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JP2012509663A - 細胞培養のための、突起間隔を開けた基板および装置 - Google Patents

細胞培養のための、突起間隔を開けた基板および装置 Download PDF

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JP2012509663A JP2011537543A JP2011537543A JP2012509663A JP 2012509663 A JP2012509663 A JP 2012509663A JP 2011537543 A JP2011537543 A JP 2011537543A JP 2011537543 A JP2011537543 A JP 2011537543A JP 2012509663 A JP2012509663 A JP 2012509663A
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Abstract

細胞を培養するための物品は、その上で細胞を培養することができる基板を備えている。基板はベース面を有する。突起のアレイは、ベース面から延在している。突起は約1μm〜約100μmの高さを有し、約10μm〜80μmの、隣接した突起間の中心から中心までの主表面に沿ったギャップ距離を有する。突起の複数のアレイは、表面から延在して差し支えなく、ベース面のアレイ間にギャップを有する。肝細胞は、インビボ様の形態および細胞膜の極性を維持する、このようなマイクロ突起アレイ基板上で培養される。これらの基板上で、ヘルパー細胞はアレイ間の領域で増殖する傾向が見られたが、ヘルパー細胞と共培養される肝細胞はアレイの領域で増殖する傾向が見られた。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2008年11月21日に出願した、米国仮特許出願第61/116,787号の利益を主張する。この文献の内容および本明細書に記載する任意の文献、特許、または特許出願は全て、参照することによって本願に援用される。
本開示は、細胞を培養するための装置に関し、さらに具体的には、装置上で培養する細胞の所望の特徴を促進する突起部が構築されている、細胞培養装置に関する。
平らな細胞培養用の製品上で培養された細胞は、それらのインビボにおける対応物とは形態および機能が大きく異なるであろう、細胞の人工の二次元のシートを生じることが多い。培養細胞は、現代の創薬および開発に不可欠であり、薬物検査に幅広く用いられている。しかしながら、これらの試験結果がインビボにおける細胞の応答を示さない場合、結果の妥当性が損なわれてしまうであろう。人体細胞は、他の細胞、膜、線維層、接着タンパク質などによって完全に囲まれた三次元環境を経験する。よって、培養細胞にインビボ様の形態および機能の発現を促す基板が望まれている。
進歩した細胞培養およびヒト組織工学では、一般に、さらに現実的な細胞培養のための正常な細胞形態および挙動を反映するために、3次元のポリマー性スキャフォールドを利用する。利用可能な、合成細胞外マトリクス(ECM)としての役割を果たす、多様なスキャフォールド基板が存在する。これらの合成ECMスキャフォールドは、一般に、開放性、多孔質、かつ外因性であり、典型的には、生体適合性かつ生分解性のポリマーで作製される。しかしながら、これらの合成ECM基板は、ECMスキャフォールドの構造の変動に起因して、ウェルごとおよび培養ごとに、培養細胞の形態および機能に大幅な変動を生じさせることが多い。
ヒト組織工学は、単離した細胞から新しい自然組織を作出するために、外因性の3次元細胞外マトリクス(ECM)を採用する。器官または組織の損失または欠陥は、最も深刻な人間の健康上の問題の1つである。組織または器官の移植術は、これらの患者を治療するための標準的な治療であるが、ドナーの不足によって非常に限定される。これらの患者を治療するための他の利用可能な治療法としては、再建手術(例えば心臓)、薬物治療(例えば膵臓の機能不全用のインスリンなど)、人工装具(例えばポリマー性の人工血管)および機械装置(例えば腎臓透析)が挙げられる。これらの治療法は、供給は制限されないが、失った器官または組織のすべての機能を代替するわけではなく、しばしば、長期的に機能不全に陥る。ヒト組織工学は、現在の治療法の制限を有しない、組織または器官の損失または機能不全を治療するための有望な方法として浮上してきた。この方法は、適切な環境下であれば、分離した細胞がインビトロで再構築されて、元の組織に似た構造を形成するであろうという生物学的観測を基礎としている。
ヒト組織工学で採用される外因性のECMは、所望の細胞型を適切な3次元環境に接触させ、新しく形成される組織が構造的に安定化するまで機械的支持を提供するように設計される。しかしながら、このようなECMの可変性の構造は、実際の用途のための人工組織(engineered tissue)に大きすぎる変動を生じる結果となりうる。
本開示は、細胞培養のために間隔を開けた突起を採用する、構造的・幾何学的に画成されたスマート基板の使用について説明する。1つの開示する実施の形態では、構造的に制御された接着ならびに細胞間相互作用は、結果として、インビボ様の形態および機能を発現する培養肝細胞を生じる。スマート基板の明確に画成された幾何学は、細胞の拡散、接着および成長の物理的制約条件を提供し、細胞間相互作用および細胞通信を誘導し、培養細胞集合のサイズおよび寸法を制御することができる。
さまざまな実施の形態では、細胞を培養するための物品は、細胞を培養することが可能なベース面を有する基板を備える。基板のベース面とは、物品のウェルの底部の上面である。物品は、さらに、ベース面から延在する突起のアレイも備える。突起は、約1μm〜約100μmの高さを有する。突起は、好ましくは、約1μm〜約10μmの高さを有し、ベース面に沿った、隣接した突起間の中心から中心までのギャップ距離は、約10μm〜約80μmである。これらの細胞培養物品は、細胞膜の極性の回復および培養される肝細胞のインビボ様の生物学的機能の支持に効果的であるとして、本明細書に示されている。
さまざまな実施の形態では、物品は、ベース面から延在するこのような突起の複数のアレイを有する。アレイ間にはベース面に沿ったギャップ距離が存在しうる。これらの細胞培養物品は、肝細胞とヘルパー細胞の共培養を支持するものとして本明細書に示されており、肝細胞の増殖は、主として、アレイによって占められる領域で生じ、ヘルパー細胞は、主に、突起のアレイ間の領域におけるベース面上で増殖する。
肝細胞を培養するさまざまな方法および肝細胞をヘルパー細胞と共培養するさまざまな方法についても本明細書に記載される。本方法は、上述したもののように、構造化した表面上で肝細胞を培養することを含み、それにより、肝細胞の細胞膜の極性の回復または肝細胞の代謝機能の増進を提供する。本方法は、上述したもののように、構造化した表面上で肝細胞をヘルパー細胞と共培養することを含み、それにより、構造化した表面において肝細胞とヘルパー細胞の分離をもたらし、肝細胞とヘルパー細胞の相互作用を誘導する。このような分離は、培養した肝細胞のインビボ様の特徴を維持するのに有益であろう。
図面は必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で用いられる同様の数字は、同様の構成要素、ステップなどを表している。しかしながら所定の図における構成要素を表すための数字の使用は、同一の数字で標識された別の図の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。加えて、構成要素を表すための異なる数字の使用は、異なる番号が付された構成要素が同一または同様ではありえないことを示唆することを意図しているわけではない。
物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する概略的な細胞培養物品の斜視図。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する概略的な細胞培養物品の断面の斜視図。 突起のアレイ間で培養された細胞の概略図。 細胞培養物品の基板のベース面の表面から延在する突起間で培養された細胞の概略的な側面図。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する概略的な細胞培養物品を上から見た図。 突起の概略的な斜視図。 突起の概略的な斜視図。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品を上から見た概略図。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品を上から見た概略図。 図7Aの細胞培養ウェルを上から見た概略図。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品上で細胞を培養する方法のフローチャート。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品上で細胞を培養する方法のフローチャート。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品上で細胞を培養する方法のフローチャート。 物品のベース面から延在する、構造化された突起のアレイを有する細胞培養物品上で細胞を培養する方法のフローチャート。 肝細胞の極性およびそれらのシヌソイド細胞との関係を示す、インビボにおける肝細胞の概略図。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品上で培養した肝細胞の顕微鏡画像。 