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JP2011115758A - 酸性触媒の製造方法 - Google Patents

酸性触媒の製造方法 Download PDF

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JP2011115758A JP2009277749A JP2009277749A JP2011115758A JP 2011115758 A JP2011115758 A JP 2011115758A JP 2009277749 A JP2009277749 A JP 2009277749A JP 2009277749 A JP2009277749 A JP 2009277749A JP 2011115758 A JP2011115758 A JP 2011115758A
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Makiko Tachikura
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Abstract

【課題】チオール基含有化合物で変性したスルホン酸型陽イオン交換樹脂よりなるビスフェノール化合物製造用の酸性触媒の製造方法であって、変性に用いたチオール基含有化合物の保護基であるアシル基由来の不純物のビスフェノール化合物生成反応系への混入の問題を解決することができる酸性触媒を、煩雑な操作や特別な装置を要することなく工業的に有利に製造する。
【解決手段】チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を用いてスルホン酸型陽イオン交換樹脂を変性し、該変性時および/又は変性後に該チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分を加水分解する。この加水分解を40℃以上100℃以下の温度で行うことにより、短時間で効率的に加水分解を行うことができ、ビスフェノール化合物生成反応系内での保護基であるアシル基部分の加水分解に起因するカルボン酸成分およびそれによる不純物成分の混入や装置腐食の問題のない酸性触媒を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ビスフェノール化合物を製造する際に用いられる酸性触媒の製造方法に関する。詳しくは、スルホン酸基の一部をチオール基含有化合物で変性した構造を有するスルホン酸型陽イオン交換樹脂である酸性触媒を工業的に有利に製造する方法に関する。
ビスフェノール化合物は、一般に、酸性触媒の存在下、芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール化合物)とカルボニル化合物との縮合反応により製造される。酸性触媒としては、塩酸や硫酸のような鉱酸、ヘテロポリ酸のような固体酸なども使用されているが、触媒による装置の腐食や反応活性、触媒のコストなどの点から、工業的にはスルホン酸基のような酸性基を有する陽イオン交換樹脂が汎用されている。また、転化率や選択率等の向上を目的として、スルホン酸型陽イオン交換樹脂にチオール基或いは保護されたチオール基を含有する化合物(以下「チオール化合物」と言うことがある)を反応させて、スルホン酸基の一部をチオール化合物で変性させたチオール化合物変性スルホン酸型陽イオン交換樹脂を使用する方法も知られている(例えば特許文献1、2)。
特許文献1には、チオール基がエステル基等で保護されたピリジルアルカンチオール化合物を用いることにより、チオール基の酸化を抑えることができることが示されており、溶融フェノール中で、強酸性陽イオン交換樹脂のスルホン酸基の一部を、チオール基が保護されたピリジルアルカンチオール化合物で変性させた触媒をそのまま用いてビスフェノールAを製造した例が示されている。
しかし、この方法では、反応中にチオール基の保護に使用した保護基が分解することにより、カルボン酸等の当該保護基由来の不純物が反応生成物中に含まれることとなり、後述のような問題を生じる。
特許文献2には、酸性イオン交換体とエマルジョン状態のピリジルアルカンチオール化合物とを接触させて変性反応を行うと、フェノールとアセトンとの縮合反応によりビスフェノールAを製造する際の、アセトン転化率が向上することが示されており、室温にて、水中で陽イオン交換体の一部をエマルジョン状態で変性させた触媒を用いてビスフェノールAを製造した例が示されている。
例えば、この特許文献2の実施例2では、変性剤として4−ピリジルチオアセテートが使用され、室温で変性が行われ、更に変性後に変性に使用した水(40g)の10倍以上の水(100g×5回)を使用するという煩雑な洗浄操作が行なわれている。
チオール基含有化合物のチオール基は、合成時および変性剤としての使用時の条件下で、容易に酸化されてジスルフィドとなるが、特許文献1,2に記載されるように、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護することにより、チオール基含有化合物のチオール基の酸化による劣化を防止することができ、また、チオール基含有化合物特有の臭気を防止することができるため、陽イオン交換樹脂の変性時のチオール基の導入効率およびその作業環境の改善を図ることができる。
変性に用いたチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物は、ビスフェノール化合物の生成反応系内で容易に加水分解して、ビスフェノール化合物製造時の助触媒として有効なチオール基を再生するが、一方で、この加水分解時に切断されたエステル結合からカルボン酸が副生する。
このため、特許文献1に記載される方法のように、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物で変性した陽イオン交換樹脂をそのままビスフェノール化合物の製造に用いると、反応系内で加水分解によりカルボン酸が遊離し、この酸成分が装置腐食の原因となる上に、遊離したカルボン酸、および遊離したカルボン酸と原料との反応で生成したカルボン酸フェニル等のカルボン酸エステルが不純物となってビスフェノール化合物生成系に混入することとなる。また、このカルボン酸が、目的物であるビスフェノール化合物の分解を促進したり、望ましくない異性体(2,4’−ビスフェノール化合物等)の生成を促進し、製品品質悪化の要因となる。
ビスフェノール化合物を原料として製造されているポリカーボネート樹脂の重要な用途の一つは光学用途であるが、この用途には特に着色などの無い色相の優れたものが要求されている。従って、ポリカーボネート樹脂の製造に際して上記の要求に応ずるためには、原料のビスフェノール化合物は着色物質等の不純物を含まない、高純度のものでなければならないが、特許文献1のように、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物で変性した陽イオン交換樹脂をそのままビスフェノール化合物の製造用触媒として用いる方法では、このような要求品質を満たすことができない。
また、特許文献2に記載される方法において、加水分解により副生するカルボン酸をビスフェノール化合物の生成系内に持ち込まないようにするためには、大量の水を用いた複数回の煩雑な洗浄操作が必要となり、工業的には現実的ではない。また、大量の水を使用しない場合は特許文献1に記載の方法と同様に、加水分解で副生するカルボン酸がビスフェノール化合物の生成反応系内に持ち込まれ、上記の特許文献1における場合と同様の問題を生じる。
反応系内に持ち込まれたカルボン酸を除去する方法としては、例えば特許文献3には、吸着剤を用いた遊離酸除去工程を行う方法が提案されているが、遊離酸除去のための装置を増設する必要があり、既存の設備には適用し難い。
USP6,534,686号特許明細書 特開2005−239872号公報 特開2001−316313号公報
