以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣BLの投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る部分が斜めに切り落とされたような形状となっており、この部分に接客部3が設けられている。
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
入出金口5は、顧客が入金する紙幣BLが投入されると共に、顧客へ出金する紙幣BLが排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣BLは、例えば長方形の紙で構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられるようになされている。
レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
因みに筐体2は、前面を覆う前扉2A及び後面を覆う後扉(図示せず)がそれぞれ開閉可能に構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、前扉2A等を閉塞することにより、内部に保有している紙幣BLや硬貨等を保護する。一方筐体2は、金融機関の職員や作業者等が保守作業や紙幣BLの装填(補充)・回収作業等を行う作業時には、必要に応じて前扉2A等を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るようになされている。
なお現金自動預払機1は、例えば金融機関のATMコーナー等に複数台が横方向に並ぶよう設置され、前後に空間を有する一方、左右には他の現金自動預払機等が隣接することが多い。このため筐体2は、左右の側面を固定的に閉塞したままとし、前後の扉を開閉可能としている。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣BLに関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行うようになされている。
また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部9Aを有しており、この記憶部9Aに種々の情報を記憶させるようになされている。
[1−2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に模式的な側面図を示すように、紙幣入出金機筐体11の内部に紙幣BLの入金処理や出金処理に関する種々の機構が設けられている。紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部12により制御されるようになされている。
紙幣制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行し、また主制御部9などの他の制御部と連携することにより、紙幣BLの入金処理や出金処理等、紙幣BLに関する種々の処理を制御するようになされている。
また紙幣制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部12A(図示せず)を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになされている。
例えば顧客が現金自動預払機1との間で入金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5(図1)のシャッタを開いて入出金部13内へ紙幣BLを投入させる。
入出金部13は、紙幣BLが投入されると、入出金口5のシャッタを閉じてから紙幣BLを1枚ずつ取り出し、搬送部14へ受け渡す。搬送部14は、紙幣入出金機10内で紙幣BLを各部へ搬送し得るようになされており、受け渡された紙幣BLを短辺方向に沿って進行させ、判別部15へ搬送する。
判別部15は、所定の光学センサや磁気センサ等を有しており、前入出口15Aと後入出口15Bとの間で紙幣BLを前後方向へ搬送しながら当該紙幣BLの金種及び真偽、表裏、並びに損傷の程度等を判別し、その判別結果を紙幣制御部12へ通知する。これに応じて紙幣制御部12は、取得した判別結果に基づいて当該紙幣BLの搬送先を決定する。
このとき搬送部14は、判別部15において正常と判別された紙幣BL(いわゆる正券)を一時保留部16へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと判別された紙幣BL(いわゆる損券や偽券等)を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
その後紙幣制御部12は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部16に保留している紙幣BLを判別部15へ搬送させてその金種及び損傷の程度等を判別させ、その判別結果を取得する。
ここで紙幣制御部12は、紙幣BLの損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣BL(以下これを正常紙幣BLCとも呼ぶ)とし、また紙幣BLの損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでない紙幣BL(以下これをリジェクト紙幣BLRとも呼ぶ)とする。そして紙幣制御部12は、紙幣BLにおける損傷の程度にかかわらず、当該紙幣BLを搬送部14により判別部15の前入出口15Aから振分搬送部17へ搬送させる。以下、このときの搬送経路を第1判別経路R1と呼ぶ。
振分搬送部17は、4個の収納庫18A〜18D(以下まとめて収納庫18と呼ぶ)の真上に位置しており、紙幣BLを前後方向へ搬送する搬送路と、各収納庫18にそれぞれ対応する箇所に配置され紙幣BLの搬送方向を前後方向又は上下方向に切り換える複数の切替器とを有している。
実際上振分搬送部17は、紙幣制御部12の制御に基づき、正常紙幣BLCを後方向へ搬送し、その金種に対応する切替器を介して下方向へ進行させ、当該正常紙幣BLCを収納庫18に収納させる。これにより各収納庫18には、金種ごとに振り分けられた状態で正常紙幣BLCが収納される。因みに収納庫18は、その内部に紙幣BLを上下方向に重ねて集積する。
また振分搬送部17は、紙幣制御部12の制御に基づき、リジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20A又は20B(以下まとめてリジェクト庫20と呼ぶ)に収納させるべく、最後部まで搬送して後方の後搬送部19へ受け渡す。
