シリカチタニア複合粒子を外添したトナーにおいて、シリカチタニア複合粒子のシリカ含有量及びその構造、物性について鋭意検討を重ねた結果、前述の課題を解決するトナーが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明において、シリカチタニア複合粒子は、未処理、或いは、疎水化処理されたものであり、未処理の状態で測定したシリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルが−45.0mV以上−20.0mV以下、好ましくは−40.0mV以上−25.0mV以下である。
上記ゼータポテンシャルが、−20.0mV以下であり、後述するシリカ含有量の範囲内であるということは、本発明のシリカチタニア複合粒子が、チタニアをシリカにて内包した図1のようなコアシェル構造、もしくは島状構造を有することを示す。
従来のシリカ及びチタニアを含有する複合粒子は、本発明のシリカチタニア複合粒子のように、チタニアをシリカが内包した構造を有せず、チタニアが表面に露出しているため、本願ゼータポテンシャルよりもチタニア粒子に近い高い値となる。
本発明のシリカチタニア複合粒子は、上述のごとき構造を有するため、体積固有抵抗の小さいチタニアが表面に殆ど存在せず、シリカと同程度の小さいゼータポテンシャルを有する。そのため、シリカ、チタニアそれぞれの弊害がなく、それぞれの良好な特性を相乗的に併せ持つシリカとチタニアを含有する複合粒子となる。そのため本発明のシリカチタニア複合粒子を外添したトナーは、長期放置された際、特に高湿下にて長期放置されたとしても、帯電の維持及び立ち上がり性が良好であるため、画像濃度安定性、転写性、かぶり特性を長期にわたって維持することができる。
また、連続して長期使用された際、チャージアップが抑制される。
シリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルが−45.0mVより小さいと、トナーへの負帯電付与能が大きくなりすぎ、シリカ粒子と同様な弊害が発現し、トナーでは高温高湿や、低温低湿環境間での帯電量変動が大きくなる。また、−20.0mVより大きい場合は、チタニアが粒子表面に存在する、あるいは、シリカを含有しないチタニア単独粒子が多いことを示し、チタニア粒子と同様の弊害が発現する。例えば高湿下にて長期放置された際、帯電維持性が悪く、転写性、かぶり、画像濃度安定性が悪化するなどの弊害が生じる。
〔ゼータポテンシャルの測定方法〕
シリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルは、ゼータサイザ−Nano−Zs(シスメックス(株)社製)を用いて測定を行った。分散液として25℃のメタノール100mgに、シリカチタニア複合粒子7mgを加え、超音波分散機(日本理化学器械(株)社製)にて3分間分散させ分散液とした。ただし、分散液中に、目視にてシリカチタニア複合粒子の白沈及び浮遊物が存在する場合には、適宜メタノールへのシリカチタニア複合粒子の添加量を調整する。この分散液をスポイトにて、DTS1060C−Clear Disposable Zeta Cellに気泡が入らないように入れる。このセルを測定器に装着し、25℃にてゼータポテンシャルを測定した。この測定を行い、5回の平均値を本発明のゼータポテンシャルとした。
本発明においては、シリカ、チタニアそれぞれの弊害がなく、それぞれの良好な特性を相乗的に併せ持つシリカとチタニアを含有する複合粒子とするために、チタニア単独粒子またはシリカ単独粒子の割合は、好ましくは8.5頻度%以下、さらに好ましくは4.5頻度%以下である。この割合以下であれば、従来のシリカ粒子、チタニア粒子の弊害をさらに抑制し、シリカとチタニアの良好な特性をさらに相乗的に併せ持つシリカチタニア複合粒子と成り得る。
〔シリカ単独粒子およびチタニア単独粒子の存在割合の測定〕
シリカ単独粒子およびチタニア単独粒子の存在割合は、透過電子顕微鏡(TEM−EDX)による観察によって把握することができる。具体的には、透過電子顕微鏡(TEM−EDX)による観察において、例えば、10万以上20万倍以下の倍率下で観察と元素マッピングを連続した視野で行い、観察される粒子に対してSiとTiの元素をマッピングしたとき、同一粒子においてSiとTiの両元素が観察されるものを複合粒子とし、何れか一方の元素のみが観察されるものを単独粒子とする。この観察によって粒子100個あたりの複合化されていない粒子の数を単独粒子の存在割合とする。
本発明のシリカチタニア複合粒子は、シリカの含有量が55.0質量%以上85.0質量%以下、好ましくは65.0質量%以上75.0質量%以下である。シリカ含有量が55.0質量%より小さいと、例え前述のゼータポテンシャルを有するシリカチタニア複合粒子であっても、チタニアの含有量が多いいため、長期放置された際、特に高湿下の帯電の維持が困難(電荷の損失が大きく)となり、画像濃度安定性、転写性、かぶりが悪化する。シリカ含有量が、85.0質量%より大きいと、例え前述のゼータポテンシャルを有するシリカチタニア複合粒子であっても、シリカの含有量が多いため、連続して長期使用した際、高温、高湿や、低温低湿環境間での帯電量変動が大きくなり、画像濃度安定性が悪化する。
〔シリカチタニア複合粒子のシリカ(SiO2)含有量の測定方法〕
シリカチタニア複合粒子のシリカの含有量は、蛍光X線分析装置SYSTEM3080(理学電機工業社製)を使用し、JIS K0119「蛍光X線分析通則」に従って、蛍光X線分析を行うことにより測定する。
本発明のシリカチタニア複合粒子は、環境安定性をより得るため、疎水化処理されていることが好ましく、疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルが、−40.0mV以上−20.0mV以下であることが好ましい。
−40.0mVより小さいと、負帯電性が大きく、シリカチタニア複合粒子同士が凝集しやすくなり、トナーの流動性が悪化し、かぶりが悪化する場合がある。また、高温高湿や、低温低湿環境での帯電量変動が大きくなる場合がある。−20.0mVより大きいと、トナーへの負帯電付与能が低いため、高湿下において、かぶり等が悪化する場合がある。
前述したように、未処理の状態で測定されたシリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルは、長期放置前後及び/または連続して長期使用前後した際の画像弊害に大きく影響を及ぼす重要なパラメーターである。一方、疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子のゼータポテンシャルは、1枚1枚の画像弊害に大きく関与するパラメーターである。そのため、長きにわたり、どのように使用されたとしても、安定した画像を出しつづけるためには、シリカチタニア複合粒子の疎水化前後のゼータポテンシャルをそれぞれ本願規定の範囲にする事が重要となる。
本発明のシリカチタニア複合粒子の疎水化処理としては、公知の処理剤、方法を特に制限されずに用いる事ができる。
乾式での疎水化処理は、シリカチタニア複合粒子に疎水化剤を乾式で処理する方法(シリカチタニア複合粒子を撹拌下または流動下で、疎水化剤蒸気を噴霧する方法を含む)、水や有機化合物等の溶媒に浸漬し、シリカチタニア複合粒子に疎水化剤を湿式で処理する方法などその処理方法は特に限定されず、公知の方法で何ら問題なく実施できる。
中でも、乾式での方法が、適度な低帯電性と優れた帯電の立ち上がり特性を有すると共に、凝集性が弱く、優れた流動性付与特性を有する点で好ましい。
乾式による方法としては、シリカチタニア複合粒子を撹拌下に疎水化剤を噴霧して処理する方法や、疎水化剤蒸気を流動床や撹拌下のシリカチタニア複合粒子へ導入する方法が挙げられる。
疎水化剤も、公知の処理剤を何ら制限されずに使用することができる。具体的に例示すれば、シリル化剤として、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のクロロシラン類やテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類等がある。また、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、及び、末端反応性シリコーンオイル等のシリコーンオイルや、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類も疎水化剤として好ましい。さらに、脂肪酸及びその金属塩として、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩も疎水化剤として有効である。これらのうち、アルコキシシラン類、シラザン類、ストレートシリコーンオイルは処理を実施しやすいので、好ましい。本発明では、このような疎水化剤の1種類を単独で、あるいは、2種類以上の場合は混合するか、または、順次段階的に表面処理して、用途に応じて要求される疎水度を達成することができる。
本発明において、所望の特性、すなわち長期環境安定性をえる事を目的に、疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子の疎水化度(メタノール疎水化度)が、好ましくは60体積%以上90体積%以下、さらに好ましくは、70体積%以上85体積%以下である。疎水化度が60体積%より小さいと、吸湿性が高くなり、トナーの低温、低湿、高温、高湿環境間の帯電安定性が悪くなりやすい。疎水化度が90体積%より大きい場合、実質、シリカチタニア複合粒子を多量の疎水化処理剤で処理することとなるため、シリカチタニア複合粒子が凝集しやすくなり、トナーの流動性が悪化しやすく、かぶり等の弊害を引き起こす場合がある。
〔疎水化度の測定〕
