JP2012007111A - 液状添加剤組成物、及び電力ケーブル若しくは電力ケーブル接続部の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ジクミルパーオキサイドA質量部に対し、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)B質量部及びトリアリルイソシアヌレートC質量部含有する液状添加剤組成物であって、組成が下記(式−1)及び(式−2)を満たす液状添加剤組成物。
0.14≦B/A≦0.30 (式−1)
3.2×B×(B/A)≦C≦0.60A (式−2)
【選択図】なし
Description
ところで、電力ケーブルの絶縁層等に異物が混入していると電気特性が低下するので、ポリエチレンに添加する架橋剤や酸化防止剤は、異物を取り除いてから配合することが望ましい。添加剤に混入している異物を取り除くためには、液状にしてろ過する方法が簡便で確実である。
ところが、耐スコーチ特性および酸化防止能力に優れた酸化防止剤である、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(以下「NOC」と記載する場合がある)は溶融温度が155℃と高いので、加熱して液状にしてろ過することは難しい。このため、従来はNOCを粉状のままポリエチレンに配合しており、異物を管理できない問題があった。
そこで、ポリエチレンの架橋剤として用いるジクミルパーオキサイドにNOCを溶解させてろ過する技術が提案されている。
NOCの添加量は、架橋性樹脂組成物の耐スコーチ特性の観点から、多くすることが望しい。特許文献1には、アミド化合物またはアミン化合物をジクミルパーオキサイドに配合することにより、ジクミルパーオキサイドに対するNOCの溶解度を大きくして、ジクミルパーオキサイドに多量のNOCを配合できるようにした発明が開示されている。
しかしながら、架橋剤であるジクミルパーオキサイドは高温になると分解し易く、また、発熱・爆発などの危険性が増すので、ジクミルパーオキサイドをあまり高温に加熱することはできない。また、ポリエチレンに配合するジクミルパーオキサイドの量にも制限がある。これらを考慮すると、特許文献1に開示された手段でも、スコーチを防止するために十分な量のNOCをポリエチレンなどのポリオレフィンに添加することができない。
すなわち、ジクミルパーオキサイドの引火点は71℃なので、安全の面から60℃以下の温度でジクミルパーオキサイドに多量のNOCを溶解できることが望ましいが、特許文献1に開示された手段では、60℃以下の温度で満足できる量のNOCをジクミルパーオキサイドに溶解させることは困難であった。
<1>ジクミルパーオキサイドA質量部に対し、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)B質量部及びトリアリルイソシアヌレートC質量部含有する液状添加剤組成物であって、組成が下記(式−1)及び(式−2)を満たすことを特徴とする液状添加剤組成物。
0.14≦B/A≦0.30 (式−1)
3.2×B×(B/A)≦C≦0.60A (式−2)
<2>可塑化されたポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、上記<1>記載の液状添加剤組成物を1.5〜5質量部を配合した架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて絶縁層を形成することを特徴とする電力ケーブル又は電力ケーブル接続部の製造方法。
<3>前記液状添加剤組成物がろ過処理されていることを特徴とする<2>記載の電力ケーブル又は電力ケーブル接続部の製造方法。
なお、本発明において「ポリオレフィン系樹脂」は、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及びポリプロピレン等の通常のポリオレフィン樹脂に加え、構成成分としてエチレン単量体とビニル系単量体とからなるエチレン系共重合体を含む。該エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等を例示することができる。
また、上記<1>記載の液状添加剤組成物は、前記絶縁層を形成する架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物に好適に用いられるが、半導電層を形成する架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物に用いることもできる。
