JP2011112096A - 車両用無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両発進時にロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御する際にシャダ振動の発生を回避する。
【解決手段】車両発進に際して、発進時ロックアップクラッチ制御を実行するとき、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように無段変速機18が所定の第1変速比γ1からアップシフトされ、そのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内で係合されるように無段変速機18がダウンシフトされるので、例えばシャダ振動が懸念されるロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPの小さな係合側近傍のシャダ振動領域に入ることが抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。
【選択図】図9
【解決手段】車両発進に際して、発進時ロックアップクラッチ制御を実行するとき、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように無段変速機18が所定の第1変速比γ1からアップシフトされ、そのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内で係合されるように無段変速機18がダウンシフトされるので、例えばシャダ振動が懸念されるロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPの小さな係合側近傍のシャダ振動領域に入ることが抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。
【選択図】図9
Description
本発明は、無段変速機と、流体伝動装置の入出力間を直結可能なロックアップクラッチとを備える車両用無段変速機の制御装置に関するものである。
エンジンの動力を無段変速機や多段変速機等の変速機へ伝達する流体伝動装置(例えばトルクコンバータやフルードカップリング等)の入出力間を直結可能なロックアップクラッチを備える車両が良く知られている。例えば、特許文献1〜5に記載された車両がそれである。一般に、このようなロックアップクラッチは、燃費の向上等を目的として予め設定された関係から車両状態に基づいてその係合・解放が判断され、例えば車両の走行状態がロックアップ領域内に入るとロックアップ制御が開始される。例えば、特許文献4には、発進時には無段変速機の変速比を最大値から所定量低い値に設定し、エンジン回転速度に対する変速機出力回転速度の回転速度比と無段変速機の最大変速比との差が所定値以下になったときにロックアップクラッチの締結を開始し、その締結の進行状況に応じてその回転速度比が無段変速機の最大変速比と一致するように無段変速機の変速比を制御することにより、ロックアップ締結ショックによる乗り心地の劣化を防止することが提案されている。また、特許文献5には、スロットル開度が所定値以上、エンジン回転速度が所定値以上、且つ車速が所定値以下の場合には、ロックアップクラッチを一時的に締結状態とすることや、スロットル開度が所定値以上、且つ車速が所定値以下の場合には、無段変速機の変速比を最大変速比よりも小さい所定変速比に設定することにより、エンジン回転速度の上昇を一時的に停止したり、エンジン回転速度の上昇を緩やかなものとすることが提案されている。
更に、一般に、ロックアップクラッチに所定の滑りを与えることにより広い走行範囲でロックアップ作動を可能とするスリップ制御(フレックスロックアップ制御)を実施することで、ロックアップ制御領域を拡大させて燃費を向上させることを可能としている。このようなスリップ制御では、例えばロックアップクラッチの入出力回転速度差の小さな係合側近傍のスリップ領域において、ロックアップクラッチの係合と解放とが繰り返し生じてクラッチの出力側トルクが急激且つ頻繁に増減するようなシャダ現象による振動(以下、シャダ振動という)が生じる場合がある。また、ロックアップクラッチを係合させる際も、この係合側近傍のスリップ領域(以下、シャダ振動領域ともいう)を通過するので、入出力回転速度差の減少率が小さく、通過時間が長くなると、シャダ振動の発生が懸念される。
このようなシャダ振動の発生に対して、例えばロックアップクラッチのμ−V特性(摩擦係数−滑り速度特性)をシャダ振動が発生し難い特性とするように、つまりクラッチ摩擦材と摩擦材の相手側部材とを滑りやすくするように、摩擦材の材質改良、オイル(作動油)への添加剤付加、摩擦材と相手側部材との両摩擦面の平面度向上等を実施することが提案されている。また、例えば特許文献1には、ロックアップクラッチの締結状態を制御する際に、変速機入力回転速度の変化速度に基づいて目標スリップ回転速度を設定し、目標スリップ回転速度の変化速度を予め設定した上限値と下限値とで制限することにより、急激なロックアップクラッチの締結やシャダーを防止することが提案されている。また、特許文献2には、トルクコンバータのロックアップに際して制御指令を、初期値から目標値まで、締結ショックを軽減及びクラッチフェーシング焼損防止が両立するように車両運転状態ごとの予め定めた所定時間をかけて、対応する時間変化勾配で漸増させるように構成し、制御指令の時間変化勾配に下限値を設定することにより、シャダーを防止することが提案されている。また、特許文献3には、クラッチにシャダが生じた場合には、クラッチのトルク容量を増大することや、クラッチの滑りに伴うシャダ現象がある場合には、クラッチのトルク容量の増大速度をシャダ現象がない場合の増大速度より速くすることにより、シャダ現象を解消することが提案されている。
ところで、発進時等に、ロックアップクラッチを作動させることにより、エンジン回転速度の吹け上がりを抑制し、燃料消費を抑制する制御が提案されている。このような制御においても、ロックアップクラッチを係合させる際にはシャダ振動領域を通過させることになることから、入出力回転速度差の減少率や通過時間によってはシャダ振動の発生が懸念される。その為、従前の通り、ロックアップクラッチのμ−V特性をシャダ振動が発生し難い特性とする工夫が為される。しかしながら、上記μ−V特性は、摩擦材のへたりや削れ等の走行による経時変化、オイル粘度に影響を及ぼす作動油温の変化、入力トルクに応じた油圧違い、製造ばらつき等に対して、変化が少なからずある。よって、μ−V特性向上によるシャダ振動の回避は、経時変化やばらつきに対するロバスト性が低くなる。また、これらの対策の為に、摩擦材の材質改良等を工夫してμ−V特性を改良することはコスト増につながる。このような課題は未公知であり、ロックアップクラッチのμ−V特性向上を工夫することなく、車両発進時にロックアップクラッチを作動させる際のシャダ振動の発生を回避することについて、未だ提案されていない。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両発進時にロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御する際に、シャダ振動の発生を回避することができる車両用無段変速機の制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機と、エンジンの動力をその無段変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力間を直結可能なロックアップクラッチとを備える車両用無段変速機の制御装置であって、(b) 車両発進に際して、(c) 前記無段変速機の変速比を所定の第1変速比に維持しつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御し、(d) 前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトし、(e) 前記アップシフト後は、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機をダウンシフトすることにある。
このようにすれば、車両発進に際して、前記無段変速機の変速比が所定の第1変速比に維持されつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチがスリップ係合させられながら係合に向けて制御され、前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように前記無段変速機が前記第1変速比からアップシフトされ、前記アップシフト後は、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機がダウンシフトされるので、例えばシャダ振動が懸念されるロックアップクラッチの入出力回転速度差(=エンジンの回転速度−無段変速機の入力回転速度)の小さな係合側近傍のスリップ領域(シャダ振動領域)に入ることが抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。これにより、車両発進時にロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御する際に、ロックアップクラッチで発生する場合があるシャダ振動を適切に回避することができる。これとは別に、ロックアップクラッチのμ−V特性向上が不要となる為、コストを低減する効果がある。見方を換えれば、従来仕様のままで、車両発進時にロックアップクラッチを作動させることによる燃費向上をコストアップ無く図ることができる。
ここで、好適には、前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となるとは、そのロックアップクラッチの入出力回転速度差が、そのロックアップクラッチのシャダ振動が発生する可能性のある入出力回転速度差の小さな係合側近傍のスリップ領域に入る前の予め定められた所定の入出力回転速度差とされたときである。このようにすれば、シャダ振動領域に入ることが確実に抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。
