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JP2011162642A - 熱伝導シート、その製造方法及び熱伝導シートを用いた放熱装置 - Google Patents

熱伝導シート、その製造方法及び熱伝導シートを用いた放熱装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高い熱伝導性と高い柔軟性及びタック性を有し、さらに耐熱性に優れる熱伝導シート、該熱伝導シートが得られる製造方法及び該熱伝導シートを用いた高い放熱能力を持ち且つ信頼性の高い放熱装置を提供する。
【解決手段】熱伝導シートにおいて、鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)とを含有する組成物を含む熱伝導シートであって、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向するようにする。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導シート、その製造方法及び熱伝導シートを用いた放熱装置に関する。
近年、多層配線板、半導体パッケージに対する配線の高密度化や電子部品の搭載密度が大きくなり、また半導体素子も高集積化して単位面積あたりの発熱量が大きくなったため、半導体パッケージからの熱放散をよくすることが望まれるようになっている。
半導体パッケージのような発熱体とアルミや銅などの放熱体との間に熱伝導グリース又は熱伝導シートをはさんで密着させることにより熱を放散する放熱装置が一般に簡便に使用されているが、熱伝導グリースよりは熱伝導シートの方が放熱装置を組み立てる際の作業性に優れている。熱放散性をよくするには熱伝導シートに高い熱伝導性が求められるが、従来の熱伝導シートの熱伝導性は、必ずしも充分とは言えなかった。
そのため、熱伝導シートの熱伝導性をさらに向上させる目的で、マトリックス材料中に熱伝導性の大きな無機粉末を配合し、さらにそれをシート面に対し垂直に配向させた熱伝導シートが提案されている。
特許文献1はシート面に関してほぼ垂直な方向に無機充填材(窒化ほう素)が配向した熱伝導シートである。特許文献2ではゲル状物質に分散された炭素繊維がシート面に対して垂直に配向した構造が記載されている。
いずれの場合もシート表面では熱伝導性の無機材料が露出するため表面の粘着性(タック性)は低く、発熱体とアルミや銅などの放熱体の間に実装する工程において仮固定しにくいため作業性が悪いという点がある。特許文献1では、それを回避するためにスライシング後に可塑剤を含浸させる工程も設けているが、それによってバインダ樹脂が軟化するためタック性は向上するものの、シートの強度が低下する問題が生じ、また可塑剤又はそれによって軟化したバインダ樹脂が表面を覆ってしまい、熱流路を切断してしまう影響で熱抵抗が上がってしまう傾向がある。
また、一般にこのようなシートの場合、長期間にわたり熱がかかると可塑剤が揮発しやすくなり、バインダ樹脂が老化する影響によりシートが固く脆くなり、タック性も失われていく傾向がある。シートが固く脆くなってタック性が失われると、最悪の場合、シートが周辺にちぎれ落ちて短絡事故の原因になり、シートの密着性が保てなくなって放熱性を維持できなくなる恐れがある。
特開2002−26202号公報 特開2000−195998号公報
本発明の目的は、高い熱伝導性と高い柔軟性及びタック性を有し、さらに耐熱性に優れる熱伝導シートを提供することである。また、本発明の目的は、高い熱伝導性と高い柔軟性及びタック性を有し、さらに耐熱性に優れる熱伝導シートが得られる製造方法を提供することである。さらに本発明の目的は、高い放熱能力を持ち、かつ信頼性の高い放熱装置を提供することである。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、熱伝導シートの組成物中に、特定の架橋硬化物と、特定の高分子化合物とを含有させることにより、柔軟性及びタック性に優れる熱伝導シートが得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
<1>鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、
前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向していることを特徴とする熱伝導シート。
<2>前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の質量配合比率が、(B):(C)=5:5〜7:3の範囲であり、
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が内部添加によりシート材全体に存在させてあるか、又は前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が0.1mg/cm2以上4mg/cm2以下の量で表面に塗布又は含浸されていることを特徴とする上記<1>に記載の熱伝導シート。
<3>前記黒鉛(A)が膨張黒鉛であり、シート中に40質量%以上85質量%以下含まれていることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の熱伝導シート。
<4>前記六方晶窒化ほう素粒子(A)が鱗片状の六方晶窒化ほう素粒子であり、シート中に40質量%以上85質量%以下含まれていることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の熱伝導シート。
<5>前記組成物が、りん酸エステル系難燃剤(D)を10質量%〜40質量%の範囲で含有することを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の熱伝導シート。
<6>前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が、一方の面に塗布されている又は一方の面に含浸されていることを特徴とする上記<1>〜<5>のいずれか一つに記載の熱伝導シート。
<7>下記工程(1a)〜(4)を含む、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に配向している熱伝導シートの製造方法。
(1a)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して、ほぼ平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程、
(2)前記一次シートを積層して成形体を得る工程、
(3)前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させる工程、
(4)前記一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度でスライスしてシートを得る工程。
<8>下記工程(1b)〜(5)を含む、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に配向している熱伝導シートの製造方法。
(1b)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して、平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程、
(2)前記一次シートを積層して成形体を得る工程、
(3)前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させる工程、
(4)前記一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度でスライスしてシートを得る工程、
(5)前記シートの少なくとも一方の面に、重量平均分子量5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させる工程。
<9>上記<1>〜<6>のいずれか一つに記載の熱伝導シート又は上記<7>又は<8>に記載の製造方法により得られた熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に介在させてなることを特徴とする放熱装置。
前記<1>記載の熱伝導シートは、高い熱伝導性と高い柔軟性及びタック性を有し、さらに耐熱性に優れる放熱用途に好適である。
また、前記<2>記載の熱伝導シートは、前記<1>記載の発明の効果に加えて、さらに高いタック性を達成できる。
また、前記<3>及び<4>記載の熱伝導シートは、前記<1>又は<2>記載の発明の効果に加えてさらに高い熱伝導性を達成できる。
また、前記<5>記載の熱伝導シートは、前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の発明の効果に加えて、難燃性を付与できる上、更に高い柔軟性も達成できる。
前記<6>記載の熱伝導シートは、前記<1>〜<5>のいずれか一つに記載の発明の効果に加えて一方の面のみに強いタックを有することが出来るので、両面の被着体を付けたりはずしたりする際に、強いタック面側に固定されるのでハンドリング性に優れる。
また、前記<7>記載の熱伝導シートの製造方法は、高い熱伝導性と高い柔軟性及びタック性を有し、さらに耐熱性に優れる熱伝導シートを、生産性、コスト面及びエネルギー効率の点で有利に、かつ確実に製造できる。
また、前記<8>記載の熱伝導シートの製造方法は、前記<7>記載の発明の効果に加えて、一方の面のみに強いタックを有することが出来るので、両面の被着体を付けたり、はずしたりする際に、強いタック面側に固定されるのでハンドリング性に優れる熱伝導シートを製造できる。
さらに、前記<9>記載の放熱装置は、高い放熱能力を長期間にわたり有する。
<熱伝導シート>
本発明の熱伝導シートは、鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)とを含有する組成物を含んでなる。
前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に配向していることを特徴とする。
