以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本件において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板等とも呼ばれ得るような部材や部分も含む概念である。
タッチパネル装置
はじめに図1および図2を参照して、タッチパネル装置20全体について説明する。図1および図2に示されたタッチパネル装置20は、投影型の静電容量結合方式として構成され、タッチパネル装置20への外部導体(例えば、人間の指)の接触位置を検出可能に構成されている。なお、静電容量結合方式のタッチパネル装置20の検出感度が優れている場合には、外部導体がタッチパネル装置に接近しただけで当該外部導体がタッチパネル装置のどの領域に接近しているかを検出することができる。このような現象にともなって、ここで用いる「接触位置」とは、実際には接触していないが位置を検出され得る接近位置を含む概念とする。
図1および図2に示すように、タッチパネル装置20は、表示装置(例えば液晶表示装置)15とともに組み合わせられて用いられ、入出力装置10を構成している。図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部17と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができる表示領域A1と、表示領域A1を取り囲むようにして表示領域A1の外側に配置された非表示領域(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部17は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部17の制御信号により、所定の映像を表示面16aに表示するようになる。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置として役割を担っている。
図1に示すように、タッチパネル装置20は、表示装置15の表示面16a上に配置されたタッチパネルセンサ30と、タッチパネルセンサ30に接続された検出制御部25と、を有している。このうちタッチパネルセンサ30は、図2に示すように、表示装置15の表示面16a上に接着層19を介して接着されている。上述したように、タッチパネル装置20は、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成されており、情報を入力する入力装置としての役割を担っている。
また、図2に示すように、タッチパネル装置20は、タッチパネルセンサ30の観察者側、すなわち、表示装置15とは反対の側に、誘電体として機能する透光性を有した保護カバー12をさらに有している。保護カバー12は、タッチパネルセンサ30上に接着層14を介して接着されている。この保護カバー12は、タッチパネル装置20への入力面(タッチ面、接触面)として機能するようになる。つまり、保護カバー12に導体、例えば人間の指5を接触させることにより、タッチパネル装置20に対して外部から情報を入力することができるようになっている。また、保護カバー12は、入出力装置10の最観察者側面をなしており、入出力装置10において、タッチパネル装置20および表示装置15を外部から保護するカバーとしも機能する。
なお、上述した接着層14,19としては、種々の接着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、本明細書において、「接着(層)」は粘着(層)をも含む概念として用いる。
タッチパネル装置20の検出制御部25は、タッチパネルセンサ30に接続され、保護カバー12を介して入力された情報を処理する。具体的には、検出制御部25は、保護カバー12へ導体(典型的には、人間の指)5が接触している際に、保護カバー12への導体5の接触位置を特定し得るように構成された回路(検出回路)を含んでいる。また、検出制御部25は、表示装置15の表示制御部17と接続され、処理した入力情報を表示制御部17へ送信することもできる。この際、表示制御部17は、入力情報に基づいた映像情報を作成し、入力情報に対応した映像を表示パネル16に表示させることができる。
なお、「容量結合」方式および「投影型」の容量結合方式との用語は、タッチパネルの技術分野で用いられる際の意味と同様の意味を有するものとして、本件においても用いている。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本件では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネル装置は導電体層を含んでおり、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接触することにより、外部の導体とタッチパネル装置の導電体層との間でコンデンサ(静電容量)が形成されるようになる。そして、このコンデンサの形成にともなった電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接触している位置の位置座標が特定されるようになる。また、「投影型」の容量結合方式は、タッチパネルの技術分野において「投影式」の容量結合方式等とも呼ばれており、本件では、この「投影式」の容量結合方式等と同義の用語として取り扱う。「投影型」の容量結合方式とは、典型的には、格子状に配列されたセンサ電極を有し、膜状の電極を有する「表面型」の容量結合方式と対比され得る。
タッチパネルセンサ
次に図2乃至図4を参照して、タッチパネルセンサ30について詳述する。図2に示すように、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の一方の側(観察者側)の面32a上に所定のパターンで設けられた第1透明導電体40と、基材フィルム32の他方の側(表示装置15の側)の面32b上に所定のパターンで設けられた第2透明導電体45と、を有している。
このうち基材フィルム32は、タッチパネルセンサ30において誘電体として機能するものである。図3Aに示すように、基材フィルム32は、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1に隣接する非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。このうちアクティブエリアAa1は、図1に示すように、表示装置15の表示領域A1に対面する領域を占めており、一方、非アクティブエリアAa2は、矩形状のアクティブエリアAa1を四方から周状に取り囲むように、言い換えると、額縁状に形成されている。この非アクティブエリアAa2は、表示装置15の非表示領域A2に対面する領域に形成されている。
前述のとおり、基材フィルム32には第1透明導電体40および第2透明導電体45が設けられており、このうち基材フィルム32のアクティブエリアAa1に設けられた第1透明導電体40および第2透明導電体45により、外部導体5との間で容量結合を形成し得る第1センサ電極36aおよび第2センサ電極37aがそれぞれ形成されている(図3A参照)。後述するように、基材フィルム32、第1透明導電体40および第2透明導電体45はそれぞれ透光性を有しており、このため観察者は、これらを介して、表示装置15に表示された映像を観察することができる。
一方、図3Aに示すように、基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に設けられた第1透明導電体40および第2透明導電体45により、第1センサ電極36aおよび第2センサ電極37aとの電気的接続を有する第1取出配線36bおよび第2取出配線37bがそれぞれ形成されている。取出配線36b,37bは、その一端においてセンサ電極36a,37aに接続され、また、その他端において、外部導体5の表示面16aへの接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。
なお図3Aおよび図3Bに示すように、第1取出配線36bは、第1透明導電体40の一部分上に設けられた第1取出導電体43を更に含んでいてもよい。同様に、第2取出配線37bは、第2透明導電体45の一部分上に設けられた第2取出導電体48(後に図5(d)にて示す)を更に含んでいてもよい。ここで、第1取出導電体43の比抵抗は第1透明導電体40の比抵抗よりも小さくなっており、また第2取出導電体48の比抵抗は第2透明導電体45の比抵抗よりも小さくなっている。このため、第1取出配線36bおよび第2取出配線37bが第1取出導電体43および第2取出導電体48を更に含むことにより、センサ電極36a,37aからの電気信号をより効率良く検出制御部25の検出回路に伝導させることができる。
また図3Bに示すように、第1取出配線36bにおいて、第1透明導電体40と第1取出導電体43との間に第1中間層61が介在されていてもよい。同様に、第2取出配線37bにおいて、第2透明導電体45と第2取出導電体48との間に第2中間層66(後に図5(d)にて示す)が介在されていてもよい。さらに、図3Bに示すように、第1取出配線36bにおいて、第1取出導電体43上に第1保護層62が設けられていてもよい。同様に、第2取出配線37bにおいて、第2取出導電体48上に第2保護層67(後に図5(d)にて示す)が設けられていてもよい。
次に、タッチパネルセンサ30を構成する各要素についてさらに詳述する。
透明導電体
はじめに、第1透明導電体40および第2透明導電体45について詳述する。第1透明導電体40および第2透明導電体45は、導電性を有した材料から形成され、外部導体5の保護カバー12への接触位置を検出するように構成された検出制御部25の検出回路に電気的に接続されている。第1透明導電体40は、基材フィルム32のアクティブエリアAa1に配置された多数の第1センサ部(第1センサ導電体、センサ電極)41と、各第1センサ部41にそれぞれ接続され基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に配置された多数の第1接続部(第1端子導電体)42と、を有している。同様に、第2透明導電体45は、基材フィルム32のアクティブエリアAa1に配置された多数の第2センサ部(第2センサ導電体、センサ電極)46と、各第2センサ部46にそれぞれ接続され基材フィルム32の非アクティブエリアAa2に配置された多数の第2接続部(第2端子導電体)47と、を有している。
第1透明導電体40の第1センサ部41は、基材フィルム32の一方の側(観察者側)の面32a上に所定のパターンで配置されている。また、第2透明導電体45の第2センサ部46は、基材フィルム32の他方の側(表示装置15の側)の面32b上に、第1透明導電体40の第1センサ部41のパターンとは異なる所定のパターンで配置されている。より具体的には、図3Aに示すように、第1透明導電体40の第1センサ部41は、基材フィルム32のフィルム面に沿った一方向に並べて配列された線状導電体として構成されている。また、第2透明導電体45の第2センサ部46は、前記一方向と交差する基材フィルム32のフィルム面に沿った他方向に並べて配列された線状導電体として構成されている。図3Aに示すように、第1センサ部41の配列方向である一方向と、第2センサ部46の配列方向である他方向と、は基材フィルム32のフィルム面上において直交している。
図3Aに示すように、第1センサ部41をなす線状導電体の各々は、その配列方向(前記一方向)と交差する方向に線状に延びている。同様に、第2センサ部46をなす線状導電体の各々は、その配列方向(前記他方向)と交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示する例において、第1センサ部41は、その配列方向(前記一方向)と直交する方向(前記他方向)に沿って直線状に延びており、第2センサ部46は、その配列方向(前記他方向)と直交する方向(前記一方向)に沿って直線状に延びている。
本実施の形態において、各第1センサ部41は、直線状に延びるライン部41aと、ライン部41aから膨出した膨出部41bと、を有している。図示する例において、ライン部41aは、第1センサ部41の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部41bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部41aから膨らみ出ている部分である。したがって、各第1センサ部41の幅は、膨出部41bが設けられている部分において太くなっている。図3Aに示すように、本実施の形態において、各第1センサ部41は、膨出部41bにおいて平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46も、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41と同様に構成されている。すなわち、第2透明導電体45に含まれる各第2センサ46は、直線状に延びるライン部46aと、ライン部46aから膨出した膨出部46bと、を有している。図示する例において、ライン部46aは、第2センサ部46の配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部46bは、基材フィルム32のフィルム面に沿ってライン部46aから膨らみ出ている部分である。したがって、各第2センサ部46の幅は、膨出部46bが設けられている部分において太くなっている。図3Aに示すように、本実施の形態において、各第2センサ部46は、膨出部46bにおいて平面視略正方形形状の外輪郭を有するようになっている。
なお、図3Aに示すように、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合(すなわち、平面視において)、第1透明導電体40に含まれる各第1センサ部41は、第2透明導電体45に含まれる多数の第2センサ部46と交差している。そして、図3Aに示すように、第1透明導電体40の膨出部41bは、第1センサ部41上において、隣り合う二つの第2センサ部46との交差点の間に配置されている。同様に、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第2透明導電体45に含まれる各第2センサ部46は、第1透明導電体40に含まれる多数の第1センサ部41と交差している。そして、第2透明導電体45の膨出部46bも、第2センサ部46上において、隣り合う二つの第1センサ部41との交差点の間に配置されている。さらに、本実施の形態において、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41の膨出部41bと、第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46の膨出部46bとは、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に重ならないように配置されている。つまり、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41と第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46とは、各センサ部41,46のライン部41a、46aのみにおいて交わっている。
上述したように、第1透明導電体40は、このような第1センサ部41に接続された第1接続部42を有している。第1接続部42は、第1センサ部41の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一端または両端に設けられている。各第1接続部42は、対応する第1センサ部41の端部からそれぞれ線状に延び出している。同様に、第2透明導電体45は、第2センサ部46に接続された第2接続部47を有している。第2接続部47は、第2センサ部46の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一端または両端に設けられている。各第2接続部47は、対応する第2センサ部46の端部からそれぞれ線状に延び出している。図3Aに示すように、本実施の形態において、第1接続部42は第1センサ部41と同一の材料から一体的に形成され、第2接続部47は第1センサ部46と同一の材料から一体的に形成されている。
