第1の発明は、暖房運転時に、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、膨張弁、室外熱交換器、四方弁の順に冷媒が流れるように接続した冷凍サイクルと、室内熱交換器へ送風する室内送風ファンと、圧縮機で発生した熱を蓄積する蓄熱材と蓄熱熱交換器を内蔵する蓄熱槽とを有する空気調和機であって、室内熱交換器と膨張弁との間と、四方弁と圧縮機の吸入口との間を接続する蓄熱バイパス回路と、膨張弁と室外熱交換器との間と、圧縮機の吐出口と四方弁との間を接続する除霜バイパス回路と、蓄熱バイパス回路に蓄熱二方弁とを備え、通常の暖房運転モードと、通常の暖房運転よりも立ち上がりが早い速暖運転モードとを備え、速暖運転モード時において、室内送風ファンの駆動開始時の回転数に制限を設けることにより、使用者の選択に応じて暖房運転の立ち上がりを早くすることができ、室内送風ファン駆動時に回転数が大きくなってしまい、室内熱交換器温度が一気に低下してしまうことを防ぎ、快適性を維持することができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、速暖運転モード時において、速暖運転開始時に蓄熱二方弁を所定時間開くことにより、蓄熱材に保有している熱量を冷媒に与えることができ、圧縮機からの吐出温度を上げることができる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、圧縮機の周波数変更速度において、速暖運転開始時の周波数変更速度を、通常の暖房運転開始時の周波数変更速度よりも速くすることにより、圧縮機の立ち上がり速度を上げて吐出温度を上昇させることができる。
第4の発明は、特に第1から第3の発明において、室内熱交換器の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段を備え、通常の暖房運転開始時は、室内熱交換器温度検出手段で検出する温度が暖房開始温度となった場合に室内送風ファンの駆動を開始し、速暖運転開始時は、暖房開始温度よりも高い温度を検出した時に、室内送風ファンの駆動を開始することにより、吹出す温風の温度が高いために使用者に温風感を感じさせることができ、また、より室温を早くあげることができるので、快適性を向上させることができる。
第5の発明は、特に第1から4の発明において、速暖運転モード時において、室内送風ファンの駆動開始時の回転数は、室内熱交換器温度検出手段で検知する温度が、所定温度Yaから所定温度Ybまでの立ち上がり時間に応じて変更されることにより、立ち上がりの状況から室内送風ファンの回転数を上げても室内熱交換器の温度が低下する可能性が少ないかどうかを判断し、立ち上がり時間が早いときは室内送風ファンの回転数をある程度上げて、立ち上がり時間が長いときは室内送風ファンの回転数をある程度下げて、室内送風ファンの駆動を開始することで、状況に応じた暖房運転を行うことができる。
第6の発明は、特に第1から5の発明において、速暖運転モード時において、室内送風ファンの回転数の制限が、室内ファンの駆動開始から所定時間毎に所定の回転数ずつ増加することにより、室内の快適性を徐々に高めていくことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る冷凍サイクル装置である空気調和機の構成を示しており、空気調和機は、冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
図1に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8とストレーナ10と膨張弁12と室外熱交換器14とが設けられ、室内機4の内部には、室内熱交換器16が設けられ、これらは冷媒配管を介して互いに接続されることで冷凍サイクルを構成している。
さらに詳述すると、圧縮機6と室内熱交換器16は、四方弁8が設けられた冷媒配管18を介して接続され、室内熱交換器16と膨張弁12は、ストレーナ10が設けられた冷媒配管20を介して接続されている。また、膨張弁12と室外熱交換器14は冷媒配管22を介して接続され、室外熱交換器14と圧縮機6は冷媒配管24を介して接続されている。
冷媒配管24の中間部には四方弁8が配置されており、圧縮機6の冷媒吸入側における冷媒配管24には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ26が設けられている。また、圧縮機6と冷媒配管22は、冷媒配管28を介して接続されており、冷媒配管28には除霜二方弁(例えば、電磁弁)30が設けられている。
さらに、圧縮機6の周囲には蓄熱槽32が設けられ、蓄熱槽32の内部には、蓄熱熱交換器34が設けられるとともに、蓄熱熱交換器34と熱交換するための蓄熱材(例えば、エチレングリコール水溶液)36が充填されており、蓄熱槽32と蓄熱熱交換器34と蓄熱材36とで蓄熱装置を構成している。
また、冷媒配管20と蓄熱熱交換器34は冷媒配管38を介して接続され、蓄熱熱交換器34と冷媒配管24は冷媒配管40を介して接続されており、冷媒配管38には蓄熱二方弁(例えば、電磁弁)42が設けられている。
室内機4の内部には、室内熱交換器16に加えて、室内送風ファン16aと上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられており、室内熱交換器16は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒との熱交換を行い、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に吹き出す一方、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に吹き出す。上下羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて上下に変更し、左右羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて左右に変更する。
また、室外熱交換器14には、暖房運転時の冷媒入口温度及び冷媒出口温度をそれぞれ検出する室外熱交換器入口温度検出手段44と室外熱交換器出口温度検出手段46が設けられ、室内熱交換器16には、室内熱交換器16の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段48が設けられている。さらに、蓄熱槽32には、蓄熱槽32の温度を検出する蓄熱槽温度検出手段50が設けられており、室外機2には、外気温度を検出する外気温度検出手段52が設けられている。
