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JP2012153763A - 複合体、その製造方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

複合体、その製造方法、ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム成分中に微粒子シリカ及びカーボンブラックを均一に分散させた複合体及びその製造方法を提供する。また、優れた加工性、耐候性を有しつつ、低燃費性と耐摩耗性や破壊性能とを両立できる該複合体を含むゴム組成物、及び空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】改質天然ゴムラテックスと水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを混合した配合ラテックスの凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整して得られる複合体に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合体及びその製造方法、該複合体を含むゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
従来からタイヤの転がり抵抗を低減し発熱を抑えることによる車両の低燃費化が図られている。近年、低燃費化への要請は大きくなり、タイヤ占有比率の高いトレッドはもちろん、サイドウォールなどに対する低燃費化も求められている。また、乗用車用タイヤだけでなくトラック、バス用タイヤに対する低燃費化も求められているため、同時に耐摩耗性を向上することも重要となっている。
ゴム組成物において低補強性充填剤を使用する方法や充填剤量を低減する方法などにより低発熱性の改善は可能であるが、耐摩耗性や破壊性能が低下するため、これらの性能の両立は困難である。また、シリカの使用による転がり抵抗の低減も図られているが、シリカは自己凝集性が強く、一般的な混練法で均一に分散させることは容易ではなく、特に微粒子シリカでは凝集傾向が強くなる。
一方、天然ゴムは他の合成ゴムに比べて加工性が悪く、通常素練りした後に使用されるため、一般的に生産性に劣る。また、素練りにより天然ゴムの分子鎖が切断され、本来有する高分子量ポリマーの特性(低燃費性、耐摩耗性、破壊性能など)が失われるという問題もある。
特許文献1には、ゴムの機械的強度を改善したマスターバッチとして、天然ゴムラテックスに水ガラスから製造される微粒子シリカを混合して調製した複合体が開示されている。しかしながら、低燃費性と耐摩耗性や破壊性能とを両立するという点、更には耐候性を改善するという点について未だ改善の余地がある。
特開2009−51955号公報
本発明は、前記課題を解決し、ゴム成分中に微粒子シリカ及びカーボンブラックを均一に分散させた複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、優れた加工性、耐候性を有しつつ、低燃費性と耐摩耗性や破壊性能とを両立できる該複合体を含むゴム組成物、及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、改質天然ゴムラテックスと水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを混合した配合ラテックスの凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整して得られる複合体に関する。
上記ゴム中の窒素含有量が0.3質量%以下、上記ゴム中のトルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下であることが好ましい。上記改質天然ゴムラテックスは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。
上記カーボンブラック分散液のカーボンブラックの平均粒子径が100nm以下であることが好ましい。さらに、上記カーボンブラック分散液のカーボンブラックの平均粒子径が60nm以下、上記微粒子シリカ分散液のシリカの平均粒子径が20nm以下であることが好ましい。
上記微粒子シリカ分散液は、イオン交換樹脂を用いて水ガラス水溶液のpHを9〜11に調整して製造されるものであり、かつ該分散液中のシリカの平均粒子径が20nm以下であることが好ましい。
本発明はまた、上記改質天然ゴムラテックスと上記微粒子シリカ分散液と上記カーボンブラック分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程(I)、該工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固させる工程(II)、及び該工程(II)で得られた凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整する工程(III)を含む上記複合体の製造方法に関する。
本発明はまた、上記複合体を含むゴム組成物に関する。本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、改質天然ゴムラテックスと水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを混合した配合ラテックスの凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整して得られる複合体であるので、該複合体中において微粒子シリカやカーボンブラックを均一に分散でき、両フィラーによる作用効果が充分に発揮される。このため、低発熱性、機械的強度、耐候性に優れた複合体が得られる。従って、該複合体をトレッドなどのタイヤ部材に使用することにより、低燃費性と耐摩耗性や破壊性能とを両立できると同時に、優れた耐候性も得ることが可能である。