第1透明導電体40および第2透明導電体45の材料としては、透明性および所要の導電性を有するものが用いられる。このような材料として、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物を挙げることができ、また、これらの金属酸化物が2種以上複合されてもよい。第1透明導電体40および第2透明導電体45の形成方法は特には限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法、塗工法、印刷法などを用いることができる。本実施の形態においては、第1透明導電体40および第2透明導電体45が、スパッタリング法により形成されたITOからなる。
なおITOからなる透明導電体40、45の光屈折率は、光波長550nm付近において例えば1.94となっている。光屈折率の算出方法は特には限定されないが、例えばエリプソメーターを用いた測定から算出される。また後述する基材フィルム32の各層においても、当該各層の光波長550nm付近における光屈折率が例えばエリプソメーターを用いた測定から算出される。
ITOからなる透明導電体40、45の厚みは、好ましくは20nm以下となっており、例えば各々18nmとなっている。膜厚が小さい場合、例えば40nm以下の場合、一般に、透明導電体40、45の厚みが小さいほど、透明導電体40、45に由来する光の反射率は小さくなり、吸収項の影響が小さいため透過率が高くなる。
透明導電体40、45とフィルム本体33との間にアンダーコート層およびアンカー層(後述)が介在されていない場合、一般に、透明導電体40、45における光の反射率が小さいほど、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差も小さくなる。このため、透明導電体40、45の厚みをより小さくすることにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差を小さくすることができ、これによって、透明導電体40、45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
一方、透明導電体40、45とフィルム本体33との間にアンダーコート層およびアンカー層を介在させると、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率と、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率とが変化する。この際、アンダーコート層およびアンカー層を適切に設計することにより、透明導電体40、45がパターニングされている領域における反射率、または、透明導電体40、45がパターニングされていない領域における反射率のうちどちらか一方をより大きく変化させることができる。これによって、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差を小さくすることができる。すなわち、アンダーコート層およびアンカー層を透明導電体40、45とフィルム本体33との間に介在させることにより、薄膜干渉の効果が生じ、これによって、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差を小さくすることができる。
本実施の形態においては、透明導電体40、45の厚みをより小さくすること、および、透明導電体40、45とフィルム本体33との間にアンダーコート層およびアンカー層を介在させることにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差を小さくすることを意図している。
ところで、一般に、透明導電体40、45の厚みが小さいほど、透明導電体40、45の電気抵抗は大きくなる。透明導電体40、45の電気抵抗が大きくなると、透明導電体40、45からなるセンサ電極36a,37aから検出制御部25の検出回路に送られる電気信号が阻害されることが考えられる。このため、透明導電体40、45の厚みを従来よりも小さくする場合、透明導電体40、45の電気抵抗が過大にならないよう、透明導電体40、45の材料として従来よりも比抵抗の小さい材料を用いることが好ましい。例えば、透明導電体40、45の比抵抗は4×10−6Ωm(23℃、55%RH)以下であることが好ましい。
取出導電体
次に、第1取出導電体43および第2取出導電体48について詳述する。上述したように、第1取出導電体43は、第1透明導電体40の一部分上に第1中間層61を介して配置されており、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の一部分上に第2中間層66を介して配置されている。より具体的には、第1取出導電体43は、第1透明導電体40の第1接続部42の一部分上に第1中間層61を介して配置されており、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の第2接続部47の一部分上に第2中間層66を介して配置されている。すなわち、第1取出導電体43は、基材フィルム32の一方の側の面32aにおいて、非アクティブエリアAa2に配置されており、第2取出導電体48は、基材フィルム32の他方の側の面32bにおいて、非アクティブエリアAa2に配置されている。
図3Aに示すように、第1透明導電体40の第1接続部42および第2透明導電体45の第2接続部47は線状に形成されている。そして、第1取出導電体43は、線状に形成された第1接続部42のうちの第1センサ部41への接続箇所近傍の部分以外の部分上を、当該部分と同一のパターンで線状に延びている。同様に、第2取出導電体48は、線状に形成された第2接続部47のうちの第2センサ部46への接続箇所近傍以外の部分上を、当該部分と同一のパターンで線状に延びている。
また、図3Bに示すように、第1取出導電体43は、基材フィルム32から離間して、第1透明導電体40上に配置されている。すなわち、第1取出導電体43は基材フィルム32に接触していない。この結果、第1透明導電体40の第1取出導電体43によって覆われている部分は、基材フィルム32と第1取出導電体43との間で側方に露出している。とりわけ、本実施の形態においては、第1取出導電体43の幅が、当該第1取出導電体43によって覆われている第1透明導電体40の第1接続部42の部分の幅と同一または若干狭くなっている。
同様に、図示は省略しているが、第2取出導電体48も第1取出導電体43と同様に構成されている。すなわち、第2取出導電体48は、基材フィルム32から離間して第2透明導電体45上に配置されており、基材フィルム32には接触していない。この結果、第2透明導電体45の第2取出導電体48によって覆われている部分は、基材フィルム32と第2取出導電体48との間で側方に露出している。とりわけ、本実施の形態においては、第2取出導電体48の幅が、当該第2取出導電体48によって覆われている第2透明導電体45の第2接続部47の部分の幅と同一または若干狭くなっている。
第1取出導電体43は、第1透明導電体40の第1センサ部41からなる第1センサ電極36aを検出制御部25へ接続させるための第1取出配線36bを、第1透明導電体40の第1接続部42とともに構成している。また、第2取出導電体48は、第2透明導電体45の第2センサ部46からなる第2センサ電極37aを検出制御部25へ接続させるための第2取出配線37bを、第2透明導電体45の第2接続部47とともに構成している。このような第1取出導電体43および第2取出導電体48は非アクティブエリアAa2に配置されていることから、透光性を有した材料から形成される必要はなく、高い導電性を有した金属などの材料から形成され得る。なお図3Aに示すように、第1接続部42と第1取出導電体43とを含む第1取出配線36bの幅は、第1センサ電極36aとの接続部分において第1センサ電極36aの幅よりも大きくなるよう形成されている。同様に、第2接続部47と第2取出導電体48とを含む第2取出配線37bは、第2センサ電極37aとの接続部分において、その幅が第2センサ電極37aの幅よりも大きくなるよう形成されている。また図3Aに示すように、取出配線36b,37bのうち検出制御部25との接続端子部36c,37cの幅は、取出配線36b,37bのその他の部分の幅よりも大きくなっている。
このような構成からなるタッチパネルセンサ30においては、取出導電体43,48および透明導電体40,45の接続部42,47からなる取出配線36b,37bは、図示しない外部接続配線を介し、検出制御部25に接続されている。この場合、タッチパネルセンサ30が撓む等して変形した場合であっても、以下に説明するように、取出導電体43,48および透明導電体40,45の接続部42,47が互いに連結された状態に保たれ、センサ電極36a,37aと検出制御部25との間に安定した導通を確保することができる。
高い導電率を有した金属等からなる取出導電体43,48は、中間層61,66に対してある程度の密着力を有するが、樹脂やガラス等からなる基材フィルム32に対しては低い密着力しか有さない。したがって、例えば図12のように、高導電率導電体が樹脂やガラス等からなる基材に接触している場合、この接触位置が剥離の起点を形成し、二点鎖線で示すように基材が変形した際に、高導電率導電体が基材から剥離しやすくなる。とりわけ、高導電率導電体が透明導電体を全体から被覆している場合には、高導電率導電体および透明導電体の全体としての剛性が高くなり、基材の変形に追従して変形しにくくなる。この点からも、基材が変形した際に、高導電率導電体が基材から剥離しやすくなる。
一方、本実施の形態によれば、取出導電体43,48が基材フィルム32から離間しているので、取出導電体43,48の基材フィルム32からの剥離の基点は形成され得ない。また、取出導電層43,48は、中間層61,66上に載置されているだけで、透明導電体40,45および中間層61,66を側方から被覆していない。したがって、透明導電体40,45は、基材フィルム32の変形に追従して変形しやすくなっており、透明導電体40,45も基材フィルム32から剥離し辛くなっている。これらにより、本実施の形態のタッチパネルセンサ30によれば、タッチパネルセンサ30が撓む等して変形したとしても、取出導電体43,48、中間層61,66および透明導電体40,45の接続部42,47が互いに連結された状態に保たれ、センサ電極36a,37aと検出制御部25との間に安定した導通を確保することができる。
また、図3Bに示すように、以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30において、取出導電体43,48は、中間層61,66および透明導電体40,45の接続部42,47上に配置されているだけで、透明導電体40,45の接続部42,47の側方まで延びていない。したがって、保護層62,67、取出導電体43,48、中間層61,66、および透明導電体40,45の接続部42,47からなる取出配線36b,37b全体としての線幅を細くすることができる。これにより、同一の導電率の取出配線36b,37bをより短ピッチで配置することが可能となり、取出配線36b,37bの配置スペース、すなわち、非アクティブエリアAa2の面積を小さくすることができる。
次に、第1取出導電体43および第2取出導電体48を形成する材料について詳述する。第1取出導電体43および第2取出導電体48は、第1透明導電体40および第2透明導電体45をなす材料よりも高い導電率(電気伝導率)を有する材料から形成されている。具体的には、遮光性を有するとともに、ITO等の透明導電体40,45よりも格段に高い導電率を有する、例えばアルミニウム、モリブデン、パラジウム、銀、クロム、銅等の金属、または、これらの金属を2種以上混合してなる合金、例えば銀合金を材料として形成されている。このうち銀合金は、一般に配線材料として用いられるクロムよりも比抵抗が小さく、第1取出導電体43および第2取出導電体48の材料として好ましい。このような銀合金の一例として、銀、パラジウム、銅を含んでなるAPC合金を挙げることができる。
ところで、銀合金とITO等の透明導電体からなる透明導電体40,45との間の密着力は、一般的な配線材料であるクロムと透明導電体40,45との間の密着力よりも概して小さい。銀合金からなる取出導電体43,48と透明導電体40,45との間の密着力が小さい場合、取出配線36b,37bに何らかの衝撃が加えられたときに、銀合金からなる取出導電体43,48が透明導電体40,45から剥離することが考えられる。このため、透明導電体40,45上に銀合金からなる取出導電体43,48を設ける場合、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に、透明導電体40,45および取出導電体43,48の各々に対してある程度の密着力を有するとともに、導電性を有する層を介在させることが好ましい。本実施の形態においては、上述のように、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に中間層61,66を介在させている。
中間層
次に、中間層61,66について詳述する。上述のとおり、中間層61,66は、透明導電体40,45および取出導電体43,48の各々に対してある程度の密着力を有するとともに、導電性を有している。
まず中間層61,66の密着力に関して説明する。第1中間層61と第1透明導電体40との間の密着力、および第1中間層61と第1取出導電体43との間の密着力は、第1透明導電体40と第1取出導電体43との間の密着力よりも大きくなっている。同様に、第2中間層66と第2透明導電体45との間の密着力、および第2中間層66と第2取出導電体48との間の密着力は、第2透明導電体45と第2取出導電体48との間の密着力よりも大きくなっている。ここで「密着力が大きい」とは、例えば、取出配線36b,37bの上面に所定の粘着テープ(図示せず)を貼り、その後、この粘着テープを所定のスピードで剥がすとき、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に中間層61,66が介在されている場合は取出導電体43,48が剥離しないが、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に中間層61,66が介在されていない場合は取出導電体43,48が剥離することを意味している。
次に中間層61,66の導電性に関して説明する。取出配線36b,37bにおいてセンサ電極36a,37aからの電気信号を検出制御部25の検出回路に伝導する役割は主に取出導電体43,48により果たされている。このため中間層61,66は、取出導電体43,48よりも優れた導電性を有する必要はなく、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間を低抵抗で電気的に接続する程度の導電性を有していればよい。このため、中間層61,66の比抵抗は、それぞれ取出導電体43,48の比抵抗よりも大きくなっている。また、中間層61,66の厚みは、それぞれ取出導電体43,48の厚みよりも小さくなっており、例えば取出導電体43,48の厚みが15〜25nmの範囲内となっているとき、中間層61,66の厚みは4〜6nmの範囲内となっている。
中間層61,66の材料としては、透明導電体40,45および取出導電体43,48に対する密着力が良好な材料であれば特に限定されないが、例えばモリブデン(Mo)合金などの金属が用いられる。Mo合金としては、例えばMoとニオブ(Nb)の合金であるMoNbを挙げることができる。
保護層
次に、第1取出導電体43の上に設けられた第1保護層62、および第2取出導電体48の上に設けられた第2保護層67について詳述する。保護層62,67は、取出導電体43,48が酸化するのを防ぐために設けられた層であり、耐酸化性、耐水性などを有する層である。保護層62,67の材料としては、適度な耐酸化性を有する材料であれば特に限定されないが、例えばMo合金などの金属が用いられる。Mo合金としては、例えばMoとNbの合金であるMoNbを挙げることができる。保護層62,67の厚みは、例えば10〜30nmの範囲内となっている。
基材フィルム
次に図4(a)(b)を参照して、基材フィルム32について詳述する。本実施の形態において、基材フィルム32は、後述するように複数の層から構成されている。ここで、基材フィルム32の各層は、接着層を介しての接合を用いることなく、例えばスパッタリングにより一体に形成されている。なお、基材フィルム32の各層を形成する方法がスパッタリングに限られることはなく、各層の構成などに応じて、塗布などの方法を適宜用いることができる。
