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JP6073574B2 - チェーファー用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

チェーファー用ゴム組成物及び空気入りタイヤ Download PDF

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JP6073574B2 JP2012122109A JP2012122109A JP6073574B2 JP 6073574 B2 JP6073574 B2 JP 6073574B2 JP 2012122109 A JP2012122109 A JP 2012122109A JP 2012122109 A JP2012122109 A JP 2012122109A JP 6073574 B2 JP6073574 B2 JP 6073574B2
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Description

本発明は、チェーファー用ゴム組成物及びそれを用いたチェーファーを有する空気入りタイヤに関する。
従来から、タイヤの転がり抵抗を低減して発熱を抑えることにより、車両を低燃費化することが行われている。近年、タイヤによる車両の低燃費化への要請は大きくなっており、トレッド、サイドウォール、内部部材のみならず、チェーファーに使用されるゴム組成物の低燃費化が要請されている。
ゴム組成物の低発熱化を図る方法として、低補強性の充填剤を用いる方法、充填剤の量を低減させる方法、充填剤としてシリカを用いる方法などが知られている。しかし、これらの方法では、ゴム組成物の補強性が低下するため、破壊強度が低下してしまう。このように、低燃費性と破壊強度を同時に改善することは困難であった。
また、チェーファーは、空気入りタイヤのビード部において、リムと接触する部分(チェーフィング部分)を保護するための部材であり、優れた引き裂き強さを示す天然ゴムが広く使用されているが、天然ゴムは他の合成ゴムに比べてムーニー粘度が高く加工性が悪いため、通常しゃっ解剤を添加して素練りを行い、ムーニー粘度を低下させてから使用される。そのため、天然ゴムを使用する場合、生産性が低下してしまう。更に、素練りによって天然ゴムの分子鎖が切断されるため、天然ゴムが本来有する高分子量ポリマーの特性(低燃費性、耐屈曲亀裂成長性など)が失われてしまうという問題もあった。
特許文献1には、蛋白質量の指標である総窒素含有率が0.1質量%以下となるように脱蛋白処理された天然ゴムを含有し、強度、低燃費性、加工性が良好なゴム組成物が開示されているが、良好な加工性を有しながら、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性を改善するという点について未だ改善の余地がある。
特開平6−329838号公報
本発明は、前記課題を解決し、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランスよく改善できるチェーファー用ゴム組成物及びそれを用いたチェーファーを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムと、カーボンブラック及び/又は白色充填剤とを含み、ゴム成分100質量%中の上記改質天然ゴムの含有量が5質量%以上であるチェーファー用ゴム組成物に関する。
上記天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下、トルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下であることが好ましい。
上記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。
上記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを調製する工程(A)、上記ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムをアルカリ処理する工程(B)、及びゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(C)を行って得られるものであることが好ましい。
上記白色充填剤がシリカであることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したチェーファーを有する空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、カーボンブラック及び/又は白色充填剤とを含むチェーファー用ゴム組成物であるので、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランスよく改善できる。
本発明のチェーファー用ゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR:Highly Purified Natural Rubber)を含むゴム成分に対して、カーボンブラック及び/又は白色充填剤が配合されている。天然ゴム(NR)中に含まれるリン脂質を低減、除去したHPNR(好ましくはタンパク質やゲル分も除去したHPNR)を用いることでNRの使用に比べて、更なる低燃費化を図ることができる。
また、HPNRを配合した未加硫ゴム組成物はムーニー粘度が低く加工性に優れ、特段素練り工程を行わなくても充分に混練りできるため、素練りによるゴム物性(ゴム強度など)の低下を防止できる。そのため、天然ゴムが本来有するゴム物性を維持できるので、良好なゴム強度(破壊特性)を得ることもできる。更に、HPNRはTSRなどが含むゴミ成分(小石、木屑など)を含まず、該成分の除去工程が必要ないため、生産性に優れ、ゴミ成分に起因するゴム破壊の心配もない。従って、優れた加工性(生産性)を得つつ、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランスよく改善できる。
上記改質天然ゴムは、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、リンが天然ゴム中でネットワークを形成し、ゲル量の増加やムーニー粘度の上昇につながると推察される。また、加硫ゴムのtanδが上昇する傾向があり、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランス良く改善できないおそれがある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、例えばICP発光分析等、従来の方法で測定できる。なお、リンはリン脂質(リン化合物)に由来するものである。
改質天然ゴムは、実質的にリン脂質が存在しないことが好ましい。「実質的にリン脂質が存在しない」とは、天然ゴム試料をクロロホルムで抽出し、抽出物の31P−NMR測定において、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しない状態を表す。−3ppm〜1ppmに存在するリンのピークとは、リン脂質におけるリンのリン酸エステル構造に由来するピークである。
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下である。窒素含有量が0.3質量%を超えると、タンパク質が天然ゴム中でネットワークを形成し、ゲル量の増加やムーニー粘度の上昇につながると推察される。また、加硫ゴムのtanδが上昇する傾向があり、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランス良く改善できないおそれがある。窒素含有量は、例えばケルダール法など、従来の方法で測定できる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。20質量%を超えると、フィラーの分散性が悪化する、ムーニー粘度が高くなるなど、加工性が低下する傾向があり、また、上記バランスを改善できないおそれもある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×10rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
