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JP2013011736A - 繊維強化複合材料からなる薄型ディスプレイ筐体 - Google Patents

繊維強化複合材料からなる薄型ディスプレイ筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】さらなる薄型化、軽量化を実現しつつ、強度、剛性を満足する薄型ディスプレイ筐体を提供する。
【解決手段】パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシ、および後キャビネットとを含む薄型ディスプレイ筐体であって、パネルユニットシャーシおよび/またはバックライトシャーシが、熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料からなり、複合材料中に含まれる強化繊維の平均繊維長が5mm超100mm以下を満たす薄型ディスプレイ筐体。
【選択図】図3

Description

本発明は薄型ディスプレイ筐体に関し、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材料からなり、さらなる薄型化、軽量化を実現しつつ、強度、剛性を満足する薄型ディスプレイ筐体に関する。
近年、電気・電子機器、自動車、医療機器、航空機、建材、一般産業用部品などの様々な分野で軽量化に関する要望が高まっており、それらに用いられる筐体や部材などについても軽量・高剛性化が求められるようになってきた。
特に薄型ディスプレイ筐体は、ガラス繊維や炭素繊維を充填した繊維強化複合材料を射出成形した成形体や、繊維強化複合材料板に熱可塑性樹脂を射出成形で一体化した成形体などを前後のキャビネットに用いることによって薄型化・薄肉化を図り、アルミニウム、チタン、マグネシウムなどの合金の圧延板をプレス加工した成形体、あるいはダイカストモールド成形した成形体をシャーシとして前後キャビネット内部に配置し、前後キャビネットと締結することによって薄型化、軽量化を実現しつつ、薄型ディスプレイ筐体の強度・剛性を確保している。(特許文献1)
特開2007−318006号公報
本発明の解決しようとする課題は、さらなる薄型化、軽量化を実現しつつ、強度、剛性を満足する薄型ディスプレイ筐体を提供することにある。さらには、該薄型ディスプレイを高い生産性で提供することにある。
かかる課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、特定の熱可塑性樹脂をマトリクスとし、ある程度の長さの強化繊維を二次元ランダム配向して含む繊維強化複合材料を用いた筐体とすることで本発明に到達した。すわなち、本発明は、パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシ、および後キャビネットとを含む薄型ディスプレイ筐体であって、パネルユニットシャーシおよび/またはバックライトシャーシが、熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料からなり、複合材料中に含まれる強化繊維の平均繊維長が5mm超100mm以下を満たす薄型ディスプレイ筐体である。
本発明の筐体によれば、薄型化、薄肉化が可能であり、軽量化を実現しつつ、強度、剛性を満足する大型ディスプレイ筐体を提供することができる。さらには部品を一体成形する構造をとることや、部品同志を嵌合を含む手段で締結することで、捩れや反りの少ない薄型ディスプレイ筐体を提供できる。成形材料を繊維強化複合材料としたことで複雑形状が可能となり、複数の部品の一体化による部品点数削減や、後加工の削減が可能となる。さらに偏肉厚やリブ、ボスを一体成形用することで、より生産性の高い薄型ディスプレイ筐体を提供できる。
本発明の薄型ディスプレイ筐体の構成例の説明図 本発明の薄型ディスプレイ筐体の一例(上部中央の断面模式図) 本発明の薄型ディスプレイ筐体の一例(上部中央の断面模式図) 本発明の薄型ディスプレイ筐体の一例(上部中央の断面模式図) 本発明の薄型ディスプレイ筐体の一例(角部の断面模式図) 実施例1の薄型ディスプレイ筐体の斜視図 実施例1の薄型ディスプレイ筐体 上部中央の断面模式図 実施例1の薄型ディスプレイ筐体 角部の断面模式図
以下、本発明の成形体の実施形態について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本発明の薄型ディスプレイ筐体は、パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシ、および後キャビネットとを含む薄型ディスプレイ筐体であって、前キャビネットをさらに有する場合もある。本発明の薄型ディスプレイ筐体に、表示パネルとバックライトユニットを組み合せた薄型ディスプレイ筐体の構成例の説明図を図1に示す。図2に本発明の薄型ディスプレイ筐体の一例の上部中央(A面)の断面模式図を示す。これらの例では、パネルユニットシャーシ3の前側または後側に締結されたバックライトシャーシ5の前側にバックライトユニット4が配置され、さらにその前側に表示パネル2が配置される。締結され一体化したパネルユニットシャーシ3とバックライトシャーシ5に固定されたバックライトユニット4と表示パネル2にさらに額縁部1aと周面部1bを含む前キャビネット1、後側に後キャビネット6が配置され、パネルユニットシャーシ3と締結されている。
