JP2012178412A - バイポーラ半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面欠陥の発生を低減できて積層欠陥の発生を抑制でき、オン電圧ドリフトを抑制できるSiCバイポーラ半導体素子を提供する。
【解決手段】このSiC pinダイオード20は、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、メサ状の半導体層31が六角柱形状で6つの側面(メサ面)31Aをすべて{0m−m0}面(m,nは整数)とした。これにより、メサ面31Aに対する〈11−20〉方向のバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2(図4)が、{11−20}面の素子表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102(図12)に比べて小さくなると共に表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルBV1,BV2の長さが長くなる。これにより、メサ面31Aに表面欠陥SDが入り難くなり、メサ状の半導体層31の各メサ面31Aでの表面欠陥を低減できて、積層欠陥の発生を抑制できる。
【選択図】図2
【解決手段】このSiC pinダイオード20は、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、メサ状の半導体層31が六角柱形状で6つの側面(メサ面)31Aをすべて{0m−m0}面(m,nは整数)とした。これにより、メサ面31Aに対する〈11−20〉方向のバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2(図4)が、{11−20}面の素子表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102(図12)に比べて小さくなると共に表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルBV1,BV2の長さが長くなる。これにより、メサ面31Aに表面欠陥SDが入り難くなり、メサ状の半導体層31の各メサ面31Aでの表面欠陥を低減できて、積層欠陥の発生を抑制できる。
【選択図】図2
Description
この発明は、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたバイポーラ半導体素子に関する。
従来、例えば、ダイオード素子を作製する工程では、円形のウエハ上に複数の素子構造を形成し、この素子構造の形状に合わせてダイシングにより各素子を分離する。上記素子のコーナー部が鋭角である場合は、コーナー部が直角である場合に比べて、上記コーナー部に電界が集中し易く、破壊の原因となるので、上記素子の形状としては一般的に長方形が用いられる。
ここで、図10に、上述の素子構造を持つSiC pnダイオードの半導体積層構造を示す。このSiC pnダイオードでは、n+型SiC基板101上にn−型SiCドリフト層102,台形状(四角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部のような形状)のp型SiCアノード層103が順に積層されている。図10において、105はpn接合である。
このSiC pnダイオードでは、上記台形状のp型SiCアノード層103は、{01−10}面103Aおよび{11−20}面103Bをメサ面に持つ。
ところで、SiCバイポーラ素子には、順方向に電流を流すと順方向電圧Vfが増大する「オン電圧ドリフト」という劣化現象が存在する。このオン電圧ドリフトは、積層欠陥によって引き起こされるが、この積層欠陥の種となる欠陥には、基底面転位と表面欠陥がある。
特許文献1(特開2009−010120号公報)では、イオン打ち込みにより素子の最表面に高ドーピング層を形成することで、アノードエミッタ層での表面欠陥に起因する積層欠陥を抑制する炭化珪素バイポーラ型半導体装置が開示されている。また、特許文献2(特開2007−165604号公報)では、イオン打ち込みによりメサ壁部またはメサ壁部およびメサ周辺部に通電劣化防止層を形成することで、メサ壁部での表面欠陥に起因する積層欠陥を抑制する炭化珪素バイポーラ型半導体装置が開示されている。
しかし、前者(特許文献1)も後者(特許文献2)も、積層欠陥を引き起こす表面欠陥自体の発生を防止するものではない。この表面欠陥は、素子作製のプロセスにおいて、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて形成したメサ構造の表面に現れるpn接合の部分に存在する場合がある。上記メサ構造の表面に表面欠陥が存在するだけではオン電圧ドリフトは起こらないが、表面欠陥が存在するpn接合近傍で通電による少数キャリアの再結合が起こると上記表面欠陥が拡大し、電流の流れを妨げる積層欠陥となる。この積層欠陥の存在によって通電領域が狭くなり、オン電圧ドリフトが発生するという問題がある。
そこで、この発明の課題は、表面欠陥の発生を低減できて積層欠陥の発生を抑制でき、オン電圧ドリフトを抑制できるSiCバイポーラ半導体素子を提供することにある。
本発明は、反応性イオンエッチング等によるメサ構造の加工形状が四角形状から六角形状に変わることの他は従来の素子の製作工程とほとんど変わらない工程でもって作製可能であり、表面欠陥に起因した積層欠陥の発生メカニズムに基づいて根本的に上記課題を解決可能となる。
すなわち、この発明のバイポーラ半導体素子は、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製された基板と、
上記基板上に形成され、第1の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたドリフト層と、
上記ドリフト層上に形成され、第2の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたメサ状の半導体層と
を備え、