また、好適には、前記第1変速比からのアップシフト開始後に所定待機時間が経過したときに前記ロックアップクラッチの係合を速やかに完了させる為に前記無段変速機のダウンシフトを実行することにある。このようにすれば、シャダ振動領域が速やかに通過させられる。
また、好適には、前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、前記エンジンの回転速度を現在の回転速度に維持すると共に、前記ロックアップクラッチの入出力回転速度差が現在の入出力回転速度差に維持されるように前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトすることにある。このようにすれば、シャダ振動領域に入ることが確実に抑制される。
また、好適には、前記アップシフト後は、前記エンジンの回転速度を現在の回転速度に維持すると共に、前記ロックアップクラッチの現在の入出力回転速度差分を前記所定時間以内で収束させるように前記無段変速機をダウンシフトすることにある。このようにすれば、シャダ振動領域における入出力回転速度差の減少率を拡大し、シャダ振動領域の通過時間も短縮することができる。よって、シャダ振動を一層適切に回避することができる。
また、好適には、アクセルオンに応じて予め設定された目標回転速度以上に前記エンジンの回転速度が吹け上がるのを抑制するように、前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御することにある。このようにすれば、車両発進の際に前記エンジンの回転速度が吹け上がるのを適切に抑制することができ、燃費が向上される。
また、好適には、前記目標回転速度が所定回転以下のときに、前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトした後、ダウンシフトすることにある。このようにすれば、例えば前記エンジンの回転速度が所定回転以下の低回転速度に抑制された車両発進時に、シャダ振動回避の為にロックアップクラッチを素早く係合することに伴ってエンジン回転速度が低くなりすぎる可能性があることが回避される。
前記目的を達成するための他の発明の要旨とするところは、(a) 変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機と、エンジンの動力をその無段変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力間を直結可能なロックアップクラッチとを備える車両用無段変速機の制御装置であって、(b) 車両発進に際して、(c) 前記無段変速機の変速比を所定の第1変速比に維持しつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御し、(d) 前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機をダウンシフトすることにある。
このようにすれば、車両発進に際して、前記無段変速機の変速比が所定の第1変速比に維持されつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチがスリップ係合させられながら係合に向けて制御され、前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機がダウンシフトされるので、例えばシャダ振動が懸念されるロックアップクラッチの入出力回転速度差(=エンジンの回転速度−無段変速機の入力回転速度)の小さな係合側近傍のスリップ領域(シャダ振動領域)が速やかに通過させられる。これにより、車両発進時にロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御する際に、ロックアップクラッチで発生する場合があるシャダ振動を適切に回避することができる。これとは別に、ロックアップクラッチのμ−V特性向上が不要となる為、コストを低減する効果がある。見方を換えれば、従来仕様のままで、車両発進時にロックアップクラッチを作動させることによる燃費向上をコストアップ無く図ることができる。
また、好適には、前記無段変速機は、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機などにより構成される。
また、好適には、前記エンジンとしては、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が好適に用いられるが、電動機等の他の原動機をエンジンと組み合わせて採用することもできる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪24までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。図1において、エンジン12により発生させられた動力は、流体伝動装置としてのトルクコンバータ14から前後進切換装置16、車両用無段変速機(以下、無段変速機(CVT)という)18、減速歯車装置20、差動歯車装置22等を経て、左右の駆動輪24へ伝達される。
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸13に連結されたポンプ翼車14p、トルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸30を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14t、及び一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車14sとを備えており、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間で流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間には、それらの間すなわちトルクコンバータ14の入出力間を直結可能なロックアップクラッチ26が設けられている。また、ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したり、無段変速機18のベルト挟圧を発生させたり、ロックアップクラッチ26の作動を制御したり、或いは各部に潤滑油を供給したりする為の油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
ロックアップクラッチ26は、良く知られているように、油圧制御回路100によって係合側油室14on内の油圧PONと解放側油室14off内の油圧POFFとの差圧ΔP(=PON−POFF)が制御されることによりフロントカバー14cに摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチである(図4参照)。トルクコンバータ10の運転状態としては、例えば差圧ΔPが負とされてロックアップクラッチ26が解放される所謂ロックアップ解放、差圧ΔPが零以上とされてロックアップクラッチ26が滑りを伴って半係合される所謂フレックスロックアップ状態(スリップ係合状態)、及び差圧ΔPが最大値とされてロックアップクラッチ26が完全係合される所謂ロックアップ状態(係合状態)の3状態に大別される。例えば、ロックアップクラッチ26が完全係合(ロックアップオン)させられることにより、ポンプ翼車14p及びタービン翼車14tが一体回転させられてエンジン12の動力が無段変速機18側へ直接伝達される。また、所定のスリップ係合状態で係合するように差圧ΔPが制御されることにより、例えば入出力回転速度差(すなわちスリップ回転速度(スリップ量)=エンジン回転速度NE−タービン回転速度NT)NSLPがフィードバック制御されることにより、車両10の駆動(パワーオン)時には所定のスリップ量でタービン軸30をクランク軸13に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には所定のスリップ量でクランク軸13をタービン軸30に対して追従回転させられる。
前後進切換装置16は、発進クラッチとしての前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されている。トルクコンバータ14のタービン軸30はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸32はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sとは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は係合によりエンジン12の動力を駆動輪24側へ伝達する所定の摩擦係合装置としての断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
そして、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸30が入力軸32に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸32はタービン軸30に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)になる。
エンジン12の吸気配管36には、スロットルアクチュエータ38を用いてエンジン12の吸入空気量QAIRを電気的に制御する為の電子スロットル弁40が備えられている。
無段変速機18は、入力軸32に設けられた入力側部材である有効径が可変の駆動側プーリ(プライマリプーリ、プライマリシーブ)42と、出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変の従動側プーリ(セカンダリプーリ、セカンダリシーブ)46と、それ等の両可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、両可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われるベルト式の無段変速機である。
