JP2013177672A - アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
させ、かつ薄肉化されたアルミニウム合金鍛造材であっても、高強度と、高靭性が安定して得られるアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Mg、Si、Cu、Fe、TiおよびBを所定量含み、更に、Mn、CrおよびZrの一種または二種以上を所定量含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金から構成されるアルミニウム合金鍛造材であって、アルミニウム合金鍛造材の表面で測定した20℃での導電率が42.5IACS%を超え46.0IACS%以下であり、アルミニウム合金鍛造材の0.2%耐力が360MPa以上であり、かつ、シャルピー衝撃値が6J/cm2以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
ニウム合金鍛造材およびその製造方法に関するものである。
S規格またはAA規格に規定される6000系(Al−Mg−Si系)などのアルミニウ
ム合金が使用されている。この6000系アルミニウム合金は、比較的耐食性にも優れて
おり、また、スクラップを6000系アルミニウム合金溶解原料として再利用できるリサ
イクル性の点からも優れている。
ルミニウム合金鋳造材やアルミニウム合金鍛造材が用いられる。この内、より高強度で高
靱性などの機械的性質が要求される強度部材、例えば、アッパーアーム、ロアーアームな
どの自動車足回り部材には、アルミニウム合金鍛造材が主として用いられる。そして、こ
れらアルミニウム合金鍛造材は、アルミニウム合金鋳造材を均質化熱処理後、メカニカル
鍛造、油圧鍛造などの熱間鍛造を行い、その後溶体化焼き入れ処理や人工時効硬化処理(
以下、単に時効処理とも言う)などの調質処理が施されて製造される。なお、鍛造には、
鋳造材を均質化熱処理後、押出加工した押出材が用いられることもある。
、更なる軽量化(薄肉化)の必要性が生じてきている。しかし、これら用途に従来使用さ
れている6061や6151などの6000系アルミニウム合金鍛造材では、どうしても
強度(0.2%耐力)や靱性不足が生じてしまう。
、Mg:0.6〜1.8質量%、Si:0.8〜1.8質量%、Cu:0.2〜1.0質
量%を含み、Si/Mgの質量比が1以上であり、更に、Mn:0.1〜0.6質量%、
Cr:0.1〜0.2質量%およびZr:0.1〜0.2質量%の一種または二種以上を
含み、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、最薄肉部の厚みが30mm以下
であるアルミニウム合金鍛造材であって、人工時効硬化処理後のアルミニウム合金鍛造材
表面で測定した導電率が41.0〜42.5IACS%であって、0.2%耐力が350
MPa以上であるアルミニウム合金鍛造材を提案した。
鍛造の諸条件のある程度の幅やばらつきが許容される。しかし、Siを過剰に含み、CuやMnなどの高強度化元素の含有量を多くして0.2%耐力を360MPa以上に高強度化させ、かつ薄肉化されたアルミニウム合金鍛造材の場合には、通常は許容される前記製造条件の幅やばらつきが、より敏感に鍛造材の0.2%耐力に影響する。この結果、製造条件範囲内で、製品鍛造材の0.2%耐力が大きくばらつき、高強度で高靭性の鍛造材が安定して得られない。
部材用途への信頼性が損なわれ、製品鍛造材の歩留り低下や製造コストを押し上げること
にもつながる。また、前記製造条件の幅などの許容範囲をいたずらに狭くして鍛造材の0
.2%耐力、靭性の安定化を図ることも、製造コストを押し上げることにつながる。
含有量を多くして高強度化させ、かつ薄肉化されたアルミニウム合金鍛造材であっても、
高強度と、高靭性が安定して得られるアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法を提供しようとするものである。
