本発明は、現像装置内に収容されているトナーの濃度を検知するトナー濃度検出部を搭載した画像形成装置による画像形成方法に関する。
本発明者は、トナー粒子表面から外添剤が遊離することを抑える仕組みが必要と考え、検討の末、上記構成のトナーにより、外添剤の遊離による影響をなくすことができた。すなわち、本発明では、トナー母体粒子表面に平均1次粒径が50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を外添剤として用いることで十分なスペーサ効果を発現できる様にした。これは、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させたスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有するシェルを設けたコアシェル構造のトナーを用いることで実現することができた。
本発明者は、大径外添剤と呼ばれるたとえば200〜300nmの大きな粒径の外添剤を添加したトナーを用いたとき、トナー濃度検出部を現像装置に搭載した画像形成装置であっても、濃度不足のトナー画像が形成されることに着目した。そして、現像装置内での撹拌によりトナー粒子表面より大径外添剤が多く遊離してくると、遊離した大径外添剤がキャリア表面に静電的に付着して現像剤の流動性が抑制され、現像剤の撹拌が十分に行えなくなると考えた。
また、大径外添剤がキャリア表面へ多く付着し、キャリア自身の帯電付与性能も低下させていることも考えられた。さらに、混合撹拌が抑制されることで現像剤中のトナーの分散状態にばらつきが生じ、検出装置によりトナー濃度の低い領域が検知されると、現像装置内へトナーが過剰に供給されていることも考えられた。
本発明では、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させたスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有するシェルを設けたコアシェル構造のトナー母体粒子とすることで効果が奏される様になったものと考えられる。すなわち、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂中のスチレンアクリル共重合体成分により、シェルとコア粒子との親和性が増大してコア粒子表面にシェルが均一に付着し易くなる。シェルが均一に付着することでトナー母体粒子表面が平滑化され、外添剤のトナー母体粒子表面への接着力が均一化される。その結果、粒径の大きな外添剤であっても、トナー母体粒子表面に弱い接着力で付着しているものがなく、現像装置内での撹拌によるストレスで外添剤が遊離しなくなったと考えられる。
また、本発明では、トナー母体粒子表面の平滑性が向上することで、トナー粒子表面の凹凸部に小径外添剤が埋没するおそれもなくなり、小径外添剤による流動性や帯電性の向上が安定的に発現される様になるものと考えられた。また、トナー母体粒子表面が平滑化されて凹凸部がなくなれば、たとえば300nmを超える様な外添剤を用いなくてもスペーサ効果を発現できるものと考えられた。この様な推測の下、本発明者は上記コアシェル構造を有するトナー母体粒子に対してスペーサ効果と遊離抑制を両立させる外添剤の粒径について検討した。その結果、平均1次粒径が50〜150nm以下のものであればスペーサ効果と遊離抑制の両立が可能なことを見出したのである。
以下、本発明について詳細に説明する。
最初に、本発明に係る画像形成方法を実施することが可能な画像形成装置を図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係る画像形成方法によりトナー画像を形成することが可能な画像形成装置の一例を示す概略図で、少なくとも、下記の工程を経てプリント物を作成することが可能なものである。すなわち、
(1)感光体を露光して静電潜像を形成する工程、
(2)静電潜像が形成された感光体にトナーを供給してトナー画像を形成する工程、
(3)感光体に形成されたトナー画像を画像支持体に転写する工程、
(4)画像支持体に転写されたトナー画像を定着する工程
を経てプリント物を作成するものである。
図1に示す画像形成装置1は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット18と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。画像形成装置1は、画像形成部10Y〜10Bkによりイエロー色、マゼンタ色、シアン色及び黒色のトナー画像を形成し、各画像形成部で形成したトナー画像を中間転写体ユニット18上に転写、重ね合わせることでフルカラー画像の形成が可能である。
前述の画像形成部10は、感光体11、帯電装置12、現像装置14、1次転写装置15、クリーニング装置16等より構成されている。具体的には、各画像形成部10Y、10M、10C、10Bkにおいて、11Y、11M、11C、11Bkが感光体、14Y、14M、14C、14Bkが現像装置、15Y、15M、15C、15Bkは1次転写装置(1次転写ロール)、16Y、16M、16C、16Bkがクリーニング装置である。図1の画像形成装置は、画像形成部10を構成する現像装置14に収容されているトナーの含有量(トナー濃度)をトナー濃度検出部で測定し、測定結果に基づいて現像装置14内へのトナー供給が行われるものである。本発明で行われるトナー濃度検出方法と、図1に示すタンデム型画像形成装置1による画像形成の詳細な説明は後述する。
次に、本発明で用いられるトナーについて説明する。
本発明で用いられるトナーは、少なくとも、スチレンアクリル共重合体を含有する結着樹脂を含有するコア粒子を樹脂で被覆したコアシェル構造のトナー粒子よりなるものである。そして、コア粒子を被覆する樹脂(シェル用の樹脂)は、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを含有するものである。そして、上記構成のコアシェル構造により、平滑な表面のトナー母体粒子が形成され、この平滑性によりトナー母体粒子表面には個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を良好に付着させることができる。その結果、安定したスペーサ効果を発現するトナーの提供を可能にしている。
すなわち、トナーを構成するスチレンアクリル共重合体樹脂を含有するコア粒子は、その製造方法により表面が平滑なものであると推測される。そして、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させたスチレンアクリル変性ポリエステルを含有する樹脂は、コア粒子表面にムラなく均一に付着し、コア粒子の平滑性を反映したシェルを形成するものと推測される。このことについて詳細に説明する。
最初に、シェルについて説明する。本発明で用いられるトナーを構成するシェルは、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させた構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを含有するものである。すなわち、シェル用樹脂として使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルは、ポリエステルセグメントにスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させた構造のものである。そして、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた構造のポリエステル樹脂をシェル用樹脂として用いることにより、スチレンアクリル共重合体を含有するコア粒子表面へシェルをムラなく均一に付着させることを可能にしている。
本発明では、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた構造を有するスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂をシェル用樹脂に用いることにより、コア粒子表面へシェルをむらなく均一に形成させることを可能にしている。
すなわち、ポリエステル分子鎖に結合しているスチレンアクリル共重合体分子鎖の存在により、シェル用樹脂はスチレンアクリル系共重合体を含有するコア粒子との間に親和性を発現してコア粒子表面のいずれの個所にも同じ確率で付着することが可能になる。その結果、シェル用樹脂がコア粒子表面にむらなく均一な厚さで付着することにより、低温定着性と耐熱保管性の両立を可能にするトナーを実現している。また、シェル用樹脂では、スチレンアクリル共重合体分子の存在によりポリエステル分子鎖間での親和性を低減させ、シェル用樹脂粒子同士の凝集を回避し、お互いに距離がおかれる様になるものと考えられる。つまり、シェル用樹脂粒子の分散性が向上することにより、コア粒子表面へうすく付着することが可能になるものと考えられる。
この様に、本発明ではシェル用樹脂がコア粒子に対して親和性を発現し、シェル用樹脂間に分散性が発現されるので、コア粒子表面にシェルがむらなく均一な厚さに形成され、低温定着性と耐熱保管性の両立を可能にするシェルの形成を可能にした。また、本発明では表面が平滑なトナー粒子が形成されるが、これは平滑なコア粒子表面のいずれの個所にもシェル用樹脂が同じ確率で付着可能なので、均一な厚さのシェルをコア粒子表面へムラなく形成するためと考えられる。
また、本発明では、ポリエステル分子鎖とスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた構造の樹脂を用いることで、ポリエステル樹脂のスチレンアクリル共重合体樹脂に比べて高いガラス転移温度を維持させたまま樹脂の低軟化点化が行えた。すなわち、ポリエステルセグメントにスチレンアクリル共重合体セグメントを導入することにより、ポリエステルの高いガラス転移温度と低い軟化点を分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた構造のスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂をシェル用樹脂に用いることにより、以下の効果も得られる。
なお、本発明で使用されるトナーを構成する結着樹脂におけるシェル用樹脂の含有比率は、結着樹脂全量に対して5質量%から50質量%が好ましく、10質量%から40質量%がより好ましい。シェル用樹脂の含有比率を上記範囲のトナーは、コア粒子表面全体を被覆する十分な量のシェル用樹脂が供給され、コア粒子がシェルで十分被覆されることにより耐熱保管性と低温定着性の両立をより確実に実現させることが可能である。
また、シェル用樹脂におけるスチレンアクリル変性ポリエステルの含有比率は、シェル用樹脂100質量%に対して70質量%から100質量%が好ましく、90質量%から100質量%がより好ましい。シェル用樹脂におけるスチレンアクリル変性ポリエステルの含有比率を上記範囲にすることで、コア粒子とシェルとの親和性を確保し易く、十分な耐熱保管性が得られるとともに、帯電性や耐破砕性を向上させる効果も得られる。
また、平滑な表面のトナー粒子を形成する条件の1つに、コア粒子表面を平滑にしておくことがあるが、コア粒子表面の平滑化は、たとえば、乳化会合法でコア粒子を作製する際、凝集・融着工程における加熱温度や融着時間の制御により実現が可能である。すなわち、加熱温度を高めに、かつ、融着時間を長めに設定して樹脂粒子を凝集させると、凝集樹脂粒子は丸みを帯びた平滑な形状のものになる。また、凝集・融着工程の後に引き続いて反応系の加熱処理を行う熟成工程で、加熱温度を高めに、かつ、処理時間を長めにすることによりコア粒子表面を平滑化することも可能である。
この様にして、本発明で規定する構成のコアシェル構造のトナー粒子は、平滑な表面になり、個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の外添剤粒子が良好に付着して安定したスペーサ効果を発現することができる。
以下、コアシェル構造、シェルに含有されるポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させた構造のスチレンアクリル変性ポリエステル、コア粒子に含有されるスチレンアクリル共重合体について具体的に説明する。
本発明で用いられるコアシェル構造のトナーの構造について説明する。コアシェル構造のトナーは、着色剤やワックス等を含有するガラス転移温度が比較的低めの樹脂粒子(コア)表面にガラス転移温度が比較的高めの樹脂の層(シェル)を被覆した構造のトナー粒子のことをいうもので、図2に示す構造を有するものである。図2に示すトナーTは、いずれも着色剤A1を含有する樹脂A2からなるコアAと、コアA表面に樹脂B3を被覆して形成されたシェルBから構成されるものである。
図2(a)に示すトナーTは、シェルBがコアA表面を完全に被覆した構造のものである。本発明でいうコアシェル構造のトナーは、必ずしも図2(a)に示すシェルBがコアAを完全に被覆した構造のものに限定されず、たとえば、図2(b)に示す様なシェルBがコアAを完全に被覆せずところどころ表面に若干コアAが露出した部分を有するものも含まれる。
コアシェル構造のトナーの断面構造は、たとえば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段により確認が可能である。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)によるトナーの断面構造の観察方法について説明する。トナーの断面構造は透過型電子顕微鏡によるトナーの断面構造の観察は、たとえば、以下の手順で行われる。
最初に、トナーを常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分分散させた後、包埋し、粒径100nm程度のスチレン微粉末に分散させた後、加圧成形を行ってトナーを含有させてなるブロックを作製する。作製したブロックに、必要な場合には四三酸化ルテニウム、または、四三酸化オスミウムを併用して染色処理を行った後、ダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、厚さ80〜200nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製する。
この様にして薄片状にした測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、トナーの断面構造を写真撮影する。このとき、電子顕微鏡の倍率はトナー1個の断面が視野に入る倍率とすることが好ましく、具体的には、約10,000倍程度にすることが好ましい。また、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行うトナーの数は、最低でも10個以上とすることが好ましい。
透過型電子顕微鏡によるトナーの断面構造観察は、当業者の間で通常よく知られている機種で十分に対応可能で、具体的な機種としては、たとえば、「LEM−2000型(トプコン社製)」や「JEM−2000FX(日本電子製)」等が挙げられる。
また、電子顕微鏡観察によりコア表面におけるシェルの被覆率を算出することも可能である。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影された画像情報をたとえば市販の画像処理装置「ルーゼックスF」(ニレコ社製)で演算処理することで算出が可能で、撮影されたトナーのコア領域とシェル領域の面積より算出されるものである。また、シェルの平均被覆率は少なくとも10個以上のトナーの断面構造写真を用いて行う。
本発明でシェル用樹脂として使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルについて詳細に説明する。ここで、「スチレンアクリル変性ポリエステル」とは、ポリエステル分子鎖(ポリエステルセグメントともいう)に、スチレンアクリル共重合分子鎖(スチレンアクリル共重合体セグメントともいう)を分子結合させた構造のポリエステル分子のことである。本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルは、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させた分子構造を有するもので、ポリエステルセグメントにスチレンアクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体である。
本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルは、ポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させた分子構造を有するものであれば、特に限定されるものではない。その中でもスチレンアクリル共重合体セグメントの含有割合が5質量%以上30質量%以下のものが好ましい。ここで、スチレンアクリル変性ポリエステル分子中に占めるスチレンアクリル共重合体セグメントの含有割合は「スチレンアクリル変性量」とも呼ばれ、スチレンアクリル変性ポリエステル分子に占めるスチレンアクリル共重合体セグメントの比率(質量比)である。具体的には、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を合成する際に使用される重合性単量体全質量に対するスチレンアクリル共重合体形成に使用される重合性単量体質量の比をいうものである。
「スチレンアクリル変性量」を上記範囲とすることにより、上述したシェルの形成がより確実に行える様になる。すなわち、スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂とコア粒子の親和性が適度に制御されて、均一で薄い膜厚のシェルの形成が行い易くなり、その結果、低温定着性と耐熱保管性を両立するコアシェル構造のトナーの作製がより安定的に行える様になる。
本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルは、分子構造がポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントの2種類のホモポリマーセグメントを有するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、ポリエステルセグメント末端にスチレンアクリル共重合体セグメントを結合させたブロック共重合体構造のものや、ポリエステルセグメントにスチレンアクリル共重合体セグメントの分岐構造を形成したグラフト共重合体構造のものが挙げられる。
その中でも、ポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させたブロック共重合体構造のものは、ポリエステル相とスチレンアクリル共重合体相が独立した相分離構造のシェルを形成し易く、機能分離型のシェルを形成する上で好ましい。すなわち、ポリエステル相による高いガラス転移温度と軟化点温度による耐熱付与性能とスチレンアクリル共重合体相によるコア粒子との接着強度の向上を効率よく発現させることができる。
