本開示の態様及び特徴は、これらが本開示の実施形態に関する下記の詳細な説明を添付の図面に関連して考察する際の参照によってより良く理解されるにつれて認識されるであろう。
以下の詳細な説明は本来単に例示的なものであって、本開示または本出願及び本開示の用途を限定するためのものではない。さらに、これまでに述べた技術分野、背景技術またはこれ以後の詳細な説明において提示される如何なる明示的または暗示的理論によっても拘束される意図は存在しない。
図1は、本開示の一実施形態による植込み可能な刺激システムを示す略図である。本システムは、閉塞性睡眠時無呼吸、低呼吸及び/または中枢性睡眠時無呼吸等の睡眠呼吸障害行動を治療するように適合化されている。図1に示されているように、本開示の一実施形態による植込み可能な刺激システム10の1つの例は、患者20の胸部内に外科的に位置合わせされることが可能である植込み可能なパルス発生器(IPG)55と、IPG55の接続ポート内に位置合わせされるコネクタ(不図示)を介してIPG55と電気結合される刺激リード線52とを含む。リード線52は神経カフ電極または電極システム65を含み、かつ、後に詳述するように、電極システム65が神経53の刺激を有効化すべく患者20の舌下神経53等の所望される神経に近接して位置合わせされるように、IPG55から延びる。実施形態によっては、後にさらに詳述するように、一方のリード線52が身体左側の神経に対して結合されるために植え込まれ、かつもう一方のリード線52が身体の第2の側面の神経に対して結合されるために植え込まれるように、2つのリード線52が装備されることは理解されるであろう。例えばリード線52が利用されてもよい例示的な植込み可能刺激システムは、Christophersonらの米国特許第6,572,543号に記述されている。上記特許は、本参照によりその全体が開示に含まれる。この例示的なシステムでは、IPG55へセンサリード線57が電気結合され、呼吸努力を検出するために患者20内にセンサまたはトランスデューサ60が位置合わせされ得るようにIPG55から延びる。
実施形態によっては、システム10は、呼吸機能に関連づけられるさらなる生理学的データを取得するために追加のセンサも備える。例えば、システム10は、経胸的生体インピーダンス信号、心電図(ECG)信号または他の呼吸関連信号を測定するために胸部を中心として分散される様々なセンサ(例えば、図1におけるセンサ67、68、69)を含んでもよい。
実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動を治療するための検出及び刺激システムは、睡眠呼吸障害と診断された患者に治療上の解決手法を提供する完全植込型のシステムである。他の実施形態において、本システムの1つまたは複数のコンポーネントは患者の体内に植え込まれない。このような非植込型コンポーネントの幾つかの非限定的な例には、外部センサ(呼吸、インピーダンス、他)、外部処理ユニットまたは外部電源が含まれる。当然ながら、さらに、本システムの植え込まれる部分(単数または複数)が、本システムの植え込まれる部分から本システムの外部部分へ、またはその反対へのデータ信号及び/または制御信号の伝送を可能にする通信経路を提供することは理解される。通信経路は、高周波(RF)テレメトリリンクまたは他の無線通信プロトコルを含む。
部分的に植込み可能であるか完全に植込み可能であるかに関わらず、本システムは、吸息中に舌下神経(または舌突出または他の筋肉収縮/弛緩による気道開存性への影響に関連する他の神経)を刺激し、これにより睡眠中の上気道内の閉塞または閉鎖を防止するように設計される。ある実施形態では、本植込み可能システムは、植込み可能なパルス発生器(IPG)と、末梢神経カフ刺激リード線と、圧力検出リード線とを備える。
ある実施形態では、センサ60は、後に図2に関連してさらに述べるように、胸腔内配置または胸腔外配置(肋間配置を含むがこれに限定されない)を介して胸膜との圧力連続性を有する部位に外科的に植え込まれる呼吸圧力センサである。センサ60を配置するためのロケーションは、少なくとも部分的に遅延の関数として、即ち呼吸の起点からセンサ位置へ伝搬する呼吸努力の圧力波形特性に関連づけられる伝搬時間の関数として選ばれる。選ばれるロケーションは、ある特定のロケーションにおいて使用可能な検出信号を達成するために必要なフィルタリングの量、即ち、例えば心臓波形活動を除去するために必要なフィルタリング等の所望される特性に関連づけられる波形以外の波形を除去するために必要なフィルタリングの量の関数でもある。センサ60の位置合わせは、IPG55が呼吸努力波形情報を受信しかつこの情報を用いて治療のデリバリを制御することを有効化する。
図2に略示されているように、本開示の一実施形態において、植込み可能な刺激システム10は検出システム70を備え、この検出システム70は、呼吸圧力センサ71をセンサ71が肺80の間近に位置合わせされるように胸腔内空間90内部に配置すべく構成されるリード線75を含む。この配置において、センサ71は、胸膜における呼吸圧力に対して直接に結合された状態になる。別の態様では、胸腔内空間90は、壁側胸膜78と肺胸膜79との間の腔を含む。最後に、図2が、例示を目的として、隣接する解剖学的構造間の十分なスペーシングを示していることは理解されるであろう。
この一実施形態において、リード線75は、その遠位端でセンサ71を支持するリード線本体72と、リード線本体72のより近位な部分に位置決めされるアンカ74(翼状の固定部材等)とを含む。アンカ74は、センサ71の植込みに続いてセンサ71がセンサの膜部分を肺80沿いに面するように方向づけるべく位置合わせされたままであることを確実にする。リード線本体72は、IPG55(図1)がセンサ71からセンサ波形を受信するように、肋間空間91を介して胸腔内空間90内へ(参照数字88で示されるようなセンサ71及びリード線本体72のポジションで)位置合わせされ、これにより、IPG55(図1)は、本開示の実施形態による治療処置処方に従って吸息と同時に電気刺激を送ることが可能となる。
図2によってさらに示されているように、リード線75は、リード線本体72がセンサ71を概して90の番号表示で示されているような胸腔内へ配置すべく肋間空間(例えば、2本の肋骨86間)を介して延びるように挿入される。ある実施形態において、リード線75は、密封ハウジング内に嵌め込まれかつ呼吸に関連づけられる胸腔内圧を監視できる圧電結晶を組み入れる。他の実施形態では、呼吸圧力の監視は、(胸腔内圧の監視に加えて、またはその代わりに)呼吸圧力を指示する他の生理学的データの監視を含む。センサ71はIPG55(図1)によって電力を供給され、かつIPG55は、リード線75からの呼吸信号を受け入れかつ処理するための内部回路も含む。
ある実施形態において、本システムは、センサ71が胸腔内に配置される場所から遠くに(数センチメートル程度の距離で)位置決めされるリードアンカ74を含む。センサ及びリード線上の組織の移動は、望ましくない信号成分を誘導するだけでなく、移行/移動に繋がる可能性があり、よって、リード線本体72をリード線75が胸腔へ進入する場所の近くへ固定することは当然とされる。この点を考慮して、アンカ74は、植込みの間に肋骨内面の筋肉または筋膜等の皮下結合組織へ縫合され、かつアンカ74はリード線本体72へ定着または固定され、滑動は許容されない。
他の実施形態では、呼吸センサ71は胸腔内空間の外部に置かれる。さらに他の実施形態では、呼吸センサは、気流センサ、圧力センサ、容積センサ、加速度計、音響センサ、温度センサ、機械的歪センサまたは努力センサのうちの任意のものであってもよい。
ある実施形態において、呼吸圧力の検出は、2009年5月15日が出願日である「植込み可能な刺激システムにおける呼吸圧力の検出方法と装置」と題するPCT特許出願第PCT/US2009/044207号に開示されている呼吸検出方法及びシステムに略類似する方法で実装される。上記出願は、本参照により開示に含まれる。
図3Aは、本開示の一実施形態による植込み可能なパルス発生器(IPG)100を略示するブロック図である。ある実施形態において、IPG100は、図1のIPG55と少なくとも略同一の特徴及び属性を備える。図3Aに示されているように、IPG100は、検出モジュール102と、刺激モジュール104と、治療マネージャ106と、電力管理モジュール108と、メモリ111を有するコントローラ110と、通信モジュール112とを含む。
メモリモジュール111を含む、但しこれに限定されない本開示のコンポーネント及び方法は、マイクロプロセッサ、プログラマブル論理または状態マシンを介するハードウェアにおいて、ファームウェアにおいて、または所定のデバイス内のソフトウェアにおいて実装されてもよい。メモリモジュール111を含む、但しこれに限定されない本開示のコンポーネント及び方法は、1つまたは複数のコンピュータ読取り可能媒体上のソフトウェア内に存在してもよい。本明細書において、コンピュータ読取り可能媒体という用語は、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、フラッシュメモリ、読取り専用メモリ(ROM)及びランダム・アクセス・メモリ(RAM)等の揮発性または不揮発性である任意の種類のメモリを包含して定義される。
パラメータ(parameter:要素)のアレイを介して、IPG100の検出モジュール102は、患者が眠っているか覚醒しているか等の患者の呼吸状態及び他の呼吸関連のサインなどを決定するために、様々な生理学的センサからの信号を受信しかつ追跡する。ある実施形態において、生理学的センサのうちの少なくとも幾つかはIPGのハウジング内またはハウジング上に含まれ、かつ生理学的センサのうちの少なくとも幾つかはIPGの外部に存在する。何れの場合も、生理学的センサがIPG100の外部であれ内部であれ、これらのセンサにより生成される信号は、検出モジュール102によって受信されかつ処理される。実施形態によっては、検出モジュール102はIPG100内に含まれるが、他の実施形態では、検出モジュール102のこれらの外部部分とIPG100との間の通信が保全されることを条件として検出モジュール102の少なくとも一部がIPG100のハウジングの外部に存在する可能性もあることは理解されるであろう。
例えば、ある実施形態において、検出モジュール102は身体パラメータ130を備え、身体パラメータ130は位置検出コンポーネント132または動作検出コンポーネント134の少なくとも一方を含む。ある実施形態において、動作検出コンポーネント134は、歩行、身体動作、発話などを示す(加速度計または圧電トランスデューサを介する)「振動性の」活動の検出を追跡する。別の実施形態では、位置検出コンポーネント132は、加速度計または他のトランスデューサを介する身体位置または姿勢の検出を追跡する。ある実施形態において、位置検出コンポーネントは、患者が略水平位置で横になっているか、または略垂直位置で立って(または座して)いるかを区別する。実施形態によっては、患者が略水平位置にあるとき、位置検出コンポーネントは仰臥位(即ち、仰向けに横たわっている)と側臥位(即ち、横腹を下にして横たわっている)とを区別する。実施形態によっては、身体パラメータ130は、位置検出コンポーネント132及び動作検出コンポーネント134の双方からの信号を利用する。
検出モジュール102を介して追跡する他のパラメータには、次のパラメータ、即ちECGパラメータ140、時間パラメータ142、生体インピーダンスパラメータ144、圧力パラメータ150、血液酸素パラメータ154及び/または呼吸数パラメータ159のうちの1つまたはそれ以上が含まれる。ある態様において、ECGパラメータ140は患者の心電図記録情報を追跡し、かつ実施形態によっては、心拍数が心拍パラメータ158を介する別個のコンポーネントによって追跡される。ある態様において、圧力パラメータ150は呼吸圧力コンポーネント152を含み、呼吸圧力コンポーネント152は、胸腔圧力コンポーネント及び/または患者の呼吸を示す他の圧力コンポーネントを含む。ある態様において、時間パラメータ142は経過時間を追跡するが、他の態様において、時間パラメータ142は経過時間に加えて、または経過時間ではなく時刻を追跡する。具体的には、治療マネージャ106と協働して、時間パラメータ142は、後に少なくとも図4A及び図8に関連して述べるように、時刻に従って治療処方を起動または停止するために使用されることが可能である。
実施形態によっては、生体インピーダンスパラメータ144は、患者の生体インピーダンスの測定値を追跡する。ある実施形態において、生体インピーダンスパラメータ144は、図1のセンサ67、68及び69に関連して記述されているもの、及び後に少なくとも図5−図7Bに関連してさらに記述されるもの等の経胸的生体インピーダンスを追跡する経胸的生体インピーダンスパラメータを含む。別の実施形態では、生体インピーダンスパラメータ144は、後に少なくとも図5に関連して記述されるように、互いから離隔されて体の反対側に配置される1対の神経電極間で測定される生体インピーダンスを追跡する両側神経電極(例えば、カフ電極)を含む。