本発明における黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の形状は、鱗片状、楕球状又は棒状であり、なかでも鱗片状が好ましい。前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の形状が球状や不定形の場合は熱伝導性に劣り、繊維状の場合はシートに成形するのが困難で生産性に劣る。
結晶中の六角平面は鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向しており、X線回折測定により確認することができる。
黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の結晶中の六角平面の配向方向は、具体的には以下の方法で確認する。
先ず、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、シート又はフィルムの面方向に対して実質的に平行に配向した測定用サンプルシートを作製する。測定用サンプルシート調製の具体的な方法としては、10体積%以上の黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子と、樹脂との混合物をシート化する。ここで用いる「樹脂」とは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)とポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子(C)とを含む組成物に相当する樹脂を使用できるが、非晶質樹脂のようなX線回折の妨げになるピークが現れない材料、また、形状を作ることが可能である材料であれば、樹脂でなくても用いることができる。この混合物のシートが、元の厚みの1/10以下となるようにプレスし、プレスしたシートを積層し、この積層体を更に1/10以下まで押しつぶす操作を3回以上繰り返す。この操作により、調製した測定用サンプルシート中では、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、測定用サンプルシートの面方向に対し実質的に平行に配向した状態になる。
上記のように調製した測定用サンプルシートの表面に対し、黒鉛粒子の場合、X線回折測定を行うと、2θ=77°付近に現れる黒鉛の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる黒鉛の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる。また、六方晶窒化ほう素粒子の場合も同様で、X線回折測定を行うと、2θ=77°付近に現れる六方晶窒化ほう素粒子の(110)面に対応するピークの高さを、2θ=27°付近に現れる六方晶窒化ほう素の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる。
このことより、本発明において、「結晶中の六角平面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している」とは、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物等を含有した組成物をシート化したものの表面に対しX線回折測定を行い、2θ=77°付近に現れる黒鉛又は六方晶窒化ほう素の(110)面に対応するピークの高さを2θ=27°付近に現れる黒鉛又は六方晶窒化ほう素の(002)面に対応するピークの高さで割った値が0〜0.02となる状態をいう。
本発明で用いられる黒鉛粒子としては、例えば、鱗片黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、薄片化黒鉛粒子、酸処理黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、炭素繊維フレーク等の鱗片状、楕球状又は棒状の黒鉛粒子を用いることができる。本発明で用いられる六方晶窒化ほう素粒子としては、板状窒化ほう素粒子、鱗片状窒化ほう素粒子等が挙げられる。
特に、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と混合した際に、鱗片状の黒鉛粒子になり易いものが好ましい。具体的には、薄片化黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子の鱗片状黒鉛粒子が配向させ易く、粒子間接触も保ち易く、高い熱伝導性を得易いためより好ましい。
なお、六方晶窒化ほう素粒子の場合も、鱗片状、薄片状等の異方性形状が好ましい。
本発明の熱伝導シートにおいて、熱伝導性の点では、黒鉛粒子の方が六方晶窒化ほう素粒子と比較して5〜10倍程度の熱伝導率を有することから好ましい。一方、電気絶縁性が要求される用途においては、黒鉛粒子は電気伝導性があるため、六方晶窒化ほう素粒子の方が好ましい。
黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径は特に制限されないが、熱伝導性の向上の観点で、好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1.0mm、特に好ましくは0.2〜0.5mmである。
なお、質量平均径は以下のように測定する。
「質量平均径」は黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子の粒子径を測定した値で、ふるい等による分級により累積質量分布曲線を求め、累積質量が50%に達する径を意味する。
黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の含有量は特に制限されないが、組成物全体積の40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、45質量%以上75質量%以下であることがより好ましい。前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の含有量が40質量%未満である場合は熱伝導性が低下する傾向があり、85質量%を超える場合は充分な柔軟性や密着性、及びタック性が得難くなる傾向がある。
なお、本明細書における黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の含有量(体積%)は次式により求めた値である。
黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の含有量(体積%)=(Aw/dA)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+・・・)×100
Aw:黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量組成(質量%)
Bw:Tgが50℃以下のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)の質量組成(質量%)
Cw:反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の質量組成(質量%)
Dw:りん酸エステル系難燃材等のその他の任意成分(D)の質量組成(質量%)
Ad:黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の比重(本発明においてAdは黒鉛の場合:2.1、六方晶窒化ほう素の場合:2.3で計算した。)
Bd:Tgが50℃以下のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)の比重
Cd:反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の比重
Dd:りん酸エステル系難燃材等のその他の任意成分(D)の比重
なお、本発明において、(Bw/Bd)は、次式から求める。
(Bw/Bd)=(B’w/B’d)+(bw/bd)
B’w:Tgが50℃以下のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)の質量組成(質量%)
bw:硬化剤(b)の質量組成(質量%)
B’d:Tgが50℃以下のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)の比重
bd:硬化剤(b)の比重
本発明におけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)は、Tg(ガラス転移温度)が50℃以下、好ましくは−70〜20℃、より好ましくは−60〜0℃である。前記Tgが50℃を超える場合は、柔軟性に劣り、発熱体及び放熱体に対する密着性が不良である。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)のTgは、架橋硬化物(B)原料のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)のTgとほぼ同じである。
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量装置(DSC)により測定する。
本発明におけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)はポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)を硬化剤(b)で硬化させることにより得られる。
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を主要な原料成分とし、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等を共重合させて反応活性な官能基を導入したポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(所謂アクリルゴム)が好適に用いられる。
これを硬化する硬化剤(b)としては、多官能エポキシ、多官能イソシアネート、多官能アミン、イミダゾール、フェノール性水酸基を複数有する化合物等が挙げられる。