80質量%、Si:0.80〜1.80質量%、Cu:0.20〜1.00質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Ti:0.001〜0.15質量%、B:1〜500ppmを含み、更に、Mn:0.10〜0.60質量%、Cr:0.10〜0.40質量%およびZr:0.10〜0.20質量%の一種または二種以上を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金から構成されるアルミニウム合金鍛造材であって、前記アルミニウム合金鍛造材の表面で測定した20℃での導電率が42.5IACS%を超え46.0IACS%以下であり、前記アルミニウム合金鍛造材の0.2%耐力が360MPa以上、かつ、シャルピー衝撃値が6J/cm2以上であることを特徴とする。
前記構成によれば、アルミニウム合金鍛造材の0.2%耐力がさらに向上する。
前記構成によれば、水素ガス濃度が所定値以下であることによって、水素に起因する気泡等の鍛造欠陥が無くなる。その結果、破壊の起点が減少することから、アルミニウム合金鍛造材のシャルピー衝撃値が向上する。
解して溶湯とする溶解工程と、前記溶湯を冷却速度10℃/sec以上で鋳造して鋳塊と
する鋳造工程と、前記鋳塊に昇温速度5℃/min以下、保持温度450〜550℃で均
質化熱処理を施す均質化熱処理工程と、均質化熱処理された前記鋳塊を鍛造素材とし、前
記鍛造素材に開始温度460〜540℃の熱間鍛造を施す鍛造工程と、前記鍛造工程の後
に、520〜570℃の溶体化処理と、170〜200℃で4〜9hrの人工時効硬化処
理を施す調質工程と、を含むことを特徴とする。
40℃で行うことによって、鍛造組織における亜結晶粒組織の割合が増加し、鍛造組織の
粒界が増加するため、Mg2Siの析出が促進される。その結果、人工時効硬化処理後の
アルミニウム合金鍛造材の表面で測定される導電率が所定の範囲となる。
2%耐力を360MPa以上に高強度化させ、かつ薄肉化された強度部材用鍛造材では、
アルミニウム合金鍛造材表面で測定した導電率(以下、表面の導電率とも言う)が、鍛造
材の0.2%耐力とより密接に相関することを知見した。
導電率は、アルミニウム合金材の組織状態を表わしており、アルミニウム合金材の0.2
%耐力と密接に相関すること自体は公知である。しかし、通常の6000系アルミニウム
合金鍛造材では、アルミニウム合金鍛造材表面の導電率と0.2%耐力との関係は、なだ
らかな直線状となる。そして、このような相関関係では、アルミニウム合金鍛造材表面の
導電率が余程大きく変わらない限り、導電率がアルミニウム合金鍛造材の0.2%耐力に
与える影響は比較的小さい。
60MPa以上に高強度化させ、かつ薄肉化された6000系アルミニウム合金鍛造材で
は、表面の導電率が42.5IACS%を超え46.0IACS%以下であるとき、0.
2%耐力が極大化傾向を示し、導電率がこの範囲外ではアルミニウム合金鍛造材の0.2
%耐力が急激に低下するという特異な現象を示す。
6000系アルミニウム合金鍛造材では、前記製造条件の幅やばらつきによる、アルミニ
ウム合金鍛造材表面の導電率の幅やばらつきが、より敏感に鍛造材の0.2%耐力に影響
する。この結果、前記した通り、通常は許容される製造条件の幅やばらつきの範囲では、
製品鍛造材の0.2%耐力が大きくばらつき、0.2%耐力が360MPa以上ある鍛造
材が安定して得られないことにつながる。
ACS%超え46.0IACS%以下とすることで、360MPa以上のAl合金鍛造材
の0.2%耐力を保証するとともに安定的に得ることができる。言い換えると、アルミニ
ウム合金鍛造材表面の導電率が42.5IACS%を超え46.0IACA%以下の範囲
となるような製造条件とすれば、0.2%耐力が360MPa以上ある鍛造材を安定して
得ることができる。
て高強度化させ、かつ薄肉化されたアルミニウム合金鍛造材であっても、耐食性を維持し
つつ、高い強度と、高靭性が安定して得られるアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法を提供できる。したがって、アルミニウム合金鍛造材の輸送機用への用途の拡大を図ることができる点で、多大な工業的な価値を有するものである
。
する。本発明のAl合金鍛造材では、360MPa以上の0.2%耐力を保証するととも
