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JP2014192042A - レート特性に優れた電解液およびそれを用いた二次電池 - Google Patents

レート特性に優れた電解液およびそれを用いた二次電池 Download PDF

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JP2014192042A JP2013067483A JP2013067483A JP2014192042A JP 2014192042 A JP2014192042 A JP 2014192042A JP 2013067483 A JP2013067483 A JP 2013067483A JP 2013067483 A JP2013067483 A JP 2013067483A JP 2014192042 A JP2014192042 A JP 2014192042A
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寿弘 竹川
Masayoshi Watanabe
正義 渡邉
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Abstract

【課題】ケイ素系材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池において、高出力条件下における容量特性の低下を最小限に抑制し、電池の高レート特性を向上させうる手段を提供する。
【解決手段】正極集電体の表面にリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面にケイ素を含む負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するセパレータとを有する発電要素を備えたリチウムイオン二次電池において、電解液を溶質としてのリチウム塩が溶媒としてのメチルテトラグライムに溶解されてなるものとし、かつ、当該電解液の粘度を110mPa・s以下とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、レート特性に優れた電解液およびそれを用いた二次電池に関する。
近年、環境保護運動の高まりを背景として、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、および燃料電池車(FCV)の開発が進められている。これらのモータ駆動用電源としては繰り返し充放電可能な二次電池が適しており、特に高容量、高出力が期待できるリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が注目を集めている。
リチウムイオン二次電池は、集電体表面に形成された正極活物質(たとえば、LiCoO、LiMn、LiNiO等)を含む正極活物質層を有する。また、非水電解質二次電池は、集電体表面に形成された負極活物質(たとえば、金属リチウム、コークスおよび天然・人造黒鉛等の炭素質材料、ケイ素やスズ等の金属およびその酸化物材料等)を含む負極活物質層を有する。
リチウムイオン二次電池においては、一般的に、上述した正極活物質層と負極活物質層との間の短絡を防止するための隔壁としてセパレータが設けられる。そして、このようにして構成された発電要素を外装体の内部に封入し、電解液を注液して封止することにより電池が完成する。
ここで、電解液としては、従来、エチレンカーボネートやジエチルカーボネート等の有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられている。このような電解液を用いたリチウムイオン二次電池では、例えば200℃以上の高温に曝されると電池特性が悪化するという問題があった。特許文献1では、このような問題を解決すべく、溶媒としてテトラグライムを用い、溶質としてスルホン基を有するリチウム塩を主体として用いて電解液を構成する技術が提案されている。特許文献1の開示によれば、かような構成とすることで、電池に耐高温特性が付与され、250℃程度の高温に曝された場合でも電池特性の悪化を招くことなく、リフロー法を用いた実装が可能な有機電解液電池を提供できる、とされている。
ところで、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、従来、各種の黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。また、炭素材料以外の負極活物質として、ケイ素を含む材料(以下、「ケイ素系材料」とも称する)の研究が進められている。ケイ素を含む材料を負極活物質として用いると、炭素材料と比較してもきわめて大きい容量を達成できる(例えば、ケイ素単体では4000mAh/g以上)ことから、ケイ素系材料は将来の有望な負極活物質材料として期待されている。
しかしながら、ケイ素系材料からなる負極活物質が充電時にリチウムイオンを吸蔵すると、約400%もの体積膨張を起こす。このため、充放電サイクルの進行に対応して膨張収縮を繰り返すことで、ケイ素系材料の粒子が崩壊したり、負極活物質層における導電ネットワークが切断されたりすることにより、電池容量が低下するという問題を抱えている。
特開2000−173627号公報
本発明者らの検討によれば、ケイ素系材料を負極活物質として用いた場合には、上述した特許文献1に記載の技術(電解液)を用いたとしても十分な電池性能が発揮されない場合があることが判明した。具体的には、例えば電気自動車などに搭載される電池に要求される非常に高い出力条件下では、十分な容量を取り出すことができない(つまり、高レート特性が十分ではない)場合があることが判明したのである。
