JP2014195384A - 圧縮機用電動機、圧縮機及び冷凍サイクル装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 固定子に、円筒形のバックヨークとバックヨークから内側に突出した複数のティースを有する固定子鉄心と、固定子鉄心の軸方向の端面に装着された絶縁部材と、ティースに絶縁部材を介して巻き付けられた固定子巻線と、端末の一端が固定子巻線と冷間圧接にて接合され、他端を外部電源に接続するリード導線と、を備え、絶縁部材は収納部を有し、収納部は、固定子巻線とリード線との接合部を収納し、絶縁性樹脂を充填して、接合部を絶縁性樹脂で覆ったものである。
【選択図】 図10
Description
電動機は密閉容器内に固定される固定子と、固定の内側に設けられ磁気作用によって回転する回転子とから構成されている。回転軸は回転子の回転運動を圧縮機構に伝達し、伝達された回転運動を利用して圧縮機構にて冷媒を圧縮する。
固定子は、内周部に沿って複数の磁極歯が所定の間隔で放射状に設けられた固定子鉄心と、この磁極歯に絶縁部材を介して巻装される巻線とから構成されている。巻線は、電動機の外に引き出すリード線に接続され、コネクタを介して、密閉容器に設けられたガラス端子に接続される。巻線とリード線との接続は、半田付けや圧接端子にて接続される(例えば、特許文献1参照)。
また、ブラシレスDCモータを用いる場合には、モータ端子電圧がインバータ出力電圧となる回転数にてモータ誘起電圧より電流位相を進めて磁石磁束を弱める運転を行い回転数を増加させる運転範囲を拡大させる制御も使用される(例えば、特許文献3参照)。
一方、地球温暖化防止対策のためのR32冷媒は従来のR407C冷媒あるいはR410A冷媒に比べて動作温度が高く、吐出温度で10℃程度高い条件で使用される。電動機は、吐出された高温冷媒によって電動機全体が加熱されるため、従来に比べて高温条件で使用される。
また、巻線にアルミニウム線を使用した場合、銅線に比べて電気抵抗が高く、巻線温度が上昇する。電動機は、巻線によって固定子が加熱されるため、従来に比べて高温条件で使用される。
また、電動機の制御、例えば、圧縮機構の吸入の動作と吐出の動作によって生じる振動を抑制する制振制御や、高速回転領域にて回転子側が発生する逆起電力を抑制して回転数を上げる弱め界磁制御などを行うと、流す電流も大きくなり、巻線温度が上昇する。これにより、電動機は、従来に比べて高温条件で使用される。
これに対し、電動機の動作温度が高くなると、巻線やリード線を接続し固定する圧接端子では、それぞれの部品の素材の熱膨張率の違いから、巻線とリード線の固定状態が緩み、巻線、リード線、圧接端子の電気的接触が低下し、接続部での電気抵抗が増加するという課題があった。そして、接続部での電気抵抗が増加すると、電動機の効率低下を招くとともに、接続部の温度上昇を引き起こし、巻線、リード線、圧接端子の熱膨張が促進され、さらに巻線とリード線の固定状態が緩みを大きくするという課題があった。
特に、部品の素材が、銅材、黄銅材、アルミニウム材のように異なる場合、各素材の熱膨張率の違いが大きいので、緩みが大きく電気抵抗の増加を招き易いという課題があった。
また、巻線やリード線の表面には酸化膜が生成されており、半田付けやロウ付けは母材と溶融金属とのぬれ現象によるものなので、酸化膜を化学的に除去するためフラックスを使用する。しかし、フラックスが接合部に残留すると、巻線あるいはリード線を腐蝕させたり、冷媒あるいは冷凍機油との化学反応によりスラッジなどの異物が発生し、圧縮機の摺動部の焼きつきや、配管や絞り弁の詰りを招いたりする恐れがある。そのため、洗浄工程を追加する必要があるなど、製造コストの上昇と生産性の低下を招くという課題があった。特に、アルミニウム材のような酸化作用の強い素材は、その酸化膜を除去する溶接フラックスの作用も強力になるので、腐食性も高なり、洗浄の必要性も高くなるという課題があった。
絶縁部材は収納部を有し、収納部は、固定子巻線とリード線との接合部を収納し、絶縁性樹脂を充填して、接合部を絶縁性樹脂で覆ったものである。