コラーゲンIをコーティングした組織培養マイクロプレート状のものと比較した、コーティングしていない物品およびコラーゲンIをコーティングした物品のベース面から延在する突起のアレイを有する物品における、肝細胞hepG2C3A細胞の細胞増殖および生死判別の試験を示すグラフ。 酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板におけるNIH3T3線維芽細胞の光学顕微鏡画像。 酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板におけるNIH3T3線維芽細胞とhepG2C3A細胞の共培養の光学顕微鏡画像。 酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板におけるNIH3T3線維芽細胞とhepG2C3A細胞の共培養の光学顕微鏡画像。 酸化したPDMSマイクロ突起基板またはコラーゲンでコーティングした制御基板における、NIH3T3細胞と共培養したHepG2C3A細胞のリファムピン誘導性のCYP3A4酵素活性のグラフ。 28日間培養した後の酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板上におけるhepG2C3A細胞の光学顕微鏡画像。 28日間培養した後のコラーゲンIをコーティングした酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板におけるhepG2C3A細胞の光学顕微鏡画像。 コラーゲンIをコーティングしたTCT(組織培養処理)表面における細胞と比較した、さまざまな酸化したPDMSマイクロ突起基板上で培養したHepG2C3A細胞のリファムピン誘導性のCYP3A4酵素活性のグラフ。 さらに培養することなく低温保存した初代肝細胞における、10CYP遺伝子の発現のグラフ。 本発明に従って、さまざまなPDMS突起アレイ基板上で培養した初代肝細胞における、10CYP遺伝子の発現のグラフ。 さらに培養することなく低温保存した初代肝細胞における、10トランスポーター遺伝子の発現のグラフ。 本発明に従って、さまざまなPDMS突起アレイ基板上で培養した初代肝細胞における、10トランスポーター遺伝子の発現のグラフ。
次の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面について説明し、装置、システムおよび方法の幾つかの特定の実施の形態を実例として示す。他の実施の形態も意図されており、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、行われうることが理解されるべきである。したがって、次の詳細な説明は、限定的な意味で捉えるべきではない。
本明細書で用いられるすべての科学用語および技術用語は、特別の定めのない限り、当技術分野で一般に用いられる意味を有する。本明細書に提供される定義は、本明細書で頻繁に用いられるある特定の用語の理解を促進するためであって、本開示の範囲を制限することは意味していない。
本明細書および添付の特許請求の範囲では、「または」という用語は、一般に、内容が明確に別のことを示さない限り、「および/または」を含む意味で用いられる。
本明細書では、「有する」、「有している」、「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」などの用語は、オープンエンドの意味で用いられ、一般に、「含むが限定されない」ことを意味する。
「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」、「下方」および他の向きならびに配向などの本明細書で用いられる方向は、図面に関する明瞭性の目的で本明細書に記載されるのであって、実際の装置またはシステムまたは当該装置またはシステムの使用を限定するためではない。本明細書に記載される装置またはシステムは、多くの方向および配向で用いられうる。
本開示は、とりわけ、細胞培養のために間隔を開けた突起を採用する、細胞培養装置の幾何学的に画成された基板について説明する。基板および突起の明確に画成された幾何学は、細胞拡散、接着および成長についての物理的制約条件を提供し、細胞間相互作用および細胞通信を誘導し、培養細胞集合の大きさおよび寸法を制御することができる。画成された幾何学は、より現実的な細胞間相互作用、生物学および機能をもたらす結果となりうる。
任意の適切な細胞培養物品は、本明細書に記載される構造化した表面を採用するように、修正されうる。例えば、単一ウェルプレートおよび、6、12、96、384、および1536ウェルプレートなどのマルチウェルプレート、広口瓶、ペトリ皿、フラスコ、ビーカー、プレート、ローラーボトル、チャンバー培養スライドおよびマルチチャンバー培養スライドなどのスライド、チャネル化またはマイクロチャネル化された(すなわち、少なくとも1つの表面上にマイクロ構造を有する封入チャネルまたはマイクロチャネル装置)培養装置、管、カバースリップ、カップ、スピナーボトル、潅流チャンバー、バイオリアクター、および発酵槽などは、本明細書に提供される教示に従った構造化表面を備えていて差し支えない。これらの物品は、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、バイコールガラス、石英ガラスを含めたガラス物質;ケイ素;ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル−無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンのポリマーおよび共重合体、ノルボルネンとエチレンの共重合体、フッ化炭素ポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン;ポリ(酢酸ビニル−co−無水マレイン酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、多糖、多糖ペプチド、ポリ(エチレン−co−アクリル酸)またはこれらの誘導体のような共重合体など、樹枝状ポリマーを含めた、プラスチックまたはポリマーなど、任意の適切な原料物質から作製されうる。
別の実施の形態では、間隔を開けた突起を有するポリマー基板は、細胞培養のための担体として使用することができ、ここで、基板は細胞培地中に懸濁され、細胞は基板付着性になり、基板上で増殖する。間隔を開けた突起を有するポリマー基板は、変形させることができ(例えば折り畳むなど)、または平面的であってもよい。間隔を開けた突起または突起の複数のアレイを有するポリマー基板は、100μm未満の厚さを有する薄いシートであることが好ましい。間隔を開けた突起またはアレイ、または突起の複数のアレイを有する薄いポリマー・シートは、例えば規則的または不規則的など、任意の形状でありうる。
図1〜2を参照すると、代表的な細胞培養物品100が示されている。細胞培養物品100は、それぞれ、細胞培養物品100の基板120のベース面110から延在する突起200のアレイ290を有する。細胞培養物品は、側壁130を有する。突起200のベース面110およびアレイ290は、細胞培養のための、構造化され、かつ、非常に再生可能な3次元の幾何学を画成する。アレイ290の各突起200は、突起200の形成に用いる方法の再現性に見合った、ある程度再現可能な画成された幾何学的寸法を有する。突起200は、距離(d)の間隔で隔てられ、細胞培養物品100のベース面110上で培養される細胞にとって十分な空間を可能にし、少なくともある程度の細胞が突起200に接触する。例えば、間隔を開けた突起200を有する物品上で培養された細胞300の上から見た概略図(3A)および側面図(3B)が示されている図3A〜Bを参照すると、突起200は、少なくともある程度の細胞300が基板120のベース面110と接触し、かつ、突起200と接触しうるような間隔で配置される。細胞300の集合は、突起200間のギャップ内に形成されうる。アレイにおける突起200の数および隣接した突起200間のギャップ距離(d)を調節して、細胞集合の数および集合における細胞数を制御することができる。このような制御は、より伝統的な基板上での培養と比較して、利点を提供するであろう。例えば、突起200の間隔を調節することにより、集合における細胞数を制御することによって、より伝統的な物品上での細胞培養と比較して、培養細胞上で行われた研究結果のさらに迅速な信頼性のある正規化が提供され、ここで、所定の領域における細胞数または培養表面全体の細胞数は、極めて変化に富む。加えて、細胞培養結果を最大限に生かすために、隣接した突起間のギャップ距離を変化させてもよい。例えば、1つの細胞型は、異なる細胞型に最も好ましい細胞培養環境を提供するギャップ距離とは異なった支柱間のギャップ距離を有する細胞培養装置で培養されることがさらに好ましいであろう。このような細胞培養装置の使用のさらなる利益は、細胞がベース面と突起側面の両方に接触するように誘導されることに起因した、栄養物への細胞の自由なアクセス、および/または、細胞が産生した老廃物を排出する能力が含まれる。
代表的な細胞培養物品100の上から見た概略図を示す図4を参照すると、アレイ290の突起200'の中心から、その最も近い隣接した突起200’’の中心までの間隔が、距離(d)(またはギャップ距離)として示されている。実施の形態では、距離dは、約10μmより長い。さまざまな実施の形態では、突起200’の幾何学中心から、最も近い突起200''の幾何学中心(ベース面110上)までの主表面110に沿った距離(ベース面110上)は、約10μm〜約80μm、約10μm〜約50μm、約10μm〜約30μm、または約20μm、または約30μm〜約70μmである。各突起200およびその最も近い隣接した突起200間の距離dは、十分な数の突起が、それらの最も近い隣接突起から少なくとも10μm(幾何学中心から幾何学中心まで)の間隔を開けていることを条件として、すべての突起について同じである必要はない。一部の実施の形態では、アレイ290における突起200のすべてが、それらの最も近い隣接突起から少なくとも10μm(幾何学中心から幾何学中心まで)の間隔を開けている。