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12、除霜二方弁30、蓄熱二方弁42、室外熱交換器入口温度検出手段44、室外熱交換器出口温度検出手段46、室内熱交換器温度検出手段48、蓄熱槽温度検出手段50、外気温度検出手段52等はコントローラ54(例えば、マイコン)に電気的に接続され、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12の運転あるいは動作は、コントローラ54からの制御信号に基づいて制御されるとともに、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42はコントローラ54からの制御信号に基づいて開閉制御される。
上記構成の本発明に係る冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能と
を、暖房運転時の場合を例にとり冷媒の流れとともに説明する。
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16へと至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て冷媒配管20を通り、膨張弁12への異物侵入を防止するストレーナ10を通って、膨張弁12に至る。膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至り、室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24と四方弁8とアキュームレータ26を通って圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、冷媒配管18の圧縮機6吐出口と四方弁8の間から分岐した冷媒配管28は、除霜二方弁30を介して冷媒配管22の膨張弁12と室外熱交換器14の間に合流している。
さらに、内部に蓄熱材36と蓄熱熱交換器34を収納した蓄熱槽32は、圧縮機6に接して取り囲むように配置され、圧縮機6で発生した熱を蓄熱材36に蓄積し、冷媒配管20から室内熱交換器16とストレーナ10の間で分岐した冷媒配管38は、蓄熱二方弁42を経て蓄熱熱交換器34の入口へと至り、蓄熱熱交換器34の出口から出た冷媒配管40は、冷媒配管24における四方弁8とアキュームレータ26の間に合流する。
次に、図1に示される空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを模式的に示す図2を参照しながら通常暖房時の動作を説明する。
通常暖房運転時、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42は閉弁しており、上述したように圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16に至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て、冷媒配管20を通り膨張弁12に至り、膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至る。室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24を通って四方弁8から圧縮機6の吸入口へと戻る。
また、圧縮機6で発生した熱は、圧縮機6の外壁から蓄熱槽32の外壁を介して蓄熱槽32の内部に収容された蓄熱材36に蓄積される。
次に、図1に示される空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式的に示す図3を参照しながら除霜・暖房時の動作を説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示しており、破線矢印は除霜に供する冷媒の流れを示している。
上述した通常暖房運転中に室外熱交換器14に着霜し、着霜した霜が成長すると、室外熱交換器14の通風抵抗が増加して風量が減少し、室外熱交換器14内の蒸発温度が低下する。本発明に係る冷凍サイクル装置である空気調和機には、図1に示されるように、暖房運転時における室外熱交換器14の冷媒入口温度を検出する室外熱交換器入口温度検出手段44が設けられており、非着霜時に比べて、蒸発温度が低下したことを室外熱交換器入口温度検出手段44で検出すると、コントローラ54から通常暖房運転から除霜・暖房運転への指示が出力される。
通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行すると、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42は開制御され、上述した通常暖房運転時の冷媒の流れに加え、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒の一部は冷媒配管28と除霜二方弁30を通り、冷媒配管22を通る冷媒に合流して、室外熱交換器14を加熱し、凝縮して液相化した後、冷媒配管24を通って四方弁8とアキュームレータ26を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。
なお、膨張弁12と室外熱交換器14との間と、圧縮機6の吐出口と四方弁8との間を接続する冷媒配管28は、室外熱交換器14を加熱して除霜を行うための気相冷媒が通過することから、除霜バイパス回路ということもできる。
また、冷媒配管20における室内熱交換器16とストレーナ10の間で分流した液相冷媒の一部は、冷媒配管38と蓄熱二方弁42を経て、蓄熱熱交換器34で蓄熱材36から吸熱し蒸発、気相化して、冷媒配管40を通って冷媒配管24を通る冷媒に合流し、アキュームレータ26から圧縮機6の吸入口へと戻る。
なお、室内熱交換器16と膨張弁12との間と、四方弁8と圧縮機6の吸入口との間を接続する冷媒配管38及び冷媒配管40は、蓄熱熱交換器34を通過して蓄熱材36から吸熱することから、これら二つの冷媒配管38,40を蓄熱バイパス回路ということもできる。
アキュームレータ26に戻る冷媒には、室外熱交換器14から戻ってくる液相冷媒が含まれているが、これに蓄熱熱交換器34から戻ってくる高温の気相冷媒を混合することで、液相冷媒の蒸発が促され、アキュームレータ26を通過して液相冷媒が圧縮機6に戻ることがなくなり、圧縮機6の信頼性の向上を図ることができる。
除霜・暖房開始時に霜の付着により氷点下となった室外熱交換器14の温度は、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒によって加熱されて、零度付近で霜が融解し、霜の融解が終わると、室外熱交換器14の温度は再び上昇し始める。この室外熱交換器14の温度上昇を室外熱交換器出口温度検出手段46で検出すると、除霜が完了したと判断し、コントローラ54から除霜・暖房運転から通常暖房運転への指示が出力される。