本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルの形成方法は、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能なものであればよく、特に限定されるものではない。スチレンアクリル変性ポリエステルの具体的な形成方法としては、たとえば、以下に示す方法が挙げられる。
(1)ポリエステルセグメントを予め重合しておき、当該ポリエステルセグメントの存在下でスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する重合反応を行ってスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する方法
この方法では、先ず、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させてポリエステルセグメントを形成する。次に、ポリエステルセグメントの存在下で、スチレン系単量体やアクリル酸エステル系単量体といったビニル系単量体を重合反応させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。このとき、スチレン系単量体やアクリル酸エステル系単量体の他に、ポリエステルセグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)と反応可能な部位とビニル系単量体と反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物がポリエステルセグメント中のカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)と反応することにより、ポリエステルセグメントは当該化合物が結合した構造のものになる。そして、前記化合物を結合させたポリエステルセグメントの存在下で、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体をラジカル重合等の付加反応させることにより、スチレンアクリル共重合体セグメントが形成される。このとき、ポリエステルセグメントに結合した前記化合物のビニル系単量体との反応可能な部位を介して、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
すなわち、(1)の方法は「ポリエステル分子鎖の存在下で、少なくともスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を重合反応させて、スチレンアクリル共重合体分子鎖を形成する」方法に該当するものである。なお、(1)の方法には、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を反応系へ投入する前に前記化合物を投入してポリエステルと結合させる方法や、前記化合物を前述のビニル系単量体をいっしょに投入して反応を行う方法がある。また、(1)の方法は、後述する様に、スチレンアクリル共重合体分子鎖をポリエステル分子鎖末端に分子結合させたブロック共重合体構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する際に好ましく用いられる方法である。
(2)スチレンアクリル共重合体セグメントを予め重合しておき、当該スチレンアクリル共重合体セグメントの存在下でポリエステルセグメントを形成する重合反応を行ってスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する方法
この方法では、先ず、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体に代表されるビニル系単量体を付加反応させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。次に、スチレンアクリル共重合体セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールを重合反応させてポリエステルセグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールの他に、スチレンアクリル共重合体セグメントと反応可能な部位と多価カルボン酸や多価アルコールと反応可能な部位を有する化合物も使用する。すなわち、この化合物をスチレンアクリル共重合体セグメントと反応させることにより、スチレンアクリル共重合体セグメントは前記化合物を結合させた構造のものになる。そして、前記化合物を結合させたスチレンアクリル共重合体セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させることにより、ポリエステルセグメントが形成される。このとき、スチレンアクリル共重合体セグメントに結合した前記化合物のカルボン酸あるいはアルコールと反応可能な部位を介して、スチレンアクリル共重合体セグメントとポリエステルセグメントが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
(3)ポリエステルセグメント及びスチレンアクリル共重合体セグメントをそれぞれ予め形成しておき、これらを結合させてスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する方法
この方法では、先ず、多価カルボン酸と多価アルコールを縮合反応させてポリエステルセグメントを形成する。また、ポリエステルセグメントを形成する反応系とは別に、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を付加重合させてスチレンアクリル共重合体セグメントを形成する。次に、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが共存する系を形成しておき、そこへポリエステルセグメントと結合可能な部位とスチレンアクリル共重合体セグメントと結合可能な部位を有する化合物を投入する。そして、当該化合物を介して、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが分子結合した構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成することができる。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法はポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を結合させた構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを形成し易いことや生産工程を簡素化できるので好ましい。(1)の方法は、ポリエステルセグメントを予め形成してから前記化合物を投入してポリエステルセグメントへ結合させるので、当該化合物はポリエステルセグメント末端に結合する確率が非常に高いものになる。したがって、本発明で規定する構造のスチレンアクリル変性ポリエステルを確実に形成することができるので好ましい。
上記(1)〜(3)の形成方法では、スチレンアクリル変性ポリエステルの形成に使用する重合性単量体等の化合物を均一に混合させる等のため、加熱処理を施すことが好ましい。具体的には、80℃から120℃が好ましく、より好ましくは85℃から115℃、90℃から110℃が特に好ましい。上記温度範囲の下で加熱することにより、ポリエステル分子鎖やスチレン系単量体、アクリル酸エステル系単量体等の化合物が混合し易くなり、スチレンアクリル変性ポリエステルを形成する上で好ましい。
本発明で用いられるスチレンアクリル変性ポリエステルを構成するポリエステルセグメントは、単独のポリエステル分子鎖のときのガラス転移温度が40℃以上70℃以下のものが好ましく、50℃以上65℃以下のものがより好ましい。ガラス転移温度が40℃以上であることにより、定着時にポリエステルセグメント同士が適度に凝集して、ホットオフセット現象を発生させることのないトナー画像を形成することができる。また、ガラス転移温度が70℃以下であることにより、定着時におけるスチレンアクリル共重合体樹脂の溶融を阻害することがなく、従来よりも低い温度でのトナー画像を溶融させる低温定着のトナーを作製する上で好ましいものである。
また、スチレンアクリル変性ポリエステルを構成するポリエステルセグメントは、単独のポリエステル分子鎖のときの重量平均分子量(Mw)が1,500以上60,000以下のものが好ましく、3,000以上40,000以下のものがより好ましい。重量平均分子量を1,500以上とすることで、トナー樹脂全体に適度な凝集力を付与させることができ、定着時にホットオフセット現象を発生させることのないトナー画像を形成することができる。また、重量平均分子量を60,000以下とすることで、短時間の加熱で十分な溶融が行えるとともに、冷却により強固な定着画像を形成することができる。したがって、低温定着によるトナー画像形成を行う上で好ましいものにしている。
本発明で用いられるスチレンアクリル変性ポリエステルを構成するスチレンアクリル共重合体セグメントは、単独のスチレンアクリル共重合体分子鎖のときのガラス転移温度(Tg)が、後述するコア粒子と同様、35℃以上60℃以下のものが好ましく、30℃以上50℃以下のものがより好ましい。また、スチレンアクリル共重合体セグメントは、単独のスチレンアクリル共重合体分子鎖のときの重量平均分子量(Mw)が後述するコア粒子と同様、2,000〜100,000が好ましい。
上記(1)〜(3)の形成方法によりスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する場合、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させる化合物が用いられている。この化合物は、上記(1)の形成方法では「ポリエステルセグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)と反応可能な部位とビニル系単量体と反応可能な部位を有する化合物」が該当するものである。また、上記(2)の形成方法では「多価カルボン酸と多価アルコールの他に、スチレンアクリル共重合体セグメントと反応可能な部位と多価カルボン酸や多価アルコールと反応可能な部位を有する化合物」が該当するものである。さらに、上記(3)の形成方法では「ポリエステルセグメントと結合可能な部位とスチレンアクリル共重合体セグメントと結合可能な部位を有する化合物」に該当するものである。
この化合物は、ポリエステルセグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)あるいはヒドロキシ基(−OH)等と縮合反応が行える官能基と、スチレンアクリル共重合体セグメントと付加反応が行える炭素−炭素二重結合等の不飽和構造を有するものである。この様な化合物の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシ基を有するビニル系化合物や無水マレイン酸等のビニル系のカルボン酸無水物等がある。
ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させる化合物の使用量は、スチレンアクリル変性ポリエステルの形成に使用される化合物の総和を100質量%とすると、0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。ここで、スチレンアクリル変性ポリエステル形成に使用する化合物は、ポリエステルセグメント、スチレン系単量体、アクリル酸エステル系単量体、及び、ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させる化合物である。
また、本発明で用いられるスチレンアクリル変性ポリエステルを形成する際のスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体の使用量は、前述した総和を100質量%とすると、合計で5質量%以上30質量%以下とするのが好ましい。すなわち、前述したスチレンアクリル変性ポリエステル分子に占めるスチレンアクリル共重合体セグメントの比率(質量比)と一致するものである。
本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルを構成するポリエステルセグメントは、公知の多価カルボン酸と多価アルコールを触媒の存在下で重縮合反応させることにより形成するものである。ポリエステルセグメントは、原料として使用される前述の多価カルボン酸や多価アルコールの誘導体を用いることも可能で、多価カルボン酸誘導体には多価カルボン酸のアルキルエステルや酸無水物、酸塩化物等がある。また、多価アルコール誘導体には、多価アルコールのエステル化合物やヒドロキシカルボン酸等がある。
以下、ポリエステルセグメントの形成に使用可能な多価カルボン酸と多価アルコールの具体例について説明する。先ず、多価カルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸と呼ばれる公知の2価カルボン酸や3価以上のカルボン酸が挙げられる。2価のカルボン酸の具体例としては、たとえば、
シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸
フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸
p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸
ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等がある。
また、3価以上のカルボン酸の具体例としては、たとえば、
トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等がある。
上記多価カルボン酸の中でも、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸等の分子構造中に炭素−炭素の不飽和結合を有する脂肪族不飽和ジカルボン酸を用いてポリエステルセグメントを形成することにより、以下の様な効果が奏されるものと考えられるので好ましい。
すなわち、シェルを形成する際、均一な厚さを有し、表面が平滑な薄層のシェルをより確実に形成することができるので、耐熱保管性と低温定着性を両立させたトナーをより確実に作製することが可能になる。これは、ポリエステル分子中に炭素−炭素の不飽和結合が存在することで、ポリエステル樹脂粒子がスチレンアクリル樹脂を含有するコア粒子表面へ付着し易くなる環境が形成されるためと考えられる。
これは、ポリエステル樹脂は一般に疎水性の性質を有するので、後述する乳化会合法でトナー粒子を製造する際、コア粒子が存在する水系媒体中ではポリエステル樹脂粒子同士が凝集して、コア粒子表面への付着がほとんど行えない。しかしながら、ポリエステル分子中に炭素−炭素の不飽和結合が存在することにより、不飽和結合間の極性の作用でポリエステル樹脂に親水性が付与され、ポリエステル樹脂粒子同士の凝集が回避されてコア粒子表面への付着が行える様になるものと考えられる。また、ポリエステル樹脂に親水性が付与されることにより、ポリエステル分子鎖が水系媒体に向かって配向し易い形態を採り易くなり、水系媒体に配向した形態でポリエステル樹脂粒子がコア粒子表面へ付着することも考えられる。その結果、ポリエステル樹脂粒子をコア粒子表面へ均一な厚さで緻密に付着させることが可能になり、コア粒子表面にシェルの薄層を形成することができるものと推測される。さらに、シェルのスチレンアクリル変性ポリエステルを構成するスチレンアクリル共重合体セグメントとコア粒子を構成するスチレンアクリル共重合体樹脂の間での親和性により、シェルのコア粒子表面への配向を促進させるものと考えられる。
この様に、ポリエステル分子中に炭素−炭素の不飽和結合を存在させることにより、ポリエステル分子にある程度の親水性が付与され、ポリエステル樹脂粒子がコア粒子表面へ付着し易い環境が形成されるので、シェルの薄層形成が促進されるものと推測される。
また、前述の「ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させるための化合物」を用意せずにポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントが分子結合した構造を形成することができるメリットがある。したがって、スチレンアクリル変性ポリエステルを作製する際に必要な化合物の種類を少なくして、樹脂の生産工程を簡素化させて生産性向上に寄与するので好ましいものである。
この様な脂肪族不飽和ジカルボン酸は、下記一般式(A)で表される構造のものが好ましい。すなわち、
一般式(A);HOOC−(CR1=CR2)n−COOH
上記式中のR1とR2は、水素原子、メチル基またはエチル基であり、互いに同じものであっても異なるものであってもよい。また、nは1または2の整数である。
また、ポリエステルセグメント形成に使用される全多価カルボン酸に対する一般式(A)で表される脂肪族不飽和地カルボン酸の割合が25モル%以上75モル%以下のものが好ましく、30モル%以上60モル%以下のものがより好ましい。
次に、多価アルコールの具体例について説明する。上記ポリエステルセグメントの形成に使用可能な多価アルコールとしては、公知の2価アルコールや3価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールの具体例としては、たとえば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等がある。
また、3価以上のアルコールの具体例としては、たとえば、
グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン等がある。
また、ポリエステルセグメントは、触媒の存在下で多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合反応させて形成するが、触媒は公知のものを使用することが可能である。
次に、スチレンアクリル共重合体セグメントを形成する化合物について説明する。本発明では、シェル用樹脂を後述するコア粒子に対して親和性を発現して両者を強固に結合させるため、また、コア粒子表面にシェルをむらなく均一な厚さに形成するため、シェル用の樹脂にスチレンアクリル変性ポリエステルを用いるものである。
本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステルを構成するポリエステルセグメントは、少なくとも、スチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体を付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン系単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいうアクリル酸エステル系単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するビニル系エステル化合物を含むものである。