図1〜4および本明細書に提示される他の図面に示す突起は円筒状の形状であるが、突起は、立方状、角錐状、円錐状など、任意の適切な形状のものであって差し支えないことが理解されよう。突起は、ナノメートルスケールの細孔またはマイクロスケールの細孔を有する固体または多孔質体でありうる。使用する材料に応じて、突起の機械的性質は大きく変化する場合があり、したがって、特定の型の細胞培養ごとに微調整して差し支えない。
図5A〜Bを参照すると、アレイにおける各突起200は高さhを有する。高さhは、突起200がベース面から一番遠い地点まで延在する、細胞培養物品のベース面からの直交距離として測定することができる。アレイにおける各突起200の高さhは、同一であっても異なっていてもよい。アレイにおける突起200の高さhは、約1μmより大きくて差し支えない。さまざまな実施の形態では、突起200の高さhは、約1μm〜約100μm、約1μm〜約50μm、約5μm〜約25μm、約2μm〜約10μm、または約5μmである。
図5A〜Bをさらに参照すると、アレイの各突起200は、物品のベース面と接触した、または物品のベース面から延在する表面210、および突起200とは反対側の表面220を有し、ここで、表面210、220は、突起200のすべての幾何学形態に応じて、同一または異なる表面積を有していて構わない。表面210、220は任意の適切な表面積を有しうる。多くの実施の形態において、表面220および表面210の表面積は、両方とも、約1平方マイクロメートルより大きい。さまざまな実施の形態では、表面220の表面積は、約1平方マイクロメートル〜約500平方マイクロメートル、約5平方マイクロメートル〜約250平方マイクロメートル、約5平方マイクロメートル〜約100平方マイクロメートル、および約25平方マイクロメートル〜約100平方マイクロメートルである。一部の実施の形態では、突起200は、例えば図5Bに示すように、円筒形の形状をしており、表面220は、約1μm〜25μm、または約5μm〜約15μmの直径を有する。追加の実施の形態では、突起200は、長方形(図5Aに示すように)、立方形、円錐形、長斜方形、または任意の他の幾何学的形態である。
図6〜7を参照すると、細胞培養物品100の上から見た概略図が示されている。物品100は、1つ以上のマクロアレイ190を備えていてもよく、それぞれが複数のマイクロアレイ290を有する。マイクロアレイ290における突起200(および突起間のギャップ距離)は、図1〜5に関して上述したとおりである。マクロアレイ190は、マイクロアレイ290の任意の適切なパターンを含んでいてもよい。図示する実施の形態では、マクロアレイ190は、マクロアレイ190の生産方法が再現できる範囲内において同一である。
図6に示す実施の形態では、物品100は、細胞が培養されうるベース面110を有するウェルを画成する側壁130を有する。マイクロアレイ290の突起200は、ベース面110から延在する(例えば、図1〜5に関して説明した通り)。図7Aに示す実施の形態では、物品100は6つのマクロアレイ190を有し、それぞれ、培養物品100のウェル内に、マクロアレイ190あたり21個のマイクロアレイ290を備える。各ウェルは、細胞を培養して差し支えないベース面110を有する(図7Aに示す物品100の単一のウェルの拡大図である図7Bを参照)。
さらに図6〜7を参照すると、アレイ190は、物品100のウェルまたは他の適切な培養表面によって画成された培養ベース面110の任意の適切な表面積を占めていて差し支えない。さまざまな実施の形態では、各アレイ190は、約10,000平方マイクロメートル〜約25,000,000平方マイクロメートル、約10,000平方マイクロメートル〜約300,000平方マイクロメートル、または約100,000平方マイクロメートル〜約300,000平方マイクロメートルの表面積を占める。一部の実施の形態では、例えば図6〜7に示されるように、突起のマイクロアレイ290は、一般に、物品100のウェルまたは他の適切な培養表面の円形の表面積を占める。このような円形のアレイは、任意の適切な表面積を有していて構わない。例えば、円形のマイクロアレイ290の直径は、約100μm〜約500μmでありうる。図6、7A、および7Bに示す参照番号390は、細胞培養表面110のマイクロアレイ290間のスペースを意味する。
図7Bに示すように、隣接するアレイ290は、ベース面110に沿って、アレイ距離Dによって隔てられうる。アレイ290におけるギャップ距離および突起の数と同様に、所定の培養表面110におけるアレイ290の数および隣接するアレイ290間のアレイ距離Dは、培養条件を調節するために変化させて差し支えない。例えば、下記実施例に記載されるように、肝細胞と一緒に共培養されたヘルパー細胞は、マイクロアレイ290間のスペース390の方に分離する傾向があり、一方、肝細胞は、突起200のマイクロアレイ290で占められたスペースの方に分離する傾向がある。よって、培養表面110上のマイクロアレイ290間のアレイ距離Dを制御することによって、または、ベース面110の全表面積に対するマイクロアレイ290で占められたベース面110の相対面積を制御することによって、ヘルパー細胞を培養する表面積に対する肝細胞を培養する相対表面積を調節して差し支えない。異なる培養システムおよび異なる細胞型では、マイクロアレイ290の間隔および数を有利に変化させて差し支えない。
最も近くに隣接するアレイ290間のアレイ距離Dは任意の適切な距離でありうる。例えば、アレイ距離Dは、約10μm〜約1000μm、約25μm〜約500μm、または約50μm〜約250μmでありうる。同様に、アレイ290は、細胞を培養するベース面110の表面積の任意の適切な割合を占有して差し支えない。例えば、アレイ290は、ベース面110の表面積の約10%〜約100%、ベース面110の表面積の約25%〜約75%、またはベース面110の表面積の約40%〜約60%を占有して構わない。
実施の形態において各アレイ290が複数の構造的に画成された突起200を備えうることをさらに明確に示すため、図6、7A、および7Bの各図において、それぞれから選択したアレイの拡大図を示す。
アレイは、任意の適切な技術によって形成されて差し支えない。例えば、アレイは、シリコンマスターなどのマスターを介して形成されてもよい。マスターは、近接UV露光フォトリソグラフィーを利用してケイ素から作製されうる。例として、スピンコーターを使用して、フォトレジストの薄層である紫外線感応性の有機ポリマーをシリコンウエハ上にスピン塗布してもよい。フォトレジストの厚さは、スピン・コーティングの速度および持続時間によって決定される。ウエハを仮硬化(soft-baking)して溶媒をある程度除去した後、フォトマスクを通じて、フォトレジストを紫外線に曝露して差し支えない。マスクの機能は、光がある特定の領域を通過できるようにし、かつ、他の領域の通過を妨げることであり、それによってフォトマスクのパターンを下層のレジスト上に移す。次に、現像剤を用いて溶解性のフォトレジストを洗い落とし、シリコン上に架橋レジストの保護パターンの痕跡を残す。この時点では、レジストは、典型的にはウエハ上に保持され、スタンプを成形するための地形テンプレートとして使用される。あるいは、保護されていないシリコン領域をエッチングし、フォトレジストを剥ぎ取り、さらに安定なテンプレートを生み出すパターン化したシリコンを備えたウエハを後に残すこともできる。構造化された基板における特性の下限値は、テンプレートを作り出すのに用いられる製造工程の解像度(resolution)によって決定される。この解像度は、マスクの暗域のエッジにおける光の回折および、フォトレジストの厚さによって決定される。より小さい特性は、極めて短い波長のUV光(〜200nm)で達成することができる。サブミクロンパターン(例えば約100ナノメートルのエッチング深さ)では、PMMA(ポリメチルメタクリレート)上での電子ビームリソグラフィーを使用して差し支えない。テンプレートはまた、マイクロ機械加工によって生産することができ、あるいは、例えば、回折格子によってあらかじめ作製することもできる。
マスターの簡単な離型を可能にするため、例えばOTS(オクタデシルトリクロロシラン)またはフッ素化シランを含む液相でのシラン処理を用いて抗接着処理を行ってもよい。顕在化後、ウエハをフッ素化シランでベーパープライムし、その後の突起のアレイの除去を補助してもよい。使用されうるフッ素化シランの例としては、限定はしないが、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシランが挙げられる。
突起は、任意の適切なポリマー性の材料または無機材料で作られて差し支えない。適切な無機材料として、ガラス、ケイ素、シリコン、金属などが挙げられる。適切なポリマー性の金属としては、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ゾル−ゲル、または他の細胞培養適合性のポリマーが挙げられる。適切なゾル−ゲルの例としては、酸性条件下におけるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の加水分解を通じて形成されたゾル−ゲルが挙げられる。他の細胞培養適合性のポリマーとして、天然のα−ヒドロキシ酸のポリエステル、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLLA)および乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、アミノ酸系ポリマー、多糖、またはポリスチレンなどが挙げられる。突起を形成するための材料は、機械的特性、細胞相互作用特性、または異なる種類の細胞の細胞培養を最適化するための他の特性に基づいて選択して差し支えない。