また、本実施の形態では、速暖運転モードを有している。室内機4への運転指示を行なうリモコン装置(図示せず)によって速暖運転モードが起動する設定にしている場合、次回の暖房運転起動時には速暖運転モードが起動して暖房運転が開始される。例えば、リモコン装置に「パワフル運転」等のボタンを設けており、それを押下することによって「パワフル運転」が有効となり、運転停止時も「パワフル運転」が有効となったまま、空気調和機の運転が停止する。そして、翌朝等に暖房運転を開始すると「パワフル運転」すなわち速暖運転モードが起動する設定となっているので、通常の暖房運転モードではなく、速暖運転モードによる暖房運転が起動する。
次に、速暖運転モードについて説明する。速暖運転モードによる暖房運転が開始すると、蓄熱二方弁42を所定時間(例えば、20秒)開く。そして、圧縮機6へは室外熱交換器14を経た冷媒と、蓄熱熱交換器34を経た冷媒とが合流して吸入される。
図4は、通常の暖房運転時の圧縮機の周波数変更速度(実線)と、速暖運転モードの暖房運転時の圧縮機の周波数変更速度(点線)とを示した図である。蓄熱槽32を持たない通常の暖房運転では、暖房運転の起動時には、低圧の落ち込みや液バック等が条件によっては発生するため、耐久性の観点から圧縮機の周波数を極端に上げることができない。
そのため図4に示すように、通常の暖房運転時においては、圧縮機6の運転周波数を徐々に上昇させているが、蓄熱槽32を有する速暖モードの暖房運転時においては、通常の暖房運転時よりも駆動速度を速めている。これは、蓄熱二方弁42をあけることによって室外熱交換器14をバイパスさせて圧縮機6の吸入側へ冷媒を供給し、さらに、蓄熱二方弁を開くことによって、蓄熱材36に残っている蓄熱量を冷媒へ与えることができるため、圧縮機の運転起動時における低圧の落ち込みを抑制することができ、その結果、圧縮機6の運転周波数の変更速度を上げることができる。また、所定の周波数(本実施の形態で
は、70Hz)に到達すると、一定にして圧縮機6を制御している。
また、蓄熱槽32が圧縮機6の周りに配設されることで、圧縮機6の運転停止時の温度低下も防ぐことができ、蓄熱槽32がない場合に比べて吐出温度を早く上昇させることができる。
また、室内熱交換器温度検出手段48で検出する温度が、通常の暖房運転時には所定の暖房開始温度(例えば、22℃)を検知すると室内送風ファン16aの駆動を開始している。そして室内熱交換器温度検出手段48で検出する温度が上昇するにしたがって、室内送風ファン16aの回転速度を速めている。
一方、速暖モード時の暖房運転時には、通常の暖房運転時の室内送風ファン16aの駆動開始温度(例えば、22℃)よりも、さらに高い温度(例えば、45℃)を検知すると室内送風ファン16aの駆動を開始するようにしている。通常の暖房運転開始時であれば、室内送風ファン16aの駆動が開始される時間は約5分程度掛かってしまうが、速暖モード時の室内送風ファン16aの駆動開始の温度を、通常の暖房運転時の駆動開始の温度よりも高くしていても、2分程度の室内送風ファン16aの駆動が開始する。これは圧縮機6の周波数変更速度を通常時よりも速めていることと、蓄熱槽32が圧縮機6の周りに配置して圧縮機6の冷え込みを抑制することで、圧縮機6からの吐出温度を上昇させることができる。
図5は、速暖運転モード時における室内送風ファン16aの駆動開始のタイミングを示した図である。図5に示すように、所定温度Yb(本実施の形態では45℃)を検知すると、室内送風ファン16aを駆動させるようにしている。しかしながら暖房運転開始時にいきなり高回転で室内送風ファン16aを駆動すると、急に室内熱交換器温度が低下してしまう恐れがある。
そこで、本実施の形態では、室内熱交換器の温度が所定温度Ya(例えば、25℃)を検知してから所定温度Yb(本実施の形態では45℃)を検知するまでの時間に基づいて、室内送風ファン16aの駆動開始時の回転数に制限値を設けている。よって、室内送風ファン16aの駆動開始時の回転数は制限値に制限される。
より具体的には、所定温度Yaから所定温度Ybまでの時間が長いほど、室内送風ファン16aの駆動開始時の回転数の制限値を小さくしている。図6は、本実施の形態における室内送風ファン16aの駆動開始時の回転数の制限値を示す図である。なお、図6は、所定温度Yaに25℃、所定温度Ybに45℃を設定した時の制限値を示すもので、これに限定されるものではない。
図6において、例えば、所定温度Yaから所定温度Ybまでの時間が45秒掛かったとすると、初期回転数は850rpmに制限される。通常の暖房運転時には室内熱交換器の温度が所定温度Yb(45℃)に達していると、様々な条件があるものの1200rpm程度になっている可能性もあるが、暖房運転の立ち上がり時に、いきなり風量を大きくしてしまうと、室内熱交換器の温度が一気に低下してしまい、快適性を損なってしまうおそれがある。そのため、本実施の形態では図6に示すような制限値を設けている。なお、図6ではある時間間隔毎に固定の値で制限値を設けているが、これに限定されることはなく、時間に応じて関数的に算出される値としてもよい。
また、図5には3通りの立ち上がり状況を図面に示している。所定温度Yaから所定温度Ybとなるまでに所定時間において、一点鎖線で示す状況(CaseA)の場合は所定時間t1掛かり、実線で示す状況(CaseB)の場合は所定時間t2掛かり、二点鎖線
で示す状況(CaseC)の場合は所定時間t3掛かっていることを示すものである。
図5に示すCaseA〜CaseCの3通りにおいては、所定時間t1<所定時間t2<所定時間t3の関係より、室内送風ファン16aの駆動開始時の制限値は、CaseA>CaseB>CaseCとなっている。これは立ち上がりが遅いほど、外気温度等の影響が大きく、いきなり風量を大きくしてしまうと室内熱交換器温度が急に低下してしまう恐れがあるために、制限値を低く設け、また立ち上がりが早いほど、外気温度等の影響が小さく、風量をある程度大きくしても室内熱交換器温度の温度低下が少ないであろうと推定して、制限値を高く設けている。
また、室内送風ファン16aの回転が開始してから所定時間毎(例えば、5秒毎)に制限値を徐々に上げていくようにしている。例えば、5秒毎に10rpmずつ制限値を増加させていく。このように行なうことで、冷凍サイクルの安定をとりながらも、暖房運転の効果を高めている。なお、この室内送風ファンの回転速度の制限の解除は、成り行きで解除してもよいし、ある一定の時間を設けて解除してもよい。
次に、除霜判定及び除霜開始条件について説明する。図7は、外気温度に基づいて、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された室外熱交換器14の冷媒入口温度に設定された除霜運転開始ライン(βライン)と、この除霜運転開始ラインより室外熱交換器14の冷媒入口温度が高い蓄熱材温度上昇開始ライン(θライン)を示している。