また、シリカとカーボンブラックが均一に分散している複合体は、シリカの再凝集が抑制され、劣化前後のムーニー粘度の変化が抑制されるため、貯蔵硬化性も良好である。
更に、上記複合体は加工性にも優れているため、該複合体を用いたゴム組成物の製造において、予め素練り工程を行わなくても良好な加工性が得られる。また、素練り工程を行わない場合、該工程で天然ゴム分子鎖が切断されず、本来有する高分子量ポリマーの特性を維持できるため、低発熱性、耐摩耗性、破壊性能などの性能がより効果的に発揮される。
<複合体>
本発明の複合体は、改質天然ゴムラテックスと水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを混合した配合ラテックスの凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整して得られるものである。
つまり、先ず、ケン化処理などの改質処理を施した天然ゴムラテックス、水ガラス由来の平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液、カーボンブラック分散液をそれぞれ調製した上で、該ラテックスと両分散液を液体状態で混合して配合ラテックス(混合液)を作製し、凝固させた後に、得られた凝固物を洗浄して天然ゴム中のリン量を低減することで、リン量200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR)を含む複合体が製造される。また、このような手法を用いているため、改質天然ゴム中に微粒子シリカやカーボンブラックが微細に分散した複合体を調製できる。
本発明の複合体は、例えば、上記改質天然ゴムラテックスと上記微粒子シリカ分散液と上記カーボンブラック分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程(I)、該工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固させる工程(II)、及び該工程(II)で得られた凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整する工程(III)を含む製造方法により好適に得られる。
(工程(I))
工程1では、上記改質天然ゴムラテックスと上記微粒子シリカ分散液と上記カーボンブラック分散液とを混合して配合ラテックスを調製する。
工程(I)で使用される改質天然ゴムラテックスは、例えば、天然ゴムラテックスをアルカリでケン化処理することにより調製できる。ケン化処理を施すと、後述する工程(III)でケン化により分離したリン化合物が洗浄除去されるので、調製される複合体に含まれる天然ゴム中のリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることもできる。
天然ゴムラテックスはヘベア樹などの天然ゴムの樹木の樹液として採取され、ゴム分のほか水、タンパク質、脂質、無機塩類などを含み、ゴム中のゲル分は種々の不純物の複合的な存在に基づくものと考えられている。本発明では、天然ゴムラテックスとして、ヘベア樹をタッピングして出てくる生ラテックス(フィールドラテックス)、遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックス、亜鉛華とTMTDとアンモニアによって安定化させたLATZラテックスなど)などを使用できる。
ケン化処理の方法としては、例えば、特開2010−138359号公報、特開2010−174169号公報に記載の方法により好適に行うことができる。具体的には、ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、アルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することで実施でき、必要に応じて撹拌などを行っても良い。
ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などの公知のノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、ゴムを凝固させず良好にケン化できるという点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。ケン化処理において、アルカリ及び界面活性剤の添加量、ケン化処理の温度及び時間は、適宜設定すればよい。
また工程(I)では、水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液が使用される。即ち、シリカは、原料の水ガラスをそのまま用いるのではなく、球状微粒子として成長させて使用される。この成長の際、熟成時間を長めにとり、真球状にすることがより好ましい。真球状になると、シリカ粒子同士の接点が最小限となり、凝集力が小さくなり、分散しやすいシリカになりやすい。
上記微粒子シリカ分散液としては、水ガラス水溶液のpHを9〜11に調整して製造されるものが好ましい。
水ガラスは、通常、下記式で示される組成で表される。
NaO・nSiO・mH
上記係数nは、SiO/NaOの分子比で示される値であって、一般にモル比と呼ばれるJIS K 1408−1966に規定の範囲である。この係数nは、特に限定されないが、好ましくは2.1〜3.3であり、より好ましくは3.1〜3.3である。上記係数nが3.1〜3.3であるときは、水ガラス中のシリカ成分(SiO換算量)が多くなることから、ゴムとの複合化処理の効率が向上する。