ここでは、ロータリ圧縮機を一例に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の断面図、図2は図1のA−A’で切断した断面図すなわち圧縮機構を上面から見た断面図である。図1にて、1シリンダ型ロータリ圧縮機の一例である密閉型圧縮機の全体構成を説明する。密閉型圧縮機100は、密閉容器10内に、冷媒ガスを圧縮する圧縮機構20と、圧縮機構20を駆動する電動機30とが収納され構成されている。密閉容器10は上部容器11と下部容器12とで構成され、圧縮機構20が密閉容器10の下方に、電動機30が密閉容器10の上方に収納されている。圧縮機構20と電動機30とは、回転軸21で連結され、回転軸21は電動機30の回転運動を圧縮機構20に伝達し、圧縮機構20では伝達された回転力によって冷媒ガスが圧縮され密閉容器10内に吐出される。密閉容器10内は圧縮された高温・高圧の冷媒ガスによって満たされているとともに、密閉容器10の下方すなわち底部には圧縮機構20の潤滑のため冷凍機油が貯留されている。
回転軸21の下部にはオイルポンプが設けられており、オイルポンプは回転軸21の回転とともに密閉容器10の底部に貯留された冷凍機油を汲み上げ、圧縮機構20の各摺動部へ給油される。これにより、圧縮機構20の機械的潤滑作用が確保される。
シリンダ室23aから吐出マフラ27を介し、密閉容器10内に吐出された高圧・高温の冷媒ガスは、電動機30内を通過し、密閉容器10内を上昇し、密閉容器10の上部に設けられた吐出管102から、密閉容器10の外部へ吐出される。密閉容器10の外部には冷媒が流れる冷凍回路が構成されており、吐出された冷媒は冷凍回路を循環して、再び吸入マフラ101に戻ってくる。
図4は図1のB−B’にて電動機30を切断し上面側から見た断面図であり、電動機30は、密閉容器10の内周に固定されるほぼ円筒状の固定子41と、固定子41の内側に配設されたほぼ円柱状の回転子31を備える。
図示しない誘導電動機の場合には、回転子鉄心32に永久磁石の代わりに二次巻線が設けられており、固定子41の固定子巻線が回転子側の二次巻線に磁束を誘導して回転力を発生させ、回転子31を回転させる。
固定子鉄心42は、回転子31と同様に薄板電磁鋼板を打抜いた鉄心シートを積層して形成されており、固定子鉄心42の外径は下部容器12の中間部分の内径より大きく製作され、下部容器12の内径に焼嵌めによって固定されている。また、固定子鉄心42は、外周側の円筒形部を形成するバックヨーク45と、バックヨーク45から固定子41の径方向の中心側、すなわち回転子31の方向に等間隔に突出した複数の磁極歯すなわちティース46とで構成されている。ティース46には固定子巻線44を施すことにより、磁極を構成する。ティースとティースの間には、固定子巻線44が収容できる空間すなわちスロット47が形成されている。
U相、V相、W相の固定子巻線に、電流を流すことによって、固定子巻線が励磁され、ティース46a〜46rが磁極となる。
固定子巻線44、リード線48は銅線が使用されるが、アルミニウム線であっても構わない。リード線48に銅線、固定子巻線44にアルミニウム線を使用するように混在した使用方法でも構わない。
ティース46の回転軸21軸に対して円周方向の側面間、すなわちティースとティースの間に形成されるスロット47は、ティース46と固定子巻線44が接触しないように、絶縁部材43が覆っている。
固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着される部分は、ティース46毎に設けられるので、図7ではティース46毎に分割された絶縁部材43aを示したが、固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面を回転軸21軸を一周するように円環状につながった構成でも構わない。
固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着される部分は、固定子鉄心42のバックヨーク45の回転軸21軸方向の端面に装着されるバックヨーク45の形状に沿ってほぼ円弧状に形成された外壁部43dと、ティース46の先端部の回転軸21軸方向の端面に装着される内壁部43eと、内壁部43eが装着された部分を除く、ティース46の回転軸21軸方向の端面に装着され、その端面を覆うティース被覆部43fと、にて構成されている。