特にアクリル酸ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルを共重合成分中に70質量%以上99質量%以下(メタ)アクリル酸を1質量%以上10質量%以下含んだ(メタ)アクリル酸エステル系モノマを共重合させたものをポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)とし、多官能エポキシを硬化剤(b)として得た架橋硬化物(B)が、製造時の適度な反応速度の点、及び得られるシートの柔軟性と強度のバランスの点が良好であり、好ましい。
また、架橋硬化物(B)のガラス転移温度は、アクリル酸ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシル等の共重合成分が多ければ下がる傾向にある。従って、架橋硬化物(B)のガラス転移温度が50℃以下となるようにこれらの共重合成分の量を適宜調製すればよい。
本発明の熱伝導シートにおけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)の含有量は特に制限されないが、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を内部添加する場合は、組成物全体積に対して好ましくは10質量%〜30質量%、より好ましくは12質量%〜25質量%である。ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)をシート表面に塗布又は含浸させる場合は、塗布量又は含浸量が0.1〜4mg/cmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜3mg/cmである。塗布量又は含浸量が0.1mg/cm以上であれば、充分なタック性を得られやすく、4mg/cm以下であれば熱伝導性が低下を制御しやすい傾向がある。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)とポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の含有比率については後述する。
本発明におけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)は、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を主要な原料成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸メチル等を共重合させたポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(所謂アクリルゴム)が好適に用いられる。
本発明の熱伝導シートにおいて、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が内部添加によりシート材の全体に存在させてあるか、又は0.1mg/cm以上4mg/cm以下の量で表面に塗布又は含浸されることにより、熱伝導シートが優れたタック性を有する。より具体的には、例えば、熱伝導シートの製造において成形体をスライスする際に、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子がスライス時にへき開してシート表面を覆ってしまうこともあり、その場合にはシートのタック性が低下する傾向があるが、本発明におけるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が滲み出して、熱伝導シートのタック性に寄与する。
重量平均分子量が5000以上100000以下である必要があり、重量平均分子量が5000未満の場合、タック性を向上する効果が無く、強度も低下しやすい。重量平均分子量が100000を超えると、タック性及び柔軟性を向上する効果が無い。より好ましくは6000以上10000以下が良い。
また、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)はTgが0℃以下である必要がある。Tgが0℃を超えるとタック性及び柔軟性を向上する効果が無い。より好ましくは−30℃以下が良い。グリシジル基、水酸基、カルボキシル基等の反応性官能基を有さない必要があり、これらがあるとタック性及び柔軟性を長期間保てなかったり、タック性及び柔軟性が熱履歴により低下したりする傾向がある。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の重量平均分子量を5000以上100000以下とするには、例えば、溶液重合法により、重合開始剤の量、連鎖移動剤の量、重合温度等により適宜調整すればよい。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)のTgは、モノマ組成比で調整可能である。モノマ組成中にアクリル酸ブチル(ホモポリマのTgは−50℃程度)、アクリル酸2−エチルヘキシル(ホモポリマのTgは−60℃程度)のようなホモポリマのTgが低いものが多ければ得られるポリマのTgは低くなり、メタクリル酸メチル(ホモポリマのTgは100℃程度)のようなホモポリマのTgが高いものが多ければ得られるポリマのTgは高くなるため、モノマ組成によりTgが0℃以下となるように調整する。
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)は内部添加により熱伝導シート材全体に存在させても良いが、表面に塗布又は含浸することにより表面に局在化させても良く、特に片面に塗布又は片面に含浸すると片面のみに強いタック性を付与できるため、ハンドリング性の良いシートが得られる点で好ましい。
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の含有量は特に制限されないが、内部添加の場合、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の質量配合比率が(B):(C)=5:5〜7:3の範囲となる量が好ましい。
(B):(C)=7:3より(C)の比率が少ない場合、充分なタック性を得難くなる傾向があり、(B):(C)=5:5より(C)の比率が多いと、シートの強度が低下する傾向がある。更に好ましい範囲は(B):(C)=5.5:4.5〜6.5:3.5である。
また、表面に塗布又は含浸する場合は0.1mg/cm2以上4mg/cm2以下の量を塗布又は含浸するのが好ましい。0.1mg/cm2未満の場合は充分なタック性を得難くなる傾向があり、4mg/cm2を超えると熱伝導性が低下する傾向がある。
なお、本発明の熱伝導シートは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を内部添加しつつ、且つシート表面にポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させてもよい。内部添加しつつ、シート表面にポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸する場合の、好ましいポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の含有量、塗布量又は含浸量は、上記範囲と同様である。
本発明の熱伝導シートは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が内部添加されつつ、さらにシートの一方の表面にポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸されていることも好ましい。該構成の場合も、好ましいポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の含有量、塗布量又は含浸量は、上述の範囲と同様である。
また、本発明の熱伝導シートは難燃剤を含有することができる。難燃剤としては特に限定されず、例えば、赤りん系難燃剤やりん酸エステル系難燃剤を含有することができる。
赤りん系難燃剤としては、純粋な赤りん粉末の他に、安全性や安定性を高める目的で種々のコーティングを施したもの、マスターバッチになっているもの等が挙げられ、具体的には、例えば、燐化学工業(株)製、商品名:ノーバレッド、ノーバエクセル、ノーバクエル、ノーバペレット等が挙げられる。
りん酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等の芳香族リン酸エステル;レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル;等が挙げられる。これらは一種類を用いても、二種類以上を併用してもよい。中でも液状のりん酸エステル系難燃剤がシートの柔軟性に寄与するので好ましい。
難燃剤の含有量は特に制限されないが、組成物全体積に対して好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%である。難燃剤の含有量が前記範囲であれば、充分な難燃性が発現され、かつ柔軟性の点で有利となるので好ましい。前記難燃剤の含有量が10質量%未満である場合は充分な難燃性が得難く、40質量%を超える場合はシート強度が低下する傾向がある。
また、本発明の熱伝導シートは、更に必要に応じてウレタンアクリレート等の靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;等を適宜添加することができる。
本発明の熱伝導シートは、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向しており、この配向がないと、充分な熱伝導性が得られない。
本発明において「熱伝導シートの厚み方向に配向」とは、熱伝導シートの厚み方向の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子について見えている方向から長軸方向の熱伝導シート表面に対する角度(90度以上の場合は補角を採用する)を測定し、その平均値が60〜90度の範囲になる状態をいう。
また、本発明の熱伝導シートにおいて、粘着面を保護するために使用前の熱伝導シートの粘着面は保護フィルムで覆っておいてもよい。保護フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルナフタレート、メチルペンテンフィルム等の樹脂、コート紙、コート布、アルミ等の金属が使用できる。これらの保護フィルムは2種以上組み合わせて多層フィルムとしてもよく、保護フィルムの表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものが好ましく用いられる。