に安定的に得るために、後記する人工時効硬化処理後のAl合金鍛造材表面の20℃での導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲とする。
本発明のように、Siを過剰に含み、CuやMnなどの含有量を多くして0.2%耐力
を360MPa以上に高強度化させ、かつ薄肉化されたAl合金鍛造材では、Al合金鍛
造材表面の20℃での導電率が42.5IACS%以下、あるいは、46.0IACS%を超えると、0.2%耐力で360MPa以上の高強度が得られない。
金鍛造材内部(中心部を含む)の導電率でも、表面の導電率と同じ傾向を示す。表面の導
電率が測定するのが容易であることから、本発明では、Al合金鍛造材表面の導電率の方
を選択する。
粒度などの組織の総合的な状態を表わしている。しかも、これらの材料因子の他に、製造
条件の因子が全て加味された集大成の冶金状態を表わしている。
60MPa以上に高強度化させ、かつ薄肉化されたAl合金鍛造材では、個々のAl合金
の各合金元素量、あるいは、均質化熱処理の保持温度や熱間鍛造の開始温度などの大ま
かな条件が一致したとしても、Al合金鍛造材表面の導電率が同じとなるとは限らない。
ては、前記温度条件などの他に、鋳造の際の冷却速度、鋳塊の均質化熱処理の際の昇温速
度、保持時間や冷却速度、メカニカル鍛造や油圧鍛造などの熱間鍛造機の種別と鍛造回数
や、各回の鍛造の際の加工率配分や鍛造終了温度条件、溶体化処理、焼き入れ処理、人工時効硬化処理の温度、時間条件などのより細かいレベルである。
材表面の導電率が同じとなるのであれば、本発明の技術課題である、量産しようとする場
合の0.2%耐力のばらつきの問題はむしろ生じない。
(0.2%耐力:360MPa以上、かつ、シャルピー衝撃値:6J/cm2)
Al合金鍛造材の0.2%耐力を360MPa以上、かつ、シャルピー衝撃値を6J/cm2以上とすることによって、Al合金鍛造材が高強度と高靭性を有することとなり、Al合金鍛造材を自動車、船舶などの輸送機の構造材あるいは部品用として使用することが可能となる。
鍛造材の化学成分組成は、Al−Mg−Si系(6000系)Al合金からなり、自動車
、船舶などの輸送機の構造材あるいは部品用として、高強度、高靱性および耐応力腐食割
れ性などの高い耐久性を保証するように規定する。また、本発明のAl合金鍛造材の化学
成分組成は、鍛造材表面の導電率を規定する大きな因子の一つとなる。
%、Si:0.80〜1.80質量%、Cu:0.20〜1.00質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Ti:0.001〜0.15質量%、B:1〜500ppmを含み、更に、Mn:0.10〜0.60質量%、Cr:0.10〜0.40質量%およびZr:0.10〜0.20質量%の一種または二種以上を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。
各成分規格通りにならずとも、前記本発明の諸特性を阻害しない範囲で、更なる特性の向
上や他の特性を付加するための、他の元素を適宜含むなどの成分組成の変更は適宜許容さ
れる。また、溶解原料スクラップなどから必然的に混入される不可避的不純物も、本発明の鍛造材の品質を阻害しないため許容される。
や好ましい範囲について説明する。
Mgは人工時効硬化処理により、SiとともにMg2Si(β'相)として析出し、A
l合金鍛造材に高い0.2%耐力を付与するために必須の元素である。Mgの0.60質
量%未満の含有では時効硬化量が低下して、Al合金鍛造材にとって高い0.2%耐力と
ともに重要なシャルピー衝撃値(以下、靭性とする)や耐食性が低下する。一方、1.80質量%を超えて含有されると、0.2%耐力が高くなりすぎ、鋳塊の鍛造性を阻害する。また、後記する溶体化処理後の焼き入れ途中に多量のMg2Siが析出しやすく、粒界上に存在するMg2Siや、Al、Si、Mn、Cr、Zr、Feが選択的に結合したAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径が小さくならず、これら晶析出物同士の平均間隔を大きくすることができない。その結果、Al合金鍛造材の耐食性を低下させる。また、Mg含有量がこの範囲より多過ぎると、製造条件の調整によって、Al合金鍛造材表面の導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲とすることが難しくなる。したがって、Mgの含有量は0.60〜1.80質量%の範囲とする。