図4(a)は、アクティブエリアAa1における基材フィルム32の断面を示す図である。図4(a)に示すように、基材フィルム32は、透明なフィルム本体33と、フィルム本体33の第1透明導電体40側(一方の側)の面33a上に設けられた第1アンダーコート層71と、第1アンダーコート層71の第1透明導電体40側(一方の側)の面71a上に設けられた第1アンカー層73と、フィルム本体33の第2透明導電体45側(他方の側)の面33b上に設けられた第2アンダーコート層76と、第2アンダーコート層76の第2透明導電体45側(他方の側)の面76b上に設けられた第2アンカー層78と、を有している。
以下、基材フィルム32を構成する各層について詳述する。はじめにフィルム本体33について詳述する。
(フィルム本体)
フィルム本体33の材料としては、透明性の高い材料が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの可撓性フィルムを挙げることができる。本実施の形態においては、フィルム本体33が、1.66の光屈折率を有するPETから形成されている。PETからなるフィルム本体33の厚みは特に限定されないが、例えば50〜200μmの範囲内となっている。
(アンダーコート層)
次に第1アンダーコート層71および第2アンダーコート層76について詳述する。アンダーコート層71,76は、フィルム本体33中に発生する低分子重合体(オリゴマー)がアンカー層73,78側に入り込むのを防ぐための層であり、例えばアクリル樹脂から形成されている。アンダーコート層71,76の光屈折率は、フィルム本体33の光屈折率とほぼ同一か、若しくはフィルム本体33の光屈折率よりも若干大きくなっており、例えば1.71となっている。アンダーコート層71,76の厚みは例えば3000nmとなっている。
また、このようなアンダーコート層71,76をフィルム本体33上に設けることにより、後述するように薄膜干渉を生じさせることができ、これによって、光の反射および透過スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)を適度に生じさせることができる。このことにより、後述するように、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域と設けられていない領域との間における、光の反射率および透過率の差を低減することができる。
フィルム本体33のオリゴマーは、一般に、後述する透明導電体40、45の形成工程において基材フィルム32を加熱する際に発生する。
(アンカー層)
次に第1アンカー層73および第2アンカー層78について詳述する。はじめに、第1アンカー層73および第2アンカー層78を設ける目的について説明する。
(アンカー層の目的)
上述のように、アンダーコート層71,76をフィルム本体33上に設けることにより薄膜干渉が生じ、これによって、光の反射および透過スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)が生じる。アンカー層73,78は、このようなハンチングの特性を制御するために設けられる層である。
アンカー層73,78の光屈折率は、フィルム本体33およびアンダーコート層71,76の光屈折率よりも小さくなっている。このようなアンカー層73,78をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、光の反射および透過スペクトルのハンチングを制御することができ、これによって、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率(図4(a)において矢印(1),(3)で示す領域における光の反射率)と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率(図4(a)において矢印(2),(4)で示す領域における光の反射率)と、の差を小さくすることができる。同様に、アンカー層73,78を設けることにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率と、の差を小さくすることもできる。
また上述のアンカー層73,78を設けることにより、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のスペクトルを、各波長域で平坦なスペクトルとすることができる。図4(b)において左側に示すスペクトルは、アンカー層73,78が設けられていない場合の透過光のスペクトルであり、図4(b)において右側に示すスペクトルは、アンカー層73,78が設けられている場合の透過光のスペクトルである。図4(b)に示すように、フィルム本体33と透明導電体40,45との間にアンカー層73,78を設けることにより、各波長域で均一な透過率を実現することが可能となる。このようにして、透過光において黄色の成分のみが過大となるのを防ぐことができ、この場合、透過光をL*a*b*表色系で表したときのb*の絶対値は例えば1.5以下となっている。
次に上述のアンダーコート層71,76およびアンカー層73,78を設計する方法について説明する。はじめに、タッチパネルセンサ30における光学特性の目標を決定する。例えば、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率と、の差がそれぞれ1%以下であって、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のb*の絶対値が1.5以下であることを光学特性の目標とする。
なお、L*a*b*表色系において、L*は明度を表し、a*,b*は色相と彩度を表す量である。a*およびb*に関しては、その絶対値が小さい値領域にて、無彩色に近い色相となる。b*が+1.5を超える領域では透過色が黄色味を帯びる様になり、またー1.5未満の領域では透過色が青味を帯びる様になる。これらの領域では、表示装置15のカラー表示に透明導体40、45の透過色が悪影響を与える。従って、b*の絶対値が1.5以下である無彩色の領域の値を示す必要がある。
次に、基材フィルム32の各層の厚みおよび光屈折率と、透明導電体40,45の厚みおよび光屈折率とに基づいて、シミュレーションにより反射率、透過率およびb*の値を求める。そして、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78の厚みと光屈折率とを可変のパラメータとして、上述の光学特性の目標を達成するパラメータを探索する。これによって、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78の厚みおよび光屈折率の適切な範囲を算出し、このようにして、目標とする光学特性を得ることができるアンダーコート層71,76およびアンカー層73,78を設計する。なおシミュレーション用のツールとしては、例えばサイバネットシステムズ(株)製の薄膜設計ソフトウェア(OPTAS−FILM)を用いることができる。
なお、本件発明者らが実験を重ねたところ、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78の設計において、フィルム本体33の光屈折率と、アンダーコート層71,76の光屈折率との差を考慮すること、および、アンダーコート層71,76の光屈折率と、アンカー層73,78の光屈折率との差を考慮することが重要であることが知見された。より具体的に言えば、後述する実施例での実験結果で支持されているように、光波長380nm〜780nmの範囲内においてほぼ一律に、アンダーコート層71,76の光屈折率をフィルム本体33の光屈折率から約+0.05とするとともに、アンカー層73,78の光屈折率をアンダーコート層71,76の光屈折率から約−0.25とするのが重要であることが知見された。例えば、上述の目標とする光学特性を得ることができる基材フィルム32および透明導電体40,45は、以下の表1に示す構成となっている。
次にアンカー層73,78の材料について詳述する。アンカー層73,78の材料としては、目標とする光学特性を達成することのできる光屈折率を有する材料であれば特に限定されず、例えば1.46の光屈折率を有する二酸化珪素(SiO2)が用いられる。
次に、以上のような構成からなるタッチパネルセンサ30を図7に示すフローチャートにしたがって製造していく方法について、図5および図6A〜図6Lを参照しながら説明する。なお、図6A〜図6Lの各図において、図(a)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、図3AにおけるV−V線に沿った断面に対応する断面において示している。また、図6A〜図6Lの各図において、図(b)は、作製中のタッチパネルセンサ(積層体)を、一方の側(各図(a)の紙面における上側)から示す上面図である。
はじめに、図5を参照して、タッチパネルセンサ30を作製するための元材としての積層体(ブランクスとも呼ばれる)50を形成する工程(図7における工程S1)について説明する。後述するように、この積層体50に成膜やパターニング等の処理(加工)を行っていくことにより、タッチパネルセンサ30が得られるようになる。
積層体の形成工程
はじめに、フィルム本体33を準備し、次に、フィルム本体33の一方の側の面33aおよび他方の側の面33bにそれぞれ第1アンダーコート層71および第2アンダーコート層76を形成する(図5(a)参照)。アンダーコート層71,76は、例えばコーティングにより形成される。この場合、フィルム本体33とアンダーコート層71,76とが一体になっていてもよい。
次に図5(b)に示すように、第1アンダーコート層71の一方の側の面71aに第1アンカー層73を形成し、第2アンダーコート層76の他方の側の面76bに第2アンカー層78を形成する。アンカー層73,78は、例えばスパッタリングにより形成される。このようにして、フィルム本体33と、アンダーコート層71,76と、アンカー層73,78とを有する基材フィルム32が形成される。
(透明導電層の成膜工程)
次に図5(c)を参照して、基材フィルム32の一方の側の面32aに第1透明導電層52aを形成し、基材フィルム32の他方の側の面32bに第2透明導電層52bを形成する工程について説明する。ここで第1透明導電層52a、第2透明導電層52bはそれぞれ、後述するパターニングを行うことによって、透光性を有する第1透明導電体40および第2透明導電体45となる層である。第1透明導電層52a、第2透明導電層52bとしては、透光性および導電性を有する材料が用いられ、例えばITOが用いられる。ITOからなる透明導電層52a,52bは、例えばスパッタリングにより基材フィルム32上に形成される。
(従来の課題)
ところで、ITOを基材フィルム32にスパッタリングにより形成する際、従来は、まず常温に保持されている基材フィルム32上にスパッタリングによりITOが形成される。その後、ITOが形成された基材フィルム32が、ITOの結晶化温度よりも高い温度まで加熱される(アニール処理)。このように、ITOが形成された基材フィルム32にアニール処理を施すことにより、ITOの結晶化を促進し、これによって、ITOの比抵抗の低減が図られている。
しかしながら、PETからなるフィルム本体を有する基材フィルム32の耐熱性は、ガラス基板などに比べて一般に低く、このため、基材フィルム32およびITOを高温、例えば200℃以上でアニール処理することは困難である。このため、ITOの基材としてフィルム状の基材フィルム32が用いられる場合、スパッタリング後のアニール処理の温度は一般に140℃程度である。この場合、ITOの結晶化を十分に進行させることができず、このためITOの比抵抗を十分に下げることができない。従って、タッチパネルセンサ30の透明導電体40,45の電気抵抗を十分に小さくするためには、透明導電体40,45の厚みを大きくする必要がある。しかしながら前述のように、透明導電体40,45の厚みが大きくなると、透明導電体40,45における光の反射率が大きくなり、これによって、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40,45が設けられている領域と透明導電体40、45が設けられていない領域との間における光の反射率および透過率の差が大きくなることが考えられる。
(本実施の形態)
上述のような課題を解決するため、本実施の形態においては、ITOからなる透明導電層52a,52bをスパッタリングにより基材フィルム32上に形成する際、基材フィルム32の温度が140〜170℃の範囲内に保持されている。この場合、ITOを構成する元素の原子(分子)がスパッタリングにより基材フィルム32上に到達する際、各原子(分子)がスパッタリングによる大きな運動エネルギーを有するとともに、各原子(分子)には基材フィルム32から熱エネルギーが供給されることになる。このように基材フィルム32上に到達した各原子(分子)が従来よりも大きなエネルギーを有するため、基材フィルム32上におけるITOの結晶化を促進することができ、これによって、結晶化率の高いITOからなる透明導電層52a,52bを基材フィルム32上に形成することができる。このことにより、形成される透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の比抵抗を小さくすることができ、例えば4×10−6Ωm(23℃、55%RH)以下にすることができる。これによって、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の厚みを小さくした場合であっても、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の電気抵抗を十分に小さくすることができる。
このように本実施の形態によれば、ITOからなる透明導電層52a,52bをスパッタリングにより基材フィルム32上に形成する際、基材フィルム32の温度を140〜170℃の範囲内に保持することにより、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の厚みを小さくすることができる。
前述のとおり、膜厚が小さい場合、例えば40nm以下の場合、一般に、透明導電体40、45の厚みが小さいほど、透明導電体40、45に由来する光の反射率は小さくなり、吸収項の影響が小さいため透過率が高くなる。これによって、透明導電体40,45における光の反射率を従来よりも小さくすることができる。このことにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40,45が設けられている領域と透明導電体40,45が設けられていない領域との間における光の反射率および透過率の差を小さくすることができる。
また本実施の形態によれば、透明導電体40、45とフィルム本体33との間に、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78が介在されている。このため、薄膜干渉の効果を生じさせるとともに、薄膜干渉の波長依存性を適宜制御することにより、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率および透過率の差をより小さくすることができる。
このようにして透明導電層52a,52bを基材フィルム32上に形成することにより、図5(c)に示すように、基材フィルム32と透明導電層52a,52bとを含む中間積層体80が得られる。なお、好ましくは、透明導電層52a,52b(透明導電体40、45)は、錫を2〜4重量%含むITOからなる。このような組成のITOを用いることにより、ITOの結晶化をより促進することができ、これによって、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)の厚みをより小さくすることが可能となる。
次に図5(d)に示すように、中間積層体80の一方の側の面80aに第1遮光導電層54aを形成し、透明導電層付フィルム80の他方の側の面80bに第2遮光導電層54bを形成する。このうち第1遮光導電層54aは、第1中間層61と第1取出導電体43と第1保護層62とを含んでおり、各々スパッタリングにより形成される。また第2遮光導電層54aは、第2中間層66と第2取出導電体48と第2保護層67とを含んでおり、各々スパッタリングにより形成される。このようにして、タッチパネルセンサ30を作製するために用いられる積層体50であって、基材フィルム32と透明導電層52a,52bと遮光導電層54a,54bとを含む積層体50が形成される。
