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JP2013170292A - マグネシウム合金材の製造方法 - Google Patents

マグネシウム合金材の製造方法 Download PDF

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JP2013170292A JP2012034450A JP2012034450A JP2013170292A JP 2013170292 A JP2013170292 A JP 2013170292A JP 2012034450 A JP2012034450 A JP 2012034450A JP 2012034450 A JP2012034450 A JP 2012034450A JP 2013170292 A JP2013170292 A JP 2013170292A
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Abstract

【課題】強度の異方性を低減することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、マグネシウム合金材に押出加工を行う押出工程と、前記押出工程によって作製された押出材に熱間圧延を行う圧延工程と、を有し、前記押出材は、長周期積層構造相を有し、前記圧延工程は、前記押出材の押出方向と略垂直方向に圧延加工されることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、圧延工程を有するマグネシウム合金材の製造方法に関する。
マグネシウム合金は実用金属材料の中で最も軽量であると同時に、比強度や切削性および減衰能に優れていることが知られており、環境調和型軽量材料として期待されている。一方で、マグネシウム合金の結晶構造は最密六方格子であることに起因して、塑性加工は熱間で行われ、鋳造材やダイカスト材としての利用が多くを占める。
最近ではマグネシウム合金に種々の元素を微小添加することで、高強度化と加工性の双方を解決できる合金開発が進められ、中でも長周期積層構造(Long Period Stacking Order)相(以下、「LPSO相」ともいう。)を有するマグネシウム合金が注目されている(例えば特許文献1参照)。
特許3905115号公報
本発明の一態様は、高強度・高延性を有しつつ加工材の段階で強度の異方性を低減することを課題とする。また、本発明の一態様は、圧延加工前に熱処理を加えることで異方性を低減することを課題とする。
本発明の一態様は、マグネシウム合金材に押出加工を行う押出工程と、前記押出工程によって作製された押出材に熱間圧延を行う圧延工程と、を有し、前記押出材は、長周期積層構造相を有し、前記圧延工程は、前記押出材の押出方向と略垂直方向に圧延加工されることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法である。
また、本発明の一態様において、前記長周期積層構造相は、前記押出加工の押出方向と略平行に形成されているとよい。
本発明の一態様は、長周期積層構造相を有するマグネシウム合金材に温間圧延または熱間圧延を行う圧延工程を有し、前記圧延工程は、前記長周期積層構造相に対して略垂直方向に圧延加工されることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法である。
また、本発明の一態様において、前記圧延工程によって作製された圧延材は、湾曲または屈曲した長周期積層構造相、結晶方位差を有する長周期積層構造相、及び、結晶粒界を有し連続的に湾曲または屈曲した長周期積層構造相の少なくとも一つを有するとよい。
また、本発明の一態様において、前記圧延工程によって作製された圧延材は、α−Mg相を有し、前記α−Mg相は高傾角結晶粒界及び低傾角結晶粒界を有しており、前記高傾角結晶粒界の量をXとし、前記低傾角結晶粒界の量をYとした場合に下記式(1)を満たすとよい。
(1)0.7≦X/(X+Y)
また、本発明の一態様において、前記圧延工程の後に、前記圧延工程によって作製された圧延材に573K以下の温度で熱処理を行う熱処理工程をさらに具備し、前記熱処理工程によって作製された熱処理材は、湾曲または屈曲した長周期積層構造相、結晶方位差を有する長周期積層構造相、及び、結晶粒界を有し連続的に湾曲または屈曲した長周期積層構造相の少なくとも一つを有するとよい。
