]マイクロカプセルトナー粒子
マイクロカプセルトナー粒子は、核材が外殻材に被覆されたカプセル型のいわゆるコア−シェル構造を有する。粒子全体の平均粒径(直径)は3〜10μmが好ましく、外郭の厚み((カプセル外径−核材径)×1/2)は0.1〜0.5μmが好ましい。
【0065】
本発明において、結着樹脂についての核材と外殻材の組み合わせとしては、
の3態様がある。
【0066】
環状構造を有するオレフィン系重合体、或いはそれと相溶性の比較的良い前記[A](1)の定着性樹脂として例示した各種の結晶性・非晶性樹脂と組み合わせで配合する結果、環状構造を有するオレフィン系重合体が有するトナー性能として重要な透明性、低温定着性、耐機械衝撃性等の特性を生かすことができる。
外殻材には酸変性した環状構造を有するオレフィン系重合体、或いは[B](1)の定着性樹脂、或いはそれらの混合物を用いることができる。
外殻材、核材の両者に環状構造を有するオレフィン系重合体を使用した上記(c)の態様の場合には、まさに上記特性がトナー性能としてフルに発揮される。
【0067】
ここで、トナー粒子の最も好ましい形態を示すと、核材の結着樹脂として、次の環状構造を有するオレフィン系重合体、すなわちガラス転移温度(Tg)が40〜59℃、数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000、多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が10以下、エチレンとノルボルネンの共重合モル比が85/15〜95/5のエチレン・ノルボルネン共重合体を使用し、一方、外殻材の結着樹脂として、次の環状構造を有するオレフィン系重合体、すなわちガラス転移温度(Tg)が60〜80℃、数平均分子量(Mn)が2,000〜50,000、多分散度(Mw/Mn)が4〜10、エチレンとノルボルネンの共重合モル比が75/25〜85/15で酸価が20mgKOH/g程度を有するメチルエチルケトン(MEK)に可溶な酸変性エチレン・ノルボルネン共重合体である。
【0068】
[D]マイクロカプセルトナー粒子の製造方法
本発明の製造方法は、前記特願平10−312215号明細書において提案した再沈法をより一層改良したものであり、粒径分布が均質な(シャープな)トナー粒子を得ることができる。
すなわち、本発明における製造方法は、着色剤および結着樹脂からなる核材と、結着樹脂からなり核材を被覆する外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている核材溶液を霧状の微粒子状液滴として、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とするものである。
核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下する方法としては、スプレー用ノズルを用いる方法、及びインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる方法を好適なものとして例示することができる。こうしたノズルによって直径が推定2〜50ミクロンのほぼ球形の微粒子状液滴にすることができる。
【0069】
スプレー用ノズルとしては、殺虫剤や殺菌剤等の噴霧用に市販されているもので孔径が2〜50μm、或いは後述の衝突型微霧ノズルの場合は0.2〜0.5mmφのものを選択するのが好ましい。
各種スプレー用ノズルの中でも、孔径約0.45mmの噴射孔2個が噴射方向が相互に約120度となる位置に取り付けられたノズルであって、噴射物が交差して衝突する態様の衝突型微霧ノズルが特に好ましい。このような態様の噴射ノズルは、例えば特公平4−9104号公報に記載されている。
図1は衝突型微霧ノズルの全体図であり、図2は衝突型微霧ノズル先端の噴射孔の態様を示す概略図である。
図1において、ノズル(1)に噴射孔(11)2個がその延長線上で交差するような位置に取り付けられている。
【0070】
図2において、各噴射孔(11)は内外2重管構造となっており内管(11a)からは液滴が、外管(11b)からは圧搾空気が噴出される。内管(11a)から噴射された液滴は外管(11b)から噴射された空気と衝突して微粒子化され、次いで微粒子化された液滴は他方の噴射孔から噴射され同様に微粒子化された液滴と衝突して、さらに微粒子化、均質化され、推定直径が2〜50μmの液滴にすることができる。なお、スプレーノズルの周囲にかける空気圧は0.3〜0.5MPaが好適である。ノズルへの核材溶液の供給はサクションタンクから吸い上げて行う。
【0071】
本発明において使用されるインクジェット方式プリンタ用ノズルは、ノズルから射出したインクの微粒を静電的に加速・偏向してドットマトリックス形式の文字を紙上に形成させる形式のプリンター、通称インクジェットプリンターに採用されているインク吐出ノズルの仕組みと同様である。すなわち、核材の液滴を発生するためのノズルに瞬間的に高い圧力を発生する手段を有しその圧力に応じて核材液滴を外殻溶液に向かって飛翔させるものである。
