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JP2013119306A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】空気入りタイヤにおいて、雪上路面及びウェット路面における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上させる。
【解決手段】空気入りタイヤのトレッドパターンは、タイヤセンターラインを挟んだ両側の各領域において、ジグザグ形状の2本の周方向主溝と、この周方向主溝のうちタイヤセンターラインに近い内側周方向主溝から延びパターンエンドに至る第1ラグ溝と、前記周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に設けられた外側周方向主溝から、パターンエンドに向かって延びる第2ラグ溝と、を含む。前記内側周方向主溝の壁は、タイヤ周方向に沿って溝壁角度が変化する壁面を含む。2本の周方向主溝間の外側陸部には、前記内側周方向主溝あるいは前記外側周方向主溝のいずれか一方からタイヤ幅方向に延び、前記外側陸部内で閉塞する切欠ラグ溝が設けられる。前記切欠ラグ溝の溝深さは、前記第1ラグ溝及び前記第2ラグ溝の溝深さに比べて浅い。
【選択図】 図2

Description

本発明は、トレッドパターンをトレッド部に有する空気入りタイヤに関する。
従来より、欧州等では冬用タイヤとしてスタッドレスタイヤが用いられている。スタッドレスタイヤには、雪上路面における制動性能が優れていることが望まれる他、融雪して水が路面に溜まった湿潤路面(ウェット路面)上において制動性能が優れていることも求められている。すなわち、スタッドレスタイヤは、雪上路面及びウェット路面における制動性能が優れていることが望まれる。このようなスタッドレスタイヤのトレッドパターンについて様々な提案がなされている。
例えば、氷雪性能を確保しつつ排水性を向上することのできるスタッドレスタイヤが提案されている(特許文献1)。
このスタッドレスタイヤでは、一方のトレッド端からタイヤ赤道面へ向けて延び少なくともトレッド端近傍では実質上タイヤ軸方向(タイヤ幅方向)に対して傾斜せず、トレッド端近傍よりもタイヤ赤道面側のトレッド中央部にてタイヤ軸方向に対して傾斜する横溝と、他方のトレッド端からタイヤ赤道面へ向けて延び少なくともトレッド端近傍を除くトレッド中央部にてタイヤ軸方向に対して傾斜する横溝とを連結することによって構成されたトレッドを横断する横断溝のみが、トレッド踏面部に複数配置されている。そして、各横溝は、トレッド中央部において二つの分岐溝を形成し、一方の分岐溝はタイヤ回転軸に対してタイヤ回転方向側に傾斜し、他方の分岐溝はタイヤ回転軸に対してタイヤ回転方向とは反対方向に傾斜し、相反するトレッド端から延びた分岐溝同士を互いに連結することにより複数のブロック列が形成されている。一方のトレッド端から他方のトレッド端まのでトレッド幅を8等分したトレッド中央部側の2つの領域であるトレッド中央領域のネガティブ率(溝面積比率)を、トレッド中央領域のタイヤ軸方向外側に位置するトレッド側部域のネガティブ率よりも小さく設定している。
このようなトレッドパターンの構成により、氷雪性能を確保しつつ排水性を向上することができる、とされている。
特開2002−283812号公報
上記スタッドレスタイヤは、氷雪性能(雪上制動、発進、直進性、コーナリングを含む雪上フィーリング評価、雪上ブレーキ、雪上トラクション)を確保しつつ排水性(ウェットハイドロプレーニング性)を向上するが、より一層の雪上路面における制動性能及びウェット路面における制動性能の向上が求められている。
本発明は、上記公知のスタッドレスタイヤのトレッドパターンとは全く異なるトレッドパターンの形態を用いて、雪上路面の制動性能及びウェット路面における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、トレッド部にトレッドパターンを有する空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤのトレッドパターンは、タイヤセンターラインを挟んでトレッド部の両側のそれぞれの領域において、
タイヤ幅方向に並列するように設けられ、タイヤ周方向に対して傾斜角度を持って傾斜することによりタイヤ幅方向に変位しながらジグザグ形状にタイヤ周方向に延びる2本の周方向主溝と、
前記2本の周方向主溝のうちタイヤセンターラインに近い内側周方向主溝から、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、途中でさらに大きな角度に傾斜してパターンエンドに至る、タイヤ周方向に複数設けられた第1ラグ溝と、
前記2本の周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に設けられた外側周方向主溝から、パターンエンドに向かって延びる、タイヤ周方向に複数設けられた第2ラグ溝と、を有する。
