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JP2014015450A - 水性眼科組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】白濁が抑制され、光安定性が改善され、角膜上皮バリア機能を改善する作用が付与された水性眼科組成物を提供する。
【解決手段】水性眼科組成物に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによって、該水性眼科組成物に対して、白濁を抑制し、光安定性を向上させ、更に、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性眼科組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、白濁が抑制され、光安定性が改善され、角膜上皮バリア機能を改善する作用が付与された水性眼科組成物に関する。
眼科分野において、溶解補助剤は、多くの処方に配合されている。特に水性眼科組成物においては、水溶性の比較的低い生理活性成分、添加物等の溶解補助を目的に、様々な溶解補助剤の配合が工夫されている。眼科分野において用いられる溶解補助剤の一つとして、界面活性剤が挙げられる。ポリオキシエチレンヒマシ油は非イオン界面活性剤の一種であり、他の配合成分の溶解補助等を目的として、水性眼科組成物に配合されることが知られている(特許文献1)。
また、水性組成物においては、製造工程、市場流通工程での安定性、開封後の長期安定性を担保することが重要である。このため、澄明な溶液の白濁や、光に晒された場合に生じる含有成分の分解が、品質へ及ぼす影響は無視できない。従って、白濁や光分解を防いで溶液を長期間安定に保存する方法が望まれている。
また、角膜上皮は、外界と角膜実質との間のバリアとして機能しており、アレルゲン等の外界からの刺激物質や涙液中に存在する物質及び病原体等が、角膜上皮から角膜実質へ浸透することを制御することによって、角膜の恒常性が維持される。このため、角膜上皮のバリア機能が一旦低下すると、炎症性メディエーターの透過性の亢進、角膜実質細胞の活性化、炎症関連分子の発現と分泌、及び角膜での炎症の助長という悪循環が生じる。よって、眼科用組成物においては、角膜上皮バリア機能を改善する作用を有することは、眼科症状の発症を抑える観点から重要である。
一方、セルロース系粘稠化剤は、薬物の滞留性を改善して生物学的利用能を高めたり、保水効果を高めたりする粘稠化剤などとして眼科組成物において広く使用されている。また、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン等は、エネルギー代謝を促進させることや、新陳代謝や細胞呼吸を促進して目の疲れを解消させること、あるいは涙液成分を補給すること、抗炎症作用を発揮すること等を目的として従来から眼科組成物に配合されている。
しかしながら、ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物において、セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン等の成分が含まれる場合に、これらの成分が相互にどのような影響を及ぼすかは知られていない。
特開2005−298448号公報
本発明者等は、ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物について種々の検討を行ってきた。その結果、ポリオキシエチレンヒマシ油を含む水性眼科組成物を保存すると白濁が生じ易いことを見出した。特に、該水性眼科組成物を加熱した状態で保存する場合に白濁の発生が顕著である。また、水性眼科組成物には、ポリオキシエチレンヒマシ油の他に、様々な薬理活性成分、生理活性成分などが配合されているが、これらの成分の中には光に晒すことによって分解し易い成分が含まれることがある。本発明者等の研究によれば、後述する本発明の水性眼科組成物に含まれる成分の内で、ポリオキシエチレンヒマシ油及び塩酸ピリドキシンが光に晒された場合に分解が生じ易い成分であることが確認された。水性眼科組成物における白濁の発生及び含有成分の光分解は、安全性を含む品質の低下や商品価値の低下を招来し、更に、含有成分が本来有する性能を発揮することを妨げることから、これらの現象を抑制することは極めて重要な課題である。
また、前述した通り、水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与することは、眼科症状の発症を抑える観点から重要な課題である。
従って、本発明の主な目的は、 白濁が抑制され、光安定性が向上し、更に、角膜上皮バリア機能を改善する作用が付与された水性眼科組成物を提供すること、及び水性眼科組成物に対して、白濁を抑制し、光安定性を向上させ、更に、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与できる方法を提供することである。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、ポリオキシエチレンヒマシ油(以下、「(A)成分」ということがある)を含有する水性眼科組成物に、セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種(以下、「(B)成分」ということがある)を配合することにより、該ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物における白濁の発生を抑制できることを見出した。更に、水性眼科組成物に上記した(A)成分と(B)成分を配合することによって、水性眼科組成物に含まれる(A)成分の光分解を抑制することができ、光安定性が改善されることを見出した。更に、水性眼科組成物に上記した(A)成分と(B)成分を配合することによって、光分解が生じ易い成分である塩酸ピリドキシンについても光分解が抑制されて光安定性が改善されることを見出した。更に、水性眼科組成物に上記した(A)成分と(B)成分を配合することによって、該眼科組成物に角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の水性眼科組成物を提供するものである。
項1-1.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む水性眼科組成物。
項1-2. (A)成分が、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30であるポリオキシエチレンヒマシ油である、項1-1に記載の水性眼科組成物。
項1-3.セルロース系粘稠化剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種である、項1-1又は1-2に記載の水性眼科組成物。
項1-4.水性眼科組成物の総量を基準として、(A) 成分の総含有量が0.0005〜5w/v%である、項1-1乃至1-3のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-5.水性眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が0.0005〜20w/v%である、項1-1乃至1-4のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-6.(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.0001〜50000重量部である、項1-1乃至1-5のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-7.(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量が0.02〜5000重量部である、項1-1乃至1-6のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-8.更に緩衝剤を含有する、項1-1乃至1-7のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-9.緩衝剤がホウ酸緩衝剤である、項1-8に記載の水性眼科組成物。