両可変プーリ42及び46は、入力軸32及び出力軸44にそれぞれ固定された固定回転体42a及び46aと、入力軸32及び出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動回転体42b及び46bと、それらの間のV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとしての駆動側油圧シリンダ(プライマリプーリ側油圧シリンダ)42c及び従動側油圧シリンダ(セカンダリプーリ側油圧シリンダ)46cとを備えて構成されている。そして、駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の供給排出流量が油圧制御回路100によって制御されることにより、両可変プーリ42、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。また、従動側油圧シリンダ46cの油圧であるセカンダリプーリ圧(以下、ベルト挟圧という)Pdが油圧制御回路100によって調圧制御されることにより、伝動ベルト48が滑りを生じないようにベルト挟圧力が制御される。このような制御の結果として、駆動側油圧シリンダ42cの油圧であるプライマリプーリ圧(以下、変速制御圧という)Pinが生じるのである。
図2は、エンジン12や前後進切換装置16や無段変速機18などを制御する為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図2において、車両10には、例えば無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御などに関連する油圧制御の為の車両用無段変速機の制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン12の出力制御や無段変速機18の変速制御及びベルト挟圧力制御やロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や無段変速機18及びロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置50には、例えばクランク軸回転速度センサ52により検出されたクランク軸13の回転角度(位置)ACR及びクランク軸13の回転速度(すなわちエンジン回転速度)NEに対応するクランク軸回転速度を表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸30の回転速度(タービン回転速度)NTを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力回転速度である入力軸32の回転速度(入力軸回転速度)NINを表す信号、出力軸回転速度センサ58により検出された無段変速機18の出力回転速度である出力軸44の回転速度(出力軸回転速度)NOUTすなわち出力軸回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、スロットルセンサ60により検出されたエンジン12の吸気配管36(図1参照)に備えられた電子スロットル弁40のスロットル弁開度θTHを表す信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温TWを表す信号、CVT油温センサ64により検出された無段変速機18等の油圧制御回路100内の作動油の油温TCVTを表す信号、アクセル開度センサ66により検出された運転者の加速要求量としてのアクセルペダル68の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、吸入空気量センサ70により検出されたエンジン12の吸入空気量QAIRを表す信号、フットブレーキスイッチ72により検出された常用ブレーキであるフットブレーキが操作されたブレーキオンBONを表す信号、レバーポジションセンサ74により検出されたシフトレバー76の操作ポジション(操作位置)PSHを表す信号などが供給されている。
また、電子制御装置50からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号SEとして、電子スロットル弁40の開閉を制御する為のスロットルアクチュエータ38への駆動信号や燃料噴射装置78から噴射される燃料の量を制御する為の噴射信号や点火装置80によるエンジン12の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、無段変速機18の変速比γを変化させる為の変速制御指令信号ST例えば駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御するソレノイド弁DS1及びソレノイド弁DS2を駆動するための油圧指令信号、伝動ベルト48の挟圧力を調整させる為の挟圧力制御指令信号SB例えばベルト挟圧Pdを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動する為の油圧指令信号、ロックアップクラッチ26の係合、解放、スリップ量NSLPを制御する為のロックアップ制御指令信号SL例えば油圧制御回路100内のロックアップリレーバルブ124の弁位置を切り換えるリニアソレノイド弁SLUを駆動する為の油圧指令信号やロックアップクラッチ26のトルク容量を調節するリニアソレノイド弁SLUを駆動する為の油圧指令信号、ライン油圧PLを調圧するリニアソレノイド弁を駆動する為の油圧指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
シフトレバー76は、例えば運転席の近傍に配設され、順次位置させられている5つの操作ポジション「P」、「R」、「N」、「D」、及び「L」のうちの何れかへ手動操作されるようになっている。「P」ポジションは車両10の動力伝達経路を解放しすなわち車両10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つメカニカルパーキング機構によって機械的に出力軸44の回転を阻止(ロック)するための駐車ポジション(位置)であり、「R」ポジションは出力軸44の回転方向を逆回転とする為の後進走行ポジション(位置)であり、「N」ポジションは車両10の動力伝達が遮断されるニュートラル状態とする為の中立ポジション(位置)であり、「D」ポジションは無段変速機18の変速を許容する変速範囲で自動変速モードを成立させて自動変速制御を実行させる為の前進走行ポジション(位置)であり、「L」ポジションは強いエンジンブレーキが作用させる為のエンジンブレーキポジション(位置)である。このように、「P」ポジション及び「N」ポジションは動力伝達経路をニュートラル状態とし車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジション、及び「L」ポジションは動力伝達経路を動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態とし車両10を走行させるときに選択される走行ポジションである。
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18のベルト挟圧力制御及び変速比制御等に関する要部を示す油圧回路図である。また、図4は、油圧制御回路100のうちロックアップクラッチ26の作動制御等に関する要部を示す油圧回路図である。
図3において、油圧制御回路100は、変速比γが連続的に変化させられるように駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の流量を制御する変速制御弁として機能する変速比コントロールバルブUP116及び変速比コントロールバルブDN118、伝動ベルト48が滑りを生じないように従動側油圧シリンダ46cの油圧であるベルト挟圧Pdを調圧する挟圧力コントロールバルブ120、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が係合或いは解放されるようにシフトレバー76の操作に従って油路が機械的に切り換えられるマニュアルバルブ122等を備えている。
ここで、油圧制御回路100内の第1ライン油圧PL1は、例えばエンジン12により回転駆動される機械式のオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1ライン油圧調圧弁)110によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて無段変速機18への入力トルクTIN等に応じた値に調圧されるようになっている。また、第2ライン油圧PL2は、例えばプライマリレギュレータバルブ110による第1ライン油圧PL1の調圧の為にプライマリレギュレータバルブ110から排出される油圧を元圧として、例えばリリーフ型のセカンダリレギュレータバルブ(第2ライン油圧調圧弁)112によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて調圧されるようになっている。また、モジュレータ油圧PMは、例えば第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータバルブ114によりリニアソレノイド弁の出力油圧である制御油圧に基づいて一定油圧に調圧されるようになっている。
変速比コントロールバルブUP116は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート116t及び入出力ポート116iを開閉するスプール弁子116aと、そのスプール弁子116aを入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング116bと、そのスプリング116bを収容し且つスプール弁子116aに入出力ポート116tと入出力ポート116iとが連通する方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS2の出力油圧である制御油圧PS2を受け入れる油室116cと、スプール弁子116aに入出力ポート116iを閉弁する方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるソレノイド弁DS1の出力油圧である制御油圧PS1を受け入れる油室116dとを備えている。また、変速比コントロールバルブDN118は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入出力ポート118tを開閉するスプール弁子118aと、そのスプール弁子118aを閉弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング118bと、そのスプリング118bを収容し且つスプール弁子118aに閉弁方向の推力を付与する為に制御油圧PS1を受け入れる油室118cと、スプール弁子118aに開弁方向の推力を付与する為に制御油圧PS2を受け入れる油室118dとを備えている。