上記メサ状の半導体層を六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状とすると共に、この六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状のメサ状の半導体層の6つの側面であるメサ面を{0m−mn}面(m,nは整数)としたことを特徴としている。
上記基板上に形成され、第1の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたドリフト層と、
上記ドリフト層上に形成され、第2の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたメサ状の半導体層と
を備え、
上記メサ状の半導体層を六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状とすると共に、この六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状のメサ状の半導体層の6つの側面であるメサ面を{0m−mn}面(m,nは整数)としたことを特徴としている。
この発明のバイポーラ半導体素子によれば、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、上記メサ状の半導体層が六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状で6つの側面(メサ面)をすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。これにより、メサ面に{11−20}面が現れる素子に比べて、メサ面に対する〈11−20〉方向のバーガーズベクトルの角度が浅くなって表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルの長さが長くなる。これにより、メサ面に表面欠陥が入り難くなるので、上記メサ状の半導体層の各メサ面での表面欠陥を低減することができる。したがって、pn接合近傍で通電による少数キャリアの再結合が起こることで表面欠陥が拡大して発生し、電流の流れを妨げて通電領域を狭める積層欠陥の発生を抑制できるので、オン電圧ドリフトを抑制できる。
以下により詳しく説明する。六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたメサ状の半導体層において、上記表面欠陥は、結晶表面から結晶内部に向かって、〈11−20〉方向のバーガーズベクトルを持つ欠陥が入ることによって発生する。{01−10}面と{11−20}面とは直角の関係にあり、素子のメサ状部が直方体形状である場合は、通常、縦方向の面もしくは横方向の面のいずれかが{11−20}面となる(図11参照)。そして、図12に示す{11−20}面の素子表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV101,BV102は、図4に示す{01−10}面のメサ面に対するバーガーズベクトルBV1,BV2に比べて、メサ面に対する角度θ101,θ102が大きくなると共に表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルの長さが短くなるので、表面欠陥SDが入り易くなる。
ここで、六方晶構造をとるSiC結晶では、図5に示す〈01−10〉方向と等価な6つの方向[10−10],[01−10],[−1100],[−1010],[0−110],[1−100]に対応する{01−10}面が、図3に示すように6回対称で現れる。
そこで、本発明では、六方晶構造をとるSiC結晶では、{01−10}面が6回対称で現れる性質を利用して、図2に示すように上記メサ状の半導体層を六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状とし、その6つの側面(メサ面)をすべて{01−10}面が現れる{01−1n}面とした。これにより、図4に示すように、{01−10}面が現れる表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2が、図12に示す{11−20}面の素子表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102に比べて小さくなると共に表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルBV1,BV2の長さが長くなる。したがって、メサ面での表面欠陥を低減でき、積層欠陥の発生を抑制できて、オン電圧ドリフトを抑制できる。
尚、本発明で言う六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状とは、側面が底面と直交するものの他に六角錐の頂部が切り取られた残りの底部の様な形状のものも含むものとし、その底部において底面と側面とがなす角は、0°を超え90°未満の範囲とする。
また、一実施形態のバイポーラ半導体素子は、上記基板がカソードであり、上記ドリフト層の上に形成された第2導電型のメサ状の半導体層がアノードであるダイオードである。
この実施形態によれば、オン電圧ドリフトを抑制できるSiCダイオードを実現できる。
また、一実施形態のバイポーラ半導体素子は、上記基板がコレクタ層であると共に上記ドリフト層上に形成されている第2導電型のメサ状の半導体層がベース層であり、
さらに、上記ベース層上に形成されていると共に炭化けい素半導体で作製された第1導電型のエミッタ層を有するトランジスタである。
さらに、上記ベース層上に形成されていると共に炭化けい素半導体で作製された第1導電型のエミッタ層を有するトランジスタである。
この実施形態によれば、オン電圧ドリフトを抑制できるSiCトランジスタを実現できる。
また、一実施形態のバイポーラ半導体素子は、上記基板がコレクタ層であり、
上記第2導電型のメサ状の半導体層上に形成されていると共に第1導電型の炭化けい素半導体で作製されたエミッタ層を有するIGBTである。
上記第2導電型のメサ状の半導体層上に形成されていると共に第1導電型の炭化けい素半導体で作製されたエミッタ層を有するIGBTである。
この実施形態によれば、オン電圧ドリフトを抑制できるSiC IGBTを実現できる。