項1-10.水性眼科組成物の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が0.01〜15w/v%である、項1-8又は1-9に記載の水性眼科組成物。
項1-11.更に(A)成分以外の界面活性剤及び/又は等張化剤を含有する、項1-1乃至1-10のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-12.(A)成分以外の界面活性剤が非イオン性界面活性剤であり、等張化剤が多価アルコール又は無機塩である、項1-11に記載の水性眼科組成物。
項1-13.水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分以外の非イオン性界面活性剤の総含有量が0.001〜3w/v%である、項1-11又は1-12に記載の水性眼科組成物。
項1-14.ポリエチレンテレフタレート製容器に充填されてなる、項1-1乃至1-13のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-15.ポリエチレン製ノズルが装着された容器に充填されてなる、項1-1乃至1-14のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-16.点眼剤である項1-1乃至1-15のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-17.洗眼剤である項1-1乃至1-15のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-18.コンタクトレンズ装着液である項1-1乃至1-15のいずれかに記載の水性眼科組成物。
項1-19.コンタクトレンズケア用剤である項1-1乃至1-15のいずれかに記載の水性眼科組成物。
また、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物における白濁を抑制する方法を提供するものである。
項2.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン、イプシロン−アミノカプロン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物における白濁を抑制する方法。
項3.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における白濁を抑制する方法。
また、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
項4.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法。
項5.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法。
また、本発明は、下記に掲げる態様の、水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与する方法を提供するものである。
項6.(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能改善作用を付与する方法。
項7. 水性眼科組成物が、上記項1-1乃至1-19のいずれかに記載の組成物である、項6に記載の使用。
更に、本発明は、下記の掲げる態様の使用も提供する。
項8. 水性眼科組成物の製造のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の使用。
項9. 水性眼科組成物が、上記項1-1乃至1-19のいずれかに記載の組成物である、項8に記載の使用。
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用も提供する。
項10. 水性眼科組成物としての、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む組成物の使用。
項11. 組成物が、上記項1-1乃至1-19のいずれかに記載の組成物である、項10に記載の使用。
更に、本発明は、下記に掲げる態様の組成物も提供する。
項12. 水性眼科組成物としての使用のための、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む組成物。
項13. 上記項1-1乃至1-19のいずれかに記載されたものである、項12に記載の組成物。
更に、本発明は、下記に掲げる態様の水性眼科組成物の製造方法も提供する。
項14. 水を含む担体に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を添加することを含む、水性眼科組成物の製造方法。
項15. 水性眼科組成物が、上記項1-1乃至1-19のいずれかに記載の組成物である、項14に記載の製造方法。
本発明によれば、ポリオキシエチレンヒマシ油((A)成分)と、セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種((B)成分)とを併用することによって、水性眼科組成物の保存時に生じ易い白濁を抑制することができる。更に、水性眼科組成物において(A)成分と(B)成分を併用することによって、該水性眼科組成物に含まれる成分の内で、光分解を生じ易い成分であるポリオキシエチレンヒマシ油及び塩酸ピリドキシンの光分解を抑制して、光安定性を向上させることができる。
よって、本発明の水性眼科組成物は、白濁や光分解が生じ難く、含有成分の性能を長期間に亘って安定して発揮することが可能な、品質や安定性に優れた水性眼科組成物である。
更に、水性眼科組成物において(A)成分と(B)成分を併用することによって、該水性眼科組成物に対して、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与することができる。
よって、本発明の水性眼科組成物は、各種眼科症状の抑制に有用であり、特に、花粉やハウスダスト(室内塵)などによる目のアレルギー症状の抑制に好適に用いることができる。
試験例2で用いた各水性眼科組成物について、保存14日後の状態を示す写真。
本明細書において含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを意味する。
本明細書中、特に記載の無い限り、略号「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
本明細書中、特に記載の無い限り、コンタクトレンズとは、ハード、酸素透過性ハード、ソフト(シリコーンハイドロゲルレンズを含む)、カラー等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味とする。
以下、本発明について、具体的に説明する。
[1.水性眼科組成物]
本発明の水性眼科組成物は、ポリオキシエチレンヒマシ油((A)成分)を含有するものである。これを、後述するセルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種と併用することによって、上記した本発明の優れた効果が発揮される。
