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JP2011202124A - 電荷輸送膜用組成物、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 - Google Patents

電荷輸送膜用組成物、有機電界発光素子、有機elディスプレイ及び有機el照明 Download PDF

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JP2011202124A
JP2011202124A JP2010073161A JP2010073161A JP2011202124A JP 2011202124 A JP2011202124 A JP 2011202124A JP 2010073161 A JP2010073161 A JP 2010073161A JP 2010073161 A JP2010073161 A JP 2010073161A JP 2011202124 A JP2011202124 A JP 2011202124A
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昌子 竹内
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知子 齊藤
Wataru Shimizu
渡 清水
Junichi Oizumi
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Abstract


【課題】 湿式成膜法により有機薄膜を形成した場合、均一に成膜可能であり、また、組成物の保存安定性に優れ、工業的な問題が生じない電荷輸送膜用組成物を提供することを課題とする。
また、湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子において、均一な発光面を有し、電圧が低く、短絡やダークスポットが生じず、駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【解決手段】 解離性基を有する重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を含有する電荷輸送膜用組成物であって、
光散乱測定法で、粒径(2R)がミクロンオーダである大きな凝集体を含む割合が小さいことを特徴とする、電荷輸送膜用組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機電界発光素子の有機層等を形成するために用いられる、電荷輸送膜用組成物に関する。
本発明はまた、電荷輸送膜用組成物で形成された有機層を有する有機電界発光素子に関する。
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。
このうち、真空蒸着法は積層化が可能であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入
の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。
一方、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材料を混合して入れることが容易である等の利点がある。
湿式成膜法で有機層を形成した例として、特許文献1や特許文献2に、正孔注入層、発光層を湿式成膜法で形成した有機電界発光素子の発明が開示されている。しかし、従来の組成物を用いて、湿式成膜法により有機薄膜を形成した場合、均一に成膜できないことがあった。そのため、該組成物を用いて湿式成膜法で形成された有機層を有する有機電界発光素子は、発光面にムラを生じたり、短絡を生じたり、電荷の集中によりダークスポットが生じたりとの問題があった。また、湿式成膜法に使用する組成物の保存安定性の低下により、歩留まりが低下したりポットライフが短いなどの工業的な問題が生じる場合があった。
特開2007−110093号公報 特開2007−335852号公報
本発明者らは、上記実情に鑑み、湿式成膜法により有機薄膜を形成した場合、均一に成膜可能であり、また、組成物の保存安定性に優れ、工業的な問題が生じない電荷輸送膜用組成物を提供することを課題とする。
また、湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子において、短絡やダークスポットが生じない有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、静的光散乱測定で、各々下記の条件を満たす組成物であれば上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
本発明は、解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を含有する電荷輸送膜用組成物であって、静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が8°であるときに、
下記式(1)を満たすことを特徴とする電荷輸送膜用組成物(以下、「本発明の電荷輸送膜用組成物」と称する場合がある)に存する。
ms/Im0≦35 (1)
(式(1)中、Imsは電荷輸送膜用組成物の補正散乱強度を表し、Ims=I×100/Tとして算出される値である。
m0は電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の補正散乱強度を表し、Im0=I×100/Tとして算出される値である。
また、Iは静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物の散乱強度、
は静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の散乱強度、
は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物の透過率(%)、
は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の透過率(%)、
を表す。)
また、有機電界発光素子、並びにこれを含む有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
本発明の電荷輸送膜用組成物は、解離性基を有する重合体や電子受容性化合物などの各種溶質に起因する凝集体の発生や経時の増加が見られず保存安定性が高いため、湿式成膜法で有機層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、また、目詰まりなく一定に濾過されるなど工業的観点から不利益を生じさせない。
また、本発明の電荷輸送膜用組成物を用いて、湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じない。この為、本発明の有機電界発光素子は、駆動寿命が長い。
従って、本発明の有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えら、その技術的価値は高いものである。
また、本発明の電荷輸送膜用組成物は、保存安定性が高く、湿式成膜法で有機層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、また工業的観点から不利益を生じさせないことから、有機電界発光素子に限らず、その他、電子写真感光体、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等の有機デバイスにも有効に利用することができる。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下に本発明の電荷輸送膜用組成物、有機電界発光素子、有機ELディスプレイ及び有機EL照明の実施態様を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
<電荷輸送膜用組成物>
本発明の電荷輸送膜用組成物は、解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を含有する電荷輸送膜用組成物であって、静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が8°であるときに、下記式(1)を満たす電荷輸送膜用組成物である。
ms/Im0≦35 (1)
(式(1)中、Imsは電荷輸送膜用組成物の補正散乱強度を表し、Ims=I×100/Tとして算出される値である。
m0は電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の補正散乱強度を表し、Im0=I
×100/Tとして算出される値である。
また、Iは静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物の散乱強度、
は静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の散乱強度、
は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物の透過率(%)、
は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の透過率(%)、
を表す。)
光散乱測定では、該電荷輸送膜用組成物を充填したセルの透過率によって測定手法を適切に選択する。静的光散乱で測定する場合は、透過率に特に制限はないが、通常550〜800nm、好ましくは600〜700nmの波長を有するレーザー、特に好ましくはHe−Neレーザ(波長633nm)における透過率が、通常5%以上、好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である。
透過率が低すぎると、散乱強度が低下してノイズが大きくなり、正確に測定できない場合がある。なお、透過率の上限は特に制限はない。
[静的光散乱測定]
本発明における静的光散乱測定とは、散乱強度と透過率を求めて、補正散乱強度を算出することを意味する。
静的光散乱測定を行うことにより散乱強度が得られるが、本発明においては、さらに透過率を測定することによって、この散乱強度と透過率とから、補正散乱強度を求める。
(1.測定方法)
静的光散乱測定を行うためには、例えば、高分子フィルムダイナミックス解析装置DYNA―3000(大塚電子社製)を用いる。
解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を含有する電荷輸送膜用組成物(以下、「測定サンプル」という)、および該電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒(以下、「測定用溶媒」という)の各々について、上記高分子フィルムダイナミックス解析装置で測定することにより、測定サンプルと測定用溶媒の各々の、散乱角(2θ)に対する散乱強度が得られる。測定サンプルの散乱強度をI、測定用溶媒の散乱強度をIとする。尚、該測定の際の条件は、Vv散乱条件とする。また、測定には、He−Neレーザ(波長633nm)を用いる。
ここで、散乱角(2θ)が8°のときの、測定サンプルの散乱強度IsをIs(8°)、測定用溶媒の散乱強度IをI(8°)とする。
また、透過率を測定するためには、例えば、ファイバーマルチチャンネル分光器USB2000(オーシャンオプティクス社製)を用いる。
測定サンプル、及び測定用溶媒の各々について、上記ファイバーマルチチャンネル分光器で測定することにより、測定サンプル、及び測定用溶媒の各々の透過率が得られる。得られた透過率を用いて、前記の散乱強度を吸収補正する。測定サンプルの透過率をT(%)、測定用溶媒の透過率をT(%)とする。ここで透過率は、上記散乱強度を測定する際に用いた光波長(以下、「光散乱測定波長」という)において測定し、この場合は、He−Neレーザ(波長633nm)を用いて測定する。
上記得られた透過率および散乱強度から、補正散乱強度を算出する。散乱角(2θ)が8°であるときの、測定サンプルの散乱強度および測定用溶媒の散乱強度の各々につき、以下の式に当てはめることにより、測定サンプルの補正散乱強度Imsおよび測定用溶媒の補正散乱強度Im0を算出する。すなわち、上記I(8°)につき、下記式(1−1
)を用いて補正散乱強度を算出する。また、I(8°)につき、下記式(1−2)を用
いて補正散乱強度を算出する。
ms=I×100/T ・・・(1−1)
m0=I×100/T ・・・(1−2)
ここで、I(8°)から求められるImsをIms(8°)、I(8°)から求められるIm0をIm0(8°)、とする。
本発明において、静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が8°であるときに、下記式(1)を満たすとは、すなわち、下記式(2−1)を満たすことを意味する。
ms/Im0 ≦ 35 ・・・(1)
ms(8°)/Im0(8°) ≦ 35 ・・・(2−1)