ソレノイド弁DS1は、駆動側油圧シリンダ42cへ作動油を供給してその油圧を高め駆動側プーリ42のV溝幅を小さくして変速比γを小さくする側すなわちアップシフト側へ制御する為に制御油圧PS1を出力する。また、ソレノイド弁DS2は、駆動側油圧シリンダ42cの作動油を排出してその油圧を低め駆動側プーリ42のV溝幅を大きくして変速比γを大きくする側すなわちダウンシフト側へ制御するために制御油圧PS2を出力する。具体的には、制御油圧PS1が出力されると変速比コントロールバルブUP116の供給ポート116sに入力された第1ライン油圧PL1が入出力ポート116tを経て駆動側油圧シリンダ42cへ供給されて結果的に変速制御圧Pinが連続的に制御される。また、制御油圧PS2が出力されると駆動側油圧シリンダ42cの作動油が入出力ポート116t、入出力ポート116iさらに入出力ポート118tを経て排出ポート118xから排出されて結果的に変速制御圧Pinが連続的に制御される。例えば、図5に示すような運転者の加速要求量に対応するアクセル操作量Accをパラメータとして予め実験的に求められて記憶された車速Vと目標入力軸回転速度NIN *との関係(変速マップ)に従って算出された目標入力軸回転速度NIN *に実際の入力軸回転速度NINが一致するように、それ等の偏差に応じて無段変速機18が変速制御され、すなわち駆動側油圧シリンダ42cに対する作動油の供給、排出によって変速制御圧Pinが制御され、変速比γが連続的に変化させられる。図5の変速マップは変速条件に相当するもので、車速Vが小さくアクセル開度Accが大きい程大きな変速比γになる目標入力軸回転速度NIN *が設定されるようになっている。また、車速Vは出力軸回転速度NOUTに対応するため、入力軸回転速度NINの目標値である目標入力軸回転速度NIN *は目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γminと最大変速比γmaxの範囲内で定められている。
挟圧力コントロールバルブ120は、例えば軸方向へ移動可能に設けられることにより出力ポート120tを開閉するスプール弁子120aと、そのスプール弁子120aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング120bと、そのスプリング120bを収容し、スプール弁子120aに開弁方向の推力を付与する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧PSLSを受け入れる油室120cと、スプール弁子120aに閉弁方向の推力を付与する為に出力したベルト挟圧Pdを受け入れるフィードバック油室120dとを備えている。そして、挟圧力コントロールバルブ120は、リニアソレノイド弁SLSからの制御油圧PSLSをパイロット圧として第1ライン油圧PL1を連続的に調圧制御してベルト挟圧Pdを出力するようになっている。例えば、図6に示すような伝達トルクに対応する無段変速機18の入力トルクTINをパラメータとしてベルト滑りが生じないように予め実験的に求められて記憶された変速比γと必要油圧(目標ベルト挟圧に相当)Pd*との関係(ベルト挟圧マップ)に従って従動側油圧シリンダ46cへのベルト挟圧Pdが調圧され、このベルト挟圧Pdに応じてベルト挟圧力すなわち両可変プーリ42、46と伝動ベルト48との間の摩擦力が増減させられる。また、この挟圧力コントロールバルブ120の出力油圧である従動側油圧シリンダ46c内のベルト挟圧Pdは、油圧センサ120sにより検出されるようになっている。
また、無段変速機18の入力トルクTINは、例えばエンジントルクTEにトルクコンバータ14のトルク比tを乗じたトルク(=TE×t)として電子制御装置50により算出される。このエンジントルクTEは、例えばスロットル弁開度θTH(或いはそれに相当する吸入空気量QAIR等)をパラメータとしてエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとの予め実験的に求められて記憶された図7に示すような関係(マップ、エンジントルク特性図)からスロットル弁開度θTH及びエンジン回転速度NEに基づいて推定エンジントルクTEesとして電子制御装置50により算出される。或いは、エンジントルクTEは、例えばトルクセンサなどにより検出されるエンジン12の実出力トルク(実エンジントルク)TEなどが用いられても良い。また、上記トルク比tは、トルクコンバータ14の速度比e(=タービン回転速度NT/ポンプ回転速度NP(エンジン回転速度NE))の関数であり、例えば速度比eとトルク比tとの予め実験的に求められて記憶された不図示の関係(マップ)から実際の速度比eに基づいて電子制御装置50により算出される。尚、推定エンジントルクTEesは、実エンジントルクTEそのものを表すように算出されるものであり、特に実エンジントルクTEと区別する場合を除き、推定エンジントルクTEesを実エンジントルクTEとしての取り扱うものとする。従って、推定エンジントルクTEesには実エンジントルクTEも含むものとする。
マニュアルバルブ122において、入力ポート122aには例えばモジュレータバルブ114により一定油圧に調圧されたモジュレータ油圧PMが供給される。そして、シフトレバー76が「D」ポジション或いは「L」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが前進走行用出力圧として前進用出力ポート122fを経て前進用クラッチC1に供給され且つ後進用ブレーキB1内の作動油が後進用出力ポート122rから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1が係合させられると共に後進用ブレーキB1が解放させられる。
また、シフトレバー76が「R」ポジションに操作されると、モジュレータ油圧PMが後進走行用出力圧として後進用出力ポート122rを経て後進用ブレーキB1に供給され且つ前進用クラッチC1内の作動油が前進用出力ポート122fから排出ポートEXを経て例えば大気圧にドレーン(排出)されるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、後進用ブレーキB1が係合させられると共に前進用クラッチC1が解放させられる。
また、シフトレバー76が「P」ポジション或いは「N」ポジションに操作されると、入力ポート122aから前進用出力ポート122fへの油路及び入力ポート122aから後進用出力ポート122rへの油路がいずれも遮断され且つ前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1内の作動油が何れもマニュアルバルブ122からドレーンされるようにマニュアルバルブ122の油路が切り換えられ、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放させられる。
図4において、油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ26の解放状態と係合或いはスリップ状態とを切り換える為のロックアップリレーバルブ124と、ロックアップリレーバルブ124が係合側位置にあるときに制御油圧PSLUに従ってロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPを制御したりロックアップクラッチ26を係合させる為のロックアップコントロールバルブ126等を備えている。
ロックアップリレーバルブ124は、互いに当接可能で且つ両者間にスプリング128が介在させられた第1スプール弁子130及び第2スプール弁子132と、その第1スプール弁子130の軸端側に設けられ、第1スプール弁子130及び第2スプール弁子132を係合(ON)側の位置へ付勢する為に電子制御装置50によってデューティ制御されるリニアソレノイド弁SLUの出力油圧である制御油圧PSLUを受け入れる油室134と、第1スプール弁子130及び第2スプール弁子132を解放(OFF)側位置へ付勢する為に第1ライン油圧PL1を受け入れる油室136とを備えている。第1スプール弁子130がその解放側位置に位置すると、入力ポート138に供給された第2ライン油圧PL2が解放側ポート140からトルクコンバータ14の解放側油室14offへ供給されると同時に、トルクコンバータ14の係合側油室14on内の作動油が係合側ポート142から排出ポート144を経てクーラバイパス弁146或いはオイルクーラ148へ排出させられて、ロックアップクラッチ26の係合圧すなわち差圧ΔP(=PON−POFF)が低められる。反対に、第1スプール弁子130がその係合側位置に位置すると、入力ポート138に供給された第2ライン油圧PL2が係合側ポート142からトルクコンバータ14の係合側油室14onへ供給されると同時に、トルクコンバータ14の解放側油室14off内の作動油が解放側ポート140から排出ポート150、ロックアップコントロールバルブ126の制御ポート152、排出ポート154を経て排出されて、ロックアップクラッチ26の係合圧が高められる。