ポリオキシエチレンヒマシ油は、ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる公知の化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。本発明では、(A)成分として用いられるポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数は特に定めないが、例えば、2〜70モル程度である。具体的には酸化エチレンの平均付加モル数が3であるポリオキシエチレンヒマシ油3、酸化エチレンの平均付加モル数が4であるポリオキシエチレンヒマシ油4、酸化エチレンの平均付加モル数が6であるポリオキシエチレンヒマシ油6、酸化エチレンの平均付加モル数が7であるポリオキシエチレンヒマシ油7、酸化エチレンの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンヒマシ油10、酸化エチレンの平均付加モル数が13.5であるポリオキシエチレンヒマシ油13.5、酸化エチレンの平均付加モル数が17であるポリオキシエチレンヒマシ油17、酸化エチレンの平均付加モル数が20であるポリオキシエチレンヒマシ油20、酸化エチレンの平均付加モル数が25であるポリオキシエチレンヒマシ油25、酸化エチレンの平均付加モル数が30であるポリオキシエチレンヒマシ油30、酸化エチレンの平均付加モル数が35であるポリオキシエチレンヒマシ油35、酸化エチレンの平均付加モル数が40であるポリオキシエチレンヒマシ油40、酸化エチレンの平均付加モル数が50であるポリオキシエチレンヒマシ油50、酸化エチレンの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレンヒマシ油60、酸化エチレンの平均付加モル数が70であるポリオキシエチレンヒマシ油70などを用いることができる。
これらのポリオキシエチレンヒマシ油の内で、本発明の効果を特に良好に発揮できる成分の一例として、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜35、好ましくは2〜30、更に好ましくは2〜20、特に好ましくは2〜12モルのポリオキシエチレンヒマシ油を挙げることができる。
本発明において、これらのポリオキシエチレンヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。尚、本発明で用いるポリオキシエチレンヒマシ油は、硬化ヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することにより得られるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とは異なる化合物であり、これとは区別される。
本発明の水性眼科組成物における、(A)成分の含有量は特に限定はなく、(A)成分の種類、併用する(B)成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量として、0.0005〜5w/v%、好ましくは0.001〜3w/v%、より好ましくは0.002〜1.5w/v%、更に好ましくは0.005〜0.8w/v%、特に好ましくは0.01〜0.5w/v%である。
上記(A)成分の含有量は、水性眼科組成物において、白濁を抑制し、光安定性を向上させ、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与するという効果の観点から好適である。
本発明の水性眼科組成物は、上記(A)成分に加えて、セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種((B)成分)を含有することが必要である。このように、水性眼科組成物において(A)成分と(B)成分を併用することによって、(A)成分を含有する水性眼科組成物の白濁を抑制でき、更に、該組成物中に含まれるポリオキシエチレンヒマシ油及び塩酸ピリドキシンの光分解を抑制して、光安定性を向上させ、更に、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与することができる。
セルロース系粘稠化剤は、セルロースのヒドロキシル基を極性基もしくは非極性基で置き換えることで得られるセルロース誘導体であって、水性組成物に粘性を付与することができる化合物である。
本発明に用いられるセルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としてはメトキシル基、エトキシル基、ヒドロキシエトキシル基やヒドロキシプロポキシル基等がある。セルロース誘導体を例示すると、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの薬理学的に許容される塩などを挙げることができる。ここで、薬理学的に許容される塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属との塩などが例示できる。
これらの中でも好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好適である。特に、角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与する効果の観点から、好ましくはヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、白濁を抑制でき、光安定性を向上させる効果の観点から、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
本発明に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースについては、その種類は特に制限されないが、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910などが挙げられる。特に好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910等が挙げられる。
また、本発明に用いられるセルロース系粘稠化剤は、置換基の置換度や分子量に制限はないが、例えば、重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜30万程度のものを使用することができる。また、これらのセルロース系粘稠化剤は、市販のものを用いることができる。本発明において、セルロース系粘稠化剤及びその塩は、これらの化合物の中から、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
イプシロン−アミノカプロン酸は、6−アミノヘキサン酸とも称される中性アミノ酸として公知の化合物である。
本発明で用いられるイプシロン−アミノカプロン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。イプシロン−アミノカプロン酸の塩として、具体的には、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはイプシロン−アミノカプロン酸である。本発明において、イプシロン−アミノカプロン酸及びその塩は、これらの中から1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
アスパラギン酸は、2-アミノブタン二酸とも称される酸性アミノ酸として公知の化合物である。アスパラギン酸は、L体、D体、DL体のいずれであってもよいが、好ましくはL体である。