[シャーシを構成する繊維強化複合材料]
本発明の薄型ディスプレイ筐体は、パネルユニットシャーシおよび/またはバックライトシャーシが、熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料からなる。
後述のようにパネルユニットシャーシおよびバックライトシャーシとが一体成形部品となる場合や、さらに前キャビネットとパネルユニットシャーシおよびバックライトシャーシとが一体成形部品となりシャーシを構成する場合、さらには後キャビネットもシャーシ機能を有する場合には熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料から成形されることが好ましい。繊維強化複合材料により一体化されたシャーシによる薄型ディスプレイ筐体の構成例を図3、図4で示す。この場合、図中の斜線部が繊維強化複合材料で成形された部品であることを示している。
繊維強化複合材料に含まれる強化繊維は不連続であり、複合材料中に含まれる強化繊維の平均繊維長が5mm超100mm以下を満たす。後述する繊維強化複合材料の好ましい製造方法により、このようにある程度の繊維長を有する強化繊維を含んだ繊維強化複合材料からなる成形体が提供できる。これにより、静的な強度・剛性だけでなく、衝撃的な荷重や長期の疲労荷重に対しても高い物性を発現するとともに、複雑な形状を有する成形体を成形する場合においても、強化繊維の配向が崩れにくく、後述する成形体内部の強化繊維の面内2次元ランダム配向を保つことが可能となる。好ましくは強化繊維の平均繊維長が10mm以上100mm以下であり、より好ましくは15mm以上80mm以下である。更には20mm以上60mm以下が好ましい。
なお繊維強化複合材料の一部を一方向材などで補強する場合がある。その場合、熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料と一方向材との積層体(部分積層を含む)となるが、含まれる強化繊維の上記の定義は一方向材による補強層等を除く、主要部分についての規定である。
[強化繊維]
繊維強化複合材料における強化繊維としては特に制限はないが、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維およびガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。強度・剛性が求められる用途においては、炭素繊維とガラス繊維とアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。なお、導電性が必要な用途においては、炭素繊維が好ましく、ニッケルなどの金属を被覆した炭素繊維がより好ましい。電磁波透過性が必要な用途においては、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維が好ましく、電磁波透過性と強度のバランスからアラミド繊維とガラス繊維がより好ましい。耐衝撃性が必要な用途においては、アラミド繊維とポリエステル繊維が好ましい。これらは併用することもでき、筐体の部位によって強化繊維の種類を使い分けることも可能であり、異なる強化繊維を積層させた状態で成形することも可能である。
[熱可塑性樹脂]
本発明の筐体を構成する繊維強化複合材料における熱可塑性樹脂の存在量は、強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部であることが好ましい。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂55〜500重量部、更に好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂60〜300重量部である。
繊維強化複合材料における熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸樹脂、およびこれらの樹脂から選ばれる2種類以上の混合物(樹脂組成物)等からなる群から選択された少なくとも1種が好ましく挙げられる。上記の樹脂組成物としては、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の組成物、ポリカーボネートとABS樹脂との組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂の組成物、ポリアミド樹脂とABS樹脂の組成物、およびポリエステル樹脂とナイロン樹脂の組成物等からなる群から選択された少なくとも1種が、より好ましい。