また、システム10(図1)が、検出モジュール102の個々のパラメータの各々(例えば、血液酸素化パラメータ154)へデータを提供するために患者の体内へ植え込まれる、または患者の体に付着される類似する生理学的センサ(例えば、LED型組織潅流酸素飽和度)を含む、またはこれに接続されることも理解される。
実施形態によっては、検出モジュール102は、舌下神経または筋収縮による気道開存性への影響に関連する他の神経等の刺激されるべき神経の活動に関する生理学的データを表す(represent)標的神経パラメータ156も含む。
実施形態によっては、検出モジュール102は、音響的に検出されかつ呼吸努力を示す呼吸気流または心臓活動からの生理学的データを表す音響検出パラメータ157も含む。
実施形態によっては、検出モジュール102の生理学的検出パラメータ140−144、150−154、157−159のうちの1つまたはそれ以上から取得されたデータが進行中の一貫性のない呼吸パターンを明らかにすると、この情報は、治療が行われるべきでない潜在的な覚醒状態を示すために用いられる。ある態様において、潜在的覚醒状態の示度は、治療の中止または治療開始の延期の決定に至る前に、身体パラメータ130を介して取得される情報によって確証される。図3Aをさらに参照すると、IPG100の治療マネージャ106は、本開示の原理に従って、睡眠時無呼吸の治療の開始及び/または調整を自動的に制御するように構成される。ある実施形態において、治療マネージャ106は、IPG100が第1の状態202、第2の状態204及び第3の状態206を含む3つの動作状態のうちの1つにおいて動作する多層的システム200を含む。この多層的システム200については、図4Aに関連して後にさらに詳述する。
実施形態によっては、治療マネージャ106は、多層的システム200(図4A)と協調して動作する場合もしない場合もある自動滴定モジュール170も含む。自動滴定モジュール170は、電力消費及び/または患者の不快感を最小限に抑えながら効力を最大化するために(刺激の振幅、頻度及び/またはパルス幅、並びに刺激のデューティサイクル及び/または両側または片側刺激の印加、他を含む、但しこれらに限定されない)様々な治療パラメータ168により実装される治療のレベルを自動的に増分または減分すべくIPG100に命令するように構成される。ある態様において、効力は、無呼吸/低呼吸イベントの回数、及び/または各無呼吸/低呼吸イベントの持続時間または強度(例えば、血液酸素の低下)も組み込んだ無呼吸の重症度スコア(例えば、図9における重症度スコアパラメータ759)に従って測定される。自動滴定モジュール170の適用については、後に少なくとも図8A、図8B及び図9に関連してさらに詳述する。
この点を考慮して、実施形態によっては、自動滴定モジュール170は、評価機能172と、増分機能174と、減分機能176と、しきい値機能178とを備える。評価機能172は、睡眠呼吸障害行動の重症度を治療的神経刺激を与える前後双方で評価するように構成される。しきい値機能178は、治療的神経刺激による治療を必要とする睡眠呼吸障害の重症度しきい値の設定を有効化する。睡眠呼吸障害行動の重症度がかなりの部分でしきい値を下回れば、自動滴定モジュールは、減分機能176を介して神経刺激の強度を自動的に減分する(測定ステップを1段階またはそれ以上下げる)。しかしながら、睡眠呼吸障害行動の重症度がしきい値に相当するか、これを超過すれば、自動滴定モジュールは、増分機能174を介して神経刺激の強度を自動的に増分する(測定ステップを1段階またはそれ以上上げる)。このようにして、自動滴定モジュール170は、睡眠呼吸障害を治療するに足る刺激が与えられるように、但しまた不必要な刺激は回避されるように、治療的神経刺激の強度を持続的に評価しかつ調整する。自動滴定モジュール170のさらなる適用については、後に少なくとも図8A、図8B及び図9に関連してさらに詳述する。
実施形態によっては、治療マネージャ106は、多層的システム200(図4A)と協調して動作する場合もしない場合もある検出モニタ180も含む。一般的に言えば、検出モニタ180は、睡眠呼吸障害が発生しているかどうかを検出するために検出モジュール102を介して患者の生理学的状態を観察し、かつこのような観察を基礎として、本開示の一般原理に従って治療的神経刺激を開始し、調整しかつ終了する。ある実施形態において、検出モニタ180は、ベースライン機能182と、無呼吸機能184と、過呼吸機能186と、持続時間機能188と、強度機能190とを含む。ベースライン機能182は、睡眠呼吸障害がない場合の患者のベースライン呼吸パターンを追跡しかつ決定する。無呼吸機能184は、患者のベースライン呼吸パターンに対して、閉塞性睡眠時無呼吸、低呼吸及び/または中枢性睡眠時無呼吸等の睡眠呼吸障害を検出する。過呼吸機能186は、睡眠呼吸障害行動に続く過呼吸期間に関連づけられるパラメータを基礎として睡眠呼吸障害行動を識別することを支援するように構成される。持続時間機能188は、睡眠呼吸障害イベントの持続時間及び/または次に続く過呼吸の持続時間を追跡し、強度機能190は、睡眠呼吸障害イベントの強度または重症度及び/または次に続く過呼吸の強度を追跡する。実施形態によっては、検出モニタ180の機能182−189は、少なくとも図3A−図7Cに関連して記述されるシステム及び方法を介して実装される。
ある実施形態において、IPG100のコントローラ110は、少なくとも検出モジュール102、治療マネージャ106、電力モジュール108、刺激モジュール104及び通信モジュール112のオペレーションを含むIPG100のオペレーションを命令する制御信号を発生するように構成される1つまたは複数の処理ユニット及び関連メモリ111を備える。従って、コントローラ110は、メモリ111内の命令に従って個々のモジュール/マネージャ102−112の各々と通信状態にあり、かつこれらの各々に対して協調された制御を提供する。ある態様では、通信モジュール112のプログラミングパラメータ198を介して受信されるコマンド、及び/または検出モジュール102を介して収集される生理学的データに応答してコントローラ110関連のメモリ111内に含まれる命令に応答して、またはこれらを基礎として、コントローラ110は、気道開存性を回復しかつこれにより無呼吸イベントを減らす、またはなくすために舌下神経等の標的神経の刺激を選択的に制御するように刺激モジュール104のオペレーションを命令する制御信号を発生する。ある態様において、メモリ111は、行われた治療のログ、及び/または無呼吸/低呼吸イベントの間に取得されたデータ及びこれらのイベントの間の治療の効力を表すデータを含む検出された生理学的データを格納する。
また、様々なモジュール及びマネージャ102−112のコンポーネント及びパラメータの少なくとも幾つかは、図3Aに関連して示されかつ記述されているものとは異なるモジュール及びマネージャ102−112間のパターンで位置決めされ得ることも理解される。
本出願の意図に沿って、「処理ユニット」という用語は、メモリに含まれる命令シーケンスを実行する現時点で開発されている、または将来開発される処理ユニットを意味するものとする。命令シーケンスの実行は、処理ユニットに制御信号の発生等のステップを実行させる。命令は、処理ユニットによる実行のために、読取り専用メモリ(ROM)、大容量記憶デバイスまたはコントローラ110に関連づけられるメモリ111によって表されるような他の何らかの永続記憶装置からランダム・アクセス・メモリ(RAM)にロードされてもよい。他の実施形態では、記述されている機能を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせてハードワイヤード回路が使用されてもよい。例えば、コントローラ110は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)の一部として具現されてもよい。別段の指定のない限り、コントローラは、ハードウェア回路とソフトウェアとの任意の特有の組合せに限定されず、また処理ユニットにより実行される命令の任意の具体的なソースにも限定されない。
一般的に言えば、IPG100の刺激モジュール104は、医師によりプログラムされる治療処方に従って、かつ/または治療マネージャ106と協働して神経刺激信号を発生しかつ印加するように構成される。ある実施形態において、刺激モジュール104は、舌下神経等の標的神経のための治療パラメータを追跡しかつ適用するように構成される標的神経モジュール190を含む。実施形態によっては、標的神経モジュール190は、多サイトパラメータ194A、両側性パラメータ194B及び/または束パラメータ194Cを備える。多サイトパラメータ194Aは、舌突出筋及び/または舌牽引筋を選択的に活性化させるために、1つの神経(例えば、舌下神経)に沿って間を置いて隔てられた複数のサイトの(2つ以上の異なるカフ電極を用いる)刺激を有効化しかつ追跡する。従って、多サイトパラメータ194Aは、気道開存性の回復に関連づけられる複数の筋肉群を刺激するために、標的神経(異なる幹または枝を含む)に沿った複数のサイトのターゲティングを有効化する。
実施形態によっては、両側性パラメータ194Bは、身体の反対側に離して置かれた1対の刺激カフ電極を介する身体の異なる側面(例えば、左側と右側)の単一タイプの神経の刺激を有効化しかつ追跡する。ある態様において、この配置は、任意の1つの神経へのデューティサイクルを50%減らすために身体の左側と右側の刺激を交互することによって特定の筋肉(例えば、舌牽引筋または舌突出筋)の交互的活性化を有効化し、これにより、神経疲労の可能性が減じられる。別の態様において、両側性パラメータ194Bは、患者が無呼吸を防止するためにより積極的な治療を要する睡眠周期内であれば、同時的両側刺激(即ち、所定の呼吸相と同期して両神経を刺激すること)への切り替えを有効化する。
ある実施形態において、束パラメータ194Cは、刺激されている具体的な神経の1つまたは複数の異なる束の選択的な刺激及び追跡を有効化する。この手配は、神経の異なる束の全域で刺激が発生することを保証し、これにより潜在的に神経の全体疲労が減少される。さらに、神経刺激信号が神経支配のある筋内に完全収縮を生じさせることなくトーンを発生するように構成される幾つかの実施形態では、より完全な束領域の刺激は、筋肉を通じてより一様なトーンが生じる結果をもたらすことができる。
一般的に言えば、IPG100の通信モジュール112は、IPG100との間の当業者に精通された方法での無線通信を促進するように構成される。従って、通信モジュール112は、IPG100の活動(検出された生理学的データ、刺激履歴、検出された無呼吸及び/または低呼吸の回数、他を含む)を報告するように構成される報告モジュール196と、患者用プログラマ、医師用プログラマ、他等の外部ソースからIPG100の初期または以後のプログラミングを受信するように構成されるプログラミングモジュール198とを含む。
さらに、実施形態によっては、周期的間隔で(例えば、毎日、毎週)報告が患者へ伝達される。従って、図3Bは、IPG100と、医師用プログラマ239と、患者用プログラマ230とを含む通信システム220を略示している。第1に、これらの周期的間隔で、IPG100の記録装置228(即ち、メモリ111の一部)に治療の履歴が格納される。この履歴は、この同じ周期的間隔で、または他の周期的間隔で患者用プログラマへ患者により容易に識別できる報告フォーマットで伝達される。
再度、図3Bを参照すると、実施形態によっては、患者用プログラマ230はオン/オフ機能231、増加/低減機能250、音声警報機能232及び/または視覚的報告機能234を含む。オン/オフ機能231は、患者に、IPG100を介して与えられる治療の自動機能を無効にするためにIPG100の電力状態を制御する任意選択を提供する。同様に、増加/低減機能250は、患者が、さらなる治療が有用であると感じる場合により高いレベルの治療に対する選好を、または不快を経験している場合により低いレベルの治療に対する選好を要求することを可能にする。患者用プログラマ230の増加/低減機能250は、図9に関連して記述される、そうでなければ自動的に自己調整する治療において患者が強いて刺激を減少する、または刺激の上限を設定することを許容する自動滴定モジュール750のオーバーライド機能459を活性化する。当然ながら、医師も、治療を調整または無効にするために患者に与えられる制御の量を限定することができる。
さらに図3Bを参照すると、音声警報機能232は、患者用プログラマ230またはIPG100に対する注意が裏付けられると患者に音声警報を提供する。さらに、視覚的報告機能234は、治療の履歴に関する情報及び/またはIPG100の状態に関する情報を、色灯機能235、言語機能236、記号機能237、数字機能238及び時間機能239のうちの1つまたはそれ以上を介して伝達するように構成される。この情報により、患者は、常にシステムの効力、及び/またはシステムが正しく機能しているかどうかを通知される。例えば、色灯機能235における緑色灯は、デバイスが正しく機能していることを示してもよく、一方で、赤色光は機能不全を示してもよい。また、患者用プログラマ230は、言語及び/または数字を介して、刺激が与えられた時間帯及び無呼吸イベントが検出された回数等の前週または前日の治療に関する詳細も伝達する。他の詳細の中でもとりわけ、この情報は患者に、患者が効き目のある治療を受けていることを確認させ、かつ/または治療が奏功していなければ患者に医師への訪問を予定するように通知することができる。