まず、メタノール60体積%と水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを、直径5cm、厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に入れ、その測定用サンプル中の気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。
次いで、シリカチタニア複合粒子0.1gを精秤して、上記含水メタノール液が入れられた容器の中に添加し、測定用サンプル液を調製する。
そして、測定用サンプル液を粉体濡れ性試験機「WET−100P」(レスカ社製)にセットする。この測定用サンプル液を、マグネティックスターラーを用いて、6.7s-1(400rpm)の速度で撹拌する。尚、マグネティックスターラーの回転子として、フッ素樹脂コーティングされた、長さ25mm、最大胴径8mmの紡錘型回転子を用いる。
次に、この測定用サンプル液中に、上記装置を通して、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定してメタノール滴下透過率曲線を作成し、透過率が最小となった終点でのメタノール濃度を疎水化度とする。
また、本発明のシリカチタニア複合粒子は、未処理の状態で測定したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗が、1.0×104Ω・m以上1.0×108Ω・m以下、疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗が、1.0×1012Ω・m以上1.0×1014Ω・m以下であることが好ましい。
前述したゼータポテンシャルと同様に、シリカチタニア複合粒子の疎水化処理前後の体積固有抵抗を本願範囲にすることは、より長きにわたり、安定した画像を出しつづけるために重要である。すなわち、疎水化処理前の体積固有抵抗は、長期放置前後及び連続して長期使用した際の画像弊害に大きく影響を及ぼす重要なパラメーターである。また、疎水化処理後の体積固有抵抗は、1枚1枚の画像弊害に大きく関与する重要なパラメーターとなる。
具体的には、未処理の状態で測定したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗が1.0×104Ω・mより小さい場合、チタニアが粒子表面に存在する、あるいは、シリカを含有しないチタニア単独粒子が多いことを示す。そのため高湿下にて長期放置された際、帯電維持性が悪く、転写性、かぶり、画像濃度安定性が悪化するなどの弊害が生じやすい。1.0×108Ω・mより大きい場合、低湿下にて長期使用されると、トナーの適度な帯電の緩和がなく、連続して長期使用した際にチャージアップしやすくなるため、画像濃度安定性が悪化するなどの弊害が生じやすい。
疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗が1.0×1012Ω・mより小さい場合、高湿下にて使用した際、帯電分布が広がりやすくなり、かぶりや、転写性が悪化しやすい。疎水化処理された状態で測定したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗が1.0×1014Ω・mより大きい場合、低湿下にてトナーの負帯電性が高くなり、現像性が悪化する場合がある。
〔体積固有抵抗の測定方法〕
図2は、本発明に使用したシリカチタニア複合粒子の体積固有抵抗の測定装置を示す。セルAに、シリカチタニア複合粒子を充填し、該シリカチタニア複合粒子に接するように電極1及び2を配し、該電極間に電圧を印加し、そのとき流れる電流を測定し比抵抗により体積固有抵抗を求める方法を用いた。上記測定方法においては、シリカチタニア複合粒子が粉末であるために充填率に変化が生じ、それに伴い体積固有抵抗が変化する場合があり、注意を要する。本発明における体積固有抵抗の測定条件は、該シリカチタニア複合粒子と電極との接触面積S=約2.3cm2、サンプルの厚みd=1.0mm以上1.5mm以下、上部電極22の荷重180gとする。また印加電圧は、30秒間隔で200Vづつ印加電圧を上げ、1000Vの印加電圧時に測定された比抵抗を本発明の体積固有抵抗とした。
また、本発明のシリカチタニア複合粒子は、未処理の状態で測定したBET比表面積が、好ましくは20m2/g以上350m2/g以下、さらに好ましくは45m2/g以上330m2/g以下である。20m2/gより小さいと、シリカチタニア複合粒子の粒度分布が広くなり、トナーの流動性を悪化させたり、帯電分布を広くする場合があり、それに伴う画像弊害が生じる場合がある。また、350m2/gより大きい場合、図1に示すような、チタニアをシリカにて内包する構造を得にくい。
〔シリカチタニア複合粒子のBET比表面積の測定方法〕
BET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行う。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明におけるBET比表面積とする。
尚、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、シリカ粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)とシリカ粒子の窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、トナーの表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて上記の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
更に、上記で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、トナーのBET比表面積S(m2・g-1)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.5gのシリカ粒子を入れる。
シリカチタニア複合粒子を入れた前記試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、シリカ粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差からシリカ粒子の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内のシリカ粒子が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、シリカチタニア複合粒子が入った前記の試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、前記装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してシリカ粒子に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより前記した吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、前記したようにシリカチタニア複合粒子のBET比表面積を算出する。
以下、シリカチタニア複合粒子の製造方法について説明する。
本発明のシリカチタニア複合粒子は、公知の製造方法を特に制限されずに用いる事ができる。
例えば、水系媒体中で、チタニア粒子表面に、シリカを付着させ被覆する方法、ドープ法、気相法などがあげられる。
中でも、図1に示した構造を有し、所望のゼータポテンシャルを有するシリカチタニア複合粒子を得る製造方法としては、気相法が好ましい。
シリカチタニア複合粒子の気相法による製造方法は、例えば、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスとを不活性ガスと共に燃焼バーナーの混合室に導入し、水素および空気と混合して所定比率の混合ガスとし、この混合ガスを反応室で1000℃以上3000℃以下の温度で燃焼させてシリカチタニア複合酸化物粒子を生成させ、冷却後、フィルターで捕集する。
上記製造方法において、図1に示した構造を有し、所望のゼータポテンシャルを有するシリカチタニア複合粒子を得るには、四塩化ケイ素ガスからシリカ、四塩化チタンガスからチタニアを生成する反応速度差を考慮し(シリカ生成反応より、チタニア生成反応の方が、反応速度が速い)、燃焼バーナーに導入する四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスの流量比率と共に、燃焼時間や温度、燃焼雰囲気、およびその他の燃焼条件によって複合的に調整することが重要となる。
また、本発明のシリカチタニア複合粒子は、流動性を向上させることを目的に、必要に応じて、疎水化処理前、処理後、あるいは同時に解砕処理しても良い。解砕方法としては、公知の解砕機を用いることができるが、例えば、表面処理されたシリカチタニア複合粒子を、高速衝撃式微粉砕機パルベライザー(ホソカワミクロン社製)で、解砕する方法などがある。
本発明のシリカチタニア複合粒子のトナーへの添加量(外添量)としては、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上2.50質量部以下が好ましく、より好ましくは0.10質量部以上2.00質量部以下である。この範囲内であれば、詳述してきたシリカチタニア複合粒子の効果を、最大限引き出すことができる。
次に本発明のトナー粒子及びトナーについて説明する。
本発明のトナー粒子は、30ppm以上1000ppm以下のチタン元素を含有していることが好ましい。
トナー粒子中にチタン元素を規定量含有すると、本発明のトナー粒子に外添されるシリカチタニア複合粒子との相互作用により、適度にトナー同士で、電荷のやり取りが行なわれ、帯電量が緩和し、チャージアップを抑制するとともに、トナーの帯電立ち上がり性(帯電速度)、帯電分布が良好な状態で、飽和帯電量を高めることが出来る。