SiもMgとともに、人工時効硬化処理により、Mg2Si(β'相)として析出して
、Al合金鍛造材に高い0.2%耐力を付与するために必須の元素である。Siの0.8
0質量%未満の含有では時効硬化量が低下して、Al合金鍛造材の0.2%耐力が低下すると共に、耐食性が低下する。一方、1.80質量%を超えて含有されると、鋳造時および溶体化処理後の焼き入れ途中で、粗大な単体Si粒子が晶出および析出する。また、過剰Siが多くなり過ぎて、粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径が小さくならず、これら晶析出物同士の平均間隔を大きくできない。その結果、前記Mgと同様に、Al合金鍛造材の耐食性と靱性を低下させる。更にAl合金鍛造材の伸びが低くなるなど、加工性も阻害する。また、Si含有量がこの範囲より多過ぎると、製造条件の調整によって、Al合金鍛造材表面の導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲とすることが難しくなる。したがって、Siの含有量は0.80〜1.80質量%の範囲とする。
Cuは、固溶強化にて0.2%耐力の向上に寄与する他、人工時効硬化処理に際して、
Al合金鍛造材の時効硬化を著しく促進する効果を有する。Cuの含有量が0.20質量
%未満では、これらの効果が期待できず、0.2%耐力が低下する。また、これらの効果
を安定的に得るためには好ましくはCuの含有量を0.30質量%以上とする。一方、C
uの含有量が1.00質量%を超えた場合、Al合金鍛造材の組織の応力腐食割れや粒界
腐食の感受性を著しく高め、Al合金鍛造材の耐食性を低下させる。また、Cu含有量がこの範囲より多過ぎると、製造条件の調整によって、Al合金鍛造材表面の導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲とすることが難しくなる。したがって、Cuの含有量は0.20〜1.00質量%、好ましくは0.30〜1.00質量%の範囲とする。
Feは、Al合金鍛造材の靭性を向上させるために添加する元素である。しかし、Feは、Al7Cu2Fe、Al12(Fe,Mn)3Cu2、(Fe,Mn)Al6、或いは本発明で問題とする粗大なAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系の晶析出物を生成する。これらの晶析出物は、破壊の起点となり、靱性および疲労特性などを劣化させる。特に、Feの含有量が0.40質量%、より厳密には0.35質量%を超えると、粒界上に存在するAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径が大きくなり、また、晶析出物同士の平均間隔が小さくなる。その結果、靭性が低下する。一方、Feが0.05質量%未満の含有では、鋳造時の割れ、異常組織等を生じる。したがって、Feの含有量は0.05〜0.40質量%とする。より好ましくは0.05〜0.35質量%である。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出、圧延、鍛造時の加工性を向上させるために添
加する元素である。しかし、Tiが0.001質量%未満の含有では、加工性向上の効果が得らない。一方、Tiが0.15質量%を超えて含有されると、粗大な晶析出物を形成し、前記加工性が低下する。したがって、含有させる場合のTiの含有量は0.001〜0.15質量%の範囲とする。
Bは、Tiと同様、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出、圧延、鍛造時の加工性を向上させ
るために添加する元素である。しかし、Bが1ppm未満の含有では、この効果が得られない。一方、500ppmを超えて含有されると、やはり粗大な晶析出物を形成し、前記加工性が低下する。したがって、含有させる場合のBの含有量は1〜500ppmの範囲とする。