ここで、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bは、後述する感光層56a,56bの露光に用いられる光に対する遮光性を有する層、つまり、当該露光光を透過させない性質を有する層である。ただし、本実施の形態においては、感光層56a,56bの露光光に対してのみでなくその他の波長域の光に対する遮光性を有した層、より具体的には、自然光に含まれ得る可視光、紫外線、赤外線等に対する遮光性を有した層として形成されている。このような層を遮光導電層54a,54bとして用いれば、より確実に露光光を遮光することを期待することができる。
なお、積層体50は枚葉状の積層体50として準備されてもよいし、あるいは、細長いウェブ状の積層体50、例えばロールに巻き取られた積層体50が準備されてもよい。ただし、生産効率を考慮すると、異なる場所で作製されるとともにロールに巻き取られた積層体50が準備され、ロール状の積層体50を巻き戻していくことによってウェブ状の積層体50が供給されていき、以下に説明する各工程が供給されていくウェブ状の積層体50に対して施されていくことが好ましい。あるいは、基材フィルム32を巻き取ったロールから当該基材フィルム32が繰り出されていき、又は、基材フィルム32並びに第1および第2の透明導電層52a,52bからなる中間積層体80を巻き取ったロールから当該中間積層体80が繰り出されていき、当該基材フィルム32または当該中間積層体80から積層体50が作製されていくとともに、作製された積層体50に対して以下に説明する各工程が施されていくことも好ましい。
タッチパネルセンサの製造工程
次にタッチパネルセンサ30を製造する工程について、図6A〜図6Lおよび図7を参照して説明する。
はじめに図6Aに示すように、上述の工程により得られた積層体50を準備する。
次に、図7および図6Bに示すように、積層体50の一方の側の面50a上に第1感光層56aを形成するとともに、積層体50の他方の側の面50b上に第2感光層56bを形成する(工程S2)。第1感光層56aおよび第2感光層56bは、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。具体的には、積層体50の表面上にコーターを用いて感光性材料をコーティングすることによって、感光層56a,56bを形成することができる。
その後、図7および図6Cに示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bを同時に露光する(工程S3)。
具体的には、まず、図6C(a)に示すように、第1感光層56a上に第1マスク58aを配置するとともに、第2感光層56b上に第2マスク58bを配置する。第1マスク58aは、形成されるべき第1透明導電体40のパターンに対応した所定のパターンを有し、第2マスク58bは、形成されるべき第2透明導電体45のパターンに対応した所定のパターンを有している。また、第1マスク58aのパターンと第2マスク58bのパターンは、互いに異なるパターンとなっている。
なお、第1マスク58aおよび第2マスク58bの位置決めは、第1マスク58aおよび第2マスク58bのそれぞれに設けられたアライメントマーク59aを基準にして行われ得る。このような方法によれば、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して、例えばミクロン単位のオーダーで極めて精度良く、且つ、極めて容易に(したがって、短時間で)位置決めすることが可能となる。
次に、図6C(a)に示すように、この状態で、第1感光層58aおよび第2感光層58bの感光特性に対応した露光光(例えば、紫外線)を、マスク58a,58bを介して感光層56a,56bに照射する。この結果、第1感光層56aおよび第2感光層56bが互いに異なるパターンで同時に露光される。
図示された例においては、第1感光層56aおよび第2感光層56bがポジ型の感光層となっている。したがって、第1感光層56aは、第1透明導電体40を形成するためにエッチングで除去される部分のパターンに対応したパターンで露光光を照射され、第2感光層56bは、第2透明導電体45を形成するためにエッチングで除去される部分のパターンに対応したパターンで露光光を照射される。図6C(a)に示すように、第1感光層56aに照射された露光光は第1感光層56aを透過して積層体(ブランクス)50に照射され、第2感光層56bに照射された露光光は第2感光層56bを透過して積層体50に照射される。
ただし、積層体50は露光光を遮光する第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bを有している。したがって、第1感光層56aを透過した露光光源からの光は第1遮光導電層54aによって遮光され第2感光層56bに到達することはなく、同様に、第2感光層56bを透過した露光光源からの光は第2遮光導電層54bによって遮光され第1感光層56aに到達することはない。つまり、第1感光層56aを露光するために所定のパターンで照射される露光光が第1遮光導電層54aによって遮光されるため、当該所定のパターンの露光光が第2感光層56bに照射されることはない。同様に、第2感光層56bを露光するために所定のパターンで照射される露光光が第2遮光導電層54bによって遮光されるため、当該所定のパターンの露光光が第1感光層56aに照射されることはない。この結果、この露光工程S3において、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、それぞれ所望のパターンで精度良く同時に露光することができる。
次に、図7および図6Dに示すように、露光された第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する(工程S4)。具体的には、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対応した現像液を用意し、この現像液を用いて、第1感光層56aおよび第2感光層56bを現像する。これにより、図6Dに示すように、第1感光層56aおよび第2感光層56bのうちの、第1マスク58aおよび第2マスク58bによって遮光されることなく露光光源からの光を照射された部分が除去され、第1感光層56aおよび第2感光層56bが所定のパターンにパターニングされる。
その後、図7および図6Eに示すように、パターニングされた第1感光層56aをマスクとして第1遮光導電層54aをエッチングするとともに、パターニングされた第2感光層56bをマスクとして第2遮光導電層54bをエッチングする(工程S5)。このエッチングにより、第1遮光導電層54aおよび第2遮光導電層54bが、それぞれ、第1感光層56aおよび第2感光層56bのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。例えば、遮光導電層54a,54bがアルミニウムやモリブデンからなる場合には、燐酸、硝酸、酢酸、水を5:5:5:1の割合で配合してなる燐硝酢酸(水)をエッチング液として用いることができる。また、遮光導電層54a,54bが銀または銀合金からなる場合には、燐酸、硝酸、酢酸、水を4:1:4:4の割合で配合してなる燐硝酢酸(水)をエッチング液として用いることができる。さらに、遮光導電層54a,54bがクロムからなる場合には、硝酸セリウムアンモニウム、過塩素酸、水を17:4:70の割合で配合してなるエッチング液を用いることができる。
次に、図7および図6Fに示すように、パターニングされた第1感光層56aおよび第1遮光導電層54aをマスクとして、第1透明導電層52aをエッチングするとともに、パターニングされた第2感光層56bおよび第2遮光導電層54bをマスクとして、第2透明導電層52bをエッチングする(工程S6)。例えば、塩化第二鉄をエッチング液として用いることにより、ITOからなる第1透明導電層52aが第1感光層56aおよび第1遮光導電層54aのパターンと略同一のパターンにパターニングされるとともに、ITOからなる第2透明導電層52bが第2感光層56bおよび第2遮光導電層54bのパターンと略同一のパターンにパターニングされる。すなわち、第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bが両面同時にエッチングされる。
その後、図7および図6Gに示すように、パターニングされて第1遮光導電層54a上に残留している第1感光層56a、および、パターニングされて第2遮光導電層54b上に残留している第2感光層56bを除去する(工程S7)。例えば、2%水酸化カリウム等のアルカリ液を用いることにより、残留している第1感光層56aが除去され、パターニングされた第1遮光導電層54aが露出するとともに、残留している第2感光層56bが除去され、パターニングされた第2遮光導電層54bが露出するようになる。
次に、図7および図6Hに示すように、パターニングされた第1遮光導電層54a上にさらなる感光層として第3の感光層56cを形成するとともに、パターニングされた第2遮光導電層54b上にさらなる感光層として第4の感光層56dを形成する(工程S8)。図示する例において、作製中のタッチパネルセンサ30(積層体50)を一方の側から覆うように第3感光層56cが形成され、作製中のタッチパネルセンサ30(積層体50)を他方の側から覆うように第4感光層56dが形成されている。第3感光層56cおよび第4感光層56dは、第1感光層56aおよび第2感光層56bと同様に、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。また、第1感光層56aおよび第2感光層56bと同様に、第3感光層56cおよび第4感光層56dは、積層体50の表面上にコーターを用いて感光性材料をコーティングすることによって形成され得る。
その後、図7および図6Iに示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dを同時に露光する(工程S9)。
この工程では、まず図6I(a)に示すように、第3感光層56c上に第3のマスク58cを配置するとともに、第4感光層56d上に第4のマスク58dを配置する。第3マスク58cは、パターニングされた第1遮光導電層54aのうちの、第1取出導電体43を形成するために除去されるべき部分に対応した所定のパターンを有し、第3マスク58cは、パターニングされた第2遮光導電層54bのうちの、第2取出導電体48を形成するために除去されるべき部分に対応した所定のパターンを有している。図示する例において、第3マスク58cは、アクティブエリアAa1に対応して形成されたパターン、より詳細には、アクティブエリアAa1よりも少し大きめに形成された透光領域を有している。また、図示する例において、第4マスク58dは、第3マスク58cと同一のパターンを有している。
なお、第3マスク58cの位置決めは、例えば、上述した第1遮光導電層54aをパターニングする際に位置決め用のアライメントマークを形成しておき、この第1遮光導電層54aから形成されたアライメントマークを基準として実施され得る。この方法によれば、第1遮光導電層54aおよび第1透明導電層52aのパターンに対して、第3マスク58cを高精度に位置決めすることができる。また、同様の位置決め方法を第4マスク58dの位置決めに採用することができ、これにより、第2遮光導電層54bおよび第2透明導電層52bのパターンに対して、第4マスク58dを高精度に位置決めすることができる。
次に、図6I(a)に示すように、第3マスク58cおよび第4マスク58dを配置した状態で、第3感光層56cおよび第4感光層56dの感光特性に対応した露光光(例えば、紫外線)を、マスク58c,58dを介して感光層56c,56dに照射する。この結果、第3感光層56cおよび第4感光層56dが同一のパターンで同時に露光される。図示された例においては、第3感光層56cおよび第4感光層56dがポジ型の感光層となっている。そして、第3マスク58cおよび第4マスク58dは、アクティブエリアAa1に対面する領域を含む透光領域を有している。したがって、第3感光層56cおよび第4感光層56dは、アクティブエリアAa1に対面する領域およびその周囲に露光光を照射される。図6I(a)に示すように、第3感光層56cに照射される露光光源からの光のパターンは、第4感光層56dに照射される露光光のパターンと同一になっている。したがって、第3感光層56cおよび第4感光層56dを予定したパターンで精度良く同時に露光することができる。
次に、図7および図6Jに示すように、露光された第3感光層56cおよび第4感光層56dを現像する(工程S10)。具体的には、第3感光層56cおよび第4感光層56dに対応した現像液を用意し、この現像液を用いて、第3感光層56cおよび第4感光層56dを現像する。これにより、図6Jに示すように、第3感光層56cおよび第4感光層56dのうちの、第3マスク58cおよび第4マスク58dによって遮光されることなく露光光を照射された部分が除去される。すなわち、第3感光層56cおよび第4感光層56dのうちの、アクティブエリアAa1に対面する領域およびその周囲の領域が除去され、第3感光層56cおよび第4感光層56dは非アクティブエリアAa2に対面する領域のみに残留するようになる。
その後、図7および図6Kに示すように、パターニングされた第3感光層56cをマスクとしてパターニングされた第1遮光導電層54aをエッチングするとともに、パターニングされた第4感光層56dをマスクとしてパターニングされた第2遮光導電層54bをエッチングする(工程S11)。この工程では、遮光導電層54a,54bに対して浸食性を有するエッチング液であって、透明導電層52a,52bに対して浸食性を有さない、または、透明導電層52a,52bに対して浸食性が弱いエッチング液が、用いられる。遮光導電層54a,54bを除去することによって露出する透明導電層52a,52bのパターンを損なわないようにするためである。すなわち、この工程S11で用いられるエッチング液は、所望の層(遮光導電層54a,54b)を選択的にエッチングし得るように選択される。具体例として、上述した燐硝酢酸(水)や硝酸セリウム系のエッチング液は、所定の金属からなる遮光導電層54a,54bに対してエッチング性を有するものの、ITO等からなる透明導電層52a,52bに対してエッチング性を有さないため、この工程において好適に用いられ得る。
この工程S11でのエッチングにより、パターニングされた第1遮光導電層54aのうちの、少なくともアクティブエリアAa1に対面する位置に配置された部分が除去される。同様に、パターニングされた第2遮光導電層54bのうちの、少なくともアクティブエリアAa1に対面する位置に配置された部分が除去される。これにより、図6K(b)に示すように、基材フィルム32および透明導電層52a,52bのみがアクティブエリアAa1に残留するようになり、アクティブエリアAa1はその全領域に亘って透光性を有するようになる。
このようにして、第1遮光導電層54aのうちの第3感光層56cによって覆われていない部分が除去されることにより、第1透明導電層52aが露出する。露出した第1透明導電層52aは、アクティブエリアAa1に対面する領域およびその周囲に位置している。アクティブエリアAa1に対面する領域に位置する第1透明導電層52aは、所定のパターンを有し第1透明導電体40の第1センサ部41を形成し、非アクティブエリアAa2に露出した第1透明導電層52aは、所定のパターンを有し第1透明導電体40の第1接続部42の一部分を形成するようになる。
同様に、第2遮光導電層54bのうちの第4感光層56dによって覆われていない部分が除去されることにより、第2透明導電層52bが露出する。露出した第2透明導電層52bは、アクティブエリアAa1に対面する領域およびその周囲に位置している。アクティブエリアAa1に対面する領域に位置する第2透明導電層52bは、所定のパターンを有し第2透明導電体45の第2センサ部46を形成し、非アクティブエリアAa2に露出した第2透明導電層52bは、所定のパターンを有し第2透明導電体45の第2接続部47の一部分を形成するようになる。
次に、図7および図6Lに示すように、パターニングされて第1遮光導電層54a上に残留している第3感光層56c、および、パターニングされて第2遮光導電層54b上に残留している第4感光層56bを除去する(工程S12)。例えば、上述したアルカリ液を用いることにより、残留している第3感光層56cが除去され、パターニングされた第1遮光導電層54aが露出するとともに、残留している第4感光層56dが除去され、パターニングされた第2遮光導電層54bが露出するようになる。