すなわち、図9(a)のように絶縁部材43aが固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着された状態において、絶縁部材43aの固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着される部分は、ティース46の回転軸21軸方向の端面に装着され、その端面を覆うティース被覆部43fと、ティース被覆部43fの外周側に設けられバックヨーク45の回転軸21軸方向の端面に装着される外壁部43dと、ティース被覆部43fの内周側に設けられティース46の先端部の回転軸21軸方向の端面に装着される内壁部43eと、を有する構成であり、外壁部43dと内壁部43eの間にティース被覆部43fが設けられている。なお、外壁部43dと内壁部43eは、固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に立設して設けられ、それぞれ、回転軸21軸方向に延設されている。固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着される部分は、固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面のどちらに装着されるものであっても、同様の構成を有する。
また、外壁部43dと内壁部43eとティース被覆部43fはティース46毎に設けられている。
また、絶縁部材43aには、絶縁部材43aの固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面と接触する側には、43g、43hのような位置決め突起が複数設けられ、固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面には、この位置決め突起対応する穴が設けられている。装着の際には、この位置決め突起が固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面の穴に挿入されることにより、所定の位置に装着することができる。なお、穴と突起は嵌合する形状であっても構わない。図示しないが、絶縁部材43b、43cには、同様の構成を設け、所定の位置に装着することができるような構成となっている。
スロット47の内壁を覆う部分と、固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着される部分とは、一体化されたものであっても、別体のものであっても構わない。
なお、固定子鉄心42に装着される絶縁部材43は、固定子巻線44が巻き付けられることによって、装着した位置に固定される。
なお、収納部51は、各相に設けられており、例えば、図5、6では、U相、V相、W相毎に、接合部56u、56v、56wを有するので、収納部51u、51v、51wが設けられ、各接合部を収納する。
電動機30が発生する回転力すなわち発生トルクは、圧縮機構20の吸入、圧縮、吐出の工程に必要な負荷量に従う。すなわち、圧縮機構20の負荷量が大きくなると電動機30が発生するトルクも大きくする必要がある。電動機30の発生トルクは、固定子巻線44に流す電流によって発生する磁束と、回転子31に設けられた永久磁石や二次巻線の磁束の作用によって発生する。その発生トルクの大きさは、固定子41と回転子31が発生する磁束の大きさによって決められる。一般的には、回転子31側の磁束の大きさは搭載する永久磁石や二次巻線の設計によって設計時におおよそ決められ、固定子41の磁束の大きさを決める要素のうち固定子巻線44を巻き回す回数も設計時に決められるので、電動機30の発生トルクの大きさは、固定子巻線44に流す電流の増減によって制御する。すなわち、電動機30の発生トルクを大きくするためには固定子巻線44に流す電流を増加させ、発生トルクを小さくしたい場合には固定子巻線44に流す電流を減少させる。固定子巻線44に流す電流は、リード線48とガラス端子49を解して接続された外部電源、例えば、インバータ装置によって、制御することができ、インバータ装置によって、圧縮機構20の負荷量に合わせて電動機30に必要な発生トルクを発生させることができる。インバータ装置は、電動機30のU相巻線、V相巻線、W相巻線にそれぞれ、120°毎位相が異なる交流を印加させ、電動機30を駆動する。
