JP2012117095A - 鋳鉄材料の疲労強度向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋳鉄材料、特に球状黒鉛鋳鉄の疲労強度を、浸炭焼入れした場合の炭素鋼と同程度まで向上することが出来る疲労強度向上方法の提供。
【解決手段】重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に対して、それぞれ所定のショット粒径による第1、第2、第3のショットピーニング処理を行なう工程を有している。
【選択図】図1
【解決手段】重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に対して、それぞれ所定のショット粒径による第1、第2、第3のショットピーニング処理を行なう工程を有している。
【選択図】図1
Description
本発明は、鋳鉄材料、特に球状黒鉛鋳鉄の疲労強度を向上する技術に関する。
従来の自動車用トランスミッションギヤは、鉄鋼材料を切削歯切り加工後に浸炭焼入れをしていた。しかし、熱処理歪みによる部材の変形が欠点であった。
一方、球状黒鉛鋳鉄は製造が容易であるが、疲労強度が低く、自動車用トランスミッションギヤに使用できないという欠点があった。そのため、浸炭焼入れをしない鋳鉄材料について、浸炭焼入れした鉄鋼材料と同程度の疲労強度が望まれている。
一方、球状黒鉛鋳鉄は製造が容易であるが、疲労強度が低く、自動車用トランスミッションギヤに使用できないという欠点があった。そのため、浸炭焼入れをしない鋳鉄材料について、浸炭焼入れした鉄鋼材料と同程度の疲労強度が望まれている。
ここで、球状黒鉛鋳鉄は、鋳鉄の中で、強度が高い。球状黒鉛鋳鉄の疲労強度を向上させる技術として、重量比C:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%、を含有した球状黒鉛鋳鉄にオーステンパ処理もしくは焼入れ焼もどし処理したものがある。
係る組成の球状黒鉛鋳鉄の107回における疲労強度を図13に示している。縦軸に応力MPa、横軸に曲げ繰り返し回数をとった図13の回転曲げ試験曲線Lに示すように、1400MPaの高張力鋳鉄であっても、200MPa程度に過ぎない。この数値は、鍛造品並であって、浸炭焼入れした鉄鋼材料並みの400MPa以上の強度は得られていない。
そして、「200MPa程度」という疲労強度では、自動車用トランスミッションギヤには使用できない。
係る組成の球状黒鉛鋳鉄の107回における疲労強度を図13に示している。縦軸に応力MPa、横軸に曲げ繰り返し回数をとった図13の回転曲げ試験曲線Lに示すように、1400MPaの高張力鋳鉄であっても、200MPa程度に過ぎない。この数値は、鍛造品並であって、浸炭焼入れした鉄鋼材料並みの400MPa以上の強度は得られていない。
そして、「200MPa程度」という疲労強度では、自動車用トランスミッションギヤには使用できない。
その他の従来技術として、片状黒鉛鋳鉄の溶湯に添加物を含有せしめて球状黒鉛鋳鉄を鋳造して、その疲労強度を向上する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、鋳造段階を工夫することにより疲労強度を向上するものであり、鋳鉄材料を機械加工した後に材料の疲労強度を向上することは出来ない。
しかし、係る従来技術は、鋳造段階を工夫することにより疲労強度を向上するものであり、鋳鉄材料を機械加工した後に材料の疲労強度を向上することは出来ない。
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、鋳鉄材料、特に球状黒鉛鋳鉄の疲労強度を、浸炭焼入れした場合の炭素鋼と同程度まで向上することが出来る疲労強度向上方法の提供を目的としている。
本発明の鋳鉄材料の疲労強度向上方法は、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に対して、
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行なう工程(1工程)と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行なう工程(2工程)と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なう工程(3工程)、
を有することを特徴としている。
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行なう工程(1工程)と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行なう工程(2工程)と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なう工程(3工程)、
を有することを特徴としている。
本発明の実施に際して、上述した第1〜第3のショットピーニング処理を施した後、錫、モリブデンから成るショットを用いてショットピーニング処理を行ない、金属潤滑を行なうように構成することが好ましい。