かかるノズルに関し、具体的には、液滴の噴射方法が、圧電素子(ピエゾ)式体積変化、多値静電荷電方式による電界制御、又は熱素子式体積変化(いわゆる「バブルジェット(登録商標)」)の何れか1つの方式によるものが好ましく、特に圧電素子(ピエゾ)式体積変化方式のノズルが好ましい。また、ノズルの形態としては、孔数が数個〜50で、各孔径が10〜30μmであるものが好ましい。なお、ノズルの孔径がかかる大きさであっても噴射される液滴の大きさは直径が推定5〜50μmの微粒子である。
【0072】
核材を構成する結着樹脂の良溶媒、すなわち結着樹脂と無制限に混合可能な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンやシクロヘキサンを例示することができる。インクジェット方式のノズルを用いる場合の溶媒は、ノズルの部材保護の観点から、芳香族系の溶媒は好ましくなく、脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物であるナフテン系溶剤であることが好ましい。かかるナフテン系溶剤は、C6〜C9のアルカン、シクロアルカン成分であり、例えばエクソン化学社から「エクソール」の商品名で市販され、エクソールDSP 100/140、D30、D40、D80、D110等のグレードがありそれぞれ成分、組成が異なる。沸点は常圧の50%値で120〜180℃である。
また、溶液中の結着樹脂の濃度は、最適粒子径の球形粒子を得るために適度な溶液粘度に調整するために5〜30重量%とすることが好ましい。
【0073】
一方、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒、すなわち結着樹脂を溶かす能力はあるものの溶解度に限界がある溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)を例示することができる。かかる溶液中の結着樹脂の濃度は、核材物質の周囲に適当量付着させるために1〜5重量%とすることが好ましい。
【0074】
本発明におけるスプレー用ノズルを用いたトナー粒子の製造方法(溶剤再沈法)を具体的に説明すると次のとおりである。
核材を構成する環状構造を有するオレフィン系重合体20〜35重量%及び機能付与剤2〜3.5重量%をトルエン等の溶媒61.5〜78重量%に25〜30℃の温度下で添加して溶解させた後、着色剤1〜2重量%をビーズミル等で分散させた溶液(A液)を調製する。一方、外殻材を構成する環状構造を有するオレフィン系重合体1.8〜2.2重量%及び電荷調整剤0.015〜0.025重量%をメチルエチルケトン(MEK)等の溶媒約98重量%に溶解させた溶液(B液)を調製する。
【0075】
次いで、図1及び図2に記載した出口孔径が0.45mmの液流路とその周囲に空気流路を設けた構造の2個のスプレーノズルからA液を空気と混合してミスト状にしてB液を収容したバット中に高速撹拌下で噴霧して沈殿物を得る。その際、飛散したミストは排気ポンプで曳いてB液トラップへ回収する。次に濾過機にかけて溶媒と分離し、最後に高温真空乾燥機で残留溶剤を留去して造粒する。こうして、形状がほぼ球形で、平均粒径が4〜10μm、粒度分布が2〜12μm(σ=標準偏差で表したとき3σに相当)、外殻材の厚さが0.2〜0.5μm(溶剤分離法による重量測定による)のマイクロカプセルトナー粒子を得ることができる。さらに現像剤に供するために疎水性シリカを外添する。
なお、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いたトナー粒子の製造方法も上記に準じる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例並びに比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
下記のとおり、乾式1成分系及び乾式2成分系トナーを調製した。なお、実施例1はスプレー用ノズルを用いたマイクロカプセルトナーの製造例であり、実施例2はインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いたマイクロカプセルトナーの製造例である。
【0077】
[実施例1](スプレー用ノズル使用)
▲1▼樹脂原体Aの調製
環状構造を有するオレフィン系重合体としてガラス転移温度(Tg)が約65℃、重量平均分子量(Mw)が約9000であるティコナ社製「トパスTM」(商品名)92重量%、機能付与剤としてベヘニン酸アミドワックス(日本精化社製「BNT22H」)2重量%、酸化・非酸化ポリエチレンワックスの混合物微粉末(クラリアント社製「セリダスト3715F」(商品名))2重量%と青色の着色剤(クラリアント社製「Toner Cyan BG」)3重量%を二軸押出機にて混練し、樹脂原体Aを得た。