この発明のバイポーラ半導体素子によれば、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、メサ状の半導体層が六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状で6つの側面(メサ面)をすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。これにより、メサ面に{11−20}面が現れる素子に比べて、メサ面に対する〈11−20〉方向のバーガーズベクトルの角度が浅くなって表面欠陥の発生に必要なバーガーズベクトルの長さが長くなる。したがって、上記メサ面に表面欠陥が入り難くなり、上記メサ状の半導体層の各メサ面での表面欠陥を低減することができる。したがって、pn接合近傍で通電による少数キャリアの再結合が起こることで表面欠陥が拡大して発生すると共に電流の流れを妨げて通電領域を狭める積層欠陥の発生を抑制でき、オン電圧ドリフトを抑制することができる。
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、この発明のバイポーラ半導体素子の第1実施形態としてのpn接合ダイオード(pinダイオード)20の断面図である。また、図2は、この第1実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。この第1実施形態では、第1の導電型としてのn型の4H型SiCで作製した基板21の上に、以下に説明する半導体層を形成する。なお、4H型の「H」は六方晶を表し、4H型の「4」は原子積層が4層周期となる結晶構造を表している。
図1は、この発明のバイポーラ半導体素子の第1実施形態としてのpn接合ダイオード(pinダイオード)20の断面図である。また、図2は、この第1実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。この第1実施形態では、第1の導電型としてのn型の4H型SiCで作製した基板21の上に、以下に説明する半導体層を形成する。なお、4H型の「H」は六方晶を表し、4H型の「4」は原子積層が4層周期となる結晶構造を表している。
上記n型の4H型SiC基板21上に、順次、n型4H−SiC、p型(第2の導電型)4H−SiCをエピタキシャル成長させて、後述するように、エピタキシャルpinダイオード20を作製する。
図1に示すn型の4H型SiC基板21は、改良レーリー法によって成長させたインゴットをオフ角θを8度にしてスライスし、鏡面研磨することによって作製した。ホール効果測定法によって求めたSiC基板21のキャリヤ密度は8×1018cm−3、厚さは400μmである。
カソードとなる基板21の(0001)シリコン面に、CVD法によって窒素ドープn型SiC層(n型成長層)とアルミニウムドープp型SiC層(p型成長層)を順次エピタキシャル成長で形成する。上記窒素ドープn型SiC層であるn型成長層が、図1に示すn型のバッファ層22とn型のドリフト層23となる。また、バッファ層22はドナー密度7×1017cm−3、膜厚は10μmである。また、ドリフト層23はドナー密度約5×1015cm−3、膜厚は40μmである。
一方、上記アルミニウムドープp型SiC層であるp型成長層が、アノードとなるp型接合層24とp+型コンタクト層25となる。このp型接合層24はアクセプタ密度5×1017cm−3、膜厚は1.5μmである。また、p+型コンタクト層25はアクセプタ密度約1×1018cm−3、膜厚は0.5μmである。
この実施形態のpinダイオード20は、上記SiC基板21の上に、n型バッファ層22、n型ドリフト層23、p型接合層24およびp+型コンタクト層25を順次形成したものであるが、作製時の処理条件を以下により詳しく説明する。なお、各層の成膜速度は、5μm/時とした。
先ず、この実施形態のpinダイオード20は、材料ガスとして、シラン(SiH4)およびプロパン(C3H8)を用いる。ドーパントガスとして窒素(N2)およびトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3) を用いる。また、キャリアガスとして水素(H2)を用いる。各ガスの流量は、sccm(standard cc per minute)または、slm(standard liter minute)で表す。圧力は、kPa(kilo pascal)で表す。また、以下の説明において、各ガスの名称の後に付したかっこ内の数値は流量を表す。また、基板21の温度は1550℃に保たれており、処理チャンバー内の圧力は5.6kPaに保たれている。
カソードとなるn型4HSiC基板21のシリコン面にバッファ層22を形成する工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は120分である。
また、ドリフト層23の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(0.07sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は480分である。また、P型接合層24の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(5sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は18分である。また、p+型コンタクト層25の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は6分である。
上記の各形成工程の処理により、この第1実施形態のpinダイオード用のSiCエピタキシャルウェーハを作製できる。
次に、この第1実施形態となるSiCエピタキシャルウェーハに、次に説明する加工を施すことによって、図1に示すこの実施形態のpinダイオード20を作製できる。
まず、反応性イオンエッチング(RIE)により、SiCエピタキシャルウエーハのアノードとなるp型接合層24とp+型コンタクト層25およびn型ドリフト層23を、図2に示すようなメサ構造に加工する。このRIEにおけるエッチングガスとしては、CF4(4弗化炭素)とO2を用いて、プラズマ処理装置により、圧力5Pa、高周波電力260Wの条件で深さ約2.5μmまでエッチングした。また、このときのマスク材料として、CVDによって堆積したSiO2膜(厚さ10μm)を用いた。