別の態様において、IPG100の記録装置228に格納される治療の履歴は、医師が毎日または週毎の治療プロファイル全体を点検するようにテレメトリ・インターネット・リンクを介して医師へ送られる。或いは、医師はこの情報を、診察室に居ながら医師用プログラマ239を使用して患者から直にダウンロードまたは入手することもできる。この情報は、患者用プログラマ230の増加/低減機能250を介する変更の試み等、患者が治療の変更を要求した任意の事例の状況を含む。点検に際して、この情報(例えば、AHIデータ)は医師により、所望される治療処方を直接プログラムしかつ/または治療の自動的な自己調整方法をガイドするパラメータの少なくとも幾つかを画定することによってIPGを必要に応じてさらに積極的に、または消極的にすべくさらにプログラムするために使用される。
さらに、実施形態によっては、患者用プログラマ230は上限機能252と下限機能254とを含む。ある態様において、上限機能252は、増加/低減機能250を介して行われる任意の増加がこの上限によって制約されるように、患者が患者にとって快適である治療の上限を設定することを可能にする。これらの限度機能250、252は、医師用プログラマ239と患者用プログラマ230との間の通信を介して(または医師用プログラマ239とIPG100との間の直接的な通信を介して)医師によっても制御可能である。下限機能254は、治療が治療の範囲内に留まるように患者による下方調整を制約し、かつ医師用プログラマ239を介して先に述べたような方法で調整されることが可能である。
ある態様において、記録パラメータ228を介して患者から医師へ伝達される履歴には、刺激の量260と、262における第1、第2及び第3の状態202−206の各々において費やされる持続時間(印加される刺激信号のパラメータを含む)とが含まれるが、これらに限定されない。さらに、記録パラメータ228は、無呼吸モジュール264を介して睡眠呼吸障害イベントの規模、頻度及び重症度を追跡する。患者用プログラマ230は、図3Bに示されているように、活動パラメータ270及び睡眠パラメータ266を介して患者の活動レベル(活動または睡眠の頻度及び持続時間の双方)を追跡する。ある態様において、この履歴及び情報は、患者の睡眠時無呼吸パターン及び治療の有効性の毎夜の梗概を医師に提供するグラフ及び数値による報告へと自動的に定式化される。さらに、これらの報告は、患者の健康のパターンまたは変化の検出を可能にしかつ/または幾晩かの期間中に医師により行われる治療調整の評価を有効化する一晩の、または幾晩かの期間に渡る動向報告を含んでもよい。実施形態によっては、記録パラメータ228を介して入手可能なこの情報の幾分かの部分が患者へ報告される。
さらに、本開示において後にさらに詳しく述べるように、実施形態によっては、IPG100及びシステム200は、医師に在宅での擬似睡眠検査を提供するために、第2の状態204において延長された時間期間に渡って(または一晩中でも)作動される。ある態様において、この擬似睡眠検査からの情報は、医師が患者の治療処方を調整または調製することを可能にするために患者のインターネット機器を介して医師へ送信される。
本開示によるシステム及び方法の様々なコンポーネント、機能、パラメータ及びモジュールが、本明細書に記述されている本開示の一般原理を達成しつつ図1−図10に示されかつ記述されているものとは異なるグルーピングを形成するために構成、結合かつ/または分離され得ることは理解されるであろう。
図4Aは、本開示の一実施形態による、睡眠呼吸障害を自動的に治療するためのシステム200を示す略図である。ある実施形態において、システム200は、図1−図3Bに関連して先に述べたシステム及びコンポーネントと少なくとも略同一の特徴及び属性を備える。図4Aに示されているように、多層的システム200は、3つの状態のうちの1つにおいて動作するシステムによって自動的に治療を開始し、終了しかつ/または適用する。他の特徴の中でも、このシステムは、患者がIPGを手動でオンまたはオフにする必要がないように治療のオン/オフ制御を提供し、これにより、治療に対する患者の適合性が保証され、一方で患者の満足度及び生活の質も大きく向上される。
図4Aに示されているように、一般的に言えば、システム200のオペレーションの第1の状態202において、システム200は、睡眠兆候行動が存在するかどうかを決定し、検出された行動は第1のしきい値290(例えば、第1の基準)に照らして測定される。実施形態によっては、睡眠兆候行動の度合いは、歩行、身体動作、発話などを示す身体の姿勢及び「振動性の」活動を検出する身体動作/活動センサ310を介して測定される。ある実施形態において、このセンサ310は、身体の位置または姿勢を検出するように構成される加速度計を備える。別の実施形態において、身体活動センサ310は加速度計または動作を検出するように構成される圧電トランスデューサを備える。実施形態によっては、センサ310は、位置検出コンポーネント及び動作検出コンポーネントの双方を備える。ある態様において、この生理学的データは、IPG100の身体動作パラメータ130を介して追跡される。実施形態によっては、患者の覚醒または睡眠状態は交互に示され、または、検出モジュール102(図3A)において追跡される、心拍パラメータ158または呼吸数パラメータ159を含む(但しこれらに限定されない)生理学的パラメータのうちの1つまたはそれ以上を介してさらに示されることは理解される。
何れの場合も、IPG100は、睡眠兆候行動のこの検出を周期的間隔(例えば、少なくとも5分おき)で短い時間期間(例えば、1分未満)に渡って実行する。身体活動センサ310がかなりの時間期間に渡って(例えば、10分を超えて)不活動を検出すれば、システムは第2の動作状態に入ることになる。先に挙げた特有の時間(例えば、各々検出時間1分、検出間隔5分及び不活動しきい値の規定10分)が各々単なる例であって、医師により他の時間を選択できかつ/またはプログラムできることは理解される。例によっては、短い活動機会及び/または循環的な活動期間が睡眠呼吸障害行動の兆候である場合がある。従って、第1の状態202において動作する際、システムは、システムが患者の覚醒または睡眠を正しく識別していることを保証するために不活動等の睡眠兆候行動の一貫性のあるレベル並びに身体姿勢を監視し、これにより、システムが第2の状態202へ進むべきかどうかを決定する。
実施形態によっては、確率モデルに対して、検出が特定の検出時間において測定される身体活動の量を基礎とする動的スケジュールに従って実行されるセンサポーリング時間が実行される。例えば、時間Xにおいて大量の身体活動が測定されれば、次のポーリング時間は遙かに遅い時間Yにおいて発生することになる。しかしながら、時間Xにおいて測定される身体活動が少量であれば、次のポーリング時間は概してY−Xに等しい(またはこれより少ない)時間において発生することになる。
ある非限定的な例においては、(潜在的無呼吸を検出するための)確率的ポーリングプロファイル336が、検出された身体活動の量334(x軸)に対する連続するサンプル間の時間間隔の大きさ332(y軸)がマッピングされた図4Bに示されている。先に述べたように、患者の一般的な活動レベルは、身体動作、身体姿勢、心拍数、呼吸数及び/または患者が眠っているか覚醒しているか、もしくは睡眠状態と覚醒状態との間のどこかであるかを決定する他のパラメータに従って検出される。
図4Bに示されているように、確率的サンプリング機能に従って、検出された身体活動の量が比較的少なければ(340)、比較的短いサンプル間の時間間隔(338)が適用されるが、検出された身体活動の量が比較的多ければ(342)、比較的長い連続サンプル間の時間間隔(339)が与えられる。概して、身体活動の量が増大するにつれて、サンプル間の時間量(即ち、サンプリング間隔のサイズ332)は最大サンプル間隔(344)に到達するまで増大し、到達した時点でサンプリング間隔のサイズは身体活動レベルが最大サンプル間隔の開始時点であるポイント(346)より下に下がるまで最大間隔のままである。言い換えれば、この確率モデルは、身体活動量が身体活動の高い領域まで増大するにつれて、患者がかなり活動的であるという理由から睡眠状態が変化する尤度はかなり低くなり、よって、潜在的な無呼吸イベントに関する連続データサンプル間に遙かに大きい時間間隔が生じ得るというような睡眠状態の変化の確率を表現している。一般的に言えば、この確率モデルはエネルギーを節約し、これにより、他の優位点の中でも、患者の体内におけるIPG100の長寿命に寄与する。
再度図4Aを参照すると、別の態様では、身体動作/活動センサ310(加速度計等)が低電力センサであることから、動作の第1の状態202はシステム上の電流ドレインを最小限に抑える。言い替えれば、動作の第2の状態202または第3の状態206において発生する行動等のより電力集約的な検出及び信号処理を実行する前に、第1のレベル300の電力を用いてまず(睡眠状態における活動と比較した)患者の覚醒/活動の総レベルを決定するために使用されるエネルギーが最小限に抑えられる。この点に関連して、本開示の原理に従って、ある実施形態では、睡眠呼吸障害イベントが検出されるまで、かつ睡眠呼吸障害イベントが検出されない限りIPG100が電力を節約するように、コントローラ110は、検出モジュール102のみに電力を供給させる(かつ刺激モジュール104には供給させない)制御信号を発生するように構成される。
さらに、ある実施形態において、コントローラ110は、電力をさらに身体動作センサ(例えば、加速度計パラメータ132)等のシステムの1つまたは2つの選択センサだけに限定して供給するように構成されることも可能であり、よってシステムは、正常な患者活動(例えば、歩行、摂食、労働など)の期間中は多くの生理学的データの追跡に電力を不必要には使用しない。一方で、実施形態によっては、コントローラ110は、患者が眠ればシステムの所定のセンサを停止することによって電力消費を制限するようにも構成されることが可能である。
別の実施形態において、コントローラ110は、1つまたは複数のセンサがデータを捕捉する頻度を限定することによって電力消費をさらに制限する。例えば、絶えずデータを捕捉する代わりに、コントローラ110は、1つまたは複数のセンサにデータを所定の時間期間に一度、例えば、5分毎、または10分毎に一度捕捉させる。さらに別の実施形態では、電力消費をさらに減らすために、コントローラ110は、治療中に(第3の状態206において)あるセンサセットのデータ捕捉頻度を増加させ、一方で治療中、別のセンサセットのデータ捕捉頻度は低下(または停止)される。
実施形態によっては、第1の状態202は、時間パラメータ142を含むオン/オフ機能280を備える。ある態様では、「オフ」モードで動作しているとき、オン/オフ機能280は、第1の状態202における検出機能を(時間パラメータ142に従って)標準的覚醒状態の時間期間(例えば、午前6時から午後10時までの間の予め設定された公称覚醒時間帯)または他のプログラム可能な覚醒期間等の所定の時間期間の間非活性化することによって、第2の状態204への誤った移行を防止することができる。この手配は、公称覚醒時間帯では治療処方が活性状態にならないことを保証する。さらに、この制限は、より高い電力消費状態への移行を防止することによって電力節約をもたらす。一方で、この実施形態では、「オン」モードで動作しているとき、オン/オフ機能280は、第2の状態204への任意の移行を有効化する前に患者の睡眠状態を確認するために、公称非覚醒時間帯(例えば、午後10時から午前6時までの間)の間の眠っている状態の検出を可能にする。従って、患者が眠っていることを検出した時点で、「オン」モードは、無呼吸を検出しかつ潜在的に第3の状態206において治療を提供するために第2の状態204への移行を許容する。
ある実施形態において、オン/オフ機能280は、標準的な睡眠時間枠(例えば、午後10時から午前6時まで等の、但しこれに限定されない予め設定された公称睡眠時間帯)の間に動作の第2の状態204(及び動作の第3の状態の潜在的実装)が自動的に実装される、自動的な夜間治療機能または睡眠計画パラメータを提供するように動作する。
別の実施形態では、(患者が覚醒しているか眠っているかを決定するために)身体位置/姿勢の検出及び身体動作の検出に基づいて第2の状態204への移行をもたらすべく第1の状態202を動作させる代わりに、第1の状態202は、通常の覚醒時間帯(即ち、標準的な覚醒状態期間または覚醒計画)の間、第1の状態202が第2の状態204への移行を許容せず、これにより「オフ」期間中(即ち、覚醒時間帯の間)の刺激治療を防止するように、単にオン/オフ状態として動作される。この実施形態では、システムが無呼吸を調べるために非覚醒時間帯に渡って少なくとも第2の状態204に留まり、かつ患者が覚醒しているか眠っているかを識別する時間またはエネルギーを費やすことなく必要に応じて治療を行うことを認可されるように、非覚醒時間帯(例えば、午後10時から午前6時まで等の反復的な夜間の時間期間)の間、第1の状態202は事実上中断状態となって第2の状態204が自動的に実装される。