【0078】
▲2▼A液(核材)の調製
75重量部のトルエンに30℃の温度下、200rpmの撹拌速度で、25重量部の上記樹脂原体Aを徐々に添加し溶解させた。その後、超音波洗浄機にて当該溶液中の樹脂分を分散させ、その後、ミキサーで9500rpmの攪拌速度で攪拌して溶液を得た。次いで、この溶液を200meshで加圧濾過し、異物を除去した。B型粘度計によるこのA液の粘度は、17.8cP(センチポアズ)であった(ローターNo.1、60rpm、20℃)。
【0079】
▲3▼樹脂原体Bの調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が65℃、重量平均分子量(Mw)が50,000であるティコナ社製「トパスTB」の無水マレイン酸5%グラフト変成品であるTgが65℃、Mwが約50,000、酸価が約20であるティコナ社製「トパスTBG」98重量%と電荷調整剤(オリエント化成社製「E−84」(商品名))2重量%とを上記と同様の二軸押出機にて混練し、樹脂原体Bを得た。
▲4▼B液(外殻材)の調製
5重量%の上記樹脂原体Bを95重量部のメチルエチルケトンに溶解させてB液を得た。
【0080】
▲5▼造粒工程
衝突型微霧ノズル(株式会社いけうち製の「AKIJET」)を使用し、上記A液を上記B液にエアー圧0.3〜0.5MPaで噴射して滴下した。その間、B液はスターラーで300rpmの速度で攪拌を行った。
滴下時間は約3分間で漏斗に液がなくなるまで滴下し、沈殿物を得た。滴下後、そのままの状態で5分間攪拌を続けた。上面にテフロン(登録商標)製の漏斗を取り付け、その先に付けた真空ポンプによって飛散したトナー微粒子を吸引した。吸引側にはMEKを入れたトラップに入れバブリングして、細かい粒子を捕獲した。
3μmまで保持できる濾紙で、滴下を行ったB液を吸引濾過した。B液を濾過中にアルコールを少量加えながら溶液置換を行い、最後はアルコールのみで洗浄しながら濾過を行った。
この濾物を高真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナー粒子を得た。
【0081】
得られたトナー粒子の平均粒径は約7μmであり、その粒度分布は3.5〜11μmの範囲に全粒子が収斂し、粗大粒子、微細粒子の分級を要しない均一性を有するため生産性に優れていることが判明した。また、トナー粒子の形状は走査型電子顕微鏡による観察でほぼ球形を呈していることを確認した。
なお、トナー粒子の平均粒径はレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−700」)により求められた数値である。また、粒度分布は同装置により測定し、粒径3〜9μmの粒子が体積基準で90%超、個数基準で2.3〜9μmの粒子が約95%の占有率を示した。また、外殻材の厚みの測定は、1リットルのメチルエチルケトンにトナー粒子10gを秤量採取し、50℃に加温して20分間撹拌して外殻材を溶解させた後、熱濾過して溶剤を留去し残存重量を測定して算出した。
【0082】
[実施例2](インクジェット方式プリンタ用ノズル使用)
▲1▼樹脂原体Aの調製は上記実施例1と同様である。
▲2▼A液(核材)の調製
溶媒は粘度、表面張力を考慮し、エクソールD-30、或いはD-40を用いた。これらの溶媒を用いてA液(核材)溶液を15〜20%のポリマー濃度になるように溶液を調製した。調製後、超音波洗浄機にて溶液中の樹脂分を分散させ、その後ミキサーで9500rpmの速度で攪拌した。
その後、10μmの穴径の濾紙を用いて加圧濾過し、異物を除去する。その後脱泡を行い、溶け込んだ空気を除去した。
インクジェット方式プリンタ用ノズルは15μmの孔径のものが約20個あるものを用いた。
▲3▼樹脂原体Bの調製は上記実施例1と同様である。
▲4▼B液(外殻材)の調製は上記実施例1と同様である。
【0083】
▲5▼造粒工程
インクジェット方式プリンタ用ノズル(圧電素子(ピエゾ)式体積変化方式)にA液を充填させた後、スターラーで300rpmの速度で攪拌されているB液に約20分間、噴射した。
噴射後、粒子を含んだB液を、3μmまで保持できる濾紙を用いて吸引濾過を行った。濾過中、ブフナー漏斗内のB液を攪拌羽根でゆっくり攪拌しながら濾過を行った。濾過中にアルコールを少量加えながら溶液置換を行い、最後はアルコールのみで洗浄しながら濾過をおこなった。
濾物を高真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナーを得た。
粒径を電子顕微鏡にて確認したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は約7〜8μmであり、その粒度分布は3〜15μmであった。