以下に、スチレンアクリル共重合体セグメントの形成が可能なスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレンアクリル共重合体セグメントの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
先ず、スチレン系単量体の具体例としては、たとえば、以下のものがある。すなわち、
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等。
また、アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、以下に示すアクリル酸エステル単量体とメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体には、たとえば、以下のものが挙げられる。すなわち、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等。
メタクリル酸エステル単量体には、たとえば、以下のものが挙げられる。すなわち、
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等。
これらのアクリル酸エステル単量体あるいはメタクリル酸エステル単量体は、1種類単独で使用することができる他に、2種以上を組み合わせて使用することも可能である。すなわち、スチレン単量体と2種類以上のアクリル酸エステル単量体を用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種類以上のメタクリル酸エステル単量体を用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
また、スチレンアクリル共重合体セグメントを形成する際、これらスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体の相対的な比率は、下記に示すFOX式で算出されるガラス転移温度(Tg)が35℃から60℃の範囲、より好ましくは30℃から50℃の範囲となる様に調整することが好ましい。
FOX式:1/Tg=Σ(Wx/Tgx)
上記式中のWxは単量体xの質量分率、Tgxは単量体xの単独重合体のガラス転移温度を表すものである。なお、ここでは、前述の「ポリエステルセグメントとスチレンアクリル共重合体セグメントを分子結合させた構造を形成する化合物」はガラス転移温度を算出する際には使用しないものとする。
次に、本発明で使用されるスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有するシェル用樹脂の物性について説明する。本発明で用いられるシェル用樹脂は、低温定着性や定着分離性等の定着性の観点から、また、耐熱保管性や耐ブロッキング性等の耐熱性の観点から、ガラス転移温度は50℃から70℃が好ましく、50℃から65℃がより好ましい。また、同様の観点から、軟化点温度は80℃から110℃が好ましい。
シェル用樹脂のガラス転移温度は、たとえば、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82で規定される方法(DSC法)により測定が可能である。
また、シェル用樹脂の軟化点温度の測定は、たとえば、次の手順で行う。先ず、20℃±1℃、50%RH±5%RHの環境下で、シェル用樹脂1.1gをシャーレに入れて平らにならし、12時間以上放置する。次に、市販の成形機「SSP−10A(島津製作所社製)」で3.82×107Pa(3820kg/cm2)の加圧を30秒間行って、直径1cmの円柱型の成形サンプルを作成する。
次に、この成形サンプルを24℃±5℃、50%RH±20%RHの環境下で、市販のフローテスター「CFT−500D(島津製作所社製)」により、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より直径1cmのピストンを用いて予熱終了時より押し出しを行う。このときの条件を、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分とし、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetをシェル用樹脂の軟化点温度とする。
次に、コア粒子に含有されるスチレンアクリル共重合体について説明する。本発明でいうスチレンアクリル共重合体は、少なくとも後述するスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体とをラジカル重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン系単量体には、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれるものである。また、ここでいうアクリル酸エステル系単量体には、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物の他、メタクリル酸エステル誘導体等、公知の側鎖や官能基を有するビニル系エステル化合物も含まれる。
以下に、スチレンアクリル共重合体を形成することが可能なスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるトナーのコア粒子を形成するのに使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
先ず、スチレン系単量体には、たとえば、以下のものが挙げられる。すなわち、
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等。
また、アクリル酸エステル系単量体は、以下に示すアクリル酸エステル単量体とメタクリル酸エステル単量体が代表的なもので、アクリル酸エステル単量体には、たとえば、以下のものが挙げられる。すなわち、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等。
メタクリル酸エステル単量体には、たとえば、以下のものが挙げられる。すなわち、
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等。
これらのアクリル酸エステル単量体あるいはメタクリル酸エステル単量体は、1種類単独で使用することができる他に、2種以上を組み合わせて使用することも可能である。すなわち、スチレン単量体と2種類以上のアクリル酸エステル単量体を用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種類以上のメタクリル酸エステル単量体を用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
また、スチレンアクリル共重合体には、上述したスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体のみで形成された共重合体の他に、これらスチレン系単量体とアクリル酸エステル系単量体に加えて一般のビニル系単量体を併用して形成されるものもある。以下に本発明でいうスチレンアクリル共重合体を形成する際に併用可能なビニル系単量体を例示するが、併用可能なビニル系単量体は以下に示すものに限定されるものではない。
(1)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(2)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(3)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(4)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(5)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(6)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等
また、以下に示す多官能性ビニル類を使用して、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。多官能性ビニル類の具体例を以下に示す。すなわち、
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等
さらに、以下に示す様な側鎖にイオン性解離基を有するビニル系単量体を使用することも可能であり、イオン性解離基の具体例としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。以下にこれらイオン性解離基を有するビニル系単量体の具体例を示す。
先ず、カルボキシル基を有するビニル系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等がある。
また、スルホン酸基を有するビニル系単量体の具体例としては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等がある。さらに、リン酸基を有するビニル系単量体の具体例としては、たとえば、アシドホスホオキシエチルメタクリレートや3−クロロ−2−アシドホスホオキシプロピルメタクリレート等がある。
本発明に使用可能なスチレンアクリル系共重合体を形成する場合、スチレン系単量体及びアクリル酸エステル系単量体の含有量は特に限定されるものではなく、結着樹脂の軟化点温度やガラス転移温度を調整する観点から適宜調整することが可能である。具体的には、スチレン単量体の含有量は、ラジカル重合性単量体全体に対し40〜95質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましいとされる。また、アクリル酸エステル単量体の含有量は、ラジカル重合性単量体全体に対し5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましいとされる。
ラジカル重合により形成されるスチレンアクリル系共重合体のガラス転移点温度は30℃から60℃であることが好ましく、より好ましくは30℃から50℃である。また、軟化点温度は80℃から110℃であることが好ましく、より好ましくは90℃から100℃である。ガラス転移点温度及び軟化点温度が上記の範囲であることによって、良好な定着性が得られる。
また、ラジカル重合により形成されるスチレンアクリル系共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で2,000〜100,000が好ましい。なお、トナーを構成する樹脂の重量平均分子量Mwは公知の分子量測定方法により算出が可能である。以下に、分子量測定方法の代表例の1つであるテトラヒドロフラン(THF)をカラム溶媒として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)による分子量測定手順を説明する。
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理したものを使用)を1ml添加し、室温下にてマグネチックスターラを用いて撹拌処理して充分に溶解させる。次に、ポアサイズ0.45μm〜0.50μmのメンブランフィルタで処理した後、GPC装置に注入する。
GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。たとえば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組み合せ等がある。
検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
分子量測定は、たとえば、下記の測定条件の下で行うことができる。
(測定条件)
装置:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:GMHXLx2、G2000HXLx1
検出器:RI及びUVの少なくともいずれか一方
溶出液流速:1.0ml/分
試料濃度:0.01g/20ml
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製
以上の様に、本発明に係るトナーは、スチレンアクリル共重合体樹脂を含有するコア粒子表面を、ポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた変性ポリエステル樹脂で被覆したコアシェル構造のトナーである。なお、本発明に係るトナーを製造することが可能なトナー製造方法については後で説明する。
次に、本発明に係るトナーに外添剤として用いられる個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の単分散球状粒子について説明する。本発明では、大径外添剤としては粒径が小さな部類に属する個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子がトナー粒子表面で安定したスペーサ効果を発現するものであることを見出した。
従来技術では安定したスペーサ効果を発現させる上で、たとえば300nmを超える大きさの外添剤が必要だったが、本発明ではトナー母体粒子表面が平滑化されているので上記粒径の外添剤によりスペーサ効果の発現が可能になったものと考えられる。そして、本発明では個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を用いることでスペーサ効果と遊離抑制の両立を可能にしている。これは、外添剤の粒径が小さくなるほどトナー母体粒子表面への付着が強固になるので、耐久性が向上し、たとえ現像装置内で撹拌が繰り返し行われても、大径外添剤が遊離しにくくなっているためと考えられる。
当該単分散球状粒子によるスペーサ効果の発現により、現像装置内でトナーを長期にわたり撹拌してもトナー粒子同士の表面接触が回避され、個数平均1次粒径5nmから50nmの金属酸化物粒子等の小径外添剤粒子の埋没や脱離を防止している。したがって、現像装置内でのトナー撹拌を長期間行っても、小径外添剤がトナー粒子表面へ埋没あるいは脱離するおそれがないので、帯電性や流動性を安定的に発現するとともに脱離した外添剤によるキャリアや感光体への汚染が発生しない画像形成を可能にする。
この様に、個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を大径外添剤として使用することにより、大径外添剤がスペーサ効果の発現と遊離抑制を両立するトナーを実現し、安定したトナー画像形成を行える様にしている。また、本発明ではトナー母体粒子表面が凹凸のないほど平滑化されていることも、個数平均1次粒径が5nmから50nmの小径外添剤の強固な接着を促進しているものと考えられる。
本発明で使用される個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の外添剤粒子が単分散球状粒子であることは、後述する形状係数SF−1と粒径分布で規定することにより説明が可能である。個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の上記外添剤粒子として好ましいものとしては、たとえば、形状係数SF−1が100以上120以下で、粒径分布がトナー粒子に含有される上記外添剤粒子の90%以上が個数平均1次粒径の±10%以下の粒径であるものが挙げられる。なお、外添剤粒子の形状係数SF−1と粒径分布の算出方法については後で詳細に説明する。
次に、本発明で使用される前記単分散球状粒子が「球状粒子」であることを規定するために用いられる「形状係数SF−1」について説明する。本発明で使用される個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の外添剤粒子は、形状係数SF−1の値が好ましくは100以上120以下、より好ましくは100以上110以下となるものである。
ここで、「形状係数SF−1」は、本発明でいう「球状」、すなわち、当該外添剤粒子の「丸さの度合」を示す指数であり、下記式で定義されるものである。形状係数SF−1は、その値が100のとき当該外添剤粒子の形状が真球であることを意味するものであり、値が100よりも大きな値になるにしたがって丸みを帯びた形状から不定形な形状になっていくことを意味する。
SF−1=〔{(粒子の最大径)2/(粒子の投影面積)}×(π/4)〕×100
なお、式中の「最大径」とは、粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだときに、当該平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいうものである。
粒子の形状係数SF−1は、後述する上記粒子の個数平均粒径の測定と同様、走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用いて算出することが可能である。すなわち、走査型電子顕微鏡により30,000倍の倍率でトナーを写真撮影し、得られた写真画像をスキャナにより取り込み、画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析を行って算出する。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する外添剤粒子を2値化処理し、100個の外添剤粒子についてSF−1を算出して、その平均値を外添剤粒子の形状係数SF−1としている。また、具体的な走査型電子顕微鏡としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等が挙げられる。
次に、本発明で使用される外添剤粒子が「単分散の粒子」であることを説明するための手段の1つである「外添剤の粒径分布」について説明する。本発明で使用される個数平均1次粒径が50nm以上150nm以下の外添剤粒子は、トナー粒子に含有されている90%以上の当該外添剤粒子の粒径が上記個数平均1次粒径の値の±10%以下の範囲内であることが好ましいものである。
ここで、外添剤粒子の「単分散性」、すなわち、「外添剤粒子の粒径分布がシャープであること」は、トナー粒子に添加されている外添剤粒子の粒径を公知の方法で測定したとき、測定した外添剤粒子のうちの一定比率以上の粒子が上記個数平均1次粒径をピーク値としてこのピーク値を中心に特定範囲内の粒径を有するものであることに基づくものである。
本発明で使用される外添剤粒子の好ましい粒径分布としては、たとえば、トナー粒子に添加されている外添剤粒子の粒径を測定したとき、上記個数平均1次粒径の値をピーク値として、測定した外添剤粒子の90%以上の粒子が上記ピーク値の±10%以下の範囲内の粒径を有するものであることが挙げられる。
ここで、「測定した外添剤粒子の90%以上の粒子の粒径が、ピーク値である個数平均1次粒径の±10%以下の範囲内の値である」とは、具体的には以下の様な意味である。すなわち、「外添剤の個数平均1次粒径がたとえば100nmのとき、粒径分布の測定に用いた外添剤粒子の90%以上の粒子が、90nm以上110nm以下の範囲にある粒径を有するもの」であることを意味する。この様に、本発明で使用される外添剤粒子の「単分散性」を具体的に表す方法としては、上記の様に定義される「粒径分布」により規定が可能である。