そこで本発明は、ケイ素系材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池において、高出力条件下における容量特性の低下を最小限に抑制し、電池の高レート特性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の構造を有する溶媒にリチウム塩を溶解させて電解液を構成し、かつ、電解液の粘度を制御することで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、正極集電体の表面にリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面にケイ素を含む負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するセパレータとを有する発電要素を備えたリチウムイオン二次電池が提供される。そして、当該電解液は溶質としてのリチウム塩が溶媒としてのメチルテトラグライムに溶解されてなるものであり、当該電解液の粘度は110mPa・s以下である点に特徴がある。
本発明によれば、電解液の溶媒としてのメチルテトラグライムとの錯形成により包接されたリチウムイオン(Li)が、充放電の際に容易に脱離することができる。その結果、リチウムイオン二次電池においてケイ素系材料を負極活物質として用いた場合であっても、高出力条件下における容量特性の低下が抑制され、電池の高レート特性を向上させることが可能となる。
電気デバイスの一実施形態である、扁平型(積層型)の双極型でない非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 本発明を実施した評価用セルより得られたレート特性を示したものである。
本発明の一形態によれば、正極集電体の表面にリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、負極集電体の表面にケイ素を含む負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、電解液を保持するセパレータとを有する発電要素を備えたリチウムイオン二次電池に用いられるリチウムイオン二次電池用電解液が提供される。そして、本形態に係る電解液は、溶質としてのリチウム塩が溶媒としてのメチルテトラグライムに溶解されてなる構成を有する。以下、本形態に係る電解液の構成成分についてまず説明し、その後、当該電解液の用途であるリチウムイオン二次電池に係る実施形態について説明する。
[メチルテトラグライム]
メチルテトラグライム(CH−(OCHCH−OCH)は、電解液の溶媒であり、以下の化学構造を有する:
本形態においては、上記化学構造を有するメチルテトラグライムを電解液の溶媒として用い、電解液の粘度が所定の値となるように制御することが重要である。
[電解液の粘度]
電解液の粘度は、110mPa・s以下であることが必要であり、好ましくは3〜100mPa・sであり、より好ましくは5〜85mPa・sである。電解液の粘度が110mPa・sを超えると、ケイ素系材料を負極活物質として用いた場合に電池の高レート特性が低下してしまい、高出力条件下において十分な容量を取り出すことができなくなってしまう。これに対し、電解液の粘度が110mPa・s以下であれば、リチウムイオン二次電池の負極活物質としてケイ素系材料を用いた場合であっても、高出力条件下における容量特性の低下が抑制され、電池の高レート特性を向上させることが可能となる。そのメカニズムは完全には明らかではないが、溶媒としてのメチルテトラグライムとの錯形成により包接されたリチウムイオン(Li)が充放電の際に容易に脱離することができることによるものと考えられる。なお、電解液の粘度の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
[リチウム塩]
リチウム塩は、電解液の溶質である。リチウム塩の具体的な構成について特に制限はなく、溶媒であるメチルテトラグライムに溶解でき、溶解後の溶液(電解液)の粘度が上述した範囲(110mPa・s以下)となるものであればよい。その具体例としては、例えば、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(LiN(CFSO )、LiCl、LiBr、Li、LiBF 、LiPF 、LiCFSO 、LiClO 、LiCFCO 、LiAsF 、LiSbF 、LiAlCl 、およびLiN(CFCFSO などが挙げられるが、これに制限されない。また、本願の出願後に開発されたリチウム塩であっても、特許請求の範囲の規定を満たす限り、本願の技術的範囲に包含されうる。なかでも、特に高レート特性の改善効果が高いという観点からは、リチウムイオン(Li)とN(CFSO ([TFSA])との塩(つまり、Li((CFSO))がリチウム塩として用いられることが好ましい。なお、リチウム塩は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
電解液におけるリチウムイオン(Li)の含有量(濃度)については、電解液の耐熱性、耐酸化性維持の観点からメチルテトラグライム1モルに対して0.7〜1.25モルであることが好ましく、0.8〜1.2モルであることがより好ましい。メチルテトラグライムとリチウムイオンとの量比が等モルに近づけば近づくほど、錯体の形成が進み、電解液の耐熱性、耐酸化性は向上する。
また、電池性能の発揮の律速段階が電解液のリチウムイオン伝導度となるのを避けるという観点からは、電解液のリチウムイオン伝導性は高いほど好ましい。具体的には、電解液のリチウムイオン伝導率は1mS/cm以上であることが好ましく、1.2mS/cm以上であることがより好ましく、1.5mS/cm以上であることが特に好ましい。なお、電解液のリチウムイオン伝導率の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