本発明で用いられるアスパラギン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。具体的には、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは、アスパラギン酸の無機塩基との塩、より好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、更に好ましくはアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、及びアスパラギン酸マグネシウム・カリウム、特に好ましくはアスパラギン酸カリウムである。本発明において、アスパラギン酸及びその塩は、これらの中から1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
アミノエチルスルホン酸は、タウリンとも称される公知の化合物である。
本発明で用いられるアミノエチルスルホン酸の塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。アミノエチルスルホン酸の塩として、具体的には、上記アスパラギン酸がとり得る塩と同形態のものが例示される。これらの中でも、好ましくはアミノエチルスルホン酸である。本発明において、アミノエチルスルホン酸及びその塩は、これらの中から1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
ピリドキシンは、水溶性ビタミンのビタミンB6として公知の化合物である。
本発明で用いられるピリドキシンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り、特に制限されない。具体的には、有機酸塩(例えば、乳酸塩、酢酸塩、酪酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等);無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)等が挙げられる。これらのピリドキシンの塩の中でも、好ましくは無機酸塩が挙げられ、更に好ましくは塩酸塩(塩酸ピリドキシン)が挙げられる。本発明において、ピリドキシン及びその塩は、これらの中から1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性眼科組成物における、(B)成分の含有量は特に限定はなく、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量として、0.0005〜20w/v%、好ましくは0.005〜15w/v%、更に好ましくは0.02〜10w/v%、特に好ましくは0.1〜5w/v%である。
セルロース系粘稠化剤及びその塩の含有量は、例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、セルロース系粘稠化剤及びその塩の総含有量として、0.0005〜3w/v%、好ましくは0.005〜1w/v%、更に好ましくは0.05〜0. 5w/v%である。
イプシロン−アミノカプロン酸及びその塩の含有量は、例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、イプシロン−アミノカプロン酸及びその塩の総含有量として、0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜8w/v%、更に好ましくは0.1〜5w/v%である。
アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びそれらの塩の含有量は、例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びそれらの塩の総含有量として、0.001〜5w/v%、好ましくは0.01〜2w/v%、更に好ましくは0.1〜1w/v%である。
ピリドキシン及びその塩の含有量は、例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、ピリドキシン及びその塩の総含有量として、0.0005〜1w/v%、好ましくは0.001〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%である。
上記(B)成分の含有量は、本発明の効果をより一層高めるという観点から好適である。
また、本発明の水性眼科組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定はなく、(A)成分及び(B)成分の種類、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、(B)成分の総含有量として、0.0001〜50000重量部、好ましくは0.001〜20000重量部、更に好ましくは0.005〜10000重量部、特に好ましくは0.02〜5000重量部である。
セルロース系粘稠化剤及びその塩の(A)成分に対する含有比率は、例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総量1重量部に対して、セルロース系粘稠化剤及びその塩の総含有量として、0.001〜1000重量部、好ましくは0.01〜200重量部、更に好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.3〜20重量部である。
イプシロン−アミノカプロン酸及びその塩の(A)成分に対する含有比率は、例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総量1重量部に対して、イプシロン−アミノカプロン酸及びその塩の総含有量として、0.01〜5000重量部、好ましくは0.1〜1000重量部、更に好ましくは1〜500重量部、特に好ましくは10〜200重量部である。
アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びそれらの塩の(A)成分に対する含有比率は、例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸及びそれらの塩の総含有量として、0.002〜2000重量部、好ましくは0.01〜500重量部、更に好ましくは0.05〜100重量部、特に好ましくは0.3〜50重量部である。
ピリドキシン及びその塩の(A)成分に対する含有比率は、例えば、本発明の水性眼科組成物に含まれる(A)成分の総含有量1重量部に対して、ピリドキシン及びその塩の総含有量として、0.001〜500重量部、好ましくは0.005〜100重量部、更に好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.3〜20重量部である。
上記 (A)成分に対する(B)成分の含有比率は、本発明の効果をより一層高めるという観点から好適である。
本発明の水性眼科組成物には、後述する通り、その使用目的に応じて、種々の薬理活性成分、生理活性成分等を配合することができ、更に、各種の添加剤も配合することができる。この場合、生理活性成分、添加物等の溶解性を向上させるために、溶解補助剤として、(A)成分以外に、更に、その他の界面活性剤を配合することができる。
本発明の水性眼科組成物に配合することができる、(A)成分以外の界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
本発明の水性眼科組成物に配合可能な(A)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレンヒマシ油40、ポリオキシエチレンヒマシ油50、ポリオキシエチレンヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油70等の酸化エチレンの平均付加モル数が30を上回るポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等が例示される。