なお、一般に、上記係数nが3.1〜3.3である水ガラスは、水ガラス3号として市販されている。本発明に使用可能な水ガラスは、これに限定されるものではなく、例えば、JIS K1408に規定の1〜3号水ガラスや、その他各種のグレード品を使用できる。
水ガラスの水溶液を作製し、該水溶液のpHを9〜11の範囲に調整することにより、平均粒子径100nm以下の微粒子シリカが分散した微粒子シリカ分散液を調製できる。pHが9未満の場合、ゲル化しやすく、pHが11を超えると微粒子シリカが溶解する傾向にある。より好ましくは、pHは9.5〜10.5の範囲に調整される。pHを9〜11の範囲に調整する手法は特に限定されず、酸又はアルカリの添加、イオン交換樹脂の使用など、従来公知の方法で実施できるが、なかでも、微粒子シリカがより分散した分散液が得られるという点から、イオン交換樹脂の使用が好ましい。
イオン交換樹脂によるpH調整方法としては、例えば、水ガラスの水溶液と陽イオン交換樹脂とを接触させる方法が挙げられる。具体的には、所定濃度に希釈した水ガラスの水溶液を、陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、必要に応じてOH型強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱アニオンすること、などによって行うことができる。上記接触させる方法としては、水ガラスの水溶液中に陽イオン交換樹脂を直接投入して撹拌、接触させるバッチ方式、陽イオン交換樹脂を充填したカラムに水ガラスの水溶液を通液する方式が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、H型の強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などが使用でき、市販品として、オルガノ(株)製のアンバーライトIR120B、IR124、200CT、IRC76、FPC3500が挙げられる。上記の方法により、水ガラス中のナトリウムイオンなどを除去できるため、より微粒化した状態のシリカ粒子を生成させることができる。
上記pHの調整時において、水ガラスの水溶液の温度は10〜90℃に調整されることが望ましい。温度が10℃未満では、微粒子シリカの生成速度が遅く、温度が90℃を超えると、水溶液の水の蒸発が生じ、水溶液中の水ガラスの濃度が不安定になりやすい。上記水溶液の温度は適宜調整すればよく、好ましい範囲として、例えば、15〜40℃、60〜80℃が挙げられる。
反応時間は、1〜72時間の範囲が好ましい。1時間未満では、微粒子シリカの生成が充分ではなく、72時間を超えても、反応は既に終了し、それ以上の変化がない傾向にある。室温で反応させる場合は、撹拌条件下で6〜24時間行われることが好適である。また、できる限り真球状に近づけるためには、高温、長時間での熟成がよく、60〜80℃で24時間以上が好適である。
また水ガラス水溶液中に含まれるシリカ成分(SiO)の濃度は、1〜30質量%の範囲が好ましい。濃度が1質量%未満の場合、ゴムラテックスとの複合化のために大量の水ガラスの水溶液が必要となり、30質量%を超えると、シリカの凝集が生じやすい。該シリカ成分の濃度は、より好ましくは1.5〜20質量%、更に好ましくは2〜8質量%の範囲である。ただし、脱塩処理をした水ガラスを使用する場合、シリカの凝集は生じにくいため、上限は特に限定されない。
微粒子シリカ分散液中に含まれるシリカの平均粒子径は100nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは15nm以下、特に好ましくは10nm以下である。ここで、平均粒子径の大きさは、水溶液のpH、シリカ成分の濃度、反応温度、反応時間などを調整することで任意に調整することができる。
なお、本明細書において、平均粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が用いられる。具体的には、微粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、微粒子の形状が球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状又は棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には中心部からの平均粒径を粒子径とし、微粒子100個の粒径の平均値を平均粒子径とする。
微粒子シリカ分散液中に含まれるシリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、特に限定されないが、好ましくは30m/g以上、より好ましくは50m/g以上、更に好ましくは100m/g以上である。30m/g未満では、補強効果が小さい傾向がある。該NSAは、好ましくは500m/g以下、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。500m/gを超えると、分散性が悪く、発熱性が増大する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
また工程(I)では、カーボンブラック分散液が使用される。即ち、乾燥したカーボンブラックの粉末ではなく、カーボンブラックが水中に分散した分散液(スラリー)が使用される。
上記カーボンブラック分散液は、公知の方法で製造でき、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの公知の撹拌機を用いて調製できる。具体的には、水などの水性媒体にカーボンブラックを添加し、上記撹拌機を用いて撹拌することにより、上記分散液を調製できる。なお、上記分散液中のカーボンブラックの添加量は特に限定されないが、分散液(100質量%)中での均一分散性の点から、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。
カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、ランプ法により製造されたものなどが挙げられる。分散効率が高いという点から、湿式造粒、乾式造粒などで造粒されたカーボンブラックを使用することが好ましい。
カーボンブラックの平均粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは60nm以下である。100nmを超えると、充分なゴム強度が得られないおそれがある。該平均粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上である。10nm未満であると、充分な加工性、低燃費性が得られないそれがある。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは20m/g以上、より好ましくは35m/g以上、更に好ましくは40m/g以上である。20m/g未満であると、補強効果が小さい傾向がある。該NSAは、好ましくは500m/g以下、より好ましくは400m/g以下、更に好ましくは300m/g以下である。500m/gを超えると、分散性が低下し、発熱性が増大する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは80ml/100g以上である。該DBPは、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは130ml/100g以下である。該DBPが上記範囲内であると、低燃費性、耐摩耗性、破壊性能がバランスよく得られる。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217−4:2008に準拠して測定される。
工程(I)では、改質天然ゴムラテックスと微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを公知の方法により混合し、その後、均一な溶液になるまで充分に撹拌することで、配合ラテックス(混合液)を調製する。なお、改質天然ゴムラテックスは、ゴム固形分が10〜70質量%のものを使用することが好ましい。
上記混合工程では、改質天然ゴム100質量部(固形分)に対して、シリカが5〜150質量部(SiO換算)となるように微粒子シリカ分散液を混合することが好ましい。5質量部未満であると、マスターバッチとして使用する場合に、シリカの配合量が少なくなるおそれがある。150質量部を超えると、ゴムラテックス中でのシリカの均一分散が得られにくくなり、配合ラテックスを凝固した後のゴム組成物中のシリカの均一分散性が低下する傾向がある。より好ましくは5〜120質量部、更に好ましくは10〜100質量部である。
上記混合工程では、改質天然ゴム100質量部(固形分)に対して、カーボンブラックが3〜100質量部となるようにカーボンブラック分散液を混合することが好ましい。3質量部未満であると、耐候性の改善効果が充分に得られないおそれがある。100質量部を超えると、ゴムラテックス中でのカーボンブラックの均一分散が得られにくくなり、配合ラテックスを凝固した後のゴム組成物中のカーボンブラックの均一分散性が低下する傾向がある。より好ましくは3〜85質量部、更に好ましくは5〜75質量部である。
なお、上記混合工程では、改質天然ゴム100質量部(固形分)に対して、シリカ及びカーボンブラックの合計量が10〜200質量部となるように両分散液を混合することが好ましい。10質量部未満であると、シリカ、カーボンブラックを均一に微分散できないおそれがある。200質量部を超えると、シリカ、カーボンブラックを充分に分散できないおそれがある。
(工程(II))
工程(II)では、上記工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固(凝集)させ、ゴム中に微粒子シリカ、カーボンブラックが均一に分散した複合体を生成する。配合ラテックスの凝固は、酸凝固、塩凝固、メタノール凝固、高分子凝集剤による凝固などがあるが、シリカ、カーボンブラックを均一分散させて凝固するという点から、酸凝固が好ましい。凝固させるための酸としては、硫酸、塩酸、蟻酸、酢酸などが挙げられる。
配合ラテックスの酸凝固は、酸の添加により配合ラテックスのpHを5〜9(好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5)に調整して固形分を凝固させることで実施されることが好ましい。これにより、シリカ、カーボンブラックが微分散した複合体を好適に製造できる。
(工程(III))
工程(III)では、工程(II)で得られた凝固物(凝集ゴム、シリカ及びカーボンブラックを含む凝集物)を洗浄し、ゴム(天然ゴム)中のリン含有量を200ppm以下に調整(低減)する。ケン化処理後に洗浄処理を施すことにより、凝固物における天然ゴム中のリン量を200ppm以下に低減できる。
工程(III)の洗浄方法としては、ゴム分を水で希釈した後に遠心分離することや静置してゴムを浮かせ水相のみを排出することなどを、リン含有率が200ppm以下になるまで繰り返し行って洗浄する方法などが挙げられる。
洗浄後、通常、公知の方法(オーブンなど)で乾燥される。乾燥後、2軸ロール、バンバリーなどでゴム練りを行うと、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR)、シリカ及びカーボンブラックを含む複合体が得られる。なお、上記複合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