改質天然ゴムは、例えば、特開2010−138359号公報に記載の製法などで得られるが、なかでも、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを調製する工程(A)、該ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムをアルカリ処理する工程(B)、及びゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(C)を含む製造方法で調製されるものが好ましい。該製法により、リン含有量、窒素含有量などを効果的に減量できる。また、該製法により得られる改質天然ゴムを使用することで、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性を顕著に改善でき、これらの性能が高い次元で得られる。また、酸で凝集させた際、残存する酸をアルカリ処理で中和することで、酸によるゴムの劣化を防ぐだけでなく、ゴム中の窒素含有量を一層低減できる。
上記製造方法において、ケン化処理は、天然ゴムラテックスに、アルカリと、必要に応じて界面活性剤を添加して所定温度で一定時間、静置することにより行うことができる。なお、必要に応じて撹拌などを行っても良い。上記製造方法によれば、天然ゴムのリン含有量、窒素含有量を抑えることができる。
天然ゴムラテックスとしては、生ラテックス、精製ラテックス、ハイアンモニアラテックスなどの従来公知のものを使用できる。ケン化処理に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン化合物などが挙げられ、良好にケン化できる点及び天然ゴムラテックスの安定性の点から、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。界面活性剤としては、公知の陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が使用可能であり、なかでも、陰イオン性界面活性剤が好ましく、スルホン酸系の陰イオン性界面活性剤がより好ましい。
ケン化処理において、アルカリの添加量は適宜設定すればよいが、天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.3〜5質量部である。また、界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、好ましくは0.01〜6.0質量部、より好ましくは0.1〜3.5質量部である。なお、ケン化処理の温度及び時間も適宜設定すればよく、通常は20〜70℃(好ましくは30〜70℃)で1〜72時間(好ましくは3〜48時間)程度である。
ケン化反応終了後、反応により得られたケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムを、必要に応じて破砕し、次いで、得られた凝集ゴムや破砕ゴムとアルカリを接触させてアルカリ処理を行う。アルカリ処理により、ゴム中の窒素含有量などを効率的に低減でき、本発明の効果が一層発揮される。凝集方法としては、例えば、ギ酸などの酸を添加する方法が挙げられる。アルカリ処理方法としては、ゴムとアルカリを接触させる方法であれば特に限定されず、例えば、凝集ゴムや破砕ゴムをアルカリに浸漬する方法などが挙げられる。アルカリ処理に使用できるアルカリとしては、例えば、上記ケン化処理におけるアルカリの他に、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムなどのアルカリ金属炭酸塩や、アンモニア水などが挙げられる。なかでも、本発明の効果に優れるという点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがより好ましく、炭酸ナトリウムが更に好ましい。
上記浸漬にてアルカリ処理する場合、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%の濃度のアルカリ水溶液にゴム(破砕ゴム)を浸漬することにより、処理できる。これにより、ゴム中の窒素量などを一層低減できる。
上記浸漬によりアルカリ処理する場合、アルカリ処理の温度は、適宜設定できるが、通常は20〜70℃が好ましい。また、アルカリ処理の時間は、処理温度にもよるが、十分な処理と生産性を併せ考慮すると1〜20時間が好ましく、2〜12時間がより好ましい。
アルカリ処理後、洗浄処理を行うことにより、リン含有量を低減できる。洗浄処理としては、例えば、ゴム分を水で希釈して洗浄後、遠心分離処理する方法、静置してゴムを浮かせ、水相のみを排出して、ゴム分を取り出す方法が挙げられる。遠心分離する際は、まず天然ゴムラテックスのゴム分が5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水で希釈する。次いで、5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよく、所望のリン含有量になるまで洗浄を繰り返せばよい。また、静置してゴムを浮かせる場合も水の添加、撹拌を繰り返して、所望のリン含有量になるまで洗浄すればよい。洗浄処理終了後、乾燥することにより、本発明に係る改質天然ゴムが得られる。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。5質量%未満では、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性を充分に改善できないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。90質量%を超えると、タイヤの耐久性が悪化するおそれがある。
本発明のゴム組成物では、効果を阻害しない範囲で他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、天然ゴム(NR)(非改質)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が良好に得られるという理由から、BRが好ましい。
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、シス含有量が95質量%以上のBRが好ましい。
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐屈曲亀裂成長性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。95質量%を超えると、改質天然ゴムの含有量が少なくなり、加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性をバランス良く改善できないおそれがある。
ゴム成分100質量%中の改質天然ゴム及びBRの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは100質量%である。該合計含有量が上記範囲内であると、優れた加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が得られる。
カーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強効果が得られるとともに、HPNRとともに使用することで本発明の効果が良好に得られる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは110m/g以上である。50m/g未満では、充分な補強性及び耐屈曲亀裂成長性が得られないおそれがある。該NSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。220m/gを超えると、カーボンブラックを分散させるのが困難となり、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは70ml/100g以上、更に好ましくは90ml/100g以上である。また、該吸油量は、好ましくは150ml/100g以下、より好ましくは140ml/100g以下、更に好ましくは120ml/100g以下である。上記範囲内であると、チェーファーとして優れたゴム強度が得られる。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。20質量部未満では、充分な耐屈曲亀裂成長性及び補強性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。90質量部を超えると、適切なゴム物性が得られず、低燃費性が悪化する傾向がある。