【0084】
[比較例1](特開2000−147829号公報の「実施例1」)
▲1▼A液(核材溶液)の調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が49℃、数平均分子量(Mn)が2,000であるティコナ社製「トパスT−936」17重量%、酸変性された環状構造を有するオレフィン系重合体としてガラス転移温度(Tg)が58℃、数平均分子量(Mn)が3,700であるティコナ社製「トパスAG−07」1重量%と、機能付与剤として日本精化社製「BNT22H」0.5重量%、クラリアント社製「セリダスト3715」(商品名)0.5重量%とを、80重量%のトルエン・シクロヘキサン混合溶媒(重量比が50:50)に30℃の温度下、200rpmの撹拌速度で徐々に添加し溶解させた。その後、当該溶液にビーズ(芦沢社製のステンレスパウダー;粒径が500μm)を加え、黒色の着色剤(三菱化学社製「カーボンブラックMA−7」)1重量%を500rpmにて徐々に添加し分散させてA液を得た。
【0085】
▲2▼B液(外殻材溶液)の調製
環状構造を有するオレフィン系重合体として、ガラス転移温度(Tg)が67℃、数平均分子量(Mn)が4,600であるティコナ社製「トパスAG−09」2重量%と電荷調整剤(クラリアント社製「コピーチャージNX」(商品名))0.02重量%とを約98重量%のメチルエチルケトンに溶解させてB液を得た。
【0086】
▲3▼造粒工程
上記A液を直径が30μmのオリフィスを多数個有するノズルからB液に高速撹拌下で滴下して粒子を製造した。このとき滴下されるA液の粒径は推定20〜40μmであった。滴下量は500リットル容量の釜で製造の場合、200リットルのB液に対して100リットルのA液をオリフィス100本から毎分5リットルの割合で20分間かけて徐々に滴下して沈殿物を得た。B液の撹拌速度は2000rpmとし、A液の滴下完了後、引き続き10分間撹拌を継続した。その後、沈殿物を濾過機にかけて溶媒と分離し高温真空乾燥機で残留溶媒を留去してマイクロカプセルトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子の平均粒径は約10μmであり、その粒度分布は3〜15μmの範囲であった。また、形状は走査型電子顕微鏡により観察したところ、ほぼ球形を呈していることが確認された。
【0087】
[比較例2]
市販の空気衝撃式粉砕法(ジェット粉砕)により製造されたトナーであり、
平均粒径が7.0μm、粒径分布は1.8〜17μmであった。
【0088】
[比較例3]
市販の機械粉砕法により製造されたトナーであり、具体的にはQMS社製プリンター「マジカラー2CX」(商品名)用トナーである。
【0089】
上記の実施例1、2で得られたマイクロカプセルトナー及び比較例1〜3のトナーをリコー社製複写機「FT−5520」で実写し、以下に述べる性能試験を行い評価した。結果は、表2に示すとおりである。
(a)耐スペントトナー性
各実施例、比較例のトナーサンプルを用いて上質紙への実写試験を行ない、現像スリーブ及び感光体にトナー成分が許容限界付着量に達するまで実写し、その普通紙枚数で比較した。
【0090】
(b)転写性
感光体から被複写基材である上質紙への転写効率を10,000枚実写後の回収トナー量により測定した。
【0091】
(c)定着性
各トナーを用いて上質紙に画像を形成し、その上に未印画の同質紙を被せてラビングテスターで印画を擦り、未印画紙に強制的に転写させた。画像形成時の定着速度は150mm/秒、定着温度は150℃に設定した。摩擦試験時の条件は2ポンド(約907g)荷重で20往復とした。摩擦後マクベス式反射濃度計で、摩擦前の初期画像濃度(A)、未印画紙への転写濃度(B)、紙の非画像部濃度(C)を計り、式[(B−C)/A×100(%)]によって転写率を測定した。その転写率が60%以上を示す定着下限温度、及び定着下限圧力を測定して比較した。
【0092】
(d)画像性
階調性、細線分解能、OHP透過性により各トナーの画像性について比較評価を行なった。
▲1▼階調性:
データクエスト社製の画像見本によるグレースケールの識別ステップ数0〜16により評価した。
▲2▼細線分解能:
データクエスト社製の画像見本による細線パターン0〜600dpiにより評価した。
▲3▼OHP透過性:
富士ゼロックス社製のPPC用OHPフィルム上に画像を形成し、画像部(A)と、非画像部(B)の光線透過量を測定して、A/B×100(%)で表示した。
【0093】
(e)保存安定性
各々の処方にて調製したトナーを60℃、50%RH(相対湿度)の条件下で8時間保存した後、100メッシュで一定時間ふるい分けした時のメッシュ残を使用試料量で除して%表示した。保存時にトナー粒子が凝集すると数値は高くなる。この主な原因はトナー組成に含まれる50℃以下の低融点物質である。メッシュ残が0.5%以下の場合に○印、0.5%を超えた場合に×印を付した。