この振動を抑制するために、密閉型圧縮機100に電力を供給する外部電源すなわちインバータ装置では、圧縮機構20の回転位置に応じた負荷トルクに基づき、電動機の発生トルクを圧縮機構20の回転位置に応じて必要な発生トルクに制御し、図11の破線のように、回転むらを小さくし、回転脈動を抑制することで、振動を抑制する制振制御を行うものがある。しかしながら、このような制御を行うと、圧縮機構20の平均負荷トルクが小さくても、その最大負荷トルクは3倍程度に達することもある。固定子巻線44に流す電流量は、電動機30の発生トルクに比例するので、圧縮機構20の回転位置に応じて必要な電流量に増減、制御される。よって、巻線には所定の回転位置で大電流が流れるとともに、所定の回転位置の巻線の動作温度が著しく上昇する。
しかしながら、弱め界磁制御も必要な発生トルク以外の逆起電力を低減させる電流を流すので、大電流となり、巻線の動作温度が著しく上昇する。
固定子巻線44とリード線48を半田付けやロウ付け方法もあるが、固定子巻線44とリード線48とは、半田やロウ材を介して接続されるので、接続部の電気抵抗は巻線の素材やリード線の素材より高く、電動機30の効率低下や、接続部の温度上昇が生じる。固定子巻線44やリード線48の表面には酸化膜が生成されており、半田付けやロウ付けする場合には、フラックスにて酸化膜を化学的に除去する。しかし、フラックスが接合部に残留すると、固定子巻線44あるいはリード線48を腐蝕させたり、冷媒あるいは冷凍機油との化学反応によりスラッジなどの異物が発生し、圧縮機の摺動部の焼きつきや、配管や絞り弁の詰りを招いたりする恐れがある。そのため、洗浄工程が必要となり、課題が多い。
固定子巻線44とリード線48は温度変化に対して接続状態が変わらない冷間圧接を用いる方法があるが、接続部分である接合部でバリが発生するため、バリの除去が必要である。しかしながら、バリは完全に除去することは難しく、残ったバリの先端部が他の固定子巻線の絶縁用被覆や他のリード線の絶縁用被覆を傷つけ固定子巻線の絶縁耐力を低下させたり、残ったバリの先端部の薄い部分が折れたり砕けたりして飛散しスラッジとなる。そこで、絶縁部材43に図10のような収納部51を設け、冷間圧接による接合部を収納部51に収納し絶縁樹脂にて覆うことで、密閉型圧縮機100への適用を図った。
冷間圧接とは、金属材料を加圧・変形させる事により相互の金属間で原子結合を起こした接合状態である。通常、金属の内部は、原子核を回る電子の働きにより規則正しく並んで結合された状態であるが、金属の表面に並ぶ原子は、外側につなぐ相手が無く不安定な状態(活性化状態)となるため、空気中の酸素原子と結合して安定な状態すなわち酸化被膜を形成した状態となる。通常は、金属材料どうしを接触させても、酸化被膜があるので、金属間で原子結合を起こすような接合状態は起きないが、表面の金属から酸素原子を取り除き(酸化被膜を取り除く)、金属材料の表面を活性化状態にした金属どうしを接触させると、例え異なる種類の金属であっても、原子核を回る電子の働きにより原子結合を起こし、接合される。
これに対して、圧接端子は、圧接端子を形成する金属片に導線を挟む溝を設け、溝に導線を挟み込み、金属片の弾性力を利用し押圧し続けることで、圧接端子と導線の接触を維持するものである。しかし、圧接端子と導線のそれぞれの表面には酸化被膜が形成されており、酸化被膜を除去した接合ではないので、金属材料の表面が活性化し原子結合することは無く、冷間圧接の接合状態とは異なる。また、半田付けやロウ付けのように別の金属が溶融した接合とは、接合しようとしている金属材料の間に別の金属入ることと、接合しようとしている金属材料の表面が活性化し原子結合したものではないので、冷間圧接の接合状態とは異なる。
なお、本願の冷間圧接では、導線の端面どうしを接合するため、接合面積が小さく、酸化被膜を除去して冷間圧接をする方法をとらず、酸化被膜を残したまま導線の端面どうしを端面が変形するまで連続して押し込むことにより、端面にある酸化被膜を含めた全ての異物を導線の外周部より外側に押し出す方法をとる。したがって、押し出された異物がバリとなる。
例えば、図12のように第1導線52の端末と第2導線53の端末をそれぞれの端面52aと端面53aにて接合する場合で説明すると、先ず、図12(a)のように第1導線52と第2導線53を専用治具54でクランプし、第1導線52の端末部の端面52aと第2導線53の端末部の端面53aを突合せ、第1導線52を端面52aの方向に、第2導線53を端面53aの方向にそれぞれ押し付け、押圧する。端面52aと端面53aは図12(b)のように変形を開始し、端面52aと端面53aを構成する金属は第1導線52、第2導線53の半径方向かつ外周面より外側に押し出される。これにより、端面52a、53a上にある異物も第1導線52、第2導線53の外周面より外側に追い出される。さらに、第1導線52、第2導線53を押圧し、押し込んでいくことにより、第1導線52と第2導線53は相互の金属間で原子結合を起し接合される。同時に、図12(c)のように第1導線52、第2導線53の外周面より外側に追い出された金属と異物は、バリ55となる。