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。
また、本発明の水性眼科組成物に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、α−オレフィンスルホン酸等が例示される。
本発明の水性眼科組成物に配合可能な(A)成分以外の界面活性剤として、好ましくは、非イオン性界面活性剤であり、更に好ましくは、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POE・POPブロックコポリマーであり、特に好ましくは、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポロクサマー407である。
本発明の水性眼科組成物において、上記(A)成分以外の界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性眼科組成物に上記(A)成分以外の界面活性剤を配合する場合、その含有量は、該界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、(A)成分以外の界面活性剤の総含有量として、0.001〜3w/v%、好ましくは0.005〜2w/v%、更に好ましくは0.01〜1w/v%、特に好ましくは0.05〜1w/v%である。
本発明の水性眼科組成物は、更に緩衝剤を含有することができる。これにより、本発明の水性眼科組成物のpHを調整できる。本発明の水性眼科組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤(特に、ホウ酸とホウ砂の組合せ)、リン酸緩衝剤(特に、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ)が好ましく、ホウ酸緩衝剤が特に好ましい。
本発明の水性眼科組成物に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、該緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の該水性眼科組成物の総量を基準として、該緩衝剤の総含有量として、0.01〜15w/v%、好ましくは0.05〜10w/v%、更に好ましくは0.1〜7.5w/v%、特に好ましくは0.5〜5w/v%である。
また、本発明の水性眼科組成物は、更に等張化剤を含有していてもよい。本発明の水性眼科組成物に配合できる等張化剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような等張化剤の具体例として、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの等張化剤の中でも、好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウム等の無機塩が挙げられ、更に好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコール及びグリセリンが挙げられ、特に好ましくはグリセリンが挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明の水性眼科組成物に等張化剤を配合する場合、その含有量は、該等張化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性眼科組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の水性眼科組成物の総量を基準として、該等張化剤の総含有量として、0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%、更に好ましくは0.1〜3w/v%である。
本発明の水性眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明の水性眼科組成物のpHの一例として、4.0〜9.5、好ましくは5.0〜9.0となる範囲が挙げられ、更に好ましくは5.5〜8.5である。
また、本発明の水性眼科組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の水性眼科組成物の浸透圧比の一例として、0.5〜5.0、好ましくは0.6〜3.0、更に好ましくは0.7〜2.0、特に好ましくは0.9〜1.55である。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9 w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9 w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いればよい。
本発明の水性眼科組成物の粘度については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。例えば、回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34‘x24)で測定した25℃における粘度が、0.01〜1000mPa・s、好ましくは0.05〜100mPa・s、更に好ましくは0.1〜10mPa・sである。
本発明の水性眼科組成物は、本発明の効果が奏される限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分及び/又は生理活性成分を単独又は適宜組み合わせて適当量含有してもよい。このような成分は特に制限されず、具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウム等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硫酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
ビタミン:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
消炎剤:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、ブロムフェナクナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、プラノプロフェン、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、甘草等。
その他:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等。
また、本発明の水性眼科組成物には、発明の効果が奏される範囲であれば、その用途、製剤形態等に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖:例えば、シクロデキストリン等。
糖アルコール:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(商品名、ローディア社)、塩酸ポリヘキサニド等。
粘稠化剤又は増粘剤:アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ソルビトール、デキストラン70、トラガント末、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール4000等。
油類:ゴマ油、ヒマシ油等。