続いて、上述した電解液が用いられる、本形態に係るリチウムイオン二次電池の具体的な実施形態について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、扁平型(積層型)の双極型ではないリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、セパレータ17と、負極とを積層した構成を有している。なお、セパレータ17を含めた電池外装材の内部には、上述した電解液が注液されている。正極は、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された構造を有する。負極は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層15とこれに隣接する負極活物質層13とが、セパレータ17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体12および負極集電体11は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板(タブ)27および負極集電板(タブ)25がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板27および負極集電板25はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体12および負極集電体11に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
なお、図1では、扁平型(積層型)の双極型ではない積層型電池を示したが、集電体の一方の面に電気的に結合した正極活物質層と、集電体の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層と、を有する双極型電極を含む双極型電池であってもよい。この場合、一の集電体が正極集電体および負極集電体を兼ねることとなる。
以下、各部材について、さらに詳細に説明する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、ケイ素系材料(ケイ素を含み、リチウムイオンを吸蔵放出することにより負極活物質として機能しうる材料)が必須に用いられる。
負極活物質として用いられるケイ素系材料としては特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、ケイ素(Si)単体のほか、SiO、SiOなどのケイ素含有酸化物;リチウム、炭素、アルミニウム、スズ、亜鉛、ニッケル、銅、チタン、バナジウムおよびマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有するケイ素化合物などが挙げられる。負極活物質は1種類であってもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、負極活物質としてのケイ素には、所定の元素(ドーピング元素)がドーピングされていることが好ましい。本来、ケイ素の導電性は低いものの、上記所定のドーピング元素をケイ素にドープして負極活物質として用いることで、ケイ素が半導体の性質を示すようになる。すなわち、これらの材料の低い導電性が改善され、負極活物質としてより一層有効に機能することが可能となる。当該ドーピング元素は、好ましくは、周期律表における13族または15族の元素からなる群から選択される1種または2種以上の元素である。具体的には、周期律表における13族の元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)が挙げられる。また、周期律表における15族の元素としては、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)が挙げられる。なかでも、電池特性に優れた電池を提供するという観点からは、B、P、Al、Ga、In、N、P、As、Sb、またはBiが好ましく、より好ましくはB、P、Al、Ga、またはInであり、特に好ましくはB、PまたはAlである。これらのドーピング元素は1種のみが単独でドープされてもよいし、2種以上が組み合わせてドープされてもよい。この際、ケイ素へのドーピング元素のドープ量について特に制限はないが、負極活物質層における導電性の向上という観点からは、好ましくは1×10−20atom/cm以上であり、より好ましくは1×10−18atom/cm以上であり、特に好ましくは1×10−15atom/cm以上である。
より好ましい実施形態において、負極活物質は、ケイ素(Si)の単体を主成分として含む。なお、本明細書において、「主成分」とは、負極活物質層に含まれる負極活物質の総質量に占めるケイ素(Si)の単体の質量が50質量%以上であることを意味する。より大きい理論容量を達成可能であるという観点からは、好ましくは、当該質量は70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
なお、場合によっては、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、ケイ素系材料以外の金属材料(例えば、スズ(Sn)など)などのケイ素系材料以外の負極活物質が併用されてもよい。
負極活物質層の積層方向の厚さは特に制限されない。ただし、電池特性に優れた電池を提供するという観点からは、好ましくは50nm〜100μmであり、より好ましくは100nm〜100μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。なお、負極活物質層はケイ素系材料からなる薄膜でありうる。かような薄膜は、負極活物質としてのケイ素系材料(例えば、ケイ素単体)を気相成膜プロセスにより集電体に蒸着させることにより形成されうる。かような気相成膜プロセスの具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の手法が適宜採用されうる。一例としては、真空蒸着法、スパッタリング法(例えば、RFスパッタリング法)、化学気相蒸着(CVD)法などが例示されうる。かような手法によれば、簡便な手法により均一な厚さを有する負極活物質層が形成されうる。