突起は、突起が延在する基板と同じ材料でできていて差し支えなく、あるいは、基板とは異なる材料でできていてもよい。突起または基板は、多孔質、非多孔質、マイクロ多孔質、またはマクロ多孔質でありうる。突起または基板は、処理またはコーティングした表面に望ましい特性または特徴を与えるように処理またはコーティングされてもよい。細胞培養の目的でしばしば用いられる表面処理の例としては、コロナまたはプラズマ処理が挙げられる。さまざまな実施の形態では、突起または基板表面は、天然のECMタンパク質または合成ECM材料などの細胞外マトリクス(ECM)材料でコーティングされる。選択されるEMCの種類は、所望の結果、および、培養細胞の所望の表現型など、培養される細胞の種類に応じて変化しうる。天然のECMタンパク質の例としては、フィブロネクチン、コラーゲン、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカンが挙げられる。合成ECMSを作製するための合成材料の例としては、天然のα−ヒドロキシ酸のポリエステル、ポリ−DL−乳酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLLA)および乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)が挙げられる。これらの熱可塑性ポリマーは、射出成形、押出成形および溶媒キャスト法などの成形を含めたさまざまな技法によって、所望の形状へと容易に成形することができる。アミノ酸系ポリマーは、突起または基板のコーティングのためのECMの作製に使用してもよい。例えば、ECMにはコラーゲン様、絹様およびエラスチン様のタンパク質を含めて差し支えない。さまざまな実施の形態では、ECMは、Ca2+などの二価イオンの存在下でゲルを形成するマンヌロン酸とグルロン酸の共重合体の仲間であるアルギン酸を含む。任意の適切な処理技術を用いて、合成ポリマーからECMを作製してもよい。例として、生分解性のポリマーは、繊維、多孔質のスポンジまたは管状構造へと加工されうる。
1種類以上のECM材料を使用して、突起または基板をコーティングしてもよい。例えば、実施の形態ではRGD含有ポリペプチドを含めたインテグリン受容体を結合することができるポリペプチドなどの細胞接着因子、または増殖因子を、ECM材料に取り込んで、表面における吸着または共有結合、または材料の大部分における共有結合を含めた方法を使用して、細胞の接着または特異的機能を刺激することもできる。
上述の突起アレイを有する細胞培養物品を使用して、さまざまな細胞を培養して差し支えなく、また、重要な3次元構造を提供して培養細胞に望ましい特徴を付与してもよい。これらの突起アレイ基板上で任意の種類の細胞または任意の種類の細胞の組合せ(例えば幹細胞)を培養して差し支えないが、追加の詳細は、これらの基板上での肝細胞の培養に関して提示される。下記の例に記載されるように、培養した肝細胞における極性および代謝機能の回復を生じる、構造化された突起アレイを有する細胞培養物品が、初めて、示された。
インビトロで培養した肝細胞は、薬物代謝および毒性の研究において一般的である。しかしながら、従来の二次元の細胞培養基板上で培養した肝細胞は、その極性および薬物代謝および輸送機能を遂行する能力を急速に失う。薬物代謝および輸送機能を維持する能力を改善するため、肝細胞を、(i)動物由来のタンパク質マトリクスであるMATRIGEL(商標)(BD Biosciences社製)上での培養、および(ii)コラーゲンなどのECMの2つの層間のサンドイッチ培養システムでの培養を含めた、すでに確立されたインビトロモデルで培養した。しかしながら、これらのシステムは、動物起源の「MATRIGEL」またはECM材料、複雑な分子構成、バッチごとの変動および制御不可能なコーティングを原因として、ヒト肝細胞の汚染の可能性を含む著しい難点に悩まされる。本明細書に記載される構造化された突起アレイ上での肝細胞の培養は、先行システムの1つ以上の難点を克服しうる。
さまざまな実施の形態では、機能肝細胞は、例えば図1〜7に関して上述した表面などのベース面から延在する、突起アレイを有する細胞培養表面上で培養されて差し支えない。図8を参照すると、極性を維持するための肝細胞の培養方法の実施の形態が示されている。図示するフローチャートに示されるように、肝細胞は、表面(400)から延在する構造化された突起アレイを有する細胞培養表面に播種され、表面(410)上で培養される。実施の形態では、図8に示す方法に従った肝細胞の培養は、肝細胞の極性を回復させるか、または肝細胞の1つ以上の機能を維持する。肝細胞は、図8に示す方法に従って培養されうる。例えば、培養される肝細胞は、ヒトHepG2細胞、ヒトHepG2C3A細胞、不死化されたFaN4細胞、ヒト初代肝細胞、幹細胞に由来する肝細胞など、またはそれらの組合せであって差し支えない。
実施の形態では、肝細胞は、ベース面を備えた基板および前記ベース面から延在する突起アレイを有する物品上で培養される。さまざまな実施の形態では、突起は、約1μm〜約20μmの高さを有し、アレイの隣接した突起間の中心から中心までのベース面に沿ったギャップ距離(d;例えば図2、3A、および4参照)は、約10μm〜約80μmである。一部の実施の形態では、肝細胞はHepG2C3A細胞であり、隣接した突起間の中心から中心までの主表面に沿ったギャップ距離は約15μm〜約30μmである。多くの実施の形態では、細胞は不死化されたFaN4細胞であり、隣接した突起間の中心から中心までの主表面に沿ったギャップ距離は約15μm〜約40μmである。さまざまな実施の形態では、肝細胞はヒト初代肝細胞であり、隣接した突起間の中心から中心までの主表面に沿ったギャップ距離は約30μm〜約60μmである。
肝細胞は、任意の適切な密度で表面に播種されうる。典型的には、肝細胞は、物品またはウェルの表面積の平方ミリメートルあたり約100細胞〜約5000細胞の密度で播種される。播種密度は、培養条件および持続時間に基づいて最適化することができる。例えば、長期間の培養では、播種密度はもっと小さくてもよい(例えば、物品またはウェルの表面積の1平方ミリメートルあたり100細胞〜2000細胞)。
さまざまな実施の形態では、肝細胞をヘルパー細胞と共培養して差し支えない。任意の適切なヘルパー細胞を、肝細胞と共培養して差し支えない。適切なヘルパー細胞の例としては、NIH3T3線維芽細胞、マウス3T3−J2線維芽細胞またはヒト線維芽細胞などの線維芽細胞;ヒトまたはラット肝星細胞;およびクッパー細胞などが挙げられる。図9A〜Cを参照すると、培養に肝細胞を加えた後(9A)、加える前(9B)、または同時(9C)に、ヘルパー細胞を加えて差し支えない。図9Aに示すように、肝細胞は、表面から延在する突起(500)が配列された構造を有する細胞培養表面に播種され、その表面(510)上で培養されうる。次いで、ヘルパー細胞は培養した肝細胞(520)上に播種され、肝細胞(530)と共培養されうる。実施の形態では、図9A(9Bまたは9C)に示す方法で肝細胞をヘルパー細胞と一緒に培養することにより、肝細胞の極性を回復させて差し支えなく、または、培養液中の肝細胞の1つ以上の機能を維持してもよい。図9Bに示すように、ヘルパー細胞は、表面から延在する突起(600)が配列された構造を有する細胞培養表面に播種されて表面(610)上で培養されうる。次いで、肝細胞が、培養したヘルパー細胞(620)上に播種され、ヘルパー細胞(630)と共培養されうる。実施の形態では、図9A(9Bまたは9C)に示す方法で肝細胞をヘルパー細胞と一緒に培養することにより、肝細胞の極性を回復させてもよく、または、培養液中の肝細胞の1つ以上の機能を維持してもよい。図9Cに示すように、肝細胞およびヘルパー細胞は、表面から延在する突起(700)が配列された構造を有する細胞培養表面に播種され、一緒に共培養されうる(710)。実施の形態では、図9A(9Bまたは9C)に示す方法で肝細胞をヘルパー細胞と一緒に培養することにより、肝細胞の極性が回復されうるか、あるいは、培養液中の肝細胞の1つ以上の機能が維持されてもよい。図9A〜Bおよび上記論述は、培養された肝細胞上へのヘルパー細胞の播種(520)または培養されたヘルパー細胞上への肝細胞の播種(620)について言及しているが、肝細胞またはヘルパー細胞が物品の表面を覆う前に、ヘルパー細胞または肝細胞を培養に加え、その後に加えたヘルパー細胞または肝細胞の少なくとも一部は、肝細胞またはヘルパー細胞上ではなく、むしろ細胞培養物品の表面に播種されてもよいことが理解されよう。以下の実施例にさらに詳細に記載するように、肝細胞と共培養されたヘルパー細胞は、突起アレイ間の領域の方向に分離する傾向があるが、肝細胞は、突起アレイが占める領域内に分離する傾向にある。このような分離は、インビボの細胞配列に似た細胞配列を提供し、ここで、肝細胞は一般にグループ化される。
ヘルパー細胞と肝細胞との播種するタイミングは微調整および最適化することができる。ヘルパー細胞が、実施の形態に置いて最初に播種される場合、肝細胞はその1日後に播種されうる。反対に、肝細胞が先に播種される場合には、ヘルパー細胞は、肝細胞の細胞膜極性および/または代謝機能が回復した(一般に、2〜7日間)後に播種されうる。ヘルパー細胞と肝細胞の播種比は、基板、培養条件、および培養持続時間に応じて変化しうる。長期間の培養(〜数週間)では、ヘルパー細胞の播種はこれらの短期間の培養未満(数日間)でありうる。