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであり、チオール基含有化合物で変性したスルホン酸型陽イオン交換樹脂よりなるビスフェノール化合物製造用の酸性触媒の製造方法であって、変性に用いたチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物由来の不純物のビスフェノール化合物生成反応系への混入の問題を解決することができる酸性触媒を、煩雑な操作や特別な装置を要することなく工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、変性に用いたチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分の加水分解を、室温よりも高い温度で行うことにより、触媒性能を維持したまま短時間で効率的に加水分解を行うことができ、チオール基の酸化による劣化や臭気の問題点を解決すると共に、ビスフェノール化合物生成反応系内でのチオエステル部分の加水分解によるカルボン酸成分の混入の問題のない酸性触媒を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明(請求項1)の酸性触媒の製造方法は、フェノール化合物とカルボニル化合物とを反応させてビスフェノール化合物を製造する際に用いられる酸性触媒の製造方法であって、該酸性触媒がスルホン酸基の一部をチオール基含有化合物で変性した構造を有するスルホン酸型陽イオン交換樹脂であり、該酸性触媒の製造方法がチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を用いてスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性を行う変性工程と、該変性時および/又は変性後に該チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分を加水分解する加水分解工程とを有し、該加水分解工程を40℃以上100℃以下の温度で行うことを特徴とする。
請求項2の酸性触媒の製造方法は、請求項1に記載の酸性触媒の製造方法において、チオール基含有化合物が、ピリジルアルカンチオール化合物類であることを特徴とする。
請求項3の酸性触媒の製造方法は、請求項2に記載の酸性触媒の製造方法において、ピリジルアルカンチオール化合物類が、ピリジルエタンチオール化合物類であることを特徴とする。
請求項4の酸性触媒の製造方法は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸性触媒の製造方法において、加水分解の転化率が60%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、変性に用いたチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分の加水分解を、40〜100℃という、室温よりも高い温度で行うことにより、短時間で効率的に加水分解を行うことが可能となり、チオール基の酸化による劣化や臭気の問題を解決すると共に、十分に加水分解がなされ、ビスフェノール化合物生成反応系内でのチオエステル部分の加水分解によるカルボン酸成分の混入量が少ない酸性触媒を製造することができる。
本発明の酸性触媒の製造方法は、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を変性剤として使用し、更に変性時又は変性後の加水分解時の温度を従来法よりも高くすることによって、特別な装置や煩雑な操作を必要とすることなく、容易に実施することができる。
なお、変性剤として、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を用いることは、変性剤の保管時及び変性時のチオール基の酸化を防止することができ、また、チオール基含有化合物特有の臭気を防止することができるため、スルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性時のチオール基の導入効率およびその作業環境の面で優れている。
本発明により製造された酸性触媒は、ビスフェノール化合物生成反応系内での加水分解によるカルボン酸成分の生成量が少ないため、この酸性触媒によれば、ビスフェノール化合物の生成反応系内で生成した酸成分による装置腐食や製品品質の悪化、即ち、当該カルボン酸や、カルボン酸と原料であるフェノール化合物との反応で生成したカルボン酸フェニル等のカルボン酸エステル等の不純物の混入、カルボン酸の作用による目的物であるビスフェノール化合物の分解や2,4’−ビスフェノール化合物に代表される異性体の生成による目的物純度の低下の問題がなく、高品質のビスフェノール化合物を効率的に製造することが可能となる。
実施例2〜13における変性温度および変性時間と2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解転化率との関係を示すグラフである。
以下に本発明の酸性触媒の製造方法の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されるものではない。
本発明の酸性触媒の製造方法は、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を用いてスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性を行い、該変性時および/又は変性後に該チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分を、40℃以上100℃以下の温度で加水分解することを特徴とする。
まず、変性に用いるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物について説明する。
このチオール基含有化合物は特に限定されるものではなく、後述の陽イオン交換樹脂のスルホン酸基とイオン結合を形成する化合物であればよい。このようなチオール化合物としては、例えば2−アミノエタンチオール、3−アミノプロパンチオール、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロパンチオール等のアミノアルカンチオール類;3−ピリジルメタンチオール、2−(2−ピリジル)エタンチオール、2−(3−ピリジル)エタンチオール、2−(4−ピリジル)エタンチオール、2,6−ジ−(2−メルカプトエチル)ピリジン、2,4−ジ−(2−メルカプトエチル)ピリジン等のピリジルアルカンチオール類;等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、これらのチオール基含有化合物は精製された高純度のものを用いるのが好ましいが、変性後の強酸性陽イオン交換樹脂を触媒として使用する際に反応を著しく阻害しない範囲で、ジスルフィド体等の不純物を含んでいてもよい。
これらのうち、ビスフェノール化合物製造時の助触媒として、転化率、選択率の向上効果に優れていることから、下記一般式(I)で表されるピリジルアルカンチオール化合物類が好ましく、中でもピリジルエタンチオール化合物類が好ましく、特に2−(2−ピリジル)エタンチオールおよび2−(4−ピリジル)エタンチオールが転化率や選択率の向上および長期に亘って使用した場合の活性低下が少ないことから更に好ましい。
Figure 2011115758
上記(I)式中、nは1〜5の整数であり、Xは、炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基、炭素原子数5以上の2価の環状炭化水素基、炭素原子数6以上の2価の芳香族環基、炭素原子数3以上の2価の脂環式複素環基および炭素原子数3以上の2価の芳香族複素環基からなる群から選択される1種の連結官能基である。
Yは、水素原子又はその後の反応によってアシル基で保護された構造とすることができるものであれば特に制限をされないが、中でも水素原子であるチオール基のものが好ましく用いられる。
上記式(I)において、R、R、R、RおよびRからなる群から選択される1以上は(−X−S−Y)鎖であり、(−X−S−Y)鎖でないR、R、R、RおよびRは各々独立に、水素原子、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子といったハロゲン原子、ビニル基、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ官能基、炭素原子数6以上のアリールオキシ官能基、炭素原子数1〜10の脂肪族官能基、炭素原子数6以上の芳香族官能基、隣接する環置換基を介してピリジン環と縮合した炭素原子数5以上の脂環式環、および隣接する環置換基を介してピリジン環と縮合した炭素原子数6以上の芳香族環からなる群から選択される1種である。