上記複合体に含まれる改質天然ゴムは、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなったり、充分な低燃費性が得られない傾向がある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、120ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、例えば、ICP発光分析など、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
上記複合体に含まれる改質天然ゴムの窒素含有量は、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下である。0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなったり、充分な低燃費性が得られない傾向がある。窒素はタンパク質に由来する。窒素含有量は、例えばケルダール法など、従来の方法で測定することができる。
上記複合体に含まれる改質天然ゴムは、トルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。20質量%を超えると、ムーニー粘度が上昇して加工性が悪くなる傾向がある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」又は「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×10rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記複合体を含有する。これにより、優れた低燃費性、耐摩耗性、破壊性能、耐候性、加工性、貯蔵硬化性が得られる。上記複合体は、マスターバッチとして使用できる。該複合体はゴム中にシリカ、カーボンブラックが均一に分散しているので、その他のゴム成分、ゴム配合剤と混合した場合に得られる本発明のゴム組成物においてもシリカ、カーボンブラックを均一に分散させることができる。従って、前述の性能が高い次元で得られる。
本発明のゴム組成物は、上記改質天然ゴム以外の他のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。
上記ゴム組成物に含まれるゴム成分(複合体中の改質天然ゴム及び他のゴム成分)について、該ゴム成分100質量%中、上記複合体に含まれる改質天然ゴム(固形分)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。60質量%未満であると、充分な低燃費性能が得られないおそれがある。
本発明のゴム組成物は、上記複合体中のシリカの他に、更にシリカを配合してもよい。更に配合するシリカとしては、特に限定されず、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。
上記ゴム組成物において、シリカの含有量(複合体に含まれるシリカ及び更に配合されたシリカの合計含有量)は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
本発明のゴム組成物は、通常、シランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ(複合体に含まれるシリカ及び更に配合されたシリカの合計含有量)100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上である。4質量部未満であると、充分な補強性が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによるゴム強度や耐摩耗性の改善効果が充分に得られない傾向がある。また、コストが増大する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、上記複合体中のカーボンブラックの他に、更にカーボンブラックを配合してもよい。更に配合するカーボンブラックとしては、上記カーボンブラックと同様のものが好適である。
上記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量(複合体に含まれるカーボンブラック及び更に配合されたカーボンブラックの合計含有量)は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。3質量部未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下である。100質量部を超えると、充分な低燃費性や耐摩耗性が得られないおそれがある。
また、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。これにより、本発明の効果が良好に得られる。
本発明のゴム組成物には、上記の材料以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などの各種材料が適宜配合されていてもよい。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。天然ゴムを含むゴム組成物を製造する場合、ゴム成分、充填剤などの各成分の混練り工程前に、通常、天然ゴムの素練り工程が行われる。本発明では、改質天然ゴムを用いた複合体が使用されているため、該素練り工程を行わなくても良好に混練り工程を実施でき、所望のゴム組成物を作製できる。
上記ゴム組成物は、タイヤの各部材に適用できるが、なかでも、トレッド、サイドウォールに好適に用いることができる。