これらの元素は均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、Fe、Mn、Cr、Zr、Si、Alなどがその含有量に応じて選択的に結合したAl−Mn系、Al−Cr系、Al−Zr系金属間化合物であり、(Fe、Mn、Cr、Zr)3SiAl12系として総称される分散粒子(分散相)を生成する。
るパーティングライン組織のST方向の平均結晶粒径の粗大化を防止するとともに、本発
明のAl合金鍛造材全体に渡って、微細な結晶粒や亜結晶粒を得ることができる。また、
Mn、Cr、Zrは固溶による0.2%耐力の増大も見込める。
有する場合の元素の含有量は前記範囲内である。Mn、Cr、Zrの含有量が少なすぎると、前記効果が期待できず、一方、これらの元素の過剰な含有は、溶解、鋳造時に粗大なAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系の金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、破壊の起点となり、Al合金鍛造材の導電率、0.2%耐力、靭性および耐食性の少なくとも1つを低下させる原因となる。このため、これらの元素は各々、Mn:0.10〜0.60質量%、Cr:0.10〜0.40質量%およびZr:0.10〜0.20質量%の範囲で一種または二種以上含有させる。
不可避的不純物としては、Zn、Be、V等の元素が想定し得るが、いずれも本発明の特徴を阻害しないレベルで含有することは許容される。具体的には、これら不可避的不純物の元素は、個々の元素毎の含有量がそれぞれ0.05質量%以下であり、合計の含有量が0.15質量%以下であることが必要である。
本発明のアルミニウム合金は、Si/Mgの質量比が1以上であることが好ましい。前記各含有量範囲を前提に、Si/Mgの質量比を1以上とすることによって、0.2%耐力がさらに向上する。Si/Mgの質量比が1未満では、0.2%耐力のさらなる向上効果が得られない。
好ましい。
(水素:0.25ml/100gAl以下)
水素(H2)は、特に、Al合金鍛造材の加工度が小さくなる場合、水素に起因する気
泡等の鍛造欠陥が生じやすく、破壊の起点となるため、靱性や疲労特性が低下し易い。
そして、高強度化した輸送機の構造材などにおいては、特に水素による影響が大きい。し
たがって、水素は0.25ml/100gAl以下のできるだけ少ない含有量とすること
が好ましい。
、溶解工程と、鋳造工程と、均質化熱処理工程と、鍛造工程と、調質工程とを含むもので
ある。本発明におけるAl合金鍛造材の製造自体は、製造条件の調整による、Al合金鍛
造材表面の導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲への制御、0.2%耐力および靭性の制御以外は、常法により製造が可能である。以下に、前記導電率を範囲内とするなど、Al合金鍛造材の特性を向上させる各工程の条件について説明する。
溶解工程は、前記化学成分組成のAl合金を溶解して溶湯とする工程である。
鋳造工程は、前記化学成分組成に溶解調整された溶湯を鋳造して鋳塊とする工程である
。そして、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常
の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。なお、鋳塊の形状は、丸棒などのインゴットやス
ラブ形状などがあり、特に制限されるものではない。
Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を小さくし、晶析出物同士の平均間隔を大きくするた
めには、溶湯を、10℃/sec以上の冷却速度で冷却して鋳塊とする。冷却速度が遅い
と、粒界上に存在するAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を
小さくすることができず、晶析出物同士の平均間隔を大きくすることができない。この結