冷間圧接による接合を行った導線は、接合部の前後すなわち両側で金属種が変わっても、巻線とリード線と仕様が変わっても、一本の連続した導線として使用することができるので、取り扱いも容易である。
また、この発明の方法では、接合する導線の端面上の異物はバリ55として除去されるので、酸化被膜を除去してもしなくても構わないし、一般的な冷間圧接と同様に導線の酸化被膜を除去した後に行っても構わない。
図10は、絶縁部材43が固定子鉄心42の回転軸21軸方向の端面に装着された状態で、絶縁部材43aの外壁部43dに固定子鉄心42の円周方向の溝を設け、その溝を収納部51としたものである。その収納部51は、外壁部43dの回転軸21軸方向の中央部から固定子鉄心42と接する側とは反対方向すなわち上方に向かって形成され、上方と固定子鉄心42の円周方向とに、それぞれ開放されている。溝は、円周方向の中央部の収納室51aとその両側の溝部51bから構成されている。円周方向の両側の溝部51bは、第1導線52あるいは第2導線53を係止するため、第1導線52あるいは第2導線53の線径とほぼ同じ幅に形成され、円周方向の中央部の収納室51aは、バリ55が溝の内壁に接触しないように、溝の幅を溝部51bの幅より広げた形状に形成されている。収納室51aは、溝部51bより、固定子鉄心42側にも広げられている。第1導線52および第2導線53は、冷間圧接され他接合部56が収納部51の収納室51aに位置するように、収納部51の開口部から、第1導線52および第2導線53を、溝部51bに挿入し固定子鉄心42に向かって下方に押し込む。そして、第1導線52および第2導線53を溝部51bに係止する。これにより、接合部56が、収納室51aに収納される。
なお、図10(a)では、収納室51aは円筒形状に広げているが、図10(d)のように直方体形状でも構わない。
このとき、接合部56のバリ55は除去した状態でも、除去しない状態でも、構わない。バリ55を除去しない状態で収納部51に収納すると、バリ55を除去する工程が省略でき生産効率が良くできる。
充填する樹脂は、熱硬化性あるいは紫外線硬化性あるいはその両方の特性を有するアクリル系あるいはエポキシ系の絶縁性樹脂を使用する。収納部51に樹脂が充填された後、加熱工程あるいは紫外線照射工程あるいはその両方にて充填した樹脂を硬化させる。例えば、熱硬化性樹脂の場合は、固定子41の組立時の乾燥工程にて、樹脂の硬化が可能であり、新たな工程の追加は少ない。紫外線硬化性樹脂の場合、1分程度の紫外線照射にて硬化することができ、工程時間にロスは少ない。熱硬化性と紫外線硬化性の両方の特性を兼ね揃えた樹脂であれば、収納室51aに樹脂が充填した後、紫外線照射によって硬化させるが、紫外線が当たらず、完全硬化しなかった場合、すなわち、樹脂がゲル状の状態にて留まっても、後の乾燥工程にて、硬化が可能であり、工程の信頼性も高い。樹脂の粘度は、収納部51に充填した後、硬化させるまで収納部51の開口部などから流出しない0.5Pa・s以上5.0Pa・s以下の粘度が好ましく、樹脂は硬化したとき、収納室51aの内壁に固着することが望ましい。
以上のように収納室51aに接合部56を収納した状態で絶縁性樹脂を充填し硬化させることにより、接合部56とバリ55が絶縁性樹脂に覆われ収納室51a内に固定される。これにより、振動などで、第1導線52、第2導線53、および接合部56が収納部51から外れることは無く、バリ55が砕けても、絶縁性樹脂の中から外へは飛び出せないので、バリ55の破片が密閉容器10中に飛散することも無くなる。