【0094】
【表2】
【0095】
【発明の効果】
本発明の、核材溶液を外殻剤溶液に噴射する際にスプレー用ノズル、またはインクジェット方式プリンタ用ノズルを用いるマイクロカプセルトナーの製造方法によれば、粒径分布が均一なマイクロカプセルトナーが得られ、得られたトナーは、保存安定性が良く、鮮明で高品位の画像をもたらし、耐スペントトナー性、転写性、定着性、非オフセット性に優れる。特に、低温の加熱方式であっても充分な定着性を有する点で優れる。
また、熱ロール定着方式の場合でも大幅な熱量削減が容易であり、複写機器の省エネルギー性に貢献することができる。さらに、外殻材にシリコーンオイルあるいはワックス等の離型効果を奏する機能付与剤を含有させることで、熱ロール表面へのオイル供給が不要となる。
なお、インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いる場合には、当該ノズルの部材が芳香族系溶剤に侵食されやすいため核材溶液の溶剤が脂肪族・脂環式炭化水素混合物であるナフテン系溶剤を用いることにより、圧力加熱定着方式の複写機器に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】衝突型微霧ノズルの全体図である。
【図2】衝突型微霧ノズル先端の噴射孔の態様を示す概略図である。
【符号の説明】
1 衝突型微霧ノズル
11 衝突型微霧ノズル先端の噴射孔
11a 噴射孔の内管
11b 噴射孔の外管
Claims (11)
- 着色剤および環状構造を有するオレフィン系共重合体を含む結着樹脂からなる核材と、結着樹脂からなり核材を被覆する外殻材とで構成されるマイクロカプセルトナー粒子から構成される静電荷像現像用トナーの製造において、核材を構成する結着樹脂の良溶媒溶液中に着色剤が分散されている核材溶液の微粒子状液滴を、外殻材を構成する結着樹脂の貧溶媒溶液中に噴射、滴下しカプセル化することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
- スプレー用ノズルを用いて、核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下する請求項1記載のトナーの製造方法。
- インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いて核材溶液の微粒子状液滴を外殻材溶液中に噴射、滴下する請求項1記載のトナーの製造方法。
- インクジェット方式プリンタ用ノズルを用いた核材溶液の微粒子状液滴の外殻材溶液への噴射の方法が、圧電素子式体積変化、多値静電荷電方式による電界制御及び熱素子式体積変化から選ばれる何れか1つの方法である請求項3記載のトナーの製造方法。
- 核材溶液の溶媒が脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物のナフテン系溶剤である請求項3又は請求項4記載のトナーの製造方法。
- 核材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が−20℃以上65℃以下の範囲で数平均分子量が100以上20,000以下の範囲である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 核材を構成する環状構造を有するオレフィン系共重合体樹脂が、アクリル酸又は無水マレイン酸で変性された共重合体である請求項6記載のトナーの製造方法。
- 外殻材を構成する結着樹脂が、ガラス転移温度が60℃以上180℃以下の範囲で、且つ数平均分子量が1,000以上100,000以下である環状構造を有するオレフィン系共重合体からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- 核材を構成する結着樹脂及び/又は外殻材を構成する結着樹脂にワックスが配合されたものを用いる請求項1〜8のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。
- ワックスが、脂肪酸アミドワックス、酸化ポリエチレンワックスおよび酸変性ポリプロピレンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項9記載のトナーの製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のトナーの製造方法によって製造されたマイクロカプセルトナー粒子の表面に、さらにシリカ微粉末が外添又は塗布されたものであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
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