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JP2011168501A - 芳香族カルボン酸エステル化合物 - Google Patents

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JP2011168501A JP2010031153A JP2010031153A JP2011168501A JP 2011168501 A JP2011168501 A JP 2011168501A JP 2010031153 A JP2010031153 A JP 2010031153A JP 2010031153 A JP2010031153 A JP 2010031153A JP 2011168501 A JP2011168501 A JP 2011168501A
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嘉弘 佐藤
Kenichi Ishihara
健一 石原
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Abstract

【課題】化石資源の枯渇や温室効果ガスである二酸化炭素の増加を抑制でき、従来の化石資源由来の原料に替わる樹脂原料として使え得るバイオマス由来の芳香族カルボン酸エステル化合物、およびその製造方法の提供。
【解決手段】バイオマス由来の原料(例えば、パラサイメン、オルソキシレン)からmodern reference standardに対する14Cの濃度が50.0pMC以上である芳香族カルボン酸エステル化合物(例えば、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル)を合成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、14Cの濃度がmodern reference standardに対して50.0pMC(percent Modern Carbon)以上であることを特徴とする芳香族カルボン酸エステルに関する。
芳香族カルボン酸エステル化合物は、そのほとんどが石油、天然ガス及び石炭などの化石資源を原料として製造されている。近年、化石資源の枯渇懸念といった資源問題や二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化への懸念から、化学原料をバイオマス資源から変換する方法に対して注目が集まっている。
化石資源を原料とせず、バイオマス資源を原料とした化学物質としては、トウモロコシ、サトウキビやサツマイモなどから得られる澱粉や糖分を微生物で発酵させて得られたバイオエタノールなどが知られている。また、バイオマス資源を原料として用いたプラスチックとしては、ポリ乳酸や、バイオエタノールを原料としたエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(例えば、特許文献1参照。)、バイオマス由来の1,3−プロパンジオール(例えば、特許文献2参照。)を用いたポリトリメチレンテレフタレートやバイオマス由来の1,4−ブタンジオールを用いたポリブチレンサクシネート(例えば、特許文献3参照。)などがある。
しかしながら、上記のバイオマス資源を原料とした化学物質は脂肪族化合物であり、バイオマス資源を原料とした芳香族化合物の例は極めて少ない。バイオマス資源から芳香族化合物を製造する方法としては、微生物発酵によりバイオマス資源から製造したメタンから、触媒反応により中間体としてベンゼンを製造し、更には各種ベンゼン誘導体誘導体を製造する方法(例えば、特許文献4参照。)が開示されているが、具体的な実施例の記載がなく、その実用性が疑わしい。更に、バイオマス資源から製造した芳香族化合物は化石資源から製造した芳香族化合物と外観上同じものであり、製造された芳香族化合物がバイオマス資源由来のものかどうか判別できないという問題点がある。
特開2009−091694号公報 特表2001−505041号公報 特許第4301918号公報 特開2004−123666号公報
本発明は、化石資源の枯渇や温室効果ガスである二酸化炭素の増加を抑制でき、従来の化石資源由来の原料に替わる樹脂原料として使え得るバイオマス由来の芳香族カルボン酸エステル化合物を提供するものである。
本発明者らは上記従来技術に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、バイオマス資源から製造した芳香族カルボン酸エステル化合物を約50重量%以上含有し、14Cの濃度がmodern reference standardに対して50.0pMC以上であることを特徴とする芳香族カルボン酸エステルに関するものである。
