JP2012204322A - 非水電解質二次電池用活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式:AxM1 yM2 1−yPO4F(ここで、AはNaを必須としてLi,Na及びKから選択される1種又は2種以上の元素であり1≦x≦2、M1はFe及びCoから選択される1種又は2種の元素であり0.9≦y≦1、M2はMn,Ni,Mg,Al,Ti,V及びZnから選択される1種又は2種以上の元素である)で表される化合物からなる活物質粒子の製造方法であって、前記A,M1,M2,PO4及びFの源となる原料化合物粉末を混合する工程と、混合された原料化合物粉末を非酸化性ガス中で熱処理する仮焼成工程と、得られた仮焼成物を金属材料に包囲された状態で非酸化性ガス中で熱処理する本焼成工程とを有する。
【選択図】図3
Description
しかし、リチウム二次電池はLi等の稀少金属を必要とするため、大型電源の市場が本格化したときには資源供給の問題が懸念される。そこで、より資源が豊富で安価な材料で構成することができるナトリウム二次電池の研究・開発が進められている。
一方、リチウム二次電池においても熱的安定性の向上やエネルギー密度の増大を目的とした開発が続けられ、特に、正極活物質に関して、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)やフッ化リン酸鉄リチウム(Li2FePO4F)等の新しい化合物が精力的に検討されている。
このように、熱処理を行う対象物質が金属材料に包囲された状態で本焼成を行うことによって、得られる活物質粒子中のアルカリリン酸塩、酸化鉄等の不純物の生成が抑えられ、かつ前記活物質粒子の性状、純度等のばらつきがより小さくなる。
このように、原料化合物粉末に炭素物質源を加えることによって、活物質粒子が必要以上に大きく成長することが防止され、前記化合物の合成と同時に活物質粒子表面の炭素物質層が形成される。
また、好ましくは、前記一般式においてAがNaであることを特徴とする。
これにより、前記化合物の一次粒子の表面が、より均一に、炭素物質によって被覆される。
まず、本発明の第一の実施形態によって製造する活物質粒子の構造を説明する。
当該活物質粒子は、一般式:AxM1 yM2 1−yPO4Fで表される化合物からなる。
図1にこの化合物の結晶構造を示す。
図2は本実施形態のフローチャートを示している。本実施形態においては、原料粉末の粉砕・混合、仮焼成、仮焼成物の粉砕・混合、本焼成を経て目的とする活物質粒子が製造される。なお、仮焼成および本焼成は連続して実施してもよいが、均一な生成物を得るためには、両者を別工程として、仮焼成物を粉砕・混合した後に本焼成を行うことが望ましい。
仮焼成時間は、仮焼成温度に応じて適当に定めることができる。
この金属材料は、反応物から揮発したFが反応系外に拡散して失われるのを抑制する機能と、雰囲気中の酸素を除去する機能を営む。これらの機能によって、再現性よく、不純物の少ない活物質粒子を製造することができる。この観点から、原料化合物と金属材料との空間はできるだけ狭いことが好ましい。
金属材料による原料化合物粉末の包囲の仕方は、その包囲された内部空間と外部とのガスの流れを完全に遮断するほどの密閉性は必要とされないが、内部で揮発したFの外部への拡散・消失を抑制するほどの密閉性を有することが望ましい。
また、前記金属材料は単一の金属からなるものでもよいし、異なる金属を表面にめっき等したものでもよい。後者の場合は、酸素除去の効果の大小は表面層の金属の種類による。
また、前記混合された原料化合物粉末を金属箔等で包み込んで耐火材料製容器に納めた後、さらに全体を金属箔等で包んでもよい。
本焼成時間は、本焼成温度に応じて適当に定めることができる。
金属材料による原料化合物粉末の包囲の仕方は、その包囲された内部空間と外部とのガスの流れを完全に遮断するほどの密閉性は必要とされないが、内部で揮発したFの外部への拡散・消失を抑制するほどの密閉性を有することが望ましい。
また、前記金属材料は単一の金属からなるものでもよいし、異なる金属を表面にめっき等したものでもよい。後者の場合は、酸素除去の効果の大小は表面層の金属の種類による。
また、前記混合された原料化合物粉末を金属箔等で包み込んで耐火材料製容器に納めた後、さらに全体を金属箔等で包んでもよい。
次に、本発明の第二の実施形態によって製造する活物質粒子の構造を説明する。
当該活物質粒子は、電極の酸化・還元反応に寄与する化合物が一般式:AxM1 yM2 1−yPO4Fで表され、その化合物粒子の表面の一部または全部が炭素物質で被覆されている。
本実施形態は、出発原料として炭素物質の源となる化合物粉末をさらに用いる点で第一の実施形態と異なる。
また、炭素物質源は、原料粉末中で微視的にも均一に分散、炭化させることが容易となるので、高分子化合物でないことが好ましい。
これにより、再現性よく、不純物の少ないフッ化リン酸鉄アルカリ金属化合物粒子の表面が炭素物質で被覆された活物質粒子を製造することができる。
例えば、上記第一の実施形態によって化合物:Na2M1 yM2 1−yPO4Fからなる活物質粒子を製造した後、または上記第二の実施形態によって化合物:Na2M1 yM2 1−yPO4Fの表面が炭素物質で被覆された活物質粒子を製造した後、イオン交換によってNaの一部または全部をLiおよび/またはKに置換することができる。このとき、イオン交換には各種周知の方法を用いることができる。
炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を2.50g、フッ化ナトリウム(NaF)を1.26g、シュウ酸鉄二水和物(FeC2O4・2H2O)を5.40g、リン酸二水素リチウム(NH4H2PO4)を3.45g、アスコルビン酸を0.60g、ショ糖を0.39g量り取った。この混合物を、予め2種類のアルミナ製ボール(φ5mm、φ10mm)を、内容積の1/4程度になるように入れたアルミナ製ボールミル容器(内寸直径65mm×高さ25mm)に移し、回転数300rpmで5時間の粉砕混合を行った。得られた混合粉末をさらに自動乳鉢で1時間粉砕・混合し、3.5MPaで加圧して錠剤型ペレット(直径約30mm、厚さ約3mm)に成形した。
原料にショ糖を使用しなかったこと以外は、実施例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
本焼成温度を500℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
本焼成温度を650℃としたこと以外は、実施例2と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
本焼成温度を550℃としたこと以外は、実施例2と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
本焼成温度を500℃としたこと以外は、実施例2と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
仮焼成および本焼成をアルゴンガスの流通下で行ったこと以外は、実施例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
仮焼成および本焼成をアルゴンガスの流通下で行ったこと以外は、実施例2と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
仮焼成および本焼成時に銅箔を用いず、ペレットを直接アルミナボートに入れたこと以外は、実施例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
仮焼成および本焼成をアルゴンガスの流通下で行ったこと以外は、比較例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
原料にアスコルビン酸を使用しなかったこと以外は、比較例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
本焼成温度を700℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法および条件で活物質粒子を作製した。
上記各実施例および比較例によって得られた活物質粒子は、回転対陰極型X線発生装置(対陰極は銅)を備えるX線回折装置(株式会社リガク製、RINT−TTR III)を用いて、50kV、300mAの出力条件で粉末X線回折測定を行った。
また、一部の活物質粒子を除き、SPring8において放射光X線回折測定(BL19B2、波長0.06995nm)を行い、リートベルト法によって結晶構造およびNa2FePO4F相の存在割合を解析した。
上記各実施例および比較例によって得られた活物質粒子に含まれる炭素物質の量は、熱重量分析によって求めた。活物質粒子10mgを、大気雰囲気中、昇温速度10℃/minで800℃まで昇温した際の重量減少割合を、活物質粒子に含まれる炭素物質の量として記録した。
上記各実施例および比較例によって得られた活物質粒子の導電率は、粉体抵抗測定によって求めた。直径8mmの絶縁体の筒の中に活物質粒子0.05gを入れ、バンドプレス機を用いて両側から13MPaの圧力を加えた状態で、2端子法によって抵抗値を測定した。
合成した活物質粒子、導電助剤であるアセチレンブラック及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を0.08g:0.01g:0.01gの比率で混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)約300μLを溶媒とする正極ペーストを調製した。なお、PVdFは固形分が溶解分散された液を使用しており、上記PVdFの質量は固形質量換算したものである。該正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔集電体に塗工し、Arグローブボックス中で80℃で5時間以上乾燥した後、さらに80℃で一晩真空乾燥を行った。この塗工極板を直径10mmの大きさに打ち抜き、正極板とした。正極板の重量は7mgであった。正極板は150℃で5時間以上の減圧乾燥を行った後に使用した。
上記のようにして作製されたナトリウム電池を、25℃のArボックス環境下に置いて充放電試験を実施した。充電条件は、電流0.05CmA、電圧3.8Vの定電流定電圧充電とし、充電時間は30時間とした。放電条件は、電流0.05CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。さらに充電及び放電後にそれぞれ30分の休止時間を設定した。この充放電を3サイクル繰り返し、3サイクル目の放電時の電気量を「放電容量」として記録した。