露出した第1遮光導電層54aは、所定のパターンを有し、第1中間層61、第1取出導電体43および第1保護層62を形成するようになる。形成された第1中間層61と基材フィルム32との間には、第1透明導電層52aからなる第1透明導電体40の第1接続部42が形成されている。上述したように、また、図3Bに示すように、このようにして形成された第1中間層61、第1取出導電体43および第1保護層62は基材フィルム32から離間して第1接続部42上に位置するようになる。このため、第1接続部42は、第1中間層61と基材フィルム32との間で側方に露出されている。
同様に、露出した第2遮光導電層54bは、所定のパターンを有し、第2中間層66、第2取出導電体48および第2保護層67を形成するようになる。形成された第2中間層66と基材フィルム32との間には、第2透明導電層52bからなる第2透明導電体45の第2接続部47が形成されている。このようにして形成された第2中間層66、第2取出導電体48および第2保護層67は基材フィルム32から離間して第2接続部47上に位置するようになる。このため、第2接続部47は、第2中間層66と基材フィルム32との間で側方に露出されている。
以上のようにして上述した構成のタッチパネルセンサ30を得ることができる。
なお、上述したように、基材フィルム32、積層体50、あるいは、基材フィルム32並びに第1および第2透明導電層52a,52bからなる中間積層体80等の元材がウェブ状であるとともにロールに巻き取られた状態で準備される場合には、ロールからウェブ状の元材を繰り出すとともに、繰り出された元材に対して上述の各工程を施していくようにしてもよい。この場合、多数のタッチパネルセンサ30が基材フィルム32を介して互いに接続された状態で形成されていくようになる。そして、このようにして作製されたウェブ状のタッチパネルセンサ30は、取り扱い(搬送や出荷等)の便宜上、保護用の合紙と重ね合わせてロールに巻き取られるようにしてもよい。ロールに巻き取られたタッチパネルセンサ30は、必要に応じて、当該ロールから繰り出されるとともに枚葉状に断裁され得る。
なお、ウェブ状のタッチパネルセンサ30をロールに巻き取る際には、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の両側に合紙を配置して巻き取ってもよいし、あるいは、ウェブ状のタッチパネルセンサ30の片側だけに合紙を配置して巻き取ってもよい。
以上に説明した製造方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bが同時に露光される。この感光層の両面同時露光プロセスにおいては、図6C(a)に示すように、第1マスク58aおよび第2マスク58bのそれぞれにアライメントマーク59aを設けておくことにより、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して、例えばミクロン単位のオーダーで極めて精度良く、且つ、極めて容易に(したがって、短時間で)位置決めすることが可能となる。この結果、タッチパネルセンサ30において、第1透明導電体40および第2透明導電体45の両方が基材フィルム32上に極めて精度良く効率的に位置決めされるようになる。
その一方で、第1感光層56aおよび第2感光層56bを一つずつ順に露光する場合には、精度良く且つ容易に、第1透明導電体40および第2透明導電体45を作製することができない。第1透明導電体40および第2透明導電体45の両方を精度良く作製しようとすると、第1透明導電体40および第2透明導電体45の一方をアライメントマークとともに基材フィルム32上に形成し、その後、この基材フィルム32上に形成されたアライメントマークに対し、第1透明導電体40および第2透明導電体45の他方の形成に用いられるマスクを位置決めすることになる。すなわち、少なくとも露光工程および現像工程を、第1感光層56aおよび第2感光層56bのそれぞれに対して別個に行う必要が生じる。このため、第1透明導電体40および第2透明導電体45を効率良く短時間で容易に形成することができない。
また、アライメントマークを用いることなく、例えば基材フィルム32の端部を基準として第1マスク58aおよび第2マスク58bを位置決めしながら第1透明導電体40および第2透明導電体45を露光することも可能である。この方法によれば、第1感光層56aおよび第2感光層56bに対する露光工程および現像工程を同時に行うことができる。しかしながら、第1透明導電体40および第2透明導電体45の位置決め精度は、基材フィルム32の外形精度に依存してしまう。一般的に、この方法によれば、第1透明導電体40および第2透明導電体45の位置決め精度は、最高でも数十ミクロン単位でしか期待することができない。
これらのことから、以上に説明してきた本実施の形態の製造方法によれば、第1透明導電体40および第2透明導電体45を互いに対して容易かつ精度良く位置決めすることができる。具体的には、本実施の形態によれば、タッチパネルセンサ30の上面視において、つまり、タッチパネルセンサ30をその法線方向から観察した場合、第1センサ部41の略正方形形状からなる膨出部41bと、第2センサ部46の略正方形形状からなる膨出部46bと、の互いに平行な外輪郭の隙間G(パターンギャップとも呼ばれる、図3A参照)を、安定して、100μm以下とすることができた。その一方で、従来の二枚のフィルムを貼り合わせる方法では、このパターンギャップGは、200μm以上となってしまう。この結果、本実施の形態によれば、接触(接近)位置を検出し得るアクティブエリアAa1の全領域に対する、タッチパネルセンサ30をその法線方向から観察した場合に第1センサ部41および第2センサ部46の少なくとも一方が配置されている領域の割合を、百分率で、95%以上にすることができた。また本実施の形態によれば、二枚のフィルムを貼り合わせるための粘着層が不要となり、これによって、製造コストを低くすることができる。
また、取出配線36b,37bが、導電率の低い透明導電体40,45の接続部42,47だけでなく、導電率の高い取出導電体43,48を含んでいる。したがって、取出配線36b,37bの線幅を細くすることが可能となり、取出配線36b,37bの配置スペース、すなわち、非アクティブエリアAa2の面積を小さくすることができる。
とりわけ、上述した方法によれば特別な位置決め処理等を行うことなく、図3Bに示すように、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67が、透明導電体40,45の接続部42,47上に配置されているだけで、透明導電体40,45の接続部42,47の側方まで延びていないようにすることができる。一方、例えば、従来頻繁に用いられてきたスクリーン印刷で、透明導電体40,45の接続部42,47上に高導電率材料から取出導電体43,48を形成した場合、図12に示すように、透明導電体40,45は接続部42,47の側方から基材フィルム32上まで延び広がってしまう。このような従来の取出配線と比較して本実施の形態の取出配線36b,37bによれば、同一量の高導電率材料を用いて取出導電体を形成すると、取出配線36b,37bの導電率を同一に保ちながら線幅を大幅に狭くすることができる。
また、本実施の形態による中間層61,66、取出導電体43,48、保護層62,67および透明導電体40,45の接続部42,47は、フォトリソグラフィー技術により形成されているため、スクリーン印刷等による従来の方法と比較して、極めて精度良く所望の位置に所望の形状で形成することができる。さらに、本実施の形態によれば、図12に示す従来の取出配線とは異なり、高導電率の取出導電体43,48が透明導電体40,45は接続部42,47の側方まで覆って基材フィルム32上まで延びることはないので、エレクトロマイグレーションの可能性を低減することもできる。これらのことから、取出配線36b,37bの配置ピッチを大幅に短くすることができ、これにより、取出配線36b,37bの配置スペース、すなわち、非アクティブエリアAa2の面積を小さくすることができる。
ところで、以上に説明してきた本実施の形態の製造方法によれば、透明導電体40,45の接続部42,47が中間層61,66、取出導電体43,48または保護層62,67によって側方から遮光されないようにするだけでなく、図3Bに示すように、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67の幅が、中間層61,66によって覆われている透明導電体40,45の接続部42,47の部分の幅よりも狭くなるようにすることもできる。すなわち、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67は透明導電体40,45上のみに配置されている、言い換えると、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67は、透明導電体40,45の接続部42,47が配置されている領域内のみに配置されているようにすることができる。このような構成によれば、上述したセンサ電極36a,37aと検出制御部25との間の導通の確保をより安定させることができる。また、エレクトロマイグレーションの可能性をさらに低減することができるため、取出配線36b,37bの配置ピッチをさらに短くして、非アクティブエリアAa2の面積を小さくすることができる。
以下、上述した製造方法で取出配線36b,37bを形成した場合に、取出配線36b,37bの中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67の幅が、当該中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67によって覆われている透明導電体40,45の接続部42,47の部分の幅よりも狭くなるようになる推定メカニズムについて、主に図8を参照しながら、説明するが、本発明はこの推定メカニズムに限定されるものではない。
従来の二枚のフィルムを貼り合わせてタッチパネルセンサを作製する方法において、フォトリソグラフィー技術を用いてフィルム上に透明導電体の接続部を形成する場合、透明導電体をなすようになる透明導電層上に感光層が直接配置されるようになる。一方、本実施の形態によれば、透明導電体40,45をなすようになる透明導電層52a,52b上に遮光導電層54a,54bが配置されている。一般的に、透明導電層をエッチングするためのエッチング液(例えば、塩化第二鉄)に対し、感光層(レジスト層)は高い耐浸食性を有している。しかしながら、金属等からなる遮光導電層54a,54bは、ITO等の透明導電層52a,52b用のエッチング液によって、エッチングされ得る。
したがって、図8に示すように、透明導電層52a,52bをエッチングする工程S6において、透明導電層52a,52bが縦方向(基材フィルムの法線方向)にエッチングされる際に、遮光導電層54a,54bは感光層56a,56bによって覆われていない側方から横方向(基材フィルム32のシート面に沿った方向)にエッチングされ得る。その一方で、感光層は、この工程S6で用いられるエッチング液に対して高い耐浸食性を有しているため、横方向へ大きくエッチングされることはない。以上のような理由から、本実施の形態の製造方法で作製されたタッチパネルセンサ30によれば、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67の幅を、当該中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67によって覆われている透明導電体40,45の接続部42,47の部分の幅よりも狭くすることが可能となる。
またさらに、第1感光層52aおよび第2感光層52bを異なるパターンで同時露光する際に、互いの露光光パターンが影響し合うことを回避するために使用された遮光層(被覆導電層)54a,54bから中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67が作製されている。このような方法によれば、タッチパネルセンサ30の作製に必要となる材料コスト低減させることが可能となる。さらに、タッチパネルセンサ30の作製効率を極めて効果的に向上させることも可能となり、またこれにともなって、タッチパネルセンサ30の作製コストを削減することが可能となる。すなわち、上述した優れたタッチパネル30(タッチパネル装置20)を高い生産効率および安い製造コストで作製することが可能となる。
また本実施の形態によれば、上述のように、透明導電層52a、52bをスパッタリングにより基材フィルム32上に形成する際、基材フィルム32の温度を140〜170℃の範囲内に保持することにより、基材フィルム32上における透明導電層52a、52bの結晶化を促進することができ、これによって、結晶化率の高い透明導電層52a、52bを基材フィルム32上に形成することができる。このことにより、形成される透明導電層52a、52b(透明導電体40,45)の比抵抗を小さくすることができ、例えば透明導電層52a、52b(透明導電体40,45)の材料としてITOが用いられる場合、当該比抵抗を4×10−6Ωm(23℃、55%RH)以下にすることができる。
このように透明導電層52a、52b(透明導電体40,45)の比抵抗を小さくすることにより、タッチパネルセンサ30における透明導電体40,45の厚みを小さくすることができ、これによって、透明導電体40、45における光の反射率を従来よりも小さくすることができる。このため、タッチパネルセンサ30のうち透明導電体40、45がパターニングされている領域と透明導電体40、45がパターニングされていない領域との間における光の反射率の差を小さくすることができ、これによって、タッチパネルセンサ30の意匠性を向上させることができる。
以上のようにして得られたタッチパネルセンサ30を表示装置15に接着層19を介して接合するとともに、保護カバー12をタッチパネルセンサ30に接着層15を介して接合することにより、図1および図2に示された入出力装置10が得られる。次に、この入出力装置10を使用する際の作用について説明する。
入出力装置の作用
まず、このような入出力装置10においては、表示装置15の表示パネル16によって映像を表示することによって、観察者は、保護カバー12およびタッチパネルセンサ30を介して映像を観察することができる。
また、この入出力装置10において、タッチパネルセンサ30および保護カバー12がタッチパネル装置20の一部分を構成し、外部導体5、典型的には人間の指5が保護カバー12上に接触(接近)したこと検知することができるとともに、保護カバー12上における外部導体5が接触(接近)した位置を検出することができる。
具体的には、まず、外部の導体(例えば、人間の指)5が保護カバー12に接触すると、当該外部導体5と、外部導体5による保護カバー12への接触位置の近傍に位置する透明導電体40,45の各センサ部41,46と、が電極として機能し、電界が形成される。この際、センサ電極36a,37aを構成する透明導電体40,45のセンサ部41,46と、外部導体5と、の間に位置する保護カバー12および基材フィルム32等は誘電体として機能する。すなわち、外部導体5が保護カバー12に接触することにより、センサ部41,46と外部導体5とを電極とするコンデンサが形成される。
タッチパネル装置20の検出制御部25の検出回路は、各センサ部41,46に接続され、各センサ部41,46と外部導体5との間の静電容量を検出することができるようになっている。そして、検出制御部25が、各センサ部41,46と外部導体5との間の静電容量の変化を検出することによって、外部導体5がいずれの第1センサ部41に対面しているか、並びに、外部導体5がいずれの第2センサ部46に対面しているかを特定することができる。
すなわち、検出制御部25の検出回路は、アクティブエリアAa1において前記一方向に並べて配列された第1透明導電体40に含まれる多数の第1センサ部41のうちの外部導体5と対面している第1センサ部(線状導電体)を特定することによって、前記一方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。同様に、検出制御部25の検出回路は、アクティブエリアAa1において前記他方向に並べて配列された第2透明導電体45に含まれる多数の第2センサ部46のうちの外部導体5と対面している第2センサ部(線状導電体)を特定することによって、前記他方向に延びる座標軸上における外部導体5の位置を特定することができる。このようにして、タッチパネル装置20(保護カバー12)への外部導体5の接触位置を二つの方向において検出することにより、外部導体5のタッチパネル装置20の表面への接触位置の位置座標を、タッチパネル装置20の表面上で精度良く特定することができる。なお、投影型容量結合方式のタッチパネルにおいて接触位置を検出する様々な方法(原理)が、種々の文献に開示されており、本明細書では、これ以上の説明を省略する。