除霜運転開始ラインは、ある外気温度において、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度が除霜開始温度(除霜運転開始ライン)を下回った場合に、除霜運転を開始するための閾値を示しており、蓄熱材温度上昇開始ラインは、ある外気温度において、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度が蓄熱材温度上昇制御開始温度(蓄熱材温度上昇開始ライン)を下回った場合に、除霜運転の開始を予測し、蓄熱材36の温度上昇制御の判定を行うためのもので、除霜運転に必要な熱量が蓄熱槽32に確保されているかどうかを判定し、確保されていなければ、蓄熱槽32の温度を上昇させて蓄熱量を増加させるための制御を行うようにしている。
具体的には、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度が蓄熱材温度上昇開始ラインを下回った場合に、蓄熱槽温度検出手段50で検出された温度が所定温度(例えば30℃)に達していなければ、圧縮機6の回転数を上昇させることにより、あるいは、膨張弁12の開度を絞って高圧側の圧力を上昇させることにより、蓄熱槽32の温度を所定温度(例えば、2〜3℃)上昇させるようにしている。このときの所定温度(本実施の形態では30℃とした)は、実験等より算出した温度であり、冷凍サイクルの構成等によって適宜変更できるものであるが、本実施の形態では30℃程度の温度を有していれば、700グラム〜800グラム程度の霜を融かすことができる。要するに、ある一定の霜を融かすことが出来るだけの熱量があるかどうかを判断できる所定温度を設ければよい。
なお、圧縮機6の回転数上昇は入力増大を伴うことから、省エネの観点からは、膨張弁12の開度を絞って蓄熱槽32の温度を上昇させるのが好ましいが、圧縮機6の回転数上昇を行なって蓄熱槽32の温度を上昇させてもよい。
上述したように、蓄熱材温度上昇開始温度(θ)は、外気温度に基づいて設定されるが、除霜開始温度(β)に依存し、例えば、β<θ≦β+4のように設定される。
このように、除霜運転が開始される前に、蓄熱槽32に一定の蓄熱量が確保されているかどうかを判断することで、確実に除霜運転を行ないながら、暖房運転を継続することができる。
次に、除霜・暖房運転制御について説明する。蓄熱材36に蓄積される熱量は有限であることから、この制御は、蓄熱材36に蓄積された熱量を有効利用するために、通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行し、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42を開制御するに際し、除霜二方弁30をまず開制御し、除霜二方弁30の開制御から所定時間(例えば、10〜20秒)が経過した後、蓄熱二方弁42を開制御するようにしている。
除霜・暖房運転は、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42の両方が開状態で初めて行われることになるが、蓄熱二方弁42を除霜二方弁30より先に開制御すると、蓄熱材36に蓄積された熱量が無駄に使用されることになり、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42の両方を同時に開制御すると、室外熱交換器14からの冷媒と室内熱交換器16からの冷媒が同時に圧縮機6に吸入されることになり、圧力変動を惹起するおそれがあることから、除霜二方弁30の開制御と蓄熱二方弁42の開制御に適切な時間差を設定することで、圧力変動を極力抑えることができるとともに、圧縮機6への液冷媒の流入を阻止して圧縮機6の信頼性を向上させることができる。
このため、図1に示されるように、コントローラ54には、時間をカウントするタイマー56が設けられており、通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行した場合、除霜二方弁30の開制御からの経過時間をタイマー56でカウントし、タイマー56がカウントした時間が上述した所定時間に達すると、蓄熱二方弁42が開制御される。
以下、この制御について、図8のフローチャートを参照しながら詳述する。
ステップS1においては、室内熱交換器温度検出手段48で検出された温度が所定温度Ta(例えば、45℃)かどうかを判定し、検出温度が所定温度Taに等しい場合には、ステップS5に移行する一方、等しくない場合には、ステップS2に移行し、検出温度が所定温度Taを超えているかどうかを判定する。検出温度が所定温度Taを超えている場合には、ステップS3において圧縮機6の運転周波数を減少させるのに対し、検出温度が所定温度Taを下回っている場合には、ステップS4において圧縮機6の運転周波数を増加させる。ステップS3あるいはS4における圧縮機6の周波数制御が終了すると、ステップS1に戻る。なお、ここでは所定温度Taを45℃として説明しているが、これに限定されることはない。
すなわち、冷凍サイクル内の圧力変動は、室内熱交換器16の温度が高く、高圧側と低圧側の圧力差が大きい場合に、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42の開制御を行うことでも発生し、圧力変動は騒音を発生するおそれがあることから、室内熱交換器温度検出手段48で検出された温度が所定温度Taを超えている場合に、室内熱交換器温度検出手段48で検出された温度が所定温度Taになるまで圧縮機6の運転周波数を落とし、高圧側の圧力を低減する制御を行っている。
また、室内熱交換器16で熱交換を行った後の冷媒が持つ熱量も除霜運転時に有効利用するために、室内熱交換器温度検出手段48が検出した温度が所定温度Ta未満の場合には、検出温度が所定温度Taになるまで圧縮機6の運転周波数を増加して、暖房運転後の除霜運転の効率化を図っている。
ステップS1において、室内熱交換器温度検出手段48で検出された温度が所定温度Taになると、蓄熱槽32に蓄積した熱を有効利用しながら除霜運転を行うための通常蓄熱除霜運転を開始する。この除霜運転では、ステップS5において除霜二方弁30を開制御して圧縮機6より吐出された冷媒を室外熱交換器14に導き、ステップS6において、タイマー56によりカウントされた除霜二方弁30の開制御からの時間が上述した所定時間
に達しているかどうかを判定し、所定時間に達していればステップS7において蓄熱二方弁42を開制御して室内熱交換器16を通過した冷媒を蓄熱熱交換器34に導く一方、所定時間に達していなければステップS6に戻る。
ステップS7において蓄熱二方弁42が開制御されると、ステップS8において、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度と除霜運転終了の指標となる所定温度Tb(例えば、6℃)とが比較され、前者が後者未満であれば、残霜があるか、あるいは、残霜はないが基板(室外熱交換器14の上部及び下部)はまだ凍結していると判定して、除霜運転を継続し、ステップS9に移行する。