前記第1ラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝の間には、前記第2ラグ溝の少なくとも1つが配置される。
前記内側周方向主溝の前記タイヤセンターラインの側の側壁は、タイヤ周方向に進むに従ってタイヤ径方向に対する溝壁角度が大きくなるように変化する溝壁角度変化壁面を含む。
前記内側周方向主溝と、前記外側周方向主溝と、前記第1ラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接する2つの溝と、によって区画される外側陸部は、タイヤ周方向において、前記溝壁角度変化壁面の一部と前記内側周方向溝を挟んで対向する位置にある。
前記外側陸部には、前記内側周方向主溝あるいは前記外側周方向主溝のいずれか一方からタイヤ幅方向に延び、前記外側陸部内の領域で閉塞する切欠ラグ溝が設けられ、前記切欠ラグ溝の溝深さは、前記第1ラグ溝が前記外側陸部と接しながら通過するときの溝深さ、及び、前記第2ラグ溝が前記外側周方向溝から延びるときの溝深さに比べて浅い。
上述の空気入りタイヤは、雪上路面の制動性能及びウェット路面における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上することができる。
本実施形態の空気入りタイヤの断面を示すタイヤ断面図である。 図1に示すタイヤのトレッド部に設けられるトレッドパターンを平面上に展開したトレッドパターンの一部分の展開図の一例を示す図である。 (a),(b)は、図2に示す周方向主溝をより詳細に説明する図である。 (a)〜(c)は、図2に示す内側周方向主溝に設けられる溝壁角度変化壁面を説明する図である。
(タイヤの全体説明)
以下、本発明の空気入りタイヤについて説明する。図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)10の断面を示すタイヤ断面図である。
空気入りタイヤ10は、例えば乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2010(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
以降で具体的に説明する各パターン要素の寸法の数値は、乗用車用タイヤにおける数値例であり、本発明である空気入リタイヤはこれらの数値例に限定されない。
以降で説明するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心にタイヤ10を回転させたとき、トレッド面の回転する方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に対して直交して延びる放射方向をいい、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸からタイヤ径方向に離れる側をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸方向に平行な方向をいい、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLから離れる両側をいい、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLに近づく両側をいう。
(タイヤ構造)
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ層12と、ベルト層14と、ビードコア16とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
カーカスプライ層12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材12a,12bを含む。図1に示すタイヤ10では、カーカスプライ層12は、カーカスプライ材12a,12bで構成されているが、1つのカーカスプライ材で構成されてもよい。カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト層14が設けられている。ベルト層14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材であり、下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅は上層のベルト材14bのタイヤ幅方向の幅に比べて広い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられ、トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されてサイドウォール部を形成している。サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ層12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12の巻きまわした部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側からベルト層14を覆う、有機繊維をゴムで被覆したベルトカバー層28が備えられている。また、ビード部を覆う有機繊維をゴムで被覆したシート材を備えることもできる。