任意の適切な培養時間および条件は、本明細書に記載される方法に従って採用されうる。温度、CO2およびO2レベル、培地内容物などは、培養される細胞の性質に応じて決まり、容易に修正できることが理解されよう。細胞を表面上で培養する時間は、研究する細胞応答または所望の細胞応答に応じて変化しうる。細胞の播種前に、細胞を採取し、例えば、細胞を表面上に播種した後に培養する、増殖培地などの適切な培地に懸濁して差し支えない。例えば、細胞は、血清含有培地、馴化培地、または既知組成培地に懸濁し、培養してもよい。例えばAmerican Tissue Cell Cultureまたは他の供給業者によって推奨されるものなど、各種類の細胞にとって最適な培地を、改変して、または改変せずに使用することができる。
本明細書で提供する説明のほとんどは、基板表面から延在する突起のアレイを有する基板上での肝細胞の培養に関するが、他の細胞型も、これらの基板上で培養されることが有利であろうことが理解されよう。構造化された、再生可能な三次元環境を提供することが有益でありうる任意の細胞型が、本明細書に記載される基板および物品上で有利に培養されうる。例として、突起およびアレイの間隔および寸法は、幹細胞を分化するであろう方法に影響を与えるように調製して差し支えない。
以下に、上述の物品および方法のさまざまな実施の形態を説明する、非限定的な例を提示する。
I.実験手順
A.材料
コラーゲンIおよび「MATRIGEL」はBD Biosciences社(米国メリーランド州スピアーズ所在)から購入した。組織培養処理したポリスチレン(TCT)24ウェルマイクロプレートはCorning Inc.社(米国ニューヨーク州コーニング所在)から購入した。テキサスレッドで標識されたファロイジン(TR−ファロイジン)および他のすべての化学薬品は、米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma Chemical Co.社から購入した。コラーゲンIをコーティングした24ウェルマイクロプレートは、BD Biosciences社から入手した。
B.シリコンマスターの作製
アレイを形成するためのマスターは、ポジ型レジスト(AZ1529)でコーティングしたSi[100]ウエハ上での近接UV露光フォトリソグラフィーによってシリコンから作製し、深堀り反応性イオンエッチング(深さ1.4μm)によってパターン移動させた。サブミクロンパターンでは、UVフォトリソグラフィーの代わりに、PMMA(ポリメチルメタクリレート)上で電子ビームリソグラフィーを使用し、エッチング深さは100nmに限られた。このマスターの簡単な離型を可能にするため、液相中、OTS(オクタデシルトリクロロシラン)またはフッ素化シランを用いたシラン化を利用して、抗接着処理を行ってもよい。顕在化後、その後のPDMS(ポリジメチルシロキサン)除去を補助するため、フッ素化シランを用いてウエハをベーパープライムした。使用されうるフッ素化シランの例としては、限定はしないが、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシランが挙げられる。
C.PDMS突起アレイ基板の作製
シリコンマスター上に、PDMSオリゴマーと、シルガード(Sylgard)184キット(Dow Corning社製)から得た網状物質(reticular agent)の混合物(質量比10:1)を含むPDMSプレポリマー溶液を硬化することによって、PDMS突起アレイを形成した。PDMSを70℃で80分間熱硬化した。フッ素化シランでベーパープライムしたシリコンウエハ上で硬化することによって、突起アレイを有する平らなPDMS基板を形成し、外科用メスを用いて、硬化したPDMS突起アレイ基板の各末端において、直径約4ミリメートル×4ミリメートルの基板を切断した。
PDMSは、パターン化したテンプレートにきわめて忠実に型作る、シリコン・エラストマーである(シルガード184(Dow Corning社製))。PDMSは、融点(約−50℃)およびガラス遷移温度(約−120℃)が低いことから、室温で液体のプレポリマーである。PDMS構造化された基板を作製するため、プレポリマーを硬化剤と共に混合し、テンプレート上に注ぎ、ポリマーを硬化させて、架橋した。
D.24ウェルマイクロプレートにおけるPDMS突起アレイ基板の組立
PDMS突起アレイを作製した後、500mTorrの圧力で30秒間のO2プラズマ洗浄を用いて表面酸化に供し、24ウェルマイクロプレートの各ウェルの底に置いた。ウェル表面に対して突起アレイを押圧することにより、アレイ突起とマイクロプレートウェルとの十分な接着を得た。その後、各ウェルを、75%エタノールで2回、各30秒間満たし、続いてPBS緩衝剤で洗浄し、乾燥した。一部の実験では、PBSで緩衝したコラーゲンI溶液(200μl)を各ウェルに加え、45分間インキュベートした。コラーゲンI溶液の吸引後、各ウェルの表面を風乾した。
E.細胞培養
HepG2C3A(CRL−1074)ヒト肝芽細胞腫細胞株をアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)から購入し、1mMのピルビン酸ナトリウム、10%(v/v)のウシ胎仔血清(FBS)、および2mMのL−グルタミンを含むMEM培地で培養した。すべての細胞培養において、HepG2C3A細胞を24ウェルプレートに播種した。細胞は、標準条件:5%のCO2および95%の空気の湿潤環境下、37℃で、培地を毎日交換する条件下で培養した。細胞は、20,000、40,000または80,000の密度で各PDMS基板上に播種した。各条件について2回ずつ実験した。BD Biosciences社製のコラーゲンIマイクロプレートを対照として使用した。
不死化した肝細胞株F2N−4および初代肝細胞は、両方とも、MultiCell Inc.社から購入し、供給業者が推奨するプロトコルを用いて、プレート培地で1日間培養し、維持培養液に置き換え、毎日交換した。
低温保存した初代肝細胞は、XenoTech社から購入した(H1500.H15A+ロット番号770)。細胞を解凍し、Xenotech社製の肝細胞精製キット(カタログ番号:K2000)を用いて、製造業者の使用説明書に従って精製した。細胞(50,000/ウェル)を、1日目に、10%のFBSを含む、ガラクトースを含まないMFEプレート培地(Corning Inc.社製)を使用して、コラーゲンIをコーティングした96ウェルプレート(BD Bioscience社製、カタログ番号354407)またはコーティングしていないPDMSマイクロ突起アレイ基板に播種した。培地は、2日目に、0.25mg/mlの「MATRIGEL」(BD Bioscience社製、カタログ番号356234または354510)を有する、10%のFBSを含むMFE維持培養液に変更した。細胞は、1日目から8日目まで、5%のCO2と共に37℃で培養した。
F.免疫染色および蛍光画像
F−アクチン染色を行うため、概して、製造業者が推奨するプロトコルを使用した。手短に言えば、3.7%のホルムアルデヒドを用いて細胞を固定し、1%のウシ血清アルブミン(BSA)中、0.1%のトリトンX−100で5分間透過処理し、特定温度で一定時間、10%のウシ血清アルブミン中で遮断し、TR−ファロイジン(1μg/ml)中で1時間培養し、撮影前にリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄した。
生/死細胞染色では、Molecular Probes社(米国オレゴン州ユージーン所在)製の生/死細胞染色試薬キットを、製造業者の推奨プロトコルとともに用いた。すべての顕微鏡画像は、ツァイス顕微鏡を使用して得た。
G.MTSアッセイ
MTSアッセイを用いて、肝細胞の拡散を試験した。3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−5−(3−カルボキシ−メトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム内塩)(MTS)およびフェナジンメトサルフェート(PMS)は、それぞれ、Promega社(米国ウィスコンシン州マディソン所在)およびSigma−Aldrich Chimie社から入手した。MTS(2mg/ml;pH6.5)をPBSに溶解し、ろ過殺菌した。3mMのPMS溶液も調製し(PBS中)、ろ過殺菌した。これらの溶液を、光保護した容器内に−20℃で保管した。MTSの細胞還元を促進するため、使用直前に、MTSにPMSを加えた(MTS−PMS比:1:20)。混合物の一部(150μl)を各ウェルに加えた。24時間の細胞培養後、100マイクロリットルの上清を1ミリリットルの脱イオン水で希釈した。分光測光法を用いて、490nmで光学密度を測定した。24時間の培養後、MTSアッセイを用いて細胞増殖を分析した。細胞増殖は、血球計および細胞カウンター(Beckman Coulter社製(米国カリフォルニア州フラートン所在)でも分析した。
H.CYP3A4誘導アッセイ
プロメガ(Promega)キット(Invitrogen Corporation社製(米国カリフォルニア州カールズバッド所在))を薬物効果の研究に用いた。手短に言えば、マイクロ突起アレイを備えたPDMS基板上で特定の時間、細胞を培養した。3日間の継続的な薬物(リファンピン)誘導の後、基板を培地/PBSで2回洗浄した。200μlの発光原基板(培地中、ルシフェリン−PFBEの1:40希釈)をすべてのウェルに加え、37℃で3〜4時間インキュベートした。ウェルから50マイクロリットルの反応液を移し、50マイクロリットルのルシフェリン検出試薬を加え、室温でさらに20分間インキュベートした。結果の確認のため、照度計を用いて発光を測定した。