さらに、実施形態によっては、動作の第2及び第3の状態204、206に時間機能142が存在することも理解されるであろう。
システム200の第2の状態204の1つの態様において、システムは、標的神経の任意の電気刺激を有効化しないことによってかなりの量の電力を節約するために、第2の電力レベル302で動作する。従って、システム200が第3の状態206に到達して患者が睡眠状態にあり、かつ同時に無呼吸/低呼吸を処置する治療を要する状態にあることが検出されるまで、電力は第2のレベル302から第3のレベル304へと著しく増加されない。この節電は、システムの寿命を著しく引き延ばすことができる。
システム動作の第2の状態204において、IPGは身体動作/活動情報の監視を継続し、よって睡眠兆候行動(例えば、患者の活動レベル及び/または身体位置)が第1のしきい値290に適合せず、これにより患者が覚醒または活動状態に入ったことが示されれば、システムは第1の状態202へ戻る。実施形態によっては、システム200は、後続の状態(例えば、第2の状態204)における動作が先行する動作状態(例えば、第1の状態202)の機能の活性化または実行の維持を含むように、付加的に、または漸進機能式に動作する。
身体活動/動作センサの使用に加えて、第2の状態204においてIPG100は、無呼吸/低呼吸等の睡眠呼吸障害が発生しているかどうかを追加的な生理学的データの監視を介して決定する。例えば、IPGにより収集される他の生理学的データは、呼吸センサ、心拍数センサまたは(例えば、酸素飽和度を測定するための)血液酸素センサ、もしくは図3Aに関連して先に述べたタイプの他のセンサのうちの1つまたはそれ以上の使用によって入手されることが可能である。例えば、心拍数情報は様々に使用されることが可能であるが、実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動の少なくとも一部と略同時的に発生する心拍数の増加は、観察されている行動が実際に睡眠呼吸障害行動であることの確定を助力するために使用される。具体的には、ある実施形態において、睡眠呼吸障害行動は、睡眠呼吸障害行動の開始と略同時に発生する心拍数の低下、及び睡眠呼吸障害行動の終了と略同時に発生する心拍数の増加(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸イベント)の検出を介して確認される。別の例において、睡眠呼吸障害行動の識別は、睡眠呼吸障害行動の少なくとも一部と略同時的に発生する血中酸素飽和度の低下を検出することによって裏付けられる。別の実施形態において、睡眠呼吸障害行動の確認は、睡眠呼吸障害行動が疑われるものの途中で発生する(または開始される)過呼吸の検出を介して与えられる。
実施形態によっては、324において、第2の状態204は、(睡眠呼吸障害を検出するために)生理学的状態を、図4Bに関連して先に述べたものと一致する方法で確率式に、またはセンサ310を介して検出される身体活動(及び姿勢)の量またはタイプに逆相関される頻度で周期的にサンプリングするように動作する。
ある実施形態では、図4Aに示されているように、無呼吸が発生しているかどうかを決定するために使用される主要な生理学的データは、後に図5−図7に関連してさらに詳しく述べるが、生体インピーダンス信号312(例えば、経胸的パラメータまたは非胸腔パラメータ)及び/または呼吸圧力信号314(例えば、胸腔内または他の呼吸パラメータ)を含む。治療に適する無呼吸または低呼吸が検出される場合、システムは、第2の状態204から第3の状態206へ移行する。実施形態によっては、システム200は、第2の状態204が省略され、これによりシステム200が緊急モードで動作することを有効化するバイパス機能を介して動作する。この手配では、第1の状態202において(または、「オン」機能が活性化された状態で)患者の我慢強い睡眠が検出されるとすぐに、システム200は自動的に第3の状態206における治療の実装へと進む。ある非限定的な例では、この手配は、患者が急性症状の睡眠呼吸障害(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸、低呼吸、他)を有していて、実際に患者が睡眠状態に入るときはいつも睡眠呼吸障害が確実に発生する場合に採用される。さらに、医師はシステム200を、患者の状況の裏付けに従って緊急モードで動作するようにプログラムすることができる。システム200の動作の第3の状態206において、システム200は、睡眠呼吸障害を処置するために、上気道の閉塞を防止するための吸息と同時の(図4Aにおける出力320により表現されるような)舌下神経刺激の使用等の治療を行なう。実施形態によっては、舌下神経の刺激は、呼息の少なくとも一部の間はオフであるように同期される。実施形態によっては、この治療は、後に図9に関連してさらに述べるように自動滴定モジュール750を介して行われる。
この第3の状態206において、システム200は、無呼吸/低呼吸が発生しつつあるかどうか、または無呼吸の重症度スコアが予め決められたしきい値を超えているかどうかを決定するために、治療を周期的または一時的に一定の間隔で(例えば、5分、10分または15分おきに)一定の時間期間(例えば、30秒、1分、2分、3分、4分、5分またはこれ以上)に渡って中断する。言い替えれば、システム200は、刺激プロトコルが中断される時間の量を変更しかつ刺激プロトコルが中断される頻度を変更するようにプログラム可能である。
実施形態によっては、刺激を中断する頻度は、図4Cにおけるグラフ350によって略示されるような確率的プロファイル351に基づく。このプロファイル351によれば、(少なくとも無呼吸の頻度及び/または強度に基づく)無呼吸の重症度スコアが大きいほど、無呼吸を調べるために治療が中断される頻度は少ない。一方で、無呼吸の重症度スコアが低いほど、行われる調整は少なくなることが予測されるために治療が中断される頻度は高くなる。さらに、後者のシナリオにおいて、中断時間は、必要な治療は少ないことが予測されるために長くなる可能性がある。当然ながら、実施形態によっては、システム200は、治療中断の持続時間を治療中断の頻度とは独立してより長く、またはより短くするようにもプログラム可能である。
実施形態によっては、無呼吸を調べるために治療を中断する持続時間または頻度の決定に際して、追加的なパラメータが考慮される。例えば、意図される睡眠期間の初期(例えば、最初の1時間目)における治療の頻繁すぎる、または長すぎる中断は患者が眠りにつくことを妨げる可能性もあることから、1つのパラメータは睡眠が続いている時間である。別の例として、(意図された睡眠期間の早い期間における)他のサンプルが多大な刺激治療を必要とする高い無呼吸重症度スコアを示していれば、別のサンプルはしばらくの間、または一晩中必要とされなくてもよい。一方で、意図された睡眠期間の早期における無呼吸の重症度スコアが低ければ、統計的に意味のある呼吸サイクルを得るためにより長い中断期間が必要とされる場合がある。これらの決定は、他の睡眠データに連結されることも可能である。例えば、身体動作センサまたは身体位置センサがさほど安らかでない睡眠を示していれば、おそらく中断は低頻度かつ短時間で発生すべきである。
治療の一時的な中断は、システム200を、IPG100が無呼吸及び/または低呼吸を検出するために治療を行わずに生理学的データを監視する第2の状態204における動作へ戻す。この治療の一時的中断の間に無呼吸/低呼吸が検出されなければ(または、無呼吸の重症度スコアが予め決められたしきい値より低ければ)、IPG100は動作の第2の状態202に留まる。一方で、治療の一時的中断の間に無呼吸または低呼吸がまだ検出されれば(または、無呼吸の重症度スコアが予め決められたしきい値より高ければ)、システムは、睡眠呼吸障害行動を治療すべく必要な刺激治療を行うためにもう一度第3の状態206における動作を再開する。
システム200による治療中断の自動的な決定は、厳密に先に述べたような時間パラメータ及び/または時間ベースの確率的プロファイルを基礎とし得るが、他の実施形態において、システム200による治療中断の自動的な決定は、時間ベースのパラメータとは独立した、または時間ベースのパラメータと組み合わされた追加的要素によって行われる。この点を考慮して、図4Dは、第3の状態206の一部として(または状態不在の決定モデルの一部として)実行される治療の中断を開始しかつ終了する方法を略示している。図4Dは、1つまたは複数のトリガ382が存在するまで、またはこれらが存在しない限り刺激が与えられ(380)、トリガが存在した時点で中断機能がシステム200を治療中断状態(384)へ移動させるループ375を示す。これらのトリガ382のうちの1つは、図4Cに関連して先に述べた確率モデルまたは固定的な時間間隔等の予め設定された時間ベースモデルを含む。実施形態によっては、姿勢変化機能は、患者が仰臥位と側臥位との間で寝返りを打つ際の睡眠位置の変化等の姿勢の変化に基づく刺激信号の印加を一時的に中断するための別のトリガを提供する。ある例において、このような身体位置は、図3Aに示されているような、植込み可能なパルス発生器100の検出モジュール102における身体パラメータ130の位置検出コンポーネント132によって監視される。これらの位置変化は無呼吸状態を中断する可能性があり、よって、このような再ポジショニングは、変更された睡眠位置が無呼吸を終了する際に不必要な治療が行われないように、無呼吸が発生しているかどうかの検出を有効化すべく治療を中断するための適正なトリガである。
さらに、患者が仰臥位であって治療的な神経刺激信号が印加されていない場合であっても、実施形態によっては、患者は概して仰臥位において睡眠呼吸障害行動を呈する傾向が高いという理由から、検出される仰臥位が(例えば、図4Aの第2の状態204において)睡眠呼吸障害行動をより頻繁にチェックするトリガとして使用される。同様に、呼吸波形、生体インピーダンス、心拍数、血中酸素飽和度、他等の他の生理学的データが睡眠呼吸障害行動の発生を表している場合、患者が仰臥位であるか否かを知ることは、本明細書において少なくとも図3Aのパラメータ130、図4Aにおける第2の状態204及び/または図4Fにおけるパラメータ423に関連してさらに詳述されるように、疑われる睡眠呼吸障害行動が真に睡眠呼吸障害行動であるか否かを確認する手助けとなる。
例えば、監視されている生理学的データが身体位置データと協働して、ある特定の患者は側臥位(即ち、横腹を下にして横たわること)ではめったに睡眠呼吸障害行動を示さないことを明らかにすれば、この身体検出情報は、その患者が横向きに横たわっているときに睡眠呼吸障害行動と誤検出されることを防止する手助けをする。或いは、この同じデータは、睡眠呼吸障害行動を示す主要な生理学的データからの結論が、その患者がその睡眠呼吸障害行動の(全てではないとしても)大部分が発生する仰臥位にあることの検出によって支持される場合に、睡眠呼吸障害行動を表示することの正確さを確実にする。
さらに他の実施形態では、身体位置データが、患者に行う治療処方の積極性を決定するための方法の一部として使用される。例えば、ある実施形態では、患者が仰臥位にあることを身体位置パラメータ132が明らかにすれば、患者は(図3AにおけるIPG100の治療マネージャ106及び図9における自動滴定モジュール750を介して)第1の治療処方を受け、側臥位にある(横腹を上にして横たわっている)ときは、第1の治療処方ほど積極的ではない第2の治療処方を受ける。しかしながら、他の患者の場合、(パラメータ132を介する)身体位置データは、患者が仰臥位にあるときにさほど積極的でない治療を行うために使用され、患者が側臥位にあるときにより積極的な治療を行うために使用される。
患者は、ある時間期間に渡って寝床を離れる場合もあり、これにより無呼吸イベントは打ち切られることから、別のトリガには身体活動も含まれる。
実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動の重症度スコアは、睡眠呼吸障害行動を検出または監視する目的で刺激を中断するためのトリガ(382)として作用する。例えば、ある実施形態において、(睡眠呼吸障害を監視するために)刺激を中断する頻度は、睡眠呼吸障害行動の重症度スコアに反比例する。言い替えれば、睡眠呼吸障害行動(例えば、頻度、持続時間、強度)の重症度が高いほど、このような呼吸行動を調べるために刺激が中断される頻度は低くなり、睡眠呼吸障害行動の重症度が低いほど、呼吸障害行動を調べるためにその刺激が中断される頻度は高くなる。