つまり、上記制御油圧PSLUが例えば所定値β以下の場合には、第1スプール弁子130はスプリング128及び第2ライン油圧PL2に基づく推力に従って図4の中心線より左側に示す解放側(OFF)位置に位置させられてロックアップクラッチ26が解放される。一方、制御油圧PSLUが例えば上記所定値βよりも高い所定値αを超えると、第1スプール弁子130は制御油圧PSLUに基づく推力に従って図4の中心線より右側に示す係合側(ON)位置に位置させられてロックアップクラッチ26が係合或いはスリップ状態とされる。第1スプール弁子130及び第2スプール弁子132の受圧面積、スプリング128の付勢力はこのように設定されているのである。そして、ロックアップリレーバルブ124が係合側に切り換えられたときのロックアップクラッチ26の係合或いはスリップ状態は、制御油圧PSLUの大きさに従って作動するロックアップコントロールバルブ126により制御される。
ロックアップコントロールバルブ126は、スプール弁子156と、このスプール弁子156に当接して図4の中心線より左側に示す排出側位置へ向かう推力を付与するプランジャ158と、スプール弁子156に図4の中心線より右側に示す供給側位置へ向かう推力を付与するスプリング160と、スプリング160を収容し且つスプール弁子156を供給側位置へ向かって付勢する為にトルクコンバータ14の係合側油室14on内の油圧PONを受け入れる油室162と、スプール弁子156の軸端側に設けられ、スプール弁子156を排出側位置へ向かって付勢する為にトルクコンバータ14の解放側油室14off内の油圧POFFを受け入れる油室164と、プランジャ158の軸端側に設けられ、制御油圧PSLUを受け入れる油室166とを備えている。
このため、上記スプール弁子156がその排出側位置に位置させられると、制御ポート152と排出ポート154との間が連通させられるので係合圧が高められてロックアップクラッチ26の係合トルクが増加させられるが、反対に供給側位置に位置させられると、第1ライン油圧PL1が供給されている供給ポート168と制御ポート152とが連通させられるので、第1ライン油圧PL1がトルクコンバータ14の解放側油室14off内へ供給されて係合圧が低められてロックアップクラッチ26の係合トルクが減少させられる。
ロックアップクラッチ26を解放させる場合には、制御油圧PSLUが前記所定値βよりも小さい値となるようにリニアソレノイド弁SLUが電子制御装置50により駆動される。反対に、ロックアップクラッチ26を係合させる場合には、制御油圧PSLUが最大値となるようにリニアソレノイド弁SLUが電子制御装置50により駆動され、ロックアップクラッチ26がスリップさせられる場合には、制御油圧PSLUが前記所定値βと最大値との間となるようにリニアソレノイド弁SLUが電子制御装置50により駆動される。すなわち、ロックアップコントロールバルブ126では、トルクコンバータ14の係合側油室14on内の油圧PONと解放側油室14off内の油圧POFFとが制御油圧PSLUに従って変化させられるので、係合圧すなわちそれら油圧PON及び油圧POFFの差圧ΔPに対応するロックアップクラッチ26の係合トルクも制御油圧PSLUに従って変化させられてスリップ量NSLPが制御されるのである。
ここで、車両発進に際して、エンジン回転速度NEの吹け上がりを抑制して燃料消費を抑制する為に、例えばアクセル開度Accに応じて燃費や動力性能を両立させる為の予め設定された目標エンジン回転速度NE *に制御するときにその目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制して燃料消費を抑制する為に、発進時からロックアップクラッチ26を係合に向けて作動させる制御(以下、発進時ロックアップクラッチ制御という)を実行する場合について考える。このような発進時ロックアップクラッチ制御では、ロックアップクラッチ26のシャダ振動(ジャダ振動)が発生する可能性のあるスリップ量NSLP(=NE−NT)の小さな係合側近傍のスリップ領域(シャダ振動領域)を通過させることになることから、スリップ量NSLPの減少率(差回転減少率dNSLP/dt)が小さく、通過時間が長いような場合にはシャダ振動の発生が懸念される。
図11は、ロックアップクラッチ26を係合する際に、発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合と、発進時ロックアップクラッチ制御を実行しない場合とを例示したタイムチャートである。図11において、二点鎖線で示す発進時ロックアップクラッチ制御を実行しない場合のロックアップクラッチ26の係合では、吹け上がったエンジン回転速度NEと車速V(出力軸回転速度NOUT)に拘束されるタービン回転速度NT(=入力回転速度NIN;前進用クラッチC1係合時)とのスリップ量NSLPが比較的大きい状態(例えば200rpm以上)から、素早く(例えば2秒以内に)ロックアップクラッチ26を係合に向けて制御することができる為、シャダ振動の発生に対する懸念が比較的小さい。一方で、実線で示す発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合のロックアップクラッチ26の係合では、目標値に制御されたエンジン回転速度NEと車速Vに拘束されるタービン回転速度NTとのスリップ量NSLPが小さい区間(シャダ振動領域)で、差回転減少率が比較的小さく、時間(例えばt2時点乃至t3時点)も比較的長くなる為、シャダ振動の発生に対する懸念が比較的大きい。その為、発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合には、発進時ロックアップクラッチ制御を実行しない場合に比較して、ロックアップクラッチのμ−V特性をシャダ振動が発生し難い特性とする工夫がより要求される。
図12は、ロックアップクラッチ26を係合する際に発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合において、ロックアップクラッチ26をゆっくり係合する場合(図11の実線相当)と、ロックアップクラッチ26を素早く係合する場合(図11の二点鎖線相当)とを例示したタイムチャートである。図12において、発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合に、図11の二点鎖線と同様に、二点鎖線で示すスリップ量NSLPが比較的大きい状態(例えば200rpm以上)から、素早く(例えば2秒以内に)ロックアップクラッチ26を係合に向けて制御すると、シャダ振動の発生に対する懸念が比較的小さくされると考えられる。しかしながら、エンジン回転速度NEを元々抑制している為、例えば目標エンジン回転速度NE *がエンジン12のアイドル回転速度NIDLに対してシャダ振動領域程度の回転速度差であると、ロックアップクラッチ26の素早い係合によりエンジン回転速度NEが例えばアイドル回転速度NIDL以下に低下し、耐エンスト性や動力性能等の問題が生じる可能性がある。
そこで、本実施例では、ロックアップクラッチ26を係合する際に発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合、スリップ量NSLPが小さいシャダ振動領域での差回転減少率を拡大し、シャダ振動領域の通過時間を短縮してシャダ振動の発生を回避する為に、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内(例えば2秒以内)で係合されるように無段変速機18をダウンシフトする係合前変速比変更制御を実行する。
具体的には、図8は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図8において、エンジン出力制御部すなわちエンジン出力制御手段82は、エンジン12の出力制御の為にエンジン出力制御指令信号SE、例えばスロットル信号や噴射信号や点火時期信号などをそれぞれスロットルアクチュエータ38や燃料噴射装置78や点火装置80へ出力する。例えば、エンジン出力制御手段82は、目標スロットル弁開度θTH *をアクセル開度Accに応じた目標エンジントルクTE *が得られる為のスロットル開度θTHとし、目標エンジントルクTE *が得られるようにスロットルアクチュエータ38により電子スロットル弁40を開閉制御する他、燃料噴射装置78により燃料噴射量を制御したり、点火装置80により点火時期を制御する。
変速制御部すなわち変速制御手段84は、例えば図5に示すような変速マップから実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて入力軸回転速度NINの目標入力軸回転速度NIN *を設定する。そして、変速制御手段84は、実入力軸回転速度NINがその目標入力軸回転速度NIN *と一致するように、例えば実入力軸回転速度NINと目標入力軸回転速度NIN *との回転偏差ΔNIN(=NIN *−NIN)に基づいて無段変速機18の変速を例えばフィードバック制御により実行する。つまり、変速制御手段84は、回転偏差ΔNINに基づいて駆動側油圧シリンダ42cに対する作動油の流量を制御することにより両可変プーリ42、46のV溝幅を変化させる為の変速制御指令信号(油圧指令)STを決定し、その変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力して変速比γを連続的に変化させる。油圧制御回路100は、変速制御手段84からの変速制御指令信号STに従って無段変速機18の変速が実行されるようにソレノイド弁DS1及びソレノイド弁DS2を作動させて駆動側油圧シリンダ42cへの作動油の供給・排出により変速制御圧Pinを調圧する。
ベルト挟圧力制御部すなわちベルト挟圧力制御手段86は、例えば図6に示すようなベルト挟圧マップから無段変速機18の入力トルクTIN(=エンジントルクTE×トルク比t:TEは例えば推定エンジントルクTEes)及び実変速比γ(=NIN/NOUT)で示される車両状態に基づいて目標ベルト挟圧Pd*を設定する。そして、ベルト挟圧力制御手段86は、その目標ベルト挟圧Pd*が得られるように従動側油圧シリンダ46cのベルト挟圧Pdを調圧する為の挟圧力制御指令信号SBを油圧制御回路100へ出力する。油圧制御回路100は、ベルト挟圧力制御手段86からの挟圧力制御指令信号SBに従ってベルト挟圧Pdが増減されるようにリニアソレノイド弁SLSを作動させてベルト挟圧Pdを調圧する。このように、ベルト挟圧力制御手段86は、無段変速機18の入力トルクTINに応じてリニアソレノイド弁SLSを作動させてベルト挟圧Pdを制御することにより、ベルト滑りが発生しない範囲で燃費向上の為出来るだけ低い値になるようにベルト挟圧力を制御する。