白色充填剤としては、ゴム工業で一般的に使用されているもの、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタンなどを使用することもできる。白色充填剤は単独で用いてもよく、カーボンブラックと併用してもよい。なかでも、低燃費性、ゴム組成物の補強効果及び分散性がバランスよく得られる点から、シリカが好ましい。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは90m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。90m/g未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは130m/g以下である。250m/gを超えると、シリカの分散性が低下し、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
白色充填剤(好ましくはシリカ)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上である。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。該含有量が上記範囲内であることにより、良好な加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が得られる。
本発明のゴム組成物において、カーボンブラック及び白色充填剤の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。また、上記合計含有量は、好ましくは190質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。該合計含有量が上記範囲内であると、良好な加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が得られる。
本発明では、白色充填剤としてシリカを使用する場合、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系など、ゴム分野で汎用されるシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが特に好ましい。
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。該含有量は、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が得られる。
本発明では、加硫剤として硫黄を使用することが好ましい。硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、良好な架橋密度が得られ、優れた加工性、低燃費性及び耐屈曲亀裂成長性が得られる。
本発明では、老化防止剤を使用することが好ましい。老化防止剤としては、本発明の効果が良好に得られる点から、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合体などのキノリン系の老化防止剤が好ましく、これらの併用がより好ましい。
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。該含有量は、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。該含有量が上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。また、HPNRを製造する際、NRのケン化処理時に劣化防止成分が除去される傾向があるが、上記範囲内の老化防止剤の配合により、劣化防止成分の除去に起因する性能の低下を抑制できる。
本発明のゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては、パラフィン系ワックスなどの石油系ワックスや、カルナバワックスなどの植物性ワックスなどがあげられる。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、石油系ワックスが好ましく、パラフィン系ワックスがより好ましい。
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。0.5質量部未満では、ワックスによる改善効果が充分に得られないおそれがある。また、ワックスの含有量は、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。4質量部を超えると、ワックスが過剰にゴム表面にブルームし、得られたゴム組成物が変色するおそれがある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫促進剤、加硫促進補助剤などを適宜配合できる。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。ここで、天然ゴムを含むゴム組成物を製造する場合、ゴム成分、充填剤などの各成分の混練り工程前に、通常、天然ゴムの素練り工程が行われる。本発明では、改質天然ゴムが使用されているため、該素練り工程を行わなくても良好に混練り工程を実施でき、所望のゴム組成物を作製できる。
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤのチェーファーに使用でき、具体的には、特開2009−137437号公報の図2などに示された部材に使用される。なお、チェーファーは、織物及び該織物を被覆するトッピングゴムからなるキャンバスチェーファーであってもよいし、織物を含まず、ゴム組成物のみからなるチェーファーであってもよい。
本発明の空気入りタイヤは、上記チェーファー用ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合した該ゴム組成物を、未加硫の段階でチェーファーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、商用車(ライトトラック)用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、産業車両用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤ、商用車用タイヤとして好適に用いられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴムラテックス:Muhibbah Lateks社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
(ケン化天然ゴムの作製)
製造例1
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000g(wet状態)に対し、10%Emal−E27C水溶液25gと40%NaOH水溶液50gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0に調整し、凝集させた。
凝集したゴムを粉砕し、それを1%炭酸ナトリウム水溶液に室温で5時間浸漬した後に引き上げ、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後90℃で4時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴムA)を得た。
製造例2
40%NaOH水溶液の添加量を25gに変更した以外は製造例1と同様に、固形ゴム(ケン化天然ゴムB)を得た。