発明者の実験によれば、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に対して、上述した第1〜第3のショットピーニング処理を施した結果、浸炭焼入れをした鋼材レベルの曲げ疲労強度である350MPa以上の疲労強度が得られた。
同様に、発明者の実験によれば、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、オーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄についても、上述した第1〜第3のショットピーニング処理を施した結果、浸炭焼入れをした鋼材レベルの曲げ疲労強度である350MPa以上の疲労強度が得られた。
本発明によれば、上述した第1〜第3のショットピーニング処理を施したことにより、表面から100μmの範囲について、−600MPa以上の圧縮残留応力分布が付加され、球状黒鉛鋳鉄表面における微細亀裂の発生と、亀裂の進展が遅延して、疲労強度が向上した。
本発明によれば、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に所定の機械加工(例えば、自動車用トランスミッションギヤであれば歯切り加工)を施し、その後、上述した第1〜第3のショットピーニング処理を施せば、浸炭焼入れ処理を施すこと無く、浸炭焼入れをした鋼材レベルの曲げ疲労強度を得ることが出来る。
しかも、機械加工後に焼入れ処理を行なう必要がないため、熱処理歪みの発生も防止することが出来る。
しかも、機械加工後に焼入れ処理を行なう必要がないため、熱処理歪みの発生も防止することが出来る。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1を参照して、図示の実施形態における作業手順を説明する。
図1において、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄を、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行って、引張り強さを1200MPa以上にする(ステップS0)。
先ず、図1を参照して、図示の実施形態における作業手順を説明する。
図1において、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄を、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行って、引張り強さを1200MPa以上にする(ステップS0)。
ついで、硬さ600Hv以上、ショットの粒径φが0.5〜0.8mmでショットピーニングをする(ステップS1:第1のショットピーニング処理を行う工程:第1工程)。
ついで、硬さ600Hv以上、ショットの粒径φが0.1〜0.3mmでショットピーニングをする(ステップS2:第2のショットピーニング処理を行う工程:第2工程)。
ついで、硬さ600Hv以上、ショットの粒径φが0.1mm以下でショットピーニングをする(ステップS3:第3のショットピーニング処理を行う工程:3工程)。
ついで、適宜の硬さ、ショットの粒径の錫、モリブデンでショットピーニングをする(ステップS4:第4のショットピーニング処理を行う工程:4工程)。
ステップS4によって、第1〜第3のショットピーニング処理が施されたワークの表面に金属潤滑を施すことが可能である。
なお、このステップS4は省略することが可能である。
上記、ステップS4によって、第3のショットピーニング処理によって凸凹がならされた表面がさらに金属潤滑される効果が付加される利点がある。
なお、このステップS4は必須の工程ではなく、工程全体のステップ増加、工程全体の所要時間の増加、を減縮させることを勘案して省略することが可能である。
ステップS4によって、第1〜第3のショットピーニング処理が施されたワークの表面に金属潤滑を施すことが可能である。
なお、このステップS4は省略することが可能である。
上記、ステップS4によって、第3のショットピーニング処理によって凸凹がならされた表面がさらに金属潤滑される効果が付加される利点がある。
なお、このステップS4は必須の工程ではなく、工程全体のステップ増加、工程全体の所要時間の増加、を減縮させることを勘案して省略することが可能である。
第1〜第3のショットピーニング処理(1〜3工程)を行なった後の試験材料により、図5(a)及び(b)で示す疲労試験片を作成した。
全体を符号12で示す試験片の形状は、図示の実施形態では、例えば、外径12mmの丸棒3に、V字に凹み且つ円周方向全周に延在する凹部5を形成している。凹部5の底部5aでは、丸棒3の直径は8mmとなっている。ここで、図5(a)及び(b)で示す試験片12は、一般的な試験片の形状と同様である。
係る試験片12を用いて、回転曲げ疲労試験(JIS Z 2274)を行なった。
後述の実験例1で記載する通り、図1のステップS1〜S3のショットピーニング処理を行なった球状黒鉛鋳鉄の疲労強度は、浸炭焼入れをした鋼材と同程度の曲げ疲労強度(例えば、350MPa程度)を有している。
