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JP2011138622A - 導電性膜の製造方法および導電性膜 - Google Patents

導電性膜の製造方法および導電性膜 Download PDF

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JP2011138622A JP2009295891A JP2009295891A JP2011138622A JP 2011138622 A JP2011138622 A JP 2011138622A JP 2009295891 A JP2009295891 A JP 2009295891A JP 2009295891 A JP2009295891 A JP 2009295891A JP 2011138622 A JP2011138622 A JP 2011138622A
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Masatsugu Shimomura
政嗣 下村
Hiroshi Yabu
浩 藪
Yuji Hirai
悠司 平井
Takanori Hattori
孝徳 服部
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Tohoku University NUC
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

【課題】PETフィルム等の汎用高分子基板を用いることが可能であり、線幅、網目が細かく、ディスプレイ等に用いた場合には、モアレ等が生じない網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる製造方法、及び、導電性膜を提供する。
【解決手段】導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、該製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含み、該有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とする網目状の導電性膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性膜の製造方法、及び、導電性膜に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる導電性膜の製造方法、及び、導電性膜に関する。
導電性膜は、種々の電気機器へ適用されており、特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜として、光透過性、導電性に優れるものが求められており活発に研究開発が行われている。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作成された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状の導電性膜の形態等が挙げられる。メッシュ状の導電性膜、及び、その製造方法としては、例えば、透明基体表面に所定のパターンに形成された金属超微粒子触媒層と、この金属超微粒子触媒層上に形成された金属層とからなり、上記パターンの平均開口径と平均線幅との比が平均開口径/平均線幅≧7である透明導電膜、透明基体表面上に無電解メッキ触媒を含有するペーストでパターン印刷を行い、このパターン印刷された無電解メッキ触媒上に無電解メッキ処理を施して、パターン印刷部のみに金属層を形成させる透明導電膜の製造方法(例えば、特許文献1参照。)、支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに上記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより上記金属銀部に導電性金属粒子を胆持させた導電性金属部を形成する導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法(例えば、特許文献2参照。)、透明基材及びそのうえに形成された細線パターンからなる電磁波シールド材であって、上記細線パターンが、物理現像による金属銀を触媒核とする金属めっき膜から成る電磁波シールド材、透明基材状に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順序で有する感光材料を露光し、物理現像処理により上記物理現像核層上に任意の細線パターンで金属銀を析出させ、次いで上記物理現像核層の上に設けられた層を除去した後、上記物理現像された金属銀を触媒核として金属をメッキする電磁波シールド材の製造方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。このような方法で製造されたメッシュ状の導電性膜は電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いられているが、透過率の向上、モアレ防止のため、更なる細線化のニーズがあり、改善が求められるところであった。また、光透過率が低く、ディスプレイ用の透明電極等に用いることは難しいものであった。更に、パターン作成のために複雑なリソグラフィー工程が必要となるため、生産性の観点からも改善の余地があった。
メッシュ状の導電性を有する被覆物を形成する方法としては、金属ナノ粉末を含んでいて、透明でかつ導電性を有する被覆物を形成する方法であって、(a)有機溶媒中で、金属ナノ粉末を、結合材、界面活性剤、添加剤、重合体、緩衝液、分散剤、及び、カップリング剤からなる群から選択された少なくとも一つの成分と共に、均質な混合物が得られるように混合し、(b)上記得られた均質な混合物を被覆しようとする表面に塗布し、(c)上記得られた均質な混合物から溶媒を蒸発させ、(d)上記表面に透明でかつ導電性を有する被覆物を形成するために、上記被覆された表面を焼結する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。また、基板の少なくとも片面に、金属微粒子層がランダムな網目状に積層され、該金属微粒子層上にメッキ金属層が積層されたランダム網目層を有する導電性基板であって、該導電性基板の少なくとも片面の該めっき金属層の厚みが1.5μm以上であり、該導電性基板の全光線透過率が65%よりも大きく、かつ該導電性基板の少なくとも片面の表面比抵抗が0.5Ω/□(オーム/スクウェア)よりも小さい導電性基板が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
ところで、多孔質構造を有する有機膜を形成する方法として、線状ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を調製し、次に、該ポリマー溶液を冷却して、雰囲気中の上記を結露させることによりその液滴の一部を上記ポリマー溶液の表面から内部に入り込ませ、次に、上記溶媒を蒸発させ、その後、上記結露した液滴を除去するハニカム状多孔質体の製造方法(例えば、特許文献6参照。)、ハニカム構造にパターニングされた有機膜(例えば、非特許文献1参照。)が開示されているが、いずれも高分子の有機膜を用いているものであり、導電性膜への適用等は記載されていない。
更に、導電性金属で構成された線状部が基板上で二次元ネットワーク状に連なっており、かつ基板の全表面の面積に対して線状部の占める面積の割合が20%以下である透明電極が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。これには、導電性金属微粒子を有機溶媒中に分散させた塗布液を透明基板上に塗布し、かつ高湿度下で乾燥させて透明電極前駆体を形成する乾燥工程と、前記透明電極前駆体を焼成する焼成工程とを含む透明電極の製造方法が開示されている。実施例においては、銀ナノ粒子が用いられ、図2の焼成後に得られたもののSEM写真から、透明電極の表面には、網目状構造の規則性は消失しているが、二次元ネットワークを形成していることが観察でき、また、透明電極表面においても、開口部の面積は全表面の92.8%あった、と記載されている。また、焼成工程としては、220℃で20分間の焼成を行っている。
特開2003−109435号公報(第1、2頁) 特開2004−221564号公報(第1、2頁) 再公表特許WO2004/007810号公報(第1、2頁) 特表2005−530005号公報(第1、2頁) 特開2007−227906号公報(第1、2頁) 特開平8−311231号公報(第1、2頁) 特開2008−243547号公報(第1、2、8−11頁)