なお、圧接端子を使用した場合、圧接端子と導線を絶縁性樹脂で埋没させ固定することは行わない。なぜなら、圧接端子と導線を絶縁性樹脂で埋没させると、絶縁性樹脂が硬化したとき圧接端子の弾性力が抑制され圧接端子と導線との押圧力が減少し電気抵抗が増加したり、圧接端子と導線の接触部に絶縁性樹脂が侵入して電気的接触状態を阻害したりする。したがって、圧接端子と導線の接触はそれらの押圧力によるため、温度上昇や振動などにより、接合が緩みやすい。これに対して、冷間圧接の場合、導線を構成する金属どうしが原子結合にて接合しているので、絶縁性樹脂に埋没させ覆っても、導線を構成する金属どうしの原子結合力が減少したり、接合部分に絶縁性樹脂が侵入して電気的接触状態を阻害したりすることは無く、接合部分を絶縁樹脂で覆う構成をとることができる。これにより、より信頼性の高い接合とその接合部の固定ができる構成とすることができる。
また、冷媒のR32化や、巻線のアルミニウム線化、制振制御や弱め界磁制御によって運転範囲拡大のような、電動機の温度上昇上限を上昇させ実現を図る場合、例えば、従来、絶縁種がE種・120℃で実現できていたものをF種・155℃にとすることで実現しても、固定子巻線とリード線の接合部の課題は発生せず、実現可能である。
また、接合部に形成されるバリは、絶縁性樹脂で覆われているので、接合部のバリの先端部が他の固定子巻線やリード線に接触し、固定子巻線の絶縁用被覆やリード線の絶縁用被覆を損傷させ、固定子巻線とリード線の絶縁耐力を低下させることを防止できる。
また、固定子巻線とリード線が異種の金属どうし、例えば、アルミニウム線と銅線であっても圧着端子や半田付け、ロウ付けを使用することなく、冷間圧接にて接合ができるので、フラックスの残渣による腐蝕やスラッジなどの異物の発生の心配は無い。
また、固定子巻線とリード線は冷間圧接にて接合されることにより、接合部の電気特性は母材と差異が生じず、他の接続方法と比べて接合部での電気的損失が小さくできるので、電動機の効率改善にも貢献できる。すなわち、部品の素材の熱膨張率の違いから、巻線とリード線の固定状態が緩み、接合部の電気抵抗が増加したり、半田やロウ材を介して接続することで接合部の電気抵抗が増加したりすることは無い。接合部の電気抵抗の増加が抑制されていることから、接合部の温度上昇も低く抑制され、接合部を収納する収納部は高い耐熱性を考慮する必要なく構成できる。
また、バリは除去せず、収納部に収納する方法でも構わず、バリを除去する工程を省略でき、生産効率も向上できる。
また、冷凍サイクル装置の動作上、吐出温度が10℃程度高い条件で使用し、電動機の温度上昇が促されても、冷間圧接にて接合されているので、接合部の接合状態が変化することはない。したがって、接合部の電気抵抗が増加し電動機の効率を低下させることなく、接合部の信頼性を向上させた電動機を得ることができる。さらに、高温かつ流速の速い冷媒ガスが電動機を通過しても、冷間圧接の接合部は絶縁部材の収納部に収納され絶縁性樹脂にて覆われているので、冷媒ガスによってバリが砕かれ、バリの破片が密閉容器内に飛散することはない。
また、密閉型圧縮機はシングルロータリ形式であっても構わず、振動が大きくても、冷間圧接の接合部は絶縁部材の収納部に収納されているので、振動によりバリの先端部が固定子巻線やリード線に接触し、固定子巻線の絶縁用被覆やリード線の絶縁用被覆を損傷させ、固定子巻線とリード線の絶縁耐力を低下させることはない。さらに、シングルロータリ形式にて用いられる制振制御を実施し、電動機の温度上昇が促されても、冷間圧接にて接合されているので、接合部の接合状態が変化することはない。したがって、接合部の電気抵抗が増加し電動機の効率を低下させることなく、接合部の信頼性を向上させた電動機を得ることができる。
また、密閉型圧縮機において、ブラシレスDCモータを用い、上限回転数を上昇させるため、弱め界磁制御などの制御を行い、電動機の温度上昇が促されても、冷間圧接にて接合されているので、接合部の接合状態が変化することはない。したがって、接合部の電気抵抗が増加し電動機の効率を低下させることなく、接合部の信頼性を向上させた電動機を得ることができる。
実施の形態1では、リード線と固定子巻線の接合に冷間圧接を用いた場合に使用する構成として説明したが、リード線と固定子巻線の接合に半田付けあるいはロウ付けを用いた場合であっても、この構成は使用可能である。接合前に塗布したフラックスは、長時間、残留するとリード線と固定子巻線を腐蝕させるので、洗浄する必要があるが、洗浄後、絶縁部材に設けた収納部にその接合部を収納し絶縁性樹脂で覆うことで、他の導線や固定子鉄心などと接触して短絡させたり、他の導線を損傷させ絶縁耐力を低下させたりすることを防ぐことができる。