図2に示すように、上記メサ構造は六角柱形状(より詳しくは六角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部の様な形状)であり、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の6つのメサ面31Aを{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。この{01−10}面は、等価な対称性を持つ6つの面(10−10),(01−10),(−1100),(−1010),(0−110),(1−100)を示している。
次に、図1に示すように、エッチングにより形成したメサ底部での電界集中を緩和するために、メサ底部に幅250μm、深さ0.7μmのp型JTE(ジャンクション・ターミネーション・エクステンション)26を設けた。このp型JTE26は、Alイオン注入により形成した。このAlイオン注入のエネルギーは30〜450keVの間で6段階に変え、トータルドーズ量は1.2×1013cm−2である。また、このp型JTE26の形成時には、JTE26の注入層がボックスプロファイルとなるように設計した。イオン注入は全て室温で行い、イオン注入のマスクには、グラファイト(厚さ5μm)を用いた。注入イオンの活性化のための熱処理をアルゴンガス雰囲気中で1700℃、3分の条件で行った。アニールの後、温度1200℃、3時間のウェット酸化により保護膜としての熱酸化膜27を形成した。なお、図1において、30は、絶縁保護膜(もしくは酸化膜)である。
次に、基板21の下面に、Ni(厚さ350nm)を形成しカソード電極28とする。P+型コンタクト層25上に、Ti(チタン:厚さ350nm)とAl(アルミニウム:厚さ100nm)の膜をそれぞれ蒸着し、アノード電極29とする。アノード電極29は、Ti層29aとAl層29bから構成されている。最後に、1000℃で20分間の熱処理を行って、カソード電極28およびアノード電極29をそれぞれオーミック電極にする。なお、この実施形態ではアルミニウムイオン注入によってp型JTE26を形成したが、ボロン(B)のイオン注入を用いた場合でも同様の効果がある。
そして、この実施形態では、図2に示すように、上記n型の4H型SiC基板21,n型SiCバッファ層22およびn型SiCドリフト層23を、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の形状に合わせて、ダイシングにより六角柱形状に切り分けた。よって、この切り分けられたn型の4H型SiC基板21,n型SiCバッファ層22,n型SiCドリフト層23で構成された基部33は、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の6つのメサ面31Aと同様に{01−10}面が現れる6つの側面33Aを有する。
この第1実施形態のpinダイオード20の耐電圧は3600Vであり、オン電圧は3.7Vである。上記のpinダイオード20に順方向に電流密度100A/cm2で1時間通電し、通電開始直後と1時間通電後の室温での電流電圧特性をカーブトレーサで測定した。この測定の結果は、順方向電流密度100A/cm2での通電開始直後の順方向電流電圧特性と、1時間通電後の順方向電流電圧特性との順方向電圧差ΔVfは、0.1V以下であり、ほとんど差がなかった。したがって、この第1実施形態のpinダイオード20は、上述の1時間の通電後もほとんど劣化していなかった。
以上のように、この第1実施形態のSiC pinダイオード20によれば、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、上記メサ状の半導体層31が六角柱形状で6つの側面(メサ面)31Aをすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。これにより、図4に示すように、メサ面31Aに対する〈11−20〉方向のバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2が、図12に示す{11−20}面の素子表面(メサ面)に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102に比べて小さくなると共に表面欠陥が発生するのに必要なバーガーズベクトルBV1,BV2の長さが長くなる。
これにより、メサ面31Aに表面欠陥SDが入り難くなり、上記メサ状の半導体層31の各メサ面31Aでの表面欠陥を低減できる。したがって、積層欠陥の発生を抑制できる。よって、オン電圧ドリフトを抑制することができる。
尚、上記実施形態では、上記n型の4H型SiC基板21,n型SiCバッファ層22およびn型SiCドリフト層23で構成された基部33を六角柱形状に切り分けたが上記基部33は必ずしも六角柱形状に切り分けなくてもよく、四角柱やその他の多角柱形状でもよい。もっとも、上記基部33は、上記六角柱形状のメサ状の半導体層31の形状に合わせて、六角柱形状とすることが容積効率や実装効率上望ましい。
(第2の実施の形態)
次に、図6に、この発明のバイポーラ半導体素子の第2実施形態を示す。図6は、第2実施形態としてのnpnバイポーラトランジスタ50の断面図である。また、図7は、この第2実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。この第2実施形態も、n型の4H型SiCの基板を採用している。このn型の4H型SiCの基板上に、n型4H−SiC、p型4H−SiC、n型4H−SiCの順番で連続的にエピタキシャル成長させ、npnバイポーラトランジスタ50を作製した。
次に、図6に、この発明のバイポーラ半導体素子の第2実施形態を示す。図6は、第2実施形態としてのnpnバイポーラトランジスタ50の断面図である。また、図7は、この第2実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。この第2実施形態も、n型の4H型SiCの基板を採用している。このn型の4H型SiCの基板上に、n型4H−SiC、p型4H−SiC、n型4H−SiCの順番で連続的にエピタキシャル成長させ、npnバイポーラトランジスタ50を作製した。