ニシダ ジン(Jin Nishida)他7名、「ポリマージャーナル(Polymer Journal)」(日本)、2002年、第34巻、第3号、pp.166−174
しかしながら、特許文献1のように、金属ナノ粒子を含むインキをグラビア印刷で塗布した後、メッキを行うような方法であると、メッシュの線幅を小さくすることが困難であった。また、特許文献2、3のように、銀塩の現像処理によりメッシュフィルムを形成する方法であると、露光によるパターンの作製後、余分な金属の除去、メッキといった複数の工程が必要となる点や、線幅を小さくすることが困難な点で改善の余地があった。
更に、特許文献4のように、銀ナノ粒子有機溶媒分散体中にあらかじめ水を添加して、パターンを形成する方法であると、水の凝集等が生じることによりナノ分散することが困難である。そのため、このような方法を用いて形成した膜は、線幅、網目を細かくすることができなかった。また、あらかじめ添加されている水分によってインキの安定性が悪くなるため、改善の余地があった。
また特許文献7に開示された透明電極及びその製造方法では、上述したように透明電極前駆体を、200℃を超える高温で焼成する必要があり、そのために、基板としてPETフィルム等の汎用高分子フィルムを用いた導電性膜の製造に適用することができないものであった。更には、特許文献7の実施例において焼成後に得られたもののSEM写真(特許文献7の図2参照。)からは、導電性金属で構成された線状部の二次元ネットワークの形成は確認できず、表面の全面に渡り無秩序な凹凸が形成されているとしか見えない。そのような状態においては、開口部の面積が充分に確保されないものと考えられる。したがって、導電性膜の製造方法、及び、製造される導電性膜のパターン形成の両方において改善の余地があった。
このように、基板としてPETフィルム等の汎用高分子フィルムを用いることができ、光透過性と導電性とに優れた網目状の導電性膜を簡易に製造することについて開示した従来技術は見当たらず、このような課題を解決することができれば、導電性フィルム等の導電性材料を用いる技術分野において、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等に対して種々の用途展開を図ることができ、大きな技術的意義があるといえる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、PETフィルム等の汎用高分子基板を用いることが可能であり、線幅、網目が細かく、ディスプレイ等に用いた場合には、モアレ等が生じない網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる製造方法、及び、導電性膜を提供することを目的とするものである。
本発明者は、汎用高分子基板を用いることができ、線幅、網目の細かい網目状の導電性膜を製造する方法について種々検討したところ、まず、網目状の導電性膜を線幅、網目の細かいものとすることに関し、導電性物質の網目状線部と、空孔部とにより形成された導電性膜とすることによって、光透過性と導電性とを有する導電性膜とすることができることに着目した。しかしながら、従来の技術を適用する場合、例えば、金属微粒子層上にメッキ金属層が積層されたランダム網目層を形成するような方法であるとコストが高くなるという課題を有することになる。また、生産性の面で改善の余地があり、更に、有機溶媒分散体中にあらかじめ水を添加して、パターンを形成するような方法では、線幅、網目を細かくすることができなかったり、インキの安定性が悪くなったりすることになる。
そこで、上述したような従来の技術とは相違して、塗布された導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む導電性膜の製造方法とすることによって、簡易かつ安価に、線幅、網目の細かい網目状の導電性膜を製造することができ、また、生産性を向上させることができることを見出した。
次に、基板として汎用高分子フィルムを用いることができるものとすることに関し、有機溶媒分散体の成分に着目し、種々検討したところ、有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とすることによって、焼成工程を150℃以下のような低温で行っても、得られる網目状の導電性膜は、光透過性と導電性とが共に優れたものとなることを見出した。
このように、塗布された導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を行い、該有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とすることによって、上記課題を見事に解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
網目状の導電性膜を汎用高分子基板上に簡易かつ安価に形成とすることができれば、近年急速に需要、用途が拡大している導電性材料における新たな導電性付与手法となり、種々の用途展開が期待されるところである。
すなわち本発明は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、上記製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含み、上記有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とする網目状の導電性膜の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の導電性膜の製造方法は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法である。このような方法では、例えば、スパッタリング法や、メッキを行う方法等と比較して、簡易、かつ低コストで製膜を行うことができ、製造コストの削減、生産性の向上等を図ることができる。以下、基板上に塗布された有機溶媒分散体の膜を「塗膜」ともいう。
なお、網目状の導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。また、大きめの網目や小さめの網目が混在し、いくつか網目が切れているところがあってもよいが、全体的に見れば、ミクロな技術分野において網目状の構造が認められると評価されるものであることが望ましい。すなわち、マイクロスコープで観察して、網目状の構造が確認できればよい。網目状の構造は、導電性膜全面に形成されていることが好ましいが、導電性膜が用いられる用途に応じて適宜設定されればよく、導電性膜としての機能が発揮され得る限り部分的であってもよい。その他の網目状の好ましい形態については後述する。
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含むものである。この工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図が図1−1である。図1−1の左側から右側にいくにしたがって時間が経過しているものとなる。図1−1で示すように、基板11に塗布された有機溶媒分散体(塗膜)の表面で結露を生じさせることで、水滴13を凝集させることなく、塗膜12中に取り込むことができ、有機溶媒と水滴とが蒸発することで網目状の導電性膜を形成することができる。これによれば、有機溶媒を蒸発させながら、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込むことができる。そして、有機溶媒が蒸発し、更に取り込まれた水滴を乾燥させることにより、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成することができる。これにより、導電性微粒子から形成された網目状線部と、空孔部とが形成される。このように、本発明の導電性膜の製造方法を用いることによって、簡易かつ低コストに、優れた透過性及び導電性を有する網目状の導電性膜を製造することができる。すなわち、上記導電性膜の製造方法により形成された導電性膜は、網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であることが好ましい。
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含むものである。塗膜表面で結露させることは、塗膜表面付近の湿度や、塗膜表面付近の雰囲気と塗膜表面との温度差を調整することによって行うことができる。すなわち、塗膜表面で結露する条件とすればよい。本発明においては、塗膜表面に網目状の導電性部と空孔部とが形成されていることから、これは、図1−1に示したような機構によって、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させることによって生じたものであることが技術的に見て明らかである。