トナー粒子中のチタン元素含有量が30ppmより少ない場合、トナー同士の帯電緩和がされにくくなり、帯電分布が広くなると共に、チャージアップしやすくなる。また、トナー粒子中のチタン元素含有量が1000ppmより多い場合、長期放置された際、トナーからの電荷の損失が大きくなり、特に高湿下において、かぶりや転写性が悪化しやすい。
(トナー粒子中のチタン元素含有量の測定)
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119−1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー粒子約4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE−32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
本発明のトナー粒子にチタン元素を含有する方法としては、公知の方法を特に制限されることなく用いることができる。
以下に、チタン元素を規定量を有し、上記効果をより発現することができるトナー粒子の一例を詳述する。
一例のトナーとしては、チタンキレート化合物を触媒として用いられ合成されたポリエステルユニットを有する極性樹脂を含むトナー粒子である。
本発明者らは、外添されるシリカチタニア複合粒子と、チタンキレート触媒を用いたポリエステルユニットを有する極性樹脂を含むトナー粒子において、思わぬ相互作用によるものと推定される効果を見出した。理由は定かではないが、チタンキレート触媒を用いたポリエステルユニットを有する極性樹脂含有トナー粒子に、上記のシリカチタニア複合粒子を外添したトナーは、その吸着状態が高く連続印字した際も、シリカチタニア複合粒子がトナー粒子から遊離する割合が少ないため、長期にわたり安定して高画質を提供することが可能となる結果を得た。その付着状態の高さは、ポリエステル樹脂の帯電速度及び飽和帯電要の高さと、シリカチタニア複合粒子のもつゼータポテンシャルと樹脂中のチタンキレート触媒残存物との相互作用による効果と推定される。
さらには、この作用は極性樹脂がよりトナー表面に存在させることが可能な懸濁重合法や凝集粒子法により得られるトナーの場合、顕著となる。このチタンキレート触媒を用いる極性樹脂により、トナーの流動性、帯電安定性をつかさどるシリカチタニア複合粒子を長期にわたり安定してトナー表面に保持し得ることが可能となる。そのため、極性樹脂とシリカチタニア複合粒子との相互作用による効果を長期にわたり持続して、本発明の目的とする高精細かつ高画質な画像を得ることができる。
さらにチタンキレート触媒を用いたポリエステルユニットを有する極性樹脂の特性を詳述する。
本発明で用いられるチタンキレート化合物は、配位子が、ジオール、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のいずれかであることが好ましい。これらの中でも、配位子が、脂肪族系ジオール、ジカルボン酸、オキシカルボン酸のいずれかであることが特に好ましい。脂肪族系の配位子は、芳香族系の配位子に比べ、触媒活性が強く、反応時間の短縮、温度制御の点で好ましく、樹脂物性としても分子量分布がシャープとなり易い為好ましい。
配位子の具体的は、ジオールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールである。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、オキシカルボン酸として、グルコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸である。
また、本発明のポリエステルユニットを有する極性樹脂を重合する際、該チタンキレート化合物の添加量としては、総ポリエステルユニット成分量に対して0.01質量%以上2.00質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1.00質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以上0.70質量%以下が良い。0.01質量%未満となると、ポリエステル重合時の反応時間が長くなるとともに、分子量分布がブロードなものとなり、トナーとした際に良好な定着性を与えることが困難となる。また2質量%超含有すると、トナーの帯電特性に影響を及ぼすようになり、環境による帯電量の変動が大きくなりやすい。
本発明のトナーに含有される極性樹脂は、少なくともポリエステルユニットを有する樹脂であればよく、全樹脂中に含まれるポリエステルユニット成分は、3質量%以上であることが、本発明の効果を発現させるために好ましい。3質量%に満たない場合、本発明の効果の中で特に良好な帯電特性を得ることが困難となる場合がある。
本発明に用いられる極性樹脂の酸価(mgKOH/g)は好ましくは、3以上35以下、より好ましくは5以上30以下、さらに好ましくは7以上20以下の酸価が良く、本発明の効果をより発揮しえる。
酸価が3未満の場合、トナーの帯電の立ち上がりが遅く、帯電が立ち上がるまでに、カブリや飛散といった画像欠陥を引き起こす場合がある。また、酸価が35より大きい場合、特に低湿環境下でのチャージアップが顕著になり、画像濃度低下や文字の飛び散りといった弊害が発生する場合がある。
また、本発明に用いられる極性樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は、好ましくは5以上40以下、より好ましくは10以上35以下、さらに好ましくは15以上30以下の水酸基価が良く、本発明の効果をより発揮しえる。
水酸基価が5未満の場合、トナーの帯電の立ち上がりが遅く、帯電が立ち上がるまでに、カブリや飛散といった画像欠陥を引き起こす場合がある。また、水酸基価が40より大きい場合、特に高湿環境下での帯電量低下が顕著になり、カブリや飛散といった画像欠陥を引き起こす場合がある。
本発明で用いられる「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を意味し、ポリエステルユニットを構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分を意味する。
本発明のトナーは、これらのポリエステルユニットを構成する成分を原料の一部とし、縮重合された部分を有する樹脂を用いることを特徴とする。
ポリエステルユニット成分である2価以上のアルコールモノマー成分として、具体的には、2価アルコールモノマー成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコールモノマー成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
2価以上のカルボン酸モノマー成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。特に、反応性の高さからイソフタル酸が好ましく用いられる。
また、その他のモノマーとしては、グリセリン、ソルビット、ソルビタン、さらには例えばノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸類等が挙げられる。
それらの中でも、特に、下記一般式(1)で表されるビスフェノール誘導体を2価アルコールモノマー成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸モノマー成分として、これらのポリエステルユニット成分で縮重合した樹脂が良好な帯電特性を有するので好ましい。
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2以上10以下である。)
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることで、本発明の効果を発揮しえる。好ましくは6.0μm以上7.5μm以下が良い。
トナーの重量平均粒径が4.0μm未満であると、チャージアップを引き起こし易くなり、それによるカブリや飛散、画像濃度薄等の弊害を引き起こし易くなる。また、長期画像出力において帯電付与部材を汚染し易くなり安定した高画質画像を供しにくくなる。さらには、感光体上に残る転写残トナーのクリーニングが困難となるばかりでなく、感光体へのトナーの融着等も発生し易くなる。
逆に、9.0μmより大きいと、微小文字等の細線再現性の悪化及び画像飛び散りの悪化を引き起こし、昨今望まれる高画質画像を供し得ない。
本発明のトナーは、示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30乃至200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50乃至120℃の範囲にあることが好ましい。55乃至100℃の範囲にあることがより好ましく、60乃至75℃の範囲にあることがさらに好ましい。
この最大吸熱ピークはトナー中の離型剤種によって決定される。このピーク値が上記範囲にあることで、定着性と現像性を両立しえるものとなりやすい。2種以上の離型剤を用いることも本発明を達成するために好適に用いられる方法であるが、最大となるピーク温度範囲は上記範囲となるのがよい。
最大ピーク温度が50℃未満の場合、トナーの保存性及びカブリや飛散等の現像性を悪化させてしまう場合がある。
逆に最大ピーク温度が120℃より大きい場合、トナーに与える可塑効果が少なく低温定着性が若干劣るものとなりやすい。また、定着器の温調が連続通紙時に低下した場合に、良好な定着体とトナー間に良好に離型剤が介在しえず、転写紙が定着体にまきつく(所謂定着まきつき)現象が起こり易くなる。
また吸熱ピークの半値幅は、15℃以下であることが好ましく、7℃以下であることがより好ましい。半値幅が15℃を超える場合は、離型剤の結晶性が高くないことから、離型剤の硬度も軟らかく、感光体や帯電部材への汚染を促進させてしまうことがある。