<熱伝導シートの製造方法>
本発明の熱伝導シートの製造方法は、一次シートを作製する工程、この一次シートを積層して成形体を得る工程、この成形体をスライスする工程、を含む。
本発明の熱伝導シートの製造方法は、下記工程(1a)〜(4)あるいは(1b)〜(5)を含む。また、下記工程(1a)〜(4)に(5)をさらに含む方法でもよい。
第一の方法:
(1a)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、ガラス転移温度が、50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程。
(2)前記一次シートを積層して成形体を得る工程。
(3)前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させる工程。
(4)前記一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度でスライスしてシートを得る工程。
第2の方法:
(1b)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、ガラス転移温度が、50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して、平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程。
(5)前記シートの少なくとも一方の面に、重量平均分子量5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させる工程。
以下、各工程について説明する。
(1a)一次シートの作製工程
まず、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)とを含有する組成物を得る。組成物は、これらを混合することにより得られるが、混合方法は特に制限されない。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)を溶剤に溶かしておいて、そこに黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)及び他の成分を加え、攪拌した後に乾燥する方法、又は、ロール混練、ニーダーによる混合、ブラベンダによる混合、押出機による混合等を用いることができる。
なお、この混合においては、組成物中のポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とが未反応である。
次いで前記組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関してほぼ平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する。
前記組成物を一次シートに成形する際の厚みは、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下、好ましくは2倍〜0.2倍とする。前記厚みが前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の長径の平均値の20倍を超える場合は、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の配向が不充分になり、結果として、最終的に得られる熱伝導シートの熱伝導性が悪くなる傾向がある。
前記組成物を、圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工することにより、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)を主たる面に関してほぼ平行な方向に配向した一次シートを作製するが、圧延成形又はプレス成形が確実に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)を配向させ易いので好ましい。
前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)がシートの主たる面に関してほぼ平行な方向に配向した状態とは、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)がシートの主たる面に関して寝ているように配向した状態をいう。シート面内での黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の向きは、前記組成物を成形する際に、組成物の流れる方向を調整することによってコントロールされる。つまり、組成物を圧延ロールに通す方向、組成物を押出す方向、組成物を塗工する方向、組成物をプレスする方向を調整することで、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の向きがコントロールされる。
前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)は、基本的に異方性を有する粒子であるため、組成物を圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工することにより、通常、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の向きは揃って配置される。
また、一次シートを作製する際、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)とポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)、これを架橋硬化させる硬化剤(b)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)とを含有する組成物の成形前の形状が塊状物である場合は、塊状物の厚み(d0)に対し、成形後の一次シートの厚み(dp)がdp/d0<0.15になるよう圧延成形、プレス成形又は押出成形するか、押し出し機出口の一次シート断面形状に相当する形状調整によって、一次シートの横幅(W)に対し厚み(dp´)がdp´/W<0.15となるように押し出し成形することが好ましい。dp/d0<0.15となるよう成形することにより、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)がシートの主たる面に関してほぼ平行な方向に配向させ易くなる。
(1b)一次シートの作製工程
(1b)の場合は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を組成物に含まず組成物を得る以外は、前記(1a)工程と同様に一次シートを得る。
(2)成形体を得る工程
次いで、前記一次シートを積層して成形体を得る。一次シートを積層する方法は、特に限定されず、例えば、複数枚の一次シートを積層する方法、一次シートを折り畳む方法等が挙げられる。積層する際は、シート面内での黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の向きを揃えて積層する。積層する際の一次シートの形状は、特に限定されず、例えば矩形状の一次シートを積層した場合は、角柱状の成形体が得られ、円形状の一次シートを積層した場合は、円柱状の成形体が得られる。
複数の一次シートを積層する方法、一次シートを折り畳む方法に代えて、一次シートを捲回して、成形体を得ることも可能である。一次シートを捲回する方法も特に限定されず、前記一次シートを黒鉛粒子(A)の配向方向を軸にして捲回すればよい。捲回の形状は、特に限定されず、例えば円筒形でも角筒形でもよい。
一次シートを積層する際の圧力は、この後の工程の一次シート面から出る法線に対し0〜30度の角度でスライスする都合上、スライス面がつぶれて所要面積を下回らない程度に弱く、かつシート間がうまく接着する程度に強くなるよう調整される。通常はこの調整で積層面間の接着力を充分に得られるが、不足する場合は溶剤又は接着剤等を薄く一次シートに塗布した上で積層を行ってもよい。また、積層は適宜加熱下に行ってもよい。
(3)前記成形体を加熱する工程
次いで、前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)とを反応させ、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)とする。
好適な加熱条件は、具体的にはポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)との種類や濃度によって異なるが、硬化反応による弾性率変化が15%/h以下になるまで加熱を継続するのが好ましい。弾性率変化が、15%/hを越えている時点で加熱をやめた場合、使用時の加熱により反応が再発し、弾性率が顕著に上昇するため、得られるシートの使用時耐熱性が悪くなる傾向がある。
なお、前記弾性率の変化の測定は、以下のように行う。
前記弾性率の変化が15%以下となるような加熱条件の決定は、以下のように行う。シートと同じ組成物を少量サンプリングし、プレスして0.5mm厚のサンプルシートにし、これを1cm×5cmに打ち抜き、サンプルシートを温度・時間を振って硬化させる。具体的には、各加熱温度において硬化時間を1時間間隔で硬化させることで硬化サンプルシートを作製する。
複数の条件で架橋硬化させ作製した硬化サンプルシートをそれぞれ温度25±1℃の環境に1時間静置し、それぞれの硬化サンプルシートに対して引張弾性率試験を行い、弾性率を求める。1時間違いで硬化させて得られた2つの硬化サンプルシートの弾性率の差(「弾性率変化」ともいう)をそれぞれ求め、その差が15%以下となる硬化条件を、実際の熱伝導シート製造の際の架橋硬化条件として設定する。
このようにして、弾性率変化が15%以下となる加熱(硬化)条件を予め求めておき、その条件で成形体を加熱することで、架橋硬化条件を最適化できる。