ステップS9においては、タイマー56によりカウントされた除霜二方弁30の開制御からの時間が所定時間(例えば、7分)に達していなければ、ステップS8に戻る一方、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度が所定温度Tb以上であれば、残霜はなく基板凍結も解消されていると判定して、ステップS10において除霜二方弁30及び蓄熱二方弁42を同時に閉制御し、除霜運転を終了して通常暖房運転に戻る。
また、ステップS9においてタイマー56でカウントした時間が所定時間に達していれば、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度に関係なく、ステップS10に移行し、除霜二方弁30及び蓄熱二方弁42を同時に閉制御し、除霜運転を終了して通常暖房運転に戻るとともに、タイマー56のカウント時間をリセットする。
なお、ステップS9においてタイマー56でカウントした時間が所定時間に達した場合、除霜運転を強制的に終了するようにしたのは、蓄熱槽32の蓄熱量は有限で、前記所定時間で消費される程度の蓄熱量に設定されていることから、所定時間を超えて除霜運転を継続しても蓄熱量が既になく、除霜運転を行う意味がないからである。
また、本実施の形態では、除霜運転が開始されてから除霜運転が終了するまでの間、常時、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度と外気温度とを比較しており、外気温度の方が室外熱交換器入口温度より高い場合には、室外機2に設けられ室外熱交換器14に送風するための室外ファン(図示せず)の運転を継続している。このように制御することにより、外気温度が持つ熱量を有効的に活用して、室外熱交換器14の除霜を促進させることができる。
但し、除霜運転中に、室外熱交換器入口温度が外気温度よりも高いと一旦判断された場合は、室外熱交換器入口温度が上昇するだけなので、除霜運転が終了するまで室外ファンを駆動させることはない。
次に、除霜運転終了後の暖房フローについて説明する。図9は除霜運転開始後の室外熱交換器14の冷媒出口温度の推移を示すグラフであり、図9に示されるように、除霜運転開始時には、室外熱交換器14の冷媒出口温度は氷点下の温度(例えば、−10℃)を示しているが、除霜運転開始直後は、室外熱交換器14の冷媒出口温度は急激に上昇し、その後霜を融解中の所定の温度範囲(例えば、0〜2℃)では室外熱交換器14の冷媒出口温度は徐々に上昇するものの、温度上昇は停滞傾向にある。この温度範囲を超えると、霜は略融解しているが、室外熱交換器14の基板はまだ凍結している可能性が高く、除霜運転を継続することで霜の融解後は室外熱交換器14の温度が上昇する。このときの温度上昇は、残霜がないことから霜の融解中の温度上昇より大きく、基板凍結が略解消すると、除霜運転は室外熱交換器14の予熱のために行われ、その冷媒出口温度はさらに徐々に上昇する。
本発明においては、除霜運転中の室外熱交換器14の冷媒出口温度に二つの閾値を設け
、除霜運転から暖房運転への復帰時の室外熱交換器14の冷媒出口温度に応じて、その後の除霜運転の形態を変更するようにしている。
すなわち、図9のグラフに基づいて、室外熱交換器14の冷媒出口温度に第1の閾値(例えば、2℃)と、第1の閾値より大きい第2の閾値(例えば、6℃)を設け、除霜運転から暖房運転への復帰時の室外熱交換器14の冷媒出口温度を第1及び第2の閾値と比較し、比較結果を示す所定の数値をコントローラ54に設けられたメモリ(図示せず)に加算し、メモリに積算された数値に基づいて、図10に示されるように、暖房運転、蓄熱除霜運転、あるいは、暖房運転から冷房運転への四方弁8の切り替えによる除霜運転を行っている。
なお、本明細書において、単に「除霜運転」という場合は、上述した通常蓄熱除霜運転のことを意味し、暖房運転から冷房運転への四方弁8の切り替えによる除霜運転は「四方弁除霜運転」と称しており、この除霜運転は、除霜二方弁30及び蓄熱二方弁42を閉弁した状態で行われる。
また、除霜運転から暖房運転への復帰時の室外熱交換器14の冷媒出口温度が第2の閾値以上の場合を「A復帰」と称し、冷媒出口温度が第1の閾値以上で第2の閾値未満の場合を「B復帰」と称し、冷媒出口温度が第1の閾値未満の場合を「C復帰」と称している。
さらに詳述すると、空気調和機の当初の運転時はメモリの積算値Mはリセット(M=0)されており、通常暖房運転終了後、上述したように、室内熱交換器温度検出手段48で検出された温度が所定温度Taになると、通常蓄熱除霜運転を開始する。除霜運転終了後、室外熱交換器14の冷媒出口温度が第2の閾値以上の場合は、残霜なし、基板凍結なしと判定して、メモリの積算値Mをリセットして、暖房運転を行う(A復帰)。
また、除霜運転終了後、室外熱交換器14の冷媒出口温度が第1の閾値以上で第2の閾値未満の場合は、残霜はないが基板凍結ありと判定して、メモリに第1の所定値(例えば、1)を加算し、暖房運転を行う(B復帰)。
さらに、除霜運転終了後、室外熱交換器14の冷媒出口温度が第1の閾値未満の場合は、残霜ありと判定して、メモリに第1の所定値より大きい第2の所定値(例えば、2)を加算し、暖房運転を行う(C復帰)。
なお、A復帰の場合は、図10のステップS21において暖房運転を行った後、図10の制御は終了する。
一方、B復帰あるいはC復帰の場合は、暖房運転終了後、除霜運転から暖房運転への復帰状態に応じて、すなわち、メモリの積算値Mに応じて、その後の制御は異なる。
まずB復帰の場合は、ステップS22において暖房運転を行った後、ステップS23において除霜運転を行い、B復帰後のA復帰の場合は、ステップS24おいて暖房運転を行ってメモリの積算値Mをリセット(M:1→0)した後、制御を終了する。
B復帰後さらにB復帰した場合(M=2)には、ステップS25おいて暖房運転を行い、ステップS26おいて除霜運転を行って、除霜運転から暖房運転への復帰状態に応じて、その後の制御をさらには分岐させている。
B復帰を2度繰り返した後、A復帰の場合は、ステップS27おいて暖房運転を行って
メモリの積算値Mをリセット(M:2→0)した後、制御を終了する。
一方、B復帰(M=3)あるいはC復帰(M=4)の場合は、除霜に必要な熱が蓄熱材36に蓄積されていないと判定して、ステップS28おいて暖房運転を第1の所定時間行った後、ステップS29おいて除霜運転を行う。なお、ここでいう「第1の所定時間」とは、蓄熱に必要な時間のことで、着霜判定の指標となる室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度にかかわらず暖房運転は行われ、第1の所定時間は、例えば30分に設定される。その後、A復帰の場合は、ステップS30おいて暖房運転を行ってメモリの積算値Mをリセットした後、制御を終了する。
また、B復帰あるいはC復帰の場合は、通常蓄熱除霜運転では、完全な除霜は不可能と判定して、ステップS31おいて暖房運転を第1の所定時間より短い第2の所定時間行って四方弁除霜運転を行い、室外熱交換器14に付着した霜を完全に除去する。なお、ここでいう「第2の所定時間」とは、冷凍サイクル内の冷凍機油のバランス等を考慮して冷凍サイクルを安定化させるために必要な暖房運転時間のことで、例えば10分に設定される。四方弁除霜運転後、メモリの積算値Mはリセットされる。