チオール基を保護するアシル基としては以下のような構造のものが挙げられる。
−CO− …(II)
上記(II)式中、Rの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、もしくは水素原子が挙げられ、これらの炭化水素基にフェニルなどの芳香族基やハロゲン原子、その他の種々の官能基などが更に結合していてもよい。
これらのうち、合成の容易さなどからRがメチルであるアセチル基が特に好ましい。アセチル基が加水分解反応により脱離すると酢酸が生成する。
即ち、本発明で用いるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物としては、2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート又は2−(4−ピリジル)エチルチオアセテートが好ましい。
なお、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物は公知の方法で合成することができ、例えば、USP 2,607,776号特許明細書に記載の方法で合成することができる。
一般に、チオール基含有化合物の末端硫黄原子に結合された保護基は、末端硫黄原子の酸化を抑制するために存在している。通例、保護されないチオール基は、保管中、合成中又はスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性反応条件下等で容易に酸化されてジスルフィドになり、それにより助触媒としての性能が低下する。また、硫黄部位が保護されたチオール基含有化合物は、硫黄部位が保護されていないチオール基含有化合物に比べ臭気が大幅に低減される。本発明で用いられるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物においても同様の効果を有するばかりではなく、容易に加水分解されることにより助触媒として有用なチオール基を効率的に生成することができるという利点を有する。
なお、本発明において、スルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性に用いるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物は、1種類のチオール基含有化合物由来のものであってもよく、2種以上のチオール基含有化合物に由来するものであってもよい。また、チオール基を保護するアシル基についても、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
このようなチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物で変性されるスルホン酸型陽イオン交換樹脂は、一般的にスチレン系モノマーと架橋性モノマーとを含む重合性モノマー類に、ラジカル重合開始剤を混合して懸濁重合することにより得られるスチレン系共重合体を、硫酸や発煙硫酸などのスルホン化剤でスルホン化することにより製造される。
スチレン系共重合体の製造に用いるスチレン系モノマーとは、スチレン、又はスチレンのベンゼン環若しくはスチレンのビニル基にイオン交換樹脂としての機能を損なわない範囲の任意の置換基を有するモノマーであるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリマーや、オリゴマーの末端がスチリル構造になっているようなマクロモノマーであってもよい。なお、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」を意味する。後述の「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
スチレン系モノマーとしては、好ましくは下記式(III)で表されるモノマーが挙げられる。
Figure 2011115758
(式中、X、X、Xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキルシリルオキシ基、ニトロ基、ニトリル基のいずれかを示し、Zは、水素原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、フェニル基やナフチル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、アルコキシアルキル基、ニトロ基、アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、アルコキシカルボニル基、アリルアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリルオキシ基、アラルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、又はアルキルシリルオキシ基を示す。mは1から5までの整数であり、X、X、Xは互いに同一でも異なっていてもよく、またmが2以上の場合の複数のZは同一でも異なっていてもよい。)
スチレン系モノマーとしては、具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の、ベンゼン環が炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されたスチレンや、α−メチルスチレン、α−フルオロスチレン、β−フルオロスチレン等の、ビニル基が炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子で置換されたスチレン等が挙げられる。
これらのスチレン系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
スチレン系モノマーとしては、これらの中でも、スチレンが最も好ましい。
一方、架橋性モノマーは、分子内に上記スチレン系モノマーと共重合可能な炭素−炭素二重結合を2以上有する化合物であり、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン、ジビニルトルエン等のアルキルジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(4−ビニルフェニル)スルホン等の、2以上のベンゼン環が直接又はアルキレン基、スチリレン基などの連結基を介して結合した構造を有する芳香族ジビニル化合物が挙げられる。また、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリマー、オリゴマーの両末端がスチリル構造、(メタ)アクリル構造のような重合性炭素−炭素二重結合を有するマクロモノマーでもよい。
これらの架橋性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼンが好ましい。なお、ジビニルベンゼンによっては、製造される際に副生物としてエチルビニルベンゼン(エチルスチレン)が生成し、これを多量に含有している場合もあるが、本発明においてはこのようなジビニルベンゼンも使用することができる。
反応に供する重合性モノマーは、前記スチレン系モノマーと前記架橋性モノマーとを含むが、それ以外に、必要に応じて、更にこれらと重合可能な他のモノマーを含んでいてもよい。このような重合可能なモノマー(以下「第3のモノマー」と言う場合がある。)の具体例としては、ビニルナフタレンやビニルアントラセンなどの、ナフタレンやアントラセン、フェナントレンなどの多環芳香族骨格を有するビニルモノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン等のジエン系炭化水素化合物;1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、このような第3のモノマーを使用することにより、耐酸化性が増す等の効果が得られるが、この場合、その使用量はスチレン系モノマーに対して、通常50mol%以下、好ましくは20mol%以下、特に好ましくは10mol%以下である。第3のモノマーの使用量が多すぎると、得られる共重合体に導入することができる単位重量当たりのスルホン酸基の量が少なくなり、所望の触媒活性を得られないことがある。