タイヤ10は、このようなタイヤ構造を有するが、本発明の空気入りタイヤのタイヤ構造は、図1に示すタイヤ構造に限定されない。
(トレッドパターン)
図2は、図1に示すタイヤ10のトレッド部に設けられるトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部分の展開図の一例である。トレッドパターン30は、タイヤ回転方向が指定されたパターンである。タイヤ回転方向に関する情報は、タイヤ10のサイドウォール部の表面に、記号、文字あるいは数字等の標章によって表示されている。タイヤ10を車両に装着するとき、タイヤの回転方向を考慮して、車両の左右輪にタイヤ10は装着される。
図2に示すトレッドパターン30は、タイヤセンターラインCLを基準にして、図中の左右両側に、周方向主溝32a,34a,32b,34bと、第1ラグ溝36a,36bと、第2ラグ溝38a,38bと、切欠ラグ溝40a,40bと、センターラグ溝42a,42bと、を有する。周方向主溝32a,34a,32b,34bのうち、タイヤ幅方向内側に位置する周方向主溝32a,32bを内側周方向主溝32a,32bといい、タイヤ幅方向外側に位置する周方向主溝34a,34bを外側周方向主溝34a,34bともいう。
トレッドパターン30は、タイヤセンターラインCLを基準としたタイヤ幅方向の図2中の右側のトレッド部の領域に、タイヤ幅方向に並列するように設けられた2本の周方向主溝32a,34aを有し、図2中の左側のトレッド部の領域に、タイヤ幅方向に並列するように設けられた2本の周方向主溝32b,34bを有する。
トレッド部の周方向主溝32a,32bで挟まれたセンター側陸部、内側周方向主溝32aと外側周方向主溝34aとで囲まれた外側陸部46a、内側周方向主溝32bと外側周方向主溝34bとで囲まれた外側陸部46b、外側周方向主溝34aとパターンエンドEaの間に設けられたショルダー陸部、及び外側周方向主溝34bとパターンエンドEbの間に設けられたショルダー陸部には、波形状及び直線形状を組み合わせた複数のサイプが略タイヤ幅方向に沿うように設けられている。サイプは、厚さが0.2〜0.6mmであり、深さが4〜10mmの細溝形状である。サイプは、上記寸法によって、周方向主溝32a,34a,32b,34bと、第1ラグ溝36a,36bと、第2ラグ溝38a,38bと、切欠ラグ溝40a,40bと、センターラグ溝42a,42bと区別され得る。
図3(a),(b)は、周方向主溝32a,34a,32b,34bをより詳細に説明する図である。
周方向主溝32a,34a,32b,34bは、図3(a),(b)に示すように、溝中心位置がタイヤ幅方向に変位しながらジグザグ形状を成してタイヤ周方向に延びた主溝である。周方向主溝32a,34a,32b,34bのそれぞれは、タイヤ周方向に対して第1傾斜角度で傾斜した方向に延びる第1傾斜主溝33a,35a,33b,35bと、タイヤ周方向に対して第1傾斜角度よりも大きな第2傾斜角度で傾斜した方向に延びる、第1傾斜主溝33a,35a,33b,35bよりも溝長さが短い第2傾斜主溝33c,35c,33d,35dと、を含み、第1傾斜主溝33a,35a,33b,35bのそれぞれと第2傾斜主溝33c,35c,33d,35dの対応する第2傾斜主溝を1組として、複数組が用いられてジグザグ形状にタイヤ周方向に延びる。
第1ラグ溝36a,36bは、タイヤセンターラインCLを中心としたトレッド部のタイヤ幅方向の両側のそれぞれに設けられる2本の周方向主溝のうちタイヤセンターラインCLに近い内側周方向主溝32a,32bの第1傾斜主溝33a,33bから、タイヤ周方向に対して第1傾斜溝33a,33bよりも大きな傾斜角度でタイヤ回転方向と反対方向に向かって延び、途中で傾斜角度をさらに大きくしてパターンエンドEa,Ebに至っている。第1ラグ溝36a,36bは、タイヤ周方向に複数設けられている。
第2ラグ溝38a,38bは、タイヤセンターラインCLを中心としたトレッド部のタイヤ幅方向の両側のそれぞれに設けられる2本の周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に設けられた外側周方向主溝34a,34bから、パターンエンドEa,Ebに向かって延びている。第2ラグ溝38a,38bは、タイヤ周方向に複数設けられている。