I.初代肝細胞の培養および遺伝子発現解析
低温保存した初代肝細胞では、入手したままの状態の細胞を室温まで解凍し、さらに培養することなく、インビトロで直接溶解させた。PDMSマイクロ突起基板上で培養された初代肝細胞では、細胞は、異なるPDMS基板上で直接培養され、2日目に「MATRIGEL」を含む溶液にオーバーレイし、6日間、血清の不存在下でさらに培養を継続した。その後、培養した肝細胞を採取し、Qiagen RNeasyミニキット(カタログ番号74104)オン・カラムDNase Digestion(カタログ番号79254)を用いて全RNAを抽出した。Quant−iT(商標)RiboGreen(登録商標)RNAアッセイキット(Invitrogen社製、カタログ番号R11490)を用いて各サンプルのRNA濃度を定量し、PCR−アレイ実験に使用するまで−80℃で保管した。SA Bioscience社のマニュアル(パーツ番号1022A)に従い、アレイプレート(ヒト制癌剤耐性および代謝PCRアレイ(Human Cancer Drug Resistance & Metabolism PCR Array)、カタログ番号PAHS−004、SABioscience社製(米国メリーランド州フレデリック所在))を調製した。96ウェルアレイプレートあたり250ngの全RNAを使用した。PCR−アレイは、ソフトウェアSDS1.3を使用して、96ウェル標準ブロックを用いたABI−7300上で行った。PCR条件は、使用者マニュアル(パーツ番号1022A)に指示されるように設定した。SA Bioscience社のオンライン分析ツールを用いてデータを解析した。
II.酸化し、かつ、コラーゲンIをコーティングしたPDMS突起アレイ基板上で培養された肝細胞
肝細胞の機能の維持における細胞膜の極性の回復の重要性の理由から、突起アレイ基板について、細胞の付着および増殖を促進し、培養された肝細胞の細胞膜の極性を維持する能力を調べた。説明のために、インビボにおける概略的な肝細胞800の極性を示す図10を提供する。肝臓では、肝細胞800の基底側細胞膜810は、肝洞様毛細血管、または血液供給、ならびに隣接する肝細胞間の狭い細胞間隙に晒される。細胞膜820の頂端部は、細胞から胆汁を回収する肝細胞間の管または間隙(すなわち、毛細胆管)に曝露される。シヌソイド細胞900も図10に示す。
図11は、2種類の異なる酸化したPDMS突起アレイ基板上で細胞培養された肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。突起マイクロアレイ190(例えば図7Aの190参照)基板は、突起のマイクロアレイ290(図7Aの290参照)を備える。図11Aおよび11Bでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は5μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)(図9参照)は10μmである。図11Cおよび11Dでは、突起マイクロアレイ290における各突起は、15μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は25μmである。両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000細胞であった。1日間培養し、生/死染色試薬で染色した後、基板上の細胞を、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図11Aおよび11C)、ならびに蛍光画像(図11Bおよび11D)の両方を用いて観察した。これらの画像に示されるように、細胞は、突起間隔にかかわらず、突起マイクロアレイ290領域に好んで付着した。蛍光画像は、細胞の大部分が蛍光下で緑色に見え(生存細胞の指標)、蛍光下で赤色に見える(死亡細胞の指標)細胞がほとんどないことから明らかなように、すべて(またはほとんどすべて)の肝細胞がこれらの基板上で培養後に生存していることを示唆している。
図12は、2種類の異なる酸化したPDMS突起基板上で細胞培養された肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、4日間の培養後に画像を入手した。図12Aおよび12Bでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は15μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は25μmである。図12Cおよび12Dでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は5μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は10μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり20,000細胞であった。4日間培養し、生/死染色試薬で染色した後、基板上の細胞を、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図12Aおよび12C)、ならびに蛍光画像(図12Bおよび12D)の両方を用いて観察した。この場合も、これらの画像に示されるように、細胞は、突起アレイ領域に好んで付着した。白黒の画像でははっきりしないが、赤色の蛍光性の染色が存在しないことが分かる。蛍光赤色の欠如は、肝細胞が、これらの基板上で培養後に生存していることを示唆した。ギャップが短い、突起を有する突起アレイ基板上では(図12Cおよび12D)、細胞は3次元集合を形成する傾向があり、hepG2C3A細胞が、より小さい間隔を開けた突起マイクロアレイにおいて、さらに生理的に生存可能であったことを示唆した。
図13は、2種類の異なるコラーゲンIでコーティングしたPDMS突起基板上で細胞培養された肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、4日間の培養後に画像を入手した。図13Aおよび13Bでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は20μmである。図13Cおよび13Dでは、突起アレイにおける各突起は5μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は5μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり20,000細胞であった。4日間培養し、生/死染色試薬で染色した後、基板上の細胞を、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図13Aおよび13C)、ならびに蛍光画像(図13Bおよび13D)の両方を用いて観察した。結果は、ほとんどすべての細胞がこれらの基板上で生存し、興味深いことに、コラーゲンIをコーティングした突起基板上では、細胞は単分子層へと増殖する傾向があったことを示した。
図14は、2種類の異なるコラーゲンIでコーティングしたPDMS突起基板上で細胞培養された肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、4日間の培養後に画像を入手した。図14Aおよび14Bでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)200は20μmである。図14Cおよび14Dでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)200は25μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000細胞であった。細胞を4日間継続培養し、続いて固定し、テキサスレッド−xファロイジンで染色し、最終的に、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図14Aおよび14C)、ならびに蛍光画像(図14Bおよび14D)の両方を用いて観察した。画像に示されるように、細胞は、単分子層を形成する傾向があった。興味深いことに、細胞は、アクチン染色パターンから明らかなように、特有の極性を発現した。突起領域290内に位置する細胞では(実線の円で示す)、アクチン・フィラメントは、主に、各細胞の一方の側に集中し(白色の矢印で示す)、肝細胞のインビボ様の極性のための毛細胆管−マーカーの形成を示唆した。これらの突起アレイ基板上で培養された肝細胞の著しいインビボ様の極性は、インビトロにおける肝細胞培養が、サンドイッチではない単分子層の培養条件下でインビボ様の細胞形態をもたらすことができるという初めての実験的証拠を表している。細胞膜の極性は、インビトロで培養された肝細胞の機能についての重要な指標である。他方では、点線の円(390)で示されるマイクロ突起マイクロアレイ間の領域において、細胞は、アクチン・フィラメントの集中した染色パターンをほとんどまたは完全に生じない傾向があり、これらの領域における細胞の極性は回復しなかったことを示唆した。