スチレン系モノマーと架橋性モノマーとを含む重合性モノマーを重合させて得られる共重合体の架橋度は2〜40%であることが好ましい。ここで言う架橋度とは、重合に供する重合性モノマー中の架橋性モノマーの重量基準での濃度をいい、当該分野において使われている定義と同様である。
この架橋度が小さすぎると、得られる陽イオン交換樹脂の強度を保つことが困難となり、ビスフェノール化合物製造用触媒として反応に供するに際し、使用前にフェノール化合物やフェノール化合物と水との混合溶媒等に接触させてコンディショニングを行う時の膨潤、収縮により、陽イオン交換樹脂の破砕等が生じるため好ましくない。一方、架橋度が大きすぎると、得られる共重合体粒子が膨潤しにくくなるので、共重合体粒子内の拡散抵抗が生じ易くなり、触媒活性の著しい低下を生じることから好ましくない。
スチレン系モノマーと架橋性モノマーとを含む重合性モノマーの共重合反応は、ラジカル重合開始剤を用いて公知の技術に基づいて行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の1種又は2種以上が用いられ、通常、重合性モノマーの重量(全モノマー重量)に対して0.05重量%以上、5重量%以下で用いられる。
重合様式は、特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の種々の様式で行うことができ、必要に応じて篩による分級等を行うこともできる。
共重合反応における重合温度は、通常、室温(約18〜25℃)以上、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。重合温度が高すぎると解重合が併発し、重合完結度がかえって低下する。重合温度が低すぎると重合完結度が不十分となる。
また、重合雰囲気は、空気もしくは不活性ガス下で実施可能であり、不活性ガスとしては窒素、二酸化炭素、アルゴン等が使用できる。
上記の共重合反応で得られた共重合体にスルホン酸基を導入する(スルホン化)方法は、特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。
例えば、有機溶媒の非存在下、あるいは、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、プロピレンジクロライド等の有機溶媒の存在下、共重合体を、硫酸、クロロスルホン酸、発煙硫酸等のスルホン化剤と反応させることにより行われる。ここで有機溶媒、スルホン化剤は、いずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この際の反応温度は、通常0〜150℃程度で、スルホン化剤および使用する有機溶媒に応じて適宜選択される。
スルホン化された共重合体を、常法に従って、洗浄、単離等により分離することで、スルホン酸型の強酸性陽イオン交換樹脂を得る。
本発明において、変性に供するスルホン酸型陽イオン交換樹脂の交換容量(スルホン酸基の量)は、含水状態の樹脂の、単位体積当り、通常0.5mmol/mL以上、好ましくは1.0mmol/mL以上であり、一方、通常3.0mmol/mL以下、好ましくは2.0mmol/mL以下である。また、乾燥状態の樹脂では、単位体積当り、通常1.0mmol/g以上、好ましくは2.0mmol/g以上であり、一方、通常6.0mmol/g以下、好ましくは5.5mmol/g以下である。含水状態の樹脂から付着水を取り除いた湿潤状態では、通常0.5mmol/g以上、好ましくは1.0mmol/g以上であり、一方、通常3.0mmol/g以下、好ましくは2.0mmol/g以下である。この交換容量が低過ぎると触媒活性が不足し、また、過度に交換容量の高い陽イオン交換樹脂は製造困難である。
この強酸性陽イオン交換樹脂の交換容量は、例えば「ダイヤイオン、イオン交換樹脂・合成吸着剤マニュアル1」(三菱化学株式会社刊、改訂4版、平成19年10月31日発行、133〜135頁)に記載される方法や、これに準じた方法で求めることができる。
なお、本発明において用いられる強酸性陽イオン交換樹脂の主な形態としては、ゲル型と多孔質型(MR型:macroreticular型)が挙げられるが、ビスフェノール化合物の製造に用いる場合、製造コストの観点から、ゲル型が好ましい。また、物質拡散性や、樹脂の耐久性、強度の確保の観点で、多孔質型(ポーラス型、ハイポーラス型、又はマクロポーラス型)も好ましい。ゲル型には単純ゲル型共重合体および拡大網目型ゲル共重合体があり、いずれも用いることができる。一方、MR型は多孔性共重合体であって、表面積、気孔率、平均孔径などが任意のものを用いることができる。
ゲル型又は多孔質型の陽イオン交換樹脂とする方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば「イオン交換樹脂その技術と応用」(オルガノ株式会社発行、改訂版、昭和61年5月16日発行、13〜21頁)に従って製造することができる。
上述のようなスルホン酸型陽イオン交換樹脂をチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物で変性するには、適当な有機溶媒および/又は水系溶媒の存在下にスルホン酸型陽イオン交換樹脂とチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物とを反応させればよい。この反応溶媒としては、スルホン酸型陽イオン交換樹脂のスルホン酸基と酸塩基反応を引き起こすようなものでなければよく、特に制限はない。
反応溶媒として使用し得る溶媒としては、水、もしくは、アルコール、ケトン、エーテル、フェノール等の極性の高い有機溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、より均一に変性させる目的で、酢酸、モノクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等を溶解させた溶媒を用いてもよく、これらを水に溶解させた溶媒として用いるのが好ましい。
変性と同時に加水分解を行うことができることから、変性は水の存在下に行うことが好ましく、例えば、水と、他の有機溶媒との混合溶媒中、又は水溶媒中で変性反応を行うことが好ましい。
変性反応温度は、使用する溶媒の沸点を超えない範囲であれば、特に制限はないが、温度が高すぎると、変性に使用するチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物が反応して副反応などを起こし、収率が低下する場合があるので、加熱、冷却操作の必要のない常温が好ましい。ただし、変性と同時に加水分解を行う場合には、この変性は、後述の加水分解温度で行う。
変性反応はバッチ式でも連続式でも何れも使用可能であるが、装置や操作が簡便なバッチ式が好ましい。また、チオール化合物の酸化による劣化を防止するためにも、窒素などの不活性ガス雰囲気下で変性反応を行うことが好ましい。
連続式の場合、例えば、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を固定床として、変性剤であるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物が溶解した溶液を流通させる方法が挙げられる。ただし、この場合、全体を均一に変性させることが困難な場合がある。
バッチ式の場合には、例えば反応器の中にスルホン酸型陽イオン交換樹脂と水および/又は有機溶媒などの溶媒を入れて、更に変性剤を添加する方法等を用い、スルホン酸型陽イオン交換樹脂、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物および溶媒の混合反応系を形成して、攪拌しながら変性を行うのが好ましい。特に水を溶媒として用いると、変性剤であるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物と水とが2相に分離していても、攪拌することによって液滴として水中に分散し、それらが徐々に水に溶解して均一に変性される。また、加水分解で副生したカルボン酸が水に溶解し、容易に除去することができるので好ましい。