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、繊維強化複合材料に機能性の充填材や添加剤を含有させても良い。例えば、有機/無機フィラー、難燃剤、耐UV剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤などが挙げられるが、この限りではない。とくに電子・電気機器用途や自動車用途においては、高い難燃性が要求されることがあるため、熱可塑性樹脂に難燃剤を含有させることが好ましい。難燃剤の例としては、公知のものが使用でき、熱可塑性組成物に難燃性を付与できる物であれば特に限定はされない。具体的には、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン化合物、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩、臭素系難燃剤等を挙げることができ、これらの難燃剤は単独で使用しても良いし、複数を併用して用いても良い。難燃剤の含有量は、物性、成形性、難燃性のバランスから樹脂100質量部に対して1〜40質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがさらに好ましい。
[繊維強化複合材料に含まれる強化繊維]
繊維強化複合材料中に含まれる強化繊維が、式(1)
臨界単糸数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、成形体中の強化繊維全量に対する割合が20Vol%以上90Vol%未満であることが好ましい。成形体中には、強化繊維束(A)以外の強化繊維として、単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束が存在することが好ましい。
すなわち繊維強化複合材料は、平均繊維径に依存して定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束の存在量を20Vol%以上90Vol%未満とする、すなわち強化繊維の開繊程度をコントロールし、特定本数以上の強化繊維からなる強化繊維束と、それ以外の開繊された強化繊維を特定の比率で含むことが好ましい。
強化繊維全量に対する強化繊維束(A)の割合が20Vol%未満になると、表面品位に優れる成形体が得られるという利点はあるものの、機械物性に優れた成形体が得にくくなる。強化繊維束(A)の割合が90Vol%以上になると、繊維の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉のものが得られないことがある。強化繊維束(A)の割合はより好ましくは30Vol%以上80Vol%未満である。
さらに臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(2)
0.7×10/D<N<6×10/D (2)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たすことが好ましい。
具体的に繊維強化複合材料における強化繊維が炭素繊維であり、炭素繊維の平均繊維径が5〜7μmである場合、臨界単糸数は86〜120本となり、炭素繊維の平均繊維径が5μmである場合、繊維束中の平均繊維数は280〜2000本の範囲となるが、なかでも600〜1600本であることが好ましい。炭素繊維の平均繊維径が7μmの場合、繊維束中の平均繊維数は142〜1020本の範囲となるが、なかでも300〜800本であることが好ましい。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が0.7×10/D以下の場合、高い繊維体積含有率(Vf)を得る事が困難となる。また強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が6×10/D以上の場合、局部的に厚い部分が生じ、ボイドの原因となりやすい。1mm以下の薄肉な筐体を得ようとした場合、単純に分繊しただけの繊維を用いたのでは、疎密が大きく、良好な物性が得られない。又、全ての繊維を開繊した場合には、より薄いものを得る事は容易になるが、繊維の交絡が多くなり、繊維体積含有率の高いものが得られない。式(1)で定義される臨界単糸以上の強化繊維束(A)と、単糸の状態又は臨界単糸数未満の強化繊維(B)を成形体内に同時に存在させることにより、薄肉であり、物性発現率の高い筐体を提供することが可能である。本発明の筐体は、各種の厚みや三次元形状の部品から構成することが可能であるが、厚みが0.2〜1mm程度の薄肉とすることもできる。
[前後キャビネットを構成する繊維強化複合材料]