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック・バス、及び地球環境保全に対応した低公害車両(エコカー)などに好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックスを使用
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
水ガラス:富士化学(株)製の水ガラス3号(NaO・nSiO・mHO、n=3.2、シリカ成分(SiO換算量)含有量:28質量%)
天然ゴム:TSR
シリカ(1):EVONIK−DEGUSSA社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g)
シリカ(2):Rhodia社製のPremium 200MP(NSA:200m/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック(1):東海カーボン(株)製のシーストV(平均粒子径:62nm、NSA:27m/g、DBP:87ml/100g)
カーボンブラック(2):東海カーボン(株)製のシースト9(平均粒子径:19nm、NSA:142m/g、DBP:115ml/100g)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
(アルカリによるケン化天然ゴムラテックスの調製)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。
(ケン化天然ゴム(固形ゴム)の作製)
上記で得られたケン化天然ゴムラテックスに水を添加して固形分濃度(DRC)を15%(w/v)に調整した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥してケン化天然ゴム(固形ゴム)を得た。
(微粒子シリカ分散液(1)及び(2)の調製)
水ガラスを用いて、シリカ成分含有量(濃度)が2質量%の水ガラス水溶液を作製し、pH10に調整して25℃で10〜24時間、撹拌を行い、微粒子シリカ分散液(1)及び(2)を得た。なお、pHは、硫酸により調整した。
TEM写真の観察により、平均粒子径20nm程度のシリカ(微粒子シリカ分散液(1))と平均粒子径15nm程度のシリカ(微粒子シリカ分散液(2))が得られていることを確認した。
(微粒子シリカ分散液(3)の調製)
水ガラスを用いて、シリカ成分含有量(濃度)が2質量%の水ガラス水溶液を作製し、pH10に調整して80℃で24時間、撹拌を行い、微粒子シリカ分散液(3)を得た。なお、pHは、H型強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製のIR120B)を用いて調整した。
TEM写真の観察により、平均粒子径10nm程度のシリカが得られていることを確認した。
(カーボンブラック分散液の調製)
造粒されたカーボンブラック(1)、(2)を用いて、カーボンブラック含有量(濃度)が5質量%になるようにカーボンブラック水溶液を作製し、撹拌機(SDRT:佐竹化学機械工業(株))を用いて、液温25℃、回転数10,000min−1、30分撹拌することで、カーボンブラック分散液(1)、(2)を得た。
(配合ラテックスの調製、凝固、複合体の調製)
表1に示すような配合量で、ケン化天然ゴムラテックス又は天然ゴムラテックス、微粒子シリカ分散液(1)〜(3)及びカーボンブラック分散液(1)〜(2)を混合して、配合ラテックスを調製した。配合ラテックスが均一になるまで充分に撹拌した後、配合ラテックスを硫酸によりpH7に調整して凝固させた。得られた固形物をろ過してゴム分を回収し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して、複合体(A)〜(J)を得た。
Figure 2012153763
複合体(A)〜(E)に含まれる改質天然ゴム、複合体(F)〜(H)に含まれる天然ゴム、複合体(I)〜(J)に含まれる改質天然ゴム、ケン化天然ゴム(固形ゴム)、及びTSRについて、以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表2に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、試料約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用して、試料のリン含有量を求めた。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した試料70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
Figure 2012153763
表2に示すように、複合体(A)〜(E)、(I)〜(J)を形成するHPNRでは、複合体(F)〜(H)、TSRに比べて、リン含有量、窒素含有量、ゲル含有率が低減していた。
(ゴム試験片の作製)
表3に示す配合に従って、1.7Lバンバリーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、ロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して加硫物を得た。
なお、TSRを使用した比較例6〜7及び天然ゴムラテックスを使用した比較例1〜3では、予め素練りを行った。
得られた各未加硫ゴム組成物及び加硫物を下記により評価し、結果を表3に示す。