全体を符号12で示す試験片の形状は、図示の実施形態では、例えば、外径12mmの丸棒3に、V字に凹み且つ円周方向全周に延在する凹部5を形成している。凹部5の底部5aでは、丸棒3の直径は8mmとなっている。ここで、図5(a)及び(b)で示す試験片12は、一般的な試験片の形状と同様である。
係る試験片12を用いて、回転曲げ疲労試験(JIS Z 2274)を行なった。
後述の実験例1で記載する通り、図1のステップS1〜S3のショットピーニング処理を行なった球状黒鉛鋳鉄の疲労強度は、浸炭焼入れをした鋼材と同程度の曲げ疲労強度(例えば、350MPa程度)を有している。
発明者は、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄を用いて、以下のような実験(実験例1〜実験例7)を行った。
[実験例1]
上記球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なって、引張強さ1200MPa以上とした。
上記球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なった試験材料(焼入れ焼戻し処理を行なった上記球状黒鉛鋳鉄)の引張り試験結果、図2において、特性曲線FCDで示されている。
図2において、縦軸は引張り応力(MPa)で、横軸は引張り歪(ε)である。3種類の試験片No.1〜No3はすべて最大引張り応力が1200MPa以上である。参考に例示した特性曲線FCAは、鋳鉄における引張り応力(MPa)−引張り歪(ε)特性を示しており、最大引張り応力が272.4MPaであった。
上記球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なって、引張強さ1200MPa以上とした。
上記球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なった試験材料(焼入れ焼戻し処理を行なった上記球状黒鉛鋳鉄)の引張り試験結果、図2において、特性曲線FCDで示されている。
図2において、縦軸は引張り応力(MPa)で、横軸は引張り歪(ε)である。3種類の試験片No.1〜No3はすべて最大引張り応力が1200MPa以上である。参考に例示した特性曲線FCAは、鋳鉄における引張り応力(MPa)−引張り歪(ε)特性を示しており、最大引張り応力が272.4MPaであった。
次に、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行なった。第1のショットピーニング処理の結果は、図3における残留応力分布曲線Aで示されている。残留応力分布曲線Aでは、試験片表面(0μm)から深さ150μmまでは僅かに残留応力が増加しながら、ほぼ一様な数値の−800(MPa)になっている。
なお、図3、図4では、縦軸は残留応力の数値を示している。そのため、圧縮残留応力の数値が高い場合には、図3、図4では下方(負の絶対値が大きい側)に表示されることになる。
なお、図3、図4では、縦軸は残留応力の数値を示している。そのため、圧縮残留応力の数値が高い場合には、図3、図4では下方(負の絶対値が大きい側)に表示されることになる。
図3における残留応力分布曲線Aを得た試験片とは別の試験片で、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行なった結果が、図3における残留応力分布曲線Bで示されている。残留応力分布曲線Bでは、試験片表面(0μm)から深さ50μmまでが急激に圧縮残留応力が増加し、深さ50μm以上では圧縮残留応力が緩やかに増加している。
図3における残留応力分布曲線Aを得た試験片、或いは、残留応力分布曲線Bを得た試験片とはさらに別の試験片で、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なった結果が、図3における残留応力分布曲線Cで示されている。残留応力分布曲線Cでは、試験片表面(0μm)から深さ25μmまでで急激に圧縮残留応力が増加し、深さ25μmよりも表面から深い領域では圧縮残留応力は緩やかに増加している。
同一の試験片に対して、第1〜第3のショットピーニング処理を行なった試験片の残留応力分布を、図4で示す。
図4において、第1〜第3のショットピーニング処理を行なう前の試験片の残留応力分布は残留応力分布曲線Gで表されている。
一方、第1〜第3のショットピーニング処理を行なった後の試験片の残留応力分布は残留応力分布曲線Saで表示されている。
図4において、残留応力分布曲線Gと残留応力分布曲線Saの間(差)が、第1〜第3のショットピーニング処理による、圧縮残留応力の増加分に相当する。
図4を参照すれば、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片は、第1〜第3のショットピーニング処理を施していない試験片に比較して、表面〜150μm内側の領域まで、全体的に、残留圧縮応力が増加していることが理解される。図4では、残留応力分布曲線Gと残留応力分布曲線Saの間(差)が圧縮残留応力増加分に相当する。