上記のことから、本発明の導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒を、塗膜表面で結露が生じる条件で蒸発させる工程を含むものということもできる。塗膜表面で結露が生じる条件とは、例えば、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点を、塗膜表面の温度よりも高いものとする条件である。結露を生じさせる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法、上記有機溶媒を蒸発させる雰囲気を加湿雰囲気として、該雰囲気の露点を塗膜表面の温度より高くする方法等が好適である。これらの方法は、一つの方法で用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。複数の方法を組み合わせて行うことによって、有機溶媒を蒸発させる条件をより精密に制御することができ、導電性膜の形態を調整することができる。
上記塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法としては特に限定されるものではないが、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法、有機溶媒の蒸発潜熱により塗膜表面温度を低くする方法等が挙げられる。また、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法としては、有機溶媒分散体を塗布した基板を冷却することで、塗膜表面の温度を冷却することも好ましい。このような方法で冷却することにより、塗膜表面の温度と、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度との差が大きくなるため、より簡易に結露を生じさせることができる。すなわち、塗膜表面の温度を有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度よりも低くすることが好ましい。例えば、ペルチェ素子等の冷却機器を用いることによって、有機溶媒分散体を塗布した基板を冷却する方法が好ましい方法の一つとして挙げられる。この方法であると、塗膜表面の温度制御と、有機溶媒を蒸発させる塗膜周囲の雰囲気の制御とを独立して行うことができるため、より精密な条件設定を行うことができる。条件をより調整することにより、製造される導電性膜の形状、透過率、導電率等を制御することができるため、種々の用途に応じて好適な形態の導電性膜を形成することができる。
上記有機溶媒を蒸発させるときに塗膜表面で結露が生じるようにするためには、加湿雰囲気とすることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒の蒸発を行う工程は、加湿雰囲気下で有機溶媒を蒸発させる工程であることが好ましい。加湿雰囲気とすることによって、有機溶媒分散体の表面で結露が生じやすくなる。上記有機溶媒を蒸発させる際の雰囲気を加湿雰囲気として、該露点を塗膜表面の温度より高くする方法としては、有機溶媒の蒸発を行う周囲全体を加湿する方法、加湿気体を塗膜表面に吹きつける方法等が好適である。加湿雰囲気とすることによって、塗膜表面で結露が生じやすくなる。加湿気体を塗膜表面に吹きつける際には、吹きつける速度等によって、塗膜の中に取り込まれる水滴の形状、量等が変化するため、吹きつける速度を調整することによって、有機溶媒を蒸発させる条件を調整することができる。これにより、導電性膜の形状を制御することができ、その特性(光透過率、導電性等)を向上させることができる。なお、上記加湿雰囲気は、加湿されるのと同様な条件、すなわち有機溶媒分散体の塗膜表面で結露が生じるのに充分な湿度となる雰囲気であればよく、加湿されていてもよいし、湿度の高い環境下で、有機溶媒を蒸発させる工程を行ってもよい。
上記加湿雰囲気は、相対湿度が50%以上であることが好ましい。相対湿度が50%以上と高いことによって、上記塗膜表面で結露が生じやすくなり、効率的に導電性膜の製造を行うことができる。相対湿度としては、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
上記加湿気体を吹きつける風速の上限としては、流速として5m/s(300m/min)以下であることが好ましい。5m/sを超える流速で加湿気体を吹きつける場合、塗布された有機溶媒分散体の形状が、加湿気体を吹きつけることにより変化し、有機溶媒を乾燥させた後の膜形状を目的の形状に保持することができないおそれがある。加湿気体を吹きつける風速の上限としてより好ましい流速としては、3m/s(180m/min)以下であり、更に好ましくは、1m/s(60m/min)以下である。また、上記風速の下限としては、0.02m/min以上であることが好ましい。風速が0.02m/min以下である場合には、塗布された有機溶媒分散体中に、水滴が充分に取り込まれないおそれがある。風速の下限としてより好ましい流速としては、0.1m/min以上であり、更に好ましくは、0.2m/min以上であり、特に好ましくは、0.4m/min以上である。加湿気体を吹きつける時間の上限としては、生産性の観点からは、1時間以内であることが好ましい。より好ましくは、40分以内であり、更に好ましくは、30分以内である。加湿気体を吹きつける時間の下限としては、1分以上であることが好ましい。1分未満であると、有機溶媒の蒸発が充分に行うことができないおそれがあり、また、有機溶媒分散体中へ水滴が充分に取り込まれないおそれがある。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。例えば、20分程度(15〜25分)が好適な時間である。吹きつける加湿気体の相対湿度についても、上述と同様に、相対湿度が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは、55%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。
ここで、導電性膜を製造する方法について図1−2を用いて説明する。図1−2は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示すフロー図である。図1−2(a)で示すように、基板11に塗布された有機溶媒分散体(以下、「塗膜」ともいう。)は、塗膜12を形成した基板11を冷却する方法や加湿気体を吹きつける方法により塗膜表面で結露が生じる条件とすることで、図1−2(b)に示すように、塗膜の表面で結露が生じることとなる。結露により生じた水滴13は、図1−2(c)及び図1−2(d)に示すように塗膜12中に取り込まれる。また、塗布された有機溶媒分散体は、時間が経過するとともに、有機溶媒が蒸発し、薄くなっていく。そして、有機溶媒と、加湿雰囲気によって取り込まれた水滴とが蒸発することによって、図1−2(e)に示すように、有機溶媒が蒸発した膜は空孔部14及び網目状線部15が形成されたものとなる。このようにして、網目状のパターンが形成されることとなる。また、図2は、有機溶媒が蒸発した後の膜の形態を示す平面模式図であるが、形成された空孔部14の周りに金属を含んでなる網目状線部15が形成されたものとなり、透過性を有する導電性膜が形成される。
また、図3に示すように、ペルチェ素子20を用いて、基板21及び塗膜22の冷却を行い、更に加湿気体を塗布された有機溶媒分散体に吹きつけることにより有機溶媒を蒸発させる方法は、本発明の導電性膜の製造方法の好適な形態の一つである。すなわち、上記製造方法は、基板及び塗膜の冷却を行い、かつ加湿気体を塗膜に吹きつけ、該塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む製造方法が好ましい。
本発明における有機溶媒分散体は、ノニオン性界面活性剤を必須成分とするものである。有機溶媒分散体が、ノニオン性界面活性剤を必須成分とすることによって、その界面活性機能により塗膜中に取り込んだ水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となり、水滴同士の凝集を制御すること等が可能となる。このため、有機溶媒分散体における有機分を減らしても、安定した網目状のパターンを形成することができる。また、上記塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の後に、焼成工程を行う場合に、該焼成工程を例えば150℃以下のような低温で行ったとしても、有機溶媒分散体中のノニオン性界面活性剤は揮発してしまうことになる。ここで、導電性膜の網目状線部に有機溶媒や界面活性剤といった有機溶媒分散体中に含有されていた導電性物質以外の物質が残留していると、網目状線部において導電性微粒子同士が分離され、導電性が得られなくなるおそれがあるが、有機溶媒分散体中のノニオン性界面活性剤は、上述したようにこのような低温焼成によっても、揮発してしまうために、有機溶媒や界面活性剤が網目状線部に残留していない導電性膜を製造することが可能となり、高い導電性を有する導電性膜を得ることができる。すなわち、有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とすることによって、焼成工程を150℃以下のような低温で行っても、光透過性と導電性とが共に優れた網目状の導電性膜を得ることができることとなる。これにより、耐熱性の低いPETフィルム等の汎用高分子フィルムをも基板として用いることができることとなり、導電性膜の利用用途を格段に広げることが可能となる。