(ムーニー粘度)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。比較例7のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムーニー粘度指数)=(比較例7のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例7の損失係数tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)が優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例7のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例7の容積損失量を100として、下記計算式により、各配合(加硫物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例7の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
(ゴム強度)
加硫物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した。なお、ゴム強度指数が大きいほど、ゴム強度に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/(比較例7のTB×EB)×100
(耐候性)
JIS−K6266に準じて、直接屋外暴露試験を実施した後、上記引張試験を行い、暴露前後のゴム強度を測定した。下記計算式より、各配合のゴム強度残留率を算出し、耐候性を指数表示した。なお、指数が大きいほど、耐候性に優れることを示す。
(ゴム強度残留率)=(暴露後のTB×EB)/(暴露前のTB×EB)×100
(耐候性指数)=(各配合のゴム強度残留率)/(比較例7のゴム強度残留率)×100
(貯蔵硬化性)
未加硫ゴム組成物をJIS−K6257の促進劣化試験A−2法に準じて70℃、168時間劣化させた後、劣化前後の未加硫ゴム組成物のムーニー粘度をJIS K6300に準拠して測定した。その変化率を貯蔵硬化性とし、下記計算式より、各配合の貯蔵硬化性を指数表示した。なお、指数が大きいほど、貯蔵硬化性に優れることを示す。
(貯蔵硬化性)=(暴露後のムーニー粘度)/(暴露前のムーニー粘度)×100
(貯蔵硬化性指数)=(比較例7の貯蔵硬化性)/(各配合の貯蔵硬化性)×100
Figure 2012153763
表3の結果から、ケン化天然ゴムラテックス、水ガラスから製造される微粒子シリカ分散液及びカーボンブラック分散液を混合した配合ラテックスから得られる複合体を用いた実施例では、フィラーの分散性が大幅に向上しているため、耐摩耗性、破壊性能、耐候性、貯蔵硬化性が大きく改善された。また、低燃費性にも優れていた。更に予め素練りを実施した比較例6〜7に比べて、素練りをしていないにもかかわらず、加工性にも優れていた。
また、上記製法で製造した実施例のゴム組成物は、フィラー分散性が高いため、ケン化天然ゴムとシリカとカーボンブラックを用いて通常の混練工程で作製した比較例8〜9に比べても全ての性能が優れていた。
更に、通常の天然ゴムラテックス、水ガラスから製造される微粒子シリカ分散液及びカーボンブラック分散液を混合した配合ラテックスから得られる複合体を用いた比較例1〜3やカーボンブラックを通常の混練工程で添加した比較例4〜5と比較しても、優れた性能が発揮された。

Claims (9)

  1. 改質天然ゴムラテックスと水ガラスから製造される平均粒子径100nm以下の微粒子シリカ分散液とカーボンブラック分散液とを混合した配合ラテックスの凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整して得られる複合体。
  2. 前記ゴム中の窒素含有量が0.3質量%以下、前記ゴム中のトルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下である請求項1記載の複合体。
  3. 前記改質天然ゴムラテックスは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものである請求項1又は2記載の複合体。
  4. 前記カーボンブラック分散液のカーボンブラックの平均粒子径が100nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
  5. 前記カーボンブラック分散液のカーボンブラックの平均粒子径が60nm以下、前記微粒子シリカ分散液のシリカの平均粒子径が20nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
  6. 前記微粒子シリカ分散液は、イオン交換樹脂を用いて水ガラス水溶液のpHを9〜11に調整して製造されるものであり、かつ該分散液中のシリカの平均粒子径が20nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の複合体。
  7. 前記改質天然ゴムラテックスと前記微粒子シリカ分散液と前記カーボンブラック分散液とを混合して配合ラテックスを調製する工程(I)、該工程(I)で得られた配合ラテックスを凝固させる工程(II)、及び該工程(II)で得られた凝固物を洗浄し、ゴム中のリン含有量を200ppm以下に調整する工程(III)を含む請求項1〜6のいずれかに記載の複合体の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の複合体を含むゴム組成物。
  9. 請求項8記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
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