果、人工時効硬化処理後のAl合金鍛造材の0.2%耐力が低下する。ここで、溶湯の冷却速度は、液相線温度から固相線温度までの平均冷却速度とする。
均質化熱処理工程は、前記鋳塊に所定の均質化熱処理を施す工程である.そして、昇温
速度5℃/min以下、保持温度450〜550℃で鋳塊に均質化熱処理を施す。
12系分散粒子自体が粗大化し、分散粒子自体の数も不足する。そして、結晶粒内に微細
な分散粒子を比較的多数分散存在させることができず、結晶粒微細化が得られない。この
結果、人工時効硬化処理後のAl合金鍛造材の0.2%耐力が低下する。
Al12系分散粒子の析出数が少なくなり、分散粒子自体の数が不足する。また、Al−
Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物を十分に固溶させることができず、後記す
る調質工程後のAl合金鍛造材の組織の粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si
−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を小さくできず、これら晶析出物同士の平
均間隔を大きくすることが難しくなる。この結果、人工時効硬化処理後のAl合金鍛造材
表面の導電率を42.5IACS%を超え46.0IACS%以下の範囲(以下、本発明
範囲)へ制御できなくなる。
度への昇温速度は5℃/min以下と遅くする。また、保持温度での保持時間は、2hr
以上が好ましい。さらに、均質化熱処理には、空気炉、誘導加熱炉、硝石炉などが適宜用
いられる。ここで、鋳塊の昇温速度は、室温から保持温度到達までの平均昇温速度とする。
鍛造工程は、均質化熱処理された前記鋳塊を鍛造素材として使用し、メカニカル鍛造や
油圧鍛造などにより鋳塊に熱間鍛造を施す工程である。この際、鍛造素材の熱間鍛造の開
始温度は、460〜540℃とする。開始温度が460℃未満では、鍛造組織における亜
結晶粒組織の割合が減少し、鍛造組織の粒界が減少するため、Mg2Siの析出が抑制さ
れる。その結果、人工時効硬化処理後のAl合金鍛造材表面の導電率を本発明範囲へ制御
できなくなり、0.2%耐力が低下する。一方、開始温度が540℃を超える場合では、鍛造時の加工発熱により、組織の一部が溶融する場合があり、導電率を本発明範囲へ制御できなくなり、0.2%耐力および耐食性が低下する。
そして、鍛造素材の熱間鍛造の終了温度を350〜540℃にするためには、熱間鍛造の前に再加熱を実施したり、高温に保持できる金型を使用する等の工夫が必要である。
るために、熱間鍛造はメカニカル鍛造方式で行うことが好ましく、鍛造回数も3回以内で
行うことが好ましい。また、Al合金鍛造材の形状は、最終製品形状に近いニアネットシ
ェイプ形状などがあり、特に制限されるものではない。
調質工程は、Al合金鍛造材の必要な0.2%耐力、靱性および耐食性を得るために、
鍛造工程の後に、溶体化処理と人工時効硬化処理を行う工程である。調質工程は、具体的
には、T6(520〜570℃での溶体化処理後、最大強さを得る人工時効硬化処理)、
T7(前記溶体化処理後、最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えて過剰時効処理)
、T8(前記溶体化処理後、冷間加工を行い、更に最大強さを得る人工時効硬化処理)等
である。
、溶体化が不足して、Mg2Siの固溶が不十分となり、導電率を本発明範囲へ制御でき
なくなり、0.2%耐力が低下する。また、保持温度が高過ぎると、局所的な溶融、結晶粒の粗大化が生じ、0.2%耐力が低下する。なお、溶体化処理における保持時間、昇温速度は、0.2%耐力を保証するために、保持時間20分〜20時間、昇温速度100℃/hr以上とすることが好ましい。ここで、Al合金鍛造材の昇温速度は、溶体化処理の投入時温度から保持温度到達までの平均昇温速度とする。
中への冷却により行い、冷却速度は、靭性、疲労特性の低下を防止するため、40℃/s
ec以上で行うことが好ましい。また、溶体化処理には、空気炉、誘導加熱炉、硝石炉な
どが適宜用いられる。
電率に大きく影響する。このため、それまでの製造履歴を考慮した上で、導電率を本発明
範囲内に収めて必要な0.2%耐力を得るとともに、他に必要な靱性や耐食性を得るため