上記ノニオン性界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性と3つに分類される界面活性剤のうちのノニオン性(非イオン性)に実質的に分類される界面活性剤であればよいが、全体としてノニオン性であり、その構造内に親水性基と疎水性基との両方を有する化合物であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤は、基板上に塗布された有機溶媒分散体に付着した水滴が互いに融合することを防止することが可能である。ノニオン性界面活性剤としては、全体としてノニオン性であり、水及び有機溶媒の両方に対して親和する部分を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、疎水性基としては、例えば、炭素数5〜20の炭化水素基、フェニル基、フェニレン基等の非極性基が挙げられる。また、親水性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホ基、エステル基、アミド基、エーテル基等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤は、HLB値が10以下のものであることが好ましい。HLB値が10以下のものである場合、油中水滴(W/O型)エマルションを形成することが容易であるために、上記塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の際に、塗膜中に取り込んだ水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となり、例えば、水滴同士の凝集を制御することが可能となる。それによって、網目状のパターンをより細かいものとすることができる。上記ノニオン性界面活性剤のHLB値としてより好ましくは、9以下であり、更に好ましくは、8以下である。特に好ましくは、7以下のものである。
また、上記ノニオン性界面活性剤のHLB値は低すぎると、水に対する親和性がなくなり過ぎて、水滴の安定化ができなくなるおそれがあるため、HLB値は、1以上であることが好ましい。より好ましくは、2以上であり、更に好ましくは、3以上である。
なお、上記ノニオン性界面活性剤のHLB値は、例えば、下記のグリフィンの式により算出することができる。
HLB={(界面活性剤の親水部分の分子量)/(界面活性剤全体の分子量)}×20
上記ノニオン性界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。これらの中でも、少ない添加量でパターンを均一に形成できることから、多価アルコール脂肪酸エステルが好ましい。すなわち、上記ノニオン性界面活性剤が、多価アルコール脂肪酸エステルであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
これらのノニオン性界面活性剤としては、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、通常行われる一般的な方法により、多価アルコールと脂肪酸とをエステル結合により結合させることによって生成されるものであるが、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルにおいては、多価アルコール1分子に対してエステル結合する脂肪酸は、1種であっても、2種以上であってもよい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールが有する水酸基1モルに対して、脂肪酸を0.2〜1モルの割合で反応させて得られたものであることが好ましい。このような割合で反応させたものであると、多価アルコール脂肪酸エステルが上記HLB値の好ましい値を満たすものとなり、基板上により細かい網目状の導電性膜を形成することが可能となる。より好ましくは、水酸基1モルに対して、脂肪酸を0.3〜0.8モルの割合で反応させたものである。
上記多価アルコール脂肪酸エステルは、脂肪酸由来の構造部分に水酸基を実質的に有さないことが好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルが、脂肪酸由来の構造部分に水酸基を有している場合には、網目状線部の網目パターンが細かいものとならなかったり、また、導電性膜の一部分にのみパターンが形成され、全面に渡ってパターンを形成することができなかったりするおそれがある。
ここで、脂肪酸由来の構造部分に水酸基を実質的に有さないとは、全く有していない、又は、全く有していないわけではないが、導電性膜の製造にあたって、脂肪酸由来の構造部分の水酸基に由来する上述したような影響が出ないために、実質的には有していないものとみなしてもよい程度に有している、のいずれかを表している。
上述のことは、上記多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の水酸基価が100以下であることが好ましい、と言うこともできる。より好ましくは、50以下であり、更に好ましくは、20以下である。
上記多価アルコール脂肪酸エステルを構成する多価アルコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ショ糖、ソルビタン、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等が好適に用いられる。これらの中でも、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビタンが特に好ましい。
これら多価アルコールとしては、上記多価アルコール脂肪酸エステルを生成する際、単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数6〜30の飽和直鎖脂肪酸、炭素数6〜30の飽和分岐脂肪酸、炭素数6〜30の不飽和直鎖脂肪酸、炭素数6〜30の不飽和分岐脂肪酸等が好適に用いられる。これらの中でも、炭素数10〜20の飽和直鎖脂肪酸、炭素数10〜20の飽和分岐脂肪酸、炭素数10〜20の不飽和直鎖脂肪酸、炭素数10〜20の不飽和分岐脂肪酸がより好ましい。特に好ましくは、炭素数15〜20の飽和直鎖脂肪酸、炭素数15〜20の飽和分岐脂肪酸、炭素数15〜20の不飽和直鎖脂肪酸、炭素数15〜20の不飽和分岐脂肪酸である。
上記脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等であることがより好ましい。これらの中でも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が特に好ましい。
これら脂肪酸としては、上記多価アルコール脂肪酸エステルを生成する際、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。すなわち、上記多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコール脂肪酸エステル1分子中に1種類のみの脂肪酸が多価アルコールにエステル結合していてもよいし、2種以上の異なる脂肪酸が多価アルコールにエステル結合していてもよい。