また、ステップS23おいて除霜運転を行った後、C復帰の場合は、ステップS32、S33、S34、S35おいてそれぞれステップS28、S29、S30、S31と同様の制御が行われる。
なお、図10の制御のうち、右列のフロー(C復帰後のフロー)におけるステップS36、S37、S38、S39、S40、S41、S42は、上述したステップS25、S26、S27、S28、S29、S30、S31と同じなので、その説明は省略する。
図10の制御を要約すると、
・室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度が所定温度に達することなく暖房運転への復帰が少なくとも2回続き、メモリの積算値Mが第3の所定値(例えば、3)以上の場合には、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出された温度にかかわらず、暖房運転を所定時間継続させた後、除霜運転に移行する。
・室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度が所定温度に達することなく暖房運転への復帰が少なくとも3回続き、メモリの積算値Mが第3の所定値より大きい第4の所定値(例えば、4)以上の場合には、除霜二方弁30及び蓄熱二方弁42を閉弁した状態で、四方弁8を冷房運転方向に切り替えて除霜運転を行う。
なお、図9のグラフでは、除霜運転中の室外熱交換器14の冷媒出口温度に二つの閾値を設けたが、第2の閾値を設けることなく一つの閾値(第1の閾値のみ)を使用して図10の制御を行うこともできる。
この場合、図9のA復帰とB復帰を一つにまとめてA復帰とし、図10の左列のフロー(A復帰後のフロー)と右列のフロー(C復帰後のフロー、ただし、このフローのB復帰は削除)のみ行えばよい。
また、本実施の形態では、第2の閾値は、上述した所定温度Tbと等しく設定されており、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出する温度が所定温度Tbを超えたときに除霜運転を終了する場合は、常にA復帰となっている。ただし、第2の閾値はこれに限定されるものではなく、第2の閾値と所定温度Tbとは異なる値であってもよく、第2の閾値は完全に霜が融解されている状態を検知できる温度に設定されていればよい。
次に、除霜開始条件の変更について説明する。上述したB復帰あるいはC復帰の繰り返
しは、室外熱交換器14の着霜量が多く、蓄熱槽32に収容された蓄熱材36の蓄熱量不足に起因することから、本発明においては、図7に示されるように、除霜運転開始ライン(βライン)より所定温度(例えば、2℃)高い別の除霜運転開始ライン(β2ライン)を設定している。
ここで、温度β2は、除霜開始温度(β)より高く設定され、除霜運転から暖房運転に復帰したときの室外熱交換器14の着霜状態と除霜時間に基づいて、例えばβ+1≦β2≦β+5(初期値:β2=β+2)のように可変設定される。
すなわち、除霜運転から暖房運転に復帰した際に、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出された温度が上述した所定温度Tbに達していない場合(B復帰あるいはC復帰)は、除霜開始温度を所定温度高くすることにより、早めに除霜運転を開始して着霜量を極力低減するようにしている。
除霜運転開始ラインの上昇は繰り返し行われ、B復帰あるいはC復帰の場合は、除霜開始温度を所定温度高くし、その後さらに、B復帰あるいはC復帰した場合も、除霜開始温度を所定温度高く設定する。なお、除霜開始ラインの上昇はA復帰によりリセット(β2→β)される。
しかしながら、除霜開始温度としてβ2ラインが設定されると、βラインに設定された場合に比べて、除霜運転から復帰してもすぐにβ2ラインを検出してしまい、蓄熱材36の蓄熱量が不十分であるにもかかわらず、除霜運転が早く開始されてしまう可能性がある。
そこで、本発明においては、除霜開始温度としてβ2ラインを設定するとともに、最低暖房運転時間Txなるものを設けており、除霜運転からB復帰あるいはC復帰した場合は、最低暖房運転時間Txの間は暖房運転を継続することにより蓄熱量が不十分あるいは無い状態での除霜運転を極力低減することができる。
つまり、除霜運転からB復帰あるいはC復帰した場合は、室外熱交換器入口温度検出手段44で検出する温度が、β2ラインに設定されている除霜開始温度を下回った場合であっても、暖房運転時間が最低暖房運転時間Txに達していない場合は、除霜運転に入らない。
なお、この場合の暖房運転の継続時間は室内負荷に応じて、例えば30分〜2時間の範囲で可変設定することもでき、室内負荷が低い場合は、所定時間を長く設定し、室内負荷が高い場合は、所定時間を短く設定するのが好ましい。これは室内負荷が低い場合は、着霜速度が遅いと判断しできる限り暖房運転を継続させることができ、室内負荷が高いと、着霜速度が早いと判断してできる限り除霜運転を早期に開始することができるためである。
このようなβ2ラインの考え方について、図10を用いて説明する。上述したように、本実施の形態では、通常の暖房運転中に着霜を検知すると除霜運転に入り、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出される温度に基づいて、除霜運転から通常の暖房運転に戻る。
ところが、本実施の形態のように、除霜運転中に並行して行われる暖房運転は、蓄熱材36の熱量に制限されてしまうため、蓄熱材36の熱量がなくなると暖房運転を継続することができなくなってしまう。
そのため、除霜運転から暖房運転への通常の復帰は、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出する温度が所定温度Tbを超えると、除霜運転を終了して暖房運転へ復帰するようにしているが、所定時間以内に所定温度Tbを超えなければ、強制的に除霜運転を解除し、暖房運転に戻るようにしている。これは所定時間経過すると蓄熱材36の熱量がなくなり、除霜運転を続けながら並行して暖房運転ができないからである。
例えば、図10に示すステップS21ではA復帰なので、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出する温度が所定温度Tbを超えて除霜運転を終了しているため、次回の除霜運転が入る除霜開始温度はβラインとなる。
一方、ステップS22やステップS36ではB復帰またはC復帰なので、除霜運転終了時には室外熱交換器出口温度検出手段46で検出する温度は所定温度Tb(第2の閾値)を超えていない。よって、次回の除霜運転が入る除霜開始温度はβラインよりも高い温度のβ2(例えば、β+2℃)ラインとなる。これによって、次回の除霜運転は、通常の除霜運転よりも早めに入ることになる。