なお、弾性率の測定は、例えば、株式会社東洋精機製作所製のSTROGRAPH E−Sを用い、温度:25℃、引張速度:5mm/分で行う。
(4)スライス工程
次いで、前記成形体を一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度で、好ましくは、0〜15度の角度でスライスして、所定の厚さを持った熱伝導シートを得る。スライスする角度が30度を超える場合は熱伝導率が低下する傾向がある。
前記成形体が積層体である場合は、一次シートの積層方向と垂直若しくはほぼ垂直となるようにスライスすればよい。また、前記成形体が捲回体である場合は捲回の軸に対して垂直もしくはほぼ垂直となるようにスライスすればよい。また、円形状の一次シートを積層した円柱状の成形体の場合は、上記角度の範囲内でかつら剥きのようにスライスしてもよい。
スライスする方法は特に制限はなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法などが挙げられるが、熱伝導シートの厚みの平行を保ちやすい点でナイフ加工法が好ましい。スライスする際の切断具は、特に制限はないが、鋭利な刃を備えたスライサー、カンナ等が得られる熱伝導シートの表面近傍の黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子の配向を乱し難く、かつ薄い熱伝導シートも作製し易いので好ましい。
スライスは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)のTg+5℃〜Tg+50℃の温度範囲で行うのが好ましく、Tg+10℃〜Tg+40℃の温度範囲で行うのがより好ましい。前記スライスする際の温度がポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)のTg+50℃を超える場合は、成形体が柔軟になってスライスし難くなったり、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子の配向が乱れる傾向がある。逆にTg+5℃未満である場合は、成形体が固くもろくなってスライスし難くなったり、スライス直後にシートが割れ易くなる傾向がある。
熱伝導シートの厚さは、用途等により適宜設定されるが、好ましくは0.05〜3mm、より好ましくは0.1〜1mmである。前記熱伝導シートの厚さが0.05mm未満である場合はシートとしての取り扱いが難しくなる傾向にあり、3mmを超える場合は放熱効果が低くなる傾向にある。前記成形体のスライス幅が熱伝導シートの厚さとなり、スライス面が熱伝導シートにおける発熱体や放熱体との当接面となる。
(5)ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させる工程
一次シートを上記(1a)工程で得た場合も、上記(1b)工程で得た場合も、得られたシートの少なくとも一方の面に、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させると、片面のみに、あるいは両面とも強いタックを持つハンドリング性の良いシートが得られ、好ましい。塗布又は含浸させる方法に特に制約は無い。具体的には、スプレー塗布、印刷、塗工、転写、はけ塗り等種々の方法を取ることが可能である。但し、塗布し易くするために溶剤等で希釈する場合は、シート基材が侵されないものを選択する必要がある。この観点から、この場合、水を主体にした媒体に乳化して用いるのが好ましい。また、塗布後に塗布面を上にして50〜120℃程度に加熱する工程を行うと、塗布したポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)がレベリングし基材のボイドを埋めるため、熱伝導性の点で好ましい。
一方の面に含浸する方法としては、片面に含浸できれば方法に制限はないが、例えば、塗布のように片面に化合物を配置し含浸したり、片面のみ液面に浸したり、シートの周りに枠材を設け、片面のみに含浸したりする方法等が挙げられる。
<放熱装置>
本発明の放熱装置は、本発明の熱伝導シート又は本発明の製造方法により得られた熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に介在させて得られる。発熱体としては少なくともその表面温度が200℃を超えないもの好ましい。前記表面温度が200℃を超える可能性が高いもの、例えば、ジェットエンジンのノズル近傍、窯陶釜内部周辺、溶鉱炉内部周辺、原子炉内部周辺、宇宙船外殻等に使用すると、本発明の熱伝導シート又は本発明の製造方法により得られた熱伝導シート中の有機高分子化合物が分解してしまう可能性が高いので適さない。本発明の熱伝導シート又は本発明の製造方法により製造された熱伝導シートが特に好適に使用できる温度範囲は−10〜120℃であり、半導体パッケージ、ディスプレイ、LED、電灯等が好適な発熱体の例として挙げられる。
一方、放熱体としては、例えば、アルミ、銅のフィン・板等を利用したヒートシンク、ヒートパイプに接続されているアルミや銅のブロック、内部に冷却液体をポンプで循環させているアルミや銅のブロック、ペルチェ素子及びこれを備えたアルミや銅のブロック等が使用できる代表的なものである。
本発明の放熱装置は、発熱体と放熱体に本発明の熱伝導シート又は本発明の製造方法により得られた熱伝導シートの各々の面を接触させることで成立する。発熱体、熱伝導シート及び放熱体を充分に密着させた状態で固定できる方法であれば、接触させる方法に制限はないが、密着を持続させる観点から、ばねを介してねじ止めする方法、クリップで挟む方法などのように押し付ける力が持続する接触方法が好ましい。
以下、実施例により本発明を説明する。なお、各実施例において熱伝導性の指標とした熱伝導率は以下の方法により求めた。
(熱伝導率の測定)
1.0cm角の熱伝導シートをトランジスタ(2SC2233)と水冷銅ヒートシンクとの間に挟み、トランジスタを0.6Mpaの圧力で押しつけながら電流を通じた。トランジスタの温度:T1(℃)と、銅ヒートシンクの温度:T2(℃)を測定し、測定値と印可電力:W1(W)、膜厚(mm)から、次式によって熱伝導率:X(W/mK)を算出した。
X=10×W1/(T1−T2)
(タック力の測定)
タック性の指標としたタック力は以下の装置・条件で測定した。
使用装置:RHESCA製タッキング試験機TAC2
温度:25℃
押し込み速度:120mm/分
引き上げ速度:600mm/分
荷重:50gf
時間:10秒
(引張強度の測定)
引張強度は、得られた熱伝導シートから1cm×5cmに打ち抜いたサンプルシートを用い、以下の装置・条件で測定した。
使用装置:東洋精機製 STROGRAPH E−S
温度:25℃
引張速度:5mm/分
(アスカーC硬度の測定)
熱伝導シートを2cm角に打ち抜いたものを高さ5mm以上になるまで積層して、加熱して得られた成形体を25℃環境に1時間放置した後に、アスカー硬度計C型で測定する。
(実施例1)
黒鉛粒子(A)として鱗片状の膨張黒鉛粒子(日立化成工業株式会社製、商品名:HGF−L、質量平均径:450μm)555g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としてアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(共重合質量比82/10/3/5、ナガセケムテックス製、重量平均分子量:53万、Tg:−39℃)145g、硬化剤(b)としてネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、EX−211)9.7g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)として、ARUFON UP−1170(東亞合成製、液状、重量平均分子量:8000、Tg:−57℃)103g、難燃剤としてビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741)218gをポリエチレン袋中で予備混合して組成物を得た。
この組成物を温度80℃に設定したロール混練機(関西ロール(株)製、LABOLATRY MILL(8×20Tロール))を用いて混練し、混練シートを得た。
この混練シートの一部を直径1cmの球状に丸め、小型プレスで0.5mm厚のシート状にした。これを20枚に切り分けたものを積層して再度同様にプレスした。この操作を更にもう1回繰り返して得たシートの表面をX線回折により分析した。2θ=77°付近に黒鉛の(110)面に対応するピークが確認できず、用いた膨張黒鉛粉末(HGF−L)が「結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している」ことを確認できた。
得られた混練シートを2〜3mm角程度の大きさに刻んでペレット状にした。これを、(株)東洋精機製作所製、ラボプラストミルMODEL20C200を用い、100℃で幅60mm厚み1mmのシート状に押し出し一次シートを得た。
上記で得られた混練シート及び一次シートにおいて、成分(B’)と硬化剤(b)が硬化していないことを確認するため、予め、混練シート及び一次シートの一部分(0.2g程度)を切り取り、その10〜50倍量の酢酸n-ブチルの入ったサンプル瓶に投入、振り混ぜて樹脂が溶解することを目視確認する方法により、成分(B’)と硬化剤(b)が未反応であることを確認した。
弾性率の変化が15%以下となるような加熱条件を決定するために、上記一次シートを少量サンプリングし、プレスして0.5mm厚のサンプルシートにし、これを1cm×5cmに打ち抜き、サンプルシートを温度・時間(1時間間隔)を振って硬化させた。その結果、170℃で6時間加熱した硬化サンプルシートと5時間加熱した硬化サンプルシートの、温度25±1℃の環境に1時間静置した後の弾性率の差は3%の変化であった。よって、170℃、6時間を加熱(硬化)条件とした。
この一次シートを4cm×20cmの大きさにカッターで切り出し、40枚積層し、手で軽く押さえてシート間を接着させ、さらに3kgの重石を載せた上170℃の熱風乾燥機で6時間処理してシート間を良く接着させ、かつ組成物中でポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)に変成させ、厚さ4cmの成形体を得た。