本発明において、Ims/Im0は35以下であるが、好ましくは25以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。Ims/Im0は、通常1以上であるが、測定サンプルや測定系温度、レーザー強度等の振れなどで0以上1未満の値になることもある。
また、Ims/Im0の値が上記範囲内であると、組成物の保存安定性が良好で、また湿式成膜法で有機層を形成する場合において均一に成膜しやすく、更に濾過を行った場合に目詰まりが生じにくく工業的観点から不利益が生じ難い。
この効果を得るために、特に散乱角(2θ)が8°及び15°であるときに上記式(1)を満たすことが好ましい。散乱角(2θ)が15°であるときのIms/Im0の算出方法は、上記散乱角(2θ)が8°である場合と同様である。
さらに、本発明においては、散乱角(2θ)が8°≦2θ≦15°であるときに、Ims/Im0が常に前記式(1)を満たすことが、さらにろ過性が良好であり、組成物の保存安定性が低下しにくくなる点で好ましい。
電荷輸送膜用組成物が、散乱角(2θ)が8°≦2θ≦15°であるときに、常に上記式(1)を満たすとは、散乱角(2θ)が8°≦2θ≦15°の任意の値において、上記と同様に補正散乱強度を求めたときに、Ims/Im0≦35となることを意味する。
尚、本発明の特定に用いる測定機器は、上記と同等の測定が可能であれば、上記の測定機器に限定されるものではなく、その他の測定機器を用いてもよいが、上記の測定機器を用いることが好ましい。
(2.理由)
静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が8°であるときに前記式(1)を満たすことで、本発明の効果が得られる理由は、以下の様に考えられる。
小角散乱領域では、Mie散乱理論に従い、粒径が大きな粒子ほど、大きい散乱強度を示す傾向がある。
例えば、可視光波長領域に発振波長を有するレーザ、具体的には、静的光散乱測定で用いているHe−Neレーザ(波長633nm)を粒子に照射した場合、粒径がミクロンオーダの粒子であると、大きい散乱強度を示す傾向がある。
従って、小角散乱領域で測定を行うことで、粒径がミクロンオーダである凝集体を含む割合を確認することができる。
本発明において、上記小角散乱領域は、Guinier領域(qR<1)とする。
さらに、以下、qR<1を用いて粒子半径(R)から、測定をするべき散乱角(2θ)を見積もる。ここで、波数qは、下記式(3)で表される。
q=(4πn/λ)×sinθ (3)
(式(3)中、nは溶媒の屈折率を、λは入射光の波長(nm)を表す。また、θは散乱角(2θ)の1/2の値を表す。)
上記式(3)を用い、粒径(2R)が1μmである場合の、大きい散乱強度が見られる散乱角(2θ)の領域を見積もる。粒径(2R)が1μmである場合、q<1/R=2μm−1となり、ここで単純にq=2μm−1とする。これと、上記式(3)を用いて、散乱角(2θ)を単純に算出すると(例えば、n=1.5、λ=633nm)、散乱角(2θ)は8°と算出される。つまり、粒径がミクロンオーダである大きい凝集体は、散乱角(2θ)が8°以下であるときに、大きい散乱強度を示す。
本発明では、散乱角(2θ)が8°であるときの散乱強度を静的光散乱測定により測定して、得られた散乱強度を用いて評価を行っている。つまり、散乱角(2θ)が8°であるときに、小さい散乱強度である組成物は、粒径(2R)がミクロンオーダである凝集体を含む割合が少ないことを意味する。
より具体的には、組成物に含まれる有機溶媒のみには凝集体が含まれていないため、散乱角(2θ)が8°であるときに、組成物の補正散乱強度が、有機溶媒(組成物に含まれる有機溶媒)の補正散乱強度に比べて大きくなっている場合は、組成物中に含まれる、粒径(2R)がミクロンオーダである大きな凝集体を含む割合が大きいことを意味する。また、組成物の補正散乱強度が、有機溶媒の補正散乱強度とほぼ同等の値である場合は、組成物に中に含まれる、粒径(2R)がミクロンオーダである大きな凝集体を含む割合が小さいことを意味する。
同様にして、粒径(2R)が0.5μmであるときは散乱角(2θ)が15°と算出される。つまり、633nmの波長を有する入射光を用いたとき、散乱角(2θ)が15°であるときに、大きい散乱強度を示すと、粒径(2R)が0.5μmより大きい凝集体を含む割合が大きいことを意味する。
以上より、散乱角(2θ)が8°であるときのIms/Im0が10以下である場合、組成物中に含まれる、粒径がミクロンオーダである大きい凝集体を含む割合が小さいことを意味する。つまり、粒径がミクロンオーダである大きい凝集体を含む割合が小さいことが、保存安定性の向上という本発明が奏する効果をもたらすのである。
[解離性重合体]
本発明の電荷輸送膜用組成物は、解離性基を有する重合体(以下、「解離性重合体」と称する場合がある。)を含有する。
(1.分子量について)
この解離性重合体を含む層を湿式成膜法により形成する場合には、溶解性、成膜性、耐熱性の点から、その重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。
また、本発明における解離性重合体の数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。
さらに、本発明における解離性重合体の分散度(Mw/Mn)は、通常10以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。
上記範囲内であると、精製が容易であり、また解離性重合体の有機溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好であるため好ましい。
本発明における重量平均分子量(及び数平均分子量)はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低
分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量(及び数平均分子量)が算出される。
(解離性基について)
解離性基とは、溶媒に対して可溶性を示す基であり、結合している基(例えば、炭化水素環)から70℃以上で熱解離する基を表す。また、解離性基が解離することにより、ポリマーの溶媒への溶解度は低下する。
但し、解離後に、他の原子が結合する反応、例えば加水分解で解離する基などは除く。加水分解で解離する基は、解離後、分子内に活性プロトンを有することになる。この活性プロトンが素子中に存在すると、素子特性に影響する場合がある。
このような解離性基は、炭化水素環に結合し、該炭化水素環は極性基を有さない芳香族炭化水素環に縮合していることが好ましく、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
また熱解離する温度は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、また好ましくは300℃以下、さらに好ましくは240℃以下である。
上記範囲内であると、ポリマーの合成が容易であり、また成膜時に化合物が分解するなどが起きにくい。
また特に、分子間のスタッキングを抑制する立体構造を有する基が可溶性に優れるため好ましい。化合物から解離性基が解離する反応の一例を下記に示す。
Figure 2011202124
尚、上記反応式の場合、解離性基は、以下に示す構造の丸枠で囲った部分である。
Figure 2011202124
このような解離性基の解離の例としては、例えば脱スルフィニルアセトアミド(JACS,V124,No.30,2002,8813参照)、脱オレフィン、脱アルコール、脱アルキル(H.Kwart and K.King,Department of Chemistry,University of Delaware,Nework,Delaware 19771,p415−447(1967),O.Diels and
K.Alder,Ber.,62,554(1929)及びM.C.Kloetzel,Org.Reactions,4,6(1948)参照)、脱1,3−ジオキソール(N.D.Field,J.Am.Chem.Soc.,83,3504(1961)参照)、脱ジエン(R.Huisgen,M.Seidel,G.Wallbillich,and H.Knupfer,Tetrahedron,17,3(1962)参照)、脱イソキサゾール(R.Huisgen and M,Christi,Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.,5,456(1967)参照)、脱トリアゾール(R.Kreher and J.Seubert,Z.Naturforach.,20B,75(1965)参照)等が挙げられる。
上記の中で特に、解離性基が結合する炭化水素環が、エテノ基またはエタノ基を含む環であることが、解離性基がより安定であり、合成がし易い点で好ましい。
尚、エテノ基又はエタノ基は、炭化水素環に含まれていることが好ましく、該炭化水素環はさらに6員環であることが好ましい。
本発明における解離性重合体は、解離性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位として、下記化学式(U1)または(U2)で表される部分構造を繰り返し単位中に含むことが好ましい。この場合、ポリマー鎖中の繰り返し単位(U1)あるいは(U2)の含有量は、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。
(繰り返し単位について)
Figure 2011202124
(前記重合体が、式(U1)または式(U2)で表される構造を主鎖繰り返し単位中に有
する場合は式(U1)または式(U2)は2価の基を表す。
前記重合体が、式(U1)または式(U2)で表される構造を側鎖に有する場合は式(U1)または式(U2)は1価の基を表し、XおよびXで表される基の末端は水素原子である。
式(U1)において、
1及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の
2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
環Aは解離性基が結合する芳香族環を表し、芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族複素環であってもよいが、電気化学的安定性に優れるため、電荷が局在化しにくいため、芳香族炭化水素環であることが好ましい。該芳香族環は置換基を有していてもよく、また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
、S、R41〜R46は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
また、式(U2)において、
11〜S14、R51〜R56、X、Xおよび環Bは、それぞれ独立に、上記S、S、R41〜R46、X、Xおよび環Aとして示したものと同様である。
〜nはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
環A及びBが、芳香族炭化水素環である場合に、該芳香族炭化水素環の核炭素数は通常6以上である。また通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。また、環A及びBが、芳香族複素環である場合に、該芳香族複素環の核炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。また通常50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
上記の中でも環Aおよび環Bが、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。
また芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、等が挙げられる。
また、上記化学式(U1)及び(U2)中の環A及び環Bは、同種または異なる2種以上の環構造単位が1以上10以下、直接、もしくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、
核炭素数1以上20以下のヘテロ原子を含んでもよい鎖状基、及び炭素数が1以上20以下の脂肪族基から選ばれる1種以上の2価の連結基を介して連結した構造とすることも可能である。なお連結される環構造単位としては、上記芳香族炭化水素環や芳香族複素環と同様、または異なる芳香族炭化水素環や芳香族複素環とすることができる。またこれらの芳香族炭化水素環及び芳香族複素環は置換基を有していてもよい。