の条件を選択する必要がある。この点、合金元素量や人工時効硬化処理までの製造履歴(
条件)によっても異なり、個々の製造工程や製造設備での確認が必要ではあるが、人工時
効硬化処理後のAl合金鍛造材表面の導電率を本発明範囲とするために、人工時効硬化処
理は、前記T6、T7、T8の調質処理材となる条件(最大強さ)を考慮しながら、17
0〜200℃×4〜9hrの範囲から選択する。なお、人工時効硬化処理には、空気炉、
誘導加熱炉、オイルバスなどが適宜用いられる。
しい。
(脱ガス工程)
脱ガス工程は、溶解工程で溶解された溶湯から水素ガスを除去(脱ガス処理)し、アル
ミニウム合金100g中の水素ガス濃度を0.25ml以下に制御する工程である。そし
て、水素ガスの除去は、溶湯の成分調整、介在物の除去のための保持炉において行い、溶
湯をフラクシング、塩素精錬、または、インライン精錬することによって行われるが、脱
水素ガス装置にスニフまたはポーラスプラグ(特開2002−146447号公報参照)
を用いて、溶湯にアルゴン等の不活性ガスを吹き込むことによって水素ガスを除去するこ
とが好ましい。
された鍛造材の水素ガス濃度を測定することによって行われる。そして、鋳塊の水素ガス
濃度は、例えば、均質化熱処理前の鋳塊からサンプルを切り出し、アルコールとアセトン
で超音波洗浄を行ったものを、例えば、不活性ガス気流融解熱伝導度法(LIS A06
−1993)により測定することによって求めることができる。また、鍛造材の水素ガス
濃度は、例えば、鍛造材からサンプルを切り出し、NaOH溶液に浸漬後、硝酸で表面の
酸化皮膜を除去し、アルコールとアセトンで超音波洗浄を行ったものを、例えば、真空加
熱抽出容量法(LIS A06−1993)により測定することによって求めることがで
きる。
m径×580mm長さの丸棒)を、ホットトップ鋳造法により、20℃/secの冷却速
度により鋳造した。そして、この鋳塊を、昇温速度5℃/minとして、550℃×4h
rで均質化熱処理した。
より合計の鍛造加工率が75%となるように3回の熱間鍛造を行い、自動車足回り部材形
状のAl合金鍛造材を製造した。この鍛造材は最薄肉部の厚みが6mmであった。
れ)を行い、引き続いて空気炉で190℃で5hrの人工時効硬化処理を行った。
電率、強度の指標となる引張強度、0.2%耐力、伸びなどの引張特性や、靱性の指標となるシャルピー衝撃値(機械的性質)の調査を行った。また、表2の各値は、各々3個の採取試験片の平均値を示す。そして、引張強度、0.2%耐力、伸びの測定は、図1に示す試験片S1をAl合金鍛造材より採取し、JISZ2241の規定に準じて行った。また、シャルピー衝撃値は、図2に示す試験片S2をAl合金鍛造材より採取し、JISZ2242の規定に準じて行った。なお、0.2%耐力が360MPa以上、シャルピー衝撃値が6J/cm2以上であるとき、良好であるとした。
割れ試験を行った。応力腐食割れ試験条件は、前記Cリング試験片S3を用いてASTMG47の交互浸漬法の規定に準じて行った。試験条件は、Cリング試験片S3に、試験片S3のLT方向の耐力の75%の応力を負荷した状態で、塩水への浸漬と引き上げを繰り返して90日間行い、試験片の応力腐食割れ発生の有無を確認した。応力腐食割れが発生している場合を耐応力腐食割れ性が×(不良)、応力腐食割れではないが、応力腐食割れに至る可能性の高い粒界腐食が発生している場合を耐応力腐食割れ性が△(やや不良)、応力腐食割れや粒界腐食(表面的な全面腐食を含む)が発生していない場合を耐応力腐食割れ性が○(良好)として、これらの結果を表2に示す。
1〜10、10A〜10H:実施例)は、0.2%耐力、シャルピー衝撃値および耐応力腐食割れ性が優れていた。一方、本発明の特許請求の範囲を満足しないAl合金鍛造材(No.11〜34:比較例)は、0.2%耐力、シャルピー衝撃値および耐応力腐食割れ性のいずれかが劣っていた。
よび耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.12は、Mg含有量が上限値を超えるため、