実施形態によっては、1つまたは複数の異なる睡眠段階が、睡眠呼吸障害行動が発生しているかどうかをチェックするために治療を中断することの裏打ちをするためのトリガとして作用してもよい。例えば、検出される生理学的パラメータによって、患者が十分な時間期間に渡ってより深い睡眠段階にある可能性が明らかにされれば、これらの睡眠段階は、システム200を刺激モードから移動させて睡眠呼吸障害の可能性の検出を開始させるための治療の中断を引き起こす。従って、実施形態によっては、後にさらに詳述するように、システム200は、(他のパターンのなかでもとりわけ)異なる睡眠段階が認識されかつ患者の異なる生理学的パラメータがこれらの睡眠検査に関連して追跡される睡眠検査(例えば、睡眠ポリグラフ計)と同期して動作することによりトレーニングされる。これらの睡眠検査パラメータをIPG100(図3A)の検出された生理学的パラメータと相関することにより、IPG100は、特定の患者に関して、実施形態によってはIPG100を介する治療の実行及び/または中断にとって有益である睡眠段階及び他の睡眠パターンを認識するように較正された状態になる。
図4Dをさらに参照すると、予め設定された(または確率的な)時間間隔または治療中断の間に検出される無呼吸重症度スコアがしきい値(例えば、AHI10)を超えて上昇する場合等の1つまたは複数のトリガ382に従って、治療の中断が終了されかつ第3の状態206への復帰を介して治療が再開される。このコンテキストにおいて、無呼吸という用語が概して閉塞性睡眠時無呼吸、低呼吸または中枢性睡眠時無呼吸を指して使用されることは理解されるであろう。従って、治療は、トリガ382のうちの1つが治療を中断させるまで行われる。
一般的に言えば、この手配は、治療が不必要になれば中断され、かつ必要であれば再開されることを保証する。この中断メカニズムは、神経の過剰刺激/疲労の防止に助力し、電力を節約しかつ患者が眠っていない場合に生じる刺激治療に起因する患者の不快感を減じる。
実施形態によっては、少なくとも図4Aに示されているこの多層的システム200は、連続する動作状態の動的または漸進的活性化、並びにより高位の状態における動作が不必要になるとシステム200が自動的により低い動作状態のうちの1つへ戻る復帰機能を提供する漸進的機能に従って動作する。ある態様において、第1及び第2の状態は、IPG100の刺激部分を活性化することなくIPG100の検出部分を使用する。この手配は、電力管理モジュール108(図3A)と協働して電力を節約し、これにより、IPG100等の植込み可能な電池作動式デバイスの長寿命の増大が可能になる。さらに、第1の動作状態は、実施形態によっては単一の検出パラメータ(例えば、身体動作/活動検出)しか使用しないことから、IPG100はほとんどの時間、超低電力状態で動作することができる。モジュール108の電力管理機能の一部として電力を節約することに加えて、この手配は、必要なときにのみ治療が行われることを保証することによって患者の不快感を最小限に抑える。第1の状態202から第2の状態204へ動作を移動するための基準が満たされている場合であっても、動作の第2の状態204では、睡眠呼吸障害行動を検出するために適正な生理学的センサを検出しながら比較的低い電力状態が用いられる。さらに、動作の第2の状態204におけるこの比較的低い電力状態は、動作の第3の状態206において標的神経の刺激を介して治療を行うために使用される電力量よりかなり少ない(例えば、少なくとも1桁少ない)。
別の態様では、節電に加えて、動作の第1の状態202または第2の状態204を、神経刺激治療(第3の状態206の場合等)を積極的に行わない場合には刺激が生じない低電力状態に制限することにより、神経の不必要に長期的な刺激を回避することもできる。
従って、本開示の原理による多層的システム200は、システム200が電力消費及びIPG100の動作状態を動的に管理する間に、患者がその睡眠呼吸障害行動の治療処置を適切な時間に正常な神経機能を過度に妨害または疲労させることなく自動的に受けることを保証する。
また、治療を行うシステム200は、図3Aに関連して示されかつ記述されている状態ベースのプロトコル以外のプロトコルによっても提供され得ることは理解される。例えば、他の実施形態において、システム200は、規則ベースのプロトコル及び/または3つの動作状態の順序及び/または相互作用に厳密に依存しない他のプロトコルによって実装される。
また、IPG100及び本明細書に記述されている関連のシステム及び方法を介する睡眠時無呼吸または低呼吸の識別が、睡眠検査において無呼吸/低呼吸が識別される方法とは幾分変わった方法で実行されることも理解される。例えば、睡眠検査において、無呼吸または低呼吸は、少なくとも期間10秒に渡る血中酸素飽和度の低下(例えば、3%)等の所定の生理学的イベントとして定義される。さらに、睡眠実験室では、医師が、予め定義された基準を使用し、睡眠実験室において入手されるセンサパラメータに基づきイベントに得点を付け、この得点により、結果としてAHI計数が得られる。
従って、本明細書に記述されている植込み可能なシステムは、睡眠実験室において使用されるタイプのセンサと正確に一致するセンサを持たないことから、本開示の実施形態による植込み可能なシステムを介して決定されるAHI計数は、睡眠実験室が決定するAHI計数とは幾分異なる。それにも関わらず、本開示の実施形態による植込み可能なシステム/方法は、睡眠実験室において入手されるタイプの情報(例えば、外的に測定される血中酸素飽和度)の代理として作用する幾つかの生物学的に検出されるデータ(例えば、内的に測定される血中酸素飽和度)を含む。
図4Eは、本開示の一実施形態による、睡眠検査パラメータを植込み可能なパルス発生器システムの生理学的パラメータと相関する方法390を略示するフロー図である。図4Eに示されているように、方法390はステップ392において、植込み可能なパルス発生器(IPG)システムを睡眠ポリグラフ計(PSG)検査と略同時的に監視モードで動作することを含む。ステップ394では、睡眠ポリグラフ計検査の間に、第1の生理学的パラメータセットがIPGシステムを介してその監視モードにおいて追跡される。第2の睡眠検査パラメータセットは、IPGシステムとは独立して睡眠ポリグラフ計検査を介して追跡される(395)。ステップ396において、方法390は、追跡された第2の睡眠検査パラメータセットから睡眠呼吸障害のパターン(例えば、無呼吸及び/または低呼吸)を識別することと、これらのパラメータのうちのどれが特定の患者の睡眠呼吸障害を表しているかを識別することを含む。ステップ398において、植込み可能なパルス発生器は、追跡されたIPGベースの生理学的パラメータ/状態を、特定の患者の睡眠呼吸障害行動を表す追跡されたPSGベースの睡眠検査パラメータに相関することを介して、その特定の患者の睡眠呼吸障害を認識するように較正される。
この点を考慮して、図4Fは、幾つかのIPG治療パラメータ408に対する幾つかの睡眠検査パラメータ402の比較を略示するチャート400を提示している。先に述べたように、実施形態によっては、IPG治療パラメータ408は、1つまたは複数の関連する睡眠検査パラメータ402に対して較正される。例えば、患者体内のIPG100は、睡眠検査の間、IPG100のパラメータ及び睡眠ポリグラフ計(PSG)モニタのパラメータの双方が追跡されるように動作する。睡眠呼吸障害行動のプロファイルを凝視することにより、IPG100が睡眠検査データに対して較正されるように、IPGパラメータ418とPSGパラメータ402との間で相関が行われる。
ある例において、ある睡眠検査パラメータは口−鼻孔気流経路(410)で測定される気流を含むが、これは、この気流が略低減される場合に睡眠呼吸障害の示度となる。ある態様において、口−鼻孔気流は鼻孔及び/または口において測定される。このパラメータは、完全に植込み可能である実施形態では正確に復元されない場合があるが、図5−図7Bに関連してさらに詳述されるパラメータの組合せは、睡眠検査の口−鼻孔気流パラメータ410が睡眠呼吸障害を示す度合いに相応する睡眠呼吸障害行動の良好な示度を提供する。具体的には、生体インピーダンス信号及び呼吸圧力信号の双方の振幅パターン416(及び反対方向)の劇的変化は、睡眠呼吸障害行動(例えば、無呼吸イベント)413が発生しつつある、または既に発生しているという示度を提供する。従って、(IPG100及びシステム100を介して決定される)生体インピーダンス信号及び呼吸圧力信号の振幅パターン416のこの組合せは、典型的には睡眠検査において測定される口−鼻孔気流パラメータ410の代理として作用する。
別の例では、再度図4Fを参照すると、(IPG100及びシステム200を介して)内的に測定される血中酸素飽和度パラメータ417は、睡眠検査を介して入手可能な外的に測定される血中酸素飽和度パラメータ411の代理として作用する。これらの2つの個々のパラメータ417及び411の間には幾分かの差が存在するが、睡眠検査を介してIPG100をトレーニングすることにより、(IPG100及びシステム200を介して)内的に測定される血中酸素飽和度パラメータ417は、このような差を考慮するために外的に測定される血中酸素飽和度パラメータ411に対して較正される。この方法では、内的に測定される血中酸素飽和度パラメータ417は、この患者における睡眠呼吸障害の発生の正確なトリガとして機能することができる。
他の点において、本開示による植込み可能なシステム/方法の1つまたは複数の生理学的データポイントは、自動自己調整治療の決定に際して睡眠実験室から入手される情報より有用な情報を提供する場合がある。例えば、本開示による実施形態は胸腔内圧力418を測定するが、これは、上気道の閉塞度に相関されることが可能である。閉塞が漸進的に開気道から低呼吸、全閉塞へと増大するにつれて、胸腔内圧力の大きさは増大する。従って、本開示による実施形態は、次には睡眠呼吸障害イベント415を示す胸腔内圧力418の増大の測定及び識別を有効化する。ある態様において、この機能は、本開示によるシステム/方法が睡眠実験室に関連づけられる従来のスコアリング方法より高度な睡眠呼吸障害のスコアリング(例えば、無呼吸のスコアリング)を提供することを可能にする。
さらに、ある実施形態では、睡眠検査の間にまずIPG100を較正した後、IPG100は、IPG100が第2の睡眠検査の間に、PSGを介して提供されるデータに直接関連して自己学習できるように動作することを許容される。この方法を用いて、IPG100を介して検出された睡眠呼吸障害行動を示す生理学的データは、PSG監視システムを介して検出された睡眠呼吸障害行動を示す指示的な生理学的データ/観察と整合される。ある態様において、この直接的較正は、睡眠検査が発生するにつれてPSGがIPGの直接的なリアルタイムプログラミングを許容することから、IPGが患者の適切なベースライン治療処方を自己学習することに費やす時間を短縮する。言い替えれば、IPGが事前に患者について、どのような夜間の時間、曜日、身体位置、心拍数、他が無呼吸行動または正常な呼吸を引き起こすかを知るために、IPGは、睡眠呼吸障害、睡眠習慣、他のパターンによって自動的にプログラムされる。その結果、この自動治療処方は、一貫して患者に過度な、または過少の刺激を与えるより大きい可能性を有すると思われる従来的な万能サイズの刺激治療を患者に受けさせるのではなく、特定の患者のニーズに合わせて調製される。
この点において、図4Fはさらに、PSG関連の一次パラメータ及びIPG関連の一次パラメータと相関されるような追加的パラメータを示している。例によっては、これらの追加的パラメータは、睡眠ポリグラフ計検査において、またはIPGを介して追跡されてもされなくてもよい。図4Fに示されているように、曜日夜間パラメータ420は1週間のうちの何曜日の夜に睡眠呼吸障害行動が発生するかを追跡するのに対して、時刻パラメータ421は24時間のうちで睡眠呼吸障害が発生する1つまたは複数の時点を追跡する。睡眠段階パラメータ421は、睡眠呼吸障害が睡眠期間(午後10時から午前6時まで等)内のどの段階で、かつ幾つの段階で発生するかを追跡する。身体姿勢パラメータ423は、どの身体姿勢が睡眠呼吸障害の発生と重なって生じるか、及び患者が典型的にいつその身体姿勢に入るかを(睡眠段階、時刻または曜日夜間に関連して)追跡する。また、患者の人口統計学的要素424等の他のパラメータ、年齢、性別、喫煙、体重、頚部、高血圧、他等も追跡される。
実施形態によっては、この相関方法は、睡眠段階パラメータ425を睡眠呼吸障害イベントに対して、かつ心拍数、血中酸素飽和度、生体インピーダンス及び/または呼吸圧力等のIPG関連パラメータ426のアレイに対して相関させることを含む。
別の実施形態では、図4Gのチャート450により示されているように、幾つかのIPGベースシステム456(例えば、IPG1、IPG2、他)が何名かの患者452(例えば、ジョー、フレッド、他)の睡眠検査パラメータ454(例えば、PSG1、PSG2、他)に対して較正された後、本開示による実施形態は、IPGパラメータに対する睡眠検査パラメータの相関を使用して、患者へのIPGの植込みより前にIPGが患者にどれほど有益であるかを予測する予測指標460(例えば、応答性の格付け)を作り出すことができる。ある態様において、応答性の格付けは、その植込み可能なパルス発生器が、チャートに記載されているものに類似するタイプの睡眠ポリグラフ計検査及び人口統計を有する患者の睡眠呼吸障害を治療するためにどの程度効き目があるかを1から10までの段階(10が最高位)で表す。