本発明は、化石資源の枯渇問題や地球温暖化問題等の解決に貢献し、かつ実用的な物性を有する樹脂原料を提供することが出来、その工業的な意義は大きい。例えば、テレフタル酸ジメチル(以降、DMTと略す事がある)を化石資源から製造する場合、DMT1トンあたり、原料として44,725MJ(メガ・ジュール)の熱量分の化石資源が必要であるが、DMTをバイオマス資源から製造する場合は原料として化石資源を用いる必要がない。さらに、バイオマス由来のDMTはカーボンニュートラルであるため、化石資源由来のDMTと比較して、焼却処理した際にはDMT1トンあたり、2.27トンの二酸化炭素を削減することが出来ることになる。また、このバイオマス由来のDMTを用いてポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す事がある)を合成した場合、PET中のDMT重量分(約70重量%)の化石資源使用量や二酸化炭素を削減できることになる。同様に、バイオマス資源から製造したナフタレンジカルボン酸ジメチル(以降、NDCMと略す事がある)の場合には化石資源由来のNDCMと比較して、焼却処理した際にはNDCM1トンあたり、2.53トンの二酸化炭素を削減することが出来ることになる。また、このバイオマス由来のNDCMを用いてポリエチレンナフタレート(以降、PENと略す事がある)を合成した場合、PEN中のNDCM重量分(約75重量%)の化石資源使用量や二酸化炭素を削減できることになる。
本発明において、バイオマス資源とは植物の光合成作用により太陽エネルギーを使い、水と二酸化炭素から生成される再生可能な生物由来のカーボンニュートラルな有機性資源を指し、具体的にはデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれ、そして化石資源を除く資源である。バイオマス資源はその発生形態から廃棄物系、未利用系、資源作物系の3種に分類される。バイオマス資源は具体的には、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣など)、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、おから、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油など)、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、キャッサバ、サゴヤシなど)、バガス、そば、大豆、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油など)、パルプ黒液、生ごみ、植物油カス、水産物残渣、家畜排泄物、食品廃棄物、排水汚泥などが挙げられる。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導され、本発明においては、バイオマス資源から芳香族カルボン酸エステル化合物の原料やその原料から芳香族カルボン酸を製造する。芳香族カルボン酸を製造することができれば、その製造方法は特に限定はされないが、菌類や細菌などの微生物などの働きを利用した生物学的処理方法、酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー、光エネルギーなどを利用した化学的処理方法、微細化、圧縮、マイクロ波処理、電磁波処理など物理的処理方法など既知の方法が挙げられる。例えば、糖類などから得られるバイオエタノールからテレフタル酸ジメチルを製造する方法としては、バイオエタノールをゼオライト(H−ZSM−5型など)触媒上で芳香族混合物に接触転化し、芳香族混合物を蒸留等によって精製してパラキシレンを得、得られたパラキシレンを触媒を用いて酸化、ついでエステル化することでテレフタル酸ジメチルを得る方法などが挙げられるがこれらに限定されない。
その他の工程には、例えば、通常、特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルで粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸で酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等生物学的処理が挙げられる。
バイオマス資源から得られる芳香族カルボン酸エステル化合物の原料としては、具体的にはメタンなどのアルカン、エチレンなどのアルケン、アセチレンなどのアルキン、キシロース、グルコース、セルロース、ヘミセルロースなどの糖類、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、グリセロールなどのアルコール類、リグニンやイソプレン、テレビン油、α−ピネン、リモネン、パラサイメン、1,8−シネオール、リナロール、ビサボラン、カリオフィレンなどのテルペン系化合物、オレイン酸などの不飽和脂肪酸やセバシン酸などの直鎖飽和二塩基酸などが挙げられる。