ところが、ステップS23およびステップS37は、室外熱交換器出口温度検出手段46で検出する温度が所定温度Tb(第2の閾値)に達することなく暖房運転へ復帰しているため、霜の融け残りがある可能性が高い。そのため、蓄熱材36に熱量が溜まることなく、すぐに室外熱交換器入口温度検出手段44で検出する温度が、β2ラインで設定されている除霜開始温度に達してしまい、除霜運転にすぐに移行してしまう可能性がある。
その場合、仮に除霜運転に移行したとしても、蓄熱材36には十分に蓄熱されていないため、暖房運転を継続しながら除霜運転を行なうことができない。
よって、本実施の形態では、少なくとも最低暖房運転時間Txの間は暖房運転を継続させることによって、蓄熱材36に蓄熱して次回の除霜運転時においても、確実に暖房運転を継続しながら除霜運転を行なうことができるようにしている。
なお、β2ラインにて除霜運転を行なった後に、暖房運転復帰する際に、B復帰もしくはC復帰した場合には、さらにβ2ラインの温度を高温側(例えば、β+3℃)に上げて、さらに次回以降の除霜運転を入りやすくしている。
また、本実施の形態ではβ2ラインの初期値をβ+2℃としているが、これに限定されることは無く、例えば、β+1℃であっても良い。すなわちβ2ラインがβラインよりも高い温度であれば、本実施の形態の制御が満足されることになる。
次に、蓄熱材の保護制御について説明する。ここで、図2に示される通常暖房運転に注目すると、除霜運転を行わない通常の暖房運転の場合、除霜二方弁30及び蓄熱二方弁42は閉弁した状態で圧縮機6は運転され、圧縮機6で発生した熱は蓄熱材36に蓄積されるので、その温度は徐々に上昇する。
しかしながら、蓄熱材36の温度が過度に上昇すると、蓄熱材36自体の変質(例えば、酸化)や蓄熱材36の水分沸騰を惹起し、蓄熱材36が劣化するおそれがあることから、本発明においては、圧縮機6の温度、圧縮機6から吐出された冷媒の温度、あるいは、蓄熱槽32の温度に基づいて蓄熱材の保護制御をコントローラ54が行うことにより、蓄熱材36の劣化を防止している。
これは次の理由による。
・圧縮機温度:圧縮機6の温度は蓄熱材36の温度と密接に相関し、圧縮機6の温度が高
くなれば、蓄熱材36の温度も高くなる。
・吐出冷媒温度:圧縮機6から吐出された冷媒の温度は蓄熱材36の温度と密接に相関し、吐出冷媒の温度が高くなれば、蓄熱材36の温度も高くなる。
・蓄熱槽温度:蓄熱槽32の温度は蓄熱材36の温度と密接に相関し、蓄熱槽32の温度が高くなれば、蓄熱材36の温度も高くなる。
なお、この蓄熱材の保護制御については、暖房運転時と同様、冷房運転時にも行われる。
まず、圧縮機温度に基づく制御について説明する。図11に示されるように、この制御においては、圧縮機6の温度を検出する圧縮機温度検出手段58を設け、圧縮機温度検出手段58で検出された温度が第1の所定温度を超えると、蓄熱二方弁42の開制御を行い、暖房時には室内熱交換器16を、冷房時には室外熱交換器14を通過して温度が低下した冷媒を蓄熱熱交換器34に導くことで、蓄熱材36の温度を低下させている。
さらに詳述すると、図12に示されるように、圧縮機温度検出手段58で検出された温度が第1の所定温度(例えば、95℃)を超えると、蓄熱二方弁42を開制御し、圧縮機6の最大運転周波数を制限する。蓄熱二方弁42を開弁すると、蓄熱材36の過度の温度上昇を防止することができ、特に、蓄熱材36は圧縮機6の周囲に沿って配置されていることから、圧縮機6と蓄熱材36が接する部分の局部沸騰を防止して、蓄熱材36の蒸発を極力低減することができる。
その後、さらに圧縮機温度検出手段58で検出された温度が第1の所定温度より高い第2の所定温度(例えば、103℃)を超えると、圧縮機6を停止させる。
なお、圧縮機温度検出手段58で検出された温度が第1の所定温度(例えば、95℃)を超えると、蓄熱二方弁42の開制御に代えて、圧縮機6の運転周波数を下げる制御を行うこともでき、蓄熱二方弁42の開制御とともに圧縮機6の運転周波数を下げる制御を同時に行うようにしてもよい。すなわち、圧縮機6の運転周波数を下げると、圧縮機6の温度が低下し、圧縮機6の近傍に位置する蓄熱材36の局部沸騰を防止することができるからである。
また、圧縮機温度検出手段58で検出された温度が第2の所定温度を超えた後、圧縮機6を停止することにより圧縮機温度検出手段58で検出された温度が徐々に低下し、第2の所定温度より低い(例えば、5℃)第3の所定温度を下回ると、圧縮機6は再度運転を開始するが、蓄熱二方弁42は依然として開弁しており、圧縮機温度検出手段58で検出された温度がさらに低下して、第1の所定温度より低い(例えば、5℃)第4の所定温度を下回ると、蓄熱二方弁42は閉制御される。
温度下降方向の第3の所定温度及び第4の所定温度は、温度上昇方向の第1の所定温度及び第2の所定温度よりそれぞれ低く設定したのは、蓄熱二方弁42の開閉動作や圧縮機6のON/OFFの頻繁な繰り返し(ハンチング)を防止するためである。
なお、上述した蓄熱二方弁42の開制御に代えて、図13に示されるように、開弁状態と閉弁状態を周期的に繰り返す開閉制御を行うのが好ましく、この蓄熱二方弁42の開閉制御の場合、暖房時には、例えば10秒間の開弁と、例えば30秒間の閉弁を最大10回繰り返し、冷房時には、例えば30秒間の開弁と、例えば90秒間の閉弁を最大10回繰り返す。
このように蓄熱二方弁42を開閉制御するのは、蓄熱二方弁42を開制御しても、蓄熱
材36の温度が直ぐに低下するわけではなく、ある程度の時間遅れの後、蓄熱材36の温度が徐々に低下するという追従性の問題を考慮したものである。
また、暖房時の蓄熱二方弁42の開弁時間と閉弁時間を、冷房時の蓄熱二方弁42の開弁時間と閉弁時間より短く設定したのは、暖房時は、室内熱交換器16を通過した液相冷媒が蓄熱二方弁42を通過するのに対し、冷房時は、室外熱交換器14を通過した二相(気相と液相)冷媒が蓄熱二方弁42を通過することになるが、液相冷媒は二相冷媒より密度が高く、冷媒量が多いからである。
さらに、蓄熱二方弁42の開閉制御を最大10回に制限したのは、蓄熱二方弁42の耐久性を考慮してのことである。
次に、吐出冷媒温度に基づく制御について説明する。図11に示されるように、この制御においては、圧縮機6から吐出される冷媒の温度を検出する圧縮機吐出温度検出手段60を設け、圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度に基づいて図14のように制御される。図14の制御は図12の制御と類似しており、以下異なる点のみ説明する。
・第1の所定温度:例えば、90℃
・第2の所定温度:例えば、93℃
・第3の所定温度:第2の所定温度より低い温度
・第4の所定温度:第1の所定温度に同じ
ここで、第4の所定温度を第1の所定温度と同じ値に設定したのは、吐出冷媒温度に基づく制御は、ハンチングの可能性が極めて低いからである。但し、第4の所定温度と第1の所定温度とを異ならせても良いことは言うまでも無い。