表面0μmでは1000MPa、25〜100μmではほぼ700MPaの大きな残留応力となっている。そして、100μmよりも内側の領域においても、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片は、第1〜第3のショットピーニング処理を施していない試験片に比較して、残留圧縮応力が増加している。
図4において、第1〜第3のショットピーニング処理を行なう前の試験片の残留応力分布は残留応力分布曲線Gで表されている。
一方、第1〜第3のショットピーニング処理を行なった後の試験片の残留応力分布は残留応力分布曲線Saで表示されている。
図4において、残留応力分布曲線Gと残留応力分布曲線Saの間(差)が、第1〜第3のショットピーニング処理による、圧縮残留応力の増加分に相当する。
図4を参照すれば、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片は、第1〜第3のショットピーニング処理を施していない試験片に比較して、表面〜150μm内側の領域まで、全体的に、残留圧縮応力が増加していることが理解される。図4では、残留応力分布曲線Gと残留応力分布曲線Saの間(差)が圧縮残留応力増加分に相当する。
表面0μmでは1000MPa、25〜100μmではほぼ700MPaの大きな残留応力となっている。そして、100μmよりも内側の領域においても、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片は、第1〜第3のショットピーニング処理を施していない試験片に比較して、残留圧縮応力が増加している。
実験例1では、同一の試験片に対して第1〜第3のショットピーニング処理を行ない、当該材料により、図5(a)及び(b)で示す疲労試験片を作成して、回転曲げ疲労試験(JIS Z 2274)を行なった。係る疲労試験結果を図6に示す。図6において、縦軸には曲げ応力(σ)、横軸には繰り返し回数(N)が表示されている。
図6における符号Hが、実験例1で、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片の曲げ疲労曲線である。
図6において、実験例1に係る試験片は、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の曲げ疲労強度を有していることが明らかになった。
なお、図6における曲げ疲労曲線Jは、ショットピーニング処理を行わないFCDI1400MPaの高張力鋳鉄の曲げ疲労曲線である。当該曲げ疲労曲線Jについては、図13でも示す。
図6における符号Hが、実験例1で、第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験片の曲げ疲労曲線である。
図6において、実験例1に係る試験片は、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の曲げ疲労強度を有していることが明らかになった。
なお、図6における曲げ疲労曲線Jは、ショットピーニング処理を行わないFCDI1400MPaの高張力鋳鉄の曲げ疲労曲線である。当該曲げ疲労曲線Jについては、図13でも示す。
第1実験例において、図6で示す結果より、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なって、引張強さ1200MPa以上として、第1〜第3のショットピーニング処理を行なえば、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の曲げ疲労強度を得ることが出来ることが明らかになった。
また、図3で示す圧縮残留応力分布から、
第1のショットピーニング処理を省略した場合、表面から25μm以上深い部位での圧縮残留応力が低下すること、
第2のショットピーニング処理を省略した場合、表面から25μmまでの圧縮残留応力が低下すること、
が判明した。
また、図3で示す圧縮残留応力分布から、
第1のショットピーニング処理を省略した場合、表面から25μm以上深い部位での圧縮残留応力が低下すること、
第2のショットピーニング処理を省略した場合、表面から25μmまでの圧縮残留応力が低下すること、
が判明した。
[実験例2]
実験例2では、上記球状黒鉛鋳鉄にオーステンパ処理を行なって、引張強さ1200MPa以上とした試験材料を用いた。
係る試験材料に対して、実験例1と同様に、1つの試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行ない、
別の試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行ない、
さらに別の試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なった。
以上の結果は、実施例1における図3で示すのと同様である。
また、同一の試験材料に対して、第1〜第3のショットピーニング処理を行ない、当該試験片における圧縮残留応力分布を調べた結果は、実施例1における図4と同様であった。