この結果、異物の混入を防止しつつNOCを多量にポリオレフィン系樹脂に配合して、スコーチの発生を防止して、電力ケーブルや電力ケーブル接続部の絶縁層を形成することが可能となる。
従って、本発明の液状添加剤組成物を用いると、異物による電力ケーブル等の絶縁特性の低下を防止しつつ、スコーチを防止して電力ケーブル等の生産性を向上できる。
なお本明細書において、トリアリルイソシアヌレートはTAICともいう。
架橋剤の主成分であるジクミルパーオキサイドは、常温では固体で、融点が38〜39℃である。液状添加剤組成物は、ジクミルパーオキサイドを主成分とするが、60℃以下で液状が維持されることを条件に、他の架橋剤を配合してもよい。なお、ジクミルパーオキサイドを主成分とするとは、架橋剤の質量の合計の60%以上のものをいう。
他の架橋剤としては、t−ブチルクミルパーオキサイド、m−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−イソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
また本発明の液状添加剤組成物には、NOCを主成分とする酸化防止剤が配合される。NOCは、本発明の液状添加剤組成物を配合した樹脂組成物を押出成形するときのスコーチを抑制するとともに、該樹脂組成物を用いて架橋された絶縁層の酸化を抑制することができる。酸化防止剤としては、NOCを主成分とし、これにジクミルパーオキサイドに溶解する性質を有する他の酸化防止剤を少量配合したものを用いることができる。この場合、NOCは、酸化防止剤全体の合計量の80質量%以上であることが好ましい。他の酸化防止剤の例としては、ビス[2−メチル−4−{3−n−アルキル(C12またはC14)チオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル]スルフィド、ジトリデシルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
0.14≦B/A≦0.30 (式−1)
本発明の液状添加剤組成物において、Bをこの範囲内とすることにより、この液状添加剤組成物を配合した架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物のスコーチを抑制して、安定した押出成形をすることができる。
NOCの配合量が少なすぎると、耐スコーチ特性が低下してしまう。NOCの配合量が多すぎると、ジクミルパーオキサイドにNOCを溶解させることが困難になり、溶解しないNOCがこの液状添加剤組成物をろ過する際に残渣となり、フィルターが目詰まりしてしまう。
本発明の液状添加剤組成物においては、TAICが特定量配合される。TAICは融点が23〜27℃の三官能アリル基を有する化合物であり、これを配合することにより、所望のスコーチ抑制効果を発現するのに十分な量のNOCを、ジクミルパーオキサイドの分解が過剰に進行しない温度条件で、溶解させることができる。また、三官能アリル基を有することから、架橋剤と併用することにより架橋効率を向上することができ、目的とする架橋度を得るために必要な架橋剤の量を、架橋剤を単独で配合するのに比べて、少なくすることができる。その結果、所望のスコーチ抑制効果を発現するのに十分な量のNOCを配合できるようになるのに加えて、さらに、安定した押出成形をすることが可能となる。
液状のジクミルパーオキサイドA質量部に対し、NOCをB質量部及びTAICをC質量部配合して、本発明の液状添加剤組成物とした場合に、TAICの配合される量は、下記(式−2)を満たすことが必要である。
3.2×B×(B/A)≦C≦0.60A (式−2)
TAICの配合量をこの範囲内とすることにより、TAIC配合による問題を生じることなくNOCのジクミルパーオキサイドに対する溶解度を向上できるという効果を発揮することができる。TAICの配合量が少なすぎると、ジクミルパーオキサイドを主成分とする架橋剤に、NOCを必要量溶解させることができない。TAICの配合量が多すぎると、液状添加剤組成物を配合した架橋ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて押出成形する際に、該樹脂組成物が押出機内でスリップして安定した押出をすることができない。
なお、(式−2)中、TAICの配合量Cの下限に(B/A)が影響するのは、NOCはジクミルパーオキサイドとTAICの両方に対してある一定の溶解度を有するため、NOCの溶解に最低限必要なTAICの量には、溶解すべきNOCの量Bだけでなく、NOCのジクミルパーオキサイドに対する配合比も影響するためであると考えられる。