後搬送部19は、紙幣BLを上下方向へ搬送する搬送路と、各リジェクト庫20にそれぞれ対応する箇所に配置され紙幣BLの搬送方向を上下方向又は前後方向に切り換える複数の切替器とを有している。
リジェクト庫20A及び20Bは、収納庫18の後方且つ後搬送部19の前方に、上下に積み重なるように配置されている。このリジェクト庫20A及び20Bは、互いにほぼ同等に構成されており、その高さが収納庫18の約半分となっている。
実際上後搬送部19は、振分搬送部17から受け渡されたリジェクト紙幣BLRを下方向へ搬送し、切替器を介して前方向へ進行させることにより、当該リジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20に収納させる。
また、例えば顧客が現金自動預払機1との間で出金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣BLを収納庫18から繰り出させる。
続いて紙幣制御部12は、この紙幣BLを振分搬送部17により前方向へ進行させた後、搬送部14により判別部15へ搬送して判別させる。
このとき紙幣制御部12は、この紙幣BLが正常紙幣BLCであれば、当該紙幣BLを搬送部15の後入出口15Bから排出させ、搬送部14により反転機構部23へ搬送して適宜反転させることにより表裏を揃えてから入出金部13へ搬送する。そして紙幣制御部12は、入出金口5(図1)のシャッタを開いてこの紙幣BLを顧客に取り出させる。
一方紙幣制御部12は、判別部15においてリジェクト紙幣BLRと判別された場合、当該紙幣BLを搬送部15の後入出口15Bから排出させ、搬送部14により搬送して後搬送部19に受け渡し、リジェクト庫20へ搬送させて収納させる。以下、このときの搬送部15の後入出口15Bから後搬送部19までの搬送経路を第2判別経路R2と呼ぶ。
また紙幣制御部12は、入出金口5のシャッタを開いてから所定時間の経過後にシャッタを閉じ、このとき入出金部13に紙幣BLが残っていた場合、顧客が当該紙幣BLを取り忘れたものと見なす。
このとき紙幣制御部12は、この紙幣BLを入出金部13から順次取り込み、搬送部14により搬送して後搬送部19へ受け渡し、取込部24へ搬送させて、他の紙幣BLと区別できるように保管する。
装填庫25は、紙幣入出金機筐体11の後側に設けられており、内部に多数の紙幣BLを収納できるよう構成されると共に、その真上に設置された分離部26と連結されている。
紙幣制御部12は、装填庫25内に紙幣BLが収納された状態で所定の装填指示を受け付けると、装填庫25から収納庫18への紙幣BLの装填処理を行う。
このとき紙幣制御部12は、分離部26により装填庫25から紙幣BLを1枚ずつ分離して搬送部14に受け渡し、第2判別経路R2の一部を経て判別部15へ搬送して当該紙幣BLを判別させる。
そして紙幣制御部12は、入金取引の場合と同様、正常紙幣BLを第1判別経路R1経由で振分搬送部17へ受け渡し、当該紙幣BLを指示された収納庫18へ振り分けて順次収納させる一方、リジェクト紙幣BLRを振分搬送部17から後搬送部19へ搬送してリジェクト庫20に収納させる。
また紙幣制御部12は、収納庫18に紙幣BLが収納された状態で所定の回収指示を受け付けると、収納庫18から装填庫25内への紙幣BLの回収処理を行う。
このとき紙幣制御部12は、当該収納庫18から紙幣BLを順次繰り出させ、振分搬送部17から搬送部14に受け渡し、第1判別経路R1を介して判別部15へ搬送して当該紙幣BLを判別させる。
そして紙幣制御部12は、正常紙幣BLCを搬送部14により分離部26へ搬送させて当該分離部26により装填庫25内に順次集積させる一方、リジェクト紙幣BLRを第2判別搬送路R2経由で後搬送部19へ搬送してリジェクト庫20に収納させる。
さらに紙幣制御部12は、装填庫25に収納されている紙幣BLの金種や枚数を確定する確定処理を行う場合、当該紙幣BLを1枚ずつ判別部15へ搬送して判別させる。
このとき紙幣制御部12は、装填処理の場合と同様、分離部26により装填庫25から紙幣BLを1枚ずつ分離して搬送部14に受け渡し、第2判別経路R2の一部を経て判別部15へ搬送して当該紙幣BLを判別させる。
そして紙幣制御部12は、正常紙幣BLC及びリジェクト紙幣BLRのいずれであっても第1判別経路R1及び振分搬送部17経由で後搬送部19へ受け渡す。続いて紙幣制御部12は、正常紙幣BLCを装填庫25の下部に設けられた確定集積部25A内に収納させる一方、リジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20へ収納させて、このとき得られた集計結果を記憶部12Aに記憶させる。
因みに紙幣入出金機10では、収納庫18等に収納している紙幣BLを1枚ずつ判別部15へ搬送して判別することにより、内部に保有する全紙幣BLの金種及び枚数を精査する確定処理を適宜行うようになされている。
そして紙幣入出金機10は、リジェクト紙幣BLRのうち、既に確定処理がなされたリジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20Aに収納させ、入金取引等において外部から取り込まれたため未だ確定処理がなされていないリジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20Bに収納させることにより、両者を明確に区別して保管するようになされている。
また装填庫25は、紙幣入出金機筐体11に対し着脱可能に構成されている。これにより紙幣入出金機10では、例えば大量の紙幣BLを装填庫25に補充する場合に、当該装填庫25を紙幣入出金機筐体11から取り外させ、紙幣BLを保管している箇所へ持ち運ばせた上で補充させ、その後再び装着させることにより、紙幣BLの運搬に要する手間を軽減して作業効率を高めるようになされている。
因みに実際上現金自動預払機1(図1)では、筐体2(図1)の背面に設けられた後扉(図示せず)が開放され、図3に示すように紙幣入出金機筐体11から装填庫25が取り外された状態においても、運用を中断することなく、上述した入金取引や出金取引等の各種取引処理を正常に実行できるようになされている。
ところで紙幣入出金機10では、振分搬送部17、収納庫18、後搬送部19及びリジェクト庫20が引出部としての下部ユニット28に取り付けられている。この下部ユニット28は、紙幣入出金機筐体11に対し前後方向へスライド可能に取り付けられている。
すなわち下部ユニット28は、図4(A)に示すように、現金自動預払機1の運用動作時には紙幣入出金機筐体11の内部に収納される一方、現金自動預払機1の保守作業等が行われる際には、筐体2(図1)の前扉2Aが開放された上で、図4(B)に示すように、前方へ引き出される。
さらにリジェクト庫20は、図5に示すように、下部ユニット28に対し、左方向へ引き抜かれることにより取り外され、また右方向へ挿入されることにより装着されるようになされている。