上記多価アルコール脂肪酸エステルとしては、具体的には、ジカプリン酸プロピレングリコール、DKエステルF−10(第一工業製薬社製)、DKエステルF−20W(第一工業製薬社製)、DKエステルF−50(第一工業製薬社製)、DKエステルF−70(第一工業製薬社製)、DKエステルF−90(第一工業製薬社製)、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノココエート、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル−2、オレイン酸ポリグリセリル−2、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、ステアリン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−4、ペンタステアリン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−6、トリステアリン酸ポリグリセリル−6、ジステアリン酸ポリグリセリル−10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10、トリステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、ヘプタステアリン酸ポリグリセリル−10、ヘプタオレイン酸ポリグリセリル−10、デカステアリン酸ポリグリセリル−10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル−10、デカオレイン酸ポリグリセリル−10、イソステアリン酸PEG−3グリセリル、オレイン酸ポリオキシエチレン(4)グリセリル等が好適に用いられる。より好ましくは、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル−10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル−10、ヘプタオレイン酸ポリグリセリル−10、オレイン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル−2、ソルビタンモノオレート、イソステアリン酸PEG−3グリセリルが用いられる。
上記ノニオン性界面活性剤の含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、ノニオン性界面活性剤の含有量が0.001〜25質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、塗布された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することができる。0.001質量%未満である場合には、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。25質量%を超えると、塗膜表面で水滴が凝集し、空孔部が充分に形成されないおそれがある。また、導電性が発現しにくくなるおそれがある。ノニオン性界面活性剤の含有量としてより好ましくは、0.001〜15質量%であり、更に好ましくは、0.001〜5質量%であり、特に好ましくは、0.003〜1質量%である。
上記ノニオン性界面活性剤の分子量としては、200〜7000であることが好ましい。分子量が200より低いと、有機溶媒分散体の粘度が低くなり、導電性膜の網目状パターンをきれいに形成することができなくなるおそれがある。また、7000より高いと、有機溶媒を蒸発させる工程の後に、低温での焼成を行った場合に、低温では充分に揮発させることができなくなり、界面活性剤が網目状線部に残留してしまうおそれがある。ノニオン性界面活性剤の分子量としてより好ましくは、500〜5000であり、更に好ましくは、1000〜4000であり、特に好ましくは、2000〜3000である。
更に、本発明における有機溶媒分散体は、ノニオン性界面活性剤以外の両親媒性化合物を含んでいてもよい。そのような両親媒性化合物としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、オクチルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン、等が挙げられる。
本発明において用いられる導電性微粒子は、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する網目状線部の線幅を細くすることができ、透明導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、透明導電性膜の透過率が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する網目状線部の導電率を高めることができる。また、金属粒子を用いた場合、粒径が小さくなることで、融点が低下するため、低い焼成温度で粒子同士を融着させ、導電性を発現させることができる。粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
上記平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗布した後、塗布膜を還元雰囲気に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗布した後、還元雰囲気に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
上記導電性微粒子の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.05〜10質量%であることが好ましい。10質量%を超える場合には、有機溶媒分散体中で導電性微粒子が凝集し、充分に分散されていない状態になるおそれがある。また、0.05質量%未満である場合には、導電性微粒子が少なく、充分な導電性が得られないおそれがある。導電性微粒子の含有量としてより好ましくは、0.1〜10質量%であり、更に好ましくは、0.12〜10質量%である。
上記有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電性微粒子及びノニオン性界面活性剤が分散された分散体であり、有機溶媒、導電性微粒子及びノニオン性界面活性剤以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記有機溶媒としては、疎水性の有機溶媒が好ましい。疎水性の有機溶媒を用いることによって、加湿雰囲気下に置いた場合に、より安定した形態で有機溶媒分散体中に水滴を取り込むことができる。また、有機溶媒としては、非極性の有機溶媒であることが好ましい。非極性であることにより、極性分子である水に溶けにくいものとなるため、塗膜に取り込まれた水滴の形態をより好適に保持することができる。非極性の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;脂肪族炭化水素系溶媒等を好ましく用いることができる。有機溶媒の蒸発速度、水の溶解度の点から、すなわち、比較的蒸発速度が速く、水滴が結露しやすく、かつ水と混じりにくい点からは、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等がより好ましい。上記有機溶媒としては、極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒であってもよい。例えば、芳香族炭化水素溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒、芳香族炭化水素とアミド系溶媒との混合溶媒等であってもよい。
上記有機溶媒の比重は、水の比重以下であることが好ましい。有機溶媒の比重が水の比重よりも大きい場合、塗膜表面で結露した水滴が有機溶媒分散体中に取り込まれないおそれがある。有機溶媒の比重として具体的には、室温(20℃)での比重が1.00以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
上記有機溶媒の粘度としては、室温(20℃)において2mPa・s以下であることが好ましい。塗布された有機溶媒分散体中に水を取り込む場合、有機溶媒の粘度が高すぎると、充分に水滴を取り込むことができないおそれがある。
上記有機溶媒分散体は、塗布前の水分含有量が10質量%以下であることが好ましい。塗布前の有機溶媒分散体中に水分が多く含有されている場合、有機溶媒分散体中の水分が表面張力により大きな水滴となり、網目を細かくすることができないおそれがある。塗布前の水分含有量としてより好ましくは、5質量%以下である。
上記有機溶媒分散体は、基板に塗布されるものである。上記基板は、特に限定されるものではなく、有機溶媒分散体を表面に塗布することができるものであればよい。上記基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板を基板として用いることが好適である。透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。なお、本発明の導電性膜の製造方法は、高温での焼成工程を必要としないことから耐熱性の低いプラスチックフィルムをも基板として用いることができる方法であることから、基板としてPET等のプラスチック基板を用いた時に本発明の効果が顕著に発揮されることとなる。