環Aまたは環Bの置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上10以下の直鎖または分岐のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数1以上8以下のアルキニル基;ベンジル基等の炭素数2以上8以下のアラルキル基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のヘテロアリールアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上8以下のアルコキシ基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルアオキシル基、エチルカルボニルアオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の炭素数1以上15以下のアシルオキシル基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、等の炭素数10以上20以下のアリールオキシル基;等が挙げられる。これらの置換基はお互いに直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO、−(C2x)−、−O−(C2y)−、置換もしくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等、2価の連結基を介して結合し、環状構造を形成してもよい。上記xおよびyは、それぞれ1以上20以下の整数を表す。
これらの置換基は1種のみ、または2種以上が任意の組み合わせで1つ、または2つ以上が環Aまたは環Bに置換していてもよい。
上記化学式(U1)及び化学式(U2)におけるS、S、R41〜R46、S11〜S14、R51〜R56は、それぞれ独立に、水素原子;
水酸基;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の、置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは10以下の直鎖または分岐のアルキル基;
置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい核炭素数が5以上40以下の芳香族複素環基;
ベンジル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常50以下、好ましくは8以下のアラルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは8以下のアルコキシ基;
フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上、好ましくは6以上、通常50以下、好ましくは15以下のアリールオキシ基;
置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上50以下のアシル基;
ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパギル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルキニル基;
アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルオキシル基、エチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上、通常50以下、好ましくは15以下のアシルオキシ基;
フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上50以下のアリールアミノ基;
ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下のへテロアリールアミノ基;
またはアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常2以上50以下のアシルアミノ基を表す。
このような解離性基は、加熱処理前において、その嵩高い分子構造から、分子間のスタッキングを防止したり、有機塗布溶媒に対して該ポリマーが良好な溶解性を有するものとすることができる。また、加熱処理によって該ポリマーから解離性基が解離するため、加熱後の化合物の溶媒への溶解性を著しく抑制することができ、該化合物を含む有機層に耐有機溶媒塗布性を付与することが出来る。したがって、本発明における解離性ポリマーを用いて形成された有機層上に、さらに湿式成膜法によって有機薄膜を積層して形成することが容易となる。
(式(4)について)
本発明の電荷輸送膜用組成物に含有される解離性重合体は、正孔輸送能が優れる点で、下記式(4)で表される繰り返し単位を含む重合体であることが好ましい。
Figure 2011202124
(式中、mは0〜3の整数を表し、
Ar31、及びAr32は、各々独立して、直接結合、2価の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar33及びAr35は1価の基を、Ar34は2価の基を示す。
但し、Ar31及びAr32が同時に、直接結合であることはない。)
(Ar31〜Ar35について)
式(4)中、Ar31及びAr32は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環
、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
溶媒に対する溶解性、及び耐熱性の点から、Ar31〜Ar35は、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基が好ましい。
また、Ar31〜Ar35としては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した基も好ましく、ビフェニル基及びターフェニル由来基、がさらに好ましい。
前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば下記(置換基群Z)に記載の基が挙
げられる。
(置換基群Z)
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜2
4の芳香族炭化水素基基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基。
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
Ar31〜Ar35における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
溶媒に対する溶解性の点から、Ar31〜Ar35における芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
なお、mが2以上である場合、前記式(4)で表される繰り返し単位は、2個以上のAr34及びAr35を有することになる。その場合、Ar34同士及びAr35同士は、各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar34同士、Ar35同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
(2−2.mについて)
式(4)におけるmは、0以上、3以下の整数を表す。
mは0であることが、解離性重合体の、有機溶媒に対する溶解性及び成膜性が高められる点で好ましい。
また、mは1以上、3以下であることが、重合体の正孔輸送能が向上する点で好ましい。
(解離性基の割合)
解離性基は、上記解離性重合体の繰り返し単位以外の部分に含まれていてもよい。解離性重合体鎖の中に含まれる解離性基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。
上記範囲内であると、解離性重合体を用いて形成した有機層の有機溶媒に対する溶解性の低下が十分である点で好ましい。
以下、本発明における解離性重合体の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[具体例]
Figure 2011202124
本発明における解離性重合体は、共役系の構造を有する繰り返し単位からなるため、十分な電荷輸送能を有し、また溶媒に対する十分な溶解性を有する点から、共役ポリマーであることが好ましい。
より具体的には、前記式(4)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが好ましい。
(ガラス転移温度、その他の物性)
本発明における解離性重合体のガラス転移温度は、通常50℃以上、有機電界発光素子の耐熱性を含めた駆動安定性の点で好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常300℃以下である。
また、上記解離性重合体のイオン化ポテンシャルは、電荷輸送能が優れる点で、通常4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、また、通常6.0eV以下、好ましくは5.7eV以下である。
(組成物中の含有量)
本発明の電荷輸送膜用組成物における前記の解離性重合体の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、また、通常6重量%以下、好ましくは5重量%以下である。解離性重合体の含有量が少なすぎると電荷輸送能が不足する場合がある。また、多すぎると電荷輸送膜用組成物の有機溶媒に対する溶解性が低下する場合がある。異なる二種以上の解離性重合体を併用する場合は、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるように
する。
(解離性基を有する重合体であることの利点)
湿式成膜法で積層する場合、湿式成膜法で成膜する層の下層は、溶媒に対する溶解性が低い必要がある。
溶媒に対する溶解性を低下させる方法として、従来は架橋性基が用いられていた。架橋性基を用いる場合、架橋性基同士が結合して、溶媒に対する溶解性が低下するものとなる。
また、架橋性基同士が結合しなければならないため、層を形成した場合に、未反応の架橋性基が残る場合がある。未反応の架橋性基が残ると、得られた素子を通電した場合、該架橋性基が酸化還元反応を起こし、素子の寿命に影響する場合がある。
一方、解離性基の場合は自己完結反応である為、架橋性基と比べて、形成した層中の未反応の解離性基が少なく、得られる素子の駆動寿命により影響し難い。
さらに、解離反応後は、芳香族環系の構造となるため、架橋性基の架橋後に比べて、酸化還元反応に対して比較的安定である。
これらより、解離性基を有する重合体である方が、得られる素子の駆動寿命が長いものとなる。
[電子受容性化合物]
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。
本発明の電荷輸送膜用組成物に含有される電子受容性化合物は、周期表の第15〜17族に属する元素に、少なくとも一つの有機基が炭素原子で結合した構造を有するイオン化合物であることが好ましく、さらに下記式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
Figure 2011202124
式(I−1)〜(I−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原
子で結合する有機基を表し、R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、置換基を表す。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。
11、R21及びR31としては、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の効果を損なわない限り、その種類は特に制限されない。本発明における有機基とは、少なくとも一つの炭素原子を含む基である。
11、R21及びR31の分子量は、各々、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。R11、R21及びR31の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。R12、R22、R23及びR32〜R34の分子量は、各々、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。R12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。中でも、R11、R21及びR31と同様、電子受容性が大きい点から、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに
熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、R11、R21及びR31について先に説明したものと同様のものが挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を1つ以上有するアリールアミノ基が挙げられる。具体例としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、トリルアミノ基、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