図15は、2種類の異なる酸化したコーティングPDMS突起基板上で細胞培養した肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、5日間の培養後に、画像を入手した。図15A〜Dでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は15μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は20μmである。図15Eおよび15Fでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は15μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は25μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり20,000細胞であった。細胞を5日間継続培養し、続いて固定し、テキサスレッド−xファロイジンで染色し、最終的に、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図15Aおよび15Cおよび15E)、ならびに蛍光画像(図15Bおよび15Dおよび15F)の両方で観察した。画像に示されるように、細胞は、突起領域でのみ、集合を形成する傾向がある。興味深いことに、細胞は、図15B、15Dおよび15Fに示すアクチン染色パターンから明らかなように、特有の極性を発現した。アクチン・フィラメントは、主に、各細胞の一方の側に集中しており、肝細胞のインビボ様の極性についての毛細胆管−マーカーの形成を示唆した。
図16は、コラーゲンIでコーティングしたPDMS突起基板上で細胞培養した肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、5日間の培養後に、画像を入手した。ここでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は、10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は20μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり20,000細胞であった。細胞を5日間継続培養し、続いて固定し、テキサスレッド−xファロイジンで染色し、最終的に、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図16A)、ならびに蛍光画像(図16B)の両方で観察した。画像に示されるように、細胞は、この場合も、単分子層の集合を形成する傾向があり、主に突起領域に位置していた。同様に、細胞は、図16Bに示すアクチン染色パターンから明らかなように、特有の極性を発現した。アクチン・フィラメントは、主に、各細胞の一方の側に集中しており、肝細胞のインビボ様の極性についての毛細胆管−マーカーの形成を示唆した。
図17は、酸化したPDMS突起基板上で細胞培養した肝細胞hepG2C3Aの顕微鏡画像を示している。ここでは、7日間の培養後に画像を得た。ここでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は20μmである。この実験では、両タイプの突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり80,000細胞であった。細胞を7日間にわたり継続的に培養した後、ろ過し、テキサスレッド−xファロイジンで染色し、最後に、位相コントラスト光学顕微鏡画像(図17Aおよび17C)、ならびに蛍光画像(図17Bおよび17D)を用いて調べた。画像に示すように、細胞は、この場合も、3次元の集合を形成する傾向があり、主に突起領域に位置していた。同様に、細胞は、図17Bおよび17Dに示すアクチン染色パターンから明白なように、特有の極性を示した。アクチン・フィラメントは、主に、各細胞の一方の側に集中し、毛細胆管−肝細胞のインビボ様の極性用のマーカーの形成を示唆している。
図18は、3種類の基板:コラーゲンIをコーティングしたPDMS突起基板(1)、コーティングしていない、酸化PDMS突起基板(2)、およびコラーゲンIをコーティングした組織培養処理したポリスチレン基板(3)における肝細胞hepG2C3Aの細胞増殖の結果を示している。ここでは、突起アレイにおける各突起は10μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は20μmである。この実験では、これらの基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり100,000細胞であった。1日後、MTSアッセイを用いて細胞を調べた。結果は、両方の突起マイクロアレイ基板上の肝細胞が、コラーゲンIをコーティングしたTCT表面上のものよりもわずかに小さい測定値をもたらし、これらの突起マイクロアレイ基板における細胞増殖および生存能力は、コラーゲンIをコーティングしたTCT表面における能力よりもわずかに遅いことを示唆している。
III.酸化したPDMS突起アレイ基板における肝細胞とヘルパー細胞の共培養
NIH3T3線維芽細胞を、上述のように作製した酸化PDMS突起アレイ基板上で、hepG2C3A細胞と共培養した。
図19は、hepG2C3A細胞の不存在下における、酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板上でのNIH3T3線維芽細胞の光学顕微鏡画像を示している。NIH3T3細胞を、直径10μm、2つの最も近い突起間のギャップ距離25μmのマイクロ突起のアレイを有する、プラズマ処理したPDMSマイクロ突起基板上で増殖させた。6日間の細胞培養後、図19に示す画像を撮影した。初期の播種密度は24ウェルマイクロプレートにおいて40k/ウェルであった。細胞が突起マイクロアレイ領域内で増殖する傾向があることは、注目すべきである。
図20は、直径10μmのマイクロ突起および2つの最も近い突起間のギャップ距離20μmのアレイを有する、酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板上でのNIH3T3線維芽細胞とhepG2C3A細胞の共培養の光学顕微鏡画像である。ここでは、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000個のNIH3T3細胞をDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)培地に播種し、基板上で1日間前培養し、次に、MEME(最小必須培地イーグル)培地において、ウェルあたり40k細胞のHepG3C3A細胞で覆った。9日間の共培養後に画像を撮影した。結果は、NIH3T3細胞の大部分が、HepG2C3Aの細胞集合の間、かつ、マイクロ突起アレイ間の平らな領域に位置していたのに対し、肝細胞はマイクロ突起アレイ領域内に3次元の集合を形成したことを示した。興味深いことには、NIH3T3細胞は主に、HepG2C3Aの細胞集合の間、およびマイクロ突起アレイ間の平らな領域に位置するが、NIH3T3細胞は、マイクロ突起アレイ内の主表面に付着することができ(図19参照)、HepG2C3A細胞または細胞集合下で、細胞の基底層を形成する。
図21は、直径10μm、2つの最も近い突起間のギャップ距離(d)が20μmのマイクロ突起200のアレイを有する酸化PDMSマイクロ突起アレイ基板上における、NIH3T3線維芽細胞とhepG2C3A細胞の共培養の光学顕微鏡画像である。Here24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000細胞のHepG2C3A細胞をMEME培地に播種し、基板上で1週間前培養した後、ウェルあたり40k細胞のNIH3T3細胞で覆った。9日間の共培養の後、画像を撮った。結果は、C3A細胞はマイクロ突起アレイ領域290内に3D集合を形成したのに対し、NIH3T3細胞は、大部分がC3A集合390の間、かつ、マイクロ突起アレイ間の平らな領域に位置したことを示した。
図22は、図20および図21に示すように、酸化したPDMSマイクロ突起基板上でNIH3T3細胞と共培養したHepG2C3A細胞のリファムピン誘導性のCYP3A4酵素活性のグラフである。72時間の継続的な薬物誘導後に、リファンピンによるCYP3A4の誘導倍率(fold of induction)(FOD、Y軸)を得、Promega CYPキットを使用して測定した。3つの培養条件:その後に3T3細胞と共培養したC3A細胞(1);その後にC3A細胞と共培養したNIH3T3細胞(2);および、BD Biosciences社製のコラーゲンでコーティングした24ウェルマイクロプレート上で細胞培養したC3A(3)について細胞の数を正規化した。結果は、リファンピン誘導は、両方の共培養条件において、CYP3A4の機能をほぼ100%増大させるが、コラーゲンでコーティングした表面には増大は生じなかったことを示した。
IV.酸化し、コラーゲンIをコーティングしたPDMS突起アレイ基板上での肝細胞の長期間培養
従来の2Dサンドイッチまたは3D「MATRIGEL」での肝細胞の培養は、一般に、短期間の培養(例えば1週間程度)に限られる。長期間の培養後、これらの培養された肝細胞は、細胞の生存能力または代謝機能がある程度損失されうる。本明細書に記載される突起アレイ基板は、肝細胞の長期間培養を支持する。
図23は、酸化したPDMS突起アレイ基板上で細胞培養した肝細胞hepG2C3Aの光学顕微鏡画像を示している。突起アレイ基板は突起200のアレイ290を備える。図23Aおよび23Bでは、突起マイクロアレイ290における各突起200は5μmの直径および10μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は20μmである。突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000細胞であった。28日間の培養後、基板上の細胞を、位相コントラスト光学顕微鏡画像で直接調べた。これらの画像に示されるように、細胞は、突起アレイ領域290上に好んで付着して、3次元集合を形成した。興味深いことに、このような長期間の培養後、2つの隣接するマイクロ突起アレイ間のC3Aの細胞集合は、互いに通信することができる(図23B)。