また、本発明の一態様において、前記押出工程と前記圧延工程の間に、前記押出材に熱処理を行う工程をさらに具備するとよい。これにより、異方性を低減することができる。
本発明の一態様を適用することで、高強度・高延性を有しつつ加工材の段階で強度の異方性を低減することができる。
また、本発明の一態様によれば、圧延加工前に熱処理を加えることで異方性を低減することができる。
本発明の一態様に係るマグネシウム合金材の製造方法を説明するための模式図である。 本発明の一態様に係るマグネシウム合金材の製造方法を説明するための模式図である。 (a)は押出材(熱処理なし)の結晶組織を示す写真であり、(b)は熱処理後の押出材の結晶組織を示す写真である。 圧延材(熱処理なし)の引張試験の結果を示す図である。 圧延材の引張試験の結果である降伏強度YS、引張強さUTS、伸びElそれぞれと熱処理温度との関係を示す図である。 (a)〜(c)は、圧延材(熱処理なし)の光学顕微鏡写真、IPFマップ、EBSDによる粒界マップを示す図である。 圧延材(熱処理なし)のTEM写真である。 (a)は573K、3.6ksの熱処理を行った圧延材の組織写真、(b)は623K、3.6ksの熱処理を行った圧延材の組織写真、(c)は673K、3.6ksの熱処理を行った圧延材の組織写真、(d)は773K、3.6ksの熱処理を行った圧延材の組織写真である。 (a)は押出材(熱処理無し)の結晶組織であり、(b)は熱処理後の押出材の結晶組織である。 熱処理無しの圧延材と熱処理後の圧延材の公称応力−ひずみ曲線を示す図である。 圧延材の縦断面の光顕組織結果と結晶方位解析結果を示す図である。 (a)は圧延材に573Kの熱処理を行った後の光顕組織、(b)は圧延材に623Kの熱処理を行った後の光顕組織、(c)は圧延材に673Kの熱処理を行った後の光顕組織である。
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一態様に係るマグネシウム合金材の製造方法を説明するための模式図である。
まず、α-Mg相及び長周期積層構造相を有するマグネシウム合金からなる鋳造材を用意する。このマグネシウム合金の組成は長周期積層構造相が生成するものであればよく、例えば以下のものが挙げられる。
第1のマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
第2のマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
第3のマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。
(1)0.2≦a≦3.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
第4のマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
第5のマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。
(1)0.1≦a≦3.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
第6のマグネシウム合金は、Cu、Ni及びCoの少なくとも1種の金属を合計でa原子%含有し、Y、Dy、Er、Ho、Gd、Tb及びTmからなる群から選択される1又は2以上の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。また、より好ましくは、aとbが下記式(1')〜(3')を満たす。
(1)0.2≦a≦10
(2)0.2≦b≦10
(3)2/3a−2/3<b
(1')0.2≦a≦5
(2')0.2≦b≦5
(3')2/3a−1/6<b
なお、上記の第1〜第6のマグネシウム合金それぞれに長周期積層構造相が生成する範囲内で他の元素を含有させることも可能である。
次に、上記の鋳造材に温間押出加工または熱間押出加工を行うことにより、図1に示すように、LPSO相の長手方向を押出方向と略平行に揃えた押出材を作製する。ここでいう略平行とは、LPSO相の70体積%以上が押出方向に対して±20°以下の角度を有する方向を意味する。また、熱間押出加工とは、材料の再結晶温度以上の温度で行う押出加工をいい、温間押出加工とは、熱間押出加工の温度より低い温度で行う押出加工をいう。
次に、上記の押出材を切断し、押出材の押出方向と略垂直方向に熱間圧延加工を行うことにより、図1に示すように、LPSO相を大きく湾曲または屈曲させた圧延材を作製する。ここでいう略垂直方向とは、押出方向に対して±20°以下の角度を有する方向を意味する。