バイオマス資源から生成される芳香族カルボン酸エステル化合物としては、具体的には安息香酸メチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジ−n−プロピル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジイソプロピル、イソフタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−プロピル、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸ジエチル、ナフタレンジカルボン酸ジイソプロピル又はナフタレンジカルボン酸ジ−n−プロピルなどが挙げられる。好ましくはテレフタル酸ジメチル又はナフタレンジカルボン酸ジメチルである。
ここで、本発明におけるバイオマス由来成分の含有割合を特定するにあたって、放射性炭素14Cの測定を行うことの意味について、以下に説明する。14Cの濃度測定は、タンデム加速器と質量分析計を組合せた加速器質量分析法(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)によって、分析する試料に含まれる炭素の同位体(具体的には12C、13C、14Cが挙げられる)を加速器により原子の重量差を利用して物理的に分離し、同位体の原子一つ一つの存在量を計測する方法である。
炭素原子1モル(6.02×1023個)中には、通常の炭素原子の約一兆分の一である約6.02×1011個の14Cが存在する。14Cは放射性同位体と呼ばれ、その半減期は5730年で規則的に減少している。これらが全て崩壊するには22.6万年を要する。従って大気中の二酸化炭素等が植物等に取り込まれて固定化された後、22.6万年以上が経過したと考えられる石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料においては、固定化当初はこれらの中にも含まれていた14C元素は全てが崩壊しており、21世紀である現在は全く含まれていない。故にこれらの化石燃料を原料として生産された化学物質にも14C元素は全く含まれていない。一方、14Cは宇宙線が大気中で原子核反応を行い、絶え間なく生成され、放射壊変による減少とがバランスし、地球の大気環境中では、14Cの量は一定量となっている。
一方、大気中の二酸化炭素が植物やそれを食する動物などに取り込まれて固定化された場合には、その取り込まれた状態では、14Cは新たに補充されることなく、14Cの半減期に従って、時間の経過とともに14C濃度は一定の割合で低下する。このため、芳香族カルボン酸エステル化合物中の14C濃度を分析することにより、化石資源を原料としたものか、或いはバイオマス資源を原料にした芳香族カルボン酸エステル化合物か簡易に判別することが可能となる。またこの14C濃度は1950年時点の自然界における循環炭素中の14C濃度をmodern standard referenceとし、この14C濃度を100%とする基準を用いる事が通常行われる。現在のこのようにして測定される14C濃度は約110pMC前後の値であり、仮に試料として用いられている物質が100%天然系(生物系)由来の物質で製造されたものであれば、110pMC程度の値を示すことが知られている。一方石油系(化石系)由来の物質を用いてこの14C濃度を測定した場合、ほぼ0pMCを示す。これらの値を利用して天然由来系−化石由来系の混合比を算出する事が出来る様になる。更にこの14C濃度の基準となるmodern standard referenceとしてはNIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準・技術研究所)が発行した蓚酸標準体を用いる事が好ましく採用する事が出来る。この蓚酸中の炭素の比放射能(炭素1g当たりの14Cの放射能強度)を炭素同位体毎に分別し、13Cについて一定値に補正して、西暦1950年から測定日までの減衰補正を施した値を標準の14C濃度濃度の値として用いている。本発明の芳香族カルボン酸エステル化合物においては、この14C濃度比率が50.0pMC以上であることが必要である。好ましくは52.0pMC以上である。