すなわちリジェクト庫20は、下部ユニット28に装着された状態では収納している紙幣BLの取出を阻止し、下部ユニット28から取り外されたときに、収納している紙幣BLの外部への取出を可能とする。
このように紙幣入出金機10は、入金取引や出金取引を行う際、或いは収納庫18に紙幣BLを補充する際等に、紙幣BLを判別部15により判別させ、リジェクト紙幣BLRであれば、収納庫18と後搬送部19との間に配置されたリジェクト庫20へ搬送して収納させるようになされている。
[1−3.リジェクト庫の構成]
次に、リジェクト庫20の構成について説明する。リジェクト庫20は、図6に示すように、集積ローラ30と、プレッシャローラ31と、上部ガイド32と、ビルストッパ33と、羽根車34と、側面ガイド35と、収納フレーム36と、ステージ37と、紙幣BL監視センサ38(38A、38B)とで構成されている。
集積ローラ30は、リジェクト庫20の前面上部に位置する取込口29近傍に設けられ、プレッシャローラ31は、その軸心が、集積ローラ30の軸心の真上から後方に所定角度ずれた箇所に位置するように対向して設けられている。
具体的にプレッシャローラ31は、図7に示すように、その軸心が、集積ローラ30の軸心の真上から後方に約30度ずれた箇所に位置するように対向して設けられている。
このような位置関係とすることで、集積ローラ30とプレッシャローラ31の間の放出口から放出される紙幣BLの放出方向は、水平ではなく、斜め下方向(例えば斜め下30度の方向)となる。
またこのような紙幣BLの放出方向と平行になるようリジェクト庫20の上面も傾斜しており、案内部としての上部ガイド32は、この傾斜している上面の内側に沿って設けられている。ゆえに、この上部ガイド32も、紙幣BLの放出方向と平行になるよう傾斜している。
衝突部としてのビルストッパ33は、略板状であり、リジェクト庫20後面上部の内側、上部ガイド32の後端部近傍に設けられている。このビルストッパ33は、放出口から斜め下方向に放出される紙幣BLの先端部が確実に衝突するよう、放出口から見て斜め下に配置されるようになっている。
羽根車34は、集積ローラ30と同軸に枢支されている。側面ガイド35は、リジェクト庫20内の前面側、羽根車34の軸の下方に垂直に設けられ、収納フレーム36は、リジェクト庫20全体を囲うように設けられている。そしてこれら側面ガイド35及び収納フレーム36により紙幣BLを収納する収納空間が形成され、ステージ37は、この収納空間を上下方向に移動可能に設けられている。
紙幣BL監視センサ38は、リジェクト庫20内の紙幣BL状況を監視する例えば透過型の光電センサであり、発光素子38Aと受光素子38Bとで構成されている。
発光素子38A及び受光素子38Bは、図8に示すように、集積ローラ30及びプレッシャローラ31の間の放出口近傍の監視点P1と、側面ガイド35上で且つ羽根車34の回転範囲内の監視点P2とを通る直線上であって、さらに監視点P1及びP2より外側の位置にそれぞれ設けられている。
尚、放出口近傍の監視点P1は、集積ローラ30とプレッシャローラ31の間の放出口付近での紙幣BLの放出状況を監視するために設定されている箇所である。また側面ガイド35上の監視点P2は、集積部としてのステージ37上に集積されている紙幣BLの集積状況を監視するために設定されている箇所である。
すなわち紙幣BL監視センサ38は、放出口近傍の監視点P1と、側面ガイド35上の監視点P2を通る直線上に紙幣BLが滞留しているか否かを監視している。これにより紙幣BL監視センサ38は、放出口付近での放出状況として紙幣BL詰まりが発生しているか否か、或いはステージ37上に集積されている紙幣BLの集積状況として紙幣BLの集積量が集積可能な最大集積量に達しているか否かを検知することができる。
リジェクト庫20は、このような構成でなり、そのうえで集積ローラ30の軸心とプレッシャローラ31の軸心を結ぶ線分からビルストッパ33までの距離Lx(図6)が紙幣BLの短辺より長くなるよう、各部のサイズが選定されている。
かかる構成により、リジェクト庫20では、図9に示すように、集積ローラ30とプレッシャローラ31とにより、取込口28から取り込まれた紙幣BLにフィード力が与えられ、この紙幣BLがリジェクト庫20の収納空間に斜め下方向に放出される。
斜め下方向に放出された紙幣BLは、図10に示すように、上部ガイド32にガイドされ、その前端部がビルストッパ33に衝突することで停止する。その後、紙幣BLは、図11に示すように、その後端部が羽根車34によって下方向に叩きつけられることによりステージ37上に落とされる。このときステージ37は、紙幣BLの重量に応じて下がる。
さらにステージ37上に落とされた紙幣BLは、図12に示すように、その後端部が羽根車34によって側面ガイド35に当接するまで引き寄せられる。
リジェクト庫20では、このような動作を繰り返し行うことで、ステージ37上に、後端部を揃えた状態で紙幣BLを上下方向に集積していく。
またリジェクト庫20では、図13に示すように、例えば、集積ローラ30とプレッシャローラ31の間の放出口付近で紙幣BL詰まりが発生することにより、発光素子38Aから受光素子38Bへの光が例えば所定時間遮られると、紙幣制御部12においてリジェクト庫20内の紙幣BL状況が異常であると判断され、リジェクト庫20への紙幣BLの取り込みが停止される。
さらにリジェクト庫20では、図14に示すように、例えば、ステージ37上に集積されている紙幣BLの集積量が、集積可能な最大集積量に達していることにより、発光素子38Aから受光素子38Bへの光が例えば所定時間遮られると、紙幣制御部12においてリジェクト庫20内の紙幣BL状況が異常であると判断され、リジェクト庫20への紙幣BLの取り込みが停止される。
このようにしてリジェクト庫20は、紙幣BLを集積すると共に、紙幣BL状況を監視するようになっている。
ここまで説明したように、リジェクト庫20は、紙幣BLの放出方向が斜め下方向となるようにプレッシャローラ31が集積ローラ30の後方(すなわち収納空間側)に位置しており、これに合わせて、上部ガイド32が傾斜していて、この上部ガイド32の先にビルストッパ33が配置されている。
これによりリジェクト庫20(図15(B))は、例えば、集積ローラ30の軸心とプレッシャローラ31の軸心を結ぶ線分からビルストッパ33までの距離Lxを従来の水平放出型のリジェクト庫320(図15(A))の距離Lと同じ長さとしながらも、放出方向を斜め下方向にした分、奥行き方向の長さを短くすることができ、薄型化を実現している。
因みにリジェクト庫20は、奥行き方向の長さを短くした分、側面ガイド35の位置を、羽根車34の軸の下方となるよう、従来よりもリジェクト庫20の後面に近づけたことで、収納空間の奥行き方向のサイズを十分に確保するようになっている。