本発明のトナーに用いられる離型剤としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロピッシュワックスなどのポリメチレンワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、ケトンワックス、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物などの誘導体が挙げられ、必要に応じて蒸留などしても構わない。
離型剤の分子量としては、重量平均分子量(Mw)が300以上1500以下であることが好ましく、400以上1250以下であることがより好ましい。重量平均分子量が300未満になると離型剤のトナー粒子表面への露出が生じ易く、感光体や帯電ローラー、帯電付与部材を汚染しやすく、カブリや融着等の画像欠陥を生じ易い。逆に、重量平均分子量が1500を超えると、定着巻きつき性の悪化、低温定着性の悪化、OHT透明性の悪化等の弊害が発生しやすい。
また、離型剤の重量平均分子量/数平均分子量の比(Mw/Mn)が1.5以下であると、離型剤のDSC吸熱曲線の極大ピークがよりシャープになり、室温時のトナー粒子の機械的強度が向上し、定着時にはシャープな溶融特性を示すため好ましい。
該離型剤の針入度は15度以下であることが好ましく、8度以下であることが好ましい。針入度が15度を超える場合には、離型剤の吸熱ピークの半値幅が15度を超える場合と同様に、感光体や帯電部材、帯電付与部材を汚染しやすく、カブリや融着等の画像欠陥を生じ易い。
トナー中に含まれる離型剤は総量で、トナー100質量部中に2.5質量部以上25.0質量部以下含有されることが好ましい。4.0質量部以上20質量部以下含有されることがより好ましく、6.0質量部以上18.0質量部以下含有されることがさらに好ましい。
離型剤含有の総量が2.5質量部より小さいと、定着時の離型性効果が十分に発揮できず、定着体が低温になった場合に、転写紙の排紙・積載性を満足させることが困難となるばかりでなく、転写紙の巻きつきが起こりやすくなる。逆に25.0質量部より大きいと、離型剤による帯電付与部材や感光体への汚染が顕著となりカブリや融着といった弊害を生じやすくなる。
本発明のトナーは、数平均分子量(Mn)が2000以上50000以下であることが好ましく、5000以上40000以下であることがより好ましく、1万以上25000万以下であることがさらに好ましい。数平均分子量(Mn)が2000より小さいと、トナー粒子自体の弾性が低すぎ、高温オフセットを生じやすくなる。逆に数平均分子量(Mn)が50000より大きいと、トナー粒子自体の弾性が高くなる傾向にあり、定着時に離型剤を良好に定着面に染み出させることができなくなり、低温時の転写紙の巻きつきが起こりやすくなる。
また、本発明のトナーは、重量平均分子量(Mw)が10000以上1500000以下であることが好ましく、50000以上1000000以下であることがより好ましく、100000以上750000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が10000より小さいと、トナー母体自体の弾性が低すぎ、高温オフセットを生じやすくなる。逆に重量平均分子量(Mw)が1500000より大きいと、トナー母体自体の弾性が高くなる傾向にあり、定着時に離型剤を良好に定着面に染み出させることができなくなり、低温時の転写紙の巻きつきが起こりやすくなる。また、極端に定着グロスが低くなりやすい。
上記物性にコントロールするためには、樹脂あるいは重合トナーを作る場合の反応温度や重合開始剤、架橋剤、連鎖移動剤、離型剤の種及び量で制御できる。
また、本発明のトナーが適度なグロスを達成させるためには、125℃におけるメルトインデックス(MI)値が1以上50以下であることが好ましく、3以上40以下であることがより好ましい。MI値が1より小さいとグロスが低すぎ、50より大きいとギラついた高グロスな画像となりやすい。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は、50℃以上75℃以下であることが好ましく、52℃以上70℃以下であることがより好ましく、54℃以上65℃以下であることがさらに好ましい。Tgが50℃未満であると、トナーの保存性が悪化する。逆に75℃より大きいと低温定着性能が悪化すしやすい。
トナーの結着樹脂としては、ポリスチレン;ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;アクリル樹脂;メタクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は混合して使用される。
結着樹脂の主成分としてはポリエステル樹脂及び/又はスチレンと他のビニルモノマーとの共重合体であるスチレン系共重合体が現像性、定着性の点で好ましい。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンのようなエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンのようなビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテルが挙げられる。これらビニル単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
上記スチレン系共重合体はジビニルベンゼン等の架橋剤で架橋されていることがトナーの定着温度領域を広げ、耐オフセット性を向上させる上で好ましい。
次に本発明に用いられるトナー粒子を製造するための方法について説明する。本発明に用いられるトナー粒子は、公知の粉砕法及び重合法を用いて製造することが可能である。
本発明の水系中で製造されるトナー粒子の中で最も好適に用いられる懸濁重合を例示して、重合法によるトナー粒子の製造方法を説明する。重合性単量体、着色剤および離型剤、更に必要に応じた他の添加剤などをホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた単量体系を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
本発明のトナーを重合方法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等のアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等のメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトンが挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明においては、上記した単官能性重合性単量体を単独で或いは、2種以上組み合わせて、又は、上記した単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等のパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素が挙げられる。
本発明においては、重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として用いられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤は、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用いることができる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体を主着色剤として用いることができ、下記色材を混合させて色味やトナー抵抗を調整することも良好な形態の一つである。
イエロー着色剤としては、顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199等が好適に用いられる。染料系としては、例えば、C.I.solvent Yellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperse Yellow42、64、201、211などが挙げられる。このようなイエロー着色剤をトナーに含有させることにより、イエロートナーを得ることができる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。このようなマゼンタ着色剤をトナーに含有させることにより、マゼンタトナーを得ることができる。
シアン着色剤としては、フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用される。このようなシアン着色剤をトナーに含有させることにより、シアントナーを得ることができる。
上記ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーを組み合わせてフルカラー画像を形成するフルカラートナーを得ることができる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHT透明性、トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下を添加して用いられる。
本発明のトナーには、荷電制御剤を用いることが、トナーの帯電性を安定に保つために好ましい形態となる。トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記物質がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
中でも、本発明の効果を十分に発揮するためには、含金属サリチル酸系化合物が良く、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが良い。最も好ましい制御剤としては、サリチル酸アルミニウム化合物が好ましい。
荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当たり0.01質量部以上20.00質量部以下、より好ましくは0.50質量部以上10.00質量部以下使用するのが良い。
本発明において、部材汚染を軽減させるために、滑剤を用いることも、好適な形態をとる。滑剤としては、フッ素系樹脂粉末(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)などが挙げられる。上記のうち、ポリフッ化ビニリデンが好ましく用いられる。
本発明のトナーには、帯電安定性、現像性、流動性、転写性、部材付着抑制、耐久性をより向上するために、シリカチタニア複合粒子以外に、必要に応じて無機微粒子や樹脂粒子の外添をヘンシェルミキサー等の混合機により充分混合し、本発明に用いられるトナーを得ることができる。
上記無機微粒子のうちの荷電制御性粒子としては、金属酸化物(酸化錫、チタニア、酸化亜鉛、シリカ、アルミナなど)・カーボンブラックなどが挙げられる。
研磨剤としては、金属酸化物(チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムなど)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)が挙げられる。
流動性付与剤としては、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニアなど)、フッ化カーボンなどが挙げられる。それぞれ、疎水化処理を行ったものがより好ましい。特に前述したようにシリカ、アルミナ、チタニアはトナーの流動性及び帯電性を良好に維持する点、かつ本発明のトナー粒子への吸着性能の高さといった点で好ましく、2種以上を併用することも良好な形態である。
本発明におけるトナーに添加されるこれら無機微粒子とシリカチタニア複合粒子の総添加量は、トナー粒子100質量部に対し0.5質量部以上4.5質量部以下が好ましく、0.8質量部以上3.5質量部以下がより好ましい。無機微粒子の総添加量が0.5質量部未満であると,トナーの流動性が不十分となり、帯電性の低下に伴うカブリ悪化、トナー飛散を招き本発明の効果を充分に発揮し得ない。逆に、総添加量が4.5質量部超であると、トナー飛散、定着性の悪化、感光体融着、帯電付与部材汚染でのトナー帯電量低下等の弊害が生じる。
上記無機微粒子として好ましく添加するチタニア、シリカ、アルミナはBET法で測定した窒素吸着による比表面積が20m2/g以上400m2/g以下、より好ましくは35m2/g以上300m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以上230m2/g以下の範囲内のものが良い。20m2/g未満では、トナー粒子の十分な流動性を確保することが困難となる。逆に400m2/gより大きいと、連続通紙時においてトナー上の無機微粒子の存在状態の変化割合が大きくなり、トナー粒子の凝集度が増大する。
上記流動性付与剤としての無機微粒子は、疎水性、帯電性、さらには転写性を向上させる目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤を単独で或いは併せて用いることによって、処理されていることが好ましい。
他の無機微粒子としては、ケーキング防止剤;酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤;現像性向上剤が挙げられる。これらの添加剤の添加量としては、トナー100質量部に対して0.01質量部以上2.50質量部以下が好ましく、より好ましくは0.10質量部以上2.00質量部以下である。
また、トナーの形状は球形に近いことが好ましく、具体的にはトナーの形状係数は、SF−1が100以上150以下、より好ましくは100以上140以下、さらに好ましくは100以上130以下の範囲である。また、SF−2が100以上140以下、より好ましくは100以上130以下、さらに好ましくは100以上120以下の範囲内である。
トナーの形状係数SF−1が150を超える場合またはSF−2が140を超える場合には、トナーの転写効率の低下、トナーの再転写の増大、潜像担持体表面の磨耗量の増大が生じ易くなり好ましくない。
本発明のトナーはいかなるシステムにも用いることができ、例えば、高速システム用トナー、オイルレス定着用トナー、クリーナーシステム用トナー、長期使用によって劣化した現像器内のキャリアを順次回収し、フレッシュなキャリアを補給していく現像方式用トナー等、公知の一成分現像方式、ニ成分現像方式を用いた画像形成方法に適用可能である。特に、本発明のトナーは、非常に転写性が良く、長期にわたり安定した画像を得ることができることから、中間転写体を有する画像形成方法、クリーナーレスシステムを有する画像形成方法に対して好適に用いることができる。
本発明のトナーを二成分現像剤で用いる場合には、フルカラー、モノクロ問わず、いかなるシステムでも用いることができる。例えば、オートリフレッシュ画像形成方法用二成分系現像剤、高速システム画像形成方法用二成分系現像剤、オイルレス定着画像形成方法用二成分系現像剤、クリーナーレス画像形成方法用二成分系現像剤、TACT画像形成方法用二成分系現像剤、補給用現像剤を空気流を用いて現像装置に供給する画像形成方法用二成分系現像剤等、公知の現像方法に適用可能である。
次に本発明のトナーを二成分系現像剤として用いた際のキャリアについて説明をする。
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。磁性キャリアとしては、磁性体粒子そのもの、磁性体粒子を樹脂で被覆した被覆キャリア、磁性体粒子を樹脂粒子中に分散させた磁性体分散型樹脂キャリア等の公知の磁性キャリアを用いることができ、磁性体粒子としては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。
上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁せしめて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着せしめる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独或いは複数で用いる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.1質量%以上30.0質量%以下(好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下)が好ましい。これら磁性キャリアコア粒子の体積基準の50%粒径(D50)は10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上70μm以下を有することが好ましい。
本発明の体積基準の50%粒径は、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所株式会社製)により測定した。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
<ポリエステル樹脂の製造例>
《ポリエステル樹脂1の製造例》
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.75molポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.0mol、イソフタル酸6.1mol、無水トリメット酸0.15molを測りとった。これら酸・アルコール100質量部と、0.30質量部のシュウ酸チタニルカリウムをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計,撹拌棒,コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。窒素雰囲気下で、220℃で反応させ、酸価が13になった時点で加熱を停止し徐々に冷却することで、ポリエステルユニット成分を有する樹脂1を得た。この樹脂は、水酸基価20、Mw1.0万、Mn4400、Tg:67.1℃であった。
《ポリエステル樹脂2の製造例》
温度計,撹拌棒,コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においたガラス製4リットルの4つ口フラスコに、テレフタル酸65.3質量部、エチレングリコール18質量部を混合し、温度100℃で溶解し、減圧、脱水を行った。その後50℃に冷却後、窒素雰囲気下で、チタンテトラメトキシド17.2質量部を加えた。その後、減圧させ、反応生成物であるメタノールを留出し、芳香族カルボン酸チタン化合物Aを得た。
次に、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.75mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.0mol、イソフタル酸6.1mol、無水トリメット酸0.15molを測りとった。これら酸・アルコール100質量部と、3.00質量部の芳香族カルボン酸チタン化合物Aをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計,撹拌棒,コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。窒素雰囲気下で、220℃で反応させ、酸価が13になった時点で加熱を停止し徐々に冷却することで、ポリエステルユニット成分を有するポリエステル樹脂2を得た。この樹脂は、水酸基価20、Mw7,650、Mn3,500、Tg:68.5℃であった。
<シリカチタニア複合粒子の製造例>
《シリカチタニア複合粒子1の製造例》