図3および図4は、それぞれ実施例1および比較例1による活物質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示している。図3より、実施例1では粒径が約150nm以下で比較的ばらつきの少ない一次粒子が得られたことが分かる。これに対して図4より、比較例1では活物質粒子の形状・大きさが揃わず、ばらつきが大きい0.5〜2μm程度の二次粒子が生成していることが分かる。
結晶性の良いNa2FePO4Fを得るために十分な本焼成温度・時間条件を設定するとFの損失が増加し、また結晶粒が過度に成長しやすい。しかし、出発原料混合物および仮焼成物を銅箔で包むことおよび出発原料中の炭素物質源を含むことによって、かかる本焼成温度・時間条件によってもFの損失が抑制され、炭素物質で覆われることによって過度の粒成長が抑えられ、余分な酸化反応が排除されて炭素物質の消失が防止される等の効果が得られたものと考えられる。
出発原料中の炭素物質源としては、実施例1ではアスコルビン酸およびショ糖、実施例2ではアスコルビン酸を用いた。炭素物質源が高分子化合物ではないことによって原料粉末中で微視的にも均一に分散、炭化することが可能となり、さらにアスコルビン酸を用いたことによって、より均一な炭素物質層が得られたと考えられる。また、本実施例では、仮焼成後の粉砕・混合工程において、新たな材料を添加していないことも、本焼成工程における反応の均一性の向上に寄与したと考えられる。
実施例1、実施例2、実施例4および実施例7では、Na2FePO4F相の存在割合は100%で、Na3PO4等の不純物を含まない、Na2FePO4Fの単一相が形成されていることが分かる。実施例3では、Na2FePO4F相の存在割合は95%であったが、これは本焼成温度が500℃と低かったためと考えられる。これに対して、比較例1および比較例2ではNa2FePO4F相の存在割合は約90%と低かった。
なお、CuKα線を用いたXRDプロファイルからは、測定精度の限界によって、信頼性のあるNa2FePO4F相の存在割合を求めることはできなかった。
このように、本実施例では、結晶性の良い、かつ不純物の少ない単一相のNa2FePO4F相が形成されていることが確認できた。この結果は主として、仮焼成および本焼成工程において反応物を銅箔で包むことによりFの拡散・損失が抑制されたこと、および雰囲気中酸素除去効果が発揮されたことによってもたらされたものと考えられる。
同様に、実施例2と実施例5を比較すると、実施例2の放電容量の方が大きく、これは、本焼成温度が実施例2の600℃に対して実施例5では550℃と低いために、実施例5のNa2FePO4Fの結晶性が劣るためと考えられる。実施例4(本焼成温度は650℃)では、実施例2と同等の放電効率が得られた。
しかし、実施例3および実施例5のいずれにおいても、その放電容量は比較例1および比較例2(本焼成温度は600℃)の放電容量よりも大きく、仮焼成および本焼成工程における銅箔の効果は明らかである。
Claims (7)
- 一般式:AxM1 yM2 1−yPO4F (ここで、AはNaを必須としてLi,Na及びKから選択される1種又は2種以上の元素であり1≦x≦2、M1はFe及びCoから選択される1種又は2種の元素であり0.9≦y≦1、M2はMn,Ni,Mg,Al,Ti,V及びZnから選択される1種又は2種以上の元素である)
で表される化合物からなる活物質粒子の製造方法であって、
前記A,M1,M2,PO4及びFの源となる原料化合物粉末を混合する工程と、
混合された原料化合物粉末を非酸化性ガス中で熱処理する仮焼成工程と、
得られた仮焼成物を金属材料に包囲された状態で非酸化性ガス中で熱処理する本焼成工程とを有する
ことを特徴とする活物質粒子の製造方法。 - 一般式:AxM1 yM2 1−yPO4F (ここで、AはNaを必須としてLi,Na及びKから選択される1種又は2種以上の元素であり1≦x≦2、M1はFe及びCoから選択される1種又は2種の元素であり0.9≦y≦1、M2はMn,Ni,Mg,Al,Ti,V及びZnから選択される1種又は2種以上の元素である)
で表される化合物粒子の表面の一部又は全部が炭素物質で被覆された活物質粒子の製造方法であって、
前記A,M1,M2,PO4,F及び炭素物質の源となる原料化合物粉末を混合する工程と、
混合された原料化合物粉末を非酸化性ガス中で熱処理する仮焼成工程と、
得られた仮焼成物を金属材料に包囲された状態で非酸化性ガス中で熱処理する本焼成工程とを有する
ことを特徴とする活物質粒子の製造方法。 - 前記一般式において、M1がFeである
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の活物質粒子の製造方法。 - 前記一般式において、y=1である
ことを特徴とする請求項3に記載の活物質粒子の製造方法。 - 前記一般式において、AがNaである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活物質粒子の製造方法。 - 前記炭素物質の源となる原料化合物にはアスコルビン酸を含む
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の活物質粒子の製造方法。 - 前記金属材料はCuまたはCuを主成分とする合金からなる箔である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活物質粒子の製造方法。
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