この第2実施形態のnpnパイポーラトランジスタは、n型の4H型SiCを用いた基板の(0001)シリコン面上に、n型4H−SiC、p型4H−SiC、n型4H−SiCの順番で連続的にエピタキシャル成長させ、npnバイポーラトランジスタ50を作製した。
n型の4H型SiCの基板51は、改良レーリー法によって成長したインゴットをオフ角θが8度となるようにスライスし、鏡面研磨することによって作製した。コレクタとなる基板51はn型であり、ホール効果測定法によって測定したキャリヤ密度は8×1018cm−3、厚さは400μmである。この基板51のSi面上に、CVD法によって窒素ドープn型SiC層のバッファ層52とドリフト層53を成膜する。
このn型SiCドリフト層53の上にアルミドープp型SiCのp型成長層54、および窒素ドープn型SiC層のn型成長層55を順番にエピタキシャル成長法で成膜した。n型の4H型SiCの基板51とn型SiCバッファ層52とn型SiCドリフト層53がn型コレクタ層になる。
上記バッファ層52はドナー密度7×1017cm−3、膜厚は10μmである。また、ドリフト層53はドナー密度約5×1015cm−3、膜厚は15μmである。また、p型ベース層となるp型成長層54はアクセプタ密度2×1017cm−3、膜厚は1μmである。n型成長層55はドナー密度約7×1017cm−3、膜厚は0.75μmである。なお、各層の成膜速度は、5μm/時とした。
次に、この実施形態のnpnバイポーラトランジスタ50を作製するときの処理条件を説明する。材料ガスとして、シラン(SiH4)およびプロパン(C3H8)を用いる。ドーパントガスとして窒素(N2)およびトリメチルアルミニウム{Al(CH3)3}を用いる。また、キャリアガスとして水素(H2)を用いる。基板の温度は1550℃に保たれており、処理チャンバー内の圧力は5.6kPaに保たれている。各ガスの流量は、sccm(standard cc per minute)または、slm(standard liter minute)で表す。また、圧力は、kPa(kilo pascal)で表す。そして、以下の説明において、各ガスの名称の後に付したかっこ内の数値は流量を表す。
コレクタとなるn型4HSiC基板51のシリコン面上にバッファ層52を形成する工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は120分である。また、ドリフト層53を形成する工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(0.07sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は180分である。
また、P型成長層54の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(2sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は12分である。また、n型成長層55の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(10sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は9分である。上記の各工程の処理により、この第2実施形態のnpnバイポーラトランジスタ用のSiCエピタキシャルウエハができる。
そして、この第2実施形態のSiCエピタキシャルウエハに以下に説明する加工を施すことにより図6に示す第2実施形態のnpnバイポーラトランジスタ50を作製できる。
まず、反応性イオンエッチング(RIE)により、n型成長層55を、深さ0.75μmでエッチングし、エミッタとなるn型成長層55を図7に示すようなメサ形状に残す。このRIEのエッチングガスとしては、CF4とO2を用い、圧力は0.05Torr、高周波電力260Wの条件でエッチングした。また、このときのマスク材料として、CVDによって堆積したSiO2膜(厚さ10μm)を用いた。図7に示すように、上記n型成長層55のメサ形状は六角柱形状(より詳しくは六角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部の様な形状)であり、上記六角柱形状のメサ状のn型成長層55の6つの側面55Aを{01−10}面が現れるメサ面とした。
次に、ベース領域において素子分離を行うために、上記p型成長層54を反応性イオンエッチング(RIE)によりメサ構造にする。このRIEのエッチングガスにはCF4とO2を用い、圧力は0.05Torr、高周波電力260Wの条件で深さ約1μmまでエッチングした。このときのマスク材料として、CVDによって堆積したSiO2膜(厚さ10μm)を用いた。図7に示すように、上記p型成長層54のメサ形状は六角柱形状(より詳しくは六角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部の様な形状)であり、上記六角柱形状のメサ状のp型成長層54の6つの側面(メサ面)54Aを{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。
この第2実施形態では、ベース端部での電界集中を緩和するためのガードリング56と、ベースのコンタクト領域57を同一プロセスのAl(アルミニウム)イオン注入によって形成した。ベースのコンタクト領域57は幅3μmでエミッタとの間隔は5μmであり、p型ガードリング56の幅は150μmである。コンタクト領域57,p型ガードリング56の深さは共に0.5μmである。
p型ガードリング56、ベースのコンタクト領域57を形成する時のAlイオン注入のエネルギーは40〜560keVであり、トータルドーズ量は1.0×1013cm−2である。このイオン注入のマスクとしては、CVDにより形成したSiO2膜(厚さ5μm)を用いた。また、イオン注入はすべて室温で行い、注入イオン活性化のための熱処理はアルゴンガス雰囲気中の温度1600℃、時間5分の条件で行った。