四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスの比率が、70.0:30.0となるような流量比率で、微細液滴状態となる様に、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスそれぞれのノズルを調整し、火炎温度1500℃の酸素−水素炎中に噴霧して導入することで高温加水分解し、シリカチタニア複合粒子を生成させ、冷却後、フィルターで捕集した。
この際、四塩化ケイ素ガスからシリカ、四塩化チタンガスからチタニアを生成する反応速度差を考慮し、燃焼バーナーに導入する上記四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスの流量比率と共に、燃焼時間、燃焼雰囲気、およびぞれぞれのガス導入時のノズル位置、その他の燃焼条件によって複合的に調整することで、図1の構造及び表1のゼータ電位等の物性となった。
上記シリカチタニア複合粒子100質量部を撹拌機に入れ、撹拌しながらジメチルシリコーンオイル(商品名:KF96−100cs:信越化学工業(株)社製)18質量部を、2流体ノズルを用いて噴霧し、シリカチタニア複合粒子に付着させた。
更に撹拌処理を60分間継続し、シリコーンオイルで表面処理されたシリカチタニア複合粒子No.1を得た。得られたシリカチタニア複合粒子1の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子2、3、4、5、6、7の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスの比率を、それぞれ65.0:35.0、55.0:45.0、75.0:25.0、85.0:15.0、50.0:50.0、90.0:10.0に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子2、3、4、5、6、7を得た。得られたシリカチタニア複合粒子2、3、4、5、6、7のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子8、9、10の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスのぞれぞれのガス導入時のノズル位置を、表1のゼータポテンシャルになるように変更し、シリカチタニア複合粒子8、9、10を得た。得られたシリカチタニア複合粒子のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子11の製造例》
“シリカチタニア複合粒子5”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスのぞれぞれのガス導入時のノズル位置を、表1のゼータポテンシャルになるように変更し、シリカチタニア複合粒子11を得た。得られたシリカチタニア複合粒子11のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子12の製造例》
“シリカチタニア複合粒子3”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスのぞれぞれのガス導入時のノズル位置及び火炎温度を1700℃に変更した以外は同様にし、シリカチタニア複合粒子12を得た。得られたシリカチタニア複合粒子12のそれぞれの物性を表1に示す。表1が示すように、シリカチタニア複合粒子3に比べて、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定した体積固有抵抗が小さくなった。シリカ単独粒子およびチタニア単独粒子の存在割合を測定したところ、シリカチタニア複合粒子3は3.5頻度%であったのに対して、シリカチタニア複合粒子12は、8.5頻度%であったため、ゼータポテンシャルが、シリカチタニア複合粒子3に比べ、シリカチタニア複合粒子12は低くなったと推定される。
《シリカチタニア複合粒子13の製造例》
“シリカチタニア複合粒子5”の製造例において、火炎温度を1050℃になるように変更する以外は、シリカチタニア複合粒子5と同様にし、シリカチタニア複合粒子13を得た。得られたシリカチタニア複合粒子13のそれぞれの物性を表1に示す。表1が示すように、シリカチタニア複合粒子5に比べて、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定した体積固有抵抗が大きくなった。シリカ頻度およびチタニア単独粒子の存在割合を測定したところ、シリカチタニア複合粒子3は3.5頻度%であったのに対して、シリカチタニア複合粒子13は、1.5頻度%であったため、体積固有抵抗が大きくなったと推定される。
《シリカチタニア複合粒子14、15の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、ジメチルシリコーンオイルをヘキサメチルジシラザンに変更し、その添加量を、それぞれ15質量部、18質量部に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子14、15を得た。得られたシリカチタニア複合粒子14、15のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子16の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスの比率を、それそれ60.0:40.0にし、ジメチルシリコーンオイルの添加量を、15質量部に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子167を得た。得られたシリカチタニア複合粒子16のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子17の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例においてジメチルシリコーンオイルをアミノプロピルトリエトキシシランに変更し、添加量も10質量部に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子17を得た。得られたシリカチタニア複合粒子17のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子18の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、ヘキサメチルジシラザン10質量部で表面処理した後、ジメチルシリコーンオイルで表面処理し、その添加量を15質量部に変更しすること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子18を得た。得られたシリカチタニア複合粒子18の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子19の製造例》
“シリカチタニア複合粒子12”の製造例において、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスのぞれぞれのガス導入時のノズル位置及び火炎温度を1600℃に変更し、ジメチルシリコーンオイルの添加量を10質量部に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子12”と同様にして、シリカチタニア複合粒子19を得た。得られたシリカチタニア複合粒子19の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子20の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、ヘキサメチルジシラザン5質量部で表面処理した後、ジメチルシリコーンオイルで表面処理し、その添加量を5質量部に変更しすること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子20を得た。得られたシリカチタニア複合粒子20の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子21の製造例》
“シリカチタニア複合粒子20”の製造例において、ヘキサメチルジシラザン5質量部で表面処理した後、ジメチルシリコーンオイルで表面処理し、その添加量を2.5質量部に変更しすること以外は、“シリカチタニア複合粒子20”と同様にして、シリカチタニア複合粒子21を得た。得られたシリカチタニア複合粒子21の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子22,23の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、ジメチルシリコーンオイルの添加量を、それぞれ23質量部、27質量部に変更すること以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子22,23を得た。得られたシリカチタニア複合粒子22,23のそれぞれの物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子24の製造例》
四塩化ケイ素ガス70.0質量部と四塩化チタンガス30.0質量部とを室温で十分混合する。この混合物を微細液滴状態となる様に、酸素−水素炎中に噴霧して導入し、火炎温度1500℃で高温加水分解し、シリカチタニア複合粒子を生成させ、冷却後、フィルターで捕集した。
上記シリカチタニア複合粒子100質量部を撹拌機に入れ、撹拌しながらヘキサメチルジシラザン(HMDS)5質量部を、2流体ノズルを用いて噴霧し、シリカチタニア複合粒子に付着させた。
更に撹拌処理を60分間継続し、HMDSで表面処理されたシリカチタニア複合粒子24を得た。得られたシリカチタニア複合粒子24の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子25の製造例》