また、本実施の形態では、押出材に熱間圧延加工を行っているが、押出材に温間圧延加工を行ってもよい。熱間圧延加工とは、材料の再結晶温度以上の温度で行う圧延加工をいい、温間圧延加工とは、熱間圧延加工の温度より低い温度で行う圧延加工をいう。
なお、押出材の押出方向と略垂直方向に圧延加工を行うことは、LPSO相に対して略垂直方向に圧延加工を行うことでもある。ここでいうLPSO相に対して略垂直方向とは、70体積%以上のLPSO相に対して圧延方向と70°〜110°の角度を有する方向を意味する。
本実施の形態によれば、LPSO相に対して略垂直方向に圧延加工を行うことにより、圧延材の強度の異方性を押出材に比べて低減することができる。例えば押出材の強度の異方性が30〜35%である場合は、圧延材の強度の異方性を押出材のそれに比べて半分以下(例えば10%程度)に低減することができる。
機械的特性の観点からは作製圧延材の圧延方向を0°と定義したとき,45°および90°方向を引張試験片の長手方向に切り出しても、0°方向の耐力・引張強さ・伸びともに10%程度以内に収まっており、等方材とはいかないまでも材料強度に等方性が見られた。組織の観点からは、Mg合金は加工後に特定配向へ向き易いが、ランダムな組織を形成できると同時に、LPSO相が一方向を向くことを、キンク帯の導入やLPSO相の湾曲・屈曲およびLPSO相内に粒界を導入した結果、組織的にも異方性が防げたと考えられる。
なお、キンク帯の導入とは、LPSO型Mg合金に塑性変形を加えることでLPSO相内に導入される屈曲・湾曲した部分である。
また、本実施の形態によるマグネシウム合金材の製造方法は、強度の異方性を低減できる方法であるため、同等の機械的特性を持つマグネシウム合金材を押出加工によって作製する場合に比べて加工前の予熱温度をより低くすることができ、ひいては、プロセスコストの低減に寄与することが期待できる。例えば、673K程度の予熱温度で押出加工を行うのに対して、本方法による圧延加工では予熱温度を643K程度とすることができる。
また、圧延工程によって作製された圧延材のα−Mg相は高傾角結晶粒界及び低傾角結晶粒界を有しており、高傾角結晶粒界の量をXとし、低傾角結晶粒界の量をYとした場合に下記式(1)を満たす。
(1)0.7≦X/(X+Y)
このように70%以上の高傾角結晶粒界を有し、30%以下の低傾角結晶粒界を有することにより、圧延材の強度の異方性を低減できると考えられる。ちなみに、従来のLPSO相型マグネシウム合金の圧延材のα-Mg相では、高傾角結晶粒界が20%程度で低傾角結晶粒界が80%程度である。
なお、低傾角結晶粒界とは、1つの粒界を挟んだ隣接間結晶粒の方位差が15°未満(又は5°〜15°)のものをいい、高傾角結晶粒界とは、1つの粒界を挟んだ隣接間結晶粒の方位差が15°以上のものをいう。
また、LPSO相に対して略垂直方向に圧延加工を行うこと、又は、70%以上の高傾角結晶粒界を有し、30%以下の低傾角結晶粒界を有することにより、圧延材の結晶粒径が5μm程度であっても高強度化を達成できる。
また、上記の圧延工程の後に、圧延材に573K以下の温度で熱処理を行っても、その熱処理材のLPSO相の湾曲または屈曲は消滅しないので、高強度を保持したままである。
(実施の形態2)
図2は、本発明の一態様に係るマグネシウム合金材の製造方法を説明するための模式図である。
図2に示すマグネシウム合金材の製造方法は、圧延工程前の押出材に熱処理を行う工程を有する点を除いて、図1に示すマグネシウム合金材の製造方法と同様である。
本実施の形態においても実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
Znを2原子%、Yを2原子%含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg96Zn合金を真空溶解炉に投入して溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作製した。次に、インゴットに、押出温度350℃において押出比10、押出速度2.5mm/秒として押出加工を行った。次に、増加した伸びから生じる異方性を減少させるために、この押出材に673Kの温度で3.6ksの熱処理を行った後に、その押出材を水で冷却した。α-Mg相は静的再結晶と粒成長を示した。LPSO相内のキンク帯は熱処理によって回復した。