芳香族カルボン酸エステル化合物中の14C濃度の分析方法は、まず芳香族カルボン酸エステル化合物の前処理が必要となる。具体的には芳香族カルボン酸エステル化合物に含まれる炭素を酸化処理し、すべて二酸化炭素へと変換する。更に、得られた二酸化炭素を水や窒素と分離し、二酸化炭素を還元処理し、固形炭素であるグラファイトへと変換する。この得られたグラファイトにCsなどの陽イオンを照射して炭素の負イオンを生成させ、タンデム加速器を用いて炭素イオンを加速し、負イオンから陽イオンへ荷電変換させ、質量分析電磁石により123+133+143+の進行する軌道を分離し、143+は静電分析器により測定を行う。同位体原子ひとつひとつを測定する事ができるので、従来の1/1000以下の少量の試料量で高精度の測定をすることができるのが特徴である。
なお本発明の芳香族カルボン酸エステル化合物の製造方法について以下に示す。本発明の製造方法の実施において、芳香族部分を形成させる原料としては、バイオマスから合成された、脂肪族アルコール類、オレフィン類、環状テルペン類、不飽和脂肪酸、および直鎖飽和二塩基酸などを用いることが出来る。脂肪族アルコールとしては、具体的にはメタノールやエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(テトラメチレングリコール、ブタンジオール)、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、などのアルコール類、リナロール、ゲラニオールなどのテルペン系アルコール化合物などが挙げられる。オレフィン類としては、具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、イソオクテンなどが挙げられる。環状テルペン類としては、具体的にはα−ピネン、β−ピネン、リモネン、パラサイメン、1,8−シネオール、1,4−シネオールなどが挙げられる。不飽和脂肪酸としては、具体的にはオレイン酸などが挙げられる。直鎖飽和二塩基酸としては、具体的にはセバシン酸などが挙げられる。二環以上の芳香族化合物や多縮合環を有する芳香族化合物を製造する際には、オルソキシレン、メタキシレンを用いることもできる。これらの化合物群の中で好ましくは環状テルペン類である。より好ましくはパラサイメンであり、パラサイメンは構造中にベンゼン骨格を有しており、そのまま酸化反応に用いることができるためである。
本発明の製造方法の実施において、エステル交換反応に用いるアルコール類としては、化石資源から合成されたもの、バイオマス資源から合成されたもののどちらも用いることが出来るが、芳香族カルボン酸エステル化合物中のバイオマス由来成分の含有割合を高めるという目的からは、バイオマス資源から合成されたアルコール類を用いることが好ましい。アルコール類としては、具体的にはメタノールやエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどが挙げられ、メタノールが好ましい。
原料であるバイオマス資源から合成された脂肪族アルコール類などから、芳香族カルボン酸エステル化合物を製造する方法として、バイオマス資源から合成された脂肪族アルコール類などをゼオライトと接触させてキシレンを製造し、得られたキシレンを酸化、次いでエステル化する方法、バイオマス資源から合成された環状テルペン類のパラサイメンを酸化、次いでエステル化する方法などが挙げられる。用いられるゼオライトとしては特に指定はなく、例えばペンタシル型、モルデナイト型、フォージャサイト型などが上げられ、特に好ましくはペンタシル型の中のH−ZSM−5型である。ゼオライトの細孔径を調整するために白金、亜鉛といった単体金属をゼオライト内に担持させることも生成する芳香族化合物の量を上げるために有効である。使用するゼオライトの量としては原料の脂肪族アルコール10重量部に対し1重量部以上である。より好ましくは脂肪族アルコール10重量部に対し2重量部以上6重量部以下である。使用するゼオライト量が1重量部未満であると生成する芳香族化合物の量が少なくなるため好ましくない。10重量部を超えると副反応が起こりやすく、キシレンの収率が低下する。ゼオライトと脂肪族アルコールが接触するときの圧力は加圧、常圧何れでもよいが、ゼオライトと脂肪族アルコールを接触させる際の反応温度は300℃以上500℃以下である。好ましくは350〜450℃である。反応温度が300℃以上でないと生成する芳香族化合物の量が少なくなる。一方で反応温度が500℃を超えるとなると熱エネルギーを多量に使用するため非効率である。また副反応が起こりやすくなり、芳香族化合物の収率が低下する。
一方でパラサイメンを原料に用いる場合には、既に芳香族環は形成されているので、芳香族環に直結したアルキル基を通常用いられる酸化反応により酸化させる事で芳香族カルボン酸化合物を得ることができる。更に得られた芳香族カルボン酸化合物を通常の手法によりメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのような低級のアルコールと酸触媒等の存在下にエステル化反応を行うことにより芳香族カルボン酸エステル化合物を得ることができる。芳香族カルボン酸化合物と低級アルコールをエステル化する際には高温高圧の条件下で行う条件を選択しなければならないこともある。そのような場合には、一旦エチレングリコールの等のジヒドロキシ化合物とエステル化反応を行い、ついでエステル交換反応触媒の存在下、上述の低級アルコールと反応させる手法を採用しても良い。このパラサイメンを経由して製造する方法は比較的容易にテレフタル酸を製造することができるので、テレフタル酸のエステル化合物を製造するには好ましく採用することができる。