上述の製造方法にしたがって作製されたタッチパネルセンサ30においては、センサ電極36a,37aおよび取出配線36b,37bが、一体として形成された複数の層からなる基材フィルム32の両側に形成されている。すなわち、接着剤等を介して接合された複数枚のフィルムの接合体等を基材フィルムとして用いていない。この結果、タッチパネルセンサ30全体としての透光率を向上させることができる。また、照明等の環境光(外光)や映像光等を反射し得る界面の数を減じることができるので、環境光の反射を抑制して表示装置15に表示される映像のコントラストを向上させることができる。これらにより、タッチパネルセンサ30を表示装置15の表示面16上に配置した場合に、表示装置15の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。さらに、タッチパネルセンサ30および入出力装置10の総厚みを減じることができる。
また、図2に示すように、第1センサ電極36aを構成する第1透明導電体40の第1センサ部41、および第2センサ電極37aを構成する第2透明導電体45の第2センサ部46は、タッチパネルセンサ30(保護カバー12)の法線方向に沿って異なる位置に配置されている。具体的には、第2透明導電体45の第2センサ部46は、第1透明導電体40の第1センサ部41よりも保護カバー12から基材フィルム32の厚み分だけ離間した位置に配置されている。しかしながら、上述したように、本実施の形態における基材フィルム32は、一体として形成された複数の層からなるフィルムとして構成されている。さらに、この基材フィルム32は、特許文献(特開平4−264613号公報)などに開示された基材フィルムとは異なり、遠紫外線遮光機能等の特別な機能を要求されてもいない。すなわち、厚みの薄いフィルムから構成され得る。したがって、外部導体5が保護カバー12へ接触した際に、当該外部導体5と第2透明導電体45の第2センサ部46との間でコンデンサを安定して形成することができるようになる。これにより、外部導体5の保護カバー12への接触位置(タッチ位置)を、第1透明導電体40の第1センサ部41によってだけでなく、第2透明導電体45の第2センサ部46によっても、極めて感度良く正確に検出することが可能となる。
また本実施の形態によれば、タッチパネルセンサ30は、基材フィルム32と、基材フィルム32の一方の側の面32a上にパターニングされた第1透明導電体40と、基材フィルム32の他方の側の面32b上にパターニングされた第2透明導電体45と、を備えている。このうち基材フィルム32は、透明なフィルム本体33と、フィルム本体33の一方の側の面33a上に設けられた第1アンダーコート層71と、第1アンダーコート層71の一方の側の面71a上に設けられた第1アンカー層73と、フィルム本体33の他方の側の面33b上に設けられた第2アンダーコート層76と、第2アンダーコート層76の他方の側の面76b上に設けられた第2アンカー層78と、を有している。
そして、フィルム本体33、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78の光屈折率は、透明導電体40,45の光屈折率よりも小さくなっている。また、アンダーコート層71,76の光屈折率は、フィルム本体33の光屈折率とほぼ同一か、若しくはフィルム本体33の光屈折率よりも若干大きくなっている。これによって、薄膜干渉を生じさせることができ、このことにより、光の反射および透過スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)を適度に生じさせることができる。また、アンカー層73,78の光屈折率は、フィルム本体33およびアンダーコート層71,76の光屈折率よりも小さくなっている。このため、光の反射および透過スペクトルを制御することができる。このことにより、基材フィルム32のアクティブエリアAa1のうち透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率と、の差を小さくすることができる。同様に、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過率と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過率と、の差を小さくすることもできる。
さらに、上述のアンダーコート層71,76およびアンカー層73,78をフィルム本体33と透明導電体40,45との間に設けることにより、基材フィルム32のうち透明導電体40,45が設けられている領域を透過した光のスペクトルを、各波長域で平坦なスペクトルとすることができ、例えば、透過光をL*a*b*表色系で表したときのb*の絶対値を1.5以下とすることができる。
また、本実施の形態によれば、図3Aに示すように、第1透明導電体40の第1センサ部41はライン部41aと膨出部41bとを有し、第2透明導電体45の第2センサ部46はライン部46aと膨出部46bとを有している。各センサ部41,46において、膨出部41b,46bにおける幅は、ライン部41a,46aにおける幅と比較して非常に太くなっている。そして、上述したように、第1透明導電体40に含まれる第1センサ部41の膨出部41bと、第2透明導電体45に含まれる第2センサ部46の膨出部46bとは、基材フィルム32のフィルム面の法線方向から観察した場合に重ならないように配置されている。このため、第1透明導電体40の第1センサ部41が、接触位置の検出精度に影響を与え得る程度の広い面積で、外部導体5と第2透明導電体45の第2センサ部46との間に介在することはない。この結果、外部導体5と第2透明導電体45の第2センサ部46との間で、コンデンサが有効に形成されなくなることを防止することができる。
さらに、上述したように、表示装置15の表示制御部17とタッチパネル装置20の検出制御部25とは接続されている。検出制御部25は、外部導体5が保護カバー12上の所定の位置に接触することによって入力された情報を、表示制御部17へ送信することができる。表示制御部17は、検出制御部25で読み取られた入力情報に基づいて、当該入力情報に対応した映像を表示装置15の表示パネル16に表示することもできる。すなわち、出力手段としての表示機能および入力手段としてのタッチ位置検出機能により、入出力装置10の使用者(操作者)と当該入出力装置10との間で、対話形式での情報の直接的なやりとり(例えば、使用者の表示装置15に対する指示および表示装置15による当該指示の実行)を実現することができる。
そして、上述したように、第1透明導電体40および第2透明導電体45が、感光層56a,56bの両面同時露光プロセス(工程S3)を経て、基材フィルム32上にパターニングされている場合、第1センサ電極36aを構成する第1透明導電体40の各第1センサ部41、および第2センサ電極37aを構成する第2透明導電体45の各第2センサ部46が互いに対して精度良く位置決めされるようになる。結果として、第1透明導電体40の各第1センサ部41および第2透明導電体45の各第2センサ部46の両方を、表示装置15に対して精度良く位置決めすることが可能となる。この場合、外部導体5の保護カバー12への接触位置を、表示装置15を基準として精度良く検出することができる。この結果、表示装置15に表示される映像情報に対応した入力を高分解能で高精度に検出することができ、これにより、入出力装置10の使用者(操作者)と当該入出力装置10との間での対話形式での情報交換が極めて円滑に進められるようになる。
以上のような本実施の形態によれば、感光性を有した第1感光層56aおよび第2感光層56bとの間に、遮光性を有した遮光導電層54a,54bが配置されている。したがって、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、異なるパターンで、高精度に露光することができ、これにより、第1感光層56aおよび第2感光層56bを、互いに異なる所望のパターンで極めて精度良くパターニングすることができる。また、第1感光層56aの露光および第2感光層56bの露光は、第1マスク58aを第1感光層56a上に配置するとともに第2マスク58bを第2感光層56b上に配置した状態で行われる。この場合、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に精度良く位置決めすることができ、これにより、第1感光層56aのパターンおよび第2感光層56bのパターンを互いに対して極めて精度良く位置決めすることができる。結果として、得られたタッチパネルセンサ30の第1透明導電体40および第2透明導電体45を所望のパターンで高精度に形成することができるとともに、第1透明導電体40および第2透明導電体45を互いに対して高精度に位置決めすることができる。したがって、このタッチパネルセンサ30を用いることにより、外部導体(典型的には、指)5が接近または接触した平面上の位置を精度良く検出することができる。
また、第1マスク58aおよび第2マスク58bを互いに対して容易に位置決めすることができるとともに、第1感光層56aの露光および第2感光層56bの露光を同時に行うことができる。したがって、タッチパネルセンサ30を極めて効率的に製造することができ、これにより、タッチパネルセンサ30の製造コストを大幅に低下させることができる。
さらに、基材フィルム32に特別な機能(例えば、特定波長域の光に対する遮光機能)が要求されないことから、表示装置等に用いられている通常の、一体として形成された複数の層からなるフィルム材を基材フィルム32として用いることができる。したがって、厚さの厚いフィルムや、接着剤等を介して接合された複数枚のフィルムの積層体等を基材フィルムとして用いる必要がない。これにより、第1透明導電体40と第2透明導電体45との離間間隔が短くなるので、第1透明導電体40だけでなく、第2透明導電体45による接触位置または接近位置の検出感度を向上させることができる。また、タッチパネルセンサ30の透光率を向上させることができ、これにより、タッチパネルセンサ30を表示装置15の表示面16a上に配置した場合に、表示装置15の表示画像を大きく劣化させてしまうことを防止することができる。
さらに、上述した実施の形態において、透明導電層52a,52b上に配置され透明導電層52a,52bとともにパターニングされた遮光導電層54a,54bが取出配線36b,37bの一部として利用されている。具体的には、透明導電層52a,52bと同一のパターンにパターニングされるとともにその後一部分を除去された遮光導電層54a,54bからなる中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67が、パターニングされた透明導電層52a,52bからなる透明導電体40,45とともに、取出配線36b,37bを形成している。
このような方法で作製された取出配線36b,37bは、取出導電体43,48によって高い導電率(電気伝導率)を確保することができる。また、スクリーン印刷等で作製された従来の取出配線(図12参照)とは異なり、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67は、透明導電層52a,52b上に配置され、透明導電層52a,52bの側方まで延びていない。これにより、取出配線36b,37bの線幅を大幅に小さくすることができる。さらに、上述した実施の形態によれば、スクリーン印刷等の従来の作製方法とは異なりフォトリソグラフィー技術を用いて取出導電体43,48が形成されているので、安定して高精度に所望のパターンの取出配線36b,37bを作製することが可能となる。これにより、エレクトロマイグレーションの可能性も大幅に低下させることができる。以上のことから、本実施の形態によれば、細い線幅の取出配線36b,37bを短ピッチで並べて形成することが可能となり、これにより、取出配線36b,37bを配置するために必要となる領域の面積、すなわち、非アクティブエリアAa2の面積を格段に小さくすることができる。
さらに取出配線36b,37bにおいて、取出導電体43,48の材料として銀合金、例えばAPC合金が用いられている。APC合金などの銀合金は、一般に配線材料として用いられるクロムよりも比抵抗が小さい。このため、取出導電体43,48の材料として銀合金を用いることにより、取出配線37bの導電率を高めることができる。
また取出配線36b,37bにおいて、透明導電体40,45と、銀合金からなる取出導電体43,48との間には、MoNb合金などからなる中間層61,66が介在されている。ここで、中間層61,66の透明導電体40,45に対する密着力、および中間層61,66の取出導電体43,48に対する密着力は、取出導電体43,48の透明導電体40,45に対する密着力よりも大きくなっている。このため、取出導電体43,48に何らかの力学的な力が作用した場合であっても、取出導電体43,48が中間層61,66から容易に剥離することはない。このことにより、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に中間層61,66が介在されていない場合に比べて、タッチパネル30の機械的安定性を向上させることができる。
さらに取出配線36b,37bにおいて、銀合金からなる取出導電体43,48の上には、耐酸化性、耐水性を有するMo合金、例えばMoNbなどからなる保護層62,67が設けられている。これによって、取出導電体43,48の上に保護層62,67が設けられていない場合に比べて、取出導電体43,48の耐酸化性、耐水性を向上させることができ、このことにより、タッチパネル30の信頼性を向上させることができる。
また、取出導電体43,48は、基材フィルム32には接触しておらず、高い密着力を呈し得る中間層61,66にしか接合していない。このため、タッチパネルセンサ30が使用中に変形したとしても、取出導電体43,48がタッチパネルセンサ30から剥離する起点が形成されにくくすることができる。また、透明導電体40,45の接続部42,47は、中間層61,66、取出導電体43,48または保護層62,67によって側方まで覆われておらず、基材フィルム32と中間層61,66との間で側方に露出している。すなわち、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67による接続部42,47の変形の拘束は弱く、接続部42,47は、タッチパネルセンサ30の変形時に、基材フィルム32の変形に追従して変形し得るようになる。これらにより、取出導電体43,48が透明導電体40,45または基材フィルム32から剥離すること、並びに、取出導電体43,48とともに接続部42,47が基材フィルム32から剥離することを、効果的に抑制することができる。結果として、タッチパネルセンサ30の検出機能の信頼性を大幅に向上させることができる。
さらに、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67の形成に用いられる遮光導電層54a,54bは、両面同時露光工程S3において遮光層として用いられる層である。このような作製方法によれば、上述したように優れた性能を有するタッチパネルセンサ30を、極めて効率的かつ安価に作製することが可能となる。
変形例
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、パターニングされた遮光導電層54a,54bの一部分を除去する工程において、遮光導電層54a,54bのうちのアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1を取り囲むアクティブエリアAa1近傍の領域と、に位置する部分が除去される例を示したが、これに限られない。アクティブエリアAa1の透明性を確保するために遮光性を有した遮光導電層54a,54bを除去するといった観点からすれば、除去される部分は、アクティブエリアAa1内に位置する部分だけとすることができる。このような例によれば、タッチパネルセンサ30のアクティブエリアAa1における透明性を確保しつつ取出導電体43,48が配置された領域を拡大して、取出配線36b,37bの導電率を高めることができる。ただし、さらなる感光層56c,56dの露光精度および現像精度のバラツキを許容可能にし、タッチパネルセンサ30の信頼性を向上させるといった観点からは、上述した実施の形態の方が優れている。なお、当然に、遮光導電層54a,54bの除去される部分を変更する場合には、上述した第3マスク58cおよび第4マスク58dの透過領域のパターンを変更しなければならない。