なお、本発明で用いられるトナーに使用可能な外添剤粒子の粒径分布の測定は、前述する上記外添剤粒子の形状係数SF−1の測定と同様、市販の走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用いて行うことができる。具体的には、走査型電子顕微鏡により30,000倍の倍率でトナーを写真撮影し、得られた写真画像をスキャナで取り込み、取り込んだ写真画像を市販の画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析する。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する外添剤粒子を2値化処理し、100個の外添剤粒子の粒径を算出する。この様に算出した各外添剤粒子の粒径値より個数平均1次粒径を算出し、得られた個数平均1次粒径と各外添剤粒子粒径を比較することにより、外添剤粒子の粒径分布を算出する。この様な手順により、トナーに使用されている外添剤粒子の個数平均1次粒径と粒径分布を測定することができる。なお、走査型電子顕微鏡の具体例としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等がある。
本発明で用いられるトナーに外添剤として使用される個数平均1次粒径の単分散球状粒子は、たとえば、ゾルゲル法により得られた金属酸化物粒子を疎水化処理剤で疎水化処理して作製することができる。また、前記単分散球状粒子の個数平均1次粒径は、外添剤粒子を作製するときの反応条件や原料比率等により制御することが可能である。以下、本発明で使用可能な外添剤粒子の作製方法について、ゾルゲル法によるシリカ粒子の作製を参考に説明する。
ゾルゲル法によるシリカ粒子の作製は、たとえばアルコキシシラン化合物やフェノキシシラン化合物を加水分解や縮重合反応させて行うもので、一般にStoeber法と呼ばれるものである。以下、ゾルゲル法によるシリカ粒子の製造方法を具体的に説明する。
先ず、触媒を添加して加温したアルコキシシラン化合物等を、水及び有機溶媒の存在下に滴下、撹拌することによりシリカゾル懸濁液を作製する。そして、このシリカゾル懸濁液を遠心分離して、湿潤シリカゲル、有機溶媒及び水に分離する。次に、分離した湿潤シリカゲルに有機溶媒を添加して再度シリカゾルの状態にしてから、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を行う。疎水化処理は、前述の方法の他、シリカゾルを乾燥させた後、疎水化処理剤を添加する方法もある。そして、疎水化処理を行った後、有機溶媒を除去することで、シリカ微粒子を作製することができる。また、作製したシリカ微粒子に対して再度疎水化処理を行うことも可能である。
また、シリカゾルへ疎水化処理剤を添加する方法には、上述の方法の他に、乾式法や湿式法、混合法等がある。乾燥法は、気相中に浮遊させたシリカゾルへ疎水化処理剤あるいは疎水化処理剤含有溶液を噴霧するスプレードライ法が代表的なものである。また、湿式法は、疎水化処理剤含有溶液中にシリカゾルを浸漬させる方法である。さらに、混合法は、疎水化処理剤とシリカゾルとを混合機で混合して疎水化処理を行う方法である。
また、疎水化処理剤としては、たとえば、シラン化合物、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を使用することが可能である。このうち、疎水化処理剤として使用されるシラン化合物は、下記式で表されるもので、主に水溶性のものが用いられる。すなわち、
式: RaSiX4−a
式中、aは0から3の整数で、Rは水素原子、アルキル基やアルケニル基等の有機基、Xは塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基等の加水分解性の基を表すものである。
上記式で表されるシラン化合物には、たとえば、クロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、特殊シリル化剤等がある。具体的には、
(1)クロロシラン化合物
メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等
(2)アルコキシシラン化合物
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等
(3)シラザン化合物、特殊シリル化剤
ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア等。
上記シラン化合物の中でも、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
また、疎水化処理剤として使用可能なシリコーンオイルには、たとえば、以下に示す環状化合物やオルガノシロキサンオリゴマー等の直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサン等がある。具体的な環状化合物の例としては、たとえば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等がある。
また、側鎖または片末端、両末端、側鎖片末端および側鎖両末端等に変性基を導入して反応性を向上させた変性シリコーンオイルを使用することも可能である。変性基には、たとえば、アルコキシ基、カルボキシ基、カルビノール基、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基等があり、カルボキシ基の中には高級脂肪酸基もある。また、アミノ基/アルコキシ基等、2種類以上の変性基を有するシリコーンオイルを使用することも可能である。
また、ジメチルシリコーンオイルとこれらの変性シリコーンオイル、さらには他の疎水化処理剤とを併用することも可能である。併用可能な他の疎水化処理剤としては、たとえば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等がある。
なお、シリコーンオイルの動粘度は、シリカ粒子表面に均一付着させ易くすることから、5cm2/s以下が好ましく、より好ましくは3cm2/s以下であり、2cm2/s以下が特に好ましいものである。
以下、上述したゾルゲル法によるシリカ粒子作製の具体例として、本発明で規定する個数平均粒径の範囲から外れるものであるが、個数平均1次粒径が30nmのシリカ粒子をゾルゲル法で作製する手順を以下に示す。このシリカ粒子は、後述する様に、小径外添剤として使用可能なものである。
撹拌装置、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、
メタノール 625質量部
水 40質量部
28質量%アンモニア水 50質量部
を投入してアンモニア水を含有したメタノール−水混合溶媒を作製する。
当該混合溶媒の温度を35℃に調整して、撹拌を行いながら、
テトラメトキシシラン 800質量部
5.4質量%アンモニア水 420質量部
をそれぞれ前記混合溶媒中に滴下する。これら化合物の滴下開始は同時に行い、テトラメトキシシランを6時間で滴下し、5.4質量%アンモニア水を5時間で滴下する。
テトラメトキシシランの滴下終了後も撹拌を0.5時間継続させ、35℃の温度下で加水分解反応を進行させた後、遠心分離処理等の前記(2)の操作を経て、メタノール−水混合溶媒中にシリカ微粒子が分散してなるシリカ微粒子分散液を作製する。
次に、上記シリカ微粒子分散液中に、ヘキサメチルジシラザンをシリカ微粒子(SiO2)1モルに対して3モル添加した後、60℃に加熱して3時間の反応処理を行うことによりシリカ微粒子の疎水化処理を行う。3時間の反応処理を行った後、メタノール−水混合溶媒を減圧下で分散液より留去することにより個数平均1次粒径が30nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
また、上記個数平均1次粒径30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を30℃とし、テトラメトキシシランの滴下時間を3.5時間に変更した他は、同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
また、上記個数平均1次粒径30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記テトラメトキシシランの添加量を1160質量部に、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を1.0時間に変更する。その他は、同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径100nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
さらに、上記個数平均1次粒径30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を40℃、テトラメトキシシランの添加量を1260質量部、テトラメトキシシランの滴下時間を7時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径120nmの疎水性シリカ粒子が得られる。
なお、本発明に使用可能な外添剤は、カップリング剤等の公知の処理剤による表面処理が施されているものが好ましく、表面処理剤の具体例としては、たとえば、以下のものがある。すなわち、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系オイル、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイルアミノ基及び第4級アンモニウム塩の少なくともいずれか一方を含有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
本発明に係るトナーに外添剤として使用される単分散球状粒子についてさらに説明する。本発明に係るトナーに外添剤として使用される平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、平均炭素量が1.0質量%を超え4.0質量%以下のものが好ましく、1.5質量%〜2.5質量%の範囲のものがより好ましい。この平均炭素量は、疎水化処理剤を用いて疎水化処理を行うことにより付与することができる。
平均炭素量が上記範囲の単分散球状粒子を外添したトナーは、低温低湿環境及び高温高湿環境のいずれの環境下で優れた帯電立ち上がり性能と帯電安定性を発現することができる。すなわち、平均炭素量が上記範囲よりも少ない場合、特に高温高湿環境下での画像形成時に、帯電立ち上がり性能や帯電安定性の良好な発現が困難になることがあり、トナー飛散やカブリ発生を防止する観点から、平均炭素量を上記範囲にすることが好ましい。また、平均炭素量が上記範囲よりも過剰な場合、特に低温低湿環境下での画像形成時に、良好な帯電立ち上がり性能の発現が困難になることがあり、これに起因するトナー飛散や感光体汚染発生を防止する観点から、平均炭素量を上記範囲にすることが好ましい。
単分散球状粒子の平均炭素量は、たとえば、シリカ粒子の場合、疎水化処理時に有機溶媒の除去量や疎水化処理剤の添加量を調整することで制御が可能である。また、作製したシリカ粒子を300℃〜600℃の温度で加熱処理して、シリカ粒子表面近傍及び粒子内部のシラノール基を熱縮合することにより平均炭素量を制御する方法もある。この方法では、加熱処理温度を制御して熱縮合させるシラノール基の量を調整することが可能である。また、この方法では、加熱処理後に、再度、疎水化処理することも可能である。
平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子の平均炭素量は、たとえば、固体中炭素分析装置「EMIA−110(堀場製作所社製)」を用いて燃焼法により測定することが可能である。具体的には、平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子試料0.1gを磁性ボートに精秤し、これを約1200℃で燃焼処理し、このとき発生する二酸化炭素(CO2)量より炭素数を換算して求めることが可能できる。
また、平均1次粒径50nm以上150nm以下の上記単分散球状粒子は、アルコキシ基量が1.0質量%〜5.0質量%のものであることが好ましく、1.5質量%〜4.0質量%のものであることがより好ましい。アルコキシ基量が上記範囲の単分散球状粒子を外添したトナーは、低温低湿環境及び高温高湿環境のいずれの環境下で優れた帯電立ち上がり性能と帯電安定性を発現することができる。
平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子のアルコキシ基量は、たとえば、密閉式アルカリトラッキングヘッドスペースGC法により測定が可能である。密閉式アルカリトラッキングヘッドスペースGC法による前記単分散球状粒子のアルコキシ基量測定は、下記に示す(1)〜(4)の工程を経て行われる。
(1)0.2gに秤量した単分散球状粒子試料を容積20mlのバイアル瓶に投入する
(2)1モル/リットルのアミルアルコールカリウム溶液1.0gを添加し、緩やかに撹拌する
(3)ヘッドスペースサンプラー内を80℃にして30分間加熱処理する
(4)ヘッドスペースサンプラー内に発生したガスを一定量サンプリングし、下記条件下でガスクロマトグラフィ(GC)測定を行う。
ガスクロマトグラフィ(GC)条件
・カラム:シリコーンコートキャピラリカラム
・キャリア:Heキャリア
・検出器:FID検出器
・GC部温度:50℃から280℃(昇温速度10℃/分)
・INJECTION部温度:250℃
一定量のメタノールを試料に添加する標準添加法により、同様に前処理して作成しておいた検量線を用いて定量を行う。
また、平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子は、疎水化度が40〜80のものであることが好ましく、50〜70のものがより好ましい。疎水化度が上記範囲の単分散球状粒子を外添したトナーは、低温低湿環境及び高温高湿環境のいずれの環境下で優れた帯電立ち上がり性能と帯電安定性を発現することができる。
すなわち、疎水化度が上記範囲よりも小さい場合、特に高温高湿の画像形成環境下で帯電電荷を保持する性能が低下することが考えられ、トナーの帯電量低下に伴うトナー飛散の発生が懸念される。また、疎水化度が上記範囲よりも大きい場合、特に低温低湿の画像形成環境下でトナーの帯電立ち上がり性能に差が表れ、現像装置内で撹拌中に現像剤の混合状態に差が生じると、トナー粒子間の帯電量分布がブロード化しトナー飛散等を発生するおそれがある。
平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子の疎水化度は、たとえば、メタノール滴定法により測定することが可能である。メタノール滴定法による疎水化度測定は、具体的には以下の手順により行われる。すなわち、容積200mlのビーカ中に蒸留水50mlを投入した後、0.2gに秤量された50nm以上150nm以下の単分散球状粒子試料を添加する。次に、先端が液体中に浸漬されているビュレットからメタノールを滴下し、ゆっくり撹拌した状態で試料全体が濡れて全部が沈降するまで滴下を行う。疎水化度は、試料全体が沈降するまでに要したメタノール量をa(ml)として下記式より算出することができる。すなわち、
疎水化度={a/(a+50)}×100
なお、平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部から3.0質量部であることが好ましく、0.3質量部から2.0質量部がより好ましいものである。
この様に、本発明では上記構成の個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子を用いることでスペーサ効果が発現され、現像装置内でトナーを長期間撹拌してもトナー粒子同士の表面接触が回避される。その結果、トナー粒子表面に添加されている、たとえば、個数平均1次粒径5nmから50nmの金属酸化物粒子等の小径外添剤粒子の埋没や脱離を防止する。したがって、現像装置内でのトナー撹拌を長期間行っても、小径外添剤がトナー粒子表面へ埋没あるいは脱離しないので、トナーの帯電性や流動性を安定的に維持することが可能である。
本発明で使用されるトナーは、前述の単分散球状粒子とともに、個数平均1次粒径5nm以上50nm以下、好ましくは個数平均1次粒径7nm以上40nm以下の金属酸化物粒子を外添剤として含有することが好ましい。この様な金属酸化物粒子としては、たとえば、シリカ、チタニア(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型)、メタチタン酸、アルミナ、シリカ/チタニア/アルミナ系複合酸化物等の微粒子がある。
また、上記金属酸化物粒子の他に、たとえば、以下に示す炭化物や窒化物、ホウ化物、酸化物等を外添剤として使用することも可能である。すなわち、
(1)炭化物
炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等
(2)窒化物
窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等
(3)ホウ化物
ホウ化ジルコニウム等
(4)硫化物
二硫化モリブデン等
(5)フッ化物
フッ化炭素等
(6)酸化物
酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム等
なお、酸化物の中には、たとえば、気相法によるシリカやシリカ/チタニア・アルミナ等から構成される複合酸化物やコロイダルシリカ等もある。また、チタン酸カルシウムやチタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム等の酸化物化合物もある。
さらに、ステアリン酸アルミニウムやステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機物等がある。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用することが可能である。
また、これら粒子は、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系オイル、シリコーンワニス等の公知の疎水化処理剤やフッ素系シランカップリング剤またはフッ素系シリコーンオイル、アミノ基/第4級アンモニウム塩含有カップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤で表面処理されていることが好ましい。
また、上記個数平均1次粒径5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子は、単独または2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
個数1次粒径5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子の個数平均1次粒径は、たとえば、以下の手順で測定することが可能である。