本発明の薄型ディスプレイ筐体の前キャビネットおよび後キャビネットの素材は特に限定はなく、樹脂、強化繊維複合材料、金属などが用いられる。なかでも軽量化と剛性の観点から強化繊維複合材料が好ましい。強化繊維複合材料としては樹脂と強化繊維とを含む繊維強化複合材料が好ましく、樹脂は熱可塑性でも熱硬化性でも良いし、強化繊維は織物でも連続繊維の一方向性材でも良く、不連続の繊維からなるランダムマットでも良い。好ましいのは熱可塑性樹脂と強化繊維とを含む繊維強化複合材料である。前後キャビネットを構成する繊維強化複合材料は、パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシと同様の素材としても良く、強化繊維の平均繊維長が5mm未満の繊維強化複合材料であっても良い。特に前キャビネットの表面においては意匠性を求められるため、表層側の繊維強化複合材料における樹脂の含有量を他の部分に比べて多くしても良い。好ましくは筐体を構成する繊維強化複合材料における熱可塑性樹脂の存在量は、強化繊維100重量部に対し、100〜1000重量部である。より好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂200〜1000重量部、更に好ましくは、強化繊維100重量部に対し、熱可塑性樹脂300〜1000重量部である。
[一体成形]
本発明の薄型ディスプレイ筐体は、パネルユニットシャーシとバックライトシャーシとは、一体成形部品からなることが好ましい。一体成形部品とすることで、強度と剛性に優れた薄型ディスプレイ筐体が好ましく提供できる。
図3と図4を用いて適用例について説明する。図3の[A]はパネルユニットシャーシとバックライトシャーシが一体成形部品7からなる例を示している。一体成形されたシャーシ7の前側にバックライトユニット4と表示パネル2を配置し、さらに一体成形されたシャーシ7に額縁部1aと周面部1bを有する前キャビネット1を締結し、さらに一体成形されたシャーシ7の後側に位置する後キャビネット6とを締結する。図3の[B]は一体成形されたパネルユニットシャーシとバックライトシャーシにさらに後側に位置する後キャビネットの一部も一体成形したシャーシ7aとし、強度と剛性を満足する例である。この場合、一体成形されたシャーシ7aを締結するために前キャビネット1に締結部を設け、さらに一体化されたシャーシ7aの後側を覆う後キャビネット6が必要になる。さらには、前キャビネット、パネルユニットシャーシおよびバックライトシャーシが一体成形部品からなることが好ましい。図4の[C]は前キャビネットもシャーシとしてパネルユニットシャーシとバックライトシャーシとを一体成形部品8とし、その前側にバックライトユニット4と表示パネル2とを配置し、一体成形したシャーシ8にシャーシ機能を持たせた後キャビネット6を締結する例である。図4の[D]は[C]と同じく前キャビネット、パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシを一体成形したシャーシ8の前側に配置される表示パネル2をシャーシ8の前面と同じサイズまで拡大することによって前面すべてを表示パネル化し、シャーシ機能を持たせた後キャビネット6を締結した場合の例である。
[嵌合]
パネルユニットシャーシと後キャビネットとが嵌合を含む手段で締結されていることが好ましい。
図5に薄型ディスプレイ筐体の角部Bの断面模式図を示すが、この例ではパネルユニットシャーシとバックライトシャーシさらには前キャビネットとが一体成形されていて、後キャビネットと嵌合により締結されている。一体成形されたシャーシ8と後キャビネット6とが9と10で示すような嵌合を含む手段で締結されていることが、捩れや反りを防ぐ観点から好ましい。嵌合を含む手段で締結することで、大型ディスプレイの筐体であっても捩れや反りが少なく、強度と剛性を担保することが可能となる。なお嵌合以外の締結手段として、例えば接着剤による締結やネジによる締結もあって良い。ネジ等により締結する箇所は図5の11で示すようにボス形状にすることが好ましい。
[リブ]
薄板で捩れや反りが懸念される部位には、図5の12で示すような強化リブを設けても良い。また成形品の周囲を図5の13で示す肉厚部で補強しても良い。このとき、表面(意匠面)にヒケなど影響が出にくいようにこのような強化部位の構造は図5に示すように表示パネル2の後側までとするなどの工夫も適宜行うことも好ましい。
[加飾]
筐体の意匠性を高めるため、前キャビネットおよび/もしくは後ろキャビネットの外表面側に、さらには前キャビネットおよび/もしくは後ろキャビネットと一体成形されたシャーシの外表面に加飾用のフィルムを貼り付けることも可能である。加飾フィルムの種類としては、ベースフィルム上に、文字や図形、模様等、所望の加飾パターンが形成されてなる転写箔や絵付ラベル、絵付フィルム等があり、成形体の表面に、この加飾フィルムの加飾パターンを転写し、或いは加飾フィルム自体を融着あるいは接着する方法が一般的に知られている。この場合、加飾フィルムと成形体の間に成形体の表面凹凸を埋めるための層が形成されていても良い。加飾フィルムは、後加工として貼り付けても良く、プレス用金型内に予めセットし、繊維強化複合材料と一括成形することも可能である。成形品のすべてに加飾する必要は無く、少なくとも前キャビネットの額縁部、周縁部に加飾することが好ましい。加飾面の樹脂をリッチにすることによって表面の意匠性を高めても良い。