ジクミルパーオキサイドの温度が低すぎると、NOCの溶解度が低いため、NOCが析出する。またジクミルパーオキサイドの温度が高すぎると、ジクミルパーオキサイドの分解反応が進行し易くなり、本発明の液状添加剤組成物を長時間保管することができなくなる。
本発明の液状添加剤組成物はポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1.5〜5.0質量部配合される。ポリオレフィン樹脂に配合される液状添加剤組成物の配合量が少なすぎる場合は、十分な架橋効果が得られない。液状添加剤組成物の配合量が多すぎる場合は、DCPの量が多くなり、押出中に架橋が進行し過ぎてスコーチが発生し、安定した押出ができない。
50℃に加熱して液状としたジクミルパーオキサイドにトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、次いで4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(NOC)の順に加えて適宜攪拌することにより、表1記載の液状添加剤組成物A1〜A6及びB1〜B4を得た。A1〜A6は本発明の液状樹脂組成物の組成の範囲内のもので、B1〜B4は範囲外のものである。次にこれらの液状添加剤組成物を用いて、以下の方法により、電力ケーブル及び電力ケーブル接続部を製造した。
電力ケーブルを以下の方法により製造した。押出機に低密度ポリエチレン(ZF30R(商品名)日本ポリエチレン製、密度=0.92、MFR=1.0)のペレットを入れ、可塑化したところへ、押出機シリンダー途中に穿設した注入孔より、50℃に保持した液状添加剤組成物を注入した。液状添加剤組成物のろ過処理は、注入孔に取付けた、通過孔の大きさが20μmのスクリーンメッシュを用いて行った。各実施例及び比較例の電力ケーブルの製造に用いた液状添加剤組成物は、表2に併記した。液状添加剤組成物が注入された低密度ポリエチレンを溶融混練し、この樹脂組成物を内部半導電層及び外部半導電層の樹脂組成物とともに導体の外周に押出被覆して絶縁層を形成した。得られたケーブルコアを圧力10kg/cm2の窒素雰囲気中で、温度280℃で加圧し、上記液状添加剤組成物中に含有される過酸化物を開始剤とするラジカル反応により、低密度ポリエチレンの架橋を進行させた。次いで、金属遮蔽層及び防食層を設けて導体断面積200mm2、内部半導電層厚0.8mm、絶縁体層厚3.5mm、外部半導電層厚0.7mmの電力ケーブルを製造した。
実施例5の電力ケーブル接続部は以下の方法により製造した。まず、実施例1の2本の電力ケーブルの終端部を略円錐状に切削加工し、端部を対向させて導体接続を行い、次いで内部半導電層を形成した。次いで、その外側に絶縁層を形成するための金型を配置した。
次に上記金型を取り外し、バリなどを除去した後、得られた成形品の外周に半導電収縮チューブを熱収縮させて被覆し、その外周をさらにガスバリア層、加熱ヒーターで順次被覆した。その後、架橋管内で10kg/cm2窒素雰囲気中で、温度200℃で加圧を8時間行い、上記成形品を架橋させて実施例5の電力ケーブル接続部を製造した。
なお、比較例7については、タイプA3の液状添加剤組成物を用いたものの、スクリーンメッシュを通過させることなく、ポリエチレンのペレットに散布し付着、含浸させたものを押出機に供給し、電力ケーブル接続部を製造した。
1.液状樹脂添加剤におけるNOCの溶解性
表1に示す液状添加剤組成物をJIS K 0065で用いられる試験管に規定量採取し、これを油浴中にて加温し、液状添加剤組成物の調製温度である50℃に到達してから10分間放置した後、かき混ぜ棒で30秒間の攪拌を行い、目視によりNOCの溶解状態を確認した。その結果を表1に示した。なお、タイプB3、タイプB4の液状添加剤組成物については、60℃まで加温して溶解状態を観察した。
電力ケーブル及び電力ケーブルの接続部を製造するに当たり、絶縁層押出機スクリュー先端に装着したメッシュ部分で押出樹脂圧力を測定し、押出開始から5時間経過した時点での樹脂圧力の上昇傾向から押出特性を評価した。評価の基準は以下の通りである。「+++」と「×」を不合格とし、それ以外を合格とした。
−:樹脂圧力の上昇はほとんど認められない。
+:樹脂圧力の上昇は認められるが、長尺ケーブル製造上全く問題ない。
++:樹脂圧力の上昇は認められるが、長尺ケーブル製造が可能である。
+++:樹脂圧上昇が認められ、長尺ケーブルの製造が困難である。
×:押出機中でスリップが生じて安定した押出ができなかった。