次いで、この成形体をドライアイスで−20℃に冷却した後、4cm×20cmの積層断面を超仕上げカンナ盤((株)丸仲鐵工所製 商品名:スーパーメカ(スリット部からの刀部の突出長さ:0.19mm))を用いてスライスし(一次シート面から出る法線に対し0度の角度でスライス)、縦4cm×横20cm×厚さ0.25mmの熱伝導シート(I)を得た。
熱伝導シート(I)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定しその平均値を求めたところ90度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。
熱伝導シート(I)を2cm角に打ち抜いたものを高さ5mm以上になるまで積層した上、25℃においてアスカー硬度計C型で測定したところ、アスカーC硬度は60と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
この熱伝導シート(I)の熱伝導率を測定したところ、70W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(I)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。
この熱伝導シート(I)のタック力を測定したところ、25gfと仮固定に充分な値を示した。
この熱伝導シート(I)の引張強度を測定したところ、0.32MPaとハンドリングに充分な値を示した。
次に、この熱伝導シート(I)の耐熱性を確認するため、熱風乾燥機を用いて170℃で3h熱処理した。熱処理後のタック力を測定したところ、22gfと充分にタック力を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は5%と少なく耐熱性が高いことが確認できた。結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)として、ARUFON UP−1080(東亞合成(株)製、液状、重量平均分子量:6000、Tg:−61℃)103gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、熱伝導シート(II)を得た。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(II)の性状を求めた。熱伝導シート(II)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ88度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は62と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(II)の熱伝導率を測定したところ、65W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(II)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。
この熱伝導シート(II)のタック力を測定したところ、22gfと仮固定に充分な値を示した。
この熱伝導シート(II)の引張強度を測定したところ、0.28MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(II)の熱処理後のタック力を測定したところ、20gfと充分にタック力を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく耐熱性が高いことが確認できた。結果を表1に示す。
(実施例3)
黒鉛粒子(A)として鱗片状の膨張黒鉛粉末(日立化成工業(株)製、商品名:HGF−L、質量平均径:420μm)538g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としてアクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(共重合質量比10/82/3/5、ナガセケムテックス製、重量平均分子量:53万、Tg:−39℃)257g、硬化剤(b)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YDF−8170C)21g、難燃剤としてビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業(株)製、商品名:CR−741)184gをステンレス匙で予備混合し、以下実施例1と同様の方法で混練シートを得た。
なお、弾性率の変化が15%以下となるような加熱条件を決定するために実施例1と同様にサンプルシートを作製して硬化させ、加熱条件を170℃、8時間に決定した(弾性率変化が2%となる条件)。
以下実施例1と同様の方法で縦4cm×横20cm×厚さ0.25mmのスライスシートを得た。
PETフィルム上に、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)としてARUFON UP−1170(東亞合成(株)製、液状、重量平均分子量:8000、Tg:−57℃)をスキージで塗り伸ばした。
ここに得られたスライスシートを貼りつけた後剥がすことで、スライスシートの片面にポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を転写、塗布した。
貼り付け前後のシートの質量差から求めたポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の塗布量は1.75mg/cm2であった。このシートを塗布面を上にして100℃のホットプレート上に載せ10分間熱処理することで、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)のレベリング処理を行った。これを冷却し熱伝導シート(III)を得た。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(III)の性状を求めた。熱伝導シート(III)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ88度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は65と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(III)の熱伝導率を測定したところ、65W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(III)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。
この熱伝導シート(III)のタック力を測定したところ、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布した面が70gfと固定に充分な値を示し、無塗布面は5gfと微弱な粘着性であった。
熱伝導シート(III)を2cm角に打ち抜き、ノート型パソコン(NEC製PC−GL22ESYAA型)の冷却モジュールのCPU部パッドにポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布した面側を貼り付け、ノート型パソコンに装着した。これを再びはずし、また装着する操作を10回繰り返したが、常にシートは冷却モジュール側に貼りついた状態で剥がれ、無塗布面側が当るCPUチップ側に残渣が残らなかったので、リペア時のハンドリングに優れたシートであることが確認できた。
この熱伝導シート(III)の引張強度を測定したところ、0.45MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(III)の熱処理後のタック力を測定したところ、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布した面が60gfと充分にタック力を保持していた。無塗布面は5gfと微弱な粘着性を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく耐熱性が高いことが確認できた。結果を表1に示す。
(実施例4)
六方晶窒化ほう素粒子(A)として鱗片状の窒化ほう素粒子(モーメンティブパフォーマンスマテリアル製、商品名:PT−110、質量平均径:45μm)742g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)としてアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(共重合質量比19/76/5、ナガセケムテックス製、重量平均分子量:60万、Tg:−41℃)100g、硬化剤(b)としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YDF−8170C)8.1g、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)として、ARUFON UP−1170(東亞合成(株)製、液状、重量平均分子量:8000、Tg:−57℃)54g、難燃剤としてビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(りん酸エステル系難燃剤、大八化学工業株式会社製、商品名:CR−741)95gを用い、以下、実施例1と同様の方法にて縦4cm×横20cm×厚さ0.25mmの熱伝導シート(IV)を得た。
なお、弾性率の変化が15%以下となるような加熱条件を決定するために実施例1と同様にサンプルシートを作製して硬化させ、加熱条件を170℃、8時間に決定している(弾性率変化が3%となる条件)。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(IV)の性状を求めた。熱伝導シート(IV)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ90度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は65と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(IV)の熱伝導率を測定したところ、20W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(IV)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。