次に、アニールの後、温度1150℃で2時間のウェット酸化によって熱酸化膜を形成し、さらにCVDによってSiO2膜を堆積させ、合計2μmの酸化膜58を形成した。
次に、SiC基板51の下面にコレクタ電極59Cを形成する。また、ベースのコンタクト領域57にベース電極59Bを形成する。また、エミッタ領域55にNiを蒸着してエミッタ電極69を形成する。次に、1000℃、20分間の熱処理を行ってそれぞれオーミック接合を形成した。
最後に、ベース電極59Bおよびエミッタ電極69をTi/Au電極70で覆って各電極端子を形成した。なお、この第2実施形態では、Alイオン注入によってガードリング56を形成したが、B(硼素)イオン注入を用いた場合でも同様の効果がある。
また、この実施形態のnpnバイポーラトランジスタ50においては、基板51、バッファ層52、ドリフト層53、p型成長層54及びn型成長層55のそれぞれの接合面(図中水平方向に広がる面)は、すべて(0001)シリコン面から8度のオフ角をもつ面に平行になっている。
そして、この実施形態では、図7に示すように、上記n型の4H型SiC基板51,n型SiCバッファ層52およびn型SiCドリフト層53からなる基部63を、上記六角柱形状のメサ状のp型成長層54の形状に対応して、ダイシングにより六角柱形状に切り分けた。よって、この切り分けられた基部63は、上記六角柱形状のメサ状のn型成長層55の6つの側面55Aおよび六角柱形状のメサ状のp型成長層54の6つの側面54Aと同様に{01−10}面が現れる6つの側面63Aを有する。
こうして作製したnpnバイポーラトランジスタ50の耐圧は1500Vである。オン抵抗は7.5mΩcm2であり、最大電流増幅率は約13であった。このnpnバイポーラトランジスタ50にベース電流0.6A、コレクタ電流7A(コレクタ電流密度100A/cm2)を1時間通電し、通電前後の室温でのコレクタ特性をカーブトレーサで測定した。この実施形態のnpnバイポーラトランジスタ50では、通電開始直後と1時間通電後ともオン抵抗は、7.5mΩ/cm2であり、順方向電圧の変化は殆んどなかった。
以上のように、この第2実施形態のSiC npnバイポーラトランジスタ50によれば、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、上記メサ形状のp型成長層54が六角柱形状で6つの側面(メサ面)54Aをすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。これにより、図4に示すように、{01−10}面が微視的に現れる表面(メサ面)54Aに対するバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2が、図12に示す{11−20}面が現れるメサ面に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102に比べて小さくなる。
これにより、表面欠陥の発生に必要なバーガーズベクトルの長さが長くなるので、メサ面54Aに表面欠陥SDが入り難くなり、上記メサ状のp型成長層54の各メサ面54Aでの表面欠陥を低減することができる。したがって、pn接合近傍で通電による少数キャリアの再結合が起こることで表面欠陥が拡大して発生すると共に電流の流れを妨げて通電領域を狭める積層欠陥の発生を抑制できて、オン電圧ドリフトを抑制することができる。
尚、上記実施形態では、上記n型の4H型SiC基板51,n型SiCバッファ層52およびn型SiCドリフト層53で構成された基部63を六角柱形状に切り分けたが上記基部63は必ずしも六角柱形状に切り分けなくてもよく、四角柱やその他の多角柱形状でもよい。もっとも、上記基部63は、上記六角柱形状のメサ状のp型成長層54の形状に合わせて、六角柱形状とすることが容積効率や実装効率上望ましい。
(第3の実施の形態)
次に、図8に、この発明のバイポーラ半導体素子の第3実施形態としてのIGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラトランジスタ)80の断面を示す。また、図9は、この第3実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。
次に、図8に、この発明のバイポーラ半導体素子の第3実施形態としてのIGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラトランジスタ)80の断面を示す。また、図9は、この第3実施形態の半導体積層構造を模式的に示す斜視図である。
このIGBT80は、n型の6H型SiCによる基板71上に、p型6H−SiC層、n型6H−SiC層、p型6H−SiC層の順番で3つの層をエピタキシャル成長させ、以下に詳しく説明するようにして、IGBT80を作製した。
次に、このIGBT80の作製方法を説明する。すなわち、面方位が、(0001)シリコン面から8度のオフ角θの面をもつn型の6H型SiCを用いた基板上に、5μm/hの成膜速度で、p型6H−SiC層、n型6H−SiC層、p型6H−SiC層を順次形成する。
上記SiC基板71は、改良レーリー法によって成長したインゴットを(0001)シリコン面から8度傾いた面でスライスし、鏡面研磨することによって作製した。コレクタとなる基板71はn型で、厚さは400μm、ホール効果測定法によって求めたキャリヤ密度は5×1018cm−3である。
このSiC基板71上に、CVD法によって、アルミニウムドープp型SiC層、窒素ドープn型SiC層、アルミニウムドープp型SiC層の三層を連続的にエピタキシャル成長した。このp型SiC層は、図8のバッファ層72とドリフト層73となる。上記バッファ層72はアクセプタ密度が1×1017cm−3、膜厚は3μmである。また、ドリフト層73はアクセプタ密度が約5×1015cm−3、膜厚は15μmである。また、ドリフト層73の上に形成されるn型成長層74はドナー密度2×1017cm−3、膜厚は2μmである。このn型成長層74の上に形成されるp型成長層75はアクセプタ密度が約1×1018cm−3、膜厚は0.75μmである。
次に、このIGBT80を作製するときの処理条件を説明する。