(1)透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて平均粒径に応じた倍率で写真撮影を行い、撮影した写真画像をスキャナで取り込む。
(2)画像処理解析装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」にて、写真画像上のトナー粒子表面に存在する金属酸化物粒子を2値化処理し、100個の金属酸化物粒子について水平フェレ径を算出し、算出値を個数平均1次粒径とする。ここで、水平フェレ径とは、写真画像上の個数1次粒径が5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子を2本の垂直線で挟んだときに得られる2本の垂直線間の距離のことを意味するものである。
また、個数平均1次粒径5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子の個数平均1次粒径測定方法には、上記方法の他に、トナー粒子表面に存在する当該金属酸化物粒子を直接走査型電子顕微鏡で写真撮影し、その写真画像から同様の手順で算出する方法もある。
また、個数平均1次粒径が5nm以上50nm以下の上記金属酸化物粒子は、BET比表面積が400〜50m2/gのものであることが好ましい。ここで、BET比表面積とは、ガス吸着法により算出される粒子の比表面積のことで、その算出方法は、たとえば窒素ガスの様に、吸着占有面積が既知のガス分子を粒子表面に直接吸着させ、その吸着量(単分子層吸着量)より粒子の比表面積を算出するものである。
BET比表面積は、下記に示すBETの式と呼ばれる数式より算出が可能で、この式は一定温度で吸着平衡状態にあるときの吸着平衡圧Pとその圧力における吸着量Vの関係を示すものである。すなわち、
P/V(Po−P)=(1/VmC)+((C−1)/VmC)(P/Po)
上記式中のPoは飽和蒸気圧、Vmは単分子層吸着量(気体分子が金属酸化物粒子表面で単分子層を形成したときの吸着量)、C(>0)は吸着熱等に関するパラメータを示すものである。具体的には、上記式より単分子吸着量Vmを算出し、これにガス分子1個の吸着占有面積をかけて上記金属酸化物粒子のBET表面積を算出する。
また、上記金属酸化物粒子のBET比表面積を測定、算出する装置としては、たとえば、市販の自動比表面積測定装置「GEMINI 2360(島津・マイクロメリティックス社製)」がある。前記自動比表面積測定装置を用いてBET比表面積を測定、算出する場合、先ず、金属酸化物粒子2gをストレートサンプルセルに充填し、前処理として窒素ガス(純度99.999%)で2時間セル内を置換する。置換を行った後、測定装置本体で前処理した金属酸化物粒子に窒素ガス(純度99.999%)を吸着させ、多点法(7点法)によりBET比表面積を算出する。
また、上記個数平均1次粒径5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部とすることが好ましく、0.4〜4.0質量部がより好ましいものである。個数平均1次粒径5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子の含有量を上記範囲にすることで、トナー粒子に所望の帯電特性や流動特性を付与し易くなる。また、上記金属酸化物粒子の含有量を上記範囲にすることで、当該金属酸化物粒子がトナー粒子表面にしっかりと保持され、トナー粒子表面からの遊離や帯電不良等の副作用を発生させるおそれがない。
なお、上記個数平均1次粒径が5nm以上50nm以下の金属酸化物の含有量は、前述した個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子との合計量が上記範囲内となる様に調製することが好ましい。ここで、個数平均1次粒径50nm以上150nm以下の単分散球状粒子と個数平均1次粒径が5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子の質量比(単分散球状粒子/金属酸化物粒子)は、3.0/0.3〜0.3/3.0であることが好ましい。
また、本発明に使用するトナーは、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、非水分散重合法等の湿式重合法、気相法等により形成した各種有機樹脂微粒子を外添剤に併用することが可能である。有機樹脂微粒子には、たとえば、スチレン系樹脂微粒子、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、テフロン(登録商標)樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子等がある。
本発明では、画像形成部10を構成する現像装置14に収容されているトナーの含有量(トナー濃度)をトナー濃度検出部で測定し、測定結果に基づいて現像装置14内へのトナー供給が行われるものである。ここで、トナー濃度検出部の搭載が可能な現像装置14について図3を用いて説明する。
図3に示す現像装置14は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤を収容するハウジング145内部に、現像スリーブ141、現像スリーブ141へ現像剤を供給する搬送供給ローラ144、一対の撹拌スクリュー142と143が互いに略平行に配置されている。ハウジング145内部に収容されている現像剤は、撹拌スクリュー142、143により撹拌されるとともに軸方向(図の奥行き方向)に搬送される。
また、ハウジング145は内側に隔壁146が配置され、隔壁146により現像装置14内部は撹拌スクリュー142が配置された第1室147と、撹拌スクリュー143が配置された第2室148に分割されている。第1室147は、現像スリーブ141や搬送供給ローラ144と隣接しているが、第2室148は隣接していない。
現像スリーブ141は、ステンレスやアルミニウム等の非磁性材料材を用いた円筒形状の部材で、たとえば、外径は15mm〜25mm、厚さは0.5mm〜1mmのものである。現像スリーブ141は、両端に設けられた不図示の突当コロにより感光体ドラム11の周面に対して所定の間隙が保たれ、また、感光体ドラム11の回転(図中の矢印方向(時計方向回転))に対し逆方向に回転する。現像スリーブ141の内部には、画像形成に必要なNとSの磁極を交互に複数個設けたマグネットロール149が配置されている。マグネットロール149は、現像スリーブ141と同心に固定され、前述の複数個の磁極により、非磁性のスリーブ周面に磁力を作用させるものである。
また、現像装置14には、図示していない層厚規制部材が現像スリーブ141と所定間隙を形成する様に配置され、層厚規制部材は現像スリーブ141の周面上に形成される二成分現像剤の厚さ(層厚)を規制するものである。
搬送供給ローラ144は、撹拌スクリュー142により撹拌された二成分現像剤を前述の層厚規制部材へ供給するもので、二成分現像剤を搬送する羽根部が設けられている。
撹拌スクリュー142と143は、互いに相反する方向に等速で回転して現像装置14内のトナーとキャリアとを撹拌、混合するもので、現像装置14内に収容されている二成分現像剤を均一なものにするものである。
現像装置14には、たとえば、撹拌スクリュー143上方のハウジング145上部に開口可能な二成分現像剤補給口が設けられ、二成分現像剤補給口よりハウジング145内に二成分現像剤が補給される。
ハウジング145内に供給された二成分現像剤は、互いに相反する方向に等速で回転する撹拌スクリュー142と143により、ハウジング145内に収容されている二成分現像剤と撹拌、混合されて均一なトナー濃度の二成分現像剤になる。この様にして、新しい二成分現像剤が供給された二成分現像剤は、搬送供給ローラ144により層厚規制部材へ搬送され、層厚規制部材で所定層厚になる。そして、現像スリーブ141の外周面上に二成分現像剤の現像剤層が形成される。
現像スリーブ141の外周面上に供給された二成分現像剤を構成するトナーは、感光体ドラム11上に形成された潜像に対応して現像スリーブ141より脱離し感光体ドラム11上に静電吸着する。このとき、感光体ドラム11上の静電潜像には直流(DC)バイアスと必要により交流(AC)バイアスとを重畳させた現像バイアス電圧が印加され、感光体ドラム11に対して非接触状態で反転現像を行うこと(非接触現像法)が可能である。
感光体ドラム11上の潜像を現像後、現像スリーブ141上の二成分現像剤は、マグネットロール149を構成する複数のNの磁極の作用で現像スリーブ141より剥離し、搬送供給ローラ144により再度撹拌スクリュー142へ搬送される。
現像装置14は、後述するトナー濃度検知部17によりハウジング145内のトナー濃度が所定のトナー濃度より低下したことが検知されると、二成分現像剤が補給される。ここでいう、トナー濃度とは二成分現像剤を構成するトナーの含有量(比率)を示すものである。すなわち、ハウジング145内では、二成分現像剤のうちトナーは現像により消費されるが、キャリアは消費されないので、現像を繰り返すことによりトナーの含有量(比率)が減少していくので、消費された分のトナーを補給することになる。
現像装置へのトナー補給は、たとえば、図示しないホッパよりハウジング145に設けられているトナー補給口145bを経て行われる。現像装置14内へ補給されたトナーは撹拌スクリュー142、143により充分に撹拌されて帯電し、現像スリーブ141へ搬送され、感光体11へ供給される。
次に、現像装置14内のトナー濃度を測定するトナー濃度検出部について説明する。本発明はトナー濃度検出部を有する現像装置に収容されたトナーを用いて画像形成を行うものである。たとえば、図3の現像装置14は第2室148下部におけるハウジング145の外面にトナー濃度検出部17が取り付けられている。この位置は、現像剤が溜まる個所の外側であり、トナー濃度検出部17はハウジング145に形成されている突起へ貫通させることにより位置決め、固定されている。
図3に示す現像装置14では、画像形成が行われてトナーが消費された後にトナー濃度検出部17によるトナー濃度の検出が行われる。そして、トナー濃度検出部17により現像装置14内のトナー濃度が予め決められた濃度よりも小さいと判断されたとき、トナーを補充してトナー濃度を上昇させ、現像装置14内のトナー濃度を適切な範囲内に維持している。
図3の現像装置14は、装置の外側にトナー濃度検出部17が設けられているが、当該トナー濃度検出部は現像剤の見かけの透磁率を検出することによりトナー濃度を検知するものであり、装置外側からの測定が可能なものである。このトナー濃度検出部は、インダクタンスコイルとコンデンサを配置してなるLC共振回路を有するもので、コイルのインダクタンスが雰囲気の透磁率により変化することを利用してトナー濃度を測定するものである。
ここで、LC共振回路の共振周波数fは、下記式(1)で表され、LC共振回路で得られる共振周波数fを測定することにより、トナー濃度の検出が行えることを示している。すなわち、共振周波数fは、
式(1);f=1/2π(LC)1/2
で表され、式中のLはコイルのインダクタンスを、Cはコンデンサのキャパシタンスを表すものである。
本発明者は、大径外添剤がキャリア表面へ多く付着するとキャリア自身の帯電付与性能が低下するとともに現像剤の透磁率も変化し、この変化をLC共振回路が周波数変動として検出し、トナー濃度低下の誤った判断によりトナー補充が行われたと推測した。そこで、本発明者は、大径外添剤の遊離を抑えて大径外添剤のキャリア表面への付着をなるべく回避することにより、現像剤の透磁率変動を防いでLC共振回路が周波数検出を安定して行える様にしたのである。
トナー濃度検出部17についてさらに説明する。図4は、電子写真方式の画像形成装置を構成する現像装置14に収容されているトナーの量を測定するトナー濃度検出部の一例を示す概略図である。図4の(a)はトナー濃度検出部17の全体図、(b)はトナー濃度検出部17を構成する平面コイル171の拡大図、(c)はトナー濃度検出部17で使用される共振回路を示す回路図である。
図4のトナー濃度検出部17は、LC共振回路の共振周波数の変化を検出することにより現像装置14内に収容されるトナー含有量(濃度)を検出するもので、コルビッツ回路と呼ばれる1個のコイルと2個のコンデンサを有するLC同調型の発振回路である。すなわち、本発明でトナー濃度検出部として使用される共振回路は、図4(c)に示す様に、インダクタンスコイルL、トランジスタQ、抵抗R、2つのコンデンサC1、C2等を有するものである。
トナー濃度検出部17は、図4(a)に示す様に、長方形のプリント基板171の一面に平面コイル172が形成され、この平面コイル172が図4(c)中のインダクタンスコイルLに該当する。図4(b)の拡大図に示す様に、平面コイル172は外形がほぼ長方形であり、プリントパターンにより形成されるものであり、平面コイル172が形成されている面が現像装置14のハウジング45に接する側となる様に配置されている。
本発明で用いられるトナー濃度検出部17を構成する平面コイル172は、その中央部172aまでは形成されておらず、全体で略リング状のコイルとなっている。この中央部172aは、プリントパターンによるコイルを形成していない領域であり、本発明でいう中空領域に相当するものである。つまり、本発明でいう中空領域とは、平面コイル中央部のコイルが形成されていない領域を意味するものであり、プリント基板171自体は存在するものである。この様に、図3の現像装置14に設けられているトナー濃度検出部17は、平面コイル172の中央部172aにコイルだけでなくコア等の部材も有しておらず、平面コイル172の中央部が空芯になっている。したがって、中空領域である中央部172a内部は、感度分布がほぼ平坦なものになり、精度の高いトナー濃度検出が行える様になっている。
プリント基板171の他面(平面コイル172の形成されている面の裏面)には、図4(a)には示していないが、共振回路の他の部品(トランジスタQ、抵抗R、コンデンサC1、C2)が実装されている。また、プリント基板171の他面のうち、平面コイル172が形成されていない側の長手方向端部にはコネクタ173が取り付けられている。また、図3(a)では、プリント基板171上の平面コイル172の中央部172a内に位置決め用の貫通孔174が設けられ、さらに、平面コイル172の外部でありプリント基板171のほぼ中央部にあたる個所にも長孔形状の貫通孔175が設けられている。
図3の現像装置14のハウジング145の外面には、図示していないが、前述の貫通孔174、175にはめ込まれるための位置決め用の2つの突起が設けられており、これによりトナー濃度検出部17はハウジング145に位置決めされる。特に、丸孔である貫通孔174と突起により、ハウジング145と平面コイル172の位置関係は正しく保持され、たとえば、温度等の画像形成環境が変化しても、平面コイル172の中央部172aのハウジング145に対する位置は変化しない。
また、トナー濃度検出部17は、平面コイル172の長手方向が現像スリーブ141や搬送スクリュー142、143の長手方向と平行になる様に配置される。また、トナー濃度検出部17は、現像装置14のうち画像形成装置1に装着された状態で最も下方の個所に平面コイル172が略水平となる様に、あるいは、ハウジング145外面の接線方向に配置してもよい。
次に、平面コイル172の大きさについて説明する。平面コイル172は、図4(b)に示す様に、略長方形(A<B)であり、長辺Bが現像装置14の軸方向と平行になる様に配置される。ここで、トナー濃度検出部17の検出対象は、第2室148内の現像剤であり、第2室148には搬送スクリュー143が配置され、搬送スクリュー143の回転により平面コイル172の上方位置に存在する現像剤量は周期的に変動する。これにより、トナー濃度検出部17による検出結果も周期的に変動する。
この周期的な変動の変動幅は、平面コイル172の長辺Bと搬送スクリュー143のスクリューピッチとの関係や平面コイル172の内径等により異なってくる。具体的には、長辺Bを搬送スクリュー143のスクリューピッチの0.5倍よりも大きく、かつ、1.5倍よりも小さい範囲内に設定することが好ましい。長辺Bを搬送スクリュー143のスクリューピッチの0.5倍よりも大きくすることでコイル上に現像剤の山(現像剤量が最大となる個所)を1つ以上確保することを可能にしている。また、長辺Bを搬送スクリュー143のスクリューピッチの1.5倍よりも小さくすることで平面コイル172のサイズをコンパクト化して現像装置14へ装着可能なトナー濃度検出部17を実現している。
この様に、図3に示す現像装置14は、トナー濃度検出部17がハウジング145内のトナー濃度が所定のトナー濃度より低下していることを検出すると、その検出結果に基づいてトナーを補給する様になっている。
本発明に係る画像形成方法では、前述したコアシェル構造のトナーとキャリアより構成される二成分現像剤を使用するものである。二成分現像剤として使用する際に用いられる磁性粒子であるキャリアは、たとえば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等により形成され、これらの中でもフェライト粒子を用いるものが好ましい。
本発明では、フェライト等の前記磁性粒子表面に樹脂を被覆した樹脂コートキャリアを用いることが好ましく、キャリア表面に形成された樹脂コート層の存在によりトナー粒子へ良好な帯電付与性能を発現することができる。また、本発明では前述のトナーを用いるので、現像装置内で撹拌を繰り返し行ってもトナー粒子表面からの大径外添剤の遊離が発生しにくく、遊離外添剤のキャリアへの付着による帯電付与性能の低下が解消されるので、安定したトナー帯電が行える。
樹脂コートキャリアに使用可能な被覆用樹脂は、特に限定されるものではなく、たとえば、スチレン系樹脂やスチレン−アクリル系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素含有重合体系樹脂等の使用が可能である。
本発明で用いられるキャリアの体積平均粒径は、25μm以上50μm以下のものが好ましい。上記体積平均粒径のキャリアを用いることにより、画像形成時に現像スリーブ上に柔らかな磁気ブラシが形成され、鮮鋭性に優れたトナー画像を形成する上で有利である。また、画像形成を繰り返し行っても、遊離外添剤のキャリア粒子表面への付着が起きにくいので前述の磁気ブラシを安定して形成し、安定したトナー画像形成に寄与している。なお、キャリアの体積平均粒径は、たとえば、湿式分散器を備えたレーザ回折式粒度分析装置「HELOS(シンパテック(株)製)」等の公知の測定装置により測定が可能である。また、本発明で用いられるキャリアの飽和磁化値は20〜80emu/gが好ましく、飽和磁化値を前記範囲とすることにより、現像スリーブ上への磁気ブラシの形成が行い易い。キャリアの飽和磁化値は、たとえば、「直流磁化特性自動記録装置3257−35(横河電気株式会社製)」等の公知の測定装置により測定が可能である。
なお、本発明で用いられる二成分現像剤は、前述のコアシェル構造トナーとキャリアを公知の方法で混合することにより作製することが可能である。トナーのキャリアに対する混合量は2質量%から10質量%が好ましい。また、混合装置は限定されるものではなく、たとえば、ナウターミキサ、Wコーン及びV型混合機等の使用が可能である。なお、本発明で用いられる二成分現像剤に使用可能な樹脂コートキャリアの製造方法については後で詳述する。