アシル基としては、炭素数が通常1以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基が挙げられる。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するものが挙げられる。具体例としては、フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基の具体例としては、メシル基、トシル
基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など挙げられる。
以上、R11、R21、R31及びR12、R22,R23、R32〜R34として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11、R21、R31及びR12、R22,R23、R32〜R34として各々例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、イオン化合物(電子受容性化合物)の耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。
式(I−1)〜(I−3)中、A1およびA2は、周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素、Aは周期表第2周期以降(第2〜第6周期)の元素であって、A1は、長周
期型周期表の第17族に属する元素を表し、A2は、第 16族に属する元素を表し、A3
は、第15族に属する元素を表す。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、A2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、A3としてはアンチ
モン原子、ヒ素原子、リン原子、窒素原子のうち何れかが好ましい。特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるA1が臭素原子又はヨウ素原子である電
子受容性化合物、式(I−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子である電子受容性
化合物、式(I−3)におけるAが窒素原子である電子受容性化合物が好ましく、中でも、式(I−1)におけるA1がヨウ素原子である電子受容性化合物、式(I−3)にお
けるAが窒素原子である電子受容性化合物が最も好ましい。
式(I−1)〜(I−3)中、Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表す。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
〜nは、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n〜nの値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
1 n1-〜Z3 n3-の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられ、テトラフルオロホウ素酸イオン及びヘキフルオロホウ素酸イオンが好ましい。
また、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-としては、化合物の安定性、有機溶媒への溶解性の点で、下記式(I−4)〜(I−6)のいずれかで表される錯イオンが好ましく、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が
大きくなるため、式(I−6)で表される錯イオンが更に好ましい。
Figure 2011202124
式(I−4)、(I−6)中、E1及びE3は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表す。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(I−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。中でもリン
原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、毒性の点から、リン原子が好ましい。
式(I−4)、(I−5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表し、化合物の安定性、合成及び精製が容易である点から、フッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
式(I−6)中、Ar1〜Ar4は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、R11、R21及びR31について先に例示したものと同様の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
Ar1〜Ar4として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
Ar1〜Ar4が有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が置換したハロアルキル基、などが挙げられる。
中でも、Ar1〜Ar4のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar1〜Ar4の水素原子がすべてフッ素原子
で置換されたパーフルオロアリール基であることが最も好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
本発明における電子受容性化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下の範囲である。電子受容性化合物の分子量が小さすぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下するおそれがあり、電子受容性化合物の分子量が大きすぎると、電子受容性化合物自体が電荷輸送の妨げとなるおそれがある。
以下に本発明における電子受容性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2011202124
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上記具体例のうち、電子受容性、耐熱性、有機溶媒に対する溶解性の点で、好ましくは、A−1〜48、A−54、A−55、A−60〜62、A−64〜75、A−79〜83、B−1〜20、B−24、B−25、B−27、B−30〜37、B−39〜43、C−1〜10、C−19〜21、C−25〜27、C−30、C−31、D−15〜28の化合物であり、より好ましくは、A−1〜9、A−12〜15、A−17、A−19、A−24、A―29、A−31〜33、A−36、A−37、A−65、A−66、A−69、A−80〜82、B−1〜3、B−5、B−7〜10、B−16、B−30、B−33、B−39、C−1〜3、C−5、C−10、C−21、C−25、C−31、D−17〜28の化合物であり、最も好ましくは、A−1〜7、A−80、D−21〜24の化合物である。
以上説明した電子受容性化合物を製造する方法は特に制限されず、各種の方法を用いて製造することが可能である。例としては、Chem.Rev.、66巻、243頁、1966年、及び、J.Org.Chem.、53巻、5571頁、1988年に記載の方法等が挙げられる。
本発明の電荷輸送膜用組成物は、上述の電子受容性化合物のうち何れか一種を単独で含
有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。また、式(I−1)〜(I−3)のうち何れか一つの式に該当する電子受容性化合物を二種以上組み合わせてもよく、各々異なる式に該当する二種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
本発明の電荷輸送膜用組成物における上述の電子受容性化合物の含有量は、先述の解離性重合体に対する値で、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
上記範囲内であると、駆動電圧が低く、また成膜性が良好であるため好ましい。
二種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
[有機溶媒]
有機溶媒としては、本発明における解離性重合体を、通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶媒であることが好ましい。また、電子受容性化合物を0.005重量%以上溶解することが好ましく、0.05重量%以上溶解することがより好ましく、0.5重量%以上溶解することがさらに好ましい。
有機溶媒としては、具体的には、芳香族系有機溶媒、含ハロゲン有機溶媒、エーテル系有機溶媒、及びエステル系有機溶媒が挙げられる。
芳香族系有機溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、ペンタフルオロメトキシベンゼン、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等、
含ハロゲン有機溶媒の具体例としては、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等、
エーテル系有機溶媒の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン,1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン,4
−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール,2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル等、
エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
解離性重合体を溶解させる必要があること、これら解離性重合体等の正孔輸送材料と電子受容性化合物の混合から生じる正孔注入・輸送性材料のカチオンラジカルを溶解する能力が高いことから、好ましくは、エーテル系有機溶媒、及びエステル系有機溶媒が挙げられる。
これらは1種で用いてもよく、2種以上の混合有機溶媒としてもよい。
本発明の電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒として、25℃における蒸気圧が2mmHg以上、好ましくは3mmHg以上、より好ましくは4mmHg以上(但し、上限値は好ましくは10mmHg以下である。)である有機溶媒と、25℃における蒸気圧が2mmHg未満、好ましくは1mmHg以下、より好ましくは0.5mmHg以下である有機溶媒との混合有機溶媒が挙げられる。
また、これらの有機溶媒の組成物中の濃度は、通常、10重量%以上、好ましくは30
重量%以上、より好ましくは50%重量以上である。なお、有機溶媒として、前述した有
機溶媒以外にも、必要に応じて、各種の他の有機溶媒を含んでいてもよい。このような他の有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系有機溶媒、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
なお、水分は有機電界発光素子の性能劣化、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性があることが広く知られており、塗膜中に残留する水分をできる限り低減するために、これらの有機溶媒の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である有機溶媒がより好ましい。また、有機溶媒として、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としてはまた、25℃における蒸気圧が10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、通常0.1mmHg以上の有機溶媒が挙げられる。このような有機溶媒を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適な、また、解離性重合体の性質に適した組成物を調製することができる。
[電荷輸送膜用組成物の物性について]
本発明の電荷輸送膜用組成物の粘度は、固形分の濃度に依存するが、通常15mPas以下、好ましくは10mPas以下、さらに好ましくは8mPas以下、また通常2mPas以上、好ましくは3mPas以上、さらに好ましくは5mPas以上である。
この上記範囲内であると、湿式成膜法にて膜形成時に、均一に成膜ができる点で好ましい。
尚、粘度の測定方法は、回転式粘度測定装置を用いて測定した。通常、粘度は、温度及び測定回転数に依存する。上記値は、測定温度23℃、測定回転数20回転の一定条件で測定での測定値である。
[添加剤]