実験例2では、上記球状黒鉛鋳鉄にオーステンパ処理を行なって、引張強さ1200MPa以上とした試験材料を用いた。
係る試験材料に対して、実験例1と同様に、1つの試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行ない、
別の試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行ない、
さらに別の試験材料に対して、硬さ600Hv以上、ショット粒径(φ)0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なった。
以上の結果は、実施例1における図3で示すのと同様である。
また、同一の試験材料に対して、第1〜第3のショットピーニング処理を行ない、当該試験片における圧縮残留応力分布を調べた結果は、実施例1における図4と同様であった。
第1〜第3のショットピーニング処理を施した試験材料により、実施例1と同様な疲労試験片を作成して、回転曲げ疲労試験を行なった。
係る疲労試験結果を図7に示す。図7において、縦軸には曲げ応力(σ)、横軸には繰り返し回数(N)が表示されている。
図7において、実験例2に係る試験片の曲げ疲労強度は、疲労曲線Kで示されている。
実験例2の結果から明らかなように、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄にオーステンパ処理を行ない、引張強さ1200MPa以上として、第1〜第3のショットピーニング処理を行なえば、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の曲げ疲労強度を得ることが出来ることが明らかになった。
係る疲労試験結果を図7に示す。図7において、縦軸には曲げ応力(σ)、横軸には繰り返し回数(N)が表示されている。
図7において、実験例2に係る試験片の曲げ疲労強度は、疲労曲線Kで示されている。
実験例2の結果から明らかなように、重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄にオーステンパ処理を行ない、引張強さ1200MPa以上として、第1〜第3のショットピーニング処理を行なえば、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の曲げ疲労強度を得ることが出来ることが明らかになった。
[実験例3]
実験例1で用いられた試験片(重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なった上記球状黒鉛鋳鉄)に対して第1ショットピーニング処理を行なうに際して、粒径が0.8mmより大きいショット(粒径が0.9mm、1.0mm、1.1mm)を用いて、その他の処理は実験例1と同様にした試験片について曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
実験例1で用いられた試験片(重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄に焼入れ焼戻し処理を行なった上記球状黒鉛鋳鉄)に対して第1ショットピーニング処理を行なうに際して、粒径が0.8mmより大きいショット(粒径が0.9mm、1.0mm、1.1mm)を用いて、その他の処理は実験例1と同様にした試験片について曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図8において、ショット粒径0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mmで第1ショットピーニング処理を行なった場合の疲労試験結果を示す。
0.8mmの粒径では浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の疲労強度が得られた(図8の「○」)が、粒径0.9mm、1.0mm、1.1mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図8の「×」)。
図8から、第1ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.8mm以下にするべきであることが分った。
第1ショットピーニング処理において、ショット粒径が0.8mmより大きいと、ショットを打ち出す際の空気の流れにショットが乗らず、十分に試験片に衝撃が与えられないことが原因と思われる。
0.8mmの粒径では浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の疲労強度が得られた(図8の「○」)が、粒径0.9mm、1.0mm、1.1mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図8の「×」)。
図8から、第1ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.8mm以下にするべきであることが分った。