[ランダムマット]
本発明の薄型ディスプレイ筐体を構成する繊維強化複合材料の製造方法に特に制限はないが、強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成されるランダムマットをプレス成形して得ることが好ましい。そのためのランダムマットは、繊維長10〜100mmの強化繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に2次元ランダムに配向しており、下記式(3)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合が30Vol%以上90Vol%未満であり、かつ強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(4)を満たすことが好ましい。
臨界単糸数=600/D (3)
0.7×10/D<N<6×10/D (4)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
ここで「実質的に2次元ランダム」とは、複合材料を構成する強化繊維が、複合材料の接表面内に繊維軸の主配向方向があり、かつその面内において互いに直行する二方向に測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が1.3を超えないことを言う。
ランダムマットの厚さにとくに制限はなく、後述する好ましい方法にて1〜100mm厚みのものを得ることができる。薄肉筐体を提供するという本発明においては2〜50mm厚みとすることが好ましい。
ランダムマット中の強化繊維は不連続であり、平均繊維長が10〜100mm以下であることが好ましい。本発明の筐体を構成する繊維強化複合材料はある程度長い強化繊維を含んで強化機能が発現できる事を特長とするので、ランダムマット中の強化繊維の平均繊維長は、好ましくは15mm以上100mm以下であり、より好ましくは15mm以上80mm以下である。更には20mm以上60mm以下が好ましい。
ランダムマットは、式(3)
臨界単糸数=600/D (3)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合が30Vol%以上90Vol%未満であることを特徴とする。マット中には、強化繊維束(A)以外の強化繊維として、単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束が存在する。
すなわちランダムマットにおいては、平均繊維径に依存して定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束の存在量を30Vol%以上90Vol%未満とする、すなわち強化繊維の開繊程度をコントロールし、特定本数以上の強化繊維からなる強化繊維束と、それ以外の開繊された強化繊維を特定の比率で含むことを特徴とする。
繊維全量に対する強化繊維束(A)の割合が30Vol%未満になると、ランダムマットを成形した際に、表面品位に優れる複合材料が得られるという利点はあるものの、機械物性に優れた繊維強化複合材料が得にくくなる。強化繊維束(A)の割合が90Vol%以上になると、繊維の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉のものが得られない。強化繊維束(A)の割合はより好ましくは30Vol%以上80Vol%未満である。
さらに臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(4)
0.7×10/D<N<6×10/D (4)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たすことを特徴とする。
具体的にはランダムマットを構成する炭素繊維の平均繊維径が5〜7μmの場合、臨界単糸数は86〜120本となり、炭素繊維の平均繊維径が5μmの場合、繊維束中の平均繊維数は280〜2000本の範囲となるが、なかでも600〜1600本であることが好ましい。炭素繊維の平均繊維径が7μmの場合、繊維束中の平均繊維数は142〜1020本の範囲となるが、なかでも300〜800本であることが好ましい。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が0.7×10/D以下の場合、高い繊維体積含有率(Vf)を得る事が困難となる。また強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が6×10/D以上の場合、局部的に厚い部分が生じ、ボイドの原因となりやすい。