あるいは、負極活物質層は、従来の一般的な活物質層と同様の形状であってもよい。すなわち、負極活物質層は、ケイ素系材料を含む負極活物質と、必要により添加されるバインダーや導電助剤等の添加剤とが混合されてなる合剤層の形態であってもよい。これにより、従来の一般的な活物質層作成プロセスに類似の手法により活物質層を作成することが可能である。かような形態において、粒子状活物質である負極活物質粒子のサイズについて特に制限はない。一例を挙げると、電池特性に優れた電池を提供するという観点からは、粒子状の負極活物質の平均粒子径は、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは1nm〜10μmであり、さらに好ましくは1〜500nmである。なお、かような形態の負極活物質層は、従来公知の合剤層の形状の負極活物質層と同様の液相プロセスにより作製されうる。例えば、まず、負極活物質層を構成する各成分(粒子状活物質ならびに、必要であればバインダーおよび導電助剤)を適量の溶媒(N−メチル−2−ピロリドンなど)に分散させて、スラリーを調整する。次いで、当該スラリーを集電体に塗布し、乾燥させることで、負極活物質層が作製されうる。
負極活物質層がバインダーを含む場合には、水系バインダーを含むことが好ましい。水系バインダーは、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。
水系バインダーとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダーとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
水系バインダーとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
上記水系バインダーは、結着性の観点から、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダーを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダーはスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダーとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロースとを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.3〜0.7であることが好ましい。
負極活物質層がバインダーを含む場合、負極活物質層に用いられるバインダーのうち、水系バインダーの含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。水系バインダー以外のバインダーとしては、下記正極活物質層に用いられるバインダーが挙げられる。
負極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層の全量100質量%に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜4質量%であり、最も好ましくは2.5〜3.5質量%である。水系バインダーは結着力が高いことから、有機溶媒系バインダーと比較して少量の添加で活物質層を形成できる。
負極活物質層は、必要に応じて、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)は、上述した電解液が負極活物質層へと浸透することで、負極活物質層中に含まれることになる。したがって、負極活物質層に含まれうるリチウム塩の具体的な形態は、上述した電解質を構成するリチウム塩と同様である。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
負極活物質層および後述の正極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
負極活物質層の密度は、1.4〜1.6g/cmであることが好ましい。負極活物質層の密度が1.6g/cm以下であれば、電池の充放電時に発生したガスが発電要素の内部から十分に抜けることができ、長期サイクル特性がより向上しうる。また、負極活物質層の密度が1.4g/cm以上であれば、活物質の連通性が確保され、電子伝導性が十分に維持される結果、電池性能がより向上しうる。負極活物質層の密度は、1.42〜1.53g/cmであることが好ましい。なお、負極活物質層の密度は、単位体積あたりの活物質層質量を表す。具体的には、電池から負極活物質層を取り出し、電解液中などに存在する溶媒等を除去後、電極体積を長辺、短辺、高さから求め、活物質層の重量を測定後、重量を体積で除することによって求めることができる。
また、負極活物質層のセパレータ側表面の表面中心線平均粗さ(Ra)は0.5〜1.0μmであることが好ましい。負極活物質層の中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上であれば、長期サイクル特性がより向上しうる。これは、表面粗さが0.5μm以上であれば、発電要素内に発生したガスが系外へ排出されやすいためであると考えられる。また、負極活物質層の中心線平均粗さ(Ra)が1.0μm以下であれば、電池要素内の電子伝導性が十分に確保され、電池特性がより向上しうる。
ここで、中心線平均粗さRaとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にx軸を、縦倍率の方向にy軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記の数式1によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものである(JIS−B0601−1994)。
Raの値は、例えばJIS−B0601−1994等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式あるいは非接触式表面粗さ計などを用いて測定される。装置のメーカーや型式には何ら制限は無い。本発明における検討では、粗さ解析装置(SLOAN社製、型番:Dektak3030)を用い、JIS−B0601に定められている方法に準拠してRaを求めた。接触法(ダイヤモンド針等による触針式)、非接触法(レーザー光等による非接触検出)のどちらでも測定可能であるが、本発明における検討では、接触法により測定した。