また、本発明の電荷輸送膜用組成物は、必要に応じ、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤等を含んでいてもよい。この場合は、有機溶媒としては、解離性重合体と添加剤の双方を0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する有機溶媒を使用することが好ましい。
<用途>
本発明の電荷輸送膜用組成物は、保存安定性が高く、湿式成膜法で有機層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、また工業的観点から不利益を生じさせないため、有機電界発光素子に用いられることが好ましい。
また、本発明における湿式成膜法とは、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、組成物ジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等の有機溶媒を含有する組成物を用いて成膜する方法をいう。パターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、組成物ジェット法、フレキソ印刷法が好ましい。
<電荷輸送膜用組成物の製造方法>
本発明の電荷輸送膜用組成物の製造方法の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
特に、本発明の電荷輸送膜用組成物は、以下に記載する方法、特に好ましい方法を組み合わせるなどして用いることにより製造することができる。
[1]添加形態・方法
本発明の電荷輸送膜用組成物に含有される、解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を混合する場合、混合する解離性重合体及び電子受容性化合物は、各々独立に、固体であってもよく、また溶液であってもよい。
解離性重合体及び電子受容性化合物を共に溶液状態で混合することが好ましい。
この場合、各々の有機溶媒は、本発明の効果を損なわない限り先述した有機溶媒の範囲内であれば、異なる有機溶媒を用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
また、解離性重合体及び電子受容性化合物の何れか一方が固体状態で、何れか一方が溶液状態で混合することが好ましい。この場合、固体の溶解を確認しながら添加できる点で溶液に、固体を入れることが好ましい。
さらに解離性重合体及び電子受容性化合物が共に固体で、これらを粉砕混合した後に、有機溶媒で溶解することが好ましい。
上記の通り固体で混合する場合、粒径は、通常5cm以下、好ましくは1cm以下、より好ましくは5mm以下、また通常0.5mm以上である。
[2]溶解工程
本発明の電荷輸送膜用組成物の製造方法においては、通常溶解工程を有する。
溶解工程は、固体を有機溶媒に攪拌し、固体が浮遊していることが目視で確認できなくなるようにする工程をいう。
(溶解条件)
溶解工程における温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、また通常有機溶媒の沸点以下、好ましくは有機溶媒の沸点より10℃以上低い温度である。この上限値を上回ると、有機溶媒が一部蒸発し濃度が変化するおそれがあり、またこの下限値を下回ると使用有機溶媒が固化、あるいは溶解度が低下するために所望の濃度が得られないおそれがある。
溶解工程における雰囲気は、本発明の効果を損なわない限りは特に制限はないが、不活性ガスが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、などが挙げられ、取り扱い容易な点で、窒素が好ましい。
[3]超音波処理・光照射処理・加熱処理
本発明の電荷輸送膜用組成物を得るための製造方法としては、特に、超音波処理、光照射処理、加熱処理の少なくとも一つの処理を含むことが好ましい。
また、処理を行う時期は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、溶解工程で行ってもよく、また溶解工程の後に行ってもよい。
尚、これらの処理は、いずれか一種の処理を単独で行ってもよく、また併用して処理を行ってもよい。
(超音波処理)
超音波処理を行う場合、振動子28kHzを用いることが好ましい。
超音波処理における超音波時間は、通常5分以上、好ましくは10分以上、また通常2時間以下、好ましくは1時間以下である。
この上限値を上回ると、重合体が分解するおそれがあり、またこの下限値を下回ると溶解が不十分となるおそれがある。
(光照射処理)
光照射処理を行う場合、高圧水銀灯を用いることが好ましい。高圧水銀灯は404.7nm、435.8nm、546.1nm、577.0nm、及び579.1nmの輝線スペクトルからなる緑がかった青白色(5,700K)の光源で、253.7nm、365
.0nmの紫外線照射を伴う。
紫外線の照射方法としては、特に限定されるものではないが、上記調製した組成物に直接照射してもよいし、適当な容器に入れて紫外線を照射してもよい。容器が紫外線を透過する場合は容器を密閉した状態で紫外線を照射してもよいし、容器が紫外線を遮蔽する場合は、例えば蓋を開封し、開口部から紫外線を照射してもよい。紫外線照射に使用する装置としては、特に限定はされないが、キセノンランプ、水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線蛍光灯、D2ランプ、カーボンアーク灯、LEDなどが用いられる。
また、組成物が溶媒を含む場合の組成物の液温度は、特に限定されるものではないが、通常、常温であるが、さらに冷却したり、加熱したりしてもよい。
紫外線の照射量は、通常10mJ/cm2以上、好ましくは100mJ/cm2以上、より好ましくは600mJ/cm2以上、通常50000mJ/cm2以 下、好ましくは1
0000mJ/cm2以下、より好ましくは5000mJ/cm2以下である。上記範囲内であると、解離性重合体から電子受容性化合物への電子移動度が十分であり、また解離性重合体が劣化しにくくなるため好ましい。
通常、紫外線は組成物表面で吸収されるため、紫外線照射後に組成物を撹拌して均一にしたり、攪拌しながら紫外線を照射することが好ましい。
紫外線の照射面積としては、組成物の入った容器全体に紫外線が照射されることが好ましいが、組成物の一部を照射してもよい。その場合は、紫外線照射後に組成物を攪拌することが好ましく、組成物を撹拌しながら照射することも好ましい。
(加熱処理)
加熱処理における加熱手段は、本発明の効果を損なわない限り、公知の技術を用いることができる。
具体的には、解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を加熱可能な容器に入れ、攪拌しながら、加熱バスにより温度を調節し、加熱攪拌する方法が挙げられる。加熱バスとしては、水バス、オイルバス等が用いられる。
また、解離性重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を加熱容器に入れ攪拌した後、一定の温度制御可能な恒温槽内に置くことにより加熱処理できる。安全を考慮した観点から、加熱バスを用いた加熱攪拌による方法が好ましい。
加熱処理における加熱温度は、通常40℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常、有機溶媒の沸点以下、好ましくは有機溶媒の沸点より10℃以上低いの温度である。
また、異なる2種の有機溶媒を用いている場合、上限値である沸点は、最も低い沸点の有機溶媒における沸点が基準となる。
この上限値を上回ると、有機溶媒が突沸するおそれがありかつ有機溶媒の蒸発により仕込み時の濃度変化をきたす。またこの下限値を下回ると加熱処理の効果がなく、溶解不十分になるおそれがある。
加熱処理における加熱時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、また通常36時間以下、好ましくは24時間以下である。この上限値を上回ると、有機溶媒が蒸発するおそれがあり、またこの下限値を下回ると溶解が不十分となるおそれがある。
超音波処理、光照射処理又は加熱処理のうち少なくとも何れか一種の処理を行うことで、本発明の電荷輸送膜用組成物を製造できる理由は以下の様に推測される。
超音波処理、光照射処理又は加熱処理の何れか一種の処理を行うことで、解離性重合体
の凝集状態が緩和されることにより、解離性重合体と電子受容性化合物が近接し易くなる。この近接により、解離性重合体は分子内でカチオンラジカル状態となり、アニオンラジカルである電子受容性化合物とイオン対状態となり、ポリマーの凝集や、電子受容性化合物の凝集が生じにくくなり、粒径がミクロンオーダである大きな凝集体を含む割合が小さい電荷輸送膜用組成物が製造できる。
[4]濾過工程
本発明の電荷輸送膜用組成物の製造方法においては、濾過工程を含むことが好ましい。また、本発明における濾過工程は、溶解工程の後に行うことが好ましい。
濾過工程に用いるフィルターの穴は、通常5μm以下、好ましくは0.5μm以下、また通常0.1μm以上である。
この上限値を上回ると、不溶物が混入するおそれがあり、また、この下限値を下回ると濾過ができず目詰まりするおそれがある。
[成膜方法]
前述の如く、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。湿式成膜法で層形成する場合、その材料や、下地の性質によって、スピンコート法、スプレー法などの塗布法や、インクジェット法、スクリーン法などの印刷法等、公知の成膜方法が採用できる。
湿式成膜法を用いる場合、本発明の電荷輸送膜用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の手法により、形成する層の下層に該当する層上に塗布し、乾燥して層を形成する。
塗布後、通常加熱等により電荷輸送膜用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させる方法としては、通常、加熱工程が行なわれる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、電荷輸送膜用組成物に用いた溶媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、層中に前述した解離性基が解離する温度以上の温度で加熱することが好ましい。また、電荷輸送膜用組成物に用いた溶媒が2種類以上含まれている混合溶媒の場合、少なくとも1種類がその溶媒の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶媒の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
また、加熱の他に、光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、不溶化反応が充分に起こるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射を組み合わせ
て行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極、該陽極及び陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子で、該有機層の少なくとも一層が、本発明の電荷輸送膜用組成物により形成された層であることを特徴とする。
有機層は1層であっても2層以上が積層されてなるものであってもよい。有機層としては正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられるが、本発明の電荷輸送膜用組成物により形成される層が陽極に隣接された層である有機電界発光素子は、短絡やダークスポットが生じないという効果がある。その為、通常、本発明の電荷輸送膜用組成物により形成された層は、正孔注入層であることが好ましい。また、有機層として、正孔注入層、正孔輸送層、及び発光層を有し、これら全てが湿式成膜法で形成されることが好ましい。また、本発明の有機電界発光素子は、無機層を有していてもよい。
以下に、本発明の方法で製造される有機電界発光素子の層構成の一例及びその一般的形成方法等について、図1を参照して説明する。
図1は本発明の方法により製造される有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
なお、このような有機電界発光素子において、陽極と陰極との間の有機層を湿式成膜法で形成する場合は、以下に記載の各層の材料を有機溶媒へ分散又は溶解させて湿式成膜用組成物を作製し、該湿式成膜用組成物を用いて形成すればよい。
[基板]
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[陽極]
陽極は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成したりすることもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも
可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調製して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
[正孔注入層]
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する機能を有する層であり、通常、陽極上に形成される。
この機能を発現するため、正孔注入層は、本発明の電荷輸送膜用組成物により形成された層であることが好ましい。
(成膜方法)
本発明の電荷輸送膜用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に湿式成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
湿式成膜における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
湿式成膜における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、また通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により本発明の電荷輸送膜用組成物の膜を乾燥させる。乾燥する方法が加熱である場合、加熱手段は特に制限されないが、例えば、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
また、加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の電荷輸送膜用組成物に用いた有機溶媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、本発明の電荷輸送膜用組成物に用いる有機溶媒が2種類以上含まれている混合有機溶媒の場合、少なくとも1種類がその有機溶媒の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。有機溶媒の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱温度が本発明の電荷輸送膜用組成物の有機溶媒の沸点以上であり、かつ湿式成膜により形成された膜が十分に不溶化されれば、加熱時間は特に制限されないが、好ましくは10秒以上、また通常180分以下である。上記範囲内であると、均一な膜が形成される傾向があり好ましい。加熱は2回に分けて行ってもよい。
上記の方法で形成した膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
[正孔輸送層]
本発明の有機電界発光素子は正孔輸送層を有することが好ましい。
本発明に係る正孔輸送層の形成方法は特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層を湿式成膜により形成することが好ましい。
正孔輸送層は、図1に示す構成の有機電界発光素子の場合は正孔注入層の上に形成する
ことができる。
正孔輸送層に利用できる材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
このような正孔輸送層の材料としては、従来正孔輸送層の材料として用いられている材料であればよい。例えば、本発明の電荷輸送膜用組成物に含有される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フ
ェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4'
,4''−トリス( 1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバース
ト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,
91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、成膜、加熱乾燥させる。正孔輸送層形成用組成物には、正孔輸送性化合物の他、有機溶媒を含有する。有機溶媒は本発明の電荷輸送膜用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層形成時と同様である。
また、真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合の成膜条件等は下記の通りである。
(真空蒸着法による正孔輸送層の形成)
真空蒸着により正孔輸送層を形成する場合には、正孔輸送層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔輸送層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔輸送層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層は架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、後述する架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状芳香族アミン系ポリマーを形成する。架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよく、中でも芳香族アミン系ポリマーが好ましい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
また、架橋性基とは近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。例えば、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基が挙げられる。
架橋性基の例を挙げると、オキセタン基、エポキシ基などの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタン基などが挙げられる。
架橋性基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーが有する架橋性基の数に特に制限はないが、電荷輸送ユニットあたり通常2.0未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下となる数が好ましい。架橋性化合物の比誘電率を好適な範囲に納めるためである。また、架橋性基の数が多すぎると、反応活性種が発生し、他の材料に悪影響を与える可能性があるためである。ここで、電荷輸送ユニットとは、網目状芳香族アミン系ポリマーを形成する材料がモノマーの場合、モノマーそのものであり、架橋性基をのぞいた骨格(主骨格)のことを示す。他種類のモノマーを混合する場合においても、各々のモノマーの主骨格のことを示す。網目状ポリマーを形成する材料が芳香族アミン系ポリマーの場合、有機化学的に共役がとぎれる構造の場合は、その繰り返しの構造を電荷輸送ユニットとする。また、広く共役が連なっている構造の場合には、電荷輸送性を示す最小繰り返し構造は、モノマーの構造をである。例えば、ナフタレン、トリフェニレン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペリレンなどの多環系芳香族、フルオレン、トリフェニレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラアリールベンジジン、1,4−ビス(ジアリールアミノ)ベンゼンなどが挙げられる。
さらに、架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。架橋性化合物の分子量は、通常5000以下、好ましくは2500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を有機溶媒に溶解または分散した塗布液(正孔輸送層形成用組成物)を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。
塗布液には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の架橋開始剤及び架橋促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物:バインダー樹脂、などを含有していてもよい。
塗布液に用いられる有機溶媒は、前記正孔注入層を形成するための有機溶媒として例示したものと同様である。塗布液は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
塗布液を下層上に成膜後、加熱及び/または活性エネルギー線照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化する。成膜後の加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。加熱乾燥の場合の条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下に成膜された層を加熱する。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
活性エネルギー線照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー線照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
加熱及び活性エネルギー線照射は、各々単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び活性エネルギー線照射は、実施後に層に含有する水分及び/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/または活性エネルギー線照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
[発光層]
正孔注入層の上、又は正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
<発光層の材料>
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔移動の性質を有する化合物(正孔輸送材料)、あるいは、電子移動の性質を有する化合物(電子輸送材料)を含有する。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。また、電荷輸送材料を2成分以上含有していることが好ましい。更に、発光層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れもモノマー量の材料を使用することが好ましい。
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶媒への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、発光材料の精製が困難となってしまったり、溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%
以上、また、通常35重量%以下、好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(正孔輸送材料)
発光層には、その構成材料として、正孔輸送材料を含有させてもよい。ここで、正孔輸送材料のうち、モノマー量の正孔輸送材料の例としては、前述の正孔注入層における(モノマー量の正孔輸送材料)として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
なお、発光層において、正孔輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における正孔輸送材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。正孔輸送材料が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(電子輸送材料)
発光層には、その構成材料として、電子輸送材料を含有させてもよい。ここで、電子輸送材料のうち、モノマー量の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層において、電子輸送材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における電子輸送材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常65重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。電子輸送材料が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
(発光層の形成)
本発明に係る湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上述の材料を適切な有機溶媒に溶解させて湿式成膜用組成物を調製し、それを用いて成膜工程、好ましくは乾燥工程を