まず、材料ガスとして、シラン(SiH4)およびプロパン(C3H8)を用いる。また、ドーパントガスとして窒素(N2)およびトリメチルアルミニウム{Al(CH3)3}を用いる。また、キャリアガスとして水素(H2)を用いる。ここで、各ガスの流量は、sccm(standard cc per minute)または、slm(standard liter minute)で表す。また、圧力は、kPa(kilo pascal)で表す。また、以下の説明において、各ガスの名称の後に付したかっこ内の数値は流量を表す。
基板71の温度は1550℃に保たれており、処理チャンバー内の圧力は5.6kPaに保たれている。n型SiC基板71のシリコン面上にp型SiCバッファ層122を形成する工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(1sccm)および水素(10slm)を供給する。この工程の処理時間は36分である。ドリフト層73の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(0.05sccm)及び水素(10slm)を供給する。処理時間は180分である。
n型成長層74の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、窒素(3sccm)及び水素(10slm)を供給する。処理時間は24分である。p型成長層75の形成工程では、シラン(10sccm)、プロパン(4sccm)、トリメチルアルミニウム(10sccm)及び水素(10slm)を供給する。処理時間は9分である。
上記の処理により、本実施形態のIGBT用のSiCエピタキシャルウェーハができる。このようにして作製したSiCエピタキシャルウェーハから図8に示す構造のIGBT80を作製する。
まず、フォトリソグラフ法を用いて、p型成長層75とn型成長層74をRIE(反応性イオンエッチング)でエッチングして、ゲート領域を形成するための孔78aを形成し、図9に示すような六角柱形状のメサ形状のp型中央部75Aとn型中央部74Aを形成する。同時に、図9に示すように、六角形状のp型外周部75Bとn型外周部74Bが形成される。また、図8に示すように、メサ形状のp型中央部75AをRIE(反応性イオンエッチング)でエッチングして、孔76aを設け、窒素をイオン注入することにより、エミッタとなるコンタクト領域76を形成する。なお、図9では、孔76aを省略している。
図9に示すように、上記メサ形状のp型中央部75Aとn型中央部74Aは六角柱形状(より詳しくは六角錐のうち頂部が切り取られた残りの底部の様な形状)であり、上記六角柱形状のメサ状のp型中央部75Aの6つの側面(メサ面)75Sを{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とし、六角柱形状のメサ状のn型中央部74Aの6つの側面(メサ面)74Sを{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。また、上記六角形状のp型外周部75Bの6つの内側面75V、および上記六角形状のn型外周部74Bの6つの内側面74Vも{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)となる。
次に、孔78aの壁面にMOS構造を形成するために、CVDによりSiO2膜を堆積させ絶縁膜77を形成する。また、基板71のコレクタ領域にNiを蒸着しコレクタ端子79Cとする。また、エミッタとなるコンタクト領域76にエミッタ電極79を蒸着する。次に熱処理を行って、それぞれオーミック接合を形成する。さらに、酸化膜77の上にMo電極を形成し制御電極としてのゲート電極78とする。
そして、この実施形態では、図9に示すように、上記n型の4H型SiC基板71,p型SiCバッファ層72およびn型SiCドリフト層73からなる基部83および上記六角形状のn型外周部74B,p型外周部75Bを、上記六角柱形状のメサ状のp型中央部75A,n型中央部74Aの形状に対応して、ダイシングにより六角柱形状に切り分けた。よって、この切り分けられた基部83は、上記六角柱形状のメサ状のp型中央部74Aの6つの側面74Sおよび六角柱形状のメサ状のn型中央部75Aの6つの側面75Sと同様に{01−10}面となる6つの側面83Aを有する。尚、図9では、絶縁膜77,ゲート電極78,エミッタ電極79を省略している。
また、上記六角形状のp型外周部75Bも{01−10}面となる6つの側面75Uを有し、上記六角形状のn型外周部74Bも{01−10}面となる6つの側面74Uを有する。
こうして作製した本実施形態のIGBT80の耐電圧は、970V、オン抵抗は10.5mΩcm2であり、コレクタエミッタ間電圧は−13Vである。また、このIGBT80に、−40Vのゲート電圧を印加し、コレクタ電流1.4Aを1時間通電し、通電開始時と1時間通電後の室温でのコレクタ特性をカーブトレーサで測定した。このIGBT80では、通電直後と1時間通電後のコレクタ−エミッタ間電圧はともに−13Vであり、ほとんど変化がなく、従ってほとんど劣化していないことが判った。
以上のように、この第3実施形態のIGBT80によれば、上述の如く、六方晶構造の炭化珪素半導体で作製され、上記メサ形状のn型中央部74Aが六角柱形状で6つの側面(メサ面)74Sをすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。また、上記メサ形状のn型中央部75Aが六角柱形状で6つの側面(メサ面)75Sをすべて{01−10}面が微視的に現れる{0m−mn}面(m,nは整数)とした。これにより、図4に示すように、{01−10}面が現れる表面(メサ面)74S,75Sに対するバーガーズベクトルBV1,BV2の角度θ1,θ2が、図12に示す{11−20}面が現れるメサ面に対するバーガーズベクトルBV101,BV102の角度θ101,θ102に比べて小さくなる。
これにより、表面欠陥の発生に必要なバーガーズベクトルの長さが長くなるので、メサ面74S,75Sに表面欠陥SDが入り難くなり、上記メサ状のn型中央部74A,75Aの各メサ面74S,75Sでの表面欠陥を低減することができる。したがって、pn接合近傍で通電による少数キャリアの再結合が起こることで表面欠陥が拡大して発生すると共に電流の流れを妨げて通電領域を狭める積層欠陥の発生を抑制できて、オン電圧ドリフトを抑制できる。