溶媒の使用量としては、用いる溶媒の種類によっても異なるが、スルホン酸型陽イオン交換樹脂に対して重量で0.5〜100倍、特に1〜10倍とすることが好ましい。溶媒使用量がこの範囲よりも多いと廃液量の増加や巨大な設備が必要となるので好ましくなく、少ないとスルホン酸基を均一に変性することが困難な場合があるので好ましくない。
変性時間は、変性のみを行う場合と、変性と加水分解とを同時に行う場合とで異なるが、変性のみを行う場合は0.5〜4時間、特に1〜3時間で、変性と加水分解を同時に行う場合は、0.5〜6時間、特に1〜4時間とすることが好ましい。反応時間が短か過ぎると、目的の反応が十分に進行せず、過度に長くてもそれ以上の反応の進行は望めず、効率的でない。
なお、変性に用いるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物の量は、所望の変性率に応じて適宜決定される。
上記変性時/又は変性後の加水分解は水を含む溶媒の存在下で行う。
この場合、使用可能な水以外の溶媒としては、上述の変性反応に用いられる溶媒が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、加水分解に必要な水量を確保するために、水と他の溶媒との混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の水含有率は1重量%以上、特に10重量%以上であることが好ましい。好ましくは、加水分解は、水溶媒中で行われる。
溶媒の使用量としては、用いる溶媒の種類によっても異なるが、スルホン酸型陽イオン交換樹脂に対して重量で0.5〜100倍、特に1〜10倍とすることが好ましい。溶媒使用量がこの範囲よりも多いと廃液量の増加や巨大な設備が必要となるので好ましくなく、少ないと加水分解(チオール基の脱保護反応)が十分に進行しない場合があり、好ましくない。
本発明において、加水分解は、40〜100℃、好ましくは50〜95℃、更に好ましくは60〜90℃、最も好ましくは70〜85℃の範囲で行う。この範囲より低い温度では加水分解に長時間を要するか、大量の水が必要になる。即ち、加水分解温度が40℃未満の場合においても、加水分解反応は進行するが、反応速度は低くなるので、反応完了まで多大な時間や水を費やすことになり、実用的ではない。加水分解温度が高いほど、加水分解の反応速度が速くなるので短時間で加水分解が可能になり好ましいが、ある温度からは高くしても反応速度は頭打ちとなり、その効果は制限される。また、水溶媒系で反応させる場合、100℃より高い温度で行う場合には、液相を維持するために加圧の設備が必要になり、設備投資に多大な費用が掛かる。更には、温度が高すぎると、陽イオン交換樹脂からのスルホン酸基の脱離や、樹脂自体の劣化が懸念される。
このような温度での加水分解反応は、バッチ式であっても連続式であっても良いが、装置および操作が簡便なバッチ式が好ましい。
連続式の場合は、例えば変性されたスルホン酸型陽イオン交換樹脂の固定床に水を流すことにより行われるが、一般に大量の水が必要になることが多い。この場合の通水条件は、反応温度にもよるが、通常は液空間速度(LHSV)が0.01〜10hr−1、特に0.1〜5hr−1とするのが好ましい。
バッチ式の場合、例えば変性後のスルホン酸型陽イオン交換樹脂を水溶媒中で攪拌することにより行うことができるが、その反応時間は、0.5〜6時間、特に1〜4時間とすることが好ましい。
いずれの場合も、反応時間が短か過ぎると加水分解が十分に進行せず、目的とする加水分解の転化率の高い酸性触媒を得ることができず、長過ぎてもそれ以上の加水分解反応の進行は起こらず、処理時間が徒に長くなり効率的でない。
本発明においては、特に水溶媒中で、スルホン酸型陽イオン交換樹脂と変性剤であるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物とを、加温下に攪拌することにより、変性と加水分解とを同時に行うことが好ましく、その場合には、前述の如く、スルホン酸型陽イオン交換樹脂に対して重量で0.5〜100倍、特に1〜10倍の水を加え、この水/樹脂混合系内に変性剤であるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を添加し、40〜100℃、好ましくは50〜95℃、より好ましくは70〜85℃で、0.5〜6時間、特に1〜4時間攪拌することが好ましい。
本発明において、スルホン酸型陽イオン交換樹脂のチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物による変性の割合(変性率)は、特に制限はないが、スルホン酸型陽イオン交換樹脂の全スルホン酸基の3mol%以上とするのが好ましく、5mol%以上とするのがより好ましい。また70mol%以下とするのが好ましく、50mol%以下とするのが更に好ましく、30mol%以下とするのが特に好ましい。これにより、反応に必要なスルホン酸基の量の低下による活性低下を引き起こすことなく、チオール基含有化合物が助触媒として働く効果を最大限に発現させることができる。チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物によるスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性率が小さすぎる場合は、助触媒による反応性の向上効果が低くなる傾向にあり、長期に亘って触媒の活性を継続し得るという効果が不十分となる傾向にある。また、変性率が大きすぎる場合は、反応に関与するスルホン酸基の量が少なくなるので、反応性が低下する傾向がある。また経済的にも高価なチオール基含有化合物を多く使用することになる。
この変性率は、変性反応において、スルホン酸型陽イオン交換樹脂に対する変性剤であるチオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物の使用量及び反応時間等を調整することにより制御することができる。
また、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物で変性されたスルホン酸型陽イオン交換樹脂の加水分解の転化率(スルホン酸型陽イオン交換樹脂に導入されたアシル基のうち、加水分解によりチオール基に変換される割合)は、60%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上であることが好ましい。この転化率が低い場合には、ビスフェノール化合物の製造反応過程でカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体が遊離してプロセス内に混入し、ビスフェノール化合物の分解や2,4’−ビスフェノール化合物に代表されるような異性体の生成などによる品質低下や製造装置の腐食の原因となる。この転化率は理想的には100%である。この転化率は、本発明で採用される変性温度40〜100℃の範囲内で変性時間を調整することにより達成することができる。
次に、上述した本発明の酸性触媒の製造方法により製造された酸性触媒(以下「本発明の酸性触媒」と称す場合がある。)を用いるビスフェノール化合物の製造方法について説明する。
ビスフェノール化合物は、本発明の酸性触媒の存在下に、フェノール化合物とカルボニル化合物とを縮合反応させることにより製造される。
フェノール化合物とカルボニル化合物との縮合反応は、フェノール性水酸基の強いオルト−パラ配向性、特にパラ配向性を利用するものと考えられ、従って、使用するフェノール化合物はオルト位又はパラ位に置換基のないものが好ましい。中でも、縮合反応生成物であるビスフェノール化合物は、その用途の点から4,4’−ビスフェノール化合物が一般的に好ましく、この点からパラ位に置換基のないフェノール化合物を用いることが好ましい。
フェノール化合物が置換基を有する場合、置換基はフェノール性水酸基のオルト−パラ配向性を阻害せず、また、カルボニル化合物の縮合位置に対して立体障害を及ぼさない限り、得られるビスフェノール化合物の用途や物性に応じて任意のものでありうる。典型的な置換基としては、例えば炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられる。また、該置換基の代わりに、弗素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が置換したフェノール化合物についても、同様の置換位置の化合物を使用することができる。置換基の数は1つでも複数でもよい。