製造例1〜2により得られた固形ゴム(ケン化天然ゴムA、B)及びTSRについて以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業社製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、試料約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用して、試料のリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDClに溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
Figure 0006073574
表1に示すように、ケン化天然ゴムA、Bは、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。
また、31P−NMR測定において、ケン化天然ゴムA、Bは、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しなかった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
ケン化天然ゴムA:製造例1
ケン化天然ゴムB:製造例2
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含有量:97質量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:125m/g、DBP:115ml/100g)
シリカ:ローディア社製のZeosil 115Gr(NSA:110m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド))
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355(パラフィン系ワックス)
老化防止剤A:バイエル社製のブルカノックス(N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、6PPD)
老化防止剤B:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛3号
20%オイル処理不溶性硫黄:四国化成工業(株)製のミュークロンOT−20(不溶性、オイル含有量:19〜21%、)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
(未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物の作製)
表2〜4に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。なお、TSRを用いた比較例1〜では、TSRのゴム成分100質量部に対して素練促進剤を0.4質量部添加して、1.7Lバンバリーミキサーを用いてあらかじめ素練りを行った後、冷却したものを使用した。一方、実施例1〜においては、素練りを行わなかった。
次に、得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間、2mm厚の金型でプレス加硫して加硫ゴム組成物(加硫ゴムシート)を得た。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物を下記により評価した。結果を表2〜に示す。なお、以下において、表2の基準比較例は比較例1、表3の基準比較例は比較例2、表4の基準比較例は比較例3である。
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表2〜4に示す。
(ムーニー粘度)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS−K−6300に基づいてムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定し、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度(ML1+4)が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(基準比較例のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
(低発熱性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫ゴムシート)の損失正接(tanδ)の測定し、下記計算式により指数表示した(低発熱性指数)。指数が大きいほど、tanδが小さく低燃費性に優れることを示す。
(低発熱性指数)=(基準比較例のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(耐屈曲亀裂成長性)
加硫ゴム組成物を用い、JIS−K−6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−デマッチャ屈曲亀裂試験方法」に基づいてサンプル(ゴムシート)を作製し、屈曲亀裂成長試験を行い、70%伸張を100万回繰り返してゴムシートを屈曲させたのち、発生した亀裂の長さを測定した。結果は、下記計算式により指数表示した(耐屈曲亀裂成長性)。指数が大きいほど、亀裂の成長が抑制され、耐屈曲亀裂成長性に優れることを示す。
(耐屈曲亀裂成長性指数)=(基準比較例の測定値)/(各配合の測定値)×100
Figure 0006073574
Figure 0006073574
Figure 0006073574
表2〜4が示す通り、カーボンブラック配合、シリカ配合のいずれにおいても、リン含有量200ppm以下の改質天然ゴム(ケン化天然ゴムA、B)を用いた実施例では、加工性、低燃費性、耐屈曲亀裂成長性がバランスよく改善された。

Claims (5)

  1. 天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを調製する工程(A)、前記ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムをアルカリ処理する工程(B)、ゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(C)、前記工程(A)〜(C)を経て得られるリン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムと、カーボンブラック及び/又は白色充填剤とを混練し、ゴム成分100質量%中の前記改質天然ゴムの含有量が5質量%以上であるチェーファー用ゴム組成物を得る工程(D)、及び前記工程(D)により得られるチェーファー用ゴム組成物を用いてチェーファーを作製する工程(E)を含み、
    前記アルカリ処理は、アルカリ金属炭酸塩を用いるチェーファーを有する空気入りタイヤの製造方法
  2. 前記改質天然ゴムは、窒素含有量が0.3質量%以下、トルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下である請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法
  3. 前記白色充填剤がシリカである請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法
  4. 前記チェーファー用ゴム組成物が、窒素吸着比表面積が100〜220m /gのカーボンブラックを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
  5. 前記チェーファー用ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する前記白色充填剤の含有量が5〜30質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
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