ロックアップクラッチ制御部すなわちロックアップクラッチ制御手段88は、例えばスロットル弁開度θTH及び車速Vを変数としてロックアップ解放(ロックアップオフ)領域、スリップ制御領域(フレックスロックアップ制御作動領域)、ロックアップ制御作動領域(ロックアップオン)領域を有する予め記憶された不図示の関係(マップ、ロックアップ領域線図)から実際のスロットル弁開度θTH及び車速Vで示される車両状態に基づいてロックアップクラッチ26の作動状態の切換えを制御する。例えば、ロックアップクラッチ制御手段88は、上記ロックアップ領域線図から実際の車両状態に基づいてロックアップクラッチ26のロックアップ解放領域、フレックスロックアップ制御作動領域、ロックアップ制御作動領域の何れかであるかを判断し、ロックアップクラッチ26のロックアップ解放への切換え或いはフレックスロックアップ制御作動乃至ロックアップ制御作動への切換えの為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。また、ロックアップクラッチ制御手段88は、フレックスロックアップ制御作動領域であると判断すると、ロックアップクラッチ26の実際のスリップ量NSLPを逐次算出し、その実際のスリップ量NSLPが目標スリップ量NSLP *となるように差圧ΔPを制御する為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。
油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ26の解放とスリップ状態乃至係合とが切り換えられるようにリニアソレノイド弁SLUを作動させてロックアップリレーバルブ124の弁位置を解放側(OFF)位置と係合側(ON)位置とで切り換える。また、油圧制御回路100は、ロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに従ってロックアップクラッチ26のスリップ状態乃至係合におけるトルク容量がロックアップコントロールバルブ126を介して増減されるようにリニアソレノイド弁SLUを作動させてロックアップクラッチ26を係合したりロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPを制御する。例えば、比較的高車速領域においては、ロックアップクラッチ26をロックアップ(完全係合)してポンプ翼車14pとタービン翼車14tとを直結することで、トルクコンバータ14の滑り損失(内部損失)を無くして燃費を向上させている。また、比較的低中速領域においては、ポンプ翼車14pとタービン翼車14tとの間に所定の微少な滑りを与えて係合させるスリップ制御(フレックスロックアップ制御)を実施することで、ロックアップ作動領域を拡大し、トルクコンバータ14の伝達効率を向上して燃費を向上させている。
また、変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88は、発進時ロックアップクラッチ制御を実行する発進時ロックアップクラッチ制御手段として機能する。例えば、変速制御手段84は、車両発進に際して、無段変速機18の変速比γを所定の第1変速比γ1に維持する為の変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力する。加えて、ロックアップクラッチ制御手段88は、車両発進に際して、エンジン回転速度NEが抑制されるようにロックアップクラッチ26をスリップ係合させながら係合に向けて制御する為のロックアップ制御指令信号SLを油圧制御回路100へ出力する。例えば、ロックアップクラッチ制御手段88は、アクセルオンに応じて予め設定された目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制すると共にその目標エンジン回転速度NE *にエンジン回転速度NEが維持されるように、ロックアップクラッチ26をスリップ係合させながら係合に向けて制御する。つまり、目標エンジン回転速度NE *と車速Vと共に変化する入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)とのスリップ量NSLPを制御して、エンジン回転速度NEの吹け上がりを抑制すると共に目標エンジン回転速度NE *に維持する。また、上記所定の第1変速比γ1は、例えば車速Vに拘束される入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が予め設定された変化勾配(変化速度)となるように設定される。また、発進時ロックアップクラッチ制御時に無段変速機18の変速比γを所定の第1変速比γ1に維持することで、目標エンジン回転速度NE *に維持する為のロックアップクラッチ26のスリップ係合が容易になる。
尚、上記発進時ロックアップクラッチ制御は、アクセルオンの車両発進に際して、アクセルオンに伴ってエンジン回転速度NEが目標エンジン回転速度NE *以上に一旦(一時的に)上昇してしまうことを抑制するように、ロックアップクラッチ26をスリップ係合させながら係合に向けて制御することである。その為、発進時ロックアップクラッチ制御は、アクセルペダル68の踏み込み具合に対する車両加速感等において運転者が違和感等を感じ難くする為に、例えばアクセル開度Accが比較的低開度となるアクセルオンの車両発進時に実行されることが望ましい。
発進時制御実行中判定部すなわち発進時制御実行中判定手段90は、変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88により発進時ロックアップクラッチ制御が実行されているか否かを、例えば変速制御手段84からの変速制御指令信号ST及びロックアップクラッチ制御手段88からのロックアップ制御指令信号SLに基づいて判定する。
係合前判定部すなわち係合前判定手段92は、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態であるか否かを判定する。例えば、係合前判定手段92は、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが係合側近傍のシャダ振動領域に入る前の予め求められて定められた所定のスリップ量NSLP’とされたか否かに基づいて、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態であるか否かを判定する。
変速制御手段84は、発進時ロックアップクラッチ制御の実行中に、係合前判定手段92によりロックアップクラッチ26が所定の係合前状態であると判定された場合には、ロックアップクラッチ26の係合への進行が抑制されるように無段変速機18を所定の第1変速比γ1からアップシフトする為の変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力する。例えば、変速制御手段84は、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が現在の入力軸回転速度NINに維持されるように無段変速機18を前記所定の第1変速比γからアップシフトする。このとき、ロックアップクラッチ制御手段88は、例えばエンジン回転速度NEが現在のエンジン回転速度NEに維持されるように、すなわち目標エンジン回転速度NE *にエンジン回転速度NEがそのまま維持されるように、ロックアップクラッチ26をスリップ係合させる。これにより、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが現在のスリップ量NSLPに維持される、すなわち所定のスリップ量NSLP’に維持される。つまり、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが現在のスリップ量NSLPに維持されるように、すなわちロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPがシャダ振動が発生しない所定のスリップ量NSLP’に維持されるように、無段変速機18の所定の第1変速比γ1からのアップシフトが実行されるのである。
そして、変速制御手段84は、所定の第1変速比γ1からのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内で係合されるように無段変速機18をダウンシフトする為の変速制御指令信号STを油圧制御回路100へ出力する。例えば、変速制御手段84は、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が現在の入力軸回転速度NINからロックアップ(係合)時の同期回転速度である目標エンジン回転速度NE *に向かって所定時間T’以内で変化させられるように無段変速機18をダウンシフトする。このとき、ロックアップクラッチ制御手段88は、例えば目標エンジン回転速度NE *にエンジン回転速度NEがそのまま維持されるようにロックアップクラッチ26をスリップ係合させ、入力軸回転速度NINが目標エンジン回転速度NE *に同期させられたときにロックアップクラッチ26を係合させる。これにより、所定の第1変速比γ1からのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26の現在のスリップ量NSLP分が所定時間T’以内で収束させられる、すなわち所定のスリップ量NSLP’分が所定時間T’以内で収束させられる。つまり、所定の第1変速比γ1からのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26の係合を速やかに完了させる為に、ロックアップクラッチ26の現在のスリップ量NSLP分を所定時間T’以内で収束させるように、すなわち所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’以内で収束させるように(例えば零に向かって変化させるように)、無段変速機18のダウンシフトが実行されるのである。