上記有機溶媒分散体を塗布する基板は、表面が親水性である基板を用いることが好ましい。上記基板の表面が親水性であることによって、水滴と基板とを接触しやすくし、空孔の貫通率を高め、空孔底面に余分な高分子・粒子膜の形成を防ぐことができ、空孔部の形状を開口率が高い導電性膜の形態とすることができる。表面が親水性である基板としては、水に対する接触角が90°以下であることが好ましい。90°以下であることによって、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴の形状を調整し、空孔部の形状を開口率が高い形態にすることができる。水に対する接触角の上限としてより好ましくは、60°以下であり、更に好ましくは、30°以下である。
上記有機溶媒分散体を塗布する基板は、基板表面に親水化処理を行われたものであることが好ましい。これによれば、上述のように、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴を好適な形状で保持することができる。また、基板表面の親水性を制御することによって、導電性膜の形状を更に制御することができる。親水化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ性溶液に浸漬させる方法が好ましい。アルカリ性溶液としては、特に限定されるものではないが、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等を好ましく用いることができる。具体的には、飽和水酸化カリウムエタノール溶液等を好ましく用いることができる。また、親水化処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理を行う方法等が挙げられる。このような方法は、基板の種類、有機溶媒分散体の種類等によって適宜好ましい方法を選択することが好ましい。また、親水化による基板の接触角は、上述した好ましい接触角の値を用いることができる。
上記製造方法は、有機溶媒を蒸発させた膜を焼成する工程を含むことが好ましい。上述したように、有機溶媒を蒸発させた後では、導電性微粒子が存在している網目状線部に有機溶媒等の有機溶媒分散体中に含有されていた物質が残留しているおそれがあり、その場合、導電性微粒子同士が分離され、導電性が得られなくなるおそれがある。焼成を行うことによって、乾燥後の膜中に有機溶媒が含まれている場合にも、充分に有機溶媒を蒸発させることができ、高い導電性を得ることができるものとすることができる。また、焼成を行うことで、導電性微粒子同士を結合させ、導電性を高めることができる。
上記焼成する工程において、焼成する温度は特に限定されず、金属材料、導電性微粒子の含有量、有機溶媒の種類、膜厚等によって異なるものであり、各々の条件で適宜好適な条件で行うことができるが、焼成温度は、400℃以下であることが好ましい。焼成温度が高い場合には、導電性微粒子が凝集して結合することができず、充分な導電性が得られないおそれがある。焼成温度としてより好ましくは、300℃以下である。更には、本発明の導電性膜の製造方法は、上述したように、低温での焼成を行った場合に、よりその効果が顕著に発揮されることとなることから、焼成温度が200℃以下であるが更に好ましい。焼成温度が200℃以下であるような場合には、基板としてPET等の汎用高分子フィルムを用いることが可能となる。特に好ましくは、180℃以下であり、最も好ましくは、150℃以下である。
焼成時間としては、2時間以内であることが好ましく、より好ましくは、1時間以内であり、更に好ましくは、30分以内である。
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の後に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる導電性膜の導電性を更に向上させることができる。上記焼成する工程を行う場合には、焼成する工程を行った後に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。
本発明はまた、上記製造方法により製造される導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることによって、上記導電性膜は、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜となり、光透過性と導電性とを有する透明導電性膜とすることができる。すなわち、上記製造方法により製造される透明導電性膜もまた、本発明の1つである。そして、上記製造方法を用いることによって、光透過性を有する導電性膜を簡易、かつ安価に製造することが可能となる。
上記導電性膜の形態としては、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることが好ましい。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が細いことによって、光の透過性が高く、均一性の高い網目状の導電性膜を形成することができる。また、上記製造方法により製造される導電性膜のより好ましい形態としては、後述する網目状の導電性膜の好ましい形態と同様である。すなわち、空孔部の平均面積としてより好ましくは、300μm以下であり、更に好ましくは、200μm以下であり、特に好ましくは、100μm以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。空孔部による開口率としては、60%以上であることが好ましく、これにより光透過率を高めた導電性膜とすることができる。空孔部による開口率は65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。上記網目状線部の線幅としてより好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。なお、最大フェレ径とは、各空孔部の輪郭に接するように引いた2本の平行線間の最大のものを最大フェレ径といい、平均最大フェレ径とは、計測した各空孔部の最大フェレ径の平均をとったものを平均最大フェレ径という。
本発明は更に、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜でもある。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が細いことによって、光の透過性が高く、かつ均一性の高い網目状の透明導電性膜を形成することができる。例えば、上述したように、電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。網目が広い(空孔部の面積が大きい)場合、導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合、網目が細かいものでないとその空孔部の中にマイクロカプセルの全体が納まることとなり、そのようなカプセルには電圧が印加されないこととなる。また、網目が細かいことによって、導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。このような網目状の導電性膜は、上記導電性膜の製造方法を用いて形成することが可能である。上記導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。例えば、網目状の導電性膜を形成する際に、より網目の細かいものとするためには、ランダム状であった方が製造がより容易になるため、ランダム状であることも好ましい形態の一つである。ここで、ランダム状とは、網目状線部と空孔部とが一定の規則に基づいて配置されていない状態であることをいう。
上記導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることによって、導電性膜の網目が細かいということができる。網目が細かいことによって、導電性膜の面内で均一な導電性を有するものとすることができる。空孔部の平均面積が400μmを超える場合、導電性膜の面内の均一性が充分とならず、例えば、光の透過性、導電性にばらつきが生じるおそれがある。また、上述したように、電子ペーパー等のディスプレイに対して用いる場合、電圧が印加されない部分が生じることにより、導電性膜としての機能が充分でなくなるおそれがある。空孔部の平均面積として、より好ましくは、300μm以下であり、更に好ましくは、200μm以下であり、特に好ましくは、100μm以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。上記網目状線部の線幅は、5μm以下であり、線幅が細いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。網目状線部の線幅が5μmを越える場合、開口率が小さくなり、光透過性が充分でなくなるおそれがある。網目状線部の線幅として、より好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。上記のように、空孔部の平均面積、網目状線部の線幅を制御することによって、導電性膜の光透過性及び導電性をより好ましい値へと制御することができる。