さらに、第1ラグ溝36a,36bのうちタイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝36a,36bの間には、第2ラグ溝38a,38bが1つ配置されている。本実施形態では、タイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝の間には、第2ラグ溝38a,38bが1つ配置されるが、第2ラグ溝38a,38bが2つあるいは3つ配置されてもよい。第2ラグ溝38a,38bを2つあるいは3つ配置することにより、トレッド部のショルダー領域におけるタイヤ幅方向のエッジ成分を多くすることができ、雪上路面における制動性能を向上させることができる。第2ラグ溝38a,38bを4つ以上配置すると、ショルダー領域におけるブロック剛性が低下して、雪上路面における制動性能が低下する。
トレッドパターン30では、第1ラグ溝36a,36bおよび第2ラグ溝38a,38bは、タイヤセンターラインCLを挟んでトレッド部の両側の領域において、タイヤ周方向に対してお互いに異なる向きに傾斜している。
内側周方向主溝32a,32bには、タイヤ周方向に複数のセンターラグ溝42a,42bが設けられている。
内側周方向主溝32a,32bのタイヤセンターラインCL側の側壁であり、ジグザグ形状を成す内側周方向主溝32a,32bを構成する第1傾斜主溝33a,33bの壁は、溝壁角度変化壁面44a,44bを含む。溝壁角度変化壁面44a,44bは、第1傾斜主溝33a,33bのタイヤ周方向の一方の端部(タイヤ10の回転によって先に接地する端部)から他方の端部(タイヤ10の回転によって後に接地する端部)に向かうにつれてタイヤ径方向に対する溝壁角度が大きくなるように変化する壁面である。すなわち、溝壁角度変化壁面44a,44bは、タイヤ周方向に隣接するセンターラグ溝42a,42bの間の、第1傾斜主溝33a,33bのタイヤセンターラインCLの側の壁に設けられている。溝壁角度変化壁面44aと溝壁角度変化壁面44bとは、同じ構成であるので、溝壁角度変化壁面44aを代表して説明し、溝壁角度変化壁面44bの説明は省略する。
図4(a)〜(c)は、溝壁角度変化壁面44aを説明する図である。図4(b)は、図2中の内側周方向主溝32aのA−A’断面図であり、図4(c)は、図2中の内側周方向主溝32aのB−B’断面図である。内側周方向主溝32aの一部分である第1傾斜主溝33aの一方の端部から他方の端部に向かうにつれて、タイヤ径方向に対する溝壁角度が図4(b),(c)に示すように、θ1から、θ1より角度が大きいθ2に変化する。なお、上述したように、トレッドパターン30のタイヤ回転方向が指定されているので、第1傾斜主溝33aの溝面積は徐々に狭くなっている。このように第1傾斜主溝33aに溝壁角度変化壁面44aを設けるのは、雪上路面において、タイヤ10が転動して接地面に入ってくる第1傾斜主溝33aに関する溝面積を徐々に狭くすることにより、第1傾斜主溝33a内に含まれる雪を徐々に押し固めて、雪柱せん断力が高まることにより、雪上路面における制動性能を向上させるためである。
内側周方向主溝32a,32bと、外側周方向主溝34a,34bと、第1ラグ溝36a,36bのうちタイヤ周方向に隣接する2つの溝と、によって区画された外側陸部46a,46bが設けられている。外側陸部46a,46bは、地面と接触する部分である。外側陸部46a,46bは、タイヤ周方向において、溝壁角度変化壁面44aの一部と内側周方向溝32a,32bを挟んで対向する位置にある。外側陸部46a,46bには、外側周方向主溝34a、34bのいずれか一方からタイヤ幅方向に延び、外側陸部46a,46bの領域内で閉塞する切欠ラグ溝40a,40bが設けられている。本実施形態では、切欠ラグ溝40a,40bが外側周方向主溝34a、34bから外側陸部46a,46bの領域内に延びているが、切欠ラグ溝40a,40bが内側周方向主溝32a,32bから外側陸部46a,46bの領域内に延びていてもよい。
切欠ラグ溝40a,40bの溝深さは、第1ラグ溝36a,36bが外側陸部46a,46bと接しながら通過するときの溝深さ、及び、第2ラグ溝38a,38bが外側周方向溝34a,34bから延びるときの溝深さに比べて浅くなっている。
このように、切欠ラグ溝40a,40bの溝深さを第1ラグ溝36a,36bが外側陸部46a,46bと接しながら通過するときの溝深さ、及び、第2ラグ溝38a,38bが外側周方向溝34a,34bから延びるときの溝深さに比べて浅くするのは以下の理由による。すなわち、上述したように、第1傾斜主溝33a,33bに溝壁角度変化壁面44a,44bを設けることにより、第1傾斜主溝363,33b内の雪塊の雪柱せん断力を高めて雪上路面における制動性能を向上させるとき、第1傾斜主溝33a,33bに接する外側陸部46a,46bのブロック剛性が低下して外側陸部46a,46bが変形し易くなり第1傾斜主溝33a,33b内で固められる雪塊の雪柱せん断力が低下するのを抑制するためである。
このようなトレッドパターン30によって、後述するように、雪上路面における制動性能及び湿潤路面(ウェット路面)における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上することができる。