ルチル結晶構造をもつチタニアゾルをシードとして2.5質量%添加して加水分解を行って得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、4mol/l水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行った。その後、6mol/l塩酸にてpH5.5まで中和し濾過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加え酸化チタンとして100g/Lのスラリーした後、6mol/l塩酸を加えpH1.2とし解膠処理を行った。解膠終了後、珪酸ナトリウムをSiO2として酸化チタン55質量部に対し45質量部添加して処理した。その後、4N水酸化ナトリウムにてpH6.5まで中和し、濾過、洗浄、乾燥を行った。乾燥メタチタン酸を300℃に脱水焼成してシリカチタニア複合粒子を得た。上記シリカチタニア複合粒子100質量部を撹拌機に入れ、撹拌しながらジメチルシリコーンオイル(商品名:KF96−100cs)18質量部を、2流体ノズルを用いて噴霧し、シリカチタニア複合粒子に付着させた。
更に撹拌処理を60分間継続し、シリコーンオイルで表面処理されたシリカチタニア複合粒子25を得た。得られたシリカチタニア複合粒子25の物性を表1に示す。
《シリカチタニア複合粒子26の製造例》
“シリカチタニア複合粒子1”の製造例において、ジメチルシリコーンオイルにて疎水化処理しなかったこと以外は、“シリカチタニア複合粒子1”と同様にして、シリカチタニア複合粒子26を得た。得られたシリカチタニア複合粒子26のそれぞれの物性を表1に示す。
《トナー粒子1の製造例》
スチレン単量体100質量部に対して、C.I.Pigment Blue15:3を16.5質量部、ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物〔ボントロンE88(オリエント化学工業社製)〕を3.0質量部用意した。これらを、アトライター(三井鉱山社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液1を調製した。
一方、イオン交換水710質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
・マスターバッチ分散液1 40質量部
・スチレン単量体 52質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 19質量部
・低分子量ポリスチレン 15質量部
(Mw=3,000、Mn=1,050、Tg=55℃)
・炭化水素系ワックス 9質量部
(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピーク=78℃、Mw=750)
・ポリエステル樹脂1 12質量部
上記材料を63℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、5,000rpmにて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液7.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて12,000rpmで10分間撹拌し重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。更に昇温速度40℃/hで85℃に昇温し4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下でトナー粒子の残存モノマーを留去した。水系媒体を冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥し、シアン色のトナー粒子1を得た。トナー粒子1のTi元素含有量は、120ppmであった。
《トナー粒子2の製造例》
“トナー粒子1の製造例”において、ポリエステル樹脂1の添加量を3質量部に変更した以外は、同様に行い、本発明のトナー粒子2を得た。トナー粒子2のTi元素含有量は、30ppmであった。
《トナー粒子3の製造例》
“トナー粒子1の製造例”において、ポリエステル樹脂1の添加量を1.5質量部に変更した以外は、同様に行い、本発明のトナー粒子3を得た。トナー粒子3のTi元素含有量は、15ppmであった。
《トナー粒子4、5の製造例》
“トナー粒子1の製造例”において、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2に変更し、その添加量をそれぞれ10.5質量部、12.6質量部に変更した以外は、同様に行い、本発明のトナー粒子4、5を得た。トナー粒子4、5のTi元素含有量は、それぞれ1000ppm、1200ppmであった。
〔実施例1〕
トナー粒子1:100質量部と、シリカチタニア複合粒子1:1.0質量部、数平均一次粒子径が0.4μmのステアリン酸亜鉛:0.3質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、本発明のトナー1を得た。
《画像評価》
図1の構成及び仕様になるようにキヤノン製プリンターLBP5300を改造(トナー規制部材として、厚み10μmのSUSブレードを用い、このトナー規制部材にブレードバイアスを現像バイアスに対して−200Vのブレードバイアスを印加できるように改造したもの)し、各環境下にて画像評価を行った。評価は、トナーとして上記トナー1を175g充填したものをシアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着し、画像評価を実施した。
画像評価は、15℃/10%RH(低温低湿環境、以下LL環境と略すことがある)、32.5℃/80%RH(高温高湿環境、以下HH環境と略すことがある)の各環境で行った。印字率が1%の画像を1枚出力する動作を枚繰り返し、出力枚数が200枚に到達する毎に各環境で1週間放置し、その後200枚出力するのを繰り返し、最終的には4000枚の画像出力を行い、以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。結果がしめすとおり、全ての評価において、良好な結果が得られた。
(1)かぶりの評価
各環境にて、1週間放置前後の、1枚目に白地部分を有する画像を出力することを繰り返した。その後、すべての白地部分を有する画像について、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度(反射率Ds(%))と転写紙の白色度(平均反射率Dr(%))の差から、かぶり濃度(%)(=Dr(%)−Ds(%))を算出し、かぶりを評価した。各白地部分を有する画像にて、200枚耐久直後に出力した白地部分を有する画像のかぶりを「直後かぶり」、放置後1枚目に出力した白地部分を有する画像のかぶりを「放置かぶり」とした。かぶりは、評価毎において、最悪であったものについて、以下のランク付けを行なった。
フィルターは、アンバーライトフィルターを用いた。A,B及びCは使用上問題とならないレベルであるが、Dは使用上問題となるレベルである。
A:0.3%未満
B:0.3%以上0.8%未満
C:0.8%以上1.3%未満
D:1.3%以上2.0%未満
〔画像濃度安定性〕
画像濃度はカラー反射濃度計(例えばX−RITE 404Amanufactured by X−Rite Co.)で測定する。ベタ画像を各環境にて、放置前後に、1枚づつ出力し、各画像間の濃度の差を測定し、最も濃度差が大きいものを下記評価基準に基づいて示した。
A:0.2以下
B:0.2を超え0.3以下
C:0.3を超える
(画像均一性・画質)
1)画出し試験において、各環境にて、放置前後に、オリジナル写真画像、単色ベタ画像及びハーフトーン画像を1枚づつ出力し、その画像均一性・画質を目視にて観察し、転写性による画像弊害を確認した。
A:非常に良好(均一画像で画像ムラが確認できないレベル)
B:良好 (若干の画像ムラが確認できるが、実用上全く問題ないレベル)
C:実用可 (画像ムラが確認できるが、実用上可能なレベル)
D:実用不可 (画像ムラが著しく、実用的に困難なレベル)
〔実施例2、3〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子2、3に変更した以外は同様に行い、トナー2、3を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー3において、HH環境における放置かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子のチタニア含有量が若干多いために、長期放置された際の帯電の維持が、わずかに劣るためであると推定される。
〔実施例4、5〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子4、5に変更した以外は同様に行い、トナー4,5を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー5において、画像濃度安定性等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子のシリカの含有量が若干多いために、連続して使用した際に、チャージアップが、わずかに生じたためであると推定される。
〔比較例1、2〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子6、7に変更した以外は同様に行い、トナー6、7を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー6は、HH環境における放置かぶり等が悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子のチタニア含有量が多いために、長期放置された際の帯電の維持が、悪いことによる影響である。またトナー7においては、画像濃度安定性等が悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子のシリカの含有量が若干多いために、連続して使用した際に、チャージアップが生じたためであると推定される。