上記導電性膜は、空孔部による開口率が60%以上であることが好ましい。開口率を高めることによって、光の透過性を向上させることができるため、電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合に好適に用いることができる。60%未満であると、充分な光透過率を得ることができず、透過性を有する導電性膜として充分な特性を発揮することができないおそれがある。空孔部による開口率は、65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。
開口率、線幅、空孔部の平均面積及び平均最大フェレ径については、以下の方法により求めることができる。
<開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径の求め方>
導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理し、導電膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、フェレ径を求める。
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化する。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行う(この画像を「二値化画像」とする。)。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とする。
また、二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とする。次に、二値化画像の細線化処理を行う(この画像を「細線化処理画像」とする。)。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを導電部の長さ(L)とする。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求める。
導電部の線幅=S/L (1)
続いて、二値化画像の黒部を抽出する(この画像を「抽出画像」とする。)。抽出の際、境界上の空孔部については除外する。また、1μm以下の面積の空孔部についても除外する。このときの、各要素の面積、及び、最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とする。
上記網目状線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、線幅が小さくなったとしても充分な導電率を得ることができる。導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。網目状線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、網目状線部の厚みは、最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とする。
上記導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、例えば、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
上記導電性膜はまた、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。全光線透過率が20%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、50%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。最も好ましくは、75%以上である。
なお、上記全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
上記空孔部による開口率が高い場合、網目状線部の面積が小さくなると、開口率が低い同じ膜厚の導電性膜と比較すると、導電性膜の抵抗率が増加することとなる。そのため、網目状線部の面積は、充分な導電性を確保することができる面積であることが好ましい。好ましい網目状線部の面積は、導電性膜の膜厚、面積、導電性膜を構成する金属材料等によって異なるが、例えば、導電性膜の面内のシート抵抗(表面抵抗率)が10Ω/□以下であるように網目状線部の面積を設定することが好ましい。これによれば、導電性膜のシート抵抗としてより好ましくは、10Ω/□以下であり、更に好ましくは、10Ω/□以下であり、特に好ましくは、10Ω/□以下である。最も好ましくは、10Ω/□以下である。
なお、上記シート抵抗は、例えば、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定することができる。
上記導電性物質は、導電性を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。また、低コスト化の観点からは、この中でも、導電性物質として用いる金属としては、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。また、網目状線部の中には、非導電性物質が含まれていてもよい。例えば、非導電性物質を導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)を焼結させることで形成されたような形態であってもよい。
上記導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる導電性膜でもある。
本発明の導電性膜の製造方法によって、網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができ、網目が細かく、光透過性に優れ、更に面内の均一性が優れる導電性膜を製造することができる。更には、製造工程において高温での焼成工程を必要としないために、基板としてPETフィルム等の汎用高分子フィルムを用いることが可能である。また、このような導電性膜は、網目が細かくなることから、電子ペーパー等のディスプレイ等に好適に用いることができる。また、面内の均一性に優れることから、ディスプレイ等に適用する場合には、モアレ等が生じないものとすることができる。
図1−1は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図である。 図1−2(a)〜(e)は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示す概念図である。 図2は、空孔部と網目状線部が形成された網目状の導電性膜の平面模式図である。 図3は、ペルチェ素子を用いて、基板及び塗膜を冷却し、更に加湿気体を塗膜に吹きつけながら蒸発させる方法を示す断面模式図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記実施例及び比較例においては、次のようにして導電性膜の物性を測定した。
<最大膜厚>
レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)を用いて倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とした。
開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径については、導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理して求めた。
<開口率>
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化した。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行った(この画像を「二値化画像」とする。)。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とした。
<線幅>