実施形態によっては、正式な睡眠検査の間にIPG100を介して生理学的パラメータを検出することに加えて、もしくはその代わりに、植え込まれたIPG100のシステム200(図4A)は、医師に患者の家で実行される擬似睡眠検査を提供するために、第2の状態204のみにおいて延長された時間期間に渡り(または一晩中でも)作動される。言い替えれば、IPG100及びシステム200は、植え込まれた睡眠ポリグラフ計デバイスとして作用する。ある態様において、在宅擬似睡眠検査からのデータは患者のインターネット機器(例えば、図3Bの患者用プログラマ230)を介して医師へ送信され、これにより、医師が患者の睡眠習慣/行動に合わせて刺激治療をより良く調製することが可能にされる。幾つかの点において、在宅での擬似睡眠検査は、患者が自分の寝床、独自の室温制御下、他等のその普通の睡眠環境で眠ることになると思われることから、潜在的に、患者の実際の睡眠行動または習慣に関する改まった睡眠検査より優れたデータを提供することができる。
従って、図4Hは、本開示の一実施形態による、睡眠呼吸障害を治療する方法475の一実施形態を示す。図4Hに示されているように、ステップ480において、方法475は、在宅での擬似睡眠検査を介して、IPGシステムで生理学的パラメータを従来の睡眠検査パラメータの代理として検出することによりIPGシステムを較正することを含む。ステップ482では、較正を基礎として、神経刺激治療の初期治療処方がIPGシステムにプログラムされる。ステップ484において、方法475は、自動調整が可能な刺激治療を、プログラムされ、較正されたIPGシステムを介し、初期治療処方に基づいて実行することを含む。
実施形態によっては、在宅での擬似睡眠検査の実行に先立って、IPG100及びシステム200の検出パラメータは、IPG100及びシステム200を正式な睡眠検査の間に検出モード(例えば、図4Aにおける第2の状態204)において先に述べたものと略同一の方法で動作することにより、正式な睡眠検査の従来の検出パラメータに対して較正される。
無呼吸及び/または低呼吸等の睡眠呼吸障害を検出するためには、任意の数の生理学的パラメータが様々な首尾で使用され得るが、本開示による一実施形態では、IPG100の検出モジュール102が経胸的生体インピーダンスパラメータを介して無呼吸/低呼吸を検出する。具体的には、経胸的インピーダンスの測定値は、呼吸波形の相対振幅を追跡するために使用される。生物学的に言えば、肺の生体インピーダンスは、肺が空気で満たされかつ空にされるにつれて変わる。空気で満たされた肺は、僅かに高いインピーダンスを有する。別の態様では、変化する呼吸駆動も生体インピーダンスの振幅を変化させ、呼吸駆動が大きいほど、生体インピーダンスの信号振幅は増大する。
IPG100の検出モジュール102を介して経胸的生体インピーダンス信号が取得されると、生体インピーダンス信号は、経時的な平均ピーク振幅を識別するためにさらに処理される。睡眠呼吸障害イベントは、典型的な無呼吸イベントの既知の持続時間に略類似する持続時間に渡って発生する周期的な振幅変動をさらに識別することによって検出される。この点に関連して、図5は、概して呼吸駆動/努力及び経胸的生体インピーダンス信号504に対応する呼吸気流信号502を略示するグラフ500を提示している。図5に示されているように、これらの信号の相対振幅(y軸508で表示)は、ある時間期間(x軸506で表示)に渡って別々に追跡される。
上述の実施形態において、生体インピーダンス信号504は経胸的検出メカニズムを介して取得される。しかしながら、他の実施形態では、生体インピーダンス信号504は、図3Aの両側神経電極パラメータ148に関連して先に同定されたもの等の他の検出メカニズムを介して取得される。例えば、ある実施形態では、潜在的な(同時的または交互的)両側刺激を有効化するために身体左右側面の各々に刺激カフ電極が設けられる場合、生体インピーダンスは、身体の反対の両側面に離隔されて配置されるこれらの個々の神経カフ電極間で測定することが可能である。気道の圧潰が発生すると、この生体インピーダンス信号のパターン変化が検出され、かつ無呼吸/低呼吸イベントを表示するために使用されることが可能である。当然ながら、本開示の実施形態における生体インピーダンス信号の監視は、厳密に経胸的検出メカニズムまたは離隔された刺激カフにより提供される検出メカニズムの何れかに限定されるものではない。
具体的には、ある典型的な無呼吸イベントの間の(生体インピーダンス測定の)振幅信号の観察において、システムは、時間期間10秒から40秒の(全閉塞に直結する)低振幅信号及びこれに続く睡眠からの覚醒及び確実な過呼吸に起因する(生体インピーダンス測定の)極めて高い振幅信号を観察する。図5において、正常呼吸の間の生体インピーダンス信号504はセグメント540で表され、一方で睡眠呼吸障害イベントの間の比較的低い振幅の生体インピーダンス信号504はセグメント542で表され、次には高努力セグメント544における比較的高い振幅の信号が続く。さらに、生体インピーダンス信号504の比較的低い振幅のセグメント542は、閉塞に起因して生じる気流信号502の比較的低い振幅のセグメント532に略一致する。最後に、気流信号502の高振幅セグメント534は、患者が覚醒されて睡眠呼吸障害イベントから回復するために高努力(部分274で表示)を働かせることに伴う呼吸駆動への増加を表す。
従って、ある実施形態において、IPG100は、睡眠呼吸障害行動を識別するために図5に示されているこの生理学的データを使用する。ある態様では、このデータは、システム200が動作の第2の状態204にある場合にIPG100の検出モジュール102を介して検出される。
本開示の別の実施形態において、IPG100の検出モジュール102は、呼吸圧力パラメータを介して無呼吸または低呼吸を検出する。図1−図2に関連して先に述べたように、呼吸圧力の測定は、圧力センサを胸腔外空間(図2の89で表示)または胸腔内空間(図2における破線88及び識別子90で表示)内に置くことによって行われることが可能である。呼吸圧力信号は、吸息の間に発生される負圧に比例する呼吸信号を提供する。例えば、呼吸圧力の振幅の大きさは、呼吸駆動または努力のレベルに起因して変わり、かつ上気道内の任意の気流制限に基づいても変わる。
この点に関連して、図6は、概して呼吸駆動/努力及び呼吸圧力信号552に対応する呼吸気流信号502を略示するグラフ550を提示している。図6に示されているように、これらの信号の相対振幅(y軸508で表示)は、ある時間期間(x軸506で表示)に渡って別々に追跡される。
具体的には、ある典型的な無呼吸イベントの間の(呼吸圧力測定の)振幅信号の観察において、システムは、時間期間10秒から40秒の(全閉塞に直結する)高振幅信号及びこれに続く睡眠からの覚醒及び確実な過呼吸に起因する(呼吸圧力測定の)極めて高い振幅信号を観察する。図6において、正常呼吸の間の呼吸圧力信号552はセグメント560で表され、一方で睡眠呼吸障害イベントの間の比較的高い振幅の呼吸圧力信号552はセグメント562で表され、次には高努力セグメント564における比較的高い振幅の信号が続く。さらに、呼吸圧力信号552の比較的高い振幅のセグメント562(呼吸性負圧の大きさの増大を表す)は、閉塞に起因して生じる気流信号502の比較的低い振幅のセグメント532に略対応する。
従って、(多層的システム200の第2の状態204において動作する際の)IPG100の検出モジュール102は、呼吸圧力センサからの呼吸振幅を追跡して平均ピーク圧力を識別しかつ無呼吸イベントの周期に類似する時間成分を有する周期的振幅変動を検出することにより、(図6に示されているもの等の生理学的データを用いて)無呼吸または低呼吸を検出することができる。
さらに別の実施形態において、IPG100の検出モジュール102は、2つ以上の一次生理学的信号を決定因子として用いることにより無呼吸または低呼吸を検出することができる。従って、図7Aに示されているように、無呼吸または低呼吸がいつ発生しつつあるかを決定するために、生体インピーダンス信号504及び呼吸圧力信号552の双方が使用される。図7Aに示されている例は経胸的生体インピーダンス信号を示しているが、無呼吸または低呼吸が発生しつつあるかどうかを決定するためには、他の生体インピーダンス信号が呼吸圧力信号552と組み合わせて追跡されかつ使用され得ることは理解される。
生体インピーダンス検出信号504(図5)または呼吸圧力検出信号552(図6)の何れかを単独で使用することは、ある程度のレベルの無呼吸検出を提供するが、これらの個々の検出信号は、呼吸駆動及び制限され/閉塞された気流(無呼吸/低呼吸)によって共に信号振幅が変わることから特異性に欠ける。しかしながら、生体インピーダンスセンサ及び呼吸圧力センサの双方からの生理学的データを用いる組合せは、双方のセンサが呼吸駆動の増大に起因する著しい振幅変化を有することから優れた無呼吸/低呼吸検出を提供する。実施形態によっては、これらの略変化は、無呼吸/低呼吸の発生中に反対の振幅変化を含む。具体的には、図7Aに示されているように、呼吸圧力の振幅(信号552)は気流制限に起因して著しく増大し(セグメント562)、かつ生体インピーダンス信号(504)は、気流信号502の気流制限(セグメント532)に応答して無視し得るレベルまで下がる(セグメント542)。図7Aのグラフ570の睡眠呼吸障害522部分によって示されるように、2つの信号504、552の相対振幅がグラフ570の睡眠呼吸障害部分522において描かれているように反対方向に動作する(一方が大きく増大し、一方が大きく低下する)と、閉塞された気流または無呼吸/低呼吸が検出される。しかしながら、実施形態によっては、患者の個人差に起因して、睡眠呼吸障害行動の少なくとも一部の間に呼吸圧力が(増大ではなく)低下し得ることは理解されるであろう。睡眠呼吸障害の間に示される生理学的状態が実際の個人個人の行動毎に変わる範囲において、これらの変動は、治療刺激処方及び検出モデルが特定の各患者の睡眠呼吸障害の識別における精度を保証すべく各患者に合わせて調製されるように、(少なくとも図4E−図4Hに関連して述べたような)植込み可能なパルス発生器システムの較正を介して明らかにされる。実施形態によっては、睡眠呼吸障害イベントが中枢性睡眠時無呼吸イベントであるとき、検出される生体インピーダンス信号の振幅の略変化は検出される生体インピーダンス信号の振幅の略減少を含み、かつ検出される呼吸圧力信号の振幅の略変化は検出される呼吸圧力信号の振幅の略減少を含む。他の実施形態では、睡眠呼吸障害イベントは低呼吸イベントであり、検出される生体インピーダンス信号の振幅の略変化は検出される生体インピーダンス信号の振幅の略減少を含み、かつ検出される呼吸圧力信号の振幅の略変化は検出される呼吸圧力信号の振幅の略増加を含む。しかしながら、低呼吸イベントの場合、検出される生体インピーダンス信号の振幅の個々の略減少及び検出される呼吸圧力信号の振幅の個々の略増加は各々、変化の規模において、閉塞性睡眠時無呼吸イベントで発生するものより少ない。
実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動の存在を検出する方法は、睡眠呼吸障害行動が発生しているかどうか、及び具体的には閉塞性睡眠時無呼吸が発生しているかどうかを識別するために生体インピーダンス信号を呼吸圧力信号に対してマッピングすることを含む。ある非限定的な例において、図7Bは、生体インピーダンス信号582(y軸)と呼吸圧力信号584(x軸)との関係に基づいて、異なる呼吸パターンをグリッド581として略示するグラフ580である。図7Bに示されているように、呼吸圧力の正常な振幅587及び生体インピーダンスの正常な振幅591の測定値の組合せは、正常な呼吸596が発生しつつあることを示している。
しかしながら、図7Bのグラフ580によって示されるように、閉塞性睡眠時無呼吸(または低呼吸)が生じるにつれて、生体インピーダンス信号と呼吸圧力信号とは反対方向へ移動し、結果的に呼吸圧力信号の高い振幅588と生体インピーダンス信号の低い振幅590との組合せが生じて閉塞性睡眠時無呼吸597が示される。体が過呼吸による閉塞性睡眠時無呼吸に反応するにつれて、呼吸圧力信号の高い振幅588と生体インピーダンス信号の高い振幅592との組合せは高努力または過呼吸パターン598を示す。例えば、図7Aでは、過呼吸は、呼吸圧力の振幅(セグメント564)が正常な呼吸の間の呼吸圧力の振幅(セグメント560)の約2倍であり、かつ過呼吸の間の生体インピーダンスの振幅(セグメント544)が正常な呼吸の間の生体インピーダンスの振幅(セグメント540)または無呼吸イベントの間より略高いことから観察可能である。
これらの異なる呼吸パターンを考慮して、グラフ580はさらに、正常な呼吸(596)から無呼吸イベント(597)へ、過呼吸(598)へと移動し、閉塞が減少するにつれて正常な呼吸(596)へ戻るサイクル594を示している。
実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動に続く過呼吸の振幅を監視することに加えて、システムは、過呼吸イベントの持続時間または長さを監視する。この持続時間は、先行する睡眠呼吸障害イベントにより生じる酸素脱飽和のレベルに対して相関されることも可能である。この方法では、過呼吸イベントの持続時間が睡眠呼吸障害の重症度スコアを決定する際の少なくとも1つの因子として使用され、過呼吸のより長い持続時間は概してより重篤な睡眠呼吸障害に関連づけられ、かつこれを表し、過呼吸のより短い持続時間は重症度の低い睡眠呼吸障害を表す。