ここで、押出材と熱処理材のSEM写真を撮像し、その写真を図3(a),(b)に示す。図3(a)は押出材(熱処理なし)の結晶組織を示し、図3(b)は熱処理後の押出材の結晶組織を示す。図3(a),(b)に示す合金はLPSO相、α-Mg相及びMgZn化合物を含み、LPSO相は明るい部分である。熱処理された押出材のLPSO相は、熱処理なしの押出材のLPSO相に比べてより微細に分散されている。熱処理を行うことでLPSO相がblock状からplate状に変化していることが分かる。また、LPSO相の長手方向は押出方向と略平行方向に形成されており、押出方向と平行ではないLPSO相は微細に分散されている。
次に、この熱処理材から切削加工により5mm(板厚)×20mm(幅)×50mm(長さ)の圧延用板材を切り出した。次に、この圧延用板材を673Kの温度で0.6ksの時間加熱した後に圧延加工を行い、加工後は直ちに水冷した。圧延方向は押出方向と垂直方向とし、圧延加工はロール温度を493K、ロール周速を0.17m/sとし、4passの圧延加工で板厚1mmの板材を作製した。
次に、圧延材を切削することで、寸法12mm(長さ)×2.5mm(幅)×1mm(厚さ)を有する引張試験片を作製した。その試験片を473〜773Kの温度で3.6ksの熱処理を行った後に水で冷却した。その後、初期ひずみ速度5×10−4/sにて室温引張試験を行った。そして、熱処理無しの圧延材及び熱処理後の圧延材の組織を、光顕(optical microscopy)、SEM(scanning electron microscopy)、TEM(transmission electron microscopy)によって観察し、結晶方位解析をEBSD(electron back-scattered diffraction)によって行った。EPSDは、0.3μmの測定ステップで、200×200μmの領域において実行した。組織観察は引張試験片の縦断面で行った。縦断面とは、引張試験片の長さ方向と平行で且つ厚さ方向と平行な断面をいう。
図4は、圧延材(熱処理なし)の引張試験の結果を示す図である。図4は、引張特性の異方性を示している。引張試験の方向0°は引張方向と圧延加工の圧延方向が平行を意味しており、引張試験の方向45°は引張方向が圧延加工の圧延方向に対して45°であることを意味しており、引張試験の方向90°は引張方向が圧延加工の圧延方向に対して90°であることを意味している。図4において、YSは降伏強度であり、UTSは引張強さであり、Elは伸びである。
図4に示すように、圧延材は、降伏強度YSの異方性が最大値約14%あり、押出材の異方性に比べると半分以下である。ちなみに、押出材では、0°と90°の方向で強度の値が30%程度異なる。また、引張強度UTSは、引張試験の方向に依存することなく、ほとんど一定である。また、伸びElは、引張試験の方向45°で最大値を示した。引張強度を制御する重要な要素は、塑性変形前のLPSO相の微細な分散であると考えられる。これは熱処理によって達成される。また、強度の異方性の減少は、熱処理と圧延加工によってα−Mg相の粒界にLPSO相が分散したことに起因すると考えられる。
図5は、圧延材の引張試験の結果である降伏強度YS、引張強さUTS、伸びElそれぞれと熱処理温度との関係を示す図である。引張試験の方向は0°である。
図6(a)〜(c)は、圧延材(熱処理なし)の光学顕微鏡写真、IPF(inverse pole figure)マップ、EBSDによる粒界マップを示す図である。図6(b),(c)に示す暗い領域はLPSO相に相当する。
図6(a)に示すように、圧延加工を行うことで、光顕組織でも分かるほどLPSO相を大きく湾曲させる(大きな曲率を有する)ことができる。なお、圧延加工は板厚が減少し、長さが増加するが、幅方向への変形は殆どない。圧延加工で作用する力はせん断力である。また、LPSO相内にキンク帯が形成されている。
図6(c)に示すように、α−Mg相における高傾角結晶粒界と低傾角結晶粒界の割合は80.7%と19.3%である。
図7は、圧延材(熱処理なし)のTEM写真であり、低倍率でも高倍率でもLPSO内が屈曲又は湾曲およびそれ以上の結晶傾角を有していることを示している。LPSO相内に導入されたキンク帯の連続変形は、硬い相であるLPSO相が圧延加工で大きく変形したことを示している。連続的なキンク変形を持つLPSO相は、圧延加工の後に形成され、大きな湾曲を示している。キンク帯は、多くの観察領域で角度(結晶方位差)を有しており、キンク帯が結晶粒界に変化したと考えられる。