また、本発明では、前述したトナー濃度検出部の測定結果に基づく現像装置へのトナー補充を行うとともに、公知の方法で現像装置へキャリアを補充するものであることが好ましい。すなわち、現像により消費された分のトナーを補充するとともに、公知の方法で新しいキャリアも補充して、現像装置内のキャリアを少しずつ入れ換えることにより、キャリアの帯電付与性能をより安定維持することが可能である。このトナーとともに新しいキャリアも現像装置へ補充する方法は、「オートリファイニング現像方式」あるいは「トリクル現像」と呼ばれるもので、現像装置内における二成分現像剤の帯電性能を所定レベルに維持する上で有利なものである。
次に、本発明で用いられるトナーの作製方法について説明する。
本発明で用いられるトナーは、前述した様に、スチレンアクリル共重合体樹脂を含有するコア粒子表面を、ポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた変性ポリエステル樹脂で被覆したコアシェル構造のトナーである。
本発明で用いられるトナーを構成するトナー母体粒子(外添剤を添加する前のトナー粒子のこと)は、特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法により作製することが可能である。
この中でも、重合法によるトナー作製は、その製造工程で粒子の形状や大きさを制御しながら所望のトナーを形成することが可能で、微小なドット画像を忠実に再現することが可能な小径トナーの作製に最適である。特に、本発明では表面が平滑なコアシェル構造のトナー母体粒子が求められ、変性ポリエステル樹脂のシェルによる平滑なトナー粒子表面を形成するためには、コア粒子表面を平滑なものにする必要がある。
このニーズを満たすトナー製造方法としては、重合法によるトナー製造方法の中でも、乳化重合法や懸濁重合法により予め120nm前後の樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて粒子形成を行う乳化会合法が好ましいものの1つといえる。すなわち、乳化会合法は、樹脂粒子の凝集・融着工程やその後に続く熟成工程の条件を制御することにより表面が平滑なコア粒子の作製を可能にする。
以下、乳化会合法によるコアシェル構造のトナー作製例を説明する。乳化会合法では概ね以下の様な手順を経てトナーを作製する。すなわち、
(1)コア形成用樹脂粒子分散液の作製工程
(2)着色剤粒子分散液の作製工程
(3)コア用樹脂粒子の凝集・融着工程
(4)第1熟成工程
(5)シェル化工程
(6)第2熟成工程
(7)冷却工程
(8)洗浄工程
(9)乾燥工程
(10)外添剤処理工程
本発明では、前述した様に、コア粒子を作製する際、凝集・融着工程で加熱温度を高めに設定し融着時間を長めに設定することにより、凝集樹脂粒子が丸みを帯びた形状になり、同時に平滑な表面が形成される。また、凝集・融着工程の後に引き続き反応系を加熱処理する熟成工程の加熱温度を高めに設定し時間を長めにすることでも、平滑な表面のコア粒子を作製することができる。
以下、各工程について説明する。
(1)樹脂粒子分散液の作製工程
この工程は、コア用の樹脂粒子を形成する重合性単量体を水系媒体中に投入して重合を行って120nm程度の大きさの樹脂微粒子を形成する工程である。本発明では、この工程で、少なくともスチレン単量体とアクリル酸エステル単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることによりスチレンアクリル共重合体の樹脂粒子を作製する。この様にしてコア用の樹脂粒子を形成する。
(2)着色剤粒子分散液の作製工程
水系媒体中に着色剤を分散させ、110nm程度の大きさの着色剤粒子分散液を作製する工程である。
(3)コア用樹脂粒子の凝集・融着工程(コア粒子の形成)
この工程は、水系媒体中で前述の樹脂粒子と着色剤粒子を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてコア粒子を作製する工程である。この工程では、樹脂粒子と着色剤粒子とを混合させた水系媒体中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等を凝集剤として添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
具体的には、前述の手順で作製した樹脂粒子と着色剤粒子とを反応系に添加し、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させると同時に粒子同士が融着して凝集樹脂粒子(コア粒子)が形成される。そして、コア粒子の大きさが目標の大きさになった時に、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
この工程では、加熱温度を高めに設定し、融着時間を長めに設定すると、凝集樹脂粒子(コア粒子)は丸みを帯びた形状になり、同時に表面が平滑になってくる。この様にして、表面が平滑なコア粒子を作製することが可能である。
(4)第1熟成工程
この工程は、上記凝集・融着工程に引き続き、反応系を加熱処理することによりコア粒子の形状を所望の形状にするまで熟成を行う工程である。この工程でも、加熱温度を高めに設定し、処理時間を長めに設定することにより、表面が平滑なコア粒子を作製することが可能である。
(5)シェル化工程
この工程は、第1熟成工程で形成されたコア粒子の分散液中に、シェル形成用樹脂粒子を添加してコア粒子表面を当該樹脂粒子で被覆することによりシェルを形成する工程である。本発明では、この工程でポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた変性ポリエステルの樹脂粒子を添加して、当該変性ポリエステルを含有するシェルを形成することが可能である。
前述した様に、本発明では、シェル形成用の樹脂にポリエステル分子鎖にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させた変性ポリエステルを用いているので、コア粒子表面に対して適度な親和性を発現させて強固な結合を形成するものと考えられる。また、シェル形成用樹脂粒子間に適度な分散性が作用しているため、シェル形成用樹脂粒子同士での凝集が起こりにくく、コア粒子表面へうすいシェルが形成されるものと考えられる。この様にしてコアシェル構造のトナー母体粒子が形成される。
(6)第2熟成工程
この工程は、上記シェル化工程に引き続き、反応系を加熱処理することにより、コア表面へのシェルの被覆を強化するとともに、トナー母体粒子の形状が所望の形状になるまで熟成を行う工程である。
(7)冷却工程
この工程は、前記トナー母体粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(8)洗浄工程
この工程は、上記工程で所定温度まで冷却されたトナー母体粒子分散液からトナー母体粒子を固液分離する工程と、固液分離されてウェットのケーキ状集合体にしたトナー母体粒子表面から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去するための洗浄工程から構成される。
洗浄処理は、ろ液の電気伝導度がたとえば10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタプレス等を使用するろ過法等、公知の処理方法があり、特に限定されるものではない。
(9)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥処理し、乾燥したトナー母体粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレイドライヤ、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等の公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することも可能である。
また、乾燥処理されたトナー母体粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサ等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(10)外添剤処理工程
この工程は、乾燥処理したトナー母体粒子表面へ必要に応じ外添剤を添加、混合してトナーを作製する工程である。本発明では、この工程で少なくとも個数平均1次粒径50nm以上150nmの単分散球状粒子を外添剤として添加するものである。
以上の工程を経て、乳化会合法によりコアシェル構造のトナーを作製することが可能である。そして、上述した理由により、本発明に係るコアシェル構造のトナーは乳化会合法で作製することが好ましい。
次に、本発明で用いられるトナーで使用可能な着色剤やワックスについて、具体例を挙げて説明する。先ず、本発明に係るトナーに使用可能な着色剤としては公知のものが挙げられる。具体的な着色剤を以下に示す。
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も使用可能である。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等がある。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等がある。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等がある。
また、染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等がある。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。数平均1次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
次に、本発明で用いられるトナーに使用可能なワックスとしては、以下に示す公知のものが挙げられる。すなわち、
(1)ポリオレフィン系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等
(2)長鎖炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、サゾールワックス等
(3)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(4)エステル系ワックス
カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(5)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等。
ワックスの融点は、通常40〜125℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
次に、本発明で用いられるトナーを乳化会合法で作製する際に使用される凝集剤、重合開始剤、分散安定剤、界面活性剤等について説明する。
乳化会合法は、前述した様に、樹脂粒子や着色剤粒子等を水系媒体に分散させた分散液中で樹脂粒子や着色剤粒子等を凝集、融着させてトナー母体粒子を形成するものである。本発明で使用されるトナーを作成する際に使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。たとえば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるトナーを構成する結着樹脂を、ビニル系重合性単量体を用いて形成する場合、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用することができる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。すなわち、
(1)アゾ系またはジアゾ系重合開始剤
2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等
(2)過酸化物系重合開始剤
ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。
また、樹脂粒子の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。
本発明では、水系媒体中に分散させた重合性単量体を重合し、水系媒体中に分散させた樹脂粒子等を凝集、融着させてトナーを作製するので、これらトナー材料を水系媒体中に安定して分散させておく分散安定剤を使用することが好ましい。分散安定剤としては、たとえば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。
また、水系媒体中で重合性単量体を用いて重合を行う場合、界面活性剤を使用して前記重合性単量体の油滴を水系媒体中に均一に分散させる必要がある。このとき、使用可能な界面活性剤は、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
また、硫酸エステル塩には、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等がある。
また、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等がある。
次に、本発明で用いられる二成分現像剤に使用可能な樹脂コートキャリアの製造方法について説明する。前述した様に、本発明では、好ましく用いられる体積平均粒径25μm以上50μm以下のキャリアとして、磁性芯材粒子(以下、芯材粒子ともいう)表面に樹脂を被覆した樹脂コートキャリアが好ましく用いられる。樹脂コートキャリアは、キャリア表面に形成された樹脂コート層によりトナー粒子へ良好な帯電付与性能を安定的に発現することが可能である。また、本発明では、現像装置内で撹拌を繰り返し行ってもトナー粒子表面から大径外添剤が遊離しにくいので、遊離外添剤のキャリアへの付着による帯電付与性能の低下が解消されるものである。
樹脂コートキャリアは、たとえば、図5に示すキャリア製造装置を用いて作製することが可能である。図5のキャリア製造装置は、芯材粒子と樹脂粒子を混合、撹拌して芯材粒子表面に樹脂粒子を静電的に付着させ、樹脂粒子を付着させた芯材粒子へ加熱しながらストレスを加え、樹脂粒子を磁性芯材粒子表面に延展させて被覆して樹脂コートキャリアを作製する。
図5に示すキャリア製造装置50は、本発明でいう混合槽に該当する容器本体51を有し、容器本体51の周面は、ほぼ3/4の高さまで本発明でいう加熱手段である調温用ジャケット57で覆われている。容器本体51の底部(容器底部ともいう)51aには、撹拌を行うための回転羽根58、作製した樹脂コートキャリアを取り出す取出口60を有し、取出口60には排出弁61が配置されている。容器本体51の上面には本体上蓋52が設けられ、本体上蓋52には投入弁53が設置された原料投入口54、フィルタ55が設けられ、フィルタ55と容器上蓋52の間には排出弁64が配置され、フィルタ55の先に容器内排出口63が設けられている。
樹脂コートキャリアを作製する際の原料である芯材粒子と樹脂粒子は、上記原料投入口54より容器本体51内部に供給される。なお、樹脂コートキャリア作製を実際に行う容器本体51内部をチャンバーといい、チャンバーの温度を測定する温度計56が容器本体51の周面に配置されている。
前述の回転羽根58は、駆動手段であるモータ62により回転し、芯材粒子と樹脂粒子を撹拌するもので、回転羽根58の中心部58dには互いに120°の角度間隔で撹拌羽根58a、58b及び58cが結合している。これら撹拌羽根は、底部51aの面に対して傾斜させて取り付けられており、撹拌羽根58a、58b及び58cを高速回転させると前述の芯材粒子や樹脂粒子といった原料は上方へ掻き上げられ、本体容器51の上部内壁に衝突して落下する。
撹拌手段である回転羽根58を回転させるモータ62は、コンピュータに代表される図示しない制御手段40に接続し、制御手段40は記憶されているプログラムによりモータ62の作動を制御する。
図5のキャリア製造装置50は、前述した回転羽根58の作動を制御することで、たとえば、芯材粒子表面への樹脂粒子の静電付着を行う操作と、静電付着した樹脂粒子を芯材粒子表面に強く固着させる操作を段階的に行うことができる。すなわち、図5のキャリア製造装置は、少なくとも、下記工程を経て樹脂コートキャリアを作製することができる。
〔1〕芯材粒子と樹脂粒子を室温下で撹拌、混合して、静電気の作用で芯材粒子表面に樹脂粒子を付着させる工程
〔2〕樹脂粒子のガラス転移温度以上にチャンバーを加熱しながら機械的衝撃力を加え、芯材粒子表面に樹脂粒子を延展、被覆させて樹脂コート層を形成する工程
〔3〕チャンバーを室温まで冷却する工程
上記〔1〕〜〔3〕の工程を少なくとも経ることにより、芯材粒子表面を樹脂でコートした構造の樹脂コートキャリアを作製することができる。また、上記〔1〕〜〔3〕の工程は、必要に応じて複数回繰り返すことも可能である。
次に、前述の図1に示す画像形成装置1による画像形成方法について詳細に説明する。前述した様に、図1の画像形成装置1は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkで各感光体上にイエロー色、マゼンタ色、シアン色及び黒色のトナー画像を形成する。各画像形成部の感光体上に形成された各トナー画像は中間転写体ユニット18を構成する無端ベルト上に転写されて各トナー画像が重ね合わされる(1次転写)。この様にして、中間転写ユニット18ではフルカラーのトナー画像が形成される。そして、中間転写体ユニット18で転写、重ね合わされて形成されたトナー画像は画像支持体P上に転写(2次転写)され、さらに、定着装置24で溶融、固化して画像支持体P上へ定着される。
各感光体で形成される異なる色のトナー画像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体11Y、該感光体11Yの周囲に配置された帯電手段12Y、露光手段13Y、現像手段14Y、1次転写手段としての1次転写ロール15Y、クリーニング手段16Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体11M、該感光体11Mの周囲に配置された帯電手段12M、露光手段13M、現像手段14M、1次転写手段としての1次転写ロール15M、クリーニング手段16Mを有する。