図24は、コラーゲンIをコーティングした酸化したPDMS突起アレイ基板上で細胞培養された肝細胞hepG2C3Aの光学顕微鏡画像を示している。突起アレイ基板は、突起のアレイを備えている。図24Aでは、突起のマイクロアレイ290における各突起200は5μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離(d)は15μmである。図24Bでは、突起アレイにおける各突起は5μmの直径および5μmの高さを有し、最も近い突起間のギャップ距離は10μmである。2枚の突起アレイ基板についての播種数は、24ウェルマイクロプレートにおけるウェルあたり40,000細胞であった。28日間の培養後、基板上の細胞を、位相コントラスト光学顕微鏡画像で直接調べた。これらの画像が示すように、細胞は、両方の突起アレイ領域に好んで付着し、3次元集合を形成した。興味深いことに、このような長期間の培養後、2つの隣接するマイクロ突起アレイ間のHepG2C3Aの細胞集合も互いに通信することができる。
図25は、図23に例示する、酸化PDMSマイクロ突起基板上で細胞培養されたHepG2C3Aについてのリファンピン誘導性のCYP3A4酵素活性のグラフである。ここでは、さまざまなマイクロ突起基板を使用した。相対的に、TCT表面の細胞を負の対照として用いた。28日間の培養後、CYP3A4誘導、すなわち、リファンピンによるCYP3A4の誘導倍率(FOD)を、72時間の継続的な薬物誘導後に得て、Promega CYPキットを使用して測定した。細胞の数をすべての培養条件について正規化した。マイクロ突起アレイ基板のパラメータは、x/yとしてX軸上に記載されており、ここで、xは各アレイにおけるマイクロ突起の高さのことをいい、yは2つの最も近いマイクロ突起間のギャップ距離(d)のことをいい、両方ともマイクロメートル単位で表される。結果は、最も影響力の大きいパラメータは隣接するマイクロ突起間のギャップ距離であり、最適な距離は10〜25μmであるか、または、これらの条件におけるこれらの細胞についての単一のHepG2C3A細胞の大きさの2倍に近いことを示した。このようなギャップ距離依存性の最大CYP3A4誘導は、F2N4細胞または初代肝細胞(図27および29;データは示さず)についても真実であることが分かった。これらの結果は、肝細胞が長期間の培養を生き抜くことができ、薬物誘導下において、非常に強力な機能の発現を有することを示唆している。とりわけ、コラーゲンIをコーティングしたPDMS基板上のHePG3C3A細胞は、短期の培養(〜5日間)後に単分子層を形成する傾向がある。しかしながら、細胞培養して4週間後に、我々は、それらの細胞が、マイクロ突起アレイの配置後にネットワークを形成すること、および、非マイクロ突起アレイ領域に先に存在していた細胞が消失することを見出した。1つの可能性は、非マイクロ突起アレイ領域における細胞は、長期間の培養を生き抜くことはできないが、マイクロ突起アレイ領域において、細胞が非常に健康的に増殖することであり、このことは、高品質のネットワークの形成、ならびに薬物誘導の実験結果によって証明された。
共培養研究の結果は、幾つかの重要な所見を示した。第1に、マイクロ突起アレイ基板は長期間の細胞増殖を支持する。共培養したHepG2C3A細胞は、突起アレイによって画成された領域内に選択的に留まるが、NIH3T3細胞は、アレイ間のスペースに選択的に留まる。このような配置は、肝細胞が集合する傾向にあるインビボの配置を反映している。NIH3T3のHepG2C3Aとの共培養がC3A4 P450の発現を増大できることを示唆する結果は、マイクロ突起アレイ基板上での共培養がインビボにおける機能を模倣することのさらなる証拠を示している。加えて、マイクロ突起アレイ基板は、細胞形態および細胞間通信を制御することが示された。とりわけ、極性を急速に失う2次元基板上での細胞増殖と比較して、マイクロ突起アレイ基板における細胞増殖は、細胞膜の極性を回復させ、機能発現の促進を表す。
V.さまざまなPDMS突起アレイ基板上で培養した初代肝細胞の遺伝子発現解析
遺伝子発現解析は、インビトロで培養した初代肝細胞の機能評価によく使用されるようになっている。我々は、SABiosciences社製のヒト制癌剤耐性および代謝PCRアレイ(Human Cancer Drug Resistance & Metabolism PCR Array)を使用して、肝細胞機能における2つの重要な遺伝子:10CYP遺伝子および10トランスポーター遺伝子の発現を体系的に評価した。比較のために、低温保存した初代肝細胞も分析した。図26は、内在的制御遺伝子GADPHに対する正規化後、インビトロ培養していない10CYP遺伝子についてのGADPH制御遺伝子の発現に対する、低温保存した肝細胞の基礎mMRNA発現における倍率変化の対数を示している。結果は制御GADPH遺伝子の中程度の発現と比較して、この低温保存した肝細胞においてすべてのCYPが発現されたが、比較的低い発現であり;異なるCYP遺伝子は異なる発現レベルを生じさせ、CYP2E1は最も高い発現を有していたことを示した。同様に、低温保存した肝細胞は内在的制御遺伝子GADPHに対する正規化後、図28に示すように、非常に低レベルでは、すべての10トランスポーター遺伝子を発現する。
図27は、2つの対照:コラーゲンIでコーティングしたTCTと「MATRIGEL」に挟まれた細胞、およびコーティングしていないTCTと「MATRIGEL」に挟まれた細胞と比較した、低温保存した肝細胞(結果を図26に示す)に対する、5種類の異なるマイクロ突起基板上で培養された肝細胞における遺伝子10CYP遺伝子の発現(CYP1A1、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C19、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4およびCYP3A5)の倍率変化の対数を示している。PDMS突起マイクロアレイ基板を(X、Y、Z)と定義し、ここで、Xは2つの隣接する突起間のマイクロメートル単位のギャップ距離(d)であり、Yは突起のμm単位の直径であり、Zは突起のマイクロメートル単位の高さである。突起マイクロアレイは六角形をしている。結果は、改質「MATRIGEL」のオーバーレイ培養を用いて、異なる突起マイクロアレイ基板上で7日間、インビトロで培養した後、我々が、すべての突起マイクロアレイ基板上で培養された肝細胞において、すべてのCYP遺伝子がまだ検出可能であり;CYP遺伝子発現は、マイクロ突起のギャップ距離(d)依存性を生じ、および50μmの(すなわち、初代肝細胞の大きさの2倍近い)(d)を有する基板は、ほとんどすべてのCYP遺伝子において最も高い発現を生じたことを見出したことを示していた。最小のギャップ距離(d)(35μm)を有する突起マイクロアレイ基板を除いて、すべてのPDMS突起マイクロアレイ基板は、2つの対照よりも高いCYP遺伝子の発現を生じた。
図29は、2つの制御基板のものと比較して、低温保存した肝細胞に対し、突起マイクロアレイ基板上で培養された肝細胞における10トランスポーター遺伝子の基礎mMRNA発現(ABCB1、ABCC1、ABCC2、ABCC5、ABCC6、ABCG2、AHR、AP1S1およびAPC)における倍率変化の対数を示している。結果は、最小のギャップ距離(d)の基板(すなわち、(35、10、5)基板)を除いたすべての突起マイクロアレイ基板上で培養された肝細胞が、低温保存した肝細胞ならびに2つの制御基板上で培養された肝細胞よりも高い、ほとんどすべてのトランスポーター遺伝子の発現を生じたことを示している。これらの結果は、突起マイクロアレイ基板(特にギャップ距離)の適切な設計を所与として、培養された初代肝細胞はCYP遺伝子の高水準の発現を維持し、かつ、トランスポーター遺伝子の高い発現を獲得することを示唆し;2種類の薬物代謝に関連した遺伝子のこのような高い発現は、本発明の開示基板上で培養した肝細胞が、より良好な機能につながり、高スループットの創薬および薬物安全性の評価に使用することができることを示唆している。
図11〜17、20、21、23、および24では、マクロアレイ190、マイクロアレイ290、突起200、およびマイクロアレイ間のスペース390が示されており、明瞭化の目的で標識されている。
よって、細胞培養のための間隔を開けた突起基板および装置の実施の形態が開示される。当業者は、明細書に記載される細胞培養装置および方法が、開示されている以外の実施の形態で実施することができることを認識するであろう。開示される実施の形態は、例証の目的で提示されているのであって、限定するものではない。

Claims (5)

  1. ベース面を有する基板と、
    前記ベース面から延在する突起のアレイと、
    を備えた細胞を培養するための物品であって、
    前記突起が1μm〜100μmの高さを有し、
    前記ベース面に沿った、隣接した突起間の中心から中心までのギャップ距離が10μm〜80μmである、
    ことを特徴とする物品。
  2. 前記物品が、前記ベース面から延在する突起の複数のアレイを備えていることを特徴とする請求項1記載の物品。
  3. 前記複数のアレイが、前記ベース面の表面積の10%〜100%を占めることを特徴とする請求項2記載の物品。
  4. 前記突起間のギャップ距離が10μm〜80μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の物品。
  5. 、前記肝細胞の代謝機能を回復させるために、請求項1〜4いずれか1項記載の物品上で肝細胞を培養する工程を有してなる方法。
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