本発明で用いるフェノール化合物としては、具体的には、例えば、フェノール(無置換のフェノール)、o−クレゾール、m−クレゾール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール等が挙げられる。これらの中ではフェノールが特に好ましい。
本発明で用いるカルボニル化合物としては特に制限はないが、具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等の炭素数3〜10程度のケトン類、および、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等の炭素数1〜6程度のアルデヒド類が挙げられる。これらの中では、アセトンが好ましい。
フェノール化合物としてフェノールを使用し、カルボニル化合物としてアセトンを使用した場合、ポリカーボネート樹脂等の原料として有用なビスフェノールAを得ることができるので、特に好ましい。
縮合反応の原料として用いるフェノール化合物とカルボニル化合物のmol比は、カルボニル化合物1molに対してフェノール化合物が通常2mol以上、好ましくは4mol以上であり、通常40mol以下、好ましくは30mol以下とする。フェノール化合物の使用量が少なすぎると、副生物が増加する傾向があり、一方、多すぎてもその効果に殆ど変化はなく、むしろ回収、再使用するフェノール化合物の量が増大するため経済的でなくなる傾向がある。
フェノール化合物とカルボニル化合物との縮合反応を行うに際し、製造量や装置の制約等に応じて、連続法、半連続法、およびバッチ法等を任意に選択することが可能であり、反応器は単独でもよく、複数の反応器を並列、或いは直列に接続して製造する方法や、これらの方法や反応器を組み合わせて製造することも可能である。これらの製造方法は単独の反応方法でもよく、別の方法としては、例えば複数の反応器を用いて連続法とバッチ法を並列で行う等の方法も選択可能である。
反応に際しては、フェノール化合物とカルボニル化合物は別々に反応器に供給してもよく、混合して供給してもよい。また、カルボニル化合物を反応開始時に一度に反応に供してもよく、複数回に分割して反応に供してもよい。
また、フェノール化合物とカルボニル化合物とを反応させるに際し、前述の変性に用いたチオール基含有化合物および/又は変性に使用できないようなチオール基含有化合物を共存させて反応させてもよい。ここで「変性に使用できないようなチオール基含有化合物」とは、チオール基或いは保護されたチオール基を含有するものの、陽イオン交換樹脂のスルホン酸基とイオン結合し得るような官能基を含有していないチオール基含有化合物のことをいい、例えば、メタンチオール、エタンチオール等のアルカンチオール類が挙げられる。これらは1種を用いても、複数種を用いてもよく、フェノール化合物および/又はカルボニル化合物に溶解させて反応に供しても、フェノール化合物および/又はカルボニル化合物とは別に供給してもよい。
反応装置も加熱装置や冷却装置を有する反応器や断熱反応器等、必要に応じて種々の装置を用いることが可能である。
反応方式としては、反応効率や運転の容易さから、連続法が好ましい。連続法としては、本発明の酸性触媒を充填した反応器にフェノール化合物とカルボニル化合物とを連続的に供給して反応を行う方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、固定床流通方式、流動床方式、および連続撹拌方式のいずれでもよいが、本発明の酸性触媒を固定床とし、フェノール化合物とカルボニル化合物とを連続的に供給、流通させる、固定床流通方式が好ましい。
ビスフェノール化合物の製造において、固定床流通方式、流動床方式、および連続撹拌方式で縮合反応を行う場合には、原料であるフェノール化合物とカルボニル化合物との供給は、フェノール化合物湿潤状態の本発明の酸性触媒を基準として、フェノール化合物とカルボニル化合物との合計が通常液空間速度(LHSV)0.05hr−1以上、好ましくは0.2hr−1以上で、通常20hr−1以下、好ましくは10hr−1以下で行う。特に固定床流通方式で反応を行う場合、必要に応じて装置の上部および/又は下部にスクリーンなどを設けて、充填した本発明の酸性触媒が装置外に流出せずに反応液だけが流通できるようにしてもよい。原料は反応装置の上部から下部に流しても(ダウンフロー式)、装置の下部から上部に流しても(アップフロー式)よい。固定床流通方式の場合、アップフロー式では触媒の流動化やそれに伴う触媒の流出が生じやすく、一方、ダウンフロー式では圧力損失(差圧)が生じやすい等の問題点が知られているので、これらの問題点も勘案した上で都度適切な方法を選択すればよい。この圧力損失は、触媒の量やLHSV、使用する機器の能力等に応じて、適当な範囲を選択することができる。
ビスフェノール化合物の製造における反応温度は、通常、反応溶液が固化せずに液状で存在しうる温度で行なわれ、例えば、フェノール化合物がフェノールの場合は40℃以上、好ましくは50℃以上である。反応温度が高いほど反応速度的には有利であるが、本発明の酸性触媒の陽イオン交換樹脂の耐熱温度の点から反応器内の最高温度が120℃以下、特に100℃以下となるような条件で反応させるのが好ましい。反応温度が高くなると陽イオン交換樹脂の耐熱温度以下でも部分的に分解などによりスルホン酸基の脱離などが起こるので、このような観点からは、できるだけ低い温度が好ましいが、一方で温度が低すぎると生成したビスフェノール化合物が固化する場合がある。
本発明の酸性触媒をフェノール化合物とカルボニル化合物との縮合反応に供する際は、酸性触媒の陽イオン交換樹脂内に水分が残留していると反応の阻害要因となるため、反応に使用する前に陽イオン交換樹脂内の水分を除去しておくのが好ましく、例えば原料であるフェノール化合物と接触させることにより陽イオン交換樹脂内の水分を除去しておく方法が好ましい。このような処理により、反応開始時の誘導期間が短くなり、速やかに反応に使用できるようになる。
ビスフェノール化合物の製造に使用するフェノール化合物(後述の、ビスフェノール化合物製造プロセス内で回収・使用される以外のフェノール化合物)は、純度が高いものであればそのまま使用することもできるが、精製した後に使用するのが好ましい。フェノール化合物の精製方法としては特に制限はないが、例えばフェノール化合物を40〜110℃で一般的なスルホン酸型陽イオン交換樹脂のような酸性触媒と接触させ、フェノール化合物中に含まれる不純物を重質化させた後に蒸留して重質分を除去する方法などが挙げられる。このようにして得られるフェノール化合物を、反応器へ供給することにより反応原料として使用することができる。
また、ビスフェノール化合物の製造に使用するフェノール化合物としては、ビスフェノール化合物の製造工程で回収されたものをリサイクルして使用することも可能である。リサイクルされるフェノール化合物の例としては、反応生成液から目的とするビスフェノール化合物を分離したフェノール溶液を挙げることができる。具体的には、ビスフェノール化合物を晶析などによって固化し、固液分離工程にて固液分離する方法によってビスフェノール化合物を分離した場合に得られる、一般的に「母液」と呼ばれているフェノール溶液や、その他にも蒸留などによって分離されたフェノール溶液等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、上記の如く精製されたフェノール化合物は、固液分離工程で得られた結晶の洗浄液として使用し、母液と共に反応器へリサイクルする等、プロセスに応じて所望の方法で使用することもできる。
その際に全量もしくは一部を分離して、酸やアルカリの触媒で処理をした後に重質分などの不純物を除去したり、更にビスフェノール化合物を回収した後に縮合反応の原料として用いることが好ましい。プロセス内で回収されたフェノール化合物をリサイクルして固液分離工程で得られた結晶の洗浄液として使用する際は、精製した後、使用するのが好ましい。
なお、実験室などの小さなスケールでは、原料として用いるフェノール化合物として精製した高純度のフェノール化合物のみを用いる場合もあるが、工業レベルのスケールでは、通常、プロセス内で回収されたフェノール化合物をリサイクルさせて使用するのが経済的にも有利である。