また、比較的簡単に計測できることから、本発明に規定する表面粗さRaは、製造過程で集電体上に活物質層が形成された段階で測定する。ただし、電池完成後であっても測定可能であり、製造段階とほぼ同じ結果であることから、電池完成後の表面粗さが、上記Raの範囲を満たすものであればよい。また、負極活物質層の表面粗さは、負極活物質層のセパレータ側のものである。
負極の表面粗さは、負極活物質層に含まれる活物質の形状、粒子径、活物質の配合量等を考慮して、例えば、活物質層形成時のプレス圧を調整するなどして、上記範囲となるように調整することができる。活物質の形状は、その種類や製造方法等によって取り得る形状が異なり、また、粉砕等により形状を制御することができ、例えば、球状(粉末状)、板状、針状、柱状、角状などが挙げられる。したがって、活物質層に用いられる形状を考慮して、表面粗さを調整するために、種々の形状の活物質を組み合わせてもよい。
[正極活物質層]
正極活物質層は活物質を含み、必要に応じて、導電助剤、バインダー、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくは、Li(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Coの原子比を表し、dは、Mnの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.49≦b≦0.51、0.29≦c≦0.31、0.19≦d≦0.21であることが、容量と耐久性とのバランスに優れる点で好ましい。
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質層に含まれる活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜20μmである。
正極活物質層に用いられるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
正極活物質層中に含まれるバインダー量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
バインダー以外のその他の添加剤については、上記負極活物質層の欄と同様のものを用いることができる。
[セパレータ(電解質層)]
セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。
ここで、発電要素からのガスの放出性をより向上させるためには、負極活物質層を抜けてセパレータに達したガスの放出性も考慮することが好ましい。かような観点から、セパレータの透気度および空孔率を適切な範囲とすることがより好ましい。
具体的には、セパレータの透気度(ガーレ値)は200(秒/100cc)以下であることが好ましい。セパレータの透気度が200(秒/100cc)以下であることによって発生するガスの抜けが向上し、サイクル後の容量維持率が良好な電池となり、また、セパレータとしての機能である短絡防止や機械的物性も十分なものとなる。透気度の下限は特に限定されるものではないが、通常300(秒/100cc)以上である。セパレータの透気度は、JIS P8117(2009)の測定法による値である。
また、セパレータの空孔率は40〜65%であることが好ましい。セパレータの空孔率が40〜65%であることによって、発生するガスの放出性が向上し、長期サイクル特性がより良好な電池となり、また、セパレータとしての機能である短絡防止や機械的物性も十分なものとなる。なお、空孔率は、セパレータの原料である樹脂の密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値を採用する。例えば、原料の樹脂の密度をρ、セパレータのかさ密度をρ’とすると、空孔率=100×(1−ρ’/ρ)で表される。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
ここで、セパレータは、樹脂多孔質基体の少なくとも一方の面に耐熱絶縁層が積層されたセパレータでありうる。耐熱絶縁層は、無機粒子およびバインダーを含むセラミック層である。耐熱絶縁層を有することによって、温度上昇の際に増大するセパレータの内部応力が緩和されるため熱収縮抑制効果が得られうる。また、耐熱絶縁層を有することによって、耐熱絶縁層付セパレータの機械的強度が向上し、セパレータの破膜が起こりにくい。さらに、熱収縮抑制効果および機械的強度の高さから、電気デバイスの製造工程でセパレータがカールしにくくなる。
このように、耐熱絶縁層としてのセラミック層が積層されてなる構造を有するセパレータにおいては、当該セラミック層が、発電要素の内部で発生したガスを前記発電要素の外部へと放出させるガス放出手段としても機能する。
また、上述したように、本発明では、上述した電解液がセパレータ中に保持される。セパレータに保持される上述の電解液は、液体電解質の形態であってもよいし、ゲルポリマー電解質の形態であってもよい。ここで、ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の電解液が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
ゲル電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
[集電体]
集電体を構成する材料に特に制限はないが、好適には金属が用いられる。
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅、その他合金等などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅が好ましい。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板27と負極集電板25とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