実施形態によっては、過呼吸機能(図3Aにおける治療マネージャ106の過呼吸機能186等)は、睡眠呼吸障害イベント後に検出される生体インピーダンス信号の振幅の略変化を識別することを介して、睡眠呼吸障害イベントに続く過呼吸期間を識別する。さらに、実施形態によっては、過呼吸機能は、睡眠呼吸障害イベント後に検出される生体インピーダンス信号の振幅の略変化と略同時に発生する、睡眠呼吸障害イベント後に検出される呼吸圧力信号の振幅の略変化を介して過呼吸期間を識別するように構成される。実施形態によっては、過呼吸機能は、過呼吸期間に先行する睡眠呼吸障害イベントの重症度を、過呼吸期間の持続時間、睡眠呼吸障害イベントの持続時間または睡眠呼吸障害イベントに続く最も低い血中酸素飽和度のうちの少なくとも1つを基礎として識別するように構成される。
実施形態によっては、睡眠呼吸障害行動の存在を検出する方法は、睡眠呼吸障害が発生しているかどうかを決定するために生体インピーダンス信号及び呼吸圧力信号の双方の百分率変化を追跡することを含む。例えば、正常な呼吸の間に生体インピーダンス信号及び呼吸圧力信号を追跡してベースラインを確立し、次いで潜在的な睡眠呼吸障害イベントの間に生体インピーダンス信号の百分率減少(または、絶対的減少)及び呼吸圧力信号の百分率増加(または絶対的増加)を識別することができる。個々の百分率減少(生体インピーダンス)及び百分率増加(呼吸圧力)のうちの一方または双方が予め決められたしきい値(例えば、50%、75%、100%、他)を超えれば、システムは、無呼吸/低呼吸イベントが発生していると結論づける。さらなる例示として、図7Aは非限定的な例を提示し、生体インピーダンス信号504がセグメント542において(正常呼吸セグメント540における振幅Aと比較して)概して100%(振幅0で表示)減少したこと、及び呼吸圧力信号552がセグメント562において(正常呼吸セグメント560における振幅Aと比較して)概して100%(振幅2Aで表示)増加したことを示している。この測定が2つの個々の百分率変化(100、100)の平均(100%)を含み、かつしきい値が変化90%であるとすれば、個々の信号の平均変化100%はしきい値(例えば、90%)を超え、これは、睡眠呼吸障害イベントが発生していることを示す。この睡眠呼吸障害イベントの発生は、気流信号502の対応するセグメント532によってモデリングされている。
実施形態によっては、しきい値平均百分率の変化は、息の最小量、呼吸サイクルの予め設定された最小量または複数の呼吸サイクルを含む予め決められた時間期間のうちの少なくとも1つに基づく。
これらの理由により、本開示の原理に従って、生体インピーダンス信号と呼吸圧力信号との組合せの使用は、無呼吸の誤検出識別を生み出す可能性が少ないロバストな無呼吸または低呼吸の検出方法を有効化する。
しかしながら、本開示による実施形態は、生体インピーダンス信号及び/または呼吸圧力信号の使用のみを介する無呼吸(または低呼吸)の検出に限定されない。他の生理学的信号も、無呼吸/低呼吸が発生しつつあることの示度を提供することが知られている。これらの信号は、上述のアプローチを補強するために、無呼吸/低呼吸が発生しつつあることをさらに確認するように処理されることが可能である。例えば、心拍数は閉塞性無呼吸の発現時には減少することが知られ、続いて心拍数は無呼吸の終わりへ向けて、かつ無呼吸の直後に急速に上昇する。別の例では、(植込まれたシステムを介して光学的に測定される)血液酸素レベルは、無呼吸イベントの間及び無呼吸イベントに続いて降下することが知られている。従って、このような生理学的データは、無呼吸/及び低呼吸の存在または不在をさらに確認するために、IPG100の検出モジュール102を介して入手されることが可能である。さらに、図7Aに示されている呼吸圧力及び生体インピーダンスの一次生理学的データに加えて、これらの生理学的信号からのデータ(例えば、心拍数、血液酸素)は、無呼吸/低呼吸イベントの重症度の示度を提供する無呼吸/低呼吸イベントの持続時間及び/または強度を測定するために追加的に用いられる。
これらの一般原理を考慮して、図7Cは、本開示の一実施形態による、睡眠呼吸障害行動(無呼吸イベントまたは低呼吸イベント等)を識別する方法600を略示している。図7Cに示されているように、方法600は、(ステップ602において)生体インピーダンスを検出することと、略変化(略減少等)が発生しているかどうかを検出することを含む。ステップ610において、方法600は、呼吸圧力を検出することと、略変化(例えば、増加)が発生しているかどうかを検出することを含む。検出された生体インピーダンス及び検出された呼吸圧力の双方の略変化が検出されれば、ステップ608において無呼吸イベント(睡眠呼吸障害)が識別される。しかしながら、睡眠呼吸障害イベントの存在または不在をさらに確認するためには、追加的なしきい値の使用が可能である。実施形態によっては、ステップ620の時点で、方法600は、検出された生体インピーダンス及び/または検出された呼吸圧力の百分率変化がしきい値(例えば、しきい値の百分率変化)を超えているかどうかを問い合わせる。超えていなければ、(ステップ622において、)検出された行動が無呼吸イベントではないことが決定される。しかしながら、しきい値が満たされ、または超えられていれば、本方法は、ステップ624において無呼吸イベントの存在を確定する。
実施形態によっては、さらなる確認は方法600において、ステップ630で、検出された心拍数が潜在的な無呼吸イベントの一部の間に減少し、次いでこの潜在的無呼吸イベントの後に増加するかどうかを観察することを介して与えられる。そうでなければ、無呼吸イベントは発生していない(ステップ632)。しかしながら、そうした心拍行動が確認されれば、無呼吸イベント(即ち、睡眠呼吸障害行動)のさらなる確認が与えられる。実施形態によっては、さらなる確認は方法600において、ステップ636で、睡眠呼吸障害行動と略同時に発生する血中酸素飽和度の略減少を観察することを介して与えられる。この観察が欠けていれば、方法600は、ステップ638において無呼吸イベントが発生しなかったと決定することも可能である。実施形態によっては、睡眠呼吸障害のさらなる確認が、方法600のステップ640において、潜在的な無呼吸イベント後の過呼吸の検出を介して行われる。過呼吸が発見されなければ、無呼吸イベントは発生していない。しかしながら、このような過呼吸が識別されれば、方法は睡眠呼吸障害イベントまたは行動の存在を確認する。実施形態によっては、ステップ620、630、636及び640における様々な確認の問合せは任意の順序で実行され得る、または同時に実行され得ること、及び1つまたは複数の特定の問合せは省略され得る、または生理学的状態に基づく他の確認の問合せが追加され得ることは理解されるであろう。
本開示の別の実施形態は、AHI(無呼吸低呼吸指数)または別の無呼吸重症度指数または採点ツールの測定値に基づき、睡眠呼吸障害行動を治療する治療レベルを自動的に調整するためのシステム及び方法を含む。このシステムでは、治療レベルは、睡眠状態、身体位置及び他の生理学的要素(例えば、アルコール摂取、眠気、他)に基づき変わることが知られる患者のニーズに合わせて自動的に調整される。治療の調整は、後にさらに詳述するように、治療レベルを増分または減分することを含む。さらに、後の説明から明らかとなるように、治療レベルを自動的に調整するためのこの「自動滴定」システム及び方法は、従来的な持続的気道陽圧(CPAP)システムとは略異なる方法で動作する。他の相違点の中でもとりわけ、植込み可能な神経刺激システムは、本開示の原理に従って、睡眠呼吸障害行動(閉塞性睡眠時無呼吸等、但しこれに限定されない)を治療する略異なるタイプのアプローチを提供する。必然的に、植込み可能な神経刺激システムにおいて使用される治療パラメータ及び制御システムのタイプは、CPAPシステムにおいて使用される治療パラメータ及び制御システムとは略異なる。
図8Aは、本開示の実施形態及び原理による、治療レベルを自動的に調整する方法700を略示するフロー図である。ある実施形態において、方法700は、図1−図7Bに関連して先に述べたシステム、コンポーネント及び他の方法を用いて実行される。他の実施形態では、方法700は他のシステム及びコンポーネントを用いて実行される。
図8Aに示されているように、ボックス702において、方法700は、無呼吸/低呼吸イベントの頻度を追跡するために、IPG100の検出モジュール102を介して提供される生理学的信号701に基づき、一定の時間期間に渡って無呼吸の回数(AHI)または無呼吸重症度スコアを測定することを含む。本方法は、一定の時間期間に渡る無呼吸/低呼吸の受容可能な回数(例えば、1時間当たりの無呼吸の回数)に対応して予め決められる設定点、または受容可能な無呼吸重症度スコアに対応する設定点を確立することを含む。実施形態によっては、この設定点は一定であるが、他の実施形態では、設定点はプログラム可能である(例えば、0、1、3、5、10イベント/時、他)。別の実施形態では、所定の時間期間内で無呼吸/低呼吸の回数を計数することに加えて、本方法は、患者行動の測定値が設定点より上であるか下であるかを決定するために1つまたは複数の無呼吸イベントの強度及び/または持続時間も凝視する。この後者の実施形態では、無呼吸の回数、無呼吸の持続期間及び無呼吸の強度(並びに他の生理学的データ)が重症度スコアに組み合わされる。ある実施形態において、無呼吸イベントの強度は少なくとも部分的に、血液酸素レベルの百分率減少(または、絶対測定)、心拍数の変化及び/または無呼吸に続く過呼吸の持続時間によって決定される。
ボックス704に示されているように、本システム/方法は、AHI(または他の指数)の測定値が予め決められた設定点より上であるか否かを周期的に問い合わせる。ボックス704における問合せの回答が肯定(即ち、はい)であれば、多過ぎる無呼吸/低呼吸が発生しつつあり、方法700は、ボックス708により表されるように治療のレベルを増分または増大する方向へ進む。治療レベルが増大されるにつれて、方法700は、ボックス702によって表されるように、進行中である無呼吸イベントの回数(または無呼吸重症度スコア)の測定を継続する。
一方で、ボックス704における問合せの回答が否定(即ち、いいえ)であれば、現行の治療レベルは、患者の無呼吸/低呼吸状態を少なくとも十分に治療しているものとされる。しかしながら、より少ないレベルの治療でも、患者の無呼吸/低呼吸状態を十分に治療し得る可能性がある。より低いレベルの治療は、標的神経の潜在的疲労を回避するためには望ましいと思われ、一方でIPG100により消費される電力量も低減される。治療レベルが(ボックス706で表されるように)減分されると、方法700は、十分な治療レベルが保たれているかどうかを決定するためにその無呼吸イベントの回数(または、無呼吸重症度スコア)の測定を持続する。
このようにして、方法700は、患者に投与される治療のレベルを連続的に評価し、次いで当然の結果として、治療の少なくとも1つの治療レベルが維持されることを保証しながら患者が標的神経へ不必要な刺激を受けることを防止する(即ち、過剰刺激を防止する)ために治療レベルの増分または減分を自動的に実装する。ある態様では、この方法700はまた、治療が正当化されない場合は、延長された時間期間に渡って全ての刺激を停止する。実施形態によっては、治療レベルの増分的増大は、治療レベルが減分されるステップより略大きい(例えば、50%、100%)ステップにおいて実行される。言い替えれば、治療レベルの増大は、治療の減少よりも積極的に行われる。この手配によって、方法700は、無呼吸イベントの排除にはより迅速に動作するが、より低い有益な治療レベルの発見を試行する際にはより遅速で動作する。
ある実施形態において、コントローラは、患者の覚醒を促す、または患者に不快感を起こさせる標的神経または周辺組織への過剰刺激を防止するために予め決められるかプログラム可能の何れかである最大刺激設定値を有する。これらの最大レベルは、医師によって、システムの機能性について診察室で問診しながらプログラムされてもよい。この方法では、治療のパラメータが概して大多数の患者の快適さの限界内に留まるように、自動滴定方法に境界が確立される。さらに、実施形態によっては、方法700は、患者にとって治療が快適でない場合に患者がレベル(振幅、持続時間、他)を下げるために自動治療の方法を無効にできるように構成される患者用オーバーライド機能(図9において患者のオーバーライド機能459として表示)を含む。実施形態によっては、この機能は、図2に関連して先に述べたように、患者用プログラマ230の増加/低減機能250によって利用可能である。
図8Bは、本開示の一実施形態による、睡眠呼吸障害を治療するための自動的に調整可能な治療方法720をさらに示す。図8Bに示されているように、ステップ722において方法720は、ベースラインに対する睡眠呼吸障害行動の重症度を追跡することを含む。この重症度は、睡眠呼吸障害(SDB)イベントの頻度、個々のSDBイベントの持続時間、個々のSDBイベントの強度、過呼吸の存在(並びにその持続時間または強度)、心拍数の変化及び/または血中酸素飽和度の変化のうちの1つまたはそれ以上に基づく。