また、切欠ラグ溝40a,40bを設けることにより、外側陸部46a,46bが地面から受ける接地圧を高くすることができ、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能を向上させることができる。
なお、切欠ラグ溝40a,40bは、外側周方向主溝34a,34bからタイヤセンターラインCLに向かって延び、切欠ラグ溝34a,34bの閉塞端は、切欠ラグ溝40a,40bの外側周方向主溝34a,34bにおける開口端から、外側陸部46a,46bのタイヤ幅方向の幅の50%の範囲内に位置することが、雪上路面における制動性能及び湿潤路面(ウェット路面)における制動性能の一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上させる点で好ましい。
第1ラグ溝36a,36bの溝幅は、第2ラグ溝38a,38bの溝幅の1.2〜2.5倍であり、第2ラグ溝38a,38bが外側周方向溝34a,34bから延びを開始する位置における第2ラグ溝38a,38bの溝深さは、第1ラグ溝36a,36bが外側周方向主溝34a,34bと交差する位置における第1ラグ溝36a,36bの溝深さに比べて浅いことが、雪上路面における制動性能及び湿潤路面(ウェット路面)における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ他方を向上させる点で好ましい。
第1ラグ溝36a,36bの溝幅の、第2ラグ溝38a,38bの溝幅に対する比率を1.2〜2.5倍とすることにより、周方向主溝32b,34bのタイヤ幅方向外側に位置するトレッド部のショルダー領域における溝面積を確保することができ、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能を向上させることができる。上記比率が1.2倍未満であると、ショルダー領域における溝面積が十分でなく、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能が向上しない。上記比率が2.5倍より大きいとショルダー領域におけるブロック剛性が低下する。上記比率は好ましくは1.7〜2.0倍である。
第2ラグ溝38a,38bが外側周方向溝34a,34bから延びを開始する位置における第2ラグ溝38a,38bの溝深さは、第1ラグ溝36a,36bが外側周方向主溝34a,34bと交差する位置における第1ラグ溝36a,36bの溝深さに比べて浅くすることにより、ショルダー領域におけるブロック剛性の低下を抑制し、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能が向上する。好ましくは、第1ラグ溝36a,36bの上記溝深さに対する第2ラグ溝38a,38bの上記溝深さを60〜70%にするとよい。
また、下記式(1)で定まるスノートラクションインデックスSTIが180以上220以下であることが好ましい。
STI =
−6.8 + 2202・ρg + 672・ρs + 7.6・Dg (1)
(ρgは、前記空気入りタイヤに設けられる全溝のタイヤ幅方向に投影した長さの合計長さ(mm)を、(接地幅×周長)(mm2)で割った値であり、ρsは、前記空気入りタイヤに設けられる全サイプのタイヤ幅方向に投影した長さの合計長さ(mm)を、(接地幅×周長)(mm2)で割った値であり、Dgは、溝の平均深さ(mm)である。)
なお、スノートラクションインデックスは、特許2824675号公報に記載されるように、雪上路面での運動性能を損なわずに氷路面上での運動性能を向上させるためにトレッドパターンが有するサイプ及び溝に関する定量的指標であり、スノートラクションインデックスが高いほど、雪上路面での運動性能を損なわずに氷路面上での運動性能が向上することを意味する。
なお、第1ラグ溝36a,36bが外側陸部46a,46bと接するように通過する領域において、第1ラグ溝36a,36bのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は20〜50度であり、外側周方向主溝34a,34bとパターンエンドEa,Ebとの間の領域において、第1ラグ溝36a,36bのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は0〜20度であることが好ましい。第1ラグ溝36a,36bの傾斜角度とは、第1ラグ溝36a,36bの溝の中心位置の曲線の接線のタイヤ幅方向に対する角度である。