[電池外装体]
電池外装体29は、その内部に発電要素を封入する部材であり、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースなどが用いられうる。該ラミネートフィルムとしては、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
電池外装体29の内容積は発電要素21を封入できるように、発電要素21の容積よりも大きくなるように構成されていることが好ましい。ここで外装体の内容積とは、外装体で封止した後の真空引きを行う前の外装体内の容積を指す。また、発電要素の容積とは、発電要素が空間的に占める部分の容積であり、発電要素内の空孔部を含む。外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きいことで、ガスが発生した際にガスを溜めることができる空間が存在する。これにより、発電要素からのガスの放出性が向上し、発生したガスが電池挙動に影響することが少なく、電池特性が向上する。
自動車用途などにおいては、昨今、大型化された電池が求められている。そして、高レート特性の低下を抑えるという本願発明の効果は、充放電サイクルの進行による膨張収縮に起因したケイ素系材料粒子の崩壊や負極活物質層における導電ネットワークの切断が起きやすい大面積電池の場合に、より効果的に発現しうる。したがって、本発明において、電池構造体が大型であることが本発明の効果がより発揮されるという意味で好ましい。具体的には、負極活物質層が長方形状であり、当該長方形の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、負極活物質層の短辺の長さとは、各電極の中で最も長さが短い辺を指す。電池構造体の短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常250mm以下である。
したがって、本発明において、発電要素を外装体で覆った電池構造体が大型であることが本発明の効果がより発揮されるという意味で好ましい。具体的には、負極活物質層が長方形状であり、当該長方形の短辺の長さが100mm以上であることが好ましい。かような大型の電池は、車両用途に用いることができる。ここで、負極活物質層の短辺の長さとは、各電極の中で最も長さが短い辺を指す。電池構造体の短辺の長さの上限は特に限定されるものではないが、通常250mm以下である。
また、電極の物理的な大きさの観点とは異なる、大型化電池の観点として、電池面積や電池容量の関係から電池の大型化を規定することもできる。例えば、扁平積層型ラミネート電池の場合には、定格容量に対する電池面積(電池外装体まで含めた電池の投影面積の最大値)の比の値が5cm/Ah以上であり、かつ、定格容量が3Ah以上である電池においては、上述したケイ素系材料の膨張収縮に起因したケイ素系材料粒子の崩壊や負極活物質層における導電ネットワークの切断が生じやすい。このため、ケイ素系材料を負極活物質として用いた場合の電池性能(特に、高レート特性)の低下という課題がよりいっそう顕在化しやすい。したがって、本形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述したような大型化された電池であることが、本願発明の作用効果の発現によるメリットがより大きいという点で、好ましい。さらに、矩形状の電極のアスペクト比は1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。なお、電極のアスペクト比は矩形状の正極活物質層の縦横比として定義される。アスペクト比をかような範囲とすることで、充放電時に発生したガスを面方向に均一に排出することが可能となり、当該ガスの発生に起因する種々の問題の発生を防止できるという利点がある。
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
[車両]
上記電気デバイスは、出力特性に優れ、また長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記電気デバイスは、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
以下、実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに何ら限定されるわけではない。
≪電池の作製≫
(実施例1)
1.電解液の調製
溶媒であるメチルテトラグライムに、溶質であるリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(LiN(CFSO )を溶解させて、本実施例の電解液を調製した。この際、溶質の添加量は、電解液におけるリチウムイオン(Li)の含有量が、メチルテトラグライム1モルに対して1モルとなるように調節した。このようにして得られた電解液の粘度は81mPa・sであり、リチウムイオン伝導率は1.6mS/cmであった。なお、本明細書において、電解液の粘度およびリチウムイオン伝導率は以下の手法により測定した。
[電解液の粘度の測定]
25℃における電解液の粘度は、動粘度測定器SVM3000(Anton paar)を用いて測定した。
[電解液のリチウムイオン伝導率の測定]
電解液のリチウムイオン伝導率は、交流インピーダンス法により測定して評価した。インピーダンスアナライザとしては、Princeton Applied Research社製 EG8/PAR、 VMPs Multi Potentiostatを評価装置として用いた。測定条件は、測定周波数範囲500kHz〜1Hz、印加電圧10mVとした。
2.負極の作製
まず、負極集電体として、ニッケル箔(厚み25μm)を準備した。次いで、このニッケル箔の表面に、RFスパッタ法により負極活物質層であるアモルファスケイ素薄膜(厚み100nm)を形成して、負極を作製した。