LPSO相の連続的な湾曲又は屈曲又は折れ曲がりは連続的に長距離にわたっており、曲率は70°程度である。すなわち、LPSO相が大きな延性(変形能力)を有していることが分かる。また、LPSO相内部は段階状に変化しており、一つの方向に流れるのではなく多方向にLPSO相が向いていることにより、LPSO相の変形能が高くなったと考えられる。ただし、LPSO相とα-Mg相の界面に空隙や剥離は認められない。
図8(a)は、573Kの温度で3.6ksの熱処理を行った圧延材を光学顕微鏡によって撮像した組織写真であり、図8(b)は、623Kの温度で3.6ksの熱処理を行った圧延材を光学顕微鏡によって撮像した組織写真であり、図8(c)は、673Kの温度で3.6ksの熱処理を行った圧延材を光学顕微鏡によって撮像した組織写真であり、図8(d)は、773Kの温度で3.6ksの熱処理を行った圧延材を光学顕微鏡によって撮像した組織写真である。
図8(a)〜(c)において暗い領域はLPSO相に相当し、明るい領域はα-Mg相に相当する。熱処理温度が上昇したので、α-Mg相の粒は成長したが、623Kの熱処理温度まで、LPSO相とα-Mg相は熱処理前のそれらと比較してほとんど違いを示さなかった。熱処理温度が上昇したので、α-Mg相の粒はより大きくなったが、これは非常にゆっくり起こった。その理由は、粒成長がLPSO相によって制御されたからである。
図8は、機械的特性のわずかな変化と573Kの熱処理に関する圧延材の微細組織がどのように生じたかについて示している。図5に示す引張試験結果では、623Kの熱処理によって降伏強度及び引張強さが著しく減少した。図3と図6から、この合金のα-Mg相の静的再結晶温度が623K以上であることが分かる。合金が673Kを超えた温度で熱処理されたとき、降伏強度及び引張強さはおよそ200MPaと330MPaに落ちたが、伸びは20%以上まで改善された。
図8(c)に示すように、673Kの温度で3.6ksの熱処理を行った圧延材におけるLPSO相が明確に変形していることが分かる。激しく湾曲又は屈曲したLPSO相が熱処理しても変化しないため、LPSO相とLPSO相の間に挟まれたα-Mg相は結晶粒成長が抑止される。この傾向は押出材より強い。また、673Kの温度で熱処理された圧延材の異方性は押出材のそれと比較して低い。
Znを2原子%、Yを2原子%含有し、残部がMgと不可避的不純物からなるMg96Zn合金を真空溶解炉に投入して溶解を行った。次に、加熱溶解した材料を金型に入れて鋳造し、φ29mm×L60mmのインゴット(鋳造材)を作製した。次に、インゴットに、押出温度350℃において押出比10、押出速度2.5mm/秒として押出加工を行った。次に、この押出材に773Kの温度で3.6ksの熱処理を行った。
ここで、押出材と熱処理材のSEM写真を撮像し、その写真を図9(a),(b)に示す。図9(a)は押出材(熱処理無し)の結晶組織を示し、図9(b)は熱処理後の押出材の結晶組織を示す。押出材を熱処理により高延性化させることで0.2%耐力は200MPa程度まで低下してしまうが、伸びは20%に達する。熱処理を行うことでLPSO相がblock状(図9(a)参照)からplate状(図9(b)参照)に変化していることが分かる。
次に、この熱処理材から切削加工により板厚5mmの圧延用板材を切り出した。次に、この圧延用板材を673Kの温度で0.6ksの時間加熱した後に圧延加工を行い、加工後は直ちに水冷した。圧延加工はロール温度を493K、ロール周速を0.17m/sとし、4passの圧延加工で板厚1mmの板材を作製した。
次に、板材を切削することで、平行部寸法12mm(長さ)×2.5mm(幅)×1mm(厚さ)を有する板状引張試験片を作製し、その試験片を473〜773Kの温度で3.6ksの熱処理後、初期ひずみ速度5×10−4/sにて室温引張試験及び組織観察を行った。引張試験の引張方向と圧延加工の圧延方向は平行であり、組織観察は板状引張試験片の縦断面で行った。また、組織観察は光顕およびSEMを用い、結晶方位解析はEBSDにより実施した。
図10は、熱処理無しの圧延材と熱処理後の圧延材の公称応力−ひずみ曲線を示す図である。熱処理無しの圧延材の0.2%耐力は350MPaで伸びは4%を示し、熱処理温度573Kまでは0.2%耐力および引張強さ共に顕著な低下を示さないことが分かった。後述する光顕組織からも分かるが、圧延加工を行うことでもLPSO相内にキンク帯を導入できたため、強度が飛躍的に向上したと考えられる。一方で、熱処理温度が623Kに達すると強度は低下し、伸びが向上することから、α-Mg相の静的再結晶が生じることが分かり、加工前のLPSO相の形状に依存することなく、強度向上と延性向上の発現機構は押出材と同一であることが分かった。