上記方法により製造された反応液中には目的とするビスフェノール化合物と共に、大過剰のフェノール化合物、未反応のカルボニル化合物、縮合反応時に生成した不純物等が含まれているので、これらの溶液の中から目的とするビスフェノール化合物を取り出す必要がある。反応液から目的物質であるビスフェノール化合物を分離精製する方法は特に制限はなく、公知の方法に準じて行なわれるが、目的物質が、ビスフェノールAの場合を例として、分離精製方法の代表例を以下に説明する。
上記縮合反応に引き続いて、低沸点成分分離工程において、縮合反応で得られた反応液をビスフェノールAとフェノールとを含む成分と、反応で副生する水、未反応アセトン等を含む低沸点成分とに分離する。低沸点成分分離工程は、減圧下に蒸留によって低沸点成分を分離する方法で行なわれるのが好ましく、低沸点成分にはフェノール等が含まれていてもよい。ビスフェノールAとフェノールとを含む成分は、必要に応じて、さらに蒸留等によってフェノールを除去したり、フェノールを追加することによって、ビスフェノールAの濃度を所望の濃度に調整することができる。
続いて、晶析工程においてビスフェノールAとフェノールとの付加物の結晶を含有するスラリーを得る。晶析工程に供するビスフェノールAとフェノールとを含む成分のビスフェノールAの濃度は、得られるスラリーの取り扱いの容易さ等から、10〜30重量%が好ましい。また晶析方法の例としては、ビスフェノールAとフェノールとを含む成分を直接冷却させる方法、水等の他の溶媒を混合し、当該溶媒を蒸発させることによって冷却を行なう方法、さらにフェノールを除去して濃縮を行なう方法、およびこれらを組み合わせる方法等が挙げられ、所望の純度の付加物を得るために1回もしくは2回以上晶析を行ってもよい。当該晶析工程で得られたスラリーは、固液分離工程において減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等により付加物の結晶と母液とに固液分離され、ビスフェノールAとフェノールとの付加物の結晶が回収される。当該晶析工程で、晶析に供するビスフェノールAとフェノールとを含む成分の組成や晶析条件を調整することによってビスフェノールAの結晶を晶析によって直接得ることもできる。
当該固液分離工程で得られた付加物の結晶を、続く脱フェノール工程において、溶融後にフラッシュ蒸留、薄膜蒸留、スチームストリッピング等の手段を単独、あるいは複数組み合わせることによってフェノールを除去することにより、高純度の溶融ビスフェノールAを得る。除去されたフェノールは所望により精製され、反応や上記固液分離工程で得られた付加物の結晶の洗浄等に供することができる。得られた高純度の溶融ビスフェノールAは、造粒工程において固化されるが、ノズルから噴射させ、冷却ガスと接触させることにより小球状のビスフェノールAプリルを得る方法が簡便で好ましい。なお、脱フェノール工程を経ることなく、固液分離工程で得られた付加物の結晶から、再度、晶析を行いビスフェノールAのみを晶析により得ることもできる。
また、系内の不純物の蓄積を防止する目的で、固液分離工程で分離された母液の少なくとも一部を不純物処理工程において処理することもできる。例えば、アルカリ又は酸を混合して加熱処理した後に蒸留して軽質分と重質分とに分離し、軽質分を酸触媒等により再結合反応処理して反応に使用するのが経済性の点でも好ましい。ここで重質分を系外にパージすることにより不純物の蓄積を防止し、製品の純度を向上させることができる。また、母液の少なくとも一部を酸触媒によって異性化した後、晶析を行なうことによってビスフェノールAの回収率の向上を図ることもできる。
低沸点成分分離工程で得られた低沸点成分は、アセトン循環工程によって未反応アセトンを分離回収し、回収されたアセトンを反応工程に循環させることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの合成>
窒素ガス導入管、温度計、ジムロート冷却管、および滴下ロートを備えた100mlの四つ口フラスコに、チオ酢酸(東京化成製)15.22g(0.20mol)を秤り入れ、攪拌を開始した。窒素導入後、氷浴にて5℃以下に冷却し、滴下ロートより、2−ビニルピリジン21.03g(0.20mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外し、室温で更に1時間攪拌して反応を行った。反応終了後、反応液をバス温120℃、圧力0.8kPaの条件下で減圧蒸留を行い、2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートを27.8g得た。ガスクロマトグラフィー分析の結果、このものの純度は96.8%であり、収率は78.2%であった。
以下にガスクロマトグラフィーの条件、および収率の計算方法を示す。
(ガスクロマトグラフィー)
装置:島津製作所製「GC−14A」
カラム:ジーエルサイエンス製「TC−5」(60m×0.32mm×1.0μm)
検出器:FID
キャリアーガス:ヘリウム
(計算方法)
収率(%)=〔(2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートのmol数)/(チオ酢酸のmol数)〕×100
<酸性触媒の調製>
窒素ガス導入管を備えた100mlの四つ口フラスコ内に、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)「SK104H」:交換容量1.65mmol/g−湿潤状態)3.00g−湿潤状態、および60℃の脱塩水約20mlを秤り入れて、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を洗浄し、洗浄液をデカンテーションにより廃棄した。この60℃の脱塩水約20mlでの洗浄を3回繰り返し、洗浄液を廃棄した後、脱塩水約20mlを加えて、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌を開始した。ウォーターバスによりフラスコ内温が70℃になるように加熱し、上記条件で調製した2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート0.14g(0.73mmol)をシリンジで滴下した。滴下終了後、更に3時間攪拌し、変性と加水分解処理を行った。変性および加水分解処理終了後、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を濾別し、酸性触媒を得ると共に、濾液を回収した。
回収した濾液に指示薬メチルレッド−メチレンブルーを加え、0.1N水酸化ナトリウム水溶液(力値:f)で滴定分析を行い、滴定に要した滴下量(A ml)から以下の式を用いて濾液中の酸量、および2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解の転化率を算出したところ、酸量は、0.66mmolであり、2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解の転化率は90.4%であった。
酸量(mmol)=A(ml)×f×0.1
転化率(%)=[(濾液中の酸量(mmol)/(2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの添加量(mmol)]×100
なお、変性に使用したスルホン酸型陽イオン交換樹脂の量、添加した変性剤(2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート)の量およびスルホン酸型陽イオン交換樹脂中のスルホン酸基の量(交換容量)から下式により算出した変性率は14.7%であった。
変性率(%)=[(添加した変性剤のmol数(mmol))/{(スルホン酸型陽イオン交換樹脂中のスルホン酸基の量(mmol/g−湿潤状態)×変性に使用したスルホン酸型陽イオン交換樹脂の重量(g−湿潤状態))}]×100
<ビスフェノール化合物の製造>