香料又は清涼化剤:メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよく、また精油(ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等 )として配合してもよい。
その他:エタノール、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム等。
本発明の水性眼科組成物は、所望量の上記(A)成分及び(B)成分、及び必要に応じて他の配合成分を所望の濃度となるように担体に添加することにより調製される。例えば、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用剤の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。上記(A)成分及び(B)成分の溶解及びその他疎水性の高い成分の溶解に関しては、予め界面活性剤などの溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、さらに精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
従って、本発明は、別の観点から、水を含む担体に、(A)酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30モルであるポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を添加することを含む、水性眼科組成物の製造方法を提供するものである。
本発明において水性眼科組成物とは、水の含有量が、該水性眼科組成物の総量を基準として、85w/v%以上の眼科組成物を意味する。該水性眼科組成物における水の含有量は、好ましくは90w/v%以上、より好ましくは92w/v%以上、更に好ましくは94w/v%以上、特に好ましくは96w/v%以上である。本発明の水性眼科組成物に用いられる水としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される水を使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。また本発明における水性眼科組成物の剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、液状が好ましい。これらの定義は第十六改正日本薬局方に基づく。
本発明の水性眼科組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]等が含まれる。本発明の水性眼科組成物の好適な一例として、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液が挙げられ、特に好適な例として点眼剤、
人工涙液が挙げられる。なお、コンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
本発明の水性眼科組成物を収容する容器としては、水性眼科組成物を収容する容器として通常用いられる容器を用いることができ、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。本発明の水性眼科組成物を収容する容器として、プラスチック製を使用する場合、該プラスチック容器の構成材質については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリイミドのいずれか1種、これらの共重合体、または2種以上の混合体が挙げられる。また、上記共重合体としては、エチレン−2,6−ナフタレート単位、アリレート単位、エチレンテレフタレート単位、プロピレン単位、エチレン単位及びイミド単位のいずれか1種を主体として、他のポリエステル単位、イミド単位等を含む共重合体が挙げられる。尚、本発明において例えばポリエチレンテレフタレート製容器と記載する場合は、容器の構成材質全体の重量に対し、ポリエチレンテレフタレートが50w/w%以上であるものを意味する。
また、本発明の水性眼科組成物を収容する容器に備えられているノズルなどの容器注口周辺部についても、その構造、構成素材等については特に制限されるものではない。ノズルなどの容器注口周辺部の構造については、眼科組成物用容器(例えば点眼剤容器)の注出口(例えばノズル)として一般的に採用されている構造であればよく、容器本体と一体に成形されていてもよく、容器本体とは別に成形されていても良い。注口周辺部また注出口(例えばノズル)の構成素材については、例えば、上記プラスチック容器の構成素材と同様のものが例示される。
また、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物の製造のための、(A)酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30であるポリオキシエチレンヒマシ油と、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の使用も提供する。
更に、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物としての、(A)酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30であるポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む組成物の使用も提供する。
更に、本発明は、別の観点から、水性眼科組成物としての使用のための、(A)酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30であるポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む組成物を提供する。
[2.白濁を抑制する方法]
前述した通り、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と共に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによって、(A)成分を含有する水性眼科組成物を加熱した状態で保存した場合に生じ易い白濁を抑制することができる。
従って、本発明は、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物における白濁を抑制する方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を、水性眼科組成物に配合することを含む、該水性眼科組成物における白濁を抑制する方法を提供するものである。
上記した方法において、水性眼科組成物中に(A)成分と(B)成分が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の「1.水性眼科組成物」と同様である。
なお、本明細書において、水性眼科組成物における白濁が抑制されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
[3.光安定化方法]
前述した通り、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と共に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによって、水性眼科組成物に含まれるポリオキシエチレンヒマシ油及び塩酸ピリドキシンの光分解を抑制することができる。
従って、本発明は、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油を含有する水性眼科組成物に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