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。なお実施例及び比較例において「部」と称しているものは重量部を表す。また化石資源から製造したカルボン酸エステル化合物とは、通常工業的に製造されている石油、天然ガス又は石炭などの化石資源を原料として製造されたカルボン酸エステル化合物を指す。
生成物の分析は、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析装置で行った。
14C濃度比較(pMC:percent Modern Carbon)は、1950年時点の循環炭素中の14Cを基準(100%)として、上記の加速器質量分析法(AMS)による測定で行った。
[実施例1]
バイオマス(オレンジの皮やパルプ黒液)を原料として合成されたパラサイメンである、ヤスハラケミカル社製パラサイメン300重量部、酢酸501重量部、触媒として酢酸コバルト1.059重量部、酢酸マンガン1.101重量部、臭化リチウム1.317重量部をそれぞれチタン製のオートクレーブに仕込み、反応温度180℃、圧縮空気で反応系内の圧力を1.5MPaに調整し、圧縮空気を反応器に供給しながら、5時間撹拌して反応させた。反応後、反応液を吸引ろ過して固液分離し、得られた固形物を純水で2回洗浄ろ過、90℃で一昼夜乾燥し、テレフタル酸を240重量部得た。
得られたテレフタル酸240重量部と、エチレングリコール720重量部、触媒として炭酸カリウム6重量部を三ツ口フラスコに仕込み、反応温度200℃、常圧で4時間撹拌しながら反応させた。その後、反応液からエチレングリコールを400重量部溜去して、エチレングリコール溜去後の反応液に、稲わらや木材をガス化後、銅亜鉛触媒で液化、精製して得たバイオマス由来のメタノール730重量部、触媒として炭酸ナトリウム7.2重量部を加え、メタノールを還流させながら1時間反応させた。反応後、反応液を吸引ろ過して固液分離し、得られた固形物をメタノールで3回洗浄ろ過、90℃で一昼夜乾燥した。更に乾燥した固形物を蒸留して精製することで、テレフタル酸ジメチルを135重量部得た。
上記のバイオマス資源から製造したテレフタル酸ジメチルを10重量部採取し、グラファイトに変換し加速器質量分析法により分析を行ったところ、14C濃度は106.9pMCであった。またその14C濃度はmodern reference standardに対するものであり、そのmodern reference standardは米国国立標準・技術研究所が発行した蓚酸を用いた。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、パラサイメンとして、バイオマス由来のパラサイメンと化石資源由来のパラサイメンを重量にして等量混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。合成したテレフタル酸ジメチルを10重量部採取して、実施例1と同様に分析を行ったところ、14C濃度は52.8pMCであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、パラサイメンとして、化石資源由来のパラサイメンのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。合成したテレフタル酸ジメチルを10重量部採取し、実施例1と同様に分析を行ったところ、14C濃度は<0.06pMCであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
水酸化カリウム5重量部を含有する水溶液に酸化ジルコニウム粉末30重量部を加え、50℃で1時間撹拌しながら含浸した。減圧下70℃で水を留去し、110℃で一昼夜乾燥した後、更に空気中500℃で焼成した。このようにして得られた触媒6重量部を三ツ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下180℃で撹拌し、そこへ金属ナトリウム0.3重量部を加えた後、その温度で60分間撹拌した。その反応容器に、トウモロコシから発酵法で得られたエタノールをH−ZSM−5型のゼオライトを触媒として用いて芳香族化反応を行い、得られた芳香族混合物を蒸留・精製して得たバイオマス由来のオルソキシレン600重量部を供給し、140℃に加熱した。さらにそこへトウモロコシから発酵法で得られた1,4−ブタンジオールをアルミナ触媒で脱水反応させることで得られたバイオマス由来の1,3−ブタジエン35重量部を撹拌しながら1時間で導入して反応させた。反応終了後冷却し、触媒と液相を分離し、液相630重量部を得た。得られた液相を蒸留・精製し、5−o−トリルペンテン−2を80重量部得た。