726において方法720は、気道開存性関連の神経へ神経刺激信号を第1の強度レベルで印加することを含む。ステップ728において方法720は、印加された神経刺激に反応して、追跡されるSDB行動の重症度をしきい値に対して評価することを含む。ステップ730では、評価されたSBD行動の重症度に反応して、神経刺激処方が第1の強度レベルから第2の強度レベルへ自動的に調整される。この調整は、ステップ732における評価されたSDB重症度がしきい値に適合するか超える場合の神経刺激の強度レベルの自動増分、またはステップ734における評価されたSDB重症度がこのしきい値を下回る場合の神経刺激の強度レベルの自動減分の何れかとして発生する。
実施形態によっては、自動的に治療を行う方法700は、少なくとも部分的に刺激良好度機能によって管理される。具体的には、少なくとも(患者用プログラマまたは医師用プログラマを介するフィードバックに基づく)患者の快適さ、治療による効力及び長寿命の各要素のバランスをとる刺激良好度機能に従って設定点が選択され、監視されかつ動的に調整される。ある実施形態において、刺激良好度機能は図10に示されている方法で動作する。
図10は、設定点を自動的に調整する方法を略示したものであり、増大する治療刺激量854(y軸)と治療の良好度パラメータ852(x軸)との関係がマッピングされている。良好度の増大は、患者の快適さレベルの増大、デバイスの長寿命及び無呼吸イベントの回数または重症度の低減における治療の効力に対応している。図10に示されているように、グラフ850は刺激良好度プロファイル860を描き、かつ標的神経へ印加される刺激の強度または出力(854)の上限872及び効き目のある最低レベルの治療を達成するために必要な刺激の強度または出力の下限570も同定している。実施形態によっては、下限及び上限の一方または双方は医師が規定する設定点に一致するが、他の実施形態では、下限及び上限の一方または双方は製造時に規定された設定点に一致する。或いは、これらの上限及び/または下限は、無呼吸イベント及び/または患者のコマンドの監視を介してアルゴリズム的に決定される。
図10から分かるように、より低い強度/出力においては、測定される良好度(852)は比較的低く(873で指示)、強度/出力が増大するにつれて、測定される良好度は徐々に増加し(セグメント874及び882で指示)、最適点880が達成されるまで患者にとってより良い治療経験が提供される。最適点における強度/出力のさらなる増大は、増大された強度/出力が印加されることから、患者にとっての良好度の測定値は漸減する(セグメント884で示す)。言い替えれば、最適点880は、最低強度/出力より上位で患者に最大の全体的利点を提供する点を表し、一方で強度/出力のそれ以上の増大は患者への全体的利点を減らすので、即ち収益逓減点(diminishing returns)を表している。言い替えれば、点880を超える刺激強度の増大は、患者の快適さを減らし、エネルギー使用量を増やし、かつ/または効力を下げる結果となる。従って、刺激良好度機能の実装により、最低限及び/または医師が規定する設定値を僅かに上回る刺激レベルの動的な増大が患者に対する全体的利点の大幅な増大をもたらすことができる。一方で、設定点が高すぎる場合、刺激良好度機能は、患者に対する全体的利点を増大させるために設定点をより低い値へ動的に案内することができる。
ある実施形態において、治療レベルは、図3Aに示されているIPG100の治療マネージャ106の自動滴定モジュール170(及び治療パラメータモジュール168)を介して増分または減分されることが可能である。この点に関連して、図9は、睡眠呼吸障害行動を治療するために治療レベルを自動的に調整する方法700に従って使用される自動滴定モジュール170(及び治療パラメータモジュール168)の追加的な特徴及び属性を略示するブロック図である。
図9に示されているように、自動滴定モジュール750は、図8Aに示されている方法700に従って治療レベルを維持し、増分し、または減分するように構成される。ある実施形態において、自動滴定モジュール750は、下記の機能及びモジュール、即ちオン/オフモジュール752、強度モジュール754、デューティ・サイクル・モジュール756、リセットモジュール758、患者用オーバーライド機能459及び睡眠検査パラメータ797を含む機能及びモジュールのうちの1つまたはそれ以上を含む。
ある実施形態において、オン/オフモジュール752は、(気道開存性を回復させる)上気道の標的神経/筋肉への刺激を活性化または非活性化するように構成される。ある態様において、モジュール752の「オフ」状態は、IPG100が患者の身体動作または活動を監視する、または刺激が印加されない状態を除いて無呼吸を検出するように構成されるシステム200(図4A参照)の第1の状態202または第2の状態204に対応する。しかしながら、モジュール752の「オン」状態は、患者に刺激治療が行われるべきシステム200の第3の状態206に直に対応する。
さらに、このオン/オフモジュール752が「オン」状態にあるとき、標的神経への刺激は、各々連続パラメータ762及び同期パラメータ760に従って連続的に、または(図3AのIPG100の刺激モジュール104を介して)呼吸/吸息と同期されて与えられてもよい。別の態様において、強度モジュール754は、所望されるレベルの神経補充を達成するために、標的神経への刺激信号の振幅(パラメータ780)、レート(速度)(パラメータ782)及び/またはパルス幅(パラメータ784)を選択する。また、実施形態によっては、強度モジュール754は、図3AのIPG100に関連して先に述べたような多サイトパラメータ194A、両側性パラメータ194B及び束パラメータ194Cを含む、またはこれらと協調して動作可能であることも理解される。さらに、強度モジュール754は、(完全パラメータ790で表示されるように)神経/筋肉が完全に補充されるまで神経支配のある筋へ(トーンパラメータ786で表示されるような)微量のトーンを与えるしきい値下の強度、攣縮強度(攣縮パラメータ788で表示)及び/または可変レベルの神経/筋肉補充を印加することによって、刺激強度をさらに変調するように構成される。
ある実施形態において、自動滴定モジュール750は自己学習式である。言い替えれば、予め決められた順序のパラメータ調整を用いて刺激の振幅、速度及び/またはパルス幅(即ち、刺激パラメータ設定値)を調整することにより、所望されるレベルの神経補充が達成される。実施形態によっては、この予め決められた順序は、所定の患者に対する治療に応じてデータを入手するより前に自動的に用いられ、かつある患者集団の統計分析に基づいてもよい。使用に際して、自動滴定モジュール750は、利用可能な検出及び刺激パラメータを監視し、所定の患者に対する治療の反応を(設定値の予め決められた順序/レベルを用いて)評価し、次いで刺激治療に最適な設定値を識別(しかつ実装)する。別の態様において、自動滴定モジュール750は、決定された最新の最適パラメータ設定値を適用し、治療の反応を評価しかつパラメータ設定値を調整するプロセスを反復して行う。このようにして、自動滴定モジュール750は、ある時間期間に渡って治療が行われるにつれて最良の治療設定値を自己学習する。
ある実施形態では、先に述べたように、自動滴定モジュール750は、患者の体内に植え込まれた(システム200及び/または方法700の一部としての)IPG100が睡眠ポリグラフ計または他の睡眠検査システムと協調してその特定の患者の治療パラメータを学習することを命じるように構成される睡眠検査パラメータ797を含む。この手配において、IPG100(図2)の検出モジュール102は、IPG100を介して検出されるパラメータが、様々な無呼吸関連の生理学的イベント、パターン及び行動の示度である既知の睡眠検査パラメータと相関されかつ上記パラメータに対して較正されるように、睡眠検査中は活性である。このような相関の数例は、図4Eに関連して先に述べた。従って、睡眠検査を介してIPG100は、無呼吸イベントを取り巻く患者の生物学的パターンを学習し、これが(システム200及び方法700の一部としての)自動滴定モジュール750の刺激治療設定値のベースラインまたは初期設定を確立することに助力する。このベースラインが確立された後、システム200及び/または方法700は、少なくとも図1−図8に関連して先に述べた方法と略同一に動作する。
実施形態によっては、自動滴定モジュール750は、(発現パラメータ794により表示されるような)吸息発現のタイミングが治療の積極性及び効用に影響することが知られていることから、刺激が開始する吸息発現前または吸息発現後の時間量を含む刺激時間の持続時間を管理する刺激デューティ・サイクル・モジュール756も含む。例えば、吸息発現後の刺激の開始は、気道が刺激以前に閉塞している(かつ、一旦閉塞すると刺激では閉塞を克服できない場合がある)ことに起因して効き目がない場合がある。しかしながら、吸気発現よりかなり前に刺激を開始することは、気道が閉止する前に刺激を与えることにより気流制限または全閉塞を防止する点で有益である場合がある。従って、1つの治療方法は、吸気発現より前に標的神経の刺激を引き起こすことを含む。(無呼吸治療のための神経刺激のトリガに関連して)吸気発現前後の時間期間について記述している1つの特許は、Christophersonの「呼吸努力の検出方法と装置」と題する米国特許第5,944,680号であり、これは、本参照によりその全体が開示に含まれる。別の態様において、肺の不完全な排気は、次の息で吸い込まれ得る外気の量を減らす。従って、実施形態によっては、デューティ・サイクル・モジュール756は、吸息の終わりの前または後の刺激オフ(即ち、停止)のタイミングを制御する停止パラメータ796を含む。
再度図9を参照すると、本開示の実施形態によっては、自動滴定モジュール750はリセットモジュール758を含む。一般的に言えば、リセットモジュール758は、上気道の刺激と呼吸との同期を促進するように構成される。呼吸波形の信号処理は、無呼吸または低呼吸のサイクルの間は、主に様々に変化する呼吸信号の形態学に起因して困難になる可能性がある。しかしながら、刺激と呼吸波形との安定的な同期が達成されれば、無呼吸/低呼吸は容易に防止される。
従って、無呼吸/低呼吸のサイクル中にこのような信号処理を実行する困難さに鑑みて、この一実施形態では、リセットモジュール758が(無呼吸/低呼吸のサイクル中に)、患者を安定した呼吸へと効果的に「リセット」する略連続する刺激または略連続する刺激バースト(または他の予め決められた時間期間)を印加する。実施形態によっては、この刺激バーストは、約20秒間続くことが可能である。ある実施形態において、略連続する刺激バーストは、2つの公称呼吸サイクルの持続時間より長い第1の時間期間に渡って続く。このリセットの間、患者は非無呼吸の呼吸周期にあることから、システムは、刺激と呼吸とをより良く同期させることができる。この「リセット」刺激は、幾つかの非閉塞息の発生を可能にし、かつ信号処理による安定した呼吸信号の追跡を可能にする。リセットの後、個々の刺激印加は各々、神経/筋肉疲労が生じないことを保証するために、(本明細書において先に述べた本開示の治療方法及び実施形態による)単一の呼吸サイクルの一部(または分画)に対応する持続時間に限定される。ある実施形態において、リセットモジュール758はリセットモードの間、略連続する刺激バーストの効力を観察するために呼吸圧力信号も追跡する。
別の実施形態では、ノイズの多い環境に起因して(または他の理由で)一貫した呼吸情報を取得できない場合、刺激は、適切な呼吸情報が入手可能になるまで、または刺激が一定の断続的なデューティサイクルを有する交互刺激に変換されるまで完全に中断される。ある非限定的な例において、交互刺激は、刺激のない3秒間で分離されるデューティサイクル2秒の刺激を有する。
別の実施形態において、(図3Aにおける治療マネージャ106の自動滴定モジュール170等の)自動滴定モジュール750の両側機能791は、身体の左側面及び右側面を(機能792を介して)交互に刺激するか、(機能793を介して)同時に刺激するかを決定するために、刺激モジュール104(図3A)の両側性パラメータ194Bと協働する。さらに、刺激モジュール104(図3A)の多サイトパラメータ194Aと共に使用される場合、自動滴定モジュール750は、1つまたは複数の神経に沿って異なる部位を同時に刺激するか、交互に刺激するか、身体の左側を刺激するか右側を刺激するかも決定する。
これまでの詳細な説明では、少なくとも1つの例示的な実施形態を提示したが、変形例が存在することは認識されるべきである。また、上記1つまたはそれ以上の例示的な実施形態は単なる例であって、如何なる場合も本開示の範囲、適用可能性または構成を限定するためのものではないことも認識されるべきである。むしろ、これまでに行った詳しい説明は、当業者に上記1つまたはそれ以上の例示的実施形態を実装するための便宜的なロードマップを提供する。エレメントの機能及び配置については、添付の請求の範囲及びその法的な同等物に記載された本開示の範囲を逸脱することなく様々な変更が実行され得ることは理解されるべきである。