[1−4.収納庫の構成]
次に、収納庫18の構成について、図16、図17及び図18を用いて説明する。因みに図16、図17及び図18は、それぞれ収納庫18の背面図、左側面図及び平面図であるが、それぞれ一部の部品を透過的に表している。
収納庫18は、略直方体状の収納庫筐体50にフィードローラ51、リバースローラ52、ピッカローラ53、ステージ54、羽根車55、放出された紙幣BLを受け止めるビルストッパ56、リバースガイド57、フロントガイド58、ピッカアーム59、駆動ベルト60、ピッカシャフト61、走行センサ62、上面センサ63及び搬送路65等の部品を配置して構成されている。
フィードローラ51及びリバースローラ52は、それぞれ周面同士を僅かにオーバラップさせて配置してあり、紙幣BLを分離するときには紙幣取込口として機能し、紙幣BLを集積する時には紙幣放出口として機能する。
因みに以下では、フィードローラ51及びリバースローラ52によって構成される紙幣BLの取込放出口を「ゲート」と呼ぶ。
フィードローラ51は、図示しない動力伝達系によって時計回り及び反時計回りの両方向に回転可能となっている。リバースローラ52は、紙幣BLを分離するときに2枚以上の紙幣BLを同時に繰り出さないように、図示しない動力伝達系によって反時計回りにのみ回転可能となっている。
ピッカローラ53は、ゲートから見て紙幣集積空間側にステージ54と対向するように配置してあり、フィードローラ51を中心に上下動するようにピッカアーム59及びピッカシャフト61により保持され、周面の一部には高摩擦部材が取り付けられている。またピッカローラ53は、フィードローラ51から駆動ベルト60により駆動を伝達されており、フィードローラ51と同期して回転する構造となっている。
ステージ54は、全体として矩形の板状に形成されており、その上面に紙幣BLを積層して集積するようになされている。またステージ54は、図示しない動力伝達系によって上下方向に移動可能となっており、分離時にはピッカローラ53との間に紙幣BLを挟みこんで適切なフィード力を発生させ、集積時には上面センサ63により常に監視され、位置を変化させて一定の紙幣集積空間を確保する。
羽根車55は、弾力性のある高摩擦部材でなると共に放射状に突起部を有しており、リバースローラ52の脇に複数列配置されている。この羽根車55は、集積時には図示しない動力伝達系によってリバースローラ52の回転軸とほぼ同軸の位置で反時計回りに回転し、分離時には図示しない退避機構によってゲート部及び集積エリアにおける突起部がオーバラップしない位置まで退避する。
ビルストッパ56は、フロントガイド58上でゲートと対向する位置に複数列設けられており、集積時に放出された紙幣BLの先端を衝突させるように配置されている。またビルストッパ56には、図示しないスプリングが接続されており、集積時に放出された紙幣BLの先端がビルストッパ56に衝突した時、当該紙幣BLが持つ運動エネルギーを吸収するようになされている。
さらにビルストッパ56は、図19に示すように紙幣BLが衝突する面にV字状の溝が形成されており、衝突した紙幣BLの端面が上下方向にすべることを防止している。
リバースガイド57は、リバースローラ52を上方から覆うように配置されており、図示しない穴から当該リバースローラ52の一部を上方へ露出させている。
フロントガイド58は、分離集積部の外形を形作る収納庫筐体50における後内側面の左右にそれぞれ取り付けられている。またフロントガイド58は、その前面と、収納庫筐体50における左右の内側面と、リバースガイド57の内側面とにより、左右方向が紙幣BLの長手方向の長さよりも若干大きい紙幣集積空間を形成している。
搬送路65から運ばれてきた紙幣BLは、走行センサ62を横切り、ゲートから紙幣集積空間に放出される。走行センサ62は、紙幣BLが横切ることにより、当該紙幣BLが搬送されたことを認識する。
さらに収納庫筐体50の後内側面には、フロントガイド58の左右の外方に、それぞれ複数本(例えば、4本)ずつ、集積する紙幣BLの長手方向に沿って所定の間隔を保持するよう、リブ68が並べて取り付けられている。
因みにリブ68は、収納庫筐体50に一体成型されても良く、或いは別体の部品として収納庫筐体50に取り付けられたものであっても良い。
このリブ68は、上下方向に沿って長尺状に形成されており、ゲートから放出される紙幣BLに直交するように取り付けられている。
またリブ68の内側面とフロントガイド58の内側面との間には、所定の距離Mが隔てられている。すなわちリブ68は、図20の矢印Bが示す紙幣BLの放出方向における最大奥行きが、紙幣BLの放出方向におけるフロントガイド58の奥行きよりも距離Mだけ狭くなるように形成されている。
このため収納庫18は、ゲートからスキューせずに放出された紙幣BLについては、フロントガイド58に当接させてリブ68には当接させないものの、ゲートからスキューして放出された紙幣BLについては、その先端部をリブ68に当接させる。
各リブ68には、左右方向から見て断面がV字状でなる溝68Aが形成されている。また溝68Aは、リブ68の長手方向に沿って、所定間隔ごとに複数形成されている。
このためリブ68は、スキューしている紙幣BLの先端部を溝68Aに誘い込み、さらに溝68Aに先端部が入り込んだ状態で上側又は下側へ滑らせないようになされている。
これにより溝68Aは、集積された紙幣BLの先端部が上方向又は下方向へ向くこと、すなわち紙幣BLが紙幣収納空間の内側面と集積された他の紙幣BLとの隙間等に入り込むことを防止するようになされている。
ところで各リブ68の溝68Aは、図20に示すように、フロントガイド58側(集積される紙幣BLにおける長手方向の中央部側)に小さいR形状の内側湾曲部68B、その反対側(集積される紙幣BLの長手方向の端部側)に大きいR形状の外側湾曲部68Cが形成されている。すなわち、外側湾曲部68Cの曲率は、内側湾曲部68Bの曲率よりも小さく形成されている。これによりリブ68は、スキューした紙幣BLが当接した場合の力を分散させることができる。
また内側湾曲部68Bと外側湾曲部68Cとの間のフィードローラ側の面には、平坦部68Dが形成されている。これにより溝68Aは、スキューしていない紙幣BLがリブ68に当接した場合の力を分散させることができる。
さらにリブ68は、集積される紙幣BLの最大スキュー角θを考慮し、リブ68の溝68Aの高さHと、隣り合うリブ68の間隔Lとの間に、間隔L≦(tanθ×高さH)+(高さH/tanθ)の関係を満たすように配置されている。
これによりリブ68は、最大スキュー角θをなす紙幣BLについて、リブ68に当接する前に収納庫筐体50に当接することを防止している。