尚、上記実施形態では、上記n型の4H型SiC基板71,p型SiCバッファ層72およびn型SiCドリフト層73からなる基部83および上記n型外周部74B,p型外周部75Bを、六角形状に切り分けたが必ずしも六角柱形状に切り分けなくてもよく、四角柱やその他の多角柱形状でもよい。もっとも、上記基部83および上記n型外周部74B,p型外周部75Bは、上記六角柱形状のメサ状のp型中央部75A,n型中央部74Aの形状に合わせて、六角柱形状とすることが容積効率や実装効率上望ましい。
また、上記第1〜第3実施形態では、SiC基板の(0001)シリコン面上に各SiC層をエピタキシャル成長させたが、SiC基板のカーボン面上に各SiC層をエピタキシャル成長させてもよい。この場合は、薄膜の1時間当たりの増加量が10μm以上の成長速度にするのが望ましい。また、上記実施形態では、本発明をダイオード,バイポーラトランジスタ,IGBTに適用した一例を説明したが、本発明は、バイポーラ素子の他の一例としてのサイリスタ、あるいはGTO(ゲートターンオフサイリスタ)にも適用可能である。また、本発明は、当然ながら、反対極性の素子(例えばnpnトランジスタに対するpnpトランジスタ)などの各種の4H−SiCバイポーラ素子にも変形応用可能であり、6H−SiCなどの他の結晶構造を用いたSiCバイポーラ素子にも適用できるものである。
20 pinダイオード
21 n型SiC基板
22 n型SiCバッファ層
23 n型SiCドリフト層
24 p型接合層
25 p+型コンタクト層
26 p型JTE
27 熱酸化膜
28 カソード電極
29 アノード電極
30 絶縁保護膜
31 メサ状の半導体層
31A 側面
33 基部
33A 側面
50 npnバイポーラトランジスタ
51 n型4HSiC基板(コレクタ層)
52 n型SiCバッファ層(コレクタ層)
53 n型SiCドリフト層(コレクタ層)
54 p型成長層(ベース層)
54A 側面
55 n型成長層(エミッタ層)
55A 側面
56 p型ガードリング
57 コンタクト領域
58 酸化膜
59B ベース電極
63 基部
63A 側面
69 エミッタ電極
71 6H型SiC基板
72 p型SiCバッファ層
73 p型SiCドリフト層
74 n型成長層
74A n型中央部
74B n型外周部
74S 側面
74U 側面
74V 内側面
75 p型成長層
75A p型中央部
75B p型外周部
75S 側面
75U 側面
75V 内側面
76 コンタクト領域
77 絶縁膜
78 ゲート電極
79 エミッタ電極
80 IGBT
21 n型SiC基板
22 n型SiCバッファ層
23 n型SiCドリフト層
24 p型接合層
25 p+型コンタクト層
26 p型JTE
27 熱酸化膜
28 カソード電極
29 アノード電極
30 絶縁保護膜
31 メサ状の半導体層
31A 側面
33 基部
33A 側面
50 npnバイポーラトランジスタ
51 n型4HSiC基板(コレクタ層)
52 n型SiCバッファ層(コレクタ層)
53 n型SiCドリフト層(コレクタ層)
54 p型成長層(ベース層)
54A 側面
55 n型成長層(エミッタ層)
55A 側面
56 p型ガードリング
57 コンタクト領域
58 酸化膜
59B ベース電極
63 基部
63A 側面
69 エミッタ電極
71 6H型SiC基板
72 p型SiCバッファ層
73 p型SiCドリフト層
74 n型成長層
74A n型中央部
74B n型外周部
74S 側面
74U 側面
74V 内側面
75 p型成長層
75A p型中央部
75B p型外周部
75S 側面
75U 側面
75V 内側面
76 コンタクト領域
77 絶縁膜
78 ゲート電極
79 エミッタ電極
80 IGBT
Claims (4)
- 六方晶構造の炭化珪素半導体で作製された基板と、
上記基板上に形成され、第1の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたドリフト層と、
上記ドリフト層上に形成され、第2の導電型の六方晶構造の炭化珪素半導体で作製されたメサ状の半導体層と
を備え、
上記メサ状の半導体層を六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状とすると共に、この六角柱形状もしくは六角錐の底部をなす形状のメサ状の半導体層の6つの側面であるメサ面を{0m−mn}面(m,nは整数)としたことを特徴とするバイポーラ半導体素子。 - 請求項1に記載のバイポーラ半導体素子において、
上記基板がカソードであり、上記ドリフト層の上に形成された第2導電型のメサ状の半導体層がアノードであるダイオードであることを特徴とするバイポーラ半導体素子。 - 請求項1に記載のバイポーラ半導体素子において、
上記基板がコレクタ層であると共に上記ドリフト層上に形成されている第2導電型のメサ状の半導体層がベース層であり、
さらに、上記ベース層上に形成されていると共に炭化けい素半導体で作製された第1導電型のエミッタ層を有するトランジスタであることを特徴とするバイポーラ半導体素子。 - 請求項1に記載のバイポーラ半導体素子において、
上記基板がコレクタ層であり、
上記第2導電型のメサ状の半導体層上に形成されていると共に第1導電型の炭化けい素半導体で作製されたエミッタ層を有するIGBTであることを特徴とするバイポーラ半導体素子。
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JPWO2014208201A1 (ja) * | 2013-06-27 | 2017-02-23 | 三菱電機株式会社 | 半導体装置 |
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JP2019067982A (ja) * | 2017-10-03 | 2019-04-25 | 富士電機株式会社 | 炭化珪素半導体装置 |
-
2011
- 2011-02-25 JP JP2011039845A patent/JP2012178412A/ja not_active Withdrawn
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