第1ショットピーニング処理において、ショット粒径が0.8mmより大きいと、ショットを打ち出す際の空気の流れにショットが乗らず、十分に試験片に衝撃が与えられないことが原因と思われる。
[実験例4]
第1ショットピーニング処理で、0.5mm以下のショット(粒径が、0.5mm、0.4mm、0.3mm)を用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図9で示すように、ショット粒径0.5mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(400MPa程度)の疲労強度が得られた(図9の「○」)が、粒径0.4mm、0.3mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図9の「×」)。
図9から、第1ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.5mm以上にするべきであることが分った。
第1ショットピーニング処理において、ショット粒径が0.5mmよりも小さいと、鋼材表面側の圧縮応力は高くなるが、鋼材内部の圧縮応力が小さくなってしまうことが原因と思われる。
第1ショットピーニング処理で、0.5mm以下のショット(粒径が、0.5mm、0.4mm、0.3mm)を用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図9で示すように、ショット粒径0.5mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(400MPa程度)の疲労強度が得られた(図9の「○」)が、粒径0.4mm、0.3mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図9の「×」)。
図9から、第1ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.5mm以上にするべきであることが分った。
第1ショットピーニング処理において、ショット粒径が0.5mmよりも小さいと、鋼材表面側の圧縮応力は高くなるが、鋼材内部の圧縮応力が小さくなってしまうことが原因と思われる。
[実験例5]
第2ショットピーニング処理で、粒径が0.3mm以上(粒径0.3mm、0.4mm、0.5mm)のショットを用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図10で示すように、ショット粒径0.3mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(400MPa程度)の疲労強度が得られた(図10の「○」)が、粒径0.4mm、0.5mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図10の「×」)。
図10から、第2ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.3mm以下にするべきであることが分った。
第2ショットピーニング処理は、鋳鉄試験片の最表面(50ミクロンまで)の圧縮残留応力を高める処理であるが、ショット粒径が0.3mmよりも大きいと、最表面に圧縮残留応力のピークが発生せず、疲労強度が上昇しなかったものと推定される。
第2ショットピーニング処理で、粒径が0.3mm以上(粒径0.3mm、0.4mm、0.5mm)のショットを用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図10で示すように、ショット粒径0.3mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(400MPa程度)の疲労強度が得られた(図10の「○」)が、粒径0.4mm、0.5mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図10の「×」)。
図10から、第2ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.3mm以下にするべきであることが分った。
第2ショットピーニング処理は、鋳鉄試験片の最表面(50ミクロンまで)の圧縮残留応力を高める処理であるが、ショット粒径が0.3mmよりも大きいと、最表面に圧縮残留応力のピークが発生せず、疲労強度が上昇しなかったものと推定される。
[実験例6]
第2ショットピーニング処理で、粒径が0.1mm以下(粒径0.1mm、0.07mm、0.01mm)のショットを用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図11で示すように、ショット粒径0.1mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の疲労強度が得られた(図11の「○」)が、粒径0.07mm、0.01mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図11の「×」)。