ここでリブ68における溝68Aの高さHは、溝68Aの収納庫筐体50からの高さ(奥行き)であり、収納庫筐体50からフィードローラ方向の溝68Aの端部までの距離である。またリブ68の間隔Lは、平坦部68Dと外側湾曲部68Cとの境界と、隣り合うリブ68の内側湾曲部68B側の壁面との距離である。
さらに紙幣BLのスキュー角は、図20の矢印Bが示す紙幣BLの搬送方向に直交する線71と、紙幣BLにおける長手方向の左右の両先端を結ぶ線72とが成す角度である。なお、収納庫筐体50は紙幣BLの搬送方向に直交する線と平行して形成されている。
かかる構成によりリブ68は、当接した紙幣BLの先端部を、V字状の溝68Aにより上下動を規制すると共に、外側湾曲部68Cに当接させながらフロントガイド58から離れる方向へ移動させ、外側湾曲部68Cおよび隣り合うリブ68の内側湾曲部68Bに当接させる。このとき紙幣BLの先端部の角は、収納庫筐体50に当接することはない。
従って収納庫18は、スキューしてゲートから放出された紙幣BLの端部の捲れを防止することができる。
なおリブ68は、隣り合う溝68A間の突出部にも、上述した内側湾曲部68B、外側湾曲部68Cおよび平坦部68Dと同様に内側湾曲部、外側湾曲部および平坦部が形成されている。
これによりリブ68は、突出部に当接した紙幣BLの先端部を突出部の外側湾曲部に当接させながらフロントガイド58から離れる方向へ移動させ、その紙幣BLの先端部を外側湾曲部および隣り合うリブ68の内側湾曲部に当接させることができる。
さらにリブ68は、図16に示したように、その下端が集積時のステージ54の上面、またはステージ54に集積された紙幣BLの上面よりも下側にオーバラップし、且つその上端が紙幣集積空間の上限を規定する上面ガイド(図示せず)とオーバラップするように配置されている。すなわちリブ68は、スキューして送り込まれた紙幣BLの先端が、収納庫筐体50に当接する前に接触するよう、その取付高さが定められている。
また溝68Aが形成されたリブ68は、図19に示すように、ステージ54上に集積した紙幣BL側のフロントガイド58の端部とリブ68の頂部との間に所定の距離Mを保持するよう、上下方向の長さが規定されている。
かかる構成により、ゲートから放出された紙幣BLは、スキューしている場合、リブ68に当接することにより収納庫筐体50には当接せず、その後ステージ54上に集積される。
さらに紙幣BLは、羽根車55が回転することにより、ステージ54又は集積された他の紙幣BLの上で長手方向における左右両側が均等にゲート側に引き寄せられ、リバースガイド57に当接することにより、そのスキューが補正される。
すなわち収納庫18は、溝68Aを有するリブ68を設けたことにより、紙幣BLがスキューしている場合にはこの溝68Aにその先端を入り込ませ、上下方向への滑りを抑制することにより紙幣BLの捲れを防止できるので、最終的にステージ54上に適切に集積させることができる。
因みにリブ68は、溝68Aに代えて、当接した紙幣BLの端部を係止する突起形状の係止部材を複数配設して構成することも可能である。すなわちリブ68は、集積される紙幣BLにおける先端部の上下方向へのずれや滑りを防止する構成であれば良い。
ところで従来の収納庫318(図24)では、ビルストッパ56における紙幣BLとの当接面から収納庫筐体50の後内側面までの距離を比較的長くすることにより、スキューしている紙幣BLの捲れを防止していたが、これにより収納庫筐体50の前後長が比較的長くなっていた。
これに対し収納庫18では、溝68Aを有するリブ68を設けたことにより、スキューしている紙幣BLの捲れを防止できるため、ビルストッパ56における紙幣BLとの当接面から収納庫筐体50の後内側面までの距離を短縮でき、これに伴って収納庫筐体50における前後方向の長さも短縮されている。
この結果、収納庫18が取り付けられた下部ユニット28及び当該下部ユニット28を収納する紙幣入出金機筐体11においても、その前後長が、従来の収納庫318を用いた場合よりも短縮されている。
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置した(図2)。
すなわちリジェクト庫20は、通常の運用時のように下部ユニット28が紙幣入出金機筐体11の内部に収納された状態では、前方に4個の収納庫18が並び、後方に後搬送部19及び装填庫25が並ぶようにした。
このため紙幣入出金機10は、筐体2の後扉が開放されたとしても、一時保留部16、分離部26、装填庫25及び取込部24を後面に露出させるものの、リジェクト庫20を内部に隠匿した状態を維持することができる。
また紙幣入出金機10は、紙幣入出金機筐体11から装填庫25が一時的に取り外されたとしても、後搬送部19によりリジェクト庫20の後側を遮蔽することができる。
これにより紙幣入出金機10は、筐体2の後扉の開放や装填庫25の取り外しがなされたとしても、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されているリジェクト紙幣BLRを確実に保護することができる。
ところで従来の紙幣入出金機310(図24)では、分離部26、装填庫25及び取込部24に加えて2個のリジェクト庫320も最後部に配置していた。一方、現金自動預払機301の高さやこれに収納する紙幣入出金機310の高さは、事実上標準化されており、また人間工学的な観点による入出金部13の高さの制約からも、むやみに拡大することができない。
紙幣入出金機310では、最後部に配置された各部分のうち、最も使用頻度が高く大容量化の必要性が高い部分が装填庫25となっている。このため紙幣入出金機310では、装填庫25の高さを大きく設定して収納容量を最大限に高めており、その結果として、リジェクト庫320の高さが抑えられ収納容量が抑えられていた。
これに対し本発明の紙幣入出金機10(図2)では、紙幣入出金機10の内部において収納庫18と同等の高さに2個のリジェクト庫20を縦に並べるよう、すなわちリジェクト庫20を当該収納庫18の約半分の高さとなるよう構成した。
これにより、リジェクト庫20の収納容量を従来よりも格段に増加させることができ、当該リジェクト庫20内が紙幣BL(リジェクト紙幣BLR)で満たされるまでの期間を延長できるので、当該リジェクト庫20から紙幣BLを取り出す頻度を低減できる。
すなわち紙幣入出金機10では、リジェクト庫20を最後部ではなく内部に配置したため、そのセキュリティ性を高めた反面、1回の紙幣BLの取出作業が煩雑化するものの、同時にその頻度を大幅に低減することにより、全体的に取出作業に要する手間を低減させることができる。
また紙幣入出金機10は、リジェクト庫20A及び20Bを上下方向に並べて配置しており、且つ判別部15がその上方に位置するために、特に下側のリジェクト庫20Bに対し、紙幣BL(リジェクト紙幣BLR)を上方から下方向へ向けて搬送する必要がある。