3.評価用コインセルの作製
上記で作製した負極と、対極であるリチウム箔とで、セパレータ(厚み25μmのポリプロピレン多孔質膜)を2枚挟持し、セパレータに上記で作製した電解液を注入した。これら積層体を市販のHSセル(宝泉社製)内に収納して、ねじ止めにて封止することで評価用セルを完成させた。なお、一連の作業はすべて露点−60℃以下となるアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で行なった。
(比較例1)
電解液を調製する際のリチウム塩として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドに代えて、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiN(SOF) )を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、電解液を調製し、評価用セルを作製した。ここで、本比較例で得られた電解液の粘度は111mPa・sであり、リチウムイオン伝導率は1.4mS/cmであった。
(比較例2)
電解液を調製する際の溶媒として、メチルテトラグライムに代えてメチルトリグライム((CH−(OCHCH−OCH))を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、電解液を調製し、評価用セルを作製した。ここで、本比較例で得られた電解液の粘度は169mPa・sであり、リチウムイオン伝導率は1.4mS/cmであった。
≪電池の評価≫
上述した実施例1および比較例1〜2で作製した評価用セルについて、レート特性の評価を行なった。具体的には、所定の電流となるように一定の電流を通電させる、いわゆる定電流条件で評価用セルを極間電位差が5mVとなるまで充電し、次いで、定電流で2Vのカットオフ電圧まで放電させる際の電流密度を10、20、29、49、98、147、196μA/cmと変化させて、その際の放電容量を測定した。結果を図2に示す。図2に示す結果から、比較例1〜2の評価用セルでは87μA/cmの電流密度ですでに放電容量の急激な低下が観察され、十分なレート特性が達成できなかったことがわかる。これに対し、実施例1の評価用セルでは、251μA/cmの電流密度でも十分な放電容量を取り出すことに成功しており、高レート特性にきわめて優れたリチウムイオン電池が得られたことがわかる。なお、これら3つの評価用セルを作製する際の電解液は、いずれも高いリチウムイオン伝導率を有するものであったが、それにもかかわらずこのような高レート特性の差異が現れたのは、電解液の粘度の違いによってシリコン活物質と電解質との間の反応が影響を受けているものと推察される。事実、実施例1で10サイクル後の両極間のインピーダンスを計測したところ100Ωであったのに対し、比較例2の評価セルでは150Ωであった。このことから、比較例2ではSiからなる負極活物質と電解液との間では電極へのリチウムイオンの移動抵抗が高いことが示された。メカニズムは不明であるが、電解質の粘性が電極反応に何らかの形で関与していることが推測される。
10 リチウムイオン二次電池(積層型電池)、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層、
15 正極活物質層、
17 セパレータ、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 電池外装材。

Claims (7)

  1. 正極集電体の表面にリチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む正極活物質層が形成されてなる正極と、
    負極集電体の表面にケイ素を含む負極活物質を含む負極活物質層が形成されてなる負極と、
    電解液を保持するセパレータと、
    を有する発電要素を備え、
    前記電解液は溶質としてのリチウム塩が溶媒としてのメチルテトラグライムに溶解されてなるものであり、前記電解液の粘度は110mPa・s以下である、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記電解液のリチウムイオン伝導率が1mS/cm以上である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記リチウム塩が、LiN(CFSO ;TFSA)、LiCl、LiBr、Li、LiBF 、LiPF 、LiCFSO 、LiClO 、LiCFCO 、LiAsF 、LiSbF 、LiAlCl 、およびLiN(CFCFSO 、からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記リチウム塩がLi((CFSO)である、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用電解液。
  5. 前記負極活物質が、ケイ素単体;ケイ素含有酸化物;リチウム、炭素、アルミニウム、スズ、亜鉛、ニッケル、銅、チタン、バナジウムおよびマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有するケイ素化合物からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 電解液におけるリチウムイオン(Li)の含有量が、前記メチルテトラグライム1モルに対して0.7〜1.25モルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記正極活物質がリチウム−遷移金属複合酸化物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
JP2013067483A 2013-03-27 2013-03-27 レート特性に優れた電解液およびそれを用いた二次電池 Pending JP2014192042A (ja)

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