なお、この吐出冷媒温度に基づく制御は、例えば寝込み時で冷媒循環量が少ない場合に特に有効で、寝込み時においては、圧縮機6の温度の立ち上がりが悪く、圧縮機温度検出手段58で検出された温度と蓄熱材36の温度が大きく乖離する可能性があることから、圧縮機温度検出手段58で検出された温度に基づいて蓄熱材36の温度を推定することが難しい。そこで、追従性のよい吐出冷媒温度を検出して蓄熱材の保護制御を行うことで、寝込み時においても蓄熱材36の温度を効率的に下げることができる。
図15は図14の変形例を示しており、図15の吐出冷媒温度に基づく制御では、圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度が第1の所定温度を超えると、膨張弁12の開度を増大する制御(増分:例えば、30パルス/分)を行い、その後、さらに圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度が第2の所定温度を超えると、蓄熱二方弁42を開制御あるいは開閉制御するようにしている。
また、圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度が第2の所定温度を超えた後、蓄熱二方弁42を開制御あるいは開閉制御することにより圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度が徐々に低下し、第3の所定温度を下回ると、蓄熱二方弁42を閉制御し、圧縮機吐出温度検出手段60で検出された温度がさらに低下して、第4の所定温度を下回ると、膨張弁12の開度を一定にして通常制御に戻る。
次に、蓄熱槽温度に基づく制御について説明する。この制御においては、蓄熱槽温度検出手段50で検出された温度に基づいて図12の制御と略同様に制御され、図12の制御と異なる点は次のとおりである。
・第1の所定温度:例えば、93℃
・第2の所定温度:例えば、95℃
・第3の所定温度:例えば、90℃
・第4の所定温度:例えば、88℃
また、この蓄熱槽温度に基づく制御においては、蓄熱槽温度検出手段50で蓄熱槽32自体の温度を検出していることから、蓄熱槽温度検出手段50で検出された温度が第1の所定温度を超えると、蓄熱二方弁42の開制御あるいは開閉制御のみ行い、圧縮機6の運転周波数を下げる制御を行わなくてもよい。
この蓄熱槽温度に基づく制御は、蓄熱材36の局部沸騰のみならず、蓄熱材36全体の沸騰を確実に防止することができる。
なお、蓄熱槽32の温度を検出する蓄熱槽温度検出手段50に代えて、蓄熱槽32に収容された蓄熱材36の温度を検出する蓄熱材温度検出手段を設け、蓄熱材温度検出手段で検出した温度に基づいて同様の制御を行うこともできる。
以上、圧縮機温度、吐出冷媒温度あるいは蓄熱槽温度に基づく蓄熱材36の保護制御を説明したが、圧縮機温度、吐出冷媒温度及び蓄熱槽温度は次のような関係にあり、どのような状態でも蓄熱材36の保護を行なうためには、これらの温度のすべてに基づいて蓄熱材36の保護制御を行うのが最も好ましい。
・立ち上げ・安定時:吐出冷媒温度>圧縮機温度>蓄熱槽温度
・冷媒量極小・冷凍サイクル閉塞時:圧縮機温度=蓄熱槽温度>吐出冷媒温度
次に、蓄熱材の温度推定について説明する。蓄熱槽32に収容された蓄熱材36の蓄熱量を検出するためには、蓄熱材36の温度を検出する必要があるが、蓄熱材36の中に蓄熱材温度検出手段を配置する構成の場合、腐食、防水性等の問題を考慮する必要がある。
また、蓄熱槽32の内部に蓄熱材温度検出手段を配置した場合、生産時に蓄熱槽32を傾けて圧縮機6へ装着したり、室外機2を設置する際に傾けて設置してしまうと、蓄熱槽32の内部に設けた蓄熱材温度検出手段が蓄熱材から露出するおそれがあり、蓄熱材温度検出手段が露出してしまうと、蓄熱材36の温度を正確に検出することができないという問題もある。
そこで、本発明においては、図11に示されるように、蓄熱槽温度検出手段50を蓄熱槽32の外側に取り付け、蓄熱槽温度検出手段50で検出される温度を外気温度検出手段52で検出された温度に基づいて補正し、蓄熱材36の温度を推定している。このように構成することで、蓄熱材36の温度を確実に得ることができるとともに、生産性の向上を図りつつ、品質不良の発生を防ぐことができる。
さらに詳述すると、図16乃至図19は、外気温度に基づく蓄熱材36の実際の温度(実線)と蓄熱槽温度検出手段50で検出された温度(破線)とを示しており、前者と後者は一致しない場合が多いことが分かる。
本願発明者らは、これらの実験結果に基づいて、蓄熱槽温度検出手段50で検出される温度Tcを外気温度検出手段52で検出された温度Toutに基づいて次の式を用いて補正することで、この補正値が蓄熱材36の実際の温度と略一致することを見いだした。
補正温度=Tc+(Tc−Tout)×α(α=0.15)
この式を使って算出した補正温度が、図16乃至図19のグラフに一点鎖線で示されており、一点鎖線で示された補正温度と実線で示される蓄熱材36の実際の温度が略一致しているのが分かる。なお、αは上記値に限定されることはなく、実験等に応じてその冷凍サイクルや蓄熱槽温度検出手段の精度のバラツキを考慮した最適な値に変更できる。
また、通常、蓄熱槽32には蓄熱材36が十分充填されているが、蓄熱槽32の割れや
蓄熱材36の蒸発により蓄熱材36が減少すると、除霜運転時、蓄熱材36の温度低下率(温度勾配)が緩慢になることから、蓄熱槽温度検出手段50で検出される温度Tcに基づいてエラー判定を行うようにしている。
図20は、蓄熱槽32内の蓄熱材36の充填量が十分な場合と、不十分な場合の除霜運転後の蓄熱材36の温度変化を示しており、特に充填量が100%の場合(実線)と50%の場合(破線)における蓄熱槽温度検出手段50で検出される温度Tcの変化を示している。
図20のグラフから分かるように、除霜運転開始後、所定時間の温度低下率(温度勾配)は蓄熱材36の充填量が多いほど大きく、本発明においては、蓄熱槽温度検出手段50で検出された温度Tcの所定時間の低下率が所定の低下率より小さい場合には、蓄熱槽32に収容された蓄熱材36が不足していると判定している。
具体的には、蓄熱二方弁42の開弁から所定時間(例えば、3〜4分)の蓄熱槽32の温度低下率を算出し、この温度低下率が所定値(例えば、2℃/分)未満の場合に警告を出すようにしており、警告は、室内機4や室内機4へ運転を指示するリモコン(図示せず)に設けたランプの点滅や文字情報、警告音等により、視覚的あるいは聴覚的に居住者に知らせることができる。
また、この警告は、蓄熱除霜運転が所定時間の経過により終了した場合(図8のステップS9がYESの場合)と組み合わせて行うようにしてもよい。
なお、蓄熱槽温度検出手段50で検出される温度は、蓄熱材不足の判定手段として使用され、蓄熱材不足は、蓄熱槽32内の蓄熱材36のレベル低下となって現れるので、蓄熱槽温度検出手段50は蓄熱槽32の高さ方向の中心より上方に取り付けるのが好ましい。