このように変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88は、発進時ロックアップクラッチ制御の実行中に無段変速機18の変速比γを変化させてシャダ振動領域における差回転減少率dNSLP/dtを拡大し、シャダ振動領域の通過時間を短縮する為の係合前変速比変更制御を実行する。尚、上記所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’に変化させる変化速度は、例えばシャダ振動領域における差回転減少率dNSLP/dtを係合前変速比変更制御を実行しない場合に比較してより大きくし且つシャダ振動領域の通過時間も短縮することによりシャダ振動を適切に回避する為の予め実験的に求められて設定された係合前変速比変更制御中の(シャダ振動領域における)ダウンシフト速度(変速速度)である。また、この所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’に変化させる変化速度は、係合前変速比変更制御中のロックアップクラッチ26の係合を速やかに完了させる為の予め実験的に求められて設定されたシャダ振動領域におけるロックアップクラッチ26の係合進行速度でもある。
但し、所定の第1変速比γ1からのアップシフト後、直ぐに上記係合前変速比変更制御中の変速速度にてダウンシフトを実行した場合、車速Vとの兼ね合いでロックアップ(係合)時の同期回転速度である目標エンジン回転速度NE *とならず、未だスリップ状態となっている可能性がある。つまり、上記係合前変速比変更制御中の変速速度にてダウンシフトを実行したとしても、所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’以内で収束させられない可能性がある。そこで、所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’以内で収束させられるときに無段変速機18のダウンシフトを実行する。例えば、第1変速比γ1からのアップシフト開始後に所定待機時間THLDが経過したときにロックアップクラッチ26の係合を速やかに完了させる為に無段変速機18のダウンシフトを実行するようにすれば良い。この所定待機時間THLDは、例えばアップシフト開始時の入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が仮に所定の第1変速比γ1で車速Vの変化速度にて同期回転速度(目標エンジン回転速度NE *)へ変化した場合の変化時間(後述する図10のt2時点乃至t3時点の期間)から上記所定時間T’を差し引いた時間以上の時間に設定される。
ダウンシフト条件判定部すなわちダウンシフト条件判定手段94は、無段変速機18のダウンシフトの実行により所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’以内で収束させられるか否かを、例えば第1変速比γ1からのアップシフト開始後に所定待機時間THLDが経過したか否かに基づいて判定する。
ところで、図12を用いて説明したように、発進時ロックアップクラッチ制御を実行する場合に、スリップ量NSLPが比較的大きい状態から、素早くロックアップクラッチ26を係合すると、シャダ振動の発生に対する懸念が比較的小さくされる。しかしながら、ロックアップクラッチ26の素早い係合によりエンジン回転速度NEが例えばアイドル回転速度NIDL以下に低下し、耐エンスト性や動力性能等の問題が生じる可能性がある。そこで、本実施例の係合前変速比変更制御は、発進時ロックアップクラッチ制御時に常に実行するようにしても良いが、特に、効果が顕著に得られるような上記耐エンスト性や動力性能等の問題が生じる可能性があるときに実行するようにしても良い。例えば、発進時ロックアップクラッチ制御時の目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下のときに、上記係合前変速比変更制御を実行するようにしても良い。この所定エンジン回転速度NE’は、例えば発進時ロックアップクラッチ制御時に素早くロックアップクラッチ26を係合した場合に耐エンスト性や動力性能等の問題が生じる可能性がある目標エンジン回転速度NE *として予め求められた高回転側の上限値、或いはその上限値に更に安全マージンとしての回転速度α分が加えられた値(=上限値+α)に設定される。
目標回転速度判定部すなわち目標回転速度判定手段96は、変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88による発進時ロックアップクラッチ制御中の目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下であるか否かを判定する。変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88は、目標回転速度判定手段96により発進時ロックアップクラッチ制御中の目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下であると判定された場合には、発進時ロックアップクラッチ制御の実行中に係合前変速比変更制御を実行する。
図9は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわち車両発進時にロックアップクラッチ26をスリップ係合させながら係合に向けて制御する際にシャダ振動の発生を回避する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。また、図10は、図9のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の一例を示すタイムチャートである。図10中の破線は、発進時ロックアップクラッチ制御の実行中に係合前変速比変更制御を実行しなかった場合の従来例である。
図9において、先ず、発進時制御実行中判定手段90に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えば発進時ロックアップクラッチ制御が実行されているか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合(図10のt1時点以降)は目標回転速度判定手段96に対応するS20において、例えば発進時ロックアップクラッチ制御中の目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下であるか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は係合前判定手段92に対応するS30において、例えばロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが所定のスリップ量NSLP’とされたか否かに基づいてロックアップクラッチ26が所定の係合前状態であるか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合(図10のt2時点)は変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88に対応するS40において、例えばエンジン回転速度NEが目標エンジン回転速度NE *にそのまま維持されるようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると共に、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が現在の入力軸回転速度NINに維持されるように無段変速機18が前記所定の第1変速比γからアップシフトされる。つまり、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが所定のスリップ量NSLP’に維持されてロックアップクラッチ26の係合への進行が抑制されるように、無段変速機18の所定の第1変速比γ1からのアップシフトが実行される(図10のt2時点乃至t4時点)。次いで、ダウンシフト条件判定手段94に対応するS50において、例えば無段変速機18のダウンシフトの実行により所定のスリップ量NSLP’分を所定時間T’以内で収束させられるか否かが判定される。具体的には、上記S40におけるアップシフト開始後に所定待機時間THLDが経過したか否かが判定される。このS50の判断が否定される場合は上記S40に戻るが肯定される場合(図10のt4時点)は変速制御手段84及びロックアップクラッチ制御手段88に対応するS60において、例えばエンジン回転速度NEが目標エンジン回転速度NE *にそのまま維持されるようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると共に、入力軸回転速度NIN(タービン回転速度NT)が現在の入力軸回転速度NINからロックアップ(係合)時の同期回転速度である目標エンジン回転速度NE *に向かって所定時間T’以内で変化させられるように無段変速機18がダウンシフトされる。そして、入力軸回転速度NINが目標エンジン回転速度NE *に同期させられたときにロックアップクラッチ26が係合させられる。つまり、所定のスリップ量NSLP’分が所定時間T’以内で収束させられるように無段変速機18のダウンシフトが実行される(図10のt4時点乃至t5時点)。
これにより、図10からも明らかなように、所定のスリップ量NSLP’よりも小さなシャダ振動が懸念される係合側近傍のシャダ振動領域において、従来例に比較して、差回転減少率dNSLP/dtが拡大され、シャダ振動領域の通過時間が短縮される。よって、シャダ振動の発生が適切に回避される。
上述のように、本実施例によれば、車両発進に際して、発進時ロックアップクラッチ制御を実行するとき、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように無段変速機18が所定の第1変速比γ1からアップシフトされ、そのアップシフト後は、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内で係合されるように無段変速機18がダウンシフトされるので、例えばシャダ振動が懸念されるロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPの小さな係合側近傍のシャダ振動領域に入ることが抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。これにより、車両発進時に発進時ロックアップクラッチ制御を実行する際に、ロックアップクラッチ26で発生する場合があるシャダ振動を適切に回避することができる。これとは別に、ロックアップクラッチ26のμ−V特性向上が不要となる為、コストを低減する効果がある。見方を換えれば、従来仕様のままで、車両発進時にロックアップクラッチ26を作動させることによる燃費向上をコストアップ無く図ることができる。