介して形成する。これらの工程の詳細は、先に説明した内容と同様である。なお、他の有機層を本発明に係る湿式成膜法で形成する場合は、発光層の形成に蒸着法、又はその他の方法を用いてもよい。
発光層を本発明に係る湿式成膜法で形成するための湿式成膜用組成物に含有させる発光層用有機溶媒としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述の発光材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を溶解することが可能なものが好ましい。具体的な溶解性としては、常温・常圧下で、発光材料、正孔輸送材料あるいは電子輸送材料を、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、特には0.1重量%以上溶解することが好ましい。
発光層用有機溶媒の好適な例は、前記本発明の電荷輸送膜用組成物で説明した有機溶媒と同一である。
発光層を形成するための湿式成膜用組成物に対する発光層用有機溶媒の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下の範囲である。なお、発光層用有機溶媒として2種以上の有機溶媒を混合して用いる場合には、これらの有機溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。
発光層を形成するための湿式成膜用組成物の湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、発光層用有機溶媒を除去することにより、発光層が形成される。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
[正孔阻止層]
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
発光層と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
[電子注入層]
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(その他の層)
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
[電子阻止層]
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層又は正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層を湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
さらに陰極と発光層又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を
向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE
Transactions on Electron Devices, 1997年
,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
[正孔緩和層]
有していてもよい層としては、更に、正孔緩和層が挙げられる。
正孔緩和層は、発光層の陰極側に隣接して形成される層であり、発光層と正孔緩和層界面への正孔の蓄積を緩和する働きをする層である。また、電子を効率よく発光層の方向へ輸送する役割も有する。
尚、正孔緩和層は、前記塗布発光層及び前期蒸着発光層との間に有していてもよい。
正孔緩和層のイオン化ポテンシャルは通常5.5eV以上、好ましくは5.6eV以上、より好ましくは5.7eV以上、また通常6.7eV以下、好ましくは6.4eV以下、より好ましくは6.0eV以下である。このイオン化ポテンシャルの値が大きすぎても、小さすぎても正孔を発光層と正孔緩和層の界面に留めてしまう可能性がある。
イオン化ポテンシャル(Ip)はイオン化ポテンシャル測定装置PCR−101(Optel製)により測定することができる。
正孔緩和層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.3nm以上、より好ましくは0.5nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。膜厚が薄すぎると、薄膜に欠陥が発生する可能性があり、厚すぎれば、駆動電圧が高くなる可能性がある。
正孔緩和層は蒸着成膜法によって形成するのが好ましい。ここで蒸着成膜法としては、真空蒸着法、レーザー転写法、抵抗加熱法、電子ビーム法、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)が好ましく、中でも真空蒸着法がより好ましい。
正孔緩和層の陰極側には通常隣接して電子輸送層が形成されるが、正孔緩和層と電子輸送層のイオン化ポテンシャルの差は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.5eV未満、好ましくは0.3eV未満、より好ましくは0.2eV未満である。イオン化ポテンシャルの差が大きすぎると正孔が正孔緩和層内に溜まり劣化の原因となる可能性がある。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板上に他の構成要素を陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に設けてもよい。

更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
<有機ELディスプレイ>
本発明の有機ELディスプレイは、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイの型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイを形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜(三容真空社製、スパッタ成膜品)が、2mm幅のストライプ状にパターニングされている基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
(正孔注入層の形成)
下記式(I)の繰り返し構造を有するポリマー(重量平均分子質量85,000)100重量部と、下記式(II)であらわされる化合物20重量部と、溶媒としてシクロヘキシルベンゼン5880重量部を混合し、室温で3時間撹拌した後、100℃ホットプレートにて3時間加熱し、正孔注入層用塗布液(A1)を調製した。
Figure 2011202124
洗浄処理したITO基板上に、上記正孔注入層用塗布溶液を用いてスピンコート法にて正孔注入層を形成した。スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、回転数は2000rpm、回転時間は30秒とした。塗布後、ホットプレート上で80℃1分間加熱乾燥した後、不溶部分を拭き取り、オーブン大気中で230℃1時間ベークし
、式(I)で表される化合物を下記式(III)で表される化合物に変換し、膜厚27nmの正孔注入層を形成した。
Figure 2011202124
(正孔輸送層の形成)
次に、正孔注入層上に正孔輸送層を形成した。正孔注入層塗布基板を酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックスに入れ、正孔輸送層用塗布液調製、スピンコート、ベークすべて、グローブボックス中で行った。
下記式(IV)の繰り返し構造を有するポリマー(重量平均分子質量95000)を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、1.4重量%の溶液を調製し、正孔輸送層用塗布液を調製した。
Figure 2011202124
正孔注入層上に、上記正孔輸送層用塗布液を用いてスピンコート法にて正孔注入層を形成した。回転数は1500rpm、回転時間は120秒とした。塗布後、ホットプレート上で230℃10秒間プレ乾燥した後、電極上の不要部分を拭き取り、次いで、ホットプレート上で230℃1時間ベークし、膜厚27nmの正孔輸送層を形成した。
(発光層の形成)
次に、正孔輸送層上に発光層を形成した。発光層用塗布液調製、スピンコート、ベークすべて、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露させずに行った。
(発光層塗布液の調製)
下記式(V)で表される化合物を100重量部、下記式(VI)で表される化合物10重量部を、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンに溶解させ、4重量%の溶液を調製し、発光層塗布液を調製した。
Figure 2011202124
(発光層塗布成膜)
正孔輸送層上に、発光層塗布液を用いてスピンコート法にて発光層を形成した。回転数は2000rpm、回転時間は120秒とした。塗布後、ホットプレート上で130℃10秒間プレ乾燥した後、電極上の不要部分を拭き取り、次いで、ホットプレート上で130℃1時間真空加熱して乾燥し、膜厚50nmの発光層を形成した。
この基板を一旦大気中に取り出し、速やかに真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は1.0×10−4Paであった。基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーにはあらかじめ必要な蒸着材料をそれぞれ別のモリブデン製ボートに入れて配置しておいた。
(電子輸送層1の形成)
下記式(VII)で表される材料を入れたるつぼを通電加熱し、発光層上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、蒸着速度0.7Å/sとし、電子輸送層1を膜厚10nmで形成した。
Figure 2011202124
(電子輸送層2の形成)
次に、下記式(VIII)で表されるAlqを入れたるつぼを通電加熱し、電子輸送層1の上に蒸着した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、蒸着速度1.0Å/sとし、電子輸送層2を膜厚30nmで形成した。
Figure 2011202124
(陰極形成)
次に、基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、速やかに蒸着装置に設置した。チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。真空度は3.0×10−4Paであった。陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は3.0×10−4Pa、蒸着速度0.1Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して陰極を蒸着した。蒸着条件は、蒸着時の真空度は4.0×10−4Pa、蒸着速度3.0Å/sとし、膜厚80nm成膜した。
(封止)
次に、基板を一旦大気中に取り出し、速やかに窒素置換されたグローブボックスに移した。窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化樹脂塗をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させた。
以上の様にして、有機電界発光素子を得た。
(素子評価)
この素子に通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の青色発光が得られた。
この素子を1000cd/m2の輝度で発光させたときの電流発光効率は、4.63cd/Aであった。
また、この素子を初期輝度2000cd/mで点灯させ、定電流通電発光させたとき、輝度が半減するまでの時間は600時間であった。
(正孔注入層塗布液静的光散乱測定)
正孔注入層塗布液(A1)について静的光散乱測定を行ない、散乱角(2θ)が8°及び15°であるときのIms/Im0の値、および、8°≦2θ≦15°であるときのIms/Im0の最大値を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、正孔注入層用塗布液(A1)を、下記の通り調製した正孔注入層用塗布液(A2)に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。また、実施例1
と同様にして素子評価、及び正孔注入層用塗布液の静的光散乱測定を行った。
正孔注入層用塗布液の調製において、前記式(I)の繰り返し構造を有するポリマー100重量部と、前記式(II)であらわされる化合物20重量部と、溶媒としてシクロヘキシルベンゼン5880重量部を混合し、室温で3時間撹拌した。