〔実施例6、7〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子8、9に変更した以外は同様に行い、トナー8、9を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー8において、HH環境下での放置かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定したゼータポテンシャルが若干大きいために、長期放置された際の帯電の維持が、わずかに劣るためであると推定される。またトナー9においては、画像濃度安定性等がわずかに悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定したゼータポテンシャルが若干小さいために、帯電量の変動が耐久を通じて若干生じたためであると推定される。
〔比較例3、4〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子10、11に変更した以外は同様に行い、トナー10、11を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー10において、HH環境下での放置かぶり等が悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定したゼータポテンシャルが大きいために、長期放置された際の帯電の維持が、悪化したためであると推定される。
またトナー11においては、画像濃度安定性等が悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定したゼータポテンシャルが小さいために、帯電量の変動が耐久を通じて大きかったためであると推定される。
〔実施例8、9〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子12、13に変更した以外は同様に行い、トナー12、13を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー12において、HH環境下での放置かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定した体積固有抵抗が若干小さいために、長期放置された際の帯電の維持が、わずかに劣るためであると推定される。
またトナー13においては、画像濃度安定性等がわずかに悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の未処理の状態で測定した体積固有抵抗が若干大きいために、帯電量の変動が耐久を通じて若干生じたためであると推定される。
〔実施例10、11〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子14、15に変更した以外は同様に行い、トナー14、15を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー14、15において、HH環境下での直後かぶり等が疎水化処理された状態で測定したゼータポテンシャルが小さくなるに従って、若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化処理された状態で測定したゼータポテンシャルが小さくなるに従い、シリカチタニア複合粒子の負帯電性が大きくなり、シリカチタニア複合粒子同士が若干凝集する傾向にあるため、トナーの流動性がわずかに悪化しためであると推定される。
〔実施例12、13〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子16、17に変更した以外は同様に行い、トナー16、17を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー16、17において、疎水化処理された状態で測定したゼータポテンシャルが大きくなるに従い、HH環境下での直後かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化処理された状態で測定したゼータポテンシャルが若干大きいために、シリカチタニア複合粒子のトナーへの帯電付与能が、若干悪化したためであると推定される。
〔実施例14、15〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子18、19に変更した以外は同様に行い、トナー18、19を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー18において、低湿下での画像均一性・画質等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化処理された状態で測定した抵抗が若干大きいために、低湿下での帯電性が高くなり、転写性がわずかに悪化したためであると推定される。
またトナー19においては、高湿下での画像均一性・画質等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化処理された状態で測定した体積抵抗が若干広くなったために、転写性がわずかに悪化したためであると推定される。
〔実施例16、17〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子20、21に変更した以外は同様に行い、トナー20、21を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー20、21において、疎水化度が小さくなるに従い、HH環境下での直後・放置かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化度が小さくなるに従い、シリカチタニア複合粒子のトナーへの帯電付与能が、若干悪化したためであると推定される。
〔実施例18、19〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子22、23に変更した以外は同様に行い、トナー22、23を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー22、23において、疎水化度が大きくなるに従い、両環境下での直後・放置かぶり等が若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子の疎水化度が大きくするに従い、疎水化処理剤の添加量も多くなるため、シリカチタニア複合粒子同士が凝集しやすくなり、トナーの流動性が、わずかに悪化したためであると推定される。
〔実施例20、21〕
実施例1において、トナー粒子1をトナー粒子2,3に変更した以外は同様に行い、トナー24、25を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー25において、LL下での画像均一性・画質等が若干悪化した。これは、トナー粒子のTi元素含有量が若干少ないために、トナー同士の帯電緩和が若干悪化したためであると推定される。
〔実施例22、23〕
実施例1において、トナー粒子1をトナー粒子4、5に変更した以外は同様に行い、トナー26、27を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー27において、HH下での放置かぶり等が若干悪化した。これは、トナー粒子のTi元素含有量が若干多いために、長期放置された際、トナーからの電荷の若干損失が大きいためであると推定される。
〔比較例5〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子24に変更した以外は同様に行い、トナー28を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー28において、すべての項目について悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子26をTEMにて観察したところ、図1のような構造を有しておらず、シリカとチタニアがランダムにまざっているような状態であった。このことからチタニアが表面に多く存在した。また、シリカ単独粒子及びチタニア単独粒子が12頻度%存在した。そのため、シリカチタニア複合粒子であるにもかかわらず、チタニア粒子と同様な特性を有することとなり、例えば長期放置された際の帯電の維持が、悪化することにより、かぶりが悪化するなどの弊害が生じたためであると推定される。
〔実施例24〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子25に変更した以外は同様に行い、トナー29を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー29において、すべての項目について若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子25は、チタニアの周りにシリカが均一に被覆していないところが、若干存在し、またシリカ単独粒子及びチタニア単独粒子が8.5頻度%存在した。そのため、シリカチタニア複合粒子であるにもかかわらず、チタニア粒子と同様な特性が若干発現し、例えば長期放置された際の帯電の維持が、わずかに悪化することにより、かぶり等が悪化するなどの弊害が若干生じたためであると推定される。
〔実施例25〕
実施例1において、シリカチタニア複合粒子1をシリカチタニア複合粒子26に変更した以外は同様に行い、トナー30を得た。得られたトナーを用いて、実施例1と同じ評価を行なった。評価結果を表2に示す。結果が示すとおり、トナー30において、すべての項目について若干悪化した。これは、シリカチタニア複合粒子26は、疎水化処理していないため、トナーへの流動性付与性が若干弱く、また吸湿により帯電付与能が若干悪化したためであると推定される。