また、上述した実施の形態において、さらなる感光層56c、56dを現像してパターニングする工程において、アクティブエリアAa1を四方から周状に取り囲む額縁状に感光層56c,56dをパターニングする例を示したが、これに限られない。例えば、透明導電層52a,52b(透明導電体40,45)上に残留すべきパターンに対応したパターンで、さらなる感光層56c、56dを露光(図9A参照)および現像(図9B参照)してもよい。図9Aに示すように、このような変形例においても、遮光性を有した遮光導電性54a,54bが、異なる側から所定のパターンで照射される露光光源からの光を遮光する。これにより、第3感光層56cおよび第4感光層56dを異なるパターンで高精度に両面同時露光することができる。ただし、さらなる感光層56c,56dの露光精度および現像精度のバラツキを許容可能にし、タッチパネルセンサ30の信頼性を向上させるといった観点からは、上述した実施の形態の方が優れている。なお、図9Aおよび図9Bに示す変形例において、その他の部分の構成については、上述した実施の形態と同様に構成され得る。図9Aおよび図9Bにおいて、上述した実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
また、上述した実施の形態において、タッチパネルセンサ30の製造方法の一例を説明したが、この例に限られない。例えば、透明導電層52a,52bをアニール処理して、透明導電層52a,52bの結晶化(微結晶化)を進める工程を、透明導電層52a,52bのスパッタリング後に設けてもよい。
上述のように、ITO等から形成される透明導電層52a、52bは、スパッタリング等による成膜時の温度を適宜調節することにより、結晶化が進められている。すなわち、透明導電層52a、52bをスパッタリング等により基材フィルム32上に形成する際、基材フィルム32の温度を140〜170℃の範囲内に保持することにより、基材フィルム32上における透明導電層52a、52bの結晶化が促進されている。そして、さらに結晶化を進めるため、スパッタリング等により基材フィルム32上に透明導電層52a、52bを形成した後、140℃程度の温度でアニール処理を施して、透明導電層をさらに結晶化(微結晶化とも呼ばれる)させることも可能である。
この透明導電層52a,52bをアニールする工程は、上述した透明導電層52a,52bをパターニングする工程S6よりも後であってパターニングされた遮光導電層54a,54bの一部分を除去する工程S11よりも前に、例えば、さらなる感光層58c,58dを現像する工程S10と遮光導電層54a,54bの一部分を除去する工程S11との間に、実施されることが好ましい。例えば、遮光導電層54a,54bの耐薬品性が弱く、透明導電層52a,52bをパターニングする工程S6において、既にパターニングされている遮光導電層54a,54bがエッチングされる可能性がある場合に、アニール工程を追加することは有効である。
具体的には、透明導電層52a,52bをパターニングする工程S6において、透明導電層52a,52bを、浸食性の弱いエッチング液、例えばシュウ酸でエッチングする。このとき、エッチング時の透明導電層52a,52bの結晶化が不完全であれば、透明導電層52a,52bの耐薬品性は低く、このため透明導電層52a,52bがエッチングされる。浸食性の弱いエッチング液を用いることにより、耐薬品性の比較的弱い材料(例えば銀合金)からなる遮光導電層54a,54bが、透明導電層52a,52bと感光層56a,56bとの間において横方向(すなわち、基材フィルム32のシート面に沿った方向)に浸食されることを防止することができる。これにより、透明導電層52a,52bを極めて高精度にパターニングすることができるようになる。そして、遮光導電層54a,54bの一部分を除去する工程S11の前に、アニール処理によって透明導電層52a,52bの耐薬品性を上げておくことにより、遮光導電層54a,54bの一部分を除去する際に、所望の形状にパターニングされた透明導電層52a,52bのパターンが損なわれてしまうことを効果的に防止することができる。
さらに、上述した実施の形態において、タッチパネルセンサ30を製造するために用いられる元材としての積層体(ブランクス)50において、第1遮光導電層54aが第1透明導電層52a上に形成され、第2遮光導電層54aが第2透明導電層52b上に形成されている例を示したがこれに限られない。第1透明導電層52aおよび第2透明導電層52bのうちのいずれか一方の透明導電層上のみに、遮光導電層が形成されていてもよい。図10(a)および図10(b)に示す例においては、上述した第1遮光導電層54aが省略されている。すなわち、元材としての積層体(ブランクス)50は、基材フィルム32と、基材フィルム32上に配置された第1および第2透明導電体52a,52bと、第2透明導電体52b上に配置された第2遮光導電層54bと、を含んでいる。図10(a)および図10(b)は、それぞれ、図6C(a)および図6C(b)に対応しており、第1透明導電体52a上に配置された第1感光層56aと、第2遮光導電層54b上に配置された第2感光層56bと、を両面同時露光する工程S3を示している。図10(a)に示すように、所定のパターンで第1感光層56aを露光する露光光は、第2遮光導電層54bで遮光され、第2感光層56bに照射されることはなく、且つ、所定のパターンで第2感光層56bを露光する露光光は、第2遮光導電層54bで遮光され、第1感光層56aに照射されることはない。これにより、上述した実施の形態と同様に、感光層56a,56bを異なるパターンで高精度に両面同時露光することができる。また、上述した実施の形態と同様の透明導電体40,45、第2中間層66、第2取出導電体48および第2保護層67を得ることができる。なお、第1透明導電層52a上に遮光導電層54bが形成されていないことから、図示する例では、第1透明導電体40上に第1中間層61、第1取出導電体43および第1保護層66が形成されなくなる。
さらに、上述した実施の形態において、積層体(ブランクス)50において、基材フィルム32の両側に透明導電層52a,52bおよび被覆導電層54a,54bがそれぞれ設けられている例を示したが、これに限られない。基材フィルム32の一つの面上のみに透明導電層および被覆導電層が設けられているようにしてもよい。この場合、基材フィルム32の一つの面上に、上述した実施の形態のセンサ電極36a,37aおよび取出配線36b,37bが得られるようになる。なお、この変形例において、上述した感光層を露光する工程S3では、積層体50の一つの側のみから露光光が照射され得る。そして、この変形例において、被覆導電層は遮光性を有していない材料からも構成され得る。
さらに、上述した実施の形態において、第1透明導電体40の第1センサ部41はライン部41aと膨出部41bとを有し、第2透明導電体45の第2センサ部46はライン部46aと膨出部46bとを有している例を示した。また、上述した実施の形態において、膨出部41b,46bが平面視略正方形形状に形成されている例を示した。しかしながら、これに限られず、一例として、膨出部41b,46bが、平面視において、正方形以外の菱形等の四角形形状、さらには、多角形形状や円形状等であってもよい。また、センサ部41,46が、膨出部41b,46bを有さず、直線状の輪郭を有するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、第1透明導電体40の第1センサ部41と、第2透明導電体45の第2センサ部46とが、同一に構成される例を示したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、第2透明導電体45の第2センサ部46の線幅w2が、保護カバー12(観察者側面)からより近い位置に配置された第1透明導電体40の第1センサ部41の線幅w1よりも太くなるようにしてもよい。このような例によれば、外部導体5が保護カバー12へ接触した際に、保護カバー12(観察者側面)から比較的に遠い位置に配置された第2透明導電体45の第2センサ部46と、当該外部導体5と、の間でコンデンサを安定して形成することができるようになる。また、保護カバー12に接触する外部導体5と第1透明導電体40の第1センサ部41との間で形成されるコンデンサの静電容量と比較して、保護カバー12に接触する外部導体5と第2透明導電体45の第2センサ部46との間で形成されるコンデンサの静電容量が低くなってしまうことを防止することができる。これにより、外部導体5の保護カバー12への接触位置(タッチ位置)を、第1透明導電体40の第1センサ部41だけでなく、第2透明導電体45の第2センサ部46によっても、極めて感度良く正確に検出することが可能となる。なお、図11に示す変形例において、その他の部分の構成については、上述した実施の形態と同様に構成され得る。図11において、上述した実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
また、上述した実施の形態における取出配線36b,37bにおいて、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間に中間層61,66が介在される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間の密着力が十分に大きい場合、若しくは、透明導電体40,45と取出導電体43,48との間の密着力がさほど必要とされないなどの場合には、中間層61,66を設けずに、取出導電体43,48を直接に透明導電体40,45に密着させてもよい。
さらに、上述した実施の形態における取出配線36b,37bにおいて、取出導電体43,48上に保護層62,67が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、取出導電体43,48の耐酸化性、耐水性などが十分に大きい場合、若しくは、取出導電体43,48の耐酸化性、耐水性などがさほど必要とされないなどの場合には、取出導電体43,48上に保護層62,67を設けなくともよい。
また、上述した実施の形態における遮光導電層54a,54bのエッチング工程(工程S5,S11)において、中間層61,66と取出導電体43,48と保護層62,67とを含む遮光導電層54a,54bが1種類のエッチング液によりエッチングされる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67を形成する材料に応じた2または3種類のエッチング液を用いて、段階的に中間層61,66、取出導電体43,48および保護層62,67をエッチングしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
本発明によるタッチパネルセンサ30の基材フィルム32について、フィルム本体33、熱硬化型アクリル樹脂からなるアンダーコート層71,76、および二酸化珪素(SiO
2)からなるアンカー層73,78の光屈折率(大気に対する屈折率)および厚みを測定した。また、本発明によるタッチパネルセンサ30のITOからなる透明導電体40,45の光屈折率(実数部nおよび吸収項k)および厚みを測定した。結果を表2に示す。なお、光屈折率の測定は、光波長380nm〜780nmの範囲内で光波長を5nm刻みで変化させながら行った。なお、後述するシミュレーションにおいては、大気の光屈折率(実数部nおよび吸収項k)をn=1、k=0として扱った。
表2に示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率は、光波長380nm〜780nmの範囲内においてほぼ一律に、フィルム本体33の光屈折率よりも約0.05だけ大きくなっていた(光波長380nm〜780nmにおいて0.052〜0.057、平均すると0.054大きくなっていた)。また、アンカー層73,78の光屈折率は、光波長380nm〜780nmの範囲内においてほぼ一律に、アンダーコート層71,76の光屈折率よりも約0.25だけ小さくなっていた(光波長380nm〜780nmにおいて0.248〜0.269、平均すると0.254小さくなっていた)。光波長に対して、フィルム本体33(PET)、アンダーコート層71,76およびアンカー層73,78の光屈折率をプロットした結果を図13に示す。
測定された基材フィルム32の各層の厚みおよび光屈折率と、透明導電体40,45の厚みおよび光屈折率とに基づいて、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。以下、詳細について説明する。
(シミュレーション条件)
透明導電体40,45が設けられている領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/アンダーコート層/アンカー層/透明導電体/大気(入射側媒質)
この場合、後述するように、フィルム本体の屈折率、アンダーコート層の屈折率および厚み、アンカー層の屈折率および厚み、透明導電体の屈折率および厚みを適宜変化させながらシミュレーションを行った。なお、すべてのシミュレーションにおいて、フィルム本体および大気の厚みを無限大に設定した。また、すべてのシミュレーションにおいて、光の入射角度を0度(垂直入射)に設定した。
透明導電体40,45が設けられていない領域に関しては、以下の層構成を仮定してシミュレーションを行った。
フィルム本体(出射側媒質)/アンダーコート層/アンカー層/大気(入射側媒質)
その他の条件は、透明導電体40,45が設けられている領域に関するシミュレーションの条件と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
(評価項目1 反射率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルをシミュレーションにより求めた。結果を図14Aに示す。図14Aに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の反射スペクトルの周期的な乱れ(ハンチング)が見られた。このようなハンチングは、基材フィルム32の各層間、および基材フィルム32と透明導電体40,45との間での薄膜干渉に起因していると考えられる。
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を図14Bに示す。ここで、反射率差=(透明導電体40,45が設けられていない領域における反射率)−(透明導電体40,45が設けられている領域における反射率)となっている。図14Bに示すように、反射率差についても、光波長380nm〜780nmの範囲内においてハンチングが見られた。このハンチングは、図14Bに示すように、長波長の領域においては反射率差のハンチングの中心線が0%線81よりも上となっており、短波長の領域においては反射率差のハンチングの中心線が0%線81よりも下となっていた。従って、光波長380nm〜780nmの範囲内における反射率差の平均値は、ほぼ0%になっていると言える。
シミュレーションにより求めた反射スペクトルから、XYZ表色系における等色関数を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々について、XYZ表色系におけるY値を求めた。具体的な算出方法はJIS Z8701に規定されており、ここでの詳細な説明は省略する。この際、色の表示に用いる標準の光の分光分布として、標準の光Cの分光分布を用いた。次に、透明導電体40,45が設けられている領域におけるY値と、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるY値との差(以下、ΔY(反射))を求めた。結果、ΔY(反射)が0.2425%となっていた。
(評価項目2 透過率)
透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルをシミュレーションにより求めた。結果を図15Aに示す。図15Aに示すように、光波長380nm〜780nmの範囲内において、光の反射スペクトルの場合と同様に、光の透過スペクトルのハンチングが見られた。
透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を図15Bに示す。ここで、透過率差=(透明導電体40,45が設けられていない領域における透過率)−(透明導電体40,45が設けられている領域における透過率)となっている。図15Bに示すように、長波長の領域においては透過率差のハンチングの中心線が0%線81よりも下となっており、短波長の領域においては透過率差のハンチングの中心線が0%線81よりも上となっていた。従って、光波長380nm〜780nmの範囲内における透過率差の平均値は、ほぼ0%になっていると言える。