この点において紙幣入出金機10は、取込部24へ紙幣BLを搬送する後搬送部19の直前にリジェクト庫20を配置したことにより、リジェクト庫20及び取込部24の双方で当該後搬送部19を共用でき、従来の紙幣入出金機310(図24)と比較しても、実質的に構成を複雑化せずに済む。
また紙幣入出金機10では、収納庫18に紙幣BLを振り分ける振分搬送部17とリジェクト庫20に紙幣BLを搬送する後搬送部19との間で紙幣BLを受け渡すようにした。これと共に紙幣入出金機10では、振分搬送部17と判別部15との間を第1判別経路R1により接続した。
このため紙幣入出金機10では、入金取引等において、判別部15における紙幣BLの判別結果にかかわらず、当該紙幣BLを判別部15の前入出口15Aから第1判別経路R1経由で振分搬送部17へ搬送すれば良く、紙幣BLの搬送経路、すなわち搬送部14の構成を複雑化せずに済む。
これを換言すれば、紙幣入出金機10は、従来の紙幣入出金機310と比較して、リジェクト庫20を最後部から中央寄りの箇所へ移動させたにも関わらず、第1判別経路R1及び振分搬送部17をそのまま利用することができる。
さらに紙幣入出金機10では、判別部15の後入出口15Bと後搬送部19との間を第2判別経路R2により結び、紙幣BLを判別部15から振分搬送部17を経由しなくともリジェクト庫20へ搬送できるようにした。
これにより紙幣入出金機10では、出金取引等において紙幣BLを収納庫18から繰り出させ、振分搬送路17を前方向に進行させ第1判別経路R1を介して判別部15の前入出口15Aまで搬送させた後、リジェクト紙幣BLRを当該判別部15の後入出口15Bから第2判別経路R2及び後搬送部19経由でリジェクト庫20へ搬送させることができる。
これを他の観点から見ると、紙幣入出金機10では、何れかの搬送元から判別部15を通過して何れかの搬送先へ紙幣BLを搬送する搬送経路を、当該判別部15内における紙幣BLの搬送方向から、大きく2通りに類型化することができる。
すなわち第1の類型は、一時保留部16又は装填庫25から判別部15を介して収納庫18へ収納させる場合であり、主に収納庫18に紙幣BLを収納する場合である。
この第1の類型において、搬送される紙幣BLは、搬送元から判別部15の後入出口15Bまでは、第2判別経路R2の一部を通り、判別部15の前入出口15Aから収納庫18又はリジェクト庫20までは、第1判別経路R1及び振分搬送部17を通るため、搬送経路の重複や交差が生じない。
また第2の類型は、収納庫18から判別部15を介して入出金部13又は装填庫25へ搬送する場合であり、主に収納庫18から紙幣BLを繰り出す場合である。
この第2の類型において、搬送される紙幣BLは、搬送元から判別部15の前入出口15Aまでは、第1判別経路R1及び振分搬送部17を通り、判別部15の後入出口15Bから入出金部13、装填庫25又はリジェクト庫20までは、第2判別経路R2の一部又は全部を通るため、やはり搬送経路の重複や交差が生じない。
すなわち紙幣入出金機10では、搬送元から判別部15を介して搬送先又はリジェクト庫20へ紙幣BLを搬送するときの、搬送元から判別部15までの搬送経路と、判別部15から搬送先又はリジェクト庫20までの搬送経路とを重複又は交差させることなく完全に切り分けた。
これにより紙幣入出金機10では、正常紙幣BLC及びリジェクト紙幣BLRのいずれについても無理なく円滑に搬送することができ、搬送に伴う紙幣BLの詰まりや損傷の発生頻度を大幅に低減させることができる。
また紙幣入出金機10は、従来の紙幣入出金機310(図24)において最後部に従来のリジェクト庫320を配置していたのに対し、収納庫18と後搬送部19との間にリジェクト庫20を配置するため、そのぶん前後方向の長さが延長されることになる。
しかしながら紙幣入出金機10は、リジェクト庫20の上部ガイド32を傾斜させて前後長を従来よりも短縮させ(図15)、収納庫18にリブ68を設けて前後長を従来よりも短縮したため(図17)、装置全体における前後方向の延長幅を最小限に抑えることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置したことにより、筐体2の後扉が開放されたとしても、一時保留部16、分離部26、装填庫25及び取込部24よりも内部にリジェクト庫20を隠匿でき、装填庫25が取り外された場合にも後搬送部19によりリジェクト庫20の後側を遮蔽できる。これにより紙幣入出金機10は、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されている紙幣BLを確実に保護することができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
[2−1.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機110は、図4(A)と対応する図21(A)に示すように、紙幣入出金機10と比較して、紙幣入出金機筐体11と対応する紙幣入出金機筐体111の最後部において、取込部24、装填庫25及び分離部26が後部ユニット129に取り付けられている点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
紙幣入出金機110では、下部ユニット28及び後部ユニット129のそれぞれが、図示しないスライド機構を介して紙幣入出金機筐体111に取り付けられている。
かかる構成により紙幣入出金機110は、図4(B)に示したように、第1の実施の形態と同様に下部ユニット28を紙幣入出金機筐体111の前方へ引き出すことができ、さらに図21(B)に示すように、下部ユニット28及び後部ユニット129を一体として紙幣入出金機筐体111の後方へ引き出すこともできる。
ここでリジェクト庫20は、下部ユニット28が紙幣入出金機筐体111の前方又は後方のいずれへ引き出されたときにも、図5に示したように、当該下部ユニット28の左方向へ引き抜かれることにより取り外され、又は右方向へ挿入されることにより装着されるようになされている。
このように紙幣入出金機110は、下部ユニット28を前方へ引き出し、又は当該下部ユニット28を後部ユニット129と共に後方へ引き出すことにより、当該下部ユニット28からリジェクト庫20を取り外し得るようになされている。
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置した。
このため紙幣入出金機110は、第1の実施の形態と同様、筐体2の後扉の開放や装填庫25の取り外しがなされたとしても、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されているリジェクト紙幣BLRを確実に保護することができる。