有効長8mの電力ケーブル、電力ケーブル接続部を含む線路を用意し、導体温度が90℃になる様に通電しながら、スタート電圧を−50kV/3回とし、−20kV/3回のステップアップで昇圧し、破壊電圧を測定した。破壊値が−157kV/mmを満足すれば○、−157kV/mmに満たなかったものは×とし、○を合格とし、その結果を表2、3に示した。
電力ケーブル後口側における絶縁体層の中央部分、電力ケーブル接続部の補強絶縁体の中央部分から厚さ1mmの形状の試験片約2gを採取し、JIS C 3005 4.25項「架橋度」に準拠した試験方法にて架橋度を測定した。測定値が80%以上のものを○、80%未満のものを×とし、○を合格とした。その結果を表2、3に示した。
まず、表1から、本発明の液状添加剤組成物で規定する組成範囲に含まれるタイプA1〜A6の液状添加剤組成物は、何れも、50℃でNOCが全て溶解しており、ジクミルパーオキサイドの過剰な分解を回避できる60℃以下の温度で、スクリーンメッシュによる異物除去を行えることが分かる。
これに対して、タイプB3は、TAICの配合量が少ないため、NOCの溶け残りがあり、ジクミルパーオキサイドの過剰な分解を回避できる60℃以下の温度ではスクリーンメッシュによる異物除去を行えなかった。
タイプB1とB2は、後述するように、架橋性ポリエチレン系樹脂組成物の成形性に問題を生じた。
タイプB4は、NOCの配合量が多いので、タイプB3と同じく、NOCの溶け残りがあり、ジクミルパーオキサイドの過剰な分解を回避できる60℃以下の温度ではスクリーンメッシュによる異物除去を行えないという不都合が生じた。
これに対し、比較例1では本発明の液状添加剤組成物のタイプA5を用いたものの、その配合量が不十分なため、十分な架橋度を得ることができなかった。比較例2では、本発明の液状添加剤組成物のタイプA6を用いたものの、その配合量が多すぎるため、押出中にスコーチを生じて樹脂圧力が著しく上昇し、長尺ケーブルの製造が困難であった。
比較例4では本発明の液状添加剤組成物の範囲外のタイプB2の液状添加剤組成物、すなわち、ジクミルパーオキサイドに対するTAICの配合量が少なすぎる液状添加剤組成物を使用したため、押出中にスコーチを生じて樹脂圧力が上昇し、長尺ケーブルの製造が困難であった。
比較例5では、本発明の液状添加剤組成物の範囲外のタイプB3の液状添加剤組成物を使用したため、すなわち、TAICの配合量が少なすぎるため、NOCが十分にジクミルパーオキサイドに溶解せず、押出中に通過孔20μmのスクリーンメッシュが目詰して電力ケーブルを製造できなかった。
比較例6では、本発明の液状添加剤組成物の範囲外のタイプB4の液状添加剤組成物を使用したため、すなわち、ジクミルパーオキサイドに対するNOCの配合比が大きすぎたため、NOCが十分にジクミルパーオキサイドに溶解せず、押出中に通過孔20μmのスクリーンメッシュが目詰して電力ケーブルを製造できなかった。
比較例7では、本発明の液状添加剤組成物のタイプA3を用いたものの、ろ過しないで、ポリエチレンのペレットに配合したため、添加剤に含まれる微細な異物、混合工程における混入異物の影響により、製造した接続部のImp破壊特性が著しく低い結果となった。
なお、タイプA3の液状添加剤組成物と、調整温度を60℃、45℃にした点のみが異なるものを作成し、これを用いて実施例3、5と同様にして(ろ過温度は前記調整温度と同一にした)電力ケーブル、電力ケーブル接続部を製造して評価したところ、実施例3、5と同様の結果であった。
Claims (3)
- ジクミルパーオキサイドA質量部に対し、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)B質量部及びトリアリルイソシアヌレートC質量部含有する液状添加剤組成物であって、組成が下記(式−1)及び(式−2)を満たすことを特徴とする液状添加剤組成物。
0.14≦B/A≦0.30 (式−1)
3.2×B×(B/A)≦C≦0.60A (式−2) - 可塑化されたポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、請求項1記載の液状添加剤組成物を1.5〜5質量部を配合した架橋性ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて絶縁層を形成することを特徴とする電力ケーブル又は電力ケーブル接続部の製造方法。
- 前記液状添加剤組成物がろ過処理されていることを特徴とする請求項2記載の電力ケーブル又は電力ケーブル接続部の製造方法。
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