図11から、第2ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.1mm以上にするべきであることが分った。
第2ショットピーニング処理で使用されるショットの粒径が小さいと、鋳鉄表面をならすのみであり、鋼材最表面の圧縮残留応力は生せず、疲労強度は向上しなかったと推定される。
第2ショットピーニング処理で、粒径が0.1mm以下(粒径0.1mm、0.07mm、0.01mm)のショットを用いて、その他の処理は実験例1と同様にして、曲げ疲労強度について疲労試験を行なった。
図11で示すように、ショット粒径0.1mmでは、浸炭焼入れをした鋼材と同程度(350MPa程度)の疲労強度が得られた(図11の「○」)が、粒径0.07mm、0.01mmでは、曲げ疲労強度は350MPa以下であった(図11の「×」)。
図11から、第2ショットピーニング処理では、ショット粒径を0.1mm以上にするべきであることが分った。
第2ショットピーニング処理で使用されるショットの粒径が小さいと、鋳鉄表面をならすのみであり、鋼材最表面の圧縮残留応力は生せず、疲労強度は向上しなかったと推定される。
[実験例7]
実験例1の試験材料で作成された歯車(第1〜第3ショットピーニング処理が行なわれた歯車)Zと、第3ショットピーニング処理を省略した試験材料で作成した歯車Yを用意して、噛み合い面の滑りを比較した。
実験例1の試験材料で作成された歯車(第1〜第3ショットピーニング処理が行なわれた歯車)Zでは、噛み合い面の滑りは良好な数値を示した。
一方、第3ショットピーニング処理を省略した試験材料で作成した歯車Yでは、噛み合い面の滑りに異常があった。
より詳細には、図12において、歯車Zでは噛み合い歯面が当たり及び滑りが良好で所定の耐久性試験をクリアした。一方歯車Yでは噛み合い歯面が当たり及び滑りが不良で歯面にピッチングが生じて所定の耐久性試験をクリアできなかった。
図12から、第3ショットピーニング処理は省略するべきではないことが判明した。
第3ショットピーニング処理により、第1及び第2ショットピーニングで凸凹になった表面がならされると、歯面表面の凸凹が小さくなり、微小な凸凹であれば、そこに油がたまって潤滑作用を発揮する。
第3ショットピーニング処理を省略した試験材料では、係る潤滑処理が発揮されず、噛み合い面の滑りに異常が発生したものと推定される。
実験例1の試験材料で作成された歯車(第1〜第3ショットピーニング処理が行なわれた歯車)Zと、第3ショットピーニング処理を省略した試験材料で作成した歯車Yを用意して、噛み合い面の滑りを比較した。
実験例1の試験材料で作成された歯車(第1〜第3ショットピーニング処理が行なわれた歯車)Zでは、噛み合い面の滑りは良好な数値を示した。
一方、第3ショットピーニング処理を省略した試験材料で作成した歯車Yでは、噛み合い面の滑りに異常があった。
より詳細には、図12において、歯車Zでは噛み合い歯面が当たり及び滑りが良好で所定の耐久性試験をクリアした。一方歯車Yでは噛み合い歯面が当たり及び滑りが不良で歯面にピッチングが生じて所定の耐久性試験をクリアできなかった。
図12から、第3ショットピーニング処理は省略するべきではないことが判明した。
第3ショットピーニング処理により、第1及び第2ショットピーニングで凸凹になった表面がならされると、歯面表面の凸凹が小さくなり、微小な凸凹であれば、そこに油がたまって潤滑作用を発揮する。
第3ショットピーニング処理を省略した試験材料では、係る潤滑処理が発揮されず、噛み合い面の滑りに異常が発生したものと推定される。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば動弁系のカム、コンロッド、ギヤ、高圧油供給用各種ポンプへの適用にも可能である。
例えば動弁系のカム、コンロッド、ギヤ、高圧油供給用各種ポンプへの適用にも可能である。
Y・・・・3工程を省略した材料で作製した歯車
Z・・・・実験1の後の材料で作製した歯車
Z・・・・実験1の後の材料で作製した歯車
Claims (1)
- 重量比でC:2.0〜4.0%、Si:1.5〜4.5%、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.03%以下、Mg:0.02〜0.1%、Cu:1.8〜4.0%を含有した球状黒鉛鋳鉄であって、焼入れ焼戻し処理またはオーステンパ処理を行なって引張強さ1200MPa以上とした球状黒鉛鋳鉄に対して、
硬さ600Hv以上、ショット粒径0.5〜0.8mmで第1のショットピーニング処理を行なう工程と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径0.1〜0.3mmで第2のショットピーニング処理を行なう工程と、
硬さ600Hv以上、ショット粒径0.1mm以下で第3のショットピーニング処理を行なう工程、
を有することを特徴とする鋳鉄材料の疲労強度向上方法。
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