図11に圧延材の縦断面の光顕組織結果と結晶方位解析結果を示す。圧延方向に対してLPSO相は大きな曲率を有し非常に大きな変形をしていることが伺え、LPSO相内部にはキンク帯の形成が認められる。α-Mg相に対して硬質相であるLPSO相が曲率を増加させながら塑性変形したにも拘わらず、LPSO相とα-Mg相の界面に剥離現象は認められなかった。LPSO相内部には強化機構であるキンク帯が導入され、LPSO相に挟まれたα-Mg相は、圧延加工によって微細組織に変化し、強度向上が達成できたと考えられる。図11に示すEBSD解析から、圧延材中のα-Mg相における高傾角結晶粒界と低傾角結晶粒界の割合はそれぞれ80.7%と19.3%を示し、平均結晶粒径は5μmであった。
図12(a)は、圧延材に573Kの熱処理を行った後の光顕組織を示し、図12(b)は、圧延材に623Kの熱処理を行った後の光顕組織を示し、図12(c)は、圧延材に673Kの熱処理を行った後の光顕組織を示す。
図10及び図12より熱処理無しの圧延材と573Kの温度で3.6ksの熱処理後の圧延材の光顕組織に変化は認められず、熱処理温度が高温になっても組織と機械的特性は安定していた。一方で熱処理温度の上昇に伴い、押出材同様に圧延材でもα-Mg相の結晶粒成長は生じるが、673Kの熱処理後の圧延材ではキンク帯が残存していることが光顕組織においても認められ、α-Mg相の結晶粒成長を抑止していた。
本実施例によれば、圧延加工によってLPSO相内にキンク帯を導入することができ、圧延加工回数の増加に伴いLPSO相の変形曲率は大きくなり、キンク帯の形成がLPSO相の変形を助長していることが分かった。また、圧延加工前組織の段階でLPSO相をα-Mg相内に微細分散させることで、圧延加工でも容易に薄板材の作製ができることが分かり、低加工回数で高強度を達成した。

Claims (7)

  1. マグネシウム合金材に押出加工を行う押出工程と、
    前記押出工程によって作製された押出材に熱間圧延を行う圧延工程と、
    を有し、
    前記押出材は、長周期積層構造相を有し、
    前記圧延工程は、前記押出材の押出方向と略垂直方向に圧延加工されることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記長周期積層構造相は、前記押出加工の押出方向と略平行に形成されていることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  3. 長周期積層構造相を有するマグネシウム合金材に温間圧延または熱間圧延を行う圧延工程を有し、
    前記圧延工程は、前記長周期積層構造相に対して略垂直方向に圧延加工されることを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、
    前記圧延工程によって作製された圧延材は、湾曲または屈曲した長周期積層構造相、結晶方位差を有する長周期積層構造相、及び、結晶粒界を有し連続的に湾曲または屈曲した長周期積層構造相の少なくとも一つを有することを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項において、
    前記圧延工程によって作製された圧延材は、α−Mg相を有し、
    前記α−Mg相は高傾角結晶粒界及び低傾角結晶粒界を有しており、
    前記高傾角結晶粒界の量をXとし、前記低傾角結晶粒界の量をYとした場合に下記式(1)を満たすことを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
    (1)0.7≦X/(X+Y)
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項において、
    前記圧延工程の後に、前記圧延工程によって作製された圧延材に573K以下の温度で熱処理を行う熱処理工程をさらに具備し、
    前記熱処理工程によって作製された熱処理材は、湾曲または屈曲した長周期積層構造相、結晶方位差を有する長周期積層構造相、及び、結晶粒界を有し連続的に湾曲または屈曲した長周期積層構造相の少なくとも一つを有することを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
  7. 請求項1または2において、
    前記押出工程と前記圧延工程の間に、前記押出材に熱処理を行う工程をさらに具備することを特徴とするマグネシウム合金材の製造方法。
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