1mm以下の薄肉な複合材料を得ようとした場合、単純に分繊しただけの繊維を用いたのでは、疎密が大きく、良好な物性が得られない。又、全ての繊維を開繊した場合には、より薄いものを得る事は容易になるが、繊維の交絡が多くなり、繊維体積含有率の高いものが得られない。式(3)で定義される臨界単糸以上の強化繊維束(A)と、単糸の状態又は臨界単糸数未満の強化繊維(B)が同時に存在するランダムマットにより、薄肉であり、かつ得られる物性の高いランダムマットを得る事が可能である。ランダムマットは、各種の厚みとすることが可能であるが、これをプリフォームとして、厚みが0.2〜1mm程度の薄肉の成形品も好適に得ることができる。
ランダムマットは固体の熱可塑性樹脂を含み、繊維強化複合材料を得るためのプリフォームとなる。ランダムマットにおいては、熱可塑性樹脂が、繊維状および/または粒子状で存在することが好ましい。強化繊維と繊維状および/または粒子状の熱可塑性樹脂が混合して存在していることにより、型内で繊維と樹脂を流動させる必要がなく、成形時に熱可塑性樹脂を容易に含浸できることを特徴とする。熱可塑性樹脂は、繊維状又は粒子状で構成されることが好ましい。熱可塑性樹脂の種類を2種以上とすることもでき、また繊維状と粒子状のものを併用してもよい。
繊維状の場合、繊度100〜5000dtexのもの、より好ましくは繊度1000〜2000dtexものがより好ましく、平均繊維長としては0.5〜50mmが好ましく、より好ましくは平均繊維長1〜10mmである。
粒子状の場合、球状、細片状、あるいはペレットのような円柱状が好ましく挙げられる。球状の場合は、真円または楕円の回転体、あるいは卵状ような形状が好ましく挙げられる。球とした場合の好ましい平均粒子径は0.01〜1000μmである。より好ましくは平均粒子径0.1〜900μmものがより好ましく、更に好ましくは平均粒子径1〜800μmものがより好ましい。粒子径分布についてはとくに制限はないが、分布シャープなものがより薄い成形体を得る目的としてはより好ましいが、分級等の操作により所望の粒度分布として用いる事が出来る。
細片状の場合、ペレットのような円柱状や、角柱状、リン片状が好ましい形状として挙げられる。この場合ある程度のアスペクト比を有しても良いが、好ましい長さは上記の繊維状の場合と同程度とする。
[プレス成形]
プレス成形の方法に特に制限はないが、金型に加熱したランダムマットを下記式(5)のチャージ率で25〜100%となるように配置し、プレス成形するのが好ましい。
チャージ率=100×基材面積(mm)/金型キャビティ投影面積(mm) (5)
(ここで金型キャビティ投影面積とは抜き方向への投影面積である)
成形体の水平部に高い物性や意匠性が要求される場合、チャージ率は80〜100%とすることが好ましい。チャージ率が80%未満の場合、水平部で実質的に面内2次元ランダム配向する層(X)が確保できない領域が増えるため、物性発現率や意匠性が低下する傾向にある。チャージ率が100%を超える場合、成形体の端部にバリが発生してしまい、後加工での機械加工などによるトリミングが必要となるため、プロセスが複雑になるだけでなく、材料ロスが発生してしまう。チャージ率80〜100%とすることにより、水平部に強化繊維が実質的に面内2次元配向する層(X)を確保しつつ、材料ロスやトリミングの手間を発生させることなく、軽量な成形体を高い生産性で製造することが可能となる。
金型を熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱してプレス成形した後に、金型と製品を熱可塑性樹脂の軟化点以下に冷却するホットプレスも適用可能であり、ランダムマットを熱可塑樹脂の軟化点以上に加熱し、熱可塑樹脂の軟化点以下の温度を有する金型でプレス成形するコールドプレスも適用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。
1)ランダムマットにおける強化繊維束の分析
強化繊維束(A)のマットの繊維全量に対する割合の求め方は、以下の通りである。
ランダムマットを100mm×100mmに切り出し、厚み(Ta)と重量を測定する(Wa)。
切り出したマットより、繊維束をピンセットで全て取り出し、繊維束を太さ毎に分類する。本実施例では分類は、太さ0.2mm程度単位で分類した。
分類毎に、全ての繊維束の長さ(Li)と重量(Wi)、繊維束数(I)を測定し、記録する。ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定する(Wk)。このとき、1/1000gまで測定可能な天秤を用いる。なお、特に強化繊維を炭素繊維とした場合や、繊維長が短い場合には、繊維束の重量が小さく、測定が困難になる。こういった場合には、分類した繊維束を複数本まとめて重量を測定する。