シミュレーションにより求めた透過スペクトルから、XYZ表色系(JIS Z8701参照)における等色関数を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域および透明導電体40,45が設けられていない領域各々について、XYZ表色系におけるY値を求めた(JIS Z8701参照)。この際、色の表示に用いる標準の光の分光分布として、標準の光Cの分光分布を用いた。次に、透明導電体40,45が設けられている領域におけるY値と、透明導電体40,45が設けられていない領域におけるY値との差(以下、ΔY(透過))を求めた。結果、ΔY(透過)は−0.1663%となっていた。
(評価項目3 b*)
透明導電体40,45が設けられている領域におけるXYZ表色系のX値、Y値およびZ値(JIS Z8701参照)を用いて、透明導電体40,45が設けられている領域について、L*a*b*表色系における色座標b*を求めた。具体的な算出方法はJIS Z8729に規定されており、ここでの詳細な説明は省略する。結果、b*は0.406となっていた。
本実施例によれば、タッチパネルセンサ30は、上記の表2に示す光屈折率および厚みを有する各層からなる基材フィルム32と、基材フィルム32の面32a,32b上に所定のパターンで設けられた透明導電体40,45と、からなっている。このため、光波長380nm〜780nmの範囲内における、反射率差および透過率差の平均値をほぼ0%とすることができた。これによって、上述のように、ΔY(反射)、ΔY(透過)およびb*の絶対値の値を十分に小さくすることができた。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができた。
実施例2
アンダーコート層71,76の厚みを、0、50、100、130、200、500、750、1000、2000、3000、4000、5000または10000nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を求めた。結果の一部を図16Aに示す。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を求めた。結果の一部を図16Bに示す。
図16Aおよび図16Bに示すように、アンダーコート層71,76の厚みが大きくなるにつれて、反射率差および透過率差のスペクトルにおけるハンチングの周期が短くなっていた。また、反射率差および透過率差のスペクトルにおけるハンチングの周期が短くなるにつれて、光波長380nm〜780nmの範囲内における反射率差および透過率差の平均値が0%に近づいていくのが確認できた。すなわち、所定の厚みを有するアンダーコート層71,76をフィルム本体33上に設けることにより、反射率差および透過率差のスペクトルにハンチングを生じさせ、これによって、光波長380nm〜780nmの範囲内における反射率差および透過率差の平均値をほぼ0%にすることができる。
上述のシミュレーション結果に基づいて、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。また、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図16Cに示す。
図16Cに示すように、アンダーコート層71,76の厚みが200〜10000nmの範囲内(若しくは200nm以上)となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明によるタッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンダーコート層71,76の厚みが200〜10000nmの範囲内(若しくは200nm以上)となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
実施例3
アンダーコート層71,76の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に、表2に示すフィルム本体33の光屈折率に対して−0.2、−0.1、−0.05、−0.04、+0.0、+0.01、+0.08、+0.1、+0.12、+0.13または+0.2となる値としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を求めた。結果の一部を図17Aに示す。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を求めた。結果の一部を図17Bに示す。
図17Aおよび図17Bに示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率が、フィルム本体33の光屈折率とほぼ同一か、若しくはフィルム本体33の光屈折率よりも若干大きくなっている場合、光波長380nm〜780nmの範囲内における反射率差および透過率差の平均値がほぼ0%になっていた。
上述のシミュレーション結果に基づいて、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。また、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図17Cに示す。
図17Cに示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率が、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に、表2に示すフィルム本体33の光屈折率に対して−0.05〜+0.13の範囲内の値となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、アンダーコート層71,76の光屈折率が、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に、表2に示すフィルム本体33の光屈折率に対して−0.02〜+0.08の範囲内の値となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明によるタッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンダーコート層71,76の光屈折率が、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に、フィルム本体33の光屈折率に対して−0.05〜+0.13の範囲内の値となっており、より好ましくは、フィルム本体33の光屈折率に対して−0.02〜+0.08の範囲内の値となっている。すなわち、アンダーコート層71,76の好ましい光屈折率は、光波長400nmにて1.63〜1.81、光波長550nmにて1.61〜1.79であり、アンダーコート層71,76のより好ましい光屈折率は、光波長400nmにて1.66〜1.76、光波長550nmにて1.64〜1.74である。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
また、図17Cより、ΔY(反射)およびΔY(透過)の値が0付近となるのは、アンダーコート層71,76の光屈折率が、フィルム本体の光屈折率に対して+0.04付近となっている場合(即ち光波長400nmにて光屈折率1.723、光波長550nmにて光屈折率1.697となっている場合)であることがわかる。表2に示す特性を示すアンダーコート層71,76は、この結果を指標としてアンダーコート層71,76用の材料の選別を行うことにより得られたものである。
実施例4
アンダーコート層71,76の光屈折率を、表2に示す光屈折率から、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に−0.2、−0.11、−0.1、−0.06、+0.0、+0.02、+0.07、+0.1または+0.2としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図18に示す。
図18に示すように、表2に示すアンダーコート層71,76の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.1〜+0.07の範囲内となっている場合(すなわち、光波長400nmにて光屈折率が1.64〜1.81となっており、光波長400nmにて550nmにて1.61〜1.78となっている場合)、ΔY(反射)およびΔY(透過)が1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、表2に示すアンダーコート層71,76の光屈折率からの変位量が波長によらず一律で−0.06〜+0.02の範囲内となっている場合(すなわち、光波長400nmにて光屈折率が1.68〜1.76となっており、光波長400nmにて550nmにて1.65〜1.73となっている場合)、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。このように、アンダーコート層71,76の光屈折率を適宜調整することにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
実施例5
アンダーコート層71,76の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に1.5、1.55、1.6、1.61、1.64、1.65、1.7、1.73、1.75、1.78、1.8または2.0としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図19に示す。
なお表2から明らかなように、アクリル樹脂などからなるアンダーコート層71,76における光屈折率の波長依存性は、透明導電体40,45における光屈折率の波長依存性に比べて小さい。従って本実施例においては、上述のように、アンダーコート層71,76の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律の値とした。
図19に示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.61〜1.78の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.65〜1.74の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明によるタッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.61〜1.78の範囲内となっており、より好ましくは、アンダーコート層71,76の光屈折率が1.65〜1.74の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
次に、アンダーコート層71,76の光屈折率の波長依存性が、反射率差および透過率差に及ぼす影響について考察する。アンダーコート層71,76の光屈折率を波長に依らず1.714(表2に示す波長550nmでのアンダーコート層の屈折率)にした場合の反射率差および透過率差と、上述の実施例1の場合(すなわち、アンダーコート層の光屈折率の波長依存性を考慮した場合)の反射率差および透過率差と、をあわせて図19Aおよび図19Bに示す。
図19Aおよび図19Bに示すように、アンダーコート層71,76の光屈折率の波長依存性を考慮した場合の方が、アンダーコート層71,76の光屈折率を波長に依らず1.714とした場合に比べて、反射率差および透過率差のハンチングがより0%線81の近傍で生じていた。このように、アンダーコート層71,76の光屈折率の波長依存性を考慮した場合の方がより好ましい結果が得られたことについては、様々な理由が考えられる。例えば、理由の1つとして、フィルム本体33の光屈折率の波長依存性と、アンダーコート層71,76の光屈折率の波長依存性とがほぼ同等となっており(表2および図13参照)、このため、反射率差および透過率差のハンチングをより0%線81の近傍で生じさせることができたという点が考えられる。
実施例6
アンカー層73,78の厚みを、0、3、5、7、10、15、18、20、28、30、40または50nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射スペクトルとの差(反射率差)を求めた。結果の一部を図20Aに示す。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の透過スペクトルと、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の透過スペクトルとの差(透過率差)を求めた。結果の一部を図20Bに示す。
図20Aおよび図20Bに示すように、アンカー層73,78の厚みが変化するにつれて、反射率差および透過率差のスペクトルが光波長380nm〜780nmの全域にわたって上下にシフトするのが確認された。従って、所定の厚みを有するアンカー層73,78をアンダーコート層71,76上に設けることにより、反射率差および透過率差のスペクトルを適宜上下にシフトさせることができ、これによって、光波長380nm〜780nmの範囲内における反射率差および透過率差の平均値をほぼ0%にすることができる。
上述のシミュレーション結果に基づいて、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。また、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図20Cに示す。
図20Cに示すように、アンカー層73,78の厚みが3〜28nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、アンカー層73,78の厚みが8〜18nmの範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明によるタッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンカー層73,78の厚みが3〜28nmの範囲内となっており、より好ましくは、アンカー層73,78の厚みが8〜18nmの範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。
実施例7
アンカー層73,78の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律に1.3、1.31、1.33、1.4、1.42、1.46、1.5、1.55、1.58、1.6、1.66、1.7または1.8としたこと以外は、実施例1と同様にして、シミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域における光の反射率および透過率の値と、透明導電体40,45が設けられていない領域における光の反射率および透過率の値との差(ΔY(反射)およびΔY(透過))を求めた。またシミュレーションにより、透明導電体40,45が設けられている領域におけるb*を求めた。結果を図21に示す。
なお表2から明らかなように、二酸化珪素(SiO2)などからなるアンカー層73,78における光屈折率の波長依存性は、透明導電体40,45における光屈折率の波長依存性に比べて小さい。従って本実施例においては、上述のように、アンカー層73,78の光屈折率を、光波長380nm〜780nmの全域にわたって一律の値とした。
図20に示すように、アンカー層73,78の光屈折率が1.32〜1.66の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が1%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。また、アンカー層73,78の光屈折率が1.42〜1.58の範囲内となっている場合、ΔY(反射)およびΔY(透過)が0.5%以下になるとともに、b*の絶対値が1.5以下となっていた。従って、本発明によるタッチパネルセンサ30において、好ましくは、アンカー層73,78の光屈折率が1.32〜1.66の範囲内となっており、より好ましくは、アンカー層73,78の光屈折率が1.42〜1.58の範囲内となっている。このことにより、透明導電体40,45のパターンがタッチパネルセンサ30の使用者から視認されるのを防ぐことができる。