上記二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とした。次に、二値化画像の細線化処理を行った(この画像を「細線化処理画像」とする。)。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを導電部の長さ(L)とした。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求めた。
導電部の線幅=S/L (1)
<空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径>
上記二値化画像の黒部を抽出した(この画像を「抽出画像」とする。)。抽出の際、境界上の空孔部については除外した。また、1μm以下の面積の空孔部についても除外した。このときの、各要素の面積、及び、各空孔部の最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とした。
<全光線透過率>
導電性膜の全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
<表面抵抗率>
導電性膜の表面抵抗率は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定した。
<パターン均一性>
導電性膜のパターンの均一性は、塗布した範囲の全面に渡ってパターンが出来ているかを目視により観察した。パターンが出来ていない箇所は、凝集した銀ナノ粒子のプラズモン吸収に由来して塗膜が褐色に色づくため、その様子を観察した。そして観察の結果、塗布した範囲の50%以上に渡って色づいた箇所がある場合には、パターン均一性無しとし、色づいた箇所が塗布した範囲の50%未満である場合には、パターン均一性有りとして評価した。
評価結果の表示
〇:パターン均一性有り
×:パターン均一性無し
<ノニオン性界面活性剤のHLB値>
また、ノニオン性の界面活性剤のHLB値は、下記のグリフィンの式により算出した。
HLB={(界面活性剤の親水部分の分子量)/(界面活性剤全体の分子量)}×20
<導電性微粒子分散溶液の調整方法>
オクチルアミン(和光純薬工業株式会社製)148.1gをいれた1Lビーカーを40℃の恒温槽に入れる。次に酢酸銀(和光純薬工業株式会社製)18.6gを添加し20分間充分に攪拌混合し、均一な混合溶液を調整する。続いて、20wt%水素化ホウ素ナトリウム水溶液20gを徐々に添加することにより還元処理を実施した。
還元処理後、アセトンを200g添加し、しばらく放置後、ろ過により銀及び有機物からなる沈殿物を分離回収する。回収物にトルエンを添加し、再溶解後、10℃以下まで冷却させた後、再度ろ過し、不純物を低減させたトルエン分散溶液を調整した。次に、エバボレーターによりトルエンを留去し、銀微粒子を20wt%含有する導電性微粒子分散溶液を調整した。この溶液は、銀微粒子の他にオクチルアミン9wt%、トルエン71wt%を含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
(実施例1)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液を用いて、銀の重量濃度として0.93mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.120質量%に相当。)、ラメフォームTGI(ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、コグニス社製)0.028mg/ml(シクロヘキサン溶液100質量%に対して、0.0036質量%に相当。)のシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、1.6mlの上記溶液を5cm角のPETフィルム(ルミラーU34、両面易接着処理PET、東レ社製)基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、150℃で15分焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
このときの導電性膜の表面抵抗率は、1.3×10Ω/□、全光線透過率は、59%であった。パターン均一性は、均一であると評価されるものであった。また、導電性膜の最大膜厚、開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
(実施例2〜5)
界面活性剤を表1に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表1の通りであった。
Figure 2011138622
(実施例6〜10)
界面活性剤を表2に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表2の通りであった。
Figure 2011138622
(参考例1〜5)
界面活性剤を表3に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表3の通りであった。
Figure 2011138622
(比較例1〜3)
界面活性剤を表4に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性膜を得た。それらの物性を評価した結果、表4の通りであった。
Figure 2011138622
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
界面活性剤として、ノニオン性の界面活性剤を用いた場合(実施例1〜10)には、両親媒性高分子(比較例1)やカチオン性の界面活性剤(比較例2)、アニオン性の界面活性剤(比較例3)を用いた場合に比較して、シート抵抗及び全光線透過率共に優れた導電性膜が得られ、そのパターンの均一性も良好なものとなった。有機溶媒分散体にノニオン性界面活性剤を必須成分として含めることにより、製造工程において高温での焼成を行うことなく、導電性と光透過性とに優れた導電性膜を製造することが可能であることが分かった
界面活性剤としてノニオン性の界面活性剤である、多価アルコール脂肪酸エステルを用いる場合において、その脂肪酸由来の構造部分に水酸基を有したものを用いる場合(参考例1〜3)に比べて、脂肪酸由来の構造部分に水酸基を有さないものを用いる場合(実施例1〜10)の方が、特にパターンの均一性の面で優れていることが分かった。また同様に、界面活性剤としてポリオキシアルキレン鎖を有するノニオン性の界面活性剤を用いる場合(参考例4、5)に比べて、ポリオキシアルキレン鎖を有さないノニオン性の界面活性剤を用いた場合(実施例1〜10)の方が、特にパターンの均一性の面で優れていることが分かった。
これらの実施例と比較例との差は、数値上はわずかであるものもあるが、透明導電性フィルム等としての利用分野においては、充分に有意な差といえる差であり、その効果は際だっていると評価できるものである。
なお、上記実施例においては、導電性物質として銀が、界面活性剤として特定のノニオン性界面活性剤が用いられているが、特定のノニオン性界面活性剤により、塗膜中に取り込んだ水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となり、また、パターン形成後に低温での焼成により揮発して導電性膜に残留しないという機構は、全て同様である。従って、上記実施例、比較例の結果から、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
11、21:基板
12、22:塗膜(塗布された有機溶媒分散体)
13:水滴
14:空孔部
15:網目状線部
20:ペルチェ素子

Claims (5)

  1. 導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、
    該製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含み、該有機溶媒分散体がノニオン性界面活性剤を必須成分とすることを特徴とする網目状の導電性膜の製造方法。
  2. 前記ノニオン性界面活性剤は、HLB値が10以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の網目状の導電性膜の製造方法。
  3. 前記ノニオン性界面活性剤は、多価アルコール脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の網目状の導電性膜の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造されることを特徴とする網目状の導電性膜。
  5. デジタルペーパーに用いられることを特徴とする請求項4に記載の網目状の導電性膜。
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