この熱伝導シート(IV)のタック力を測定したところ、30gfと仮固定に充分な値を示した。
この熱伝導シート(IV)の引張強度を測定したところ、0.32MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(IV)の熱処理後のタック力を測定したところ、26gfと充分にタック力を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく耐熱性が高いことが確認できた。結果を表1に示す。
Figure 2011162642
(比較例1)
実施例1においてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を配合しないこととし、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)の量を242g、硬化剤(b)の量を16.2gとした以外は同様にして熱伝導シート(V)を得た。
なお、弾性率の変化が15%以下となるような加熱条件を決定するために実施例1と同様にサンプルシートを作製して硬化させ、加熱条件を170℃、6時間に決定している(弾性率変化が2%となる条件)。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(V)の性状を求めた。熱伝導シート(V)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は65と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(V)の熱伝導率を測定したところ、66W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(V)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性も良好であった。
この熱伝導シート(V)のタック力を測定したところ、10gfと仮固定に不充分な値であった。
この熱伝導シート(V)の引張強度を測定したところ、0.35MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(V)の熱処理後のタック力を測定したところ、6gfと一層不充分になった。なお、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく耐熱性は高いことが確認できた。結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1においてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の代わりにアルキルフェノール系タッキファイヤ(昭和高分子(株)製、CKM−9273、軟化点:80℃以上)を用いた以外は同様にして熱伝導シート(VI)を得た。アルキルフェノール系タッキファイヤはフェノール性水酸基を有している。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VI)の性状を求めた。熱伝導シート(VI)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は70とやや硬いゴムシートとなった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VI)の熱伝導率を測定したところ、60W/mKと良好な値を示した。熱伝導シート(VI)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性はやや悪かった。
この熱伝導シート(VI)のタック力を測定したところ、6gfと仮固定に不充分な値であった。
この熱伝導シート(VI)の引張強度を測定したところ、0.23MPaとハンドリング時にやや破れ易い値を示した。
この熱伝導シート(VI)の熱処理後のタック力を測定したところ、0gfとタック性を失った。なお、熱処理前後の引張弾性率の変化は20%とやや多く耐熱性が低かった。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1においてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の代わりに、代表的可塑剤であるアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(和光純薬工業(株)製、試薬1級、分子量:370)を用いた以外は同様にして熱伝導シート(VII)を得た。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VII)の性状を求めた。熱伝導シート(VII)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ90度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は50と柔軟なゴムシートとなった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VII)の熱伝導率を測定したところ、70W/mKと良好な値を示した。熱伝導シート(VII)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は良好であった。
この熱伝導シート(VII)のタック力を測定したところ、9gfと仮固定に不充分な値であった。
この熱伝導シート(VII)の引張強度を測定したところ、0.09MPaとハンドリング時に極めて破れ易い値を示した。
この熱伝導シート(VII)の熱処理後のタック力を測定したところ、6gfと一層タック性が不充分となった。なお、熱処理前後の引張弾性率の変化は9%と比較的耐熱性は高かった。結果を表2に示す。
(比較例4)
実施例3において塗布したポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の代わりにアクリルゴムラテックス(一方社油脂工業(株)製、AE−150GFT、重量平均分子量:100万以上)を用いた以外は同様にして熱伝導シート(VIII)を得た。塗布量は1.2mg/cm2であった。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VIII)の性状を求めた。熱伝導シート(VIII)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は65と柔軟なゴムシートであることが確認できた。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(VIII)の熱伝導率を測定したところ、15W/mKと低い値を示した。また、熱伝導シート(VIII)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は良好であった。
この熱伝導シート(VIII)のタック力を測定したところ、アクリルゴムラテックスを塗布した面が101gfと固定に充分な値を示し、無塗布面は5gfと微弱な粘着性であった。
熱伝導シート(VIII)を2cm角に打ち抜き、ノート型パソコン(NEC製、PC−GL22ESYAA型)の冷却モジュールのCPU部パッドにアクリルゴムラテックスを塗布した面側を貼り付け、ノート型パソコンに装着した。これを再びはずし、また装着する操作を10回繰り返したが、常にシートは冷却モジュール側に貼りついた状態で剥がれ、無塗布面側が当るCPUチップ側に残渣が残らなかったので、リペア時のハンドリングに優れたシートであることが確認できた。
この熱伝導シート(VIII)の引張強度を測定したところ、0.44MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(VIII)の熱処理後のタック力を測定したところ、アクリルゴムラテックスを塗布した面が25gfと初期に比べ大幅に低下したものの必要なタック力は保持していた。無塗布面は5gfと微弱な粘着性を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく、耐熱性が高いことが確認できた。結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1においてポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の代わりに、液状NBRゴム(日本ゼオン(株)製、Nipol DN601)を用いた以外は同様にして熱伝導シート(IX)を得た。なお、DN601はカルボキシル基を有している。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(IX)の性状を求めた。熱伝導シート(IX)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は60と柔軟なゴムシートとなった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(IX)の熱伝導率を測定したところ、70W/mKと良好な値を示した。熱伝導シート(IX)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は良好であった。
この熱伝導シート(IX)のタック力を測定したところ、32gfと仮固定に充分な値であった。
この熱伝導シート(IX)の引張強度を測定したところ、0.31MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(IX)の熱処理後のタック力を測定したところ、5gfと不充分なタック性になった。なお、熱処理前後の引張弾性率の変化は30%と多く耐熱性が低かった。結果を表2に示す。
(比較例6)