また紙幣入出金機110は、筐体2の前後の扉が開放されたときに、リジェクト庫20を有する下部ユニット28を、前方へ引き出し、又は後部ユニット129と共に後方へ引き出し得るようにした。
これにより紙幣入出金機110は、リジェクト庫20内に収納されている紙幣BLを取り出す際、下部ユニット28を前方及び後方のいずれに引き出しても良く、その作業性を高めることができる。
また紙幣入出金機110は、例えば前方に十分な作業空間を確保できないような箇所であっても、下部ユニット28を後方へ引き出せば良いため、現金自動預払機101の設置場所に関する制約を大幅に緩和することができる。
他の観点から見れば、紙幣入出金機110は、設置場所の条件に応じて下部ユニット28を前方へ引き出す方式と後方へ引き出す方式の2方式に作り分ける必要がないため、装置の共通化・単一化により設計や製造に係る費用の低廉化を図ることができる。
さらに紙幣入出金機110は、その他の点についても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110は、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置したことにより、筐体2の後扉が開放されたとしても、一時保留部16、分離部26、装填庫25及び取込部24よりも内部にリジェクト庫20を隠匿でき、装填庫25が取り外された場合にも後搬送部19によりリジェクト庫20の後側を遮蔽できる。これにより紙幣入出金機110は、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されている紙幣BLを確実に保護することができる。さらに紙幣入出金機110は、下部ユニット28が前後いずれに引き出されたときにもリジェクト庫20から紙幣BLを取り出させることができ、作業性を格段に高めることができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機210を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
[3−1.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機210は、図2と対応する図22に示すように、紙幣入出金機10と比較して、紙幣入出金機筐体11、搬送部14、装填庫25、分離部26及び下部ユニット28に代わる紙幣入出金機筐体211、搬送部214、装填庫225、分離部226及び下部ユニット228を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
装填庫225は、装填庫25(図2)よりも高さが抑えられており、その上端が振分搬送部17の上端とほぼ同等に揃えられている。また装填庫225の内部には、分離部26と同等の機能を有する分離部226が組み込まれている。
因みに装填庫225及び分離部226は、収納庫18(18A〜18D)と共通の部品によって構成されている。
下部ユニット228は、下部ユニット28よりも後方へ延長されることにより、その前後町が紙幣入出金機筐体111とほぼ同等となっており、振分搬送部17、収納庫18、後搬送部19及びリジェクト庫20に加えて、装填庫225及び取込部24も取り付けられている。
また下部ユニット228は、図示しないスライド機構を介して紙幣入出金機筐体211に取り付けられており、図23(A)及び(B)に示すように、当該紙幣入出金機筐体211の前方及び後方のいずれへも引き出し得るようになされている。
ここでリジェクト庫20は、下部ユニット228が紙幣入出金機筐体111の前方又は後方のいずれへ引き出されたときにも、第1の実施の形態(図5)と同様、当該下部ユニット228の左方向へ引き抜かれることにより取り外され、又は右方向へ挿入されることにより装着されるようになされている。
因みに搬送部214は、全体的に搬送部14と同様に構成されているものの、分離部26に代わる分離部226が装填庫225内に組み込まれ、その位置が低められたことに対応して、その搬送経路が一部相違している。
このように紙幣入出金機210は、下部ユニット228を前方又は後方へ引き出すことにより、当該下部ユニット228からリジェクト庫20を取り外し得るようになされている。
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置した。
このため紙幣入出金機210は、第1の実施の形態と同様、筐体2の後扉の開放や装填庫25の取り外しがなされたとしても、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されているリジェクト紙幣BLRを確実に保護することができる。
また紙幣入出金機210は、筐体2の前後の扉が開放されたときに、リジェクト庫20を有する下部ユニット228を、前方又は後方へ引き出すようにした。
これにより紙幣入出金機210は、リジェクト庫20内に収納されている紙幣BLを取り出す際、第2の実施の形態と同様に、下部ユニット228を前方及び後方のいずれに引き出しても良く、その作業性を高めることができる。
さらに紙幣入出金機210は、装填庫225及び分離部226を収納庫18(18A〜18D)と共通の部品によって構成したことにより、異なる構成とする場合よりも製造コストを削減することができる。
また紙幣入出金機210は、その他の点についても第1及び第2の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210は、後搬送部19の前方且つ収納庫18の後方となる箇所にリジェクト庫20を配置したことにより、筐体2の後扉が開放されたとしても、一時保留部16、分離部26、装填庫25及び取込部24よりも内部にリジェクト庫20を隠匿でき、装填庫25が取り外された場合にも後搬送部19によりリジェクト庫20の後側を遮蔽できる。これにより紙幣入出金機210は、リジェクト庫20に対する外部からのアクセスを遮断することができ、当該リジェクト庫20内に収納されている紙幣BLを確実に保護することができる。さらに紙幣入出金機210は、下部ユニット228が前後いずれに引き出されたときにもリジェクト庫20から紙幣BLを取り出させることができ、作業性を格段に高めることができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機筐体11における最後部の最下段に、顧客が入出金部13から取り忘れた紙幣BLを取り込んで保管する取込部24を設け、後搬送部19により当該取込部24へ紙幣BLを搬送するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機筐体11における最後部の最下段に、他の紙幣BLと区別して保管すべき種々の紙幣BLを収納する区別収納庫を設け、後搬送部19により当該区別収納庫へ紙幣BLを搬送するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機筐体11における最後部の最下段に取込部24を設け、後搬送部19により当該取込部24及びリジェクト庫20へそれぞれ紙幣BLを搬送するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば取込部24を他の箇所に設け、後搬送部19によりリジェクト庫20のみへ紙幣BLを搬送するようにしても良い。