また、本発明は、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物における光安定性を向上させる方法を提供するものである。
上記した方法において、水性眼科組成物中に(A) 成分と(B)成分が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の「1.水性眼科組成物」と同様である。
なお、本明細書において、水性眼科組成物における光安定性が改善されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。 [4.角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与する方法]
前述した通り、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油と共に、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することによって、該水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能を改善する作用を付与することができる。
従って、本発明は、水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、該水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能改善作用を付与する方法を提供するものである。
上記した方法において、水性眼科組成物中に(A) 成分と(B)成分が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。また、(A)成分及び(B)成分については、各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の「1.水性眼科組成物」と同様である。
なお、本明細書において、水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能を改善する作用が付与されているか否かは、後述の実施例に記載の方法によって判定することが可能である。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
試験例1 白濁に関する試験(1)
下記表1に示される水性眼科組成物を常法により調製し、保存時の白濁の発生状態を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10としては、医薬品添加物規格2003のポリオキシエチレンヒマシ油の規格に適合するものであって、酸化エチレンの平均付加モル数が10のものを用いた。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、イプシロン−アミノカプロン酸としては、第十六改正日本薬局方の規格に適合するものを用いた。
次いで、調製した水性眼科組成物を10mL容量のガラスヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填し、70℃の恒温器内に遮光下にて保存した。14日間保存した後に、各水性眼科組成物中の白濁度を観察し、下記の指標にて評価した。評価の結果を表1に併せて示す。
白濁度 −:澄明である
+:よく見ると白濁している
++:ひとめで白濁が認識できる程度
+++:背景がさえぎられるほどの白濁
Figure 2014015450
表1に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物では70℃で保存した際に白濁が認められた(比較例1)。これに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10と共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はイプシロン−アミノカプロン酸を含有する水性眼科組成物では、70℃で14日保存した後にも白濁が認められず、澄明性を保持できることが確認できた(実施例1、2)。
試験例2 白濁に関する試験(2)
下記表2に示される水性眼科組成物を常法により調製し、保存時の白濁の発生状態を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10としては、試験例1と同じものを用いた。L-アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、及び塩酸ピリドキシンとしては、第十六改正日本薬局方の規格に適合するものを用いた。
これらの水性眼科組成物を、試験例1と同様の方法で保存し、下記の指標にて白濁度を評価した。保存14日後の評価の結果を表2に併せて示す。また、比較例及び実施例の各水性眼科組成物について、保存14日後の状態を示す写真を図1に示す。
白濁度 −:澄明である
+:よく見ると白濁している
++:ひとめで白濁が認識できる程度
+++:背景がさえぎられるほどの白濁
Figure 2014015450
表2及び図1に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物では、70℃で14日間保存した後に白濁が認められた(比較例1)。
これに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10と共に、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸及び塩酸ピリドキシンをそれぞれ含有する水性眼科組成物では、70℃で14日保存した後にも白濁が認められず、澄明性を保持できることが確認できた(実施例3〜5)。
試験例3 光安定性に関する試験(1)
下記表3に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10、L-アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸及び塩酸ピリドキシンとしては、試験例1と同じものを用いた。
次いで、調製した水性眼科組成物を10mL容量のガラスヘッドスペースバイアルに5mLずつ充填した。光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、室温の下、5000lxの光を120時間連続照射し、水性眼科組成物に対して積算照射量60万lx・hrの光を曝光した。曝光後、HPLCを用いて水性眼科組成物におけるポリオキシエチレンヒマシ油10の含有量を定量し、下記式に従い、残存率を算出した。
残存率(%)=(光照射後のポリオキシエチレンヒマシ油10含有量)/(光照射前のポリオキシエチレンヒマシ油10含有量)×100
更には、次式を用いて、光安定性改善率(%)を算出した。算出の結果を表3に併せて示す。
光安定性改善率(%)={(各実施例の残存率/比較例3の残存率)−1}×100
Figure 2014015450
表3に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物(比較例2)に対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10と共に、L-アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸又は塩酸ピリドキシンを含有する水性眼科組成物では、ポリオキシエチレンヒマシ油10の残存率が顕著に向上し、ポリオキシエチレンヒマシ油10の光安定性改善率が上昇することが確認された(実施例6〜8)。
試験例4 光安定性に関する試験(2)