トレッドパターン30では、周方向主溝32a,34a,32b,34bがジグザグ形状であり、周方向主溝32a,34a及び周方向主溝32b,34bを連通した第1ラグ溝36a,36bを設け、第1ラグ溝36a,36bをパターンエンドEa,Ebまで延ばすことにより、雪上路面における制動性能及び湿潤路面(ウェット路面)における制動性能について一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上することができる。また、第1ラグ溝36a,36bをパターンエンドEa,Ebまで延ばすので、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能の他に、排水性能(耐ハイドロプレーニング性能)も向上する。また、周方向主溝32a,34aと周方向主溝32b,34bと、第1ラグ溝36a,36bで区画されたブロック状の外側陸部46a,46bを設けることにより、雪上路面における制動性能及び湿潤路面(ウェット路面)における制動性能の他、乾燥路面における操縦安定性能を確保することができる。
(実施例、比較例、従来例)
本実施形態のタイヤ10の効果を調べるために、種々の仕様のタイヤを作製した。作製したタイヤのタイヤサイズは、205/55R16である。作製したタイヤにリムサイズ16×61/2Jのリムを装着し、空気を230kPa充填した。
性能は、湿潤路面(ウェット路面)における制動性能(ウェット制動性能)及び雪上路面における制動性能(スノー制動性能)について評価した。
ウェット制動性能については、同じ仕様のタイヤを2リットルクラスの乗用車に装着して乗用車を走行させ、水深10mmの水膜を有する路面上を速度100km/時の速度からフルブレーキ状態で制動して制動距離を5回測定した。タイヤの荷重条件は、乗用車の前席に2名乗車した条件とした。測定した制動距離を平均して測定値とした。測定値は、後述する従来例の測定値を100とした指数で表した。指数が高いほど制動距離が短く、ウェット制動性能が高いことを示す。
スノー制動性能については、ウェット制動性能と同様に、同じ仕様のタイヤを2リットルクラスの乗用車に装着して乗用車を走行させ、テストコース上の雪上路面上を速度40km/時の速度からフルブレーキ状態で制動して制動距離を5回測定した。タイヤの荷重条件は、乗用車の前席に2名乗車した条件とした。測定した制動距離を平均して測定値とした。測定値は、後述する従来例の測定値を100とした指数で表した。指数が高いほど制動距離が短く、スノー制動性能が高いことを示す。
下記表1には、タイヤの各仕様と性能評価結果を示す。
従来例では、周方向主溝32a,32b,34a,34bがジグザグ形状ではなく、直線形状であり、切欠ラグ溝40a,40bが設けられない。
比較例1では、周方向主溝32a,32b,34a,34bがジグザグ形状であり、切欠ラグ溝40a,40bが設けられるが、その溝深さが実施例1〜4の切欠ラグ溝40a,40bに比べて深く、第2ラグ溝38a,38bが外側周方向溝である周方向主溝34a,34bから延びを開始する位置における溝深さと同じである。
比較例2では、周方向主溝32a,32b,34a,34bがジグザグ形状であるが、切欠ラグ溝40a,40bが設けられない。
実施例1〜4では、切欠ラグ溝40a,40bの長さを種々変化させている。すなわち、切欠ラグ溝40a,40bの閉塞端の位置を、切欠ラグ溝40a,40bの開口端から、外側陸部46a,46bのタイヤ幅方向の幅の30〜70%で変化させている。
Figure 2013119306
上記表1の実施例1、比較例1、比較例2、従来例の比較から明らかなように、実施例1のウェット制動性能を維持しつつスノー制動性能が向上する。これより、タイヤ10のトレッドパターン30は、ウェット制動性能を維持しつつスノー制動性能が向上することがわかる。
実施例1〜4の比較より、切欠ラグ溝40a,40bの閉塞端は、切欠ラグ溝40a,40bの外側周方向主溝34a,34bとの開口端から、外側陸部46a,46bのタイヤ幅方向の幅の50%の範囲内、より具体的には、30〜50%の範囲内に位置することが、ウェット制動性能を維持しつつスノー制動性能が向上する点で好ましいことがわかる。
第1ラグ溝36a,36bの溝幅を広げ、第1ラグ溝36a,36bの溝幅の第2ラグ溝38a,38bの溝幅に対する比率を大きくすること、あるいは、周方向主溝32a,32b,34a,34bの溝体積を大きくすること等の対策をとることにより、スノー制動性能の向上のマージンをウェット制動性能の向上に振り分けることができる。したがって、ウェット制動性能及びスノー制動性能の一方を少なくとも維持しつつ、他方を向上させることができる。
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
10 空気入りタイヤ
12 カーカスプライ層
12a,12b カーカスプライ材
14 ベルト層
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
26 インナーライナゴム部材
30 トレッドパターン
32a,32b 周方向主溝(内側周方向主溝)
33a,35a,33b,35b 第1傾斜主溝
33c,35c,33d,35d 第2傾斜主溝
34a,34b 周方向主溝(外側周方向主溝)
36a,36b 第1ラグ溝
38a,38b 第2ラグ溝
40a,40b 切欠ラグ溝