また、さらに別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体11C、該感光体11Cの周囲に配置された帯電手段12C、露光手段13C、現像手段14C、1次転写手段としての1次転写ロール15C、クリーニング手段16Cを有する。また、さらに他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体11Bk、該感光体11Bkの周囲に配置された帯電手段12Bk、露光手段13Bk、現像手段14Bk、1次転写手段としての1次転写ロール15Bk、クリーニング手段16Bkを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット37は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体370を有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、1次転写ロール15Y、15M、15C、15Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体18上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の画像支持体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール19Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、2次転写ロール15Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体18は、クリーニング手段189により残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール15Bkは常時、感光体11Bkに圧接している。他の1次転写ロール15Y、15M、15Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体11Y、11M、11Cに圧接する。
2次転写ロール19Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体18に圧接する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体11Y、11M、11C、11Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット18が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット18は、ロール181、182、183、184、186を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体180、1次転写ロール15Y、15M、15C、15Bk及びクリーニング手段189からなる。
このように感光体11Y、11M、11C、11Bk上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体180上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体11Y、11M、11C、11Bkは、クリーニング装置16で転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の画像形成が行われる。
本発明で使用される画像支持体は、転写材とも呼ばれるもので、電子写真方式の画像形成方法によりトナー画像の形成が可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的な画像支持体としては、公知のものが挙げられ、たとえば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、あるいは、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.「外添剤粒子1〜9」の準備
先ず、前述の「ゾルゲル法によるシリカ粒子作製の具体例」の項に示した個数平均1次粒径50nmと100nmの疎水性シリカ粒子をそれぞれ「外添剤粒子1、2」とする。
また、前述の個数平均1次粒径30nmの疎水性シリカ粒子の作製例で、前記混合溶媒の温度を45℃、テトラメトキシシランの添加量を1460質量部、滴下時間を7.5時間、テトラメトキシシラン滴下終了後の撹拌を1.5時間に変更した。その他は同じ手順をとり、個数平均1次粒径が150nmの疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子3」とする。
また、前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が100nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を2時間に変更した。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が100nm、形状係数SF−1が100の疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子4」とする。
また、前記ゾルゲル法で行う「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を45分に変更し、その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が100nm、形状係数SF−1が120の疎水性シリカ粒子を作製した。これを「外添剤粒子5」とする。
前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が100nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下時間を7.5時間に変更する。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が100nm、粒径分布が「外添剤粒子2」よりもシャープな疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子6」とする。
前述のゾルゲル法による個数平均1次粒径が100nmの疎水性シリカ粒子である「外添剤粒子2」の作製で、テトラメトキシシラン滴下時間を7.5時間に変更し、かつ、テトラメトキシシラン滴下終了後に行う撹拌を2時間に変更する。その他は同じ手順をとることにより、個数平均1次粒径が100nmで、形状係数SF−1が100、しかも粒径分布が「外添剤粒子2」よりもはるかにシャープな疎水性シリカ粒子を作製し、これを「外添剤粒子7」とする。
また、市販のゾルゲル法シリカ粒子である扶桑化学工業(株)製のPL−20(個数平均1次粒径220nm)を用意し、前記シリカ粒子1モルに対してヘキサメチルジシラザンを3モル添加した後、60℃に加熱して3時間の反応処理を行って疎水化処理を行う。この疎水化処理を行った前記シリカ粒子を「外添剤粒子8」とする。さらに、市販のゾルゲル法シリカ粒子である日産化学工業(株)製のMP−4540M(個数平均1次粒径450nm)へ「外添剤粒子4」と同様の疎水化処理を行って「外添剤粒子9」とする。
上記手順で準備した「外添剤粒子1〜9」の個数平均1次粒径、形状係数、90%と95%の粒径分布、及び、製造方法を下記表1に示す。すなわち、
2.「金属酸化物粒子A〜E」の準備
次に、上記「外添剤粒子1〜9」とともにトナー母体粒子へ添加する個数平均1次粒径が5nm以上50nm以下の金属酸化物粒子として以下に示すシリカ粒子を用意した。
・金属酸化物粒子A(市販品)
個数平均1次粒径7nm、BET値300、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したシリカ粒子
・金属酸化物粒子B(市販品)
個数平均1次粒径10nm、BET値90、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したシリカ粒子
・金属酸化物粒子C
前記「ゾルゲル法によるシリカ粒子作製の具体例」の個数平均1次粒径30nmの疎水性シリカ粒子
・金属酸化物粒子D(市販品)
個数平均1次粒径40nm、BET値50、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したシリカ粒子
・金属酸化物粒子E(市販品)
個数平均1次粒径30nm、ジメチルシリコーンオイルで疎水化処理したチタニア粒子。
3.「トナー母体粒子1〜10」の作製
3−1.「コア用樹脂粒子A」の作製
(1)第一段重合
撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム2質量部とイオン交換水2900質量部を投入して界面活性剤水溶液を作製した。当該界面活性剤水溶液を窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら温度を80℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)9質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、上記界面活性剤水溶液の液温を78℃にして、下記化合物を含有する単量体混合液を3時間かけて滴下した。すなわち、
スチレン 540質量部
n−ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
滴下後、78℃にて1時間加熱、撹拌して重合反応(第一段重合)を行うことにより、「樹脂微粒子A1」の分散液を作製した。
(2)第二段重合
次に、撹拌装置、温度センサ、温度制御装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器へイオン交換水1100質量部とラウリル硫酸ナトリウム2質量部を投入して界面活性剤水溶液を作製して90℃に加温した。加温後、上記界面活性剤水溶液中へ前記「樹脂微粒子(A1)」を固形分換算で28質量部と下記単量体混合液を添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」を用いて4時間混合分散処理して、分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製した。
単量体混合液は、下記化合物を含有するもので、エステル結合を有するワックスであるペンタエリスリトールテトラベヘネートは下記単量体とn−オクチルメルカプタンを溶解させた後に添加し、85℃に加温して溶解させている。すなわち、
スチレン 94質量部
n−ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n−オクチルメルカプタン 5質量部
ペンタエリスリトールテトラベヘネート 51質量部
上記乳化粒子分散液中に、過硫酸カリウム(KPS)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を90℃で2時間加熱、撹拌することにより重合反応(第二段重合)を行い、「樹脂微粒子A2」の分散液を作製した。
(3)第三段重合
次に、上記「樹脂微粒子A2」の分散液中に過硫酸カリウム(KPS)2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を80℃にして下記化合物を含有する単量体混合液を1時間かけて滴下した。すなわち、
スチレン 230質量部
n−ブチルアクリレート 100質量部
n−オクチルメルカプタン 13質量部
上記単量体混合液を滴下後、80℃の温度下で3時間加熱、撹拌することにより重合反応(第三段重合)を行った。その後、28℃まで冷却して、「コア用樹脂粒子A」の分散液を作製した。
上記手順で作製した「コア用樹脂粒子A」は、エステル結合を有する重合性単量体であるn−ブチルアクリレートの質量比を31質量%にして形成したスチレンアクリル共重合体で、ガラス転移温度が43℃のものであった。
3−2.「シェル用樹脂粒子1〜10」の作製
(1)「シェル用樹脂粒子1」の作製
以下の手順により、ポリエステル分子鎖末端にスチレンアクリル共重合体分子鎖を分子結合させたスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有する「シェル用樹脂粒子1」の分散液を作製した。すなわち、
窒素導入装置、脱水管、撹拌装置及び熱電対を取り付けた反応容器へ、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 154質量部
フマル酸 45質量部
オクチル酸スズ 2質量部
を投入し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行い、さらに、8kPaで1時間重縮合反応を継続後、160℃に冷却した。この様にしてポリエステル分子を形成した。
次に、温度160℃の状態でアクリル酸10質量部を投入、混合させて15分間保持した後、下記化合物の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。すなわち、
スチレン 142質量部
n−ブチルアクリレート 35質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
滴下後、温度160℃を維持した状態で1時間の付加重合反応を行った後、200℃に昇温させ、10kPaで1時間保持した。この様にして、スチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が20質量%の「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」を作製した。
次に、前記「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」100質量部を市販の粉砕処理装置「ランデルミル 形式:RM(徳寿工作所社製)」で粉砕処理した。続いて、予め作製しておいたラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部(濃度0.26質量%)と混合し、撹拌処理を行いながら超音波ホモジナイザー「US−150T(日本精機製作所製)」を用い、V−LEVEL、300μAで30分間超音波分散処理した。この様にして、粒子の体積基準メディアン径250nmの「シェル用樹脂粒子1」分散液を作製した。
(2)「シェル用樹脂粒子2〜5」の作製
(a)「シェル用樹脂粒子2」の作製
前記「シェル用樹脂粒子1」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」の作製で使用したスチレンの添加量を30質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を7質量部に変更した他は同じ手順を採り、「シェル用樹脂粒子2」を作製した。「シェル用樹脂粒子2」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂2」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が5質量%であった。
(b)「シェル用樹脂粒子3」の作製
前記「シェル用樹脂粒子1」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」の作製で使用したスチレンの添加量を243質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を61質量部に変更した他は同じ手順を採ることで、「シェル用樹脂粒子3」を作製した。「シェル用樹脂粒子3」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂3」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が30質量%であった。
(c)「シェル用樹脂粒子4」の作製
前記「シェル用樹脂粒子1」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」の作製で使用したスチレンの添加量を12質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を3質量部に変更した他は同じ手順を採ることで、「シェル用樹脂粒子4」を作製した。「シェル用樹脂粒子4」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂4」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が2質量%であった。
(d)「シェル用樹脂粒子5」の作製
前記「シェル用樹脂粒子1」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂1」の作製で使用したスチレンの添加量を305質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を76質量部に変更した他は同じ手順を採ることで、「シェル用樹脂粒子5」を作製した。「シェル用樹脂粒子5」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂5」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が35質量%であった。
(3)「シェル用樹脂粒子6」の作製
前記「シェル用樹脂粒子1」の作製で、ポリエステル分子を形成する際に反応容器へ投入する化合物の添加量を以下の様に変更した。すなわち、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
オクチル酸スズ 2質量部
また、ポリエステル分子を形成する重縮合反応終了後の反応系の冷却温度を170℃に変更し、170℃の反応系へ下記化合物の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下するものに変更した。すなわち、
アクリル酸 10質量部
スチレン 142質量部
n−ブチルアクリレート 35質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 10質量部
そして、滴下後の温度170℃を維持した状態で1時間の付加重合反応を行うものに変更した。その他は同じ手順を採ることにより、「シェル用樹脂粒子6」を作製した。「シェル用樹脂粒子6」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂6」は、「シェル用樹脂粒子1」と同様、スチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が20質量%であった。
(4)「シェル用樹脂粒子7、8」の作製
(a)「シェル用樹脂粒子7」の作製
前記「シェル用樹脂粒子6」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂6」の作製で使用したスチレンの添加量を30質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を7質量部に変更した他は同じ手順を採り、「シェル用樹脂粒子7」を作製した。「シェル用樹脂粒子7」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂7」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が5質量%であった。
(b)「シェル用樹脂粒子8」の作製