下記表4に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、光安定性を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10及び塩酸ピリドキシンとしては、試験例1と同じものを用いた。
これらの水性眼科組成物に、試験例2と同様の方法で光を照射して、積算照射量60万lx・hrの光を曝光した。曝光後、HPLCを用いて水性眼科組成物における塩酸ピリドキシンの含有量を定量し、下記式に従って残存率を算出した。
残存率(%)=(光照射後の塩酸ピリドキシン含有量)/(光照射前の塩酸ピリドキシン含有量)×100
更には、次式を用いて、光安定性改善率(%)を算出した。算出の結果を表4に併せて示す。
光安定性改善率(%)={(実施例9の残存率/比較例3の残存率)−1}×100
Figure 2014015450
表4に示す通り、塩酸ピリドキシンを含有する水性眼科組成物(比較例3)に対して、塩酸ピリドキシンと共に、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物では、塩酸ピリドキシンの残存率が顕著に向上し、塩酸ピリドキシンの光安定性改善率が上昇することが確認された(実施例9)。
試験例5 角膜上皮バリア機能に関する試験(1)
下記表5に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、角膜上皮バリア機能の改善作用を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油10、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、L-アスパラギン酸カリウム及び塩酸ピリドキシンとしては、試験例1及び2と同じものを用いた。ヒドロキシエチルセルロースとしては、第十六改正日本薬局方の規格に適合するものを用いた。
次いで、ヒト角膜上皮細胞株HCE-TをTranswell(24well, Corning)のインサート内に1.0×105細胞/ウェル(200μL)の割合となるように播種を行った(n=3)。ウェルには培養培地600μLを入れ、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。培養後、600μLの各水性眼科組成物を入れたウェルにインサートを移し、室温下で10分間静置した。処理後、600μLのリン酸緩衝液を入れたウェルにインサートを移し、1回洗浄後、インサート内の培養液を吸引除去し、インサート内にリン酸緩衝液で調製した0.01重量%フルオレセインナトリウム溶液100μLを入れた。600μLのリン酸緩衝液を入れたウェルにインサートを移し、20分間室温で静置した。ウェル中の液100μLを96wellマイクロプレートに移し、蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent CF、Labsystems社製)を用いて励起波長485 nm/発光波長527 nmにおける蛍光値を測定した。
各比較例、実施例における蛍光値を用いて、下記式に従って透過抑制率を算出した。透過抑制率が高いほど、角膜上皮細胞間のバリアが強固になり、バリア機能が改善されたことを意味する。
透過抑制率(%)={1−(各実施例、比較例の蛍光値/比較例4の蛍光値) }×100
Figure 2014015450
表5に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する水性眼科組成物(比較例5)では、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有しない水性眼科組成物(比較例4)と蛍光値が近似し、わずかな透過抑制率であったのに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油10と共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、L-アスパラギン酸カリウム又は塩酸ピリドキシンを含有する水性眼科組成物では、透過抑制率が顕著に向上しており、角膜上皮バリア機能が改善されていることが確認された(実施例10〜13)。
試験例6 角膜上皮バリア機能に関する試験(2)
下記表6に示す組成の水性眼科組成物を常法により調製し、角膜上皮バリア機能の改善作用を評価した。ポリオキシエチレンヒマシ油35としては、医薬品添加物規格2003のポリオキシエチレンヒマシ油の規格に適合するものであって、酸化エチレンの平均付加モル数が35のものを用いた。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、L-アスパラギン酸カリウム及び塩酸ピリドキシンとしては、試験例1、2及び5と同じものを用いた。
次いで、試験例5と同じ方法で蛍光値を測定し、各比較例、実施例における蛍光値を用いて、下記式に従って透過抑制率を算出した。透過抑制率が高いほど角膜上皮細胞間のバリアが強固になり、バリア機能が改善されたことを意味する。
透過抑制率(%)={1−(各実施例、比較例の蛍光値/比較例6の蛍光値) }×100
Figure 2014015450
表6に示す通り、ポリオキシエチレンヒマシ油35を含有する水性眼科組成物(比較例7)では、ポリオキシエチレンヒマシ油10を含有しない水性眼科組成物(比較例6)に対する透過抑制率が低下したのに対して、ポリオキシエチレンヒマシ油35と共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、L-アスパラギン酸カリウム又は塩酸ピリドキシンを含有する水性眼科組成物では、透過抑制率が顕著に向上しており、角膜上皮バリア機能が改善されていることが確認された(実施例14〜17)。
製剤例
表7及び表8に記載の処方で、常法により、点眼剤(製剤例1〜8)を調製する。
Figure 2014015450
Figure 2014015450
Figure 2014015450
Figure 2014015450

Claims (7)

  1. (A)ポリオキシエチレンヒマシ油と、(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む水性眼科組成物。
  2. (A)成分が、酸化エチレンの平均付加モル数が2〜30であるポリオキシエチレンヒマシ油である、請求項1に記載の水性眼科組成物。
  3. セルロース系粘稠化剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の水性眼科組成物。
  4. 水性眼科組成物の総量を基準として、(A) 成分の総含有量が0.0005〜5w/v%である、請求項1〜3のいずれかに記載の水性眼科組成物。
  5. 更に、(A)成分以外の界面活性剤及び/又は等張化剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の水性眼科組成物。
  6. 更に、ホウ酸緩衝剤を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の水性眼科組成物。
  7. 水性眼科組成物中に、(A)ポリオキシエチレンヒマシ油、並びに(B) セルロース系粘稠化剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、ピリドキシン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を配合することを含む、水性眼科組成物に角膜上皮バリア機能改善作用を付与する方法。
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