また、冷媒のR32化や、巻線のアルミニウム線化、制振制御や弱め界磁制御によって運転範囲拡大のような、電動機の温度上昇上限を上昇させ実現を図る場合、例えば、従来、絶縁種がE種・120℃で実現できていたものをF種・155℃に変更することで実現しても、固定子巻線とリード線の接合部の課題は発生せず、実現可能である。
また、接合部に形成されるバリは、絶縁性樹脂で覆われているので、接合部のバリの先端部が他の固定子巻線やリード線に接触し、固定子巻線の絶縁用被覆やリード線の絶縁用被覆を損傷させ、固定子巻線とリード線の絶縁耐力を低下させることを防止できる。
実施の形態1では、絶縁部材が固定子鉄心の回転軸方向の端面に装着された状態で、絶縁部材の外壁部に固定子鉄心の円周方向に溝を設け、その溝を収納部とし、リード線と固定子巻線の接合部を収納部に収納した例を示した。しかしながら、固定子巻線が固定子鉄心の外周側すなわちバックヨーク側に崩れないように支えているので、外壁部の径方向の厚さを薄くし溝状の収納部を設けると、強度が弱くなる可能性がある。強度を維持し収納部を設けるためには、外壁部に溝状の収納部を設けるのではなく、外壁部に箱形あるいは円筒形の形状の収納部を設けることが望ましく、その例を説明する。
なお、外壁部43dは隣接する外壁部43dどうしと繋がっていて、円環状に形成されていても構わない。
収納部51は、図10(d)のように上方すなわち外壁部43dが固定子鉄心と接する側と反対方向に開放された円筒形の形状としたものでも構わない。接合部56のバリ55が突出した方向のみ、収納部51の内壁とバリ55の先端との間に接触を防止する距離が取れれば良いので、収納室51aを円筒形状とし無駄なスペースを無くして収納室51aを小さくできる。
第1導線52および第2導線53を導線案内溝57および導線案内溝58に挿入、押し込み、係止し、接合部56を収納室51aへの収納し、絶縁性樹脂を充填、硬化させ、収納室51a内に固着し、接合部56とバリ55は収納室51a内に固定する方法、収納部51が絶縁部材43と同じ樹脂にて形成されてことなどは、図10(a)〜(c)と同じである。
第1導線52および第2導線53は、その接合部56が間隙51dに位置するように、導線案内溝57に第1導線52を、導線案内溝58に第2導線53を挿入し、第1導線52および第2導線53を、固定子鉄心42側に向かって下方に押し込み、第1導線52および第2導線53を導線案内溝57および導線案内溝58に係止する。これによって、接合部56は間隙51dに配置すなわち収容される。第1導線52、53を導線案内溝57、58に係止した後、間隙51dに接合部56を収容した状態で、接合部56を覆うように間隙51dに絶縁性樹脂を充填する。その後、樹脂を硬化させ、間隙51d内に固着させる。これによって、接合部56とバリ55は間隙51d内に固定される。
絶縁部材の外壁部に直方体形状あるいは円筒形状の収納部を設けることにより、外壁部の強度を低下させること無く、収納部を設けることができ、電動機を小型化のため、絶縁部材の薄肉化を行っても、外壁部の強度を落とすことなく、実現できる。
収納室51aを円筒形状とすることによって、バリに対する収納室51aの無駄なスペースを無くし、収納部自体を小さくできる。
また、収納部として回転軸21軸の径方向に第1の側壁51cと第2の側壁51dを設けるとともに、第1の側壁51cと第2の側壁51dとの間に間隙51eを形成して、間隙51eに接合部56を収めるようにすることで、直方体形状あるいは円筒形状の収納部に比べて、収納部を簡素な構成で実現でき、安価にすることができる。
また、冷媒のR32化や、巻線のアルミニウム線化、制振制御や弱め界磁制御によって運転範囲拡大のような、電動機の温度上昇上限を上昇させ実現を図る場合、例えば、従来、絶縁種がE種・120℃で実現できていたものをF種・155℃に変更することで実現しても、固定子巻線とリード線の接合部の課題は発生せず、実現可能である。
また、接合部に形成されるバリは、絶縁性樹脂で覆われているので、接合部のバリの先端部が他の固定子巻線やリード線に接触し、固定子巻線の絶縁用被覆やリード線の絶縁用被覆を損傷させ、固定子巻線とリード線の絶縁耐力を低下させることを防止できる。
実施の形態2と同様に、固定子巻線とリード線を半田付けあるいはロウ付けにて接続し、絶縁部材に設けた収納部に半田付けあるいはロウ付けされた接合部を収納し絶縁性樹脂で覆ったので、他の導線や固定子鉄心などと接触して短絡させたり、他の導線を損傷させ絶縁耐力を低下させたりすることを防止した効率が高く信頼性も高い圧縮機用電動機、圧縮機及び冷凍サイクル装置を得ることができる。