導電率が下限値未満となり、耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.13は、Si含有量が下限値未満であるため、0.2%耐力、耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.14は、Si含有量が上限値を超えるため、導電率が下限値未満となり、シャルピー衝撃値および耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.15は、Cu含有量が下限値未満であるため、0.2%耐力が劣っていた。No.16は、Cu含有量が上限値を超えるため、導電率が下限値未満となり、耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.17は、Mg、SiおよびCuの含有量が上限値を超えるため、導電率が下限値未満となり、シャルピー衝撃値および耐応力腐食割れ性が劣っていた。
値未満であるため、0.2%耐力が劣っていた。No.24は、化学成分組成は特許請求
の範囲を満足するが、均質化熱処理時の昇温速度が上限値を超えるため、0.2%耐力が
劣っていた。No.25は、化学成分組成は特許請求の範囲を満足するが、均質化熱処理
時の保持温度が上限値を超えるため、0.2%耐力が劣っていた。No.26は、特許文
献1のAl合金鍛造材であって、化学成分組成は特許請求の範囲を満足するが、鍛造開始
温度が下限値未満であるため、導電率が下限値未満となり、0.2%耐力が劣っていた。No.27は、化学成分組成は特許請求の範囲を満足するが、鍛造開始温度が上限値を超えるため、導電率が上限値を超え、0.2%耐力および耐応力腐食割れ性が劣っていた。No.28は、化学成分組成は特許請求の範囲を満足するが、溶体化処理温度が下限値未満であるため、導電率が上限値を超え、0.2%耐力が劣っていた。No.29は、化学成分組成は特許請求の範囲を満足するが、人工時効硬化処理温度が上限値を超えるため、導電率が上限値を超え、0.2%耐力が劣っていた。
S2 試験片
S3 試験片
Claims (4)
- Mg:0.60〜1.80質量%、Si:0.80〜1.80質量%、Cu:0.20
〜1.00質量%、Fe:0.05〜0.40質量%、Ti:0.001〜0.15質量%、B:1〜500ppmを含み、更に、Mn:0.10〜0.60質量%、Cr:0.10〜0.40質量%およびZr:0.10〜0.20質量%の一種または二種以上を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金から構成されるアルミニウム合金鍛造材であって、
前記アルミニウム合金鍛造材の表面で測定した、20℃での導電率が42.5IACS%を超え46.0IACS%以下であり、前記アルミニウム合金鍛造材の0.2%耐力が360MPa以上、かつ、シャルピー衝撃値が6J/cm2以上であることを特徴とするアルミニウム合金鍛造材。 - 前記アルミニウム合金は、Si/Mgの質量比が1以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金鍛造材。
- 前記アルミニウム合金鍛造材の水素ガス濃度が、0.25ml/100gAl以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金鍛造材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金鍛造材の製造方法であって、
前記アルミニウム合金を溶解して溶湯とする溶解工程と、
前記溶湯を冷却速度10℃/sec以上で鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、
前記鋳塊に昇温速度5℃/min以下、保持温度450〜550℃で均質化熱処理を施
す均質化熱処理工程と、
均質化熱処理された前記鋳塊を鍛造素材とし、前記鍛造素材に開始温度460〜540
℃の熱間鍛造を施す鍛造工程と、
前記鍛造工程の後に、520〜570℃の溶体化処理と、170〜200℃で4〜9hrの人工時効硬化処理を施す調質工程と、を含むことを特徴とするアルミニウム合金鍛造材の製造方法。
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