また、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となるとは、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPがシャダ振動領域に入る前の所定のスリップ量NSLP’とされたときであるので、シャダ振動領域に入ることが確実に抑制されると共に、そのシャダ振動領域が速やかに通過させられる。
また、本実施例によれば、所定の第1変速比γ1からのアップシフト開始後に所定待機時間THLDが経過したときにロックアップクラッチ26の係合を速やかに完了させる為に無段変速機18のダウンシフトを実行するので、シャダ振動領域が速やかに通過させられる。
また、本実施例によれば、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、エンジン回転速度NEを現在の回転速度に維持すると共に、ロックアップクラッチ26のスリップ量NSLPが現在のスリップ量NSLPに維持されるように無段変速機18を所定の第1変速比γ1からアップシフトするので、シャダ振動領域に入ることが確実に抑制される。
また、本実施例によれば、エンジン回転速度NEを現在の回転速度に維持すると共に、ロックアップクラッチ26の現在のスリップ量NSLP分を所定時間T’以内で収束させるように無段変速機18をダウンシフトするので、シャダ振動領域における差回転減少率dNSLP/dtを拡大し、シャダ振動領域の通過時間も短縮することができる。よって、シャダ振動を一層適切に回避することができる。
また、本実施例によれば、アクセルオンに応じて予め設定された目標エンジン回転速度NE *以上にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを抑制するように、ロックアップクラッチ26をスリップ係合させながら係合に向けて制御する発進時ロックアップクラッチ制御を実行するので、車両発進の際にエンジン回転速度NEが吹け上がるのを適切に抑制することができ、燃費が向上される。
また、本実施例によれば、目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下のときに、無段変速機18を所定の第1変速比γからアップシフトした後、ダウンシフトするので、例えばエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE’以下の低回転速度に抑制された車両発進時に、シャダ振動回避の為にロックアップクラッチ26を素早く係合することに伴ってエンジン回転速度NEが低くなりすぎる可能性があることが回避される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、発進時ロックアップクラッチ制御の際に実行する係合前変速比変更制御として、ロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、その係合への進行が抑制されるように無段変速機18をアップシフトし、アップシフト後に無段変速機18をダウンシフトする制御を例示したが、少なくともロックアップクラッチ26が所定の係合前状態となると、ロックアップクラッチ26が所定時間T’以内で係合されるように無段変速機18をダウンシフトする制御が実行されれば良い。このようにしても、無段変速機18が所定の第1変速比γ1からアップシフトされることにより係合への進行が抑制されることを除けば前述と同様にシャダ振動領域が速やかに通過させられるという作用効果が得られる。尚、この場合には、例えば図9に示したフローチャートにおいては、ステップS10、S30、及びS60を備えるだけで良い。
また、前述の実施例(図9のフローチャート)では、係合前変速比変更制御は、発進時ロックアップクラッチ制御時の目標エンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE’以下のときに実行されたが、発進時ロックアップクラッチ制御時に常に実行するようにしても良い。この場合には、図9に示したフローチャートにおいては、ステップS20を備えなくとも良い。
また、前述の実施例では、流体伝動装置としてロックアップクラッチ26が備えられているトルクコンバータ14が用いられていたが、トルク増幅作用のないフルードカップリングが用いられてもよい。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:エンジン
14:トルクコンバータ(流体伝動装置)
18:無段変速機(車両用無段変速機)
26:ロックアップクラッチ
50:電子制御装置(制御装置)
14:トルクコンバータ(流体伝動装置)
18:無段変速機(車両用無段変速機)
26:ロックアップクラッチ
50:電子制御装置(制御装置)
Claims (8)
- 変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機と、エンジンの動力を該無段変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力間を直結可能なロックアップクラッチとを備える車両用無段変速機の制御装置であって、
車両発進に際して、
前記無段変速機の変速比を所定の第1変速比に維持しつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御し、
前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、該係合への進行が抑制されるように前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトし、
前記アップシフト後は、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機をダウンシフトすることを特徴とする車両用無段変速機の制御装置。 - 前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となるとは、該ロックアップクラッチの入出力回転速度差が、該ロックアップクラッチのシャダ振動が発生する可能性のある入出力回転速度差の小さな係合側近傍のスリップ領域に入る前の予め定められた所定の入出力回転速度差とされたときであることを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- 前記第1変速比からのアップシフト開始後に所定待機時間が経過したときに前記ロックアップクラッチの係合を速やかに完了させる為に前記無段変速機のダウンシフトを実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- 前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、前記エンジンの回転速度を現在の回転速度に維持すると共に、前記ロックアップクラッチの入出力回転速度差が現在の入出力回転速度差に維持されるように前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- 前記アップシフト後は、前記エンジンの回転速度を現在の回転速度に維持すると共に、前記ロックアップクラッチの現在の入出力回転速度差分を前記所定時間以内で収束させるように前記無段変速機をダウンシフトすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- アクセルオンに応じて予め設定された目標回転速度以上に前記エンジンの回転速度が吹け上がるのを抑制するように、前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- 前記目標回転速度が所定回転以下のときに、前記無段変速機を前記第1変速比からアップシフトした後、ダウンシフトすることを特徴とする請求項6に記載の車両用無段変速機の制御装置。
- 変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機と、エンジンの動力を該無段変速機へ伝達する流体伝動装置の入出力間を直結可能なロックアップクラッチとを備える車両用無段変速機の制御装置であって、
車両発進に際して、
前記無段変速機の変速比を所定の第1変速比に維持しつつ、前記エンジンの回転速度が抑制されるように前記ロックアップクラッチをスリップ係合させながら係合に向けて制御し、
前記ロックアップクラッチが所定の係合前状態となると、前記ロックアップクラッチが所定時間以内で係合されるように前記無段変速機をダウンシフトすることを特徴とする車両用無段変速機の制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2009266863A JP2011112096A (ja) | 2009-11-24 | 2009-11-24 | 車両用無段変速機の制御装置 |
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JP (1) | JP2011112096A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2018074564A1 (ja) * | 2016-10-21 | 2019-04-11 | ジヤトコ株式会社 | 車両用無段変速機の制御装置および制御方法 |
-
2009
- 2009-11-24 JP JP2009266863A patent/JP2011112096A/ja active Pending
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