したがって、冷媒のR32化や、巻線のアルミニウム線化、制振制御や弱め界磁制御によって運転範囲拡大のような、電動機の温度上昇上限を上昇させ実現を図る場合、例えば、従来、絶縁種がE種・120℃で実現できていたものをF種・155℃に変更することで実現しても、固定子巻線とリード線の接合部の課題は発生せず、実現可能である。
Claims (16)
- 円筒形の固定子と前記固定子の内側に配設された回転子を有する圧縮機用電動機において、
前記固定子は、円筒形のバックヨークと前記バックヨークから内側に突出した複数のティースを有する固定子鉄心と、前記固定子鉄心の軸方向の端面に装着された絶縁部材と、
前記ティースに前記絶縁部材を介して巻き付けられた固定子巻線と、端末の一端が前記固定子巻線と接合され、他端を外部電源に接続するリード線と、を備え、
前記絶縁部材は収納部を有し、前記収納部は、前記固定子巻線と前記リード線との接合部を収納し、絶縁性樹脂を充填して、前記接合部を前記絶縁性樹脂で覆うことを特徴とする圧縮機用電動機。 - 前記固定子巻線と前記リード線とは冷間圧接にて接合されたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機用電動機。
- 前記絶縁部材は、前記バックヨークの軸方向の端面に前記固定子巻線を保持する外壁部を有し、前記外壁部に前記収納部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮機用電動機。
- 前記収納部は、前記固定子鉄心の円周方向に設けられた前記外壁部の溝によって構成され、前記接合部を前記溝に収納することを特徴とする請求項3に記載の圧縮機用電動機。
- 前記収納部は、箱形形状あるいは円筒形形状に形成され前記外壁部に設けられるとともに、内部に収納室を有し、前記接合部を前記収納室に収納することを特徴とする請求項3に記載の圧縮機用電動機。
- 前記収納部は、前記外壁に前記固定子鉄心の径方向に設けられた第1の側壁と、前記第1の側壁との間に間隙を有するように前記外壁に設けられた第2の側壁と、によって構成され、前記接合部を前記間隙に収容することを特徴とする請求項3に記載の圧縮機用電動機。
- 前記収納部は、前記固定子鉄心の軸方向に開放されたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 前記絶縁性樹脂は、熱硬化性あるいは紫外線硬化性のうち少なくとも一方の硬化特性を有し、前記収納室に前記樹脂を充填した後、加熱あるいは紫外線照射のうち少なくとも一方の作用によって硬化させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 前記絶縁性樹脂は0.5Pa・s以上5.0Pa・s以下の粘度を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 前記巻線は、アルミニウム線にて形成されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 前記リード線は、アルミニウム線にて形成されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 前記回転子は永久磁石を備え、弱め界磁制御にて駆動されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の圧縮機用電動機。
- 請求項1乃至12のいずれかに記載の圧縮機用電動機と、前記圧縮機用電動機に駆動され冷媒を圧縮する圧縮機構と、を備えたことを特徴とする圧縮機。
- 前記圧縮機構の回転位置に応じた負荷トルクに基づき、前記電動機の発生トルクを前記圧縮機構の回転位置に応じて必要な発生トルクに制御することを特徴とする請求項13に記載の圧縮機。
- 前記冷媒に、R32冷媒を用いたことを特徴とする請求項13または14に記載の圧縮機。
- 請求項13乃至15のいずれかに記載の圧縮機、室外側熱交換器、減圧器および室内側熱交換器を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
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