この場合、後搬送部19をリジェクト庫20の前方に設けても良い。さらには、リジェクト庫20A及び20Bを1個のリジェクト庫20に統合すると共に、紙幣BLを上方から取り込むようにして、後搬送部19を省略するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、振分搬送部17の後端を後搬送部19と接続することにより、リジェクト紙幣BLRを当該振分搬送部17から当該後搬送部19へ搬送するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、搬送部14において振分搬送部17の後端を後搬送部19と接続せず、例えば判別部15の前入出口15Aから後搬送部19へ至る他の搬送経路を形成し、この搬送経路を介してリジェクト紙幣BLRを後搬送部19へ搬送するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機筐体11に対し装填庫25を着脱可能に構成するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣入出金機筐体11に対し装填庫25を固定するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リジェクト庫20として、互いに同等の構成でなる2個のリジェクト庫20A及び20Bを上下に並べて配置し、確定処理後に取り込まれた紙幣BLを区別して保管するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、リジェクト庫20として、1個又は3個以上のリジェクト庫を設け、紙幣BLの種類や用途等により区別して保管するようにしても良い。この場合、各リジェクト庫の配置としては、上下に並べても良く、また前後方向に2列以上に渡って並べるようにしても良く、或いは複数箇所に分散して配置するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、第2判別経路R2により判別部15の後入出口15Bと後搬送部19との間を結ぶようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば判別部15の後入出口15Bから分離部26までを結ぶ一方、分離部26と後搬送部19との間を切り離しても良い。この場合、収納庫18から繰り出した紙幣BLがリジェクト紙幣BLRであれば、例えば当該リジェクト紙幣BLRを一時保留部16に一度収納させ、後から当該一時保留部16から判別部15、第1判別経路R1、振分搬送部17及び後搬送部19を介してリジェクト庫20に収納させれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機筐体11に対し下部ユニット28を前方へ引き出し、当該下部ユニット28に対しリジェクト庫20を左方向へ引き出すようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、現金自動預払機1の設置箇所における制約等に応じて、紙幣入出金機筐体11に対し種々の方向へ下部ユニット28を引き出すようにしても良い。また下部ユニット28に対し、リジェクト庫20を種々の方向へ引き出すようにしても良く、或いはリジェクト庫20を下部ユニットに固定し取り外せないようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リジェクト庫20の上部ガイド32を傾斜させることにより、その前後長を短縮させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、従来のリジェクト庫320と同様、リジェクト庫20の上部ガイド32をほぼ水平とし、前後長を従来と同等とするようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態については、収納庫18にリブ68を形成することにより、その前後長を従来よりも短縮するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、収納庫18にリブ68を設けることなく、従来の収納庫318と同様に構成して前後長を短縮しないようにしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納庫18内及びリジェクト庫20内において、それぞれ紙幣BLを水平に寝かせて上下方向に積層して収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば収納庫18内及びリジェクト庫20内において、紙幣BLを垂直又は斜めに立たせて前後方向に積層して集積するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、収納庫18として4個の収納庫18A〜18Dを設けるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、3個以下又は5個以上の収納庫を設けるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣の入金処理や出金処理等を行う紙幣入出金機10において、取引処理において利用すべきでない媒体としてのリジェクト紙幣BLRをリジェクト庫20に搬送して収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば債権、証書、商品券、金券や入場券等のような種々の紙葉状の媒体に関する取引を行う種々の装置において、取引において利用できない媒体を判別し、これをリジェクト庫に搬送して収納させるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての紙幣入出金機筐体11と、判別部としての判別部15と、収納庫としての収納庫18と、装填庫としての装填庫25と、リジェクト庫としてのリジェクト庫20とによって媒体取引装置としての紙幣入出金機10を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、判別部と、収納庫と、装填庫と、リジェクト庫とによって媒体取引装置を構成するようにしても良い。