実施例1において積層して成形した成形品に対して行った170℃の熱風乾燥機での6時間処理を、実施例1において作製した未積層の一次シートに対して行ったものを、そのまま熱伝導シート(X)として評価した。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(X)の性状を求めた。熱伝導シート(X)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ1度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向には配向していなかった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(X)の熱伝導率を測定したところ、3.0W/mKと極めて低い値を示した。また、熱伝導シート(X)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は良好であった。
この熱伝導シート(X)のタック力を測定したところ、100gfと仮固定に充分な値を示した。
この熱伝導シート(X)の引張強度を測定したところ、0.39MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(X)の熱処理後のタック力を測定したところ、90gfと充分にタック力を保持していた。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は6%と少なく耐熱性は高かった。結果を表2に示す。
(比較例7)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の代わりに、ARUFON UP−1000(東亞合成製、液状、重量平均分子量:3000、Tg:−77℃)103gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、熱伝導シート(XI)を得た。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(XI)の性状を求めた。熱伝導シート(XI)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は58と柔軟なゴムシートとなった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(XI)の熱伝導率を測定したところ、69W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(XI)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は良好であった。
この熱伝導シート(XI)のタック力を測定したところ、11gfと仮固定に不充分な値であった。
この熱伝導シート(XI)の引張強度を測定したところ、0.18MPaとハンドリングに不充分な値を示した。
この熱伝導シート(XI)の熱処理後のタック力を測定したところ、9gfと仮固定に不充分な値であった。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は5%と少なく耐熱性は高かった。結果を表2に示す。
(比較例8)
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)として、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(共重合質量比19/76/5、ナガセケムテックス製、HTR811DR、重量平均分子量:42万、Tg:−43℃、OH基含有)103gを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、熱伝導シート(XII)を得た。
以下、実施例1と同様に操作して熱伝導シート(XII)の性状を求めた。熱伝導シート(XII)の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、任意の50個の黒鉛粒子について見えている方向から鱗片の面方向の熱伝導シート表面に対する角度を測定し、その平均値を求めたところ89度であり、黒鉛粒子の鱗片の面方向は熱伝導シートの厚み方向に配向していることが認められた。アスカーC硬度は70とやや硬めなゴムシートとなった。
実施例1と同様に操作して熱伝導シート(XII)の熱伝導率を測定したところ、58W/mKと良好な値を示した。また、熱伝導シート(XII)のトランジスタと銅ヒートシンクに対する密着性は少し悪かった。
この熱伝導シート(XII)のタック力を測定したところ、9gfと仮固定に不充分な値であった。
この熱伝導シート(XII)の引張強度を測定したところ、0.38MPaとハンドリングに充分な値を示した。
この熱伝導シート(XII)の熱処理後のタック力を測定したところ、3gfとほとんどタック力が無くなった。また、熱処理前後の引張弾性率の変化は22%と大きく耐熱性は低かった。結果を表2に示す。
Figure 2011162642

Claims (9)

  1. 鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、
    前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が熱伝導シートの厚み方向に配向していることを特徴とする熱伝導シート。
  2. 前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物の架橋硬化物(B)と前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)の質量配合比率が、(B):(C)=5:5〜7:3の範囲であり、
    前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が内部添加によりシート材全体に存在させてあるか、又は前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が0.1mg/cm2以上4mg/cm2以下の量で表面に塗布又は含浸されていることを特徴とする請求項1記載の熱伝導シート。
  3. 前記黒鉛粒子(A)が膨張黒鉛であり、シート中に40質量%以上85質量%以下含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導シート。
  4. 前記六方晶窒化ほう素粒子(A)が鱗片状の六方晶窒化ほう素粒子であり、シート中に40質量%以上85質量%以下含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の熱伝導シート。
  5. 前記組成物が、りん酸エステル系難燃剤(D)を10質量%〜40質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  6. 前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)が、一方の面に塗布されている又は一方の面に含浸されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  7. 下記工程(1a)〜(4)を含む、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に配向している熱伝導シートの製造方法。
    (1a)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させ硬化剤(b)と、重量平均分子量が5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して、ほぼ平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程、
    (2)前記一次シートを積層して成形体を得る工程、
    (3)前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させる工程、
    (4)前記一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度でスライスしてシートを得る工程。
  8. 下記工程(1b)〜(5)を含む、黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に配向している熱伝導シートの製造方法。
    (1b)鱗片状、楕球状又は棒状であり、結晶中の六角平面が、鱗片の面方向、楕球の長軸方向又は棒の長軸方向に配向している黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)と、Tgが50℃以下であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と、これを架橋硬化させる硬化剤(b)と、を含有する組成物を、前記黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)の質量平均径の20倍以下の厚みに圧延成形、プレス成形、押出成形又は塗工し、主たる面に関して、平行な方向に黒鉛粒子又は六方晶窒化ほう素粒子(A)が配向した一次シートを作製する工程、
    (2)前記一次シートを積層して成形体を得る工程、
    (3)前記成形体を加熱して、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(B’)と硬化剤(b)とを反応させる工程、
    (4)前記一次シート面から出る法線に対し、0〜30度の角度でスライスしてシートを得る工程、
    (5)前記シートの少なくとも一方の面に、重量平均分子量5000以上100000以下、かつTgが0℃以下であり、反応性官能基を有さないポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(C)を塗布又は含浸させる工程。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱伝導シート又は請求項7又は8に記載の製造方法により得られた熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に介在させてなることを特徴とする放熱装置。
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