次に、この溶液を褐色ガラス瓶に1g入れ、径が10mmφである瓶の開口部から、露光装置UX−1000SM−ACS01(ウシオ電機社製)にて、31mW/cmの紫外線を約33秒間照射、すなわち、光量1000mJ/cmのUV光を照射し、正孔注入層用塗布液(A2)を調製した。UX−1000SM−ACS01に使用されている光源は超高圧水銀灯であり、照射した紫外線の主波長は365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)、である。ここまでの操作は、常温、常圧、常湿で行った。
(素子評価)
得られたの素子を通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の青色発光が得られた。
この素子を1000cd/mの輝度で発光させたときの電流発光効率は、4.72cd/Aであった。
また、この素子を初期輝度2000cd/mで点灯させ、定電流通電発光させたとき、輝度が半減するまでの時間は600時間であった。
(正孔注入層塗布液静的光散乱測定)
正孔注入層塗布液(A2)について静的光散乱測定を行ない、散乱角(2θ)が8°及び15°であるときのIms/Im0の値、および、8°≦2θ≦15°であるときのIms/Im0の最大値を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、正孔注入層用塗布液(A2)を、下記の通り調製した正孔注入層用塗布液(A3)に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。また、実施例1と同様にして素子評価、及び正孔注入層用塗布液の静的光散乱測定を行った。
正孔注入層用塗布液の調製において、実施例2と同様の露光装置UX−1000SM−ACS01(ウシオ電機社製)にて、開口部から、31mW/cmの紫外線を約162秒間照射、すなわち、光量5000mJ/cmのUV光を照射した以外は実施例2と同様にして正孔注入層用塗布液(A3)を調製した。
(素子評価)
得られた素子に通電したところ、発光欠陥の無い均一な発光面の青色発光が得られた。この素子を1000cd/mの輝度で発光させたときの電流発光効率は、4.75cd/Aであった。
また、この素子を初期輝度2000cd/mで点灯させ、定電流通電発光させたとき、輝度が半減するまでの時間は600時間であった。
(正孔注入層塗布液の静的光散乱測定)
正孔注入層塗布液(A3)について静的光散乱測定を行ない、散乱角(2θ)が8°及び15°であるときのIms/Im0の値、および、8°≦2θ≦15°であるときのIms/Im0の最大値を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、正孔注入層用塗布液(A1)を、下記の通り調製した正孔注入層用塗布液(A4)に変更した他は、実施例1と同様にして素子を作製した。また、実施例1と同様にして素子評価、及び正孔注入層用塗布液の静的光散乱測定を行った。
正孔注入層用塗布液の調製において、100℃ホットプレートにて3時間加熱を行わなかった以外は、実施例1と同様にして正孔注入層用塗布液(A4)を調製した。
(素子評価)
得られた素子を通電したところ、青色発光が得られた。発光面を顕微鏡観察したところ、微小な濃淡のムラが多く観察された。
この素子を1000cd/mの輝度で発光させたときの電流発光効率は、3.82cd/Aであった。
また、この素子を初期輝度2000cd/mで点灯させ、定電流通電発光させたとき、輝度が半減するまでの時間は300時間であった。
(正孔注入層塗布液静的光散乱測定)
正孔注入層塗布液(A4)について静的光散乱測定を行ない、散乱角(2θ)が8°及び15°であるときのIms/Im0の値、および、8°≦2θ≦15°であるときのIms/Im0の最大値を表1に示す。
(比較例2)
実施例2において、正孔注入層用塗布液(A2)を、下記の通り調製した正孔注入層用塗布液(A5)に変更した他は、実施例2と同様にして素子を作製した。また、実施例1と同様にして素子評価、及び正孔注入層用塗布液の静的光散乱測定を行った。
正孔注入層用塗布液の調製において、実施例2と同様の露光装置UX−1000SM−ACS01にて、開口部から、31mW/cmの紫外線を約16秒間照射、すなわち、光量500mJ/cmのUV光を照射した以外は実施例2と同様にして正孔注入層用塗布液(A5)を調製した。
(素子評価)
この素子に通電したところ、青色発光が得られた。発光面を顕微鏡観察したところ、微小な濃淡のムラが多く観察された。
この素子を1000cd/mの輝度で発光させたときの電流発光効率は、4.11cd/Aであった。
また、この素子を初期輝度2000cd/mで点灯させ、定電流通電発光させたとき、輝度が半減するまでの時間は350時間であった。
(正孔注入層塗布液静的光散乱測定)
正孔注入層塗布液(A5)について静的光散乱測定を行ない、散乱角(2θ)が8°及び15°であるときのIms/Im0の値、および、8°≦2θ≦15°であるときのIms/Im0の最大値を表1に示す。
Figure 2011202124
Figure 2011202124
以上の結果より、本発明の電荷輸送膜用組成物を用いて形成された有機層を有する有機電界発光素子は、均一な発光面で発光効率が高く、輝度半減寿命が長いことがわかる。
本発明の電荷輸送膜用組成物は、保存安定性が高く、湿式成膜法で有機層を形成する場合において、均一に成膜可能であり、また工業的観点から不利益を生じさせない。
また、本発明の電荷輸送膜用組成物を用いて、湿式成膜法により形成された有機層を有する有機電界発光素子は、短絡やダークスポットを生じさせず、また駆動寿命が長い。
これより、本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (14)

  1. 熱解離可溶性基を有する重合体、電子受容性化合物及び有機溶媒を含有する電荷輸送膜用組成物であって、
    静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が8°であるときに、下記式(1)を満たすことを特徴とする電荷輸送膜用組成物。
    ms/Im0≦35 (1)
    (式(1)中、Imsは電荷輸送膜用組成物の補正散乱強度を表し、Ims=I×100/Tとして算出される値である。
    m0は電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の補正散乱強度を表し、Im0=I×100/Tとして算出される値である。
    また、Iは静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物の散乱強度、
    は静的光散乱測定による、電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の散乱強度、
    は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物の透過率(%)、
    は透過率測定による、光散乱測定波長での電荷輸送膜用組成物に含有される有機溶媒の透過率(%)、 を表す。)
  2. 静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が、8°および15°であるときに、ImsおよびIm0が上記式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電荷輸送膜用組成物。
  3. 静的光散乱測定において、散乱角(2θ)が、8°≦2θ≦15°であるときに、ImsおよびIm0が常に前記式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電荷輸送膜用組成物。
  4. 前記熱解離可溶性基を有する重合体が、
    繰り返し単位内に芳香族環を有し、前記芳香族環に結合した炭化水素環に、前記熱解離可溶性基が結合していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
  5. 前記熱解離可溶性基が 逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
  6. 前記熱解離可溶性基が、100℃以上300℃以下で熱解離する基であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
  7. 前記熱解離可溶性基が、エテノ基またはエタノ基を含む環であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
  8. 前記重合体が、下記式(U1)または式(U2)で表される構造を繰り返し単位中に含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
    Figure 2011202124
    (前記重合体が、式(U1)または式(U2)で表される構造を主鎖繰り返し単位中に有する場合は式(U1)または式(U2)は2価の基を表す。
    前記重合体が、式(U1)または式(U2)で表される構造を側鎖に有する場合は式(U1)または式(U2)は1価の基を表し、XおよびXで表される基の末端は水素原子である。
    式(U1)において、
    1及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の
    2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
    環Aは解離性基が結合する芳香族環を表し、芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族複素環であってもよいが、電気化学的安定性に優れるため、電荷が局在化しにくいため、芳香族炭化水素環であることが好ましい。該芳香族環は置換基を有していてもよく、また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    、S、R41〜R46は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
    また、式(U2)において、
    11〜S14、R51〜R56、X、Xおよび環Bは、それぞれ独立に、上記S、S、R41〜R46、X、Xおよび環Aとして示したものと同様である。
    〜nはそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。)
  9. 熱解離可溶性基を有する重合体が、下記式(4)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
    Figure 2011202124
    (式中、mは0〜3の整数を表し、
    Ar31、及びAr32は、各々独立して、直接結合、2価の、置換基を有していても
    よい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar33及びAr35は1価の基を、Ar34は2価の基を示す。
    但し、Ar31及びAr32が同時に、直接結合であることはない。)
  10. 電子受容性化合物が、下記式(I−1)〜(I−3)のいずれかで表される化合物からなる群より選ばれることを特徴とする、 請求項1〜9に記載の電荷輸送膜用組成物。
    Figure 2011202124
    (式(I−1)〜(I−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表す。R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、置換基を表す。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。
    1およびA2は、周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素、Aは周期表第2周期以降(第2〜第6周期)の元素であって、Aは長周期型周期表の第17族に属する元素を表し、Aは長周期型周期表の第16族に属する元素を表し、Aは長周期型周期表の第15族に属する元素を表す。
    1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表す。
    〜nは、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。)
  11. 有機電界発光素子用であることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載の電荷輸送膜用組成物。
  12. 基板上に、陽極及び陰極、該陽極及び陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層の少なくとも一層が、請求項11に記載の電荷輸送膜用組成物を用いて形成された有機層であることを特徴とする、有機電界発光素子。
  13. 請求項12に記載の有機電界発光素子を含むことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
  14. 請求項12に記載の有機電界発光素子を含むことを特徴とする、有機EL照明。
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