前記「シェル用樹脂粒子6」の作製で、「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂6」の作製で使用したスチレンの添加量を243質量部、n−ブチルアクリレートの添加量を61質量部に変更した他は同じ手順を採ることで、「シェル用樹脂粒子8」を作製した。「シェル用樹脂粒子8」を構成する「スチレンアクリル変性ポリエステル樹脂8」はスチレンアクリル共重合体分子鎖の含有割合が30質量%であった。
(5)「シェル用樹脂粒子9」の作製
撹拌装置、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器へ、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 316質量部
テレフタル酸 80質量部
無水マレイン酸 34質量部
を投入し、さらに触媒であるチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分けて投入して、窒素気流雰囲気下、温度200℃で10時間の重合反応を行うことで樹脂形成を行った。このとき、縮合反応により生成する水を留去しながら反応を進行させた。
次に、反応系を13.3kPa(100mmHg)に減圧させ、この状態下で重合反応を継続し、形成樹脂の軟化点温度が104℃になったときに反応容器より当該樹脂を取り出した。取り出したポリエステル樹脂を「ポリエステル樹脂(a)」とする。
上記手順で作製した「ポリエステル樹脂(a)」100質量部を、酢酸エチル400質量部に溶解させて溶液を形成した。当該溶液を予め作製しておいた濃度0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部へ添加し、撹拌を行いながら超音波ホモジナイザー「US−150T(日本精機製作所社製)」で30分間超音波分散処理を行った。前記超音波分散処理は前記超音波ホモジナイザーをV−LEVEL 300μAに設定して行った。
前記超音波分散処理を行った後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700(BUCHI社製)」を用い、減圧下で3時間の撹拌処理を行うことにより、前記ポリエステル樹脂より酢酸エチルを完全に除去した。この様にして、体積基準メディアン径が160nmで、スチレンアクリル共重合体のセグメントを有さないポリエステル分子で構成される樹脂を含有する「シェル用樹脂粒子9」の分散液を作製した。
(4)「シェル用樹脂粒子10」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、前記「コア用樹脂粒子A」の作製で用いたアニオン系界面活性剤2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。この界面活性剤溶液を、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
一方、下記化合物を添加、混合して「単量体混合溶液」を調製しておく。すなわち、
スチレン 560質量部
n−ブチルアクリレート 144質量部
メチルメタクリレート 96質量部
n−オクチルメルカプタン(NOM) 22質量部
からなるものである。
前記界面活性剤溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる開始剤溶液を添加後、上記「単量体混合溶液」を3時間かけて滴下した。そして、この系を80℃にし、1時間にわたる加熱、攪拌により重合を行い、「シェル用樹脂粒子10」の分散液を作製した。
3−3.「着色剤粒子分散液Bk」の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に溶解した溶液を撹拌しながら、
カーボンブラック「モーガルL(キャボット社製)」 420質量部
を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス(エム・テクニック社製)」を用いて分散処理を行うことにより、「着色剤粒子分散液Bk」を調製した。
3−4.「トナー母体粒子1〜10」の作製
(1)「トナー母体粒子1」の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「コア用樹脂粒子分散液A」 270質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
「着色剤粒子分散液Bk」 120質量部(固形分換算)
を投入した。さらに、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水120質量部に溶解した溶液を添加し、液温を30℃にした後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物35質量部をイオン交換水35質量部に溶解した水溶液を、撹拌状態の下で30℃にて10分間かけて添加し、添加後3分間保持してから昇温を開始した。昇温は60分かけて90℃まで行い、90℃に保持した状態で上記粒子の凝集、融着を行った。
この状態で「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて反応容器内で成長する凝集粒子の粒径を測定し、体積基準メディアン径が6.0μmになったとき、
「シェル用樹脂粒子分散液1」 30質量部(固形分換算)
を添加し、上記「シェル用樹脂粒子1」が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。そして、反応溶液を少量取り出し、これを遠心分離して上澄みが透明になった時点で塩化ナトリウム150質量部をイオン交換水600質量部に溶解した水溶液を添加して粒子の成長を停止させた。さらに、熟成処理として液温を90℃にして加熱撹拌を行って粒子の融着を進行させた。この状態で「FPIA−2100(シスメックス社製)」による測定で平均円形度が0.965になるまで粒子の融着を進行させた。
その後、液温を30℃まで冷却し、塩酸を使用して液のpHを2に調整して撹拌を停止した。この様にして「トナー母体粒子分散液1」を作製した。
上記工程を経て作製した「トナー母体粒子分散液1」をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、「トナー母体粒子1」のウェットケーキを形成した。
このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機でろ液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄処理した。その後「フラッシュジェットドライヤ(セイシン企業(株)製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥処理を行い、体積基準メディアン径が6.3μmの「トナー母体粒子1」を作製した。
(2)「トナー母体粒子2〜10」の作製
前記「トナー母体粒子1」の作製で、前記凝集粒子の体積基準メディアン径が6.0μmになったときに添加するシェル用樹脂粒子分散液を、「シェル用樹脂粒子分散液2〜10」にそれぞれ変更した。その他は同じ手順を採ることにより、「トナー母体粒子2〜10」を作製した。「トナー母体粒子2〜10」の体積基準メディアン径は、いずれも「トナー母体粒子1」と同様、6.3μmであった。
以上の手順により、コアシェル構造を有する「トナー母体粒子1〜10」を作製した。
4.「トナー粒子10〜19、20〜80、110」、「トナー粒子210、211」及び「トナー粒子310、311」の作製
4−1.「トナー粒子10〜19、20〜80、110」の作製
(1)「トナー粒子10」の作製
前記「トナー母体粒子1」100質量部に対し、下記に示す外添剤粒子と金属酸化物粒子を添加し、ヘンシェルミキサ「FM10B(三井三池化工(株))」の撹拌羽根周速を40m/秒、処理温度30℃、処理時間20分に設定して外添処理を行った。外添処理を行った後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去することにより、「トナー粒子10」を作製した。添加する外添剤粒子と金属酸化物粒子は以下のとおりである。
外添剤粒子1 1.0質量部
金属酸化物粒子1 0.5質量部
金属酸化物粒子2 0.7質量部
金属酸化物粒子3 0.15質量部
金属酸化物粒子5 0.15質量部
(2)「トナー粒子11〜19」の作製
前記「トナー粒子10」の作製で、「外添剤粒子1」を前述の「外添剤粒子2〜9」に変更した他は同じ条件で外添処理を行うことにより「トナー粒子11〜18」を作製した。また、前記「トナー粒子10」の作製で、添加する外添剤と金属酸化物粒子を以下の様に変更した他は同じ条件で外添処理を行い「トナー粒子19」を作製した。すなわち、
外添剤粒子2 1.0質量部
金属酸化物粒子1 0.5質量部
金属酸化物粒子3 0.15質量部
金属酸化物粒子4 0.7質量部
金属酸化物粒子5 0.15質量部
(3)「トナー粒子20〜80」の作製
前記「トナー粒子10」の作製で、「トナー母体粒子1」を前述の「トナー母体粒子20〜80」に変更し、外添処理に使用する外添剤粒子と金属酸化物粒子の種類と添加量を、「トナー粒子11」作製時と同じものにして「トナー粒子20〜80」を作製した。
(4)「トナー粒子110」の作製
前記「トナー粒子10」の作製で「外添剤粒子1」を添加せず、その他の前記各外添剤を用いて外添処理を行うことにより比較用の「トナー粒子110」を作製した。
4−2.「トナー粒子210、211」と「トナー粒子310、311」の作製
前記「トナー粒子12」の作製で使用した「トナー母体粒子1」を「トナー母体粒子2」及び「トナー母体粒子3」にそれぞれ変更し、「トナー粒子12」の作製と同じ条件で外添処理を行って「トナー粒子210」と「トナー粒子310」を作製した。
また、前記「トナー粒子16」の作製で使用した「トナー母体粒子1」を「トナー母体粒子2」及び「トナー母体粒子3」にそれぞれ変更し、「トナー粒子16」の作製と同じ条件で外添処理を行って「トナー粒子211」と「トナー粒子311」を作製した。
以上の手順により作製した上記22種類のトナー粒子で各々使用したトナー母体粒子(シェル用樹脂粒子)と外添剤粒子、金属酸化物粒子を下記表2に示す。
5.「樹脂コートキャリア1〜5」の作製
以下の手順により、体積平均粒径を変えた5種類の樹脂コートキャリアを作製した。
5−1.フェライト芯材粒子の準備
樹脂コートキャリア用の磁性芯材粒子として、体積平均粒径が20μm、25μm、35μm、50μm、55μmのフェライト粒子(市販品)を用意した。このフェライト粒子は、マンガン含有量がMnO換算で21.0モル%、マグネシウム含有量がMgO換算で3.3モル%、ストロンチウム含有量がSrO換算で0.7モル%、鉄含有量がFe2O3換算で75.0モル%のものであった。なお、前記体積平均粒径は湿式分散器を備えた市販のレーザ回折式粒度分布測定装置「HELOS(シンパテック社製)」により測定したものである。
5−2.被覆用樹脂粒子の作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にドデシル硫酸ナトリウム1.7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を用意した。この界面活性剤水溶液を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、液温を80℃にして下記化合物よりなる単量体混合液を2時間かけて滴下した。すなわち、
シクロヘキシルメタクリレート 400質量部
メタクリル酸メチル 400質量部
上記単量体混合液を滴下後、80℃の下で2時間加熱と撹拌処理を行い、重合反応を行うことにより被覆用樹脂粒子の分散液を作製した。上記分散液をスプレイドライヤで乾燥処理して被覆用樹脂粒子を作製した。
5−3.各樹脂コートキャリアの作製
(1)「樹脂コートキャリア1」の作製
前記体積平均粒径20μmのフェライト粒子3000質量部と上記被覆用樹脂粒子120質量部を図5に示す水平回転翼型混合装置へ投入し、水平回転翼の周速を4m/秒に設定して、22℃の温度下で15分間混合撹拌を行った。前記混合撹拌を行った後、120℃に加熱した状態下で40分間撹拌処理を行って体積平均粒径20μmの「樹脂コートキャリア1」を作製した。
(2)「樹脂コートキャリア2〜5」の作製
前記「樹脂コートキャリア1」の作製で用いた体積平均粒径20μmのフェライト粒子に代えて、体積平均粒径25μmのフェライト粒子を用いた他は同じ手順で体積平均粒径25μmの「樹脂コートキャリア2」を作製した。同様に、「樹脂コートキャリア1」の作製で用いた体積平均粒径20μmのフェライト粒子に代えて、体積平均粒径35μm、50μm、55μmのフェライト粒子をそれぞれ用いた他は同じ手順を採ることにより、「樹脂コートキャリア3〜5」を作製した。
6.評価実験
6−1.「現像剤1〜26」の調製
前記「トナー粒子10〜19、20〜80、110、210、211、310、311」と体積平均粒径の異なる「樹脂コートキャリア1〜5」を表3に示す様に組み合わせて「現像剤1〜26」を作製した。なお、「現像剤1〜26」のトナー濃度は、使用する体積平均粒径に応じて以下の様に変化させた。すなわち、
・樹脂コートキャリア1(体積平均粒径20μm) 8.0質量%
・樹脂コートキャリア2(体積平均粒径25μm) 7.6質量%
・樹脂コートキャリア3(体積平均粒径35μm) 7.0質量%
・樹脂コートキャリア4(体積平均粒径50μm) 6.0質量%
・樹脂コートキャリア5(体積平均粒径55μm) 5.6質量%
6−2.評価条件
評価機として、図1に示す二成分系現像方式の画像形成装置に対応する市販の複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」の現像装置の外側に図4のトナー濃度検出部を取り付けたものを使用した。当該評価機に取り付けられるトナー濃度検出部は、中央部に中空領域を設けた平面状のコイルを用いたLC発振回路を有する。そして、上記評価機では、当該トナー濃度検出部により現像装置内のトナー濃度を検出し、検出結果に基づいて新しいトナーが補充される様に制御されている。
前記「現像剤1〜26」を前記現像装置へ各々装填し、また、前記手順で作製した各トナーを対応する現像剤の補充用トナーとして使用した。下記表3に示す様に、「現像剤1〜7、10〜14、20〜26」を用いて評価したものを「実施例1〜19」とし、「現像剤8、9、15〜19」を用いて評価したものを「比較例1〜6」とした。各実施例と各比較例に使用する各現像剤、現像剤を作製する際に使用したトナー粒子と樹脂コートキャリア、トナー粒子を作製する際に使用したシェル用樹脂粒子を下記表3に示す。
(1)評価実験その1
評価実験その1では、外添剤の遊離に起因する画像不良発生の有無について評価を行った。具体的には、温度20℃、相対湿度55%RHの常温常湿環境下で各現像剤1種類につき2万枚の連続プリントを実施し、現像装置内で撹拌が繰り返される状況下での外添剤粒子が遊離せずスペーサ効果を安定して発現することを以下の作成画像より評価した。
連続プリントで作成する画像は、A4サイズの画像支持体上に、人物顔写真画像、相対反射濃度0.4のハーフトーン画像、白地画像、相対反射濃度1.3のベタ画像を4等分に出力させたものにした。なお、ハーフトーン画像及びベタ画像の相対反射濃度はマクベス濃度計によるものである。また、2万枚の連続プリント終了時に図6に示すプリント物を10枚出力し、当該プリント物に記載の細線画像やドット画像、頂点を有する図形画像の仕上がりを評価した。
〈ハーフトーン画像濃度ムラと人物画像仕上がり〉
上記連続プリント開始時及び終了時に作成した各々10枚のプリントのハーフトーン画像上における濃度ムラの発生状況と人物画像の仕上がり状況(画像ムラの発生)を目視観察により評価した。ハーフトーン画像上における濃度ムラの発生が3枚以下であり、かつ、人物画像は肉眼で検出可能なレベルの画像ムラが発生しなかったものを合格とし、ハーフトーン画像上での濃度ムラ発生が1枚もなかったものを特に優れたものとした。
〈ベタ画像濃度〉
上記連続プリント開始時及び終了時に作成した各々10枚のプリントのベタ画像濃度を測定して平均値を算出し、開始時と終了時の平均濃度の差が0.10未満となるものを合格とした。
〈カブリ〉
マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて、プリント作成を行っていない用紙の濃度を20個所測定し、その平均値を白紙濃度とする。次に、連続プリント開始時及び終了時に作成した各々10枚のプリントの白地画像を同様の手順で20個所測定し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値(カブリ濃度)をカブリとして評価した。
カブリ濃度が0.01未満のものを合格とし、特に、0.005未満のものを優れているものとした。
〈細線画像、ドット画像仕上がり〉
図6に示す画像サンプルに出力した画像Sa〜Siの仕上がりをルーペを用いて目視評価した。なお、画像Sa、Sbは線画像、Scはドット画像で、これら画像は線内とドット内での画像の欠落、及び、線間とドット間での画像のくっつきを評価した。また、三角形画像Sd、四角形画像Se、ひし形画像Sf、星形画像Sg、三日月画像Siは角の部位が丸みを帯びずに再現されていることの評価を行った。また、ひし形画像Sfについてはひし形間の隙間で線画がくっついていないことと細線の欠落がないことを評価した。さらに、二円画像Shは2つの円が重なっている部位で角の部位が丸みを帯びずに再現されていることの評価を行った。10枚のプリント物中で上記評価項目の全てをクリアしたものが7枚以上のものを合格とし、10枚全てが上記評価項目を全てクリアしたものを優れたものとした。
以上の結果を表4と表5に示す。
表4と表5に示す様に、本発明の構成を有するプリント作成条件下で行った「実施例1〜19」は、いずれの評価項目も基準を満たす結果が得られ、所定粒径の外添剤粒子が遊離せずスペーサ効果を安定的に発現するものであることを確認した。一方、本発明の構成を有さないプリント作成条件下で行った「比較例1〜7」は外添剤粒子が遊離して画質に影響を与える結果になった。
(2)評価実験その2
評価実験その2は、温度30℃、相対湿度80%RHの高温高湿環境下で各現像剤1種類につき2万枚の連続プリントを実施し、連続プリント終了時におけるハーフトーン画像濃度ムラ、人物画像仕上がり、ベタ画像濃度、カブリを評価した。これらの評価方法は、前述した評価実験その1と同じものである。
なお、評価実験2では、トナーとともにキャリア補充を行いながら連続プリントを実施した。また、評価は体積平均粒径35μmの樹脂コートキャリアを用いた前記「実施例1〜8、13〜19」と「比較例1〜7」について行い、トナー含有量を75質量%に調製した補給用現像剤を使用してトナーとキャリアの補充を行った。
以上の結果を表6に示す。
表6に示す様に、「実施例1〜8、13〜19」では、連続プリント時に新しいキャリアが補充されることに加え、撹拌時による外添剤遊離が起きないので、所定レベルに帯電したトナーによるプリント作成が安定して行えた。一方、「比較例1〜7」では、連続プリント時に新しいキャリアが補充されているにも係わらず、「実施例1〜8、13〜19」で得られた様な画質のプリント物を作成できない結果になった。