東京理化器械(株)製パーソナル有機合成装置「ケミステーションPPV−3000」に付属の試験管に、上記で得られた酸性触媒0.50gを秤り入れ、60℃の溶融フェノール約50mlを添加した。この試験管を当該装置に組み込み、窒素を導入して攪拌することにより、酸性触媒をフェノールで洗浄し、洗浄後のフェノールの含水率が0.1重量%以下になるまで攪拌とデカンテーションを繰り返した。次いで、上記試験管にフェノール15.0gを加え、窒素と約5℃の冷却水の流通を開始した後、300rpmの攪拌下、温度を70℃に保ちながら、アセトン0.71gを加えて反応を開始した。
反応開始後、所定時間毎に反応液を採取し、以下に示す条件でガスクロマトグラフィーおよびイオンクロマトグラフィー分析を行い、4,4’−ビスフェノールA収率、4,4’−ビスフェノールAと2,4’−ビスフェノールAの生成比(4,4’−体/2,4’−体比)、酢酸フェニルおよび酢酸の生成量を求め、結果を表1に示した。
なお、「4,4’−ビスフェノールA」および「4,4’−体」とは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのことをいい、「2,4’−ビスフェノールA」および「2,4’−体」とは2−(2−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのことをいう。
(ガスクロマトグラフィー)
装置:島津製作所製「GC−2014」
カラム:アジレントテクノロジー製「HP−Ultra2」(25m×0.32mm×0.52μm)
検出器:FID
キャリアーガス:ヘリウム
(計算方法)
4,4’−ビスフェノールA収率(%)=〔(生成した4,4’−ビスフェノールAのmol数)/(反応に用いたアセトンのmol数)〕×100
4,4’−体/2,4’−体比=〔(生成した4,4’−ビスフェノールAのmol数)/(生成した2,4’−ビスフェノールAのmol数)〕
(イオンクロマトグラフィー)
前処理法:反応開始120分後の反応液1.0gを秤量し、キュメン0.5gと0.1N−水酸化ナトリウム水溶液1gを加えて振り混ぜた。一晩静置後、水相のみを採取した。
装置:(以下の装置群からなる)
デガッサー:昭和電工製「DEGAS KT−27」
ポンプ(2台):島津製作所製「LC−10AD」「LC−10AT」
自動注入装置:システムインスツルメント製「AUTO SAMPLER 09」
恒温槽:島津製作所製「CTO−10A」
電気伝導度検出器:昭和電工製「CD−5」
カラム:島津製作所製「SPR−H」(250mm×7.8mmφ)×2本
温度:45℃
溶離液:
A液:5mM p−トルエンスルホン酸水溶液
B液:100μM 4H−EDTAを含む20mM Bis−Tris溶液
Figure 2011115758
[比較例1]
<酸性触媒の調製>
2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート滴下時のフラスコの内温を室温(25℃)で行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。変性および加水分解処理終了後、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を濾別した濾液の酸量を、実施例1と同様に滴定分析により求めた結果、0.05mmolであり、2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解の転化率は6.8%であった。
<ビスフェノール化合物の製造>
上記の酸性触媒を用いて実施例1と同条件で反応を行い、所定時間毎に反応液を採取し、同様に分析を行って4,4’−ビスフェノールA収率、4,4’−体/2,4’−体比、酢酸フェニルおよび酢酸の生成量を求め、結果を表2に示した。
Figure 2011115758
[比較例2]
<酸性触媒の調製>
東京理化器械(株)製パーソナル有機合成装置「ケミステーションPPV−3000」に付属の試験管に、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)「SK104H」:交換容量1.65mmol/g−湿潤状態)0.50g−湿潤状態を秤量し、60℃の溶融フェノール約50mlを添加した。この試験管を当該装置に組み込み、窒素を流通させながら攪拌をすることにより洗浄し、洗浄後のフェノールの含水率が0.1重量%以下になるまで攪拌とデカンテーションを繰り返した。次いで、上記試験管にフェノール15.0gを加え、窒素と約5℃の冷却水の流通を開始した後、温度を70℃に保ちながら、フラスコ内を窒素で置換し、300rpmで攪拌を開始した。次いで、実施例1におけると同様の条件で調製した2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート0.023g(0.13mmol)をシリンジで滴下し、滴下終了後、更に2時間攪拌して変性処理を行い、酸性触媒(変性率15.8%)を調製した。
<ビスフェノール化合物の製造>
上記酸性触媒の調製を行った試験管を当該装置に組み込んだまま、この試験管にアセトン0.71gを添加して反応を開始した。反応開始後、所定時間毎に反応液を採取し、実施例1と同様に分析を行って、4,4’−ビスフェノールA収率、4,4’−体/2,4’−体比、酢酸フェニルおよび酢酸の生成量を求め、結果を表3に示した。
Figure 2011115758
実施例1および比較例1,2の結果を表4にまとめる。
Figure 2011115758
表4より明らかなように、本発明の酸性触媒の製造方法によって得られた酸性触媒を用いることにより、ビスフェノールA生成反応での不純物生成量が著しく低減される。
[実施例2〜13]
水溶媒下における変性(加水分解)温度と変性(加水分解)時間の影響についてさらに検討する実験を行った。
<酸性触媒の調製>
東京理化器械(株)製パーソナル有機合成装置「ケミステーションPPV−3000」に付属の試験管に、スルホン酸型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオン(登録商標)「SK104H」:交換容量1.65mmol/g−湿潤状態)1.00g−湿潤状態、および60℃の脱塩水約20mlを秤り入れ、攪拌を開始した。装置内に窒素を導入し、試験管内温を表5に示す所定温度に保ちながら、実施例1におけると同様の条件で調製した2−(2−ピリジル)エチルチオアセテート0.046g(0.024mmol)をシリンジで滴下した。滴下終了後、更に表5に示す所定時間攪拌し、変性および加水分解処理を行った後、スルホン酸型陽イオン交換樹脂を濾別し、実施例1と同様にして濾液の酸量と2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解の転化率を求め、結果を表5に示した。
Figure 2011115758
なお、この実施例2〜13における変性(加水分解)温度および変性(加水分解)時間と2−(2−ピリジル)エチルチオアセテートの加水分解転化率との関係を図1に示す。
実施例2〜13の結果から、変性(加水分解)温度が高くなると、加水分解速度が上昇し、短時間で加水分解反応が進行することが分かる。

Claims (4)

  1. フェノール化合物とカルボニル化合物とを反応させてビスフェノール化合物を製造する際に用いられる酸性触媒の製造方法であって、
    該酸性触媒が、スルホン酸基の一部をチオール基含有化合物で変性した構造を有するスルホン酸型陽イオン交換樹脂であり、
    該酸性触媒の製造方法が、チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物を用いてスルホン酸型陽イオン交換樹脂の変性を行う変性工程と、該変性時および/又は変性後に該チオール基含有化合物のチオール基をアシル基で保護した化合物のチオエステル部分を加水分解する加水分解工程とを有し、該加水分解工程を40℃以上100℃以下の温度で行うことを特徴とする酸性触媒の製造方法。
  2. チオール基含有化合物が、ピリジルアルカンチオール基含有化合物類である請求項1に記載の酸性触媒の製造方法。
  3. ピリジルアルカンチオール基含有化合物類が、ピリジルエタンチオール基含有化合物類である請求項2に記載の酸性触媒の製造方法。
  4. 加水分解の転化率が60%以上である請求項1乃至3の何れか1項に記載の酸性触媒の製造方法。
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