42a,42b センターラグ溝
44a,44b 溝壁角度変化壁面
46a、46b 外側陸部

Claims (7)

  1. トレッド部にトレッドパターンを有する空気入りタイヤであって、
    トレッドパターンは、タイヤセンターラインを挟んでトレッド部の両側のそれぞれの領域において、
    タイヤ幅方向に並列するように設けられ、タイヤ周方向に対して傾斜角度を持って傾斜することによりタイヤ幅方向に変位しながらジグザグ形状にタイヤ周方向に延びる2本の周方向主溝と、
    前記2本の周方向主溝のうちタイヤセンターラインに近い内側周方向主溝から、タイヤ周方向に対して傾斜して延び、途中でさらに大きな角度に傾斜してパターンエンドに至る、タイヤ周方向に複数設けられた第1ラグ溝と、
    前記2本の周方向主溝のうちタイヤ幅方向外側に設けられた外側周方向主溝から、パターンエンドに向かって延びる、タイヤ周方向に複数設けられた第2ラグ溝と、を有し、
    前記第1ラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝の間には、前記第2ラグ溝の少なくとも1つが配置され、
    前記内側周方向主溝の前記タイヤセンターラインの側の側壁は、タイヤ周方向に進むに従ってタイヤ径方向に対する溝壁角度が大きくなるように変化する溝壁角度変化壁面を含み、
    前記内側周方向主溝と、前記外側周方向主溝と、前記第1ラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接する2つの溝と、によって区画される外側陸部は、タイヤ周方向において、前記溝壁角度変化壁面の一部と前記内側周方向溝を挟んで対向する位置にあり、
    前記外側陸部には、前記内側周方向主溝あるいは前記外側周方向主溝のいずれか一方からタイヤ幅方向に延び、前記外側陸部内の領域で閉塞する切欠ラグ溝が設けられ、
    前記切欠ラグ溝の溝深さは、前記第1ラグ溝が前記外側陸部と接しながら通過するときの溝深さ、及び、前記第2ラグ溝が前記外側周方向溝から延びるときの溝深さに比べて浅い、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記切欠ラグ溝は、前記外側周方向主溝から前記タイヤセンターラインに向かって延び、前記切欠ラグ溝の閉塞端は、前記切欠ラグ溝の前記外側周方向主溝における開口端から、前記外側陸部のタイヤ幅方向の幅の50%の範囲内に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記第1ラグ溝の溝幅は、前記第2ラグ溝の溝幅の1.2〜2.5倍であり、
    前記第2ラグ溝が前記外側周方向溝から延びるときの前記第2ラグ溝の溝深さは、前記第1ラグ溝が前記外側周方向主溝と交差する位置における前記第1ラグ溝の溝深さに比べて浅い、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 下記式(1)で定まるスノートラクションインデックスSTIが180以上220以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
    STI = −6.8 + 2202・ρg + 672・ρs + 7.6・Dg (1)
    (ρgは、前記空気入りタイヤに設けられる全溝のタイヤ幅方向に投影した長さの合計長さ(mm)を、(接地幅×周長)(mm2)で割った値であり、ρsは、前記空気入りタイヤに設けられる全サイプのタイヤ幅方向に投影した長さの合計長さ(mm)を、(接地幅×周長)(mm2)で割った値であり、Dgは、溝の平均深さ(mm)である。)
  5. 前記第1ラグ溝のうちタイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝の間には、前記第2ラグ溝のうち2つあるいは3つの第2ラグ溝が配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記第1ラグ溝および前記第2ラグ溝は、前記タイヤセンターラインを挟んでトレッド部の両側の領域において、タイヤ周方向に対してお互いに異なる向きに傾斜する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記第1ラグ溝が前記外側陸部と接するように通過する領域において、前記第1ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は20〜50度であり、前記外側周方向主溝と前記パターンエンドとの間の領域において、前記第1ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は0〜20度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。


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