測定後、以下の計算を行う。使用している強化繊維の繊度(F)より、個々の繊維束の繊維本数(Ni)は次式により求めた。
Ni=Wi/(Li×F)。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は以下の式により求める。
N=ΣNi/I
また、個々の繊維束の体積(Vi)及び、強化繊維束(A)の繊維全体に対する割合(VR)は、使用した強化繊維の繊維比重(ρ)を用いて次式により求めた。
Vi=Wi/ρ
VR=ΣVi/Va×100
ここで、Vaは切り出したマットの体積であり、Va=100×100×Ta
2)成形体における強化繊維束分析
成形体については、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を除去した後、上記のランダムマットにおける方法と同様にして測定した。
3)成形体における繊維配向の分析
複合材料を成形した後、繊維の等方性は、成形板の任意の方向、及びこれと直行する方向を基準とする引張り試験を行い、引張弾性率を測定し、測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比(Eδ)を測定する事で確認した。弾性率の比が1に近いほど、等方性に優れる材料である。
4)成形体に含まれる強化繊維の平均繊維長の分析
得られた成形体に含まれる強化繊維平均繊維長は、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を除去した後、無作為に抽出した強化繊維100本の長さをルーペで1mm単位まで測定して記録し、測定した全ての強化繊維の長さ(Li)から、次式により平均繊維長(La)を求めた。
La=ΣLi/100
[参考例1]
炭素繊維(東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(繊維径7μm、引張強度4000MPa)を、開繊させながら長さ20mmにカットし、炭素繊維の供給量を300g/minでテーパー管内に導入し、テーパー管内で空気を炭素繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、テーパー管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。またマトリックス樹脂として、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 1400dtex)を500g/minでテーパー管内に供給し、炭素繊維と同時に散布することで、平均繊維長20mmの炭素繊維とPA66が混合された、厚み4mm程度のランダムマットを得た。得られたランダムマットの平均繊維長(La)及び強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、平均繊維長(La)は20mm、式(3)で定義される臨界単糸数は86であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は35%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は240であった。
このランダムマットを280℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、厚み0.8mmの成形板を得た。
得られた成形板の繊維体積含有率は約30Vol%であった。
[参考例2]
炭素繊維(東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)IMS60−12K(平均繊維径5μm、繊維幅6mm)を長さ30mmにカットし、炭素繊維の供給量を1000g/minでテーパー管内に導入し、テーパー管内で空気を炭素繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、テーパー管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。またマトリックス樹脂として、平均粒径約1mmに冷凍粉砕したPC樹脂(帝人化成製 パンライト(登録商標) L−1225L)を3000g/minでテーパー管内に供給し、炭素繊維と同時に散布することで、平均繊維長30mmの炭素繊維とPCが混合された、厚み10mm程度のランダムマットを得た。得られたランダムマットの平均繊維長(La)及び強化繊維束(A)の割合と、平均繊維数(N)を調べたところ、平均繊維長は30mm、式(3)で定義される臨界単糸数は120であり、強化繊維束(A)について、マットの繊維全量に対する割合は80%、強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は1000であった。このランダムマットを300℃に加熱したプレス装置にて、2.0MPaにて5分間加熱し、厚み3mmの成形板を得た。
得られた成形板の繊維体積含有率は約20Vol%であった。