東ソー社製H型モルデナイト15重量部、シリカ270重量部、及びバインダーとしてアルミナ含量70重量%のアルミナゾル21重量部に純水500重量部を加えて室温下で混合撹拌した。その後、押し出し成形器を用いて成形後、110℃で乾燥し、350℃ で3時間焼成して触媒を調製した。この触媒をガラス製の流通式反応容器に10重量部充填し、この触媒層を常圧下、反応温度170℃に加熱し、上記方法で合成した5−o−トリルペンテン−2を毎時10重量部、窒素を毎分100mLで供給して反応を行い、生成物を冷却して捕集した。この生成物を蒸留して高沸点物を取り除いたものを毎時10重量部で、1%白金/活性炭触媒(エヌ・イー ケムキャット社製)を40重量部充填したガラス製の流通式反応容器に供給し、反応温度280℃で反応させて、1,5−ジメチルナフタレンを得た。
上記方法で得た1,5−ジメチルナフタレンを、東ソー社製H型モルデナイトをアルミナで成型した触媒(アルミナ含量20重量%)を用いて、反応温度220℃、WHSV=1.0、常圧液相流通方式により反応させ、生成物をノルマルヘプタンを用いて再結晶して精製し、2,6−ジメチルナフタレンを得た。
酢酸288.9重量部に、水3.2重量部、酢酸コバルト(4水塩)0.63重量部、酢酸マンガン(4水塩)5.37重量部、臭化水素(47%水溶液)1.92重量部を混合し溶解させ触媒液を調製した。次にチタン製オートクレーブに、前記の触媒液120重量部を仕込み、残りの触媒液180重量部を、上記方法で合成した2,6−ジメチルナフタレン30重量部と混合し原料供給槽に仕込み、加熱して2,6−ジメチルナフタレンを溶解させ、原料液を調製した。窒素で反応系内の圧力を1.8MPaに調整し、撹拌しながら温度200℃に加熱した。温度および圧力が安定した後、原料液及び圧縮空気を反応器に供給して酸化反応を開始した。排ガス中の酸素濃度が2容量%になるように供給空気流量を調節しながら、原料液を1時間かけて連続的に供給した。原料液の供給終了後、空気の供給を9分間継続した。反応後、反応液を吸引ろ過して固液分離し、得られた固形物を水を20重量%含む酢酸80重量部で洗浄ろ過し、90℃で一昼夜乾燥して、2,6−ナフタレンジカルボン酸40.65重量部を得た。
上記方法で合成した2,6−ナフタレンジカルボン酸50重量部、硫酸5重量部、稲わらや木材をガス化後、銅亜鉛触媒で液化、精製して得たバイオマス由来のメタノール500重量部をガラス製のオートクレーブに仕込み、反応温度130℃、1.3MPaの圧力で3時間撹拌しながら反応させた。反応後、反応液を吸引ろ過して固液分離し、得られた固形物をメタノールで3回洗浄ろ過、90℃で一昼夜乾燥した。更に乾燥した固形物を蒸留して精製することで、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを30重量部得た。
上記のバイオマス資源から製造した2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを10重量部採取し、グラファイトに変換し加速器質量分析法により分析を行ったところ、14C濃度は103.5pMCであった。結果を表1に示す。
Figure 2011168501
本発明により得られるバイオマス由来の芳香族カルボン酸エステル化合物を従来の化石資源由来の芳香族カルボン酸エステル化合物に替えて用いることで、化石資源の枯渇や温室効果ガスである二酸化炭素の増加を抑制でき、その工業的な意義は大きい。

Claims (5)

  1. 芳香族カルボン酸エステル化合物中のmodern reference standardに対する14Cの濃度が50.0pMC以上であることを特徴とする芳香族カルボン酸エステル化合物。
  2. 芳香族カルボン酸エステル化合物が、テレフタル酸ジメチルであることを特徴とする請求項1記載の芳香族カルボン酸エステル化合物。
  3. 芳香族カルボン酸エステル化合物が、ナフタレンジカルボン酸ジメチルであることを特徴とする請求項1記載の芳香族カルボン酸エステル化合物。
  4. パラサイメンを原料として用いる請求項2に記載の芳香族カルボン酸エステル化合物の製造方法。
  5. オルソキシレンを原料として用いる請求項3に記載の芳香族カルボン酸エステル化合物の製造方法。
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