[実施例1]
参考例1で得られたランダムマットをプレス成形し、パネルユニットシャーシとバックライトシャーシと前キャビネットを一体成形したシャーシ8、およびシャーシ機能を有する後キャビネット6を成形した。得られたシャーシ8の前側にバックライトユニット4を固定し、さらにその前側に表示パネル2を固定した後、後キャビネット6を締結する構造の薄型ディスプレイ筐体とした。
図6に斜視図、図7に図6の上部中央Aの断面模式図、図8に図6の角部Bの構造模式図を示す。一体成形されたシャーシ8の額縁部8aと周面部8bの内側には肉厚部13を設け、シャーシ全周を補強すると同時に、嵌合構造凹部9とボス部11を設け、後キャビネット6を締結した際に、後キャビネット6に設けられた嵌合構造凸部10と螺子留め用ボス部11によって締結されることによって筐体全体の剛性を上げ、捩れや反りを少なくする構造とした。肉厚部13を設けることで、意匠面8aにヒケや反りなどの影響を少なくするために意匠面8aに角度を設ける工夫を施した構造とした。バックライトユニット4を保持するシャーシの背面部分には平面を保持し、捩れや反りを防ぐためにリブ補強12を設けた。肉厚部13と同様、シャーシ8の額縁部8aは意匠面となるため、ヒケや反りなどの影響を少なくするためにリブ補強12は表示パネル2の後側までで止めた構造とした。表示パネル2を組付ける部分は表示パネル2の厚み分をシャーシ8側で薄くすることでシャーシ8との段差を無くし一体感を持たせる工夫をした。
このようにパネルユニットシャーシとバックライトシャーシと前キャビネットを一体成形したシャーシ8に、シャーシ機能を持たせた後キャビネット6を、嵌合構造を用いて締結することによって、2部品からなる軽量で捩れや反りが少ない、薄型ディスプレイ筐体が製作できた。
[実施例2]
参考例2で得られたランダムマットをプレス成形し、実施例1と同様に図6〜8に示すパネルユニットシャーシとバックライトシャーシと前キャビネットを一体成形したシャーシ8、および後キャビネット6を得て、薄型ディスプレイ筐体を製作した。実施例1と同様に軽量で捩れやソリが少ない、薄型ディスプレイ筐体が製作できた。
1 前キャビネット
1a 額縁部
1b 周面部
2 表示パネル
3 パネルユニットシャーシ
4 バックライトユニット
5 バックライトシャーシ
6 後キャビネット
7 パネルユニットシャーシとバックライトシャーシとの一体成形部品
7a さらに後キャビネットの一部も一体成形した場合
8 前キャビネットとパネルユニットシャーシおよびバックライトシャーシとの一体成形部品
8a 額縁部
8b 周面部
9 勘合凹部
10 勘合凸部
11 ボス部
12 リブ形状
13 肉厚部
A 薄型ディスプレイ筐体の上部中央
B 薄型ディスプレイ筐体の角部

Claims (9)

  1. パネルユニットシャーシ、バックライトシャーシ、および後キャビネットとを含む薄型ディスプレイ筐体であって、パネルユニットシャーシおよび/またはバックライトシャーシが、熱可塑性樹脂中に不連続の強化繊維がランダム配向して存在する繊維強化複合材料からなり、複合材料中に含まれる強化繊維の平均繊維長が5mm超100mm以下を満たす薄型ディスプレイ筐体。
  2. 繊維強化複合材料中に含まれる強化繊維が、下記式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、該成形体中の強化繊維全量に対する割合が5Vol%以上80Vol%未満であり、かつ強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(2)を満たす、請求項1に記載の薄型ディスプレイ筐体。
    臨界単糸数=600/D (1)
    0.7×10/D<N<6×10/D (2)
    (ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
  3. 前キャビネットをさらに有する請求項1または2に記載の薄型ディスプレイ筐体。
  4. パネルユニットシャーシとバックライトシャーシが一体成形部品からなる請求項1〜3のいずれかに記載の薄型ディスプレイ筐体。
  5. 前キャビネット、パネルユニットシャーシおよびバックライトシャーシとが一体成形部品からなる請求項3に記載の薄型ディスプレイ筐体。
  6. 後キャビネットが熱可塑性樹脂と強化繊維とを含む繊維強化複合材料からなる請求項1〜5のいずれかに記載の薄型ディスプレイ筐体。
  7. パネルユニットシャーシと後キャビネットとが嵌合を含む手段で締結されている請求項1〜6のいずれかに記載の薄型ディスプレイ筐体。
  8. 前キャビネットと後キャビネットが嵌合を含む手段で締結されている請求項3〜7のいずれかに記載の薄型ディスプレイ筐体。
  9. 外表面側に加飾層を配置した配置した請求項1